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奄美大島における深層崩壊地の分布

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Academic year: 2022

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(1)奄美大島における深層崩壊地の分布 著者 雑誌名 ページ URL. 寺本 行芳, 陸田 麻美, 下川 悦郎, 地頭薗 隆 「2010年奄美豪雨災害の総合的調査研究」報告書 21‑25 http://hdl.handle.net/10232/13083.

(2) 奄美大島における深層崩壊地の分布 農学部. 寺本行芳・陸田麻美・下川悦郎・地頭薗隆. 1.はじめに 奄美地方では、2010 年 10 月 18 日から同月 21 日にかけて記録的な豪雨となった。累積雨量は 2010 年 10 月 18 日から同月 21 日までに多いところで 900mm に迫り(奄美市住用町 891mm、龍郷 町 881mm)、最大 1 時間雨量は奄美市住用町では 131mm(10 月 20 日 12 時から 13 時)を記録し た。記録的な豪雨に伴って 58 件の土砂災害が発生し、住宅の全壊、半壊および一部損壊は 15 戸 に上った(鹿児島県土木部砂防課、2010 年 11 月 25 日 8 時現在)。土砂災害には、深層崩壊によ るものも多く含まれている。2010 年 10 月の奄美豪雨に伴う被害総額は約 115 億円である(鹿児 島県危機管理防災課、2010 年 11 月 26 日 16 時現在)。 本稿では、奄美大島における深層崩壊地の分布とその地形的背景について、空中写真判読およ び現地調査に基づき予察的に検討した。 2.調査地と方法 笠利町佐仁(以下、笠利) 、龍郷町久場付近(以下、龍郷町①)、龍郷町浦および浦角子(以下、 龍郷町②) 、龍郷町加世田(以下、龍郷町③)、奄美市名瀬朝日町および名瀬大熊(以下、名瀬)、 大和村湯湾釜(以下、大和村①) 、大和村津名久付近(以下、大和村②)、大和村大和浜付近(以 下、大和村③)および住用町西仲間付近(以下、住用)の 9 箇所(図 1)を対象地として、1995 年に撮影された空中写真(縮尺 25000 分の1)を用いて、過去の深層崩壊跡地および斜面のクリ ープ域を判読し、それらの分布図を作成した。また、深層崩壊跡地およびその周辺における地盤 の地質、湧水の有無、斜面の横断形・縦断形、崩壊斜面の向き・傾斜、斜面のクリープ域、クラ ック(開口割れ目)の発生の有無などに関して現地調査を行った。 奄美大島の地質は、珪質スレート、砂岩、チャートおよび玄武岩などから成る湯湾層、粘板岩、 千枚岩、砂岩および玄武岩から成る名瀬層、砂岩、粘板岩などから成る大棚層・大勝層などから 構成される(鹿児島県地質編集委員会・鹿児島県、1990)。各層の一般の走向は NE-SW で、北西 に傾斜している(鹿児島県地学会、1991) 。. 図1. 調査地. 3.深層崩壊地の分布とクリープ域 笠利、龍郷町①および名瀬の各調査地における深層崩壊跡地および斜面のクリープ域の分布図 をそれぞれ図 2、図 3、図 4 に示す。なお、クリープとは、斜面構成物質の重力による塑性変形を いい(鈴木,2000) 、クリープ域とは、斜面構成物質の変形が一定の空間的拡がりを有する斜面を いう。調査地におけるクリープ域の例として、図 2 の a-a’斜面における縦断面図を示す(図 5)。 図 5 によると、斜面のクリープ域の中腹付近は後方からの押し出しによって膨らんでいる。斜面. 21.

(3) 末端付近で発生した崩壊は、この押し出しによる斜面表層部の緩みによって発生したと考えられ る。 図 2、図 3 および図 4 によると、斜面では深層崩壊跡地が判読され、これまでも深層崩壊が繰 り返し発生していることがわかる。判読された深層崩壊は比較的小規模であり、その大部分が集 落に近い低地で発生している。また、斜面では多数のクリープ域が判読される。深層崩壊跡地の 多くは、クリープ域内あるいはその周辺斜面に位置している。. a. a’. 斜面のクリープ域 図2. 笠利における深層崩壊跡地および斜面のクリープ域の分布図. 斜面のクリープ域 図3. 深層崩壊跡地. 深層崩壊跡地. 龍郷町①における深層崩壊跡地および斜面のクリープ域の分布図. 22.

