博 士 ( 工 学 ) 西 村 寿 彦
学 位 論 文 題 名
準光学アンテナ・ミキサに関する基礎研究 学位論文内容の要旨
本 論文 は, 新しい 構造を 持つ 準光学 アンテ ナ・ミ キサ を考案 し,そ の設計 法,特 性評 価につ いて 電磁 界シ ミュレ ータに よって 解析し ,試 作・実 験を行 って明 らかにした研究成果についてまとめたも ので ある .さら に,提 案した準光学アンテナ・ミキサ素子を複数配列することで導かれた新しいビーム 走 査 法 につ いて, 数値計 算によ りそ の動作 原理を 明らか にし, 試作 ,実験 を行っ た研究 成果 にっい ても まと めた.
ミ リ波 帯は ,最近 再び注 目さ れてい る周波 数帯で ある .これ は,急 速な情 報通信 技術 の進歩 と情 報 通 信 手段 の需要 の増加 により ,ミ リ波帯 以外の 周波数 帯で利 用で きる周 波数資 源がほ とん ど飽和 状態 にあ ること に加え て,ミリ波特有の性質を積極的に活用しようという動きが高まってきたことに起 因 す る .さ らに,MMIC (Monolithic Microwave Integrated Circuit)技 術や半 導体 デバイ スの開 発 が進 んで ,ミリ 波帯シ ステム の実用 化に 対する 制限は ほとん ど克服されつっある.このような流れを 受け て, 単なる 回路 技術 にとど まら ず,光 学的要 素を取 り込んだ,いわゆる準光学技術が確立し てき た. 中でも ,準光 学アンテナ・ミキサは,高周波信号(以下RFとする)と局部発振周波(以下LOと する )を 自由空 間にお いてミ キサヘ 直接 入カし ,直後 に中聞 周波数(以下IFとする)ヘ変換すること ので きる サブシ ステム としてミリ波帯システムの実用化の重要な位置を占めている.準光学アンテナ・
ミ キ サ の利 点は,RFとLOを 伝送す る線路 が事実 上存 在しな いので ,ミリ 波帯 の実用 化にお いて大 き な問 題の ーつで ある損 失を取り除くことができる点にある.しかしながら,従来提案されてきた準光学 アン テナ ・ミキ サのほ とんどは,RFとLOをアンテナに対して同じ方向から入カしなくてはならず,その ため にダ イプレ クサを 必要と するな どシ ステム の構造 が複雑 であり,設計の自由度がきわめて低いも ので あっ た.
本 論文で は,コ プレー ナ導 波路給 電によ る2周波マイクロストリップアンテナという新しい構造を持 つ ア ン テナ 素子に 着目し ,ミリ 波帯 での設 計法お よびそ の諸特 性に ついて 電磁界 シミユ レー タを用 いて 明ら かにし た.そ の結果 ,コプ レー ナ導波 路の特 徴を生 かし た,2周波 動作が 可能であるアンテ ナを 開発 するこ とに成 功した.さらに,このアンテナにミキサダイオードを組み込むことで,準光学ア ンテ ナ・ ミキサ が構成 できる .ここ で提 案され た準光 学アン テナ・ミキサは,基板のそれぞれの面で RFとLOを 別々に 入カ するた め,従 来の準 光学ア ンテ ナ・ミ キサで は必須 であ ったダ イプレ クサが 不 要に なっ た.こ れらの 結果に 対して ,マ イクロ 波帯ス ケーリ ングモデルを用いて試作実験し,良好な 動作 を確 認した ,
っ ぎに ,こ の準光 学アン テナ ・ミキ サのRFとLOを基 板の両 面で別 々に 入カす るとい う特徴 から , まっ たく 新しい ビーム 走査が 可能で ある ことを 導いた ,この 新しいビーム走査では,複数の準光学ア ン テ ナ ・ミ キサ素 子を配 列し,LOの入 射角や 周波数 を変 化させ ること で,RFの最大 到来方 向の走 査 が可 能と なる, 従来ビ ーム走 査は, 一般 にフェ イズド アレイ を用いて行われてきたが,本研究で提案 す る ビ ー ム 走 査法 で は 移 相 器な ど のRF回路 は ー 切 存 在せ ず , 非 常 に 単純 な 構 造 で 構成 さ れ て い
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る . そ の た め,RF損 失は 存在せ ず,多 様なシ ステム で利 用でき る.論 文中で は, その動 作原理 につ い て, 具体的 なモデ ルを用 いた数 値計 算によ って明 らかにし,さらに,4素子の準光学アンテナ・ミキ サ を 直 線 状 に配 列 した試 作モデ ルに よって 実証実 験を行 った .その 結果, 計算ど おルビ ーム 走査が 可 能で あるこ とが明 らかと なった .
