判示事項
油濁損害賠償保障法に基づく原告請求に係る各タンカー油濁損害について本件 事故との相当因果関係が認められる。
Ⅰ 事実の概要 原告:日本国
被告:1971年の油による汚染損害の補償のための国際基金の設立に関する国 際条約に基づく国際基金(以下「国際油濁補償基金」という)
本判決(原告(日本国)の請求を全部認容)の事案は以下の通りである(1)。すなわ ち、大韓民国籍のタンカー「オーソン No.3号」(786総トン。以下「本件船舶」と いう)が、1997(平成 9 )年 4 月 3 日午後 9 時ころ、韓国南岸の巨済島南方約10キ ロメートルの大韓民国領海上において座礁し、同日午後11時25分ころ、沈没した
(以下「本件事故」という)。
本件事故により本件船舶の積荷であった C 重油(推定約186キロリットル)が流 出した。この流出油は、 4 月 7 日、大韓民国領海から公海へ漂流し、 4 月 8 日、
対馬沖約20キロメートルないし30キロメートル付近に油膜として漂流し、 4 月 9 日、対馬西部海岸にその一部が漂着した。
判例評釈
〔海事判例研究〕
早稲田大学海法研究所・判例研究会[第 8 回]
タンカー油濁損害について、油濁損害賠償保障法
(現:船舶油濁損害賠償保障法) に基づく請求が認められた事例
─オーソン号事件長崎地裁判決の検討─
(長崎地裁平成12年12月 6 日判決、平成12年(ワ)第164号損害賠償請求事件、判タ1101 号228頁)
小 林 寛
原告は、 4 月 7 日から 4 月14日までの間、陸上自衛隊、海上自衛隊及び航空自 衛隊をして、本件船舶の流出油にかかる油濁損害を防止又は軽減しよとする措置 を講じた結果、「損害一覧表」記載のとおり、合計5075万5568円の費用を支出し た。
本件船舶の所有者は、オーソン・シッピング・カンパニーリミティッド(以下
「オーソン海運」という)である。
オーソン海運は、無資力であり、1969年の油による汚染損害についての民事責 任に関する国際条約 7 条所定の補償提供義務も負わないため、原告は、同社か ら、本件事故について十分かつ適正な賠償を受けることができない状況にある。
原告は、被告に対して、油濁損害賠償保障法22条に基づき補償を請求した。
被告は、後記「損害一覧表」記載の損害の範囲及び額のうち、次のものを否認 し、その余はいずれも認めた。
1 陸上自衛隊について
( 1 ) 第四飛行隊分の人件費( 1 万2000円)のうち7200円は、油が海岸線に漂 着した後の航空偵察にかかるものであり、一旦漂着した油は漂着場所から移動す ることは通常ありえず、海上の油に比べ、その位置や量を把握するのが容易だか ら、油濁損害の防止軽減措置費用としての合理性を有しない。また、第四飛行隊 分の燃料費のうち、 4 月11日の観測ヘリコプター 1 機(JG─31147)分及び 4 月13 日分以外のもの(12万0563円)も、右と同様の理由により、油濁損害の防止軽減 措置費用としての合理性を有しない。
( 2 ) 写真加工材料費( 3 万9900円)は、汚染の範囲や清掃作業の実行を立証 するものとしては過度の支出であるから、その半額( 1 万9950円)は合理性を有 しない。
2 海上自衛隊について
海上自衛隊艦艇「おおよど」、「せんだい」、「なるしま」、「もろしま」及び「ひ こしま」にかかる 4 月12日分並びに同艦艇「たかつき」、「きくづき」、「じんつ う」、「とかち」及び「のしろ」にかかる 4 月12日午前 6 時から午後 7 時までの各 燃料費(25万7939円(ママ(2)))は、海上保安庁による航空偵察と重複して行われた 艦艇探索のためのものであり、航空偵察に比し、非効率的であるから、油濁損害 の防止軽減措置費用としての合理性を有しない。
すなわち、被告は、請求額(5075万5568円(遅延損害金を除く))のうち人件 費・飛行隊分の燃料費・写真加工材料費・艦艇の燃料費の合計272万5652円を否
認し、その余(請求額の約94.6%)は認めた。
損害一覧表 一 陸上自衛隊 1 人件費
(一) 第四飛行隊分 1 万2000円 (二) 右以外の分 95万4650円 2 給食費 201万4053円 3 燃料費
(一) 第四飛行隊分のうち、 4 月11日の観測ヘリコプター一機(JG─31147)
分及び 4 月13日分 2 万2366円
(二) 第四飛行隊分のうち、右以外の分 12万0563円 (三) その他の分 30万5701円
4 材料費
(一) 写真加工材料費 3 万9900円 (二) 右以外の分 17万2740円 5 輸送費等 185万1464円 6 雑費 633万4977円 二 海上自衛隊
1 人件費 146万7450円 2 給食費 22万3112円 3 燃料費
(一) 海上自衛隊艦艇「おおよど」、「せんだい」、「なるしま」、「もろし ま」及び「ひこしま」にかかる 4 月12日分並びに同艦艇「たかつき」、
「きくづき」、「じんつう」、「とかち」及び「のしろ」にかかる 4 月12 日午前 6 時から午後 7 時までの分 257万7939円
(二) 右以外の分 2869万0853円 4 その他 548万1000円
三 航空自衛隊 48万6800円
Ⅱ 判決要旨
裁判所は、原告の請求を全部認容した(確定)。争点は相当因果関係のある損 害の範囲及び額であった。
1 陸上自衛隊について
