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遺伝子修復効率の上昇を目的とした新規

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Academic year: 2021

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博 士 ( 薬 学 ) 土 谷 博 之

学 位 論 文 題 名

遺伝子修復効率の上昇を目的とした新規DNA 断片の開発 学位論文内容の要旨

  遺 伝子疾 患の原 因とな る変興 型塩基 配列を、直接正常型の塩基vie9uへと変換する逍伝子修 復 法は、 疾患の 「完全治癒」が期待できる珂!i!的な逍伝子治療のーつである。迎伝子修復法 の ー つ で あるSlllcilトFragment Homologous Rel)lacemeiit (SFHR)法 では、 正常型 塩基 配列を持つ二本qriaPCRIlji片(400‑800 bp)を熟変性後、変興迎伝予を持つ翁lI胞へ導入する こ とによ って、 いくっ かの疾 患逍伝 子を正常 型へと 逍伝子 修復することがこれまで示されて き た 。 し かし な が ら その修 復効率 は1%前 後と非 常に低 く、ま た塩基 配列に 誤りの 多いPCR 断 片によ る新た な変興 の導入 といっ た危険性もあり、この方法を臨床的にJ羽いるにはさらな る改良が必要である。そこで本和『究では、修復効率の上昇及び安全性の向上を|ヨ的として、

DNAlyf片 の 改良 を 行 い 、臨 床 的 に 用い る こ と が可 能 な 新 しい 避 伝 子 修復 法の開 発を試 み た。

  本 研 究 で は コ ドン34(TCA: Ser) に終Jヒ変 興 (TGA: opal) を 導 入し た 変 異 型Ilyg‑

EGFP逍伝 予 を 標 的と し て 、 正常 型 のTCAへと 変 換す る逍伝 子修復 を行った 。この 遮伝子 修 復 に 用 い るDNA断 片 と して 、606塩 基対 の 二 本t:l'tPCR断 片(l'PCR)及 び二本 鍛制限IVi片

(fRes) に 加Iえ 、606塩 基 の セ ン ス 及 び ア ン チ セ ン ス 配 列 を 持 つ ー 本 鍔lDNA断 片 (I'S ense、fAnliS)を一 本鎖環 状ファー ジミド より調 製した 。rRcsは火 腸繭内 におい て複 製 された プラス ミドより訓製されており、従来のPCR断片であるl')CRに対し、10|i倍、正離 な 塩基配 列を有 してい るもの と考え られる。ファージもまた大腸薗内の複製系を利門jしてい る ため、IIsenseや1.AntiSの塩基 配列に おいても、爪esと同様、非常に高い正碓性を有して い るもの と考え られる 。この ことは 、SF川ミ 法の臨 床応用ヘ 向けた安全性の確立のために、

非常に重要なことであるといえる。

  こ れまで の二本 鎖PCR断片 を用い たSFHR法において、網1|胞I勺への導入面前に行う二本鎖 DNA断 片 の 熱変 性 が 、 高い 修 復 効 率を 得 る た めに 必要で あるこ とが示 されて きた。 このこ と は 、 熱 変性 に よ っ てでき た一本 鎖DNA幽i片がSFHR法 におい て重要 である ことを 示唆して い る 。 し かし な が ら 数百 塩 基 対 の二 本 鎖DNAを効 率よく 完全に 一本鎖 にする ことは 非常に 困 難であ り、そ こで相キ11j鎖を含まない完全な一本鎖DNA断片である、rsense又はI.AntiSを J羽 い る こ と に よ っ て 、 修 復 効 率 の 向 上 が 期 待 で き る の で は な い か と 考 え た 。   こ れら4種 類のDNA断片を用いて遺伝子修復を行った結果、rSenscはfrヽes及び11)Clミに対 し 、 そ れ ぞれ6倍 及 び12倍 高 い 遺 伝予 修 復 効 率を 示した 。この ときfAntiSは、同 じ一本鎖 DNAで あ り なが ら 、rSenseの1/9の値 し か 示 さず 、標的 遺伝子 の転写 反応が 影響し ている ではないかと考えられた。しかしながらその後の検討によって、この配列選択性に!1伝写反応 は関与していないことをIリヨらかとした。また興味深いことに、I.ResはlIPCRに対し、2倍の有 意 な修復 効率の 上昇を 示した 。この 現象には 爪esに 含まれる 大腸薗特異的な塩基修Amが関与 し て い る こと が 示 唆 され、 この効 果がrSenseに対し ても影 響を及 ばしてい ること を明ら か とした。