論文の 後半で は,こ の多 素子配 列準光 学アン テナ・ ミキ サに対 して, ミリ波での製作,高温超伝導 体 ジョ セフソ ン接合 (以下HTS‑JJ)の適用 につい ても 触れた ,さら に,素 子数 などの 変化に ついて検 討 し, パラメ ータの 最適化 をはか った .
以 下 , 本 論文 に よ っ て 得ら れ た 結 果 およ び 考 察 を 各 章に 分 け て 要 約し , そ の 意 義を 述 べ る . 第1章 では ,本論 文の中 心的テ ーマ である ミリ波 帯およ び準光 学ア ンテナ ・ミキ サの歴 史的 背景,
な らび に論文 の概要 を述べ た.
第2章 では ,準光 学アン テナ・ ミキ サを実 現する ため, コプレ ーナ 導波路給電による2周波マイクロ ス 卜リ ップア ンテナ を提案 し,ミリ波帯においての設計と数値解析を行った.その結果,提案したモデ ル は , 比 較 的 容 易 にRF,LOの 両 パ ッ チと 整 合 が と れ,RFとLOの 共 振 周 波 数をRFの8% 以 上 離 す こ とに よって ,異な る2つの周 波数を 基板の 各面 で独立 して, かつ同 時に 動作可 能であ ること が明ら か と な っ た , こ れ は , 準 光 学 ア ン テ ナ ・ ミ キ サ を 実 現 す る う え で , 有 利 な 特 性 で あ る . また, 周波数 が20分 の1と なる マイク ロ波帯 でスケ ーリ ングモ デルを 試作し ,解析 およ び実験を行 っ た . こ れ によ り ,2つ の周 波 数(RFとLO)を基 板の表 裏でそ れぞ れ独立 に受信 可能で あるこ とが 確 認 でき た.
さらに ,試作 モデル のコ プレー ナ導波 路の終 端部分 にミ キサダ イオー ドを装荷し,ミキシング動作 を 確 認 し た .線 路 損失を 取り除 いた 後での 変換利 得は, 約―lOdBであっ た. 故に, ミキサ ダイオ ー ド の 後 段 に ロ ーパ ス フ イ ル タ を組 み 込 む こ とで , 準 光 学 アン テ ナ ・ ミ キサ が 実 現 可 能 であ る . 第3章 では ,多素 子の準 光学ア ンテ ナ・ミ キサを 直線状 に配列 した 新しい ビーム 走査法 を提 案し,
そ の動 作原理 につい て解説 した. LOの入射 角また は周波 数(場 合に よって は両方 )を操 作す ること で , 移 相 器 な ど の 高 周 波 回 路 を 用 い る こ と な くRFの 到 来 方 向 を 走 査で き る こ と が導 か れ た . さらに ,マイ クロ波 帯で4素子 の準 光学ア ンテナ ・ミキサを用いたモデルを試作し,実験を行った,
実 験 結 果 は ,計 算 結 果 と ほ ば一 致 し ,LOの 入 射 角 を 操作 す る ことで ,RFの 到来方 向を走 査でき る こ とが 確認で きた,
第4章 では , ミ リ 波 帯で のMMIC化 モ デ ル の製 作 に 向 け て 必要 な 検 討 事 項を 挙 げ て ,具体 例を 検 討 した .ミキ サダイ オード として ,シ ョット キバリ アダイ オー ドやHTS‑JJを適用した場合のMMIC基板 の 製造 工程を 示し, その実 現可能 性を 示した .また ,コプ レー ナ導波 路を含む導体面の構造を示し,
整 合と フイル タリン グにつ いて議論した.そして,ミキサダイオードを低温で駆動するための測定環境 と して ,本論 文で提 案する 準光学アンテナ・ミキサに適したクライオスタットを考案し,具体例を挙げ て 検討 した.
第5章 では , 素 子 数 ,LOの 入 射 角,R,FとLOの 周 波 数比 を そ れぞれ 変化さ せた ときの 出力特 性を 考 察し ,ビー ム走査 がもっ とも効果的に行われるときのパラメータ値を決定した.このとき検討した出 力 特 性 は , ビー ム 幅,利 得変動 およ びビー ム走査 角であ る. この結 果,LOの 入射 角がエ ンドフ ァイ ア 側に 近いと きより も,ブ ロードサイド側に近いほうが,ビーム幅と利得変動については特性が良く,
ビ ー ム 走 査 角に つ いては その逆 であ ること が示さ れた, した がって ,最適 なパラ メータ 値はLOの入 射 角 が エ ン ド フ ァ イ ア 側 と ブ ロ ー ド サ イ ド 側 の 中 間 に あ る と き が も っ と も 効 果 的 で あ る , 第6章 は結 論を述 べ,論 文全体 の成 果を要 約した .