「認定の事実によれば、一刻を争う状況下で、油濁損害の拡大を可及的に防止 すべく、迅速かつ効率的な油回収作業を進めるために、陸上自衛隊において第四 飛行隊の航空偵察を用いたことは相当であったというべきであり、この点に関す る被告の主張は、右航空偵察によらなくとも、実際の油回収作業と同程度の実績 を挙げることができたこと等についての具体的反証のない本件においては、採用 することができない。また、簡易かつ正確な情報の伝達手段として写真撮影によ ることはもとより相当であり、右撮影写真が結果的に他の目的に流用されること がありうるとしても、相当因果関係を否定する根拠となるものではないから、こ の点に関する被告の主張も、採用することができない。」
2 海上自衛隊について
「認定の事実によれば、前記各艦艇による探索が海上保安庁による航空偵察と 重畳的に行われたことにより、迅速かつ効率的な油回収作業を進めることができ たことは明らかであって、 4 月12日における作業結果も、その災害規模に比し、
早期に災害派遣の終結に至ることができたこと等に照らすと、むしろ海上自衛隊 による油回収作業の迅速性を反映したものともいえるのであるから、 4 月12日分 における同艦艇の燃料費との相当因果関係を否定するものではなく、この点に関 する被告の主張は、前記艦艇探索によらなくとも、実際の油回収作業と同程度の 実績を挙げることができたこと等についての具体的反証のない本件においては、
採用することができない。」
3 結論
「以上によれば、原告の請求は理由がある。」
Ⅲ 評釈 判旨の理由および結論双方に賛成である。
1 船舶油濁損害賠償保障法の下での本判決の位置づけ
管見の限り、船舶油濁損害賠償保障法(昭和50年12月27日法律第95号)(以下「油 濁損害賠償法」という)の下で船舶油濁損害の賠償・補償が求められた事例に関 する判例は、本判決のみであり(3)、本判決は同法に関する最初の判決とされてい
(4)る
。油濁損害賠償法が制定されたのは昭和50年であるから、25年間油濁損害賠償 法に関して判決が存在しなかったことになる。なお、船主責任制限法 3 条 1 項 1
号・95条、油濁損害賠償法40条に基づく船舶先取特権の物上代位により、船体保 険の保険金請求権の差押えを認めた決定も発見されたが(5)、当該事案は、インドネ シア・スマトラ沖のマラッカ海峡において起きた事故である。主たる争点は油濁 損害賠償法に関するものではなく、船舶先取特権の成立および効力についての準 拠法が日本法かどうかという点であった。さらに、一般船舶の座礁事故に関する 損害賠償請求について油濁損害賠償法15条 1 項(タンカー油濁損害の賠償について 被害者が保険者等に対して直接請求できる旨を定める規定)の類推適用が否定された 判決も発見されたが(6)、当該事案は、座礁した船舶の撤去費用相当額( 3 億9800万 円)の賠償が求められた事案であり、油濁損害賠償が求められた事案ではない。
わが国において油濁損害賠償法の下で船舶油濁損害の賠償・補償が求められた事 例に関する判決が本判決 1 件のみであるということの背景事情については、最後 に若干の言及を行うこととしたい(7)。
2 タンカー油濁損害に係る賠償・補償制度に関する検討
本判決の根拠法令である油濁損害賠償法は、油による汚染損害についての民事 責任に関する国際条約(8)(以下「CLC」といい、1992年議定書によって改正されたもの を「92CLC」という)および油による汚染損害の補償のための国際基金の設立に 関する国際条約(9)(以下「FC」といい、1992年議定書によって改正されたものを
「92FC」という)による国際的油濁損害賠償・補償制度に基づくものである。そ こで、ここでは、前提として、92CLC および92FC に基づくタンカー油濁損害に 係る賠償・補償制度の基本構造を明らかにする。
( 1 )厳格責任
CLC は、ばら積みの油を貨物として海上輸送するための船舶(すなわち通常は タンカー(10))に係る船舶所有者に対して、油濁損害について厳格責任を課する。従 って、油濁被害者は、過失の立証を要せずに、船舶所有者に対して油濁損害の賠 償責任を追及することができる。また、 2 以上の船舶が関係する事故が発生した 場合には、全ての船舶所有者は、合理的に分割できない汚染損害の全体について 連帯責任を負う(92CLC 4 条)。もっとも、以下の免責事由が規定されている。
すなわち、①戦争、敵対行為、内乱または暴動、②例外的、不可避的かつ不可抗 力的な性質を有する自然現象、③損害をもたらすことを意図した第三者の作為ま たは不作為、および④政府その他当局の灯台その他の航行援助施設の維持につい ての過失その他の不法の行為である(92CLC 3 条 2 項)。③および④については
「専ら(wholly)」との要件が規定されている。これは、当該免責事由のみによっ て汚染損害が発生した場合と解され、船舶所有者の行為も介在している場合には 免責は認められないことになるものと解される。その意味で、これは排他性を規
定した限定的な要件であると解される。また、⑤油濁被害者の損害をもたらすこ とを意図した作為もしくは不作為または過失による場合にも減免責が認められる
(92CLC 3 条 3 項)。ただし、本判決においては免責規定の適否が争われたわけで はないため、免責事由に関する裁判所の解釈は明らかではない(11)。
( 2 )責任当事者