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  さ ら な る 検 討 の 結 果 、 こ のfSenseを 用 い た 過 伝 予 修 復 に は 、DN AIlli片 の 鎖 長に 最 適 値 が 存 在する こと、 相栩1鎖との分子Ii‖高次榊造、及び一本鎖DNAIiTf片の分子|・´、]高次桝造が捫J制 的 に 作J羽 す る こ と 、 そ の 逍 伝 子 修 復 メ カ ニ ズ ム に 、DNAIUi片 が 櫟 的 プ ラ ス ミ ド へ と イ ン テ グ レ ー ト す る 、 相 同 組 換 え と 思 わ れ る 反 応 がI3U与し て い る こ と、 逍 伝 子 修 復の タ イ ム コ ース は36時 J瑚 で す で に 最 大 値 と な り 飽 和 し て い る こ と 、 な ど が 明 ら か と な っ た 。   最 後 に 、 こ れ ら の 結果 を 基 にrSenseに改 良 を カllえ 、 さ ら な る遺 伝 子 修 彳 夐効 率 の 上 昇 に つ い て検討 を行っ た。

  ま ず こ の 逍 伝 子 修 復に 棚 同 組 換 えの 関 与 が 示 唆 され た こ と か ら、Pai'tial. Dul)lex(PD) DNA断片 を用い ること とした 。こ れまで の棚同xll. 換えのt圷 究にお いて 、‖|1i乳動物荊I|胞内で 1; 川 司 莉1換 え 反 応 の巾 心 的 役 割 を担 っ て い るR 1d51は、こ のPD.DNAl断片 を基質 とした とき 効 率 よ く む } 、m´10相 同 組 換 え 反 応 を 行 う こ と が これ ま で *Ii告 さ れ て き た。 そ の 結 果 、PD. DNA断 片 を 用 い る こ と に よ っ てrscnseに 対 し 最 大2倍 ま で 修 復 効 率 が 上 昇 し 、Itsenscの3. 末 端 に 部 分 的 二 本 錐1を 持 つ3. ‐PD・DNA断 片 が 最 も 高 い修 復 効 率 を 示し た 。 さ ら にこ のPD. DNA断 片 に よ る 越 伝 子 修 復 効 率 の 上 昇 効 果 はDuplex部 分 の 鎖 長 (27塩 基 対 以 上 ) に 依 存 し た 。 ま たDLIplexを 形 成 す る た め の オ リ ゴDNAに 対 し 、DNAの み で は 効 采 が 観 察 で き な か っ た 短 い 釼l・ ・l長 (20塩 基 対 )で あ っ て も 、 二本 鎖の安 定性 を向上 し、さ らにA型ら せん榊 造を取 り やすい ことで 知られ てい る2. ‐〇 ,4 ‐〇ELhylene‐bri(lge(lnLlclcicacid(ENA)を導入した 1`arIial‐HeLer0‐DLll】1ex(PHD)DNA|折 片をJ羽い ることによって、rsenseに刈.し2f尚以上、

修 復 効 率 を上 昇 さ せ る こと がj如 ら かと な っ た 。 また こ の と き 他 の核 駿 ア ナ ロ グ(2| ‐ 〇IMe‐ RNA、BNA)を 月]い たPHD.DNA断片 では効 爿ミは 御!察 されな かっ た。

  次 に 逍 伝 子 修 復 の タイ ム コ ー ス から |Wら か とな っ た 結 果 よ り、361|暑 問 ま で にrSenscの ほ と ん ど が 網1| 胞 内 に おい て 分 解 を 受け て い る ので はない かと 予想し た。そ こで荊lI胞内 のエキ ソ ヌ ク レ ア ー ゼ か らDNA断 片 の 末 端 を 保 護 す る こ と を 目 的 と し て 、 分 子 内 ル ー プ 榊 造 を 取 り I.Sesneの 末 端 に 相 莉n的 な 配 列 を 持 っ オ リ ゴDNAをrSenseに ア ニ ー リ ン グ し 、LooJJe(I‐ DLlplex(l丿l〕 )DNA断 片を 調製し た。 この結 果、LI) .DNA|斫 片によ っても 修復効 率は 最大2倍 ま で 上 昇 し 、 ま た 興 | 昧 深い こ と に 、PD.DNA断 片 と 同 様 、3. 末 端 側 に部 分 的 二 本 鎖を 持 つ こ と によっ て修復 効率は 最大 の値を 示すこ とが明 らかと なっ た。