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学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
準光学アンテナ・ミキサに関する基礎研究
本論文は,新しい構造 を持っ準光学アンテナ・ミキサを考案し,その設計法,特性評価につ いて電磁界シミュレータによって解析し,試作・実験を行って明らかにした研究成果についてま とめたものである,さらに,提案した準光学アンテナ・ミキサ素子を複数配列することで導かれた 新しいビーム走査法につ いて,数値計算によりその動作原理を明らかにし,試作,実験を行つ た研究成果についてもまとめた.
ミリ波帯は,最近再び 注目されている周波数帯である.これは,急速な情報通信技術の進歩 と情報通信手段の需要の 増加により,ミリ波帯以外の周波数帯で利用できる周波数資源がほと んど飽和状態にあることに加えて,ミリ波特有の性質を積極的に活用しようという動きが高まって きたことに起因する.さ らに,MMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit)技術や半導 体デバイスの開発が進ん で,ミリ波帯システムの実用化に対する制限はほとんど克服されつつ ある.このような流れを受けて,単なる 回路 技術にとどまらず,光学的要素を取り込んだ,いわ ゆる準光学技術が確立してきた.中でも,準光学アンテナ・ミキサは,高周波信号(以下RFとす る)と局部発振周波(以 下LOとする)を自由空間においてミキサヘ直接入カし,直後に中間周 波数(以下IFとする)へ変換することのできるサブシステムとしてミリ波帯システムの実用化の重 要な 位置を占めている.準光学ア ンテナ・ミキサの利点は,RFとLOを伝送する線路が事実 上 存在しなぃので,ミリ波帯の実用化において大きな問題のーつである損失を取り除くことができ る点にある.しかしながら,従来提案されてきた準光学アンテナ・ミキサのほとんどは、RFとLO をアンテナに対して同じ方向から入カしなくてはならず,そのためにダイプレクサを必要とする な ど シ ス テ ム の 構 造 が 複 雑 で あ り , 設 計 の 自 由 度 が き わ め て 低 い も の で あ っ た . 本論文では,コプレーナ導波路給電による2周波マイクロストリップアンテナという新しい構造 を持っアンテナ素子に着 目し,ミリ波帯での設計法およびその諸特性について電磁界シミュレ ータを用いて明らかにし た.その結果,コプレーナ導波路の特徴を生かした,2周波動作が可能
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彦 一
則 孝
精
喜
正
恭
藤
永
柴
川
伊
宮
小
小
授
授
授
授
教
教
教
教
査
査
査
査
主
副
副
副
であるアンテナを開発することに成功した,さらに,このアンテナにミキサダイオードを組み込む ことで,準光学アンテナ・ミキサが構成できる.ここで提案された準光学アンテナ・ミキサは,基板 のそれぞ れの面でRFとLOを別々に入 カするため,従来の準光学ア ンテナ・ミキサでは必須で あったダイプレクサが不要になった.これらの結果に対して,マイクロ波帯スケーリングモデルを 用いて試作実験し,良好な動作を確認した.
っぎに,この準光学アンテ ナ・ミキサのRFとLOを基板の両面で別々に入カするという特徴か ら,まったく新しいビーム走査が可能であることを導いた.この新しいビーム走査では,複数の 準光学アンテナ・ミキサ素子 を配列し,LOの入射角や周波数を変化させることで,RFの最大到 来方向の走査が可能となる.従来ビーム走査は,一般にフェイズドアレイを用いて行われてきた が, 本研 究で 提案 す るビ ーム 走査 法で は 移相 器な どのRF回路は 一切存在せず,非常に単純 な構造で構成されている.そ のため,RF損失は存在せず,多様なシステムで利用できる.論文 中では,その動作原理につい て,具体的なモデルを用いた数値計算によって明らかにし,さら に,4素子の準光学アンテナ ・ミキサを直線状に配列した 試作モデルによって実証実験を行っ た . そ の 結 果 , 計 算 ど お ル ビ ー ム 走 査 が 可 能 で あ る こ と が 明 ら か と な っ た . 論文の後半では,この多素子配列準光学アンテナ・ミキサに対して,ミリ波での製作,高温超 伝導体ジョセフソン接合の適用についても触れた.さらに,素子数などの変化について検討し,
パラメータの最適化をはかった.
本論文の成果として,準光学アンテナ・ミキサの新しい構造を示し,また,これを利用したビ ーム走査に関する原理を明らかにすることができた,さらに,解析および実験によって良好な特 性が得られることを確認した.
これを要するに,著者は, 新しい準光学アンテナ・ミキサ素子に関する詳細な考察およびこ れらを複数個用いた多素子配 列準光学アンテナ・ミキサによる新ビーム走査法に関する有益な 知見を得たものであり,アンテナ工学およびミリ波工学の分野に貢献するところ大なるものがあ る,
よ っ て 著 者は ,北 海 道大 学博 士( 工学 ) の学 位を 授与 され る 資格 ある もの と 認め る,
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