CLC の下での責任は船舶所有者に集中している(92CLC 3 条 4 項)。従って、
①船舶所有者の被用者もしくは代理人または乗組員、②水先人その他船舶のため に役務を提供する者で乗組員以外のもの、③船舶の傭船者、管理人または運航 者、④船舶所有者の同意を得てまたは当局の指示を受けて救助活動を行う者、⑤ 防止措置を行う者、⑥③ないし⑤の者の被用者または代理人は、損害賠償責任を 追及されない。ただし、これらの者が汚染損害をもたらす意図をもってまたは無 謀にかつ汚染損害の生ずるおそれがあることを認識して行った行為により汚染損 害が発生した場合はこの限りではない(同条項但書)。
( 3 )責任保険
前記の責任を担保するために、締約国に登録されており、かつ2000トンを超 えるばら積みの油を貨物として輸送している船舶の船舶所有者は保険その他の金 銭上の保証を維持しなければならない(92CLC 7 条 1 項)。保険その他の金銭上の 保証に対しては、これが有効であることを証明する証明書が発行される。締約国 に登録されている船舶については、船舶の登録国の権限のある当局によって証明 書が発行または公認される(同条 2 項)。証明書は、船舶内に備え置くものとさ れ、その写しは、当該船舶の登録簿を保管する当局に寄託する(同条 4 項)。 本事案においては、オーソン海運は無資力で、責任保険も有していなかったよ うである。本判決においては、CLC「 7 条所定の補償提供義務も負わない」と あるが、判決文からはオーソン海運が何故に補償提供義務を負わないのか必ずし も明らかではない(12)。
( 4 )責任制限
CLC の下での船舶所有者の責任限度額は、1 事故について、5000トン以下の船舶 については451万計算単位(計算単位とは、国際通貨基金の定める特別引出権(Special DrawingRights)をいう(92CLC 5 条 9 項(a))。以下「SDR」という)、5000トン を超える船舶については451万 SDR に5000トンを超えるトン数につき 1 トン当 たり631SDR で計算した金額を加えた金額(但し、上限は8977万 SDR)である(同 条 1 項)。ただし、船舶所有者は、汚染損害をもたらす意図をもってまたは無謀 にかつ汚染損害の生ずるおそれがあることを認識して行った作為または不作為に より汚染損害が生じたことが証明された場合には、責任制限の利益を享受するこ とはできない(13)。
また、船舶所有者は、責任制限の利益を享受するためには、締約国の裁判所そ の他権限のある当局に、責任限度額に相当する額の基金を形成しなければならな い(92CLC 5 条 3 項)。これを制限基金という。制限基金は、責任限度額に相当す る金額を供託するか、裁判所その他の権限のある当局が十分と認める銀行保証そ の他の保証を提供することによって形成することができる(同条項)。
船舶所有者が汚染損害を防止または最小化するために自発的に負担した合理的 な費用および自発的に払った合理的な犠牲に係る債権は制限基金に対して他の債 権と同一の順位を有する(同条 8 項)。
保険者その他の金銭上の保証提供者は、船舶所有者が形成する場合と同一の条 件・効果で制限基金を形成することができる(同条11項)。保険者その他の金銭上 の保証提供者による制限基金は、船舶所有者が自己の責任を制限することができ ない場合にも形成することができるが、その場合には、船舶所有者に対する債権 者の権利は当該制限基金の形成によって害されることはない(同条項)。 制限基金が形成された場合、汚染損害に係る債権者は、当該債権に関して、責 任当事者である船舶所有者の他の財産に対して権利行使することはできない
(92CLC 6 条 1 項(a))。 ( 5 )除斥期間
CLC に基づくタンカー油濁損害に係る賠償請求権は、損害が生じた日から 3 年以内に訴えが提起されない場合には、消滅する。また、いかなる場合にも、事 故の発生の日(事故が一連の出来事から成る場合には、最初の出来事の発生の日)か ら 6 年を経過した後は、訴えを提起することができない(92CLC 8 条)。これを 受けて、油濁損害賠償法10条においても同様に規定されている。これは、不法行 為に関する民法724条の特則をなす規定である。民法724条は、「不法行為による 損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時か ら 3 年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経 過したときも、同様とする」と規定する。
その法的性質について、民法724条の 3 年の期間制限は短期消滅時効であり、
20年の期間制限は除斥期間であると解されている(通説・判例(最判平成元年12月 21日民集43巻12号2209頁(14)))。これに対して、CLC に基づくタンカー油濁損害賠償 制度における 3 年および 6 年の期間制限はいずれも除斥期間であると解されてい
(15)る
。もっとも、 3 年の期間制限については被害者保護の見地から中断を認めるべ きとも考えられる。そうだとすれば、CLC および FC における 3 年の期間制限 は短期消滅時効であり、 6 年の期間制限は除斥期間と解することもできよう。
( 6 )国際油濁補償基金
本事案のように船舶所有者が無資力であったり(92FC 4 条 1 項(b))、汚染損