  本Wf究 で は 、 修 復 メ カ ニ ズ ム に 基 づ い たDNA断 片 の 改 変 と い う 、 よ り 高 い 修 復 効 率 を 持 つDNA断 片 の 開 発 方 法 を 提 案 し 、 従 来 法 と 比 較 し て10〜 20倍 ま で 修 復 効 率 を 改 善 さ せ た 点 に 意 義 が あ る と 考 え て い る 。 今 後 、 本Irof究 で 開 発 し たPD‑DNAIIJj片 、ENA導 入l)I‑ID‑DNA 断 片 、 そ し てIJD‑DNA断 片 を 組 み 合 わ せ 、 最 適 化 し て い き 、 最 も 高 い 修 復 効 率 を 有 す る DNAIlli片 を 開 発 し て い くこ と が 必 要 であ る 。 さ ら にj;Ij同 組換 え に 焦 点 を当 て た 研 究 を行 う こ とに よ っ て 、%ici胞内 のどの よう な分子 が関与 してい るかを |明 らかに してい くこと は、 プく変 重 要 な 意 義 を 伴 っ て い る 。 す な わ ち 、 そ こ でI明 らか に さ れ た 遺伝 予 修 復 に 関与 す る 分 子 に適 し た 基 質 と し て 、 新 た なDNAIlli片 の 検 討 を 行 っ て い く こ と に よ っ て 、 さ ら な る 修 復 効 率 の 向 上が 可 能 に な るも の と 考 え られ る 。

  本 研 究 は 、DNAIljr片 の 改 変 に よりSFHR法に よ る 遺 伝 子修 復 法 を 改 善さ せ た 最 初 の孝lミ 告 で あ り 、 上 記 の よ う な 検 討 を 通 じ 、 逍 伝 子 修 復 法 を 臨床 的 に 応 用 して い く た め の有n〕 な 情 報を も たら す も の で ある 。

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学 位論文審 査の要旨 主査

副査 副査 副査

助教授 教授 教授 助教授

紙 谷 浩 之 原 島 秀 吉 松 田    彰 南 川 典 昭

学 位 論 文 題 名

遺 伝 子 修復 効率 の上昇を 目的と した新規 DNA 断片の開 発

   土 谷 博 之 君 は 、 遺 伝 子 疾 患 の 原 因 と な る 変 異 型 塩 基 配 列 を 、 直 接 正 常 型 の 塩 基 配 列 へ と 変 換 す る 遺 伝 子 修 復 法 に 関 す る 研 究 を 行 っ た 。 こ の 遺 伝 子 治 療 法 は 、 正 常 型 塩 基 配 列 を 持 っ ニ 本 鎖 PCR 断 片 (400 ー 800 bp) や 短 鎖 一 本 鎖 オ リ ゴ ヌ ク レ オ チ ド を 変 異 遺 伝 子 を 持 つ 細 胞 へ 導 入 す る こ と に よ っ て 、 変 異 遺 伝 子 の 正 常 型 遺 伝 子 へ の 配 列 変 換 を 誘 導 す る 方 法 で あ る 。 前 者 の PCR 断 片 を 用 い る 方 法 、 Small‑Fragment Homologous Replacement (SFHR) 法 に お い て は 、 400 ― 800 bp の 二 本 鎖 PCR 断 片 を 加 熱 変 性 後 、 細 胞 に 導 入 し て い た 。 土 谷 君 は 、 DNA 断 片 の 改 良 に よ っ て 、 修 復 効 率 の 上 昇 及 び 安 全 性 の 向 上 を 達 成 可 能 と の 作 業 仮 説 を 立 て 、 様 々 な 研 究 を 行 っ た 。    ま ず 、 土 谷 君 は 、 遺 伝 子 修 復 に 用 い る DNA 断 片 と し て 、 二 本 鎖 PCR 断 片 (fPCR 、 従 来 の 方 法 ) の 他 に 二 本 鎖 制 限 断 片 (fRes) 、 セ ン ス 及 び ア ン チ セ ン ス 配 列 を 有 す る 一 本 鎖 DNA 断 片 (fSense 、 fAntiS) を 一 本 鎖 環 状 フ ァ ー ジ ミ ド よ り 調 製 し た 。 こ れ ら 4 種 類 の DNA 断 片 を 用 い て 遺 伝 子 修 復 を 行 っ た 結 果 、 fSense は fRes 及 ぴ fPCR に 対 し 、 そ れ ぞ れ 6 倍 及 び 12 倍 高 い 遺 伝 子 修 復 効 率 を 示 し た 。 一 方 、 fAntiS は 、 同 じ 一 本 鎖 DNA で あ り な が ら 、 fSense の 1/9 の 値 し か 示 さ な か っ た ( 標 的 遺 伝 子 の 転 写 反 応 が 影 響 し て い る で は な い か と 考 え ら れ た が 、 そ の 後 の 検 討 に よ っ て こ の 配 列 選 択 性 に 転 写 反 応 は 関 与 し て い な い こ と を 明 ら か と し て い る ) 。    土 谷 君 は 、 さ ら に 検 討 を 加 え 、 こ の fSense を 用 い た 遺 伝 子 修 復 に は 、 DNA 断 片 の      ェ   I