(4) 斜面のクリープ域 図4. 深層崩壊跡地. 名瀬における深層崩壊跡地および斜面のクリープ域の分布図. a’. 標高(m). 笠利. 深層崩壊跡地. a. 距離(m). 図5. 斜面のクリープ域における縦断面図の例(図 3a-a’斜面). 図 6 は、龍郷町②における深層崩壊跡地および斜面のクリープ域の分布図である。同時に図中 には、2010 年 10 月の豪雨によって発生した深層崩壊跡地も示している。2010 年 10 月の豪雨によ って発生した龍郷町浦の深層崩壊は、クリープ域の隣接斜面で発生している。現地調査によると、 この深層崩壊地に隣接するクリープ域内では、過去の深層崩壊跡地や開口割れ目(クラック)が みられた(写真 1、写真 2) 。また、2010 年 10 月の豪雨によって発生した龍郷町浦角子の深層崩 壊は、過去の深層崩壊跡地と同じ場所で発生している。. 23.

(5) 斜面のクリープ域. 深層崩壊跡地. 2010年10月発生の深層崩壊地 図6. 龍郷町②における深層崩壊跡地および斜面のクリープ域の分布図. 写真 1. クリープ域内でみられた過去の深層崩壊跡地. 写真 2. クリープ域内でみられたクラック. 24.

(6) 4.まとめにかえて 空中写真判読結果によると、深層崩壊は今回の豪雨によるものだけでなく、過去にも繰り返し 発生している。深層崩壊の多くは斜面に発達したクリープ域内で発生しており、斜面クリープ域 を把握することによって、深層崩壊の発生場が予知できる可能性がある。今後詳細に検討したい。 本報告で得られた結果を踏まえ、深層崩壊を起源とする土砂災害への対応については、以下の 3 点に留意する必要があろう。 ①深層崩壊は、その発生場の予測が難しく、その規模も大きいため、相対的に小規模なものを 除いてハード対策は難しい。したがって防災・減災は警戒避難対応が主となる。 ②警戒避難対応において特に留意すべき事項として、降雨予測と前兆現象・異常現象の把握が 挙げられる。降雨量がこれまでの観測記録を超えた場合は要注意である。前兆現象・異常現象と しては、小規模な崩壊やクラックの発生、普段見られない箇所からの地下水の湧出、湧水量の変 化などが挙げられる。さらに、深層崩壊の危険性の高いところでは、過去に深層崩壊が発生した 痕跡がみられる場合があり、その痕跡を確認することも重要となる。 ③警戒避難対応においては、これまで経験したことのない現象が起こるかもしれないという問 題意識を持つことが大事である。 謝辞 末筆ではあるが、現地調査と災害資料の提供にあたっては、鹿児島県土木部砂防課、大島支庁 建設課および林務水産課に大変お世話になった。ここに記して謝意を表する。 引用文献 早坂祥三監修 鹿児島県地学会編(1991) :鹿児島県地学のガイド(下) 、コロナ社、146pp. 鹿児島県(2010) :土木部砂防課,大島支庁所建設課・林務水産課の災害資料 鹿児島県地質編集委員会・鹿児島県(1990):鹿児島県の地質,鹿児島県企画部企画調整課,117pp 鈴木隆介(2000):建設技術者のための地形図読図入門3 段丘・丘陵・山地,古今書院,942pp. 竹下敬司・清水晃 (1997): 熊本県坂本村,油谷川左岸の深層崩壊(速報), 砂防学会誌(新砂防),50(3), pp.77-80. 谷口義信 (2003): 2003年7月九州地域豪雨災害調査報告(速報)―水俣土砂災害―,砂防学会誌(新砂防), 56(3), pp.31-35.. 25.

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