害が船舶所有者の前記責任限度額を超える場合(92FC 4 条 1 項(c))などであっ ても、FC に基づき設立された国際油濁補償基金によって一定の限度額まで油濁 被害者に対する補償が行われる(16)。すなわち、92FC の下での補償限度額は、
92CLC に基づき船舶所有者が支払う賠償額と併せて 2 億300万 SDR(但し、 3 締 約国の領域内で前暦年中に受け取られた拠出油の量が合計 6 億トン以上となる期間があ る場合には、当該期間中の事故につき、 3 億74万 SDR)である(92FC 4 条 4 項)。 さらに、FC に係る2003年議定書によって、国際油濁補償追加基金が創設さ れ、1 事故について、92CLC の下で船舶所有者が支払う責任限度額の範囲内での 賠償額および92FC の下での限度額の範囲内での補償額と併せて 7 億5000万 SDR を上限とする補償が行われる体制が整備された(2003年議定書 4 条 2 項
(a))。
国際油濁補償基金の財源は、暦年中に総量において15万トンを超えて油を受領 した油受取人が拠出する拠出金によって賄われている(92FC10条)。
もっとも、国際油濁補償基金が補償義務を負わない場合が定められている。す なわち、①戦争、敵対行為、内乱もしくは暴動、②事故発生時において政府の非 商業的役務にのみ使用されていた国の所有または管理に係る軍艦その他の公用舶 から油が流出もしくは排出されたことを国際油濁補償基金が証明した場合、また は③損害が 1 以上の船舶の関係する事故によって生じたことを債権者が証明でき ない場合である(92FC 4 条 2 項)。また、国際油濁補償基金が、汚染損害が、専 らまたは部分的に、汚染損害を受けた被害者による損害をもたらすことを意図し た作為もしくは不作為または当該被害者の過失によって生じたことを証明した場 合には、同基金は補償義務の全部または一部を免れることができる(92FC 4 条 3 項)。国際油濁補償基金は、船舶所有者が92CLC 3 条 3 項に基づき責任を免れた 場合には、その範囲で補償義務を免れるが、防止措置については、かかる免除は 適用されない(同条項)。前記①戦争等の行為が発生した場合には、船舶所有者 は賠償義務を免れ、国際油濁補償基金も補償義務を免れる。これに対して、例外 的・不可避的・不可抗力的な性質を有する自然現象によって生じた場合には、船 舶所有者は賠償義務を免れるが、同基金は補償義務を免れない仕組みとなってい る。すなわち、自然災害によって汚染損害が生じた場合でも、油濁被害者に対す る国際油濁補償基金による補償は行われるのである。
以上のように、第一次的には船舶所有者が CLC の下での責任限度額の範囲内 で損害賠償を行い、第二次的には、国際油濁補償基金が FC の下で補償を行い、
さらに、2003年議定書によって創設された追加基金が補償を行うという、 3 段階 の賠償・補償制度が構築されたのである。
( 7 )油濁損害賠償法
油濁損害賠償法は、前記両条約を批准し国内法化するために制定された法律で あることから、その制度内容は、前記両条約に対応している。タンカー油濁損害 については、免責事由が存在する場合を除き、厳格責任かつ連帯責任( 2 以上の タンカーによるタンカー油濁損害でいずれのタンカーに積載されていた油によるものか 分別できない場合)である(油濁損害賠償法 3 条 1 項および 2 項)。強制保険の制度 も存在する(同法13条以下)。被害者は、賠償を受けることができなかったタンカ ー油濁損害の金額について国際油濁補償基金(追加基金も含む)に対して補償を 求めることができる(同法22条および30条の 2 )。このように、タンカー油濁損害 については、日本が CLC および FC を批准しこれを油濁損害賠償法によって国 内法化したことから、被害者の保護が非常に厚いと評価することができる(17)。 なお、油濁損害賠償法は、被害者の故意または過失により船舶油濁損害が生じ たときは、裁判所は、損害賠償の責任および額を定めるについて、これを参酌す ることができる旨を規定する(同法 4 条および39条の 2 第 2 項)。これは過失相殺 の規定であるところ(18)、被害者の故意または過失を損害賠償の額のみならず責任を 定めるについても参酌することができるという点で民法の不法行為法における過 失相殺(民法722条 2 項)と全く同一ではない。ただ、油濁被害者の故意または過 失によって船舶所有者の全責任が免ぜられるのは極めて稀な場合であろう。
3 本事案に関する検討 ( 1 )損害賠償の範囲
本事案における争点は、相当因果関係のある損害の範囲及び額であったことか ら、国際的油濁損害賠償・補償制度の下での損害賠償の範囲について検討する(19)。 タンカーからの持続性の炭化水素鉱物油の流出による汚染損害の補償を行う国 際油濁補償基金は、同基金に対する請求に当たっての実務上のガイドラインとし て、請求の手引き(claimsmanual)を発行している。この手引きは CLC および FC の委任を受けて定められたものではないから、裁判規範としての性質までは 有しないと考えられるが(20)、タンカー油濁損害に対する補償の実務は、かかる手引 きに定められた一般的な基準に従って行われる。国際油濁補償基金が発行するこ の請求の手引きは、1998年の92年補償基金の総会において採択され、その後数度 の改訂がなされた。直近では、用語の一貫性を確保するために2012年10月に第 5 版として改訂された2013年版請求の手引きがある(21)。請求の手引きは、国際的油濁 損害賠償・補償制度の仕組みを概説するだけでなく、補償を行ううえでの一定の 基準を示すものであり、補償実務上極めて重要な指針となるものである。請求の 手引きは、 3 つの章に分かれている。第 1 章は、同制度を概説し、いかなる損害