鎖 長 に 最 適 値 が 存 在 す る こ と 、 相 補 鎖 と の 分 子 間 高 次 構 造 、 及 び 一 本 鎖 DNA 断 片 の

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分 子内 高次構 造が 抑制 的に 作用 する こと 、大 腸菌蟹有の塩基修飾が遺伝子修復効 率 を促 進する 方向 に作 用す るこ と、 転写 は遺 伝子修復効率に影響しないこと、及 び 、そ の遺伝 子修 復メ カニ ズム に、 DNA 断 片が 標的 プラ スミ ドヘ とイ ンテ グレー ト す る 、 相 同 組 換 え と 思 わ れ る 反 応 が 関 与 し て い る こ と を 明 ら か と し た 。    最後 に土谷 君は 、こ れら の結 果を 基に fSense に改良を加え、さらなる遺伝子修 復 効率 の上昇 にっ いて 検討 を行 った 。ま ずこ の遺伝子修復に相同組換えの関与が 示 唆さ れたこ とか ら、 相同 組換 え反 応の 中心 的役 割を 担っ てい るRad51 と の親和 性を考慮し、fSense の3 ―末端に部分的二本鎖を持つ3 ‑PD −DNA 断片を設計し、

こ れ が fSense の 約 2 倍 の 遺 伝 子 修 復 効 率 能 を 有 す る こ を を示 した 。さら にこ の 3 ―PD −DNA 断片による遺伝子修復効率の上昇効果はduplex 部分の鎖長に依存する ことを示した。またduplex を形成するための核酸として、2 −〇,4 ‑C‑Ethylene‑

bridged nucleic acid (ENA) を 導入 した 場合 に、修復効率が上昇することを明ら か とし た。ま た、 細胞 内の エキ ソヌ クレ アー ゼか らDNA 断片 の末 端を 保護 するこ と を目 的とし て、 分子内ループ構造を取りfSesne の3 ―末端に相補的な配列を持 っ オリ ゴDNA をfSense にア ニー リン グし、 3'‑LD 一DNA 断片を調製した。この3 ,―

LD ― DNA 断 片 に よ っ て も 修 復 効 率 は 2 倍 上 昇 す る こ と を 明 ら か と し た 。    土谷 君が新 たに 設計 した DNA 断片 は、い ずれ も大腸菌内において複製されたDNA よ り 調 製 さ れ て お り 、 従 来の PCR 断片 よりl06 倍 、正 確な 塩基 配列 を有し てい る も のと 考えら れる 。こ のこ とは 、SFHR 法 の臨 床応用ヘ向けた安全性の確立のため に、非常に重要なことであるといえる。

   以上 、土谷 君は 、DNA 断 片の 改変 により SFHR 法に よる 遺伝 子修 復法 を改 善させ

る こと が可能 なこ とを 世界 で初 めて 明ら かに した。さらにこのような検討を加え

る こと により 、遺 伝子 修復 法を 臨床 的に 応用 していくことが可能であると思われ

る 。い ずれの 審査 委員 も、 博士 の学 位の 授与 に十分な研究を行ったものと判断し

た。

参照

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