が補償の対象になるのか、大きな損害の類型(浄化措置・防止措置、財産損害、間 接損害、純経済的損失、経済的モデルの利用、環境損害およびアドバイザーの利用の 7 つに分けられている)を提示する。第 2 章は、請求の提出手続と評価手続を概説 し、第 3 章は、前記 7 つの類型の損害についてガイドラインを示している。本事 案において被告(国際油濁補償基金)が否認した損害は、浄化措置・防止措置の 類型に該当するものであると解される。これに関連して、請求の手引きに以下の 記述があるので、引用する。
「海上および海岸における汚染損害の範囲を証明し汚染に脆弱な資源を特定す るために合理的な空中査察措置に係る費用は補償される(22)。複数の組織が事故対応 に関与する場合、空中査察措置は重複を回避するように適切に協調して行われる べきである(23)。
浄化措置に係る費用には、人件費や設備・資材の購入費も含まれる(24)。待機中の 設備で実際には配備されなかったものの費用は、当該設備の損耗が低減されたこ とに応じてより低額に評価される(25)。浄化措置の間に消費された設備の清掃・修繕 および資材の交換に係る合理的な費用は補償される(26)。特定の油濁事故のために購 入した設備の費用を評価するに当たり、当該設備が将来の事故または他の目的の ために利用できる場合には、当該設備の残存価値を考慮し、減額がなされる(27)。公 的機関が、緊急時対応計画の一環として、油濁が発生した場合に直ちに対応でき るようにするために設備または資材を購入・維持した場合には、実際に使用され た当該設備または資材の購入費用の合理的な部分が補償される(28)。
浄化措置によってしばしば大量の油および油骸が回収されるところ、回収され た当該油・油骸の保存および処分に要する合理的な費用は補償される(29)。ただし、
もし請求者が回収済みの油を売却することによって収入を得た場合には、当該収 入に係る利益は、通常、補償額から控除される(30)。
浄化措置はしばしば公的機関または準公的機関によって常勤の職員ならびに当 該機関が所有する車両および船舶を利用して行われる(31)。当該機関が負担した合理 的な追加費用(すなわち、当該事故の結果としてのみ生じた費用で当該事故が発生し ていなければ負担しなかったであろうもの)も補償される(32)。また、公的機関または 準公的機関が負担したいわゆる固定費用(常勤職員に対する給与など事故が発生し なかったとしても発生していたであろう費用)の合理的な部分も補償される(33)。しか しながら、補償対象となるには、当該費用が浄化措置の行われた期間に近接して 対応していなければならず、関連の薄い間接費は含まれない(34)。」
また、国際的油濁損害賠償・補償制度の下での賠償・補償範囲について、谷川 久教授によって、以下の指摘がなされているので引用する。
「油濁補償国際基金における経験に基づいて作成された油濁損害の賠償・補償 の範囲に関する基準について上述したが、その許容範囲は、多分、従来の何れの 国における不法行為に基づく損害賠償基準に比較しても、極めて広汎であるとい うことができるであろう。換言すれば、現在の法的判断として許容しうる限界に 迫るものである。このような広汎な損害賠償・補償基準が認められた背景には、
環境損害の被害者に対する救済が一つの至上命題とされ、その救済範囲は十分か つ最大限であるべきだとする一般的風潮が存在していたことを見逃すことができ ない。(中略)この基準が、単に被害者救済という政策的命題のみの下に要求さ れる、法的価値判断において許容しえない範囲の賠償・補償を拒絶していること は評価すべきである(35)。」
請求の手引きに法的拘束力が認められないにしても、谷川教授の指摘のとお り、この手引きが法的に許容しえない範囲の損害賠償・補償を認めているわけで はないことは明らかである。船舶所有者の賠償責任および国際油濁補償基金の補 償責任の履行に際しては、この手引きで示されている一般的基準を参酌しながら も、わが国において一般的な相当因果関係説の下で認められる範囲の賠償・補償 が行われるべきである。請求の手引きが相当因果関係説と両立し得ないわけでは ないが、同手引きは紛争の一方当事者である国際油濁補償基金が作成した補償実 務上の指針であるから、裁判所がこれに拘束されるということにはならないから である。
( 2 )本事案における艦艇燃料費に係る相当因果関係について
前記のとおり、裁判所は、相当因果関係を肯定して原告の請求を全部認容した ところ、被告が否認した各費目のうち最も大きな割合を占める海上自衛隊の艦艇 燃料費257万7939円に関する判断の妥当性を検討する。
裁判所は艦艇燃料費に関する相当因果関係を肯定するに当たり、証拠に基づき 以下の事実を認定した。「海上自衛隊(佐世保地方総監部)は、第七管区海上保安 本部長から、 4 月 7 日午後 5 時30分に航空機による浮流油確認海域及び同付近海 域の浮流油状況調査の要請を、 4 月 8 日午前11時30分には艦艇による状況調査、
防除回収に関する災害派遣要請をそれぞれ受けたこと、海上自衛隊としても、油 が海岸に漂着した場合には、その回収作業がより困難となり、沿岸漁業に重大な 影響を及ぼす可能性があることから、海上における油回収を早期に行う必要があ ると判断したこと、そこで、海上自衛隊は、直ちに艦艇「みくま」及び「おおよ ど」を現場海域に派遣するとともに、「とかち」及び「のしろ」( 4 月 9 日午前11 時に現場海域に到着した。)、「たかつき」、「きくづき」及び「じんつう」( 4 月10日 午前 4 時25分に現場海域に到着した。)の派出要請をし、 4 月 9 日に「せんだい」
を、 4 月10日にも「なるしま」、「もろしま」及び「ひこしま」を更に各派遣し
て、浮流油の探索やその防除回収作業を実施したこと、海上自衛隊は、海上保安 庁による航空偵察の概括的な調査結果を踏まえながら、より具体的な調査を艦艇 探索によったものであり、その結果、これらの艦艇部隊による回収油量も、 4 月 8 日には600リットル、4 月 9 日には9100リットル、4 月10日には 2 万8650リット ル、 4 月11日には 1 万1810リットルに達したこと、もっとも、 4 月12日における 回収油量は 0 リットルであり、対馬防備隊による回収油量も600リットルにとど まったことから、 4 月13日以降の艦艇出動数を減じ、 4 月14日午後 6 時には災害 派遣撤収要請を受け、海上における災害派遣を終結したことの各事実が認められ る。」
海上自衛隊としては、海上保安本部長からの要請を受けて、海上における油の 回収を早期に行う必要があると判断して、各艦艇を現場海域に派遣したものであ り、この判断が不合理であるとは思われない。また、海上保安庁による航空偵察 の概括的調査結果を踏まえて、派遣された各艦艇によって行われた措置によっ て、 5 万0760リットルの油を回収することができた。確かに、 4 月12日における 回収油料は 0 リットルではあったが、これにより、 4 月14日の災害派遣撤収要請 を受けて海上における災害派遣を終結に至ったのであるから、たとえ 4 月12日の 回収油料が 0 リットルであったとしても、同日の艦艇燃料費が無駄な支出であ ったとは到底考えられない。当該艦艇燃料費は相当因果関係の認められる範囲内 の損害であると考える。従って、裁判所の「 4 月12日における作業結果も、その 災害規模に比し、早期に災害派遣の終結に至ることができたこと等に照らすと、
むしろ海上自衛隊による油回収作業の迅速性を反映したものともいえるのである から、 4 月12日分における同艦艇の燃料費との相当因果関係を否定するものでは な」いとの判断は妥当と考える。
なお、国際油濁補償基金は、海上自衛隊艦艇に係る各燃料費は「海上保安庁に よる航空偵察と重複して行われた航空探索のためのものであり、航空偵察に比 し、非効率的であ(36)」ったと主張した。この点、最新の請求の手引きには、前記の とおり、「複数の組織が事故対応に関与する場合、空中査察措置は重複を回避す るように適切に協調して行われるべきである(37)」と記述されている。そのため、最 新の請求の手引きに照らして考えても、同基金が当該費用を否認したことは、当 該手引きに整合的とも思われる。ただ、海上自衛隊は、海上保安本部の要請を受 けて、現場海域に各艦艇を派遣したことから、両機関は適切に協調して事故対応 にあたったと言いうる。また、海上自衛隊は、海上保安庁による航空偵察の概括 的な調査結果を踏まえながら、より具体的な調査を艦艇探索によったものである ことを考慮すると、非効率的な空中査察措置の重複が行われたものではないとも 言いうる。よって、請求の手引きを前提としても、艦艇燃料費は油濁損害の防止
軽減措置費用としての合理性を有すると考えられる。
( 3 )和解による解決の可能性
本事案においては和解による解決も可能であったと思われるが、これには至ら なかった。それは、国際油濁補償基金が請求の手引きに記載されている基準に従 って統一的な処理をしたためであると解される。かかる統一的処理により多くの 油濁事故は裁判上または裁判外の和解により円滑に解決されていると解され、本 事案は統一的処理の結果例外的に判決に至ったものと考えられる。
他方で、1997年 1 月のいわゆるナホトカ号油濁事故(38)においては、時効の成立を 回避するために、漁業者・観光業者・地方公共団体等が1999年11月に福井地方裁 判所に、国および海上災害防止センターが同年12月に東京地方裁判所にそれぞれ 訴訟提起したが、国際油濁補償基金等の尽力もあり2002年に和解により解決さ れた(39)。日本最大の油濁事故と言われているナホトカ号油濁事故をはじめとしてわ が国において発生したタンカー油濁事故の多くは和解により解決されていると思 われる(40)。その結果として、油濁損害賠償法の下で船舶油濁損害の賠償・補償が求 められた事例に関する判例は本判決のみである。その背景事情には、油濁事故の 発生頻度、海事事件に専門的に従事する法律実務家の数、わが国の法的紛争が和 解により解決される一般的な傾向などが挙げられるよう。ただ、最も重要な背景 事情は、わが国が CLC や FC といった国際的油濁損害賠償・補償制度に参加し たことによって、被害者保護のための法的素地が築かれ、油濁事故が国際的に信 頼性のある統一基準によって処理されるため和解による解決になじみやすいとい うことにあると考えられる。筆者は、この点について同制度に対して積極的に評 価している(41)。
4 まとめ
本判決は、いわゆる事例判決ではあるものの、油濁損害賠償法の下で船舶油濁 損害の賠償・補償が求められた事例に関するわが国で唯一の判例として、貴重な ものである。本事案において国際油濁補償基金が請求額の約94.6%を認めながら も、残部を否認して和解による解決を拒否したのは、補償実務上の指針としての 請求の手引きに依拠した統一的な処理を堅持したためであると解される。本事案 においては、請求の手引きを前提としても、前記艦艇燃料費の合理性を肯定しう るのであり、この点に関する国際油濁補償基金の処理には疑問がないではないも のの、同基金の油濁事故に対して統一的な処理を行うという態度それ自体は必ず しも否定されるべきものではないと考える。これにより、同基金の統一的処理に 対する信頼性が高まり、和解による解決になじみやすくなると考えられるからで ある。ただ、筆者は、本事案においてわが国の裁判所が相当因果関係説の下で原
告の請求を認容した判断も妥当と考える。かかる判断が行われたことは、請求の 手引きには法的拘束力がないことの証左でもある。
〔追記〕本稿における一部の記述は、拙稿 「バンカー条約の発効と一般船舶による 油濁損害の補償制度についての考察」海事法202号26頁(2009年)以下に依拠し、
これに修正・加筆を行ったものである。
( 1 ) 事実の概要については、判タ1101号230頁以下の判決文より適宜引用した。
( 2 ) 判決文には、25万7939円と記載されているが、損害一覧表によれば、257万7939円が正しい 記載であると解される。
( 3 ) 判例検索データベースは、LEX/DB インターネットを使用し、「油濁損害賠償」「船」をキ ーワードとして検索を行った。
( 4 ) 判タ1101号230頁。
( 5 ) 東京地決平成 4 年12月15日判タ852号272頁。
( 6 ) 宮崎地判平成27年 1 月23日(LEX/DB25447058)。
( 7 ) なお、本稿の他に本判決に関する簡潔な評釈として、長谷川俊明・国際商事法務30巻12号 1735頁(2002年)がある。
( 8 ) InternationalConventiononCivilLiabilityforOilPollutionDamage,1969.英和対訳につ いては、公益財団法人日本海事センター編『船舶油濁損害賠償保障関係法令・条約集』(成山 堂書店、2011年)92頁以下参照。1992年議定書によって改正された92CLC の英和対訳について は、同60頁以下参照。
( 9 ) InternationalConventionontheEstablishmentofanInternationalFundforCompensation forOilPollutionDamage,1971.英和対訳については、日本海事センター・前掲注( 8 )162頁 以下参照。1992年議定書によって改正された92FC の英和対訳については、同112頁以下参照。
本事案の発生日(1997(平成 9 )年 4 月 3 日)において69CLC および71FC は廃棄されておら ず移行期間中であったこと、また同日において本件船舶の船籍国である韓国について92CLC および92FC が発効していなかったことから(韓国についてこれらが発効したのは1998年 5 月 16日である)、本事案に適用されたのは改正前の69CLC および71FC であると解される。もっ とも、改正の前後で本判決における結論に左右しないことから、本稿においてはより新しい改 正後の制度内容について言及することとする。なお、1971年補償基金は2014年12月31日をもっ て清算消滅したことに注意を要する。
(10) 谷川久教授によれば、「海上用舟艇(独航能力のない油艀、油輸送用のプラスティック・
ソーセージ等も含まれる)」とされている。谷川久「油濁損害賠償保障法について(上)」ジュ リ607号107頁(1976年)。
(11) 各免責事由の内容に関する記述として、時岡泰・谷川久・相良朋紀『逐条 船主責任制限 法・油濁損害賠償保障法』(商事法務研究会、1979年)346頁(谷川久)および谷川・前掲注
(10)108頁ないし109頁を参照。
(12) 貨物として輸送していたばら積み油の量が2000トン未満であったからであろうか。
(13) 「無謀にかつ汚染損害の生ずるおそれがあることを認識して行った作為または不作為」の 意味については、重田晴生「船主責任制限制度」落合誠=江頭憲治郎編集代表『日本海法会創
立百周年祝賀・海法大系』(株式会社商事法務、2003年)67頁以下等参照。
(14) 近江幸治『民法講義Ⅰ民法総則〔第 6 版〕』(成文堂、2008年)375頁、同『民法講義Ⅵ事 務管理・不当利得・不法行為〔第 2 版〕』(成文堂、2007年)210頁ないし212頁、内田貴『民法
Ⅱ〔第 3 版〕債権各論』(東京大学出版会、2011年)471頁参照。もっとも、「20年を時効と解す べきだとの説が主張されるようになり、すでに多数説といえる」とも指摘されている。内田・
前掲書471頁。例えば、吉村良一『不法行為法〔第 4 版〕』(有斐閣、2010年)188頁ないし189頁 等参照。
(15) 時岡・谷川・相良・前掲注(11)365頁。
(16) 国際油濁補償基金を素材とした近時の論稿として、藤田友敬「統一私法条約の実施─国 際油濁補償基金を例に─」北大法学論集65巻 2 号105頁(2014年)参照。
(17) わが国は、「国際油濁補償基金への最大拠出国としてこの制度の実質的な維持・運営にも 多大の貢献をしている」との指摘として、落合誠一「国際的油濁賠償・補償制度の新展開」ジ ュリ1253号163頁(2003年)。
(18) 谷川・前掲注(10)109頁、藤田友敬「海洋環境汚染」落合=江頭編・前掲注(13)93頁 参照。
(19) 損害賠償法の範囲については、民法上、相当因果関係説、保護範囲説、危険性関連説など があるが(近江・前掲注(14)民法講義Ⅳ182頁ないし186頁参照)、本稿においては、諸説の 検討を割愛し、相当因果関係説を前提として論じる。
(20) SeeIOPCFunds,ClaimsManual2008ed.,at5.請求の手引きは CLC および FC の権威あ る正式な解釈として見られるべきではないとされている。
(21) IOPCFunds,ClaimsManual2013ed.,available athttp://www.iopcfunds.org/uploads/tx_
iopcpublications/claims_manual_e.pdf.なお、旧版の日本語訳については、運輸省海上交通局 監修「最新油濁損害賠償保障関係法令集─英和対訳国際条約と国内法─」(成山堂書店、1998 年)339頁以下参照。
(22) Id.at3.1.10.
(23) Id.
(24) Id.at3.1.11.
(25) Id.
(26) Id.
(27) Id.
(28) Id.
(29) Id.at3.1.12.
(30) Id.
(31) Id.at3.1.13.
(32) Id.
(33) Id.at3.1.14.
(34) Id.
(35) 谷川久「油濁損害の賠償・補償の範囲」小室直人=本間輝雄=古瀬村邦夫編『企業と法
(西原寛一先生追悼論文集)(下)』(有斐閣、1995年)349頁。
(36) 判タ1101号231頁。
(37) IOPCFunds,supranote21,at3.1.10.
(38) 当該事故の事実関係や法的問題点については、谷川久「ナホトカ号流出油事故と法的問題 点」ジュリ1117号185頁(1997年)以下参照。同事故の概略は、ロシア船籍のタンカーである ナホトカ号が1997年 1 月 2 日に C 重油約 1 万9000キロリットルを積載してカムチャッカに向け て日本海を航行中に、船首部を折損して沈没した結果、C 重油約6240キロリットルが流出し、
島根県から新潟県に至る 1 府 8 県に及んで漂着したというものである。これにより油の回収・
除去作業等に要した費用のみならず漁業損害や観光業への損害等莫大な損害が生じた。
(39) 和解に至るまでの経緯については、小川洋一「ナホトカ号の油濁損害事故」海と安全517 号27頁(2003年)以下参照。また、ナホトカ号油濁事故の補償額の概要については、除本理史
『環境被害の責任と費用負担』(有斐閣、2007年)168頁および国土交通省「ナホトカ号油流出 事故における油濁損害賠償等請求事件に係る訴訟の和解について」(平成14年 8 月30日)
〈http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha02/10/100830_.html〉参照。これによれば、補償額の合計は 約261億円とされている。
(40) 和解による解決は国際的傾向でもある。SeeMansJacobssen,the International Liability and Compensation Regime for Oil Pollution from Ships ─ International Solutions for a Global Problem,32TUL.MAR.L.J.1,at8,32(2007)および藤田・前掲注(18)97頁参照。ただ、和解に より解決された事案だけでなく判決に至った事案もあり、全ての国際的事案が和解により解決 されているわけではないことに注意を要する。なお、ナホトカ号事故後の日本における最近の タンカー油濁事故としては、2006年11月28日に瀬戸内海においてタンカー昭星丸と韓国籍の貨 物船の衝突事故が発生しこれにより同タンカーから約60トンの油が流出したという事故が挙げ られる。当該事故において、92年基金は、2013年12月31日までに 1 億6106万4193円の補償を行 ったとされている。IOPCFunds,Incidents involving the IOPC Funds 2013,at68─69,available athttp://www.iopcfunds.org/uploads/tx_iopcpublications/incidents2013_e.pdf.
(41) もっとも、国際油濁補償基金の財源は、油受取人(すなわち、石油の輸入業者)による拠 出金に依っており(油濁損害賠償法30条参照)、(特に追加基金に係る2003年議定書により)油 受取人に多大な経済的負担を負わせているという問題点はある。落合・前掲注(17)169頁参 照。