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図書館員の文献紹介と 資料の活用
■はじめに
近年、世界的に地震や津波の発生が多くなっ てきています。日本では古くから地震が多発し、
何度も津波の被害を経験した記録が残されてい ます。明治の文豪ラフカディオ・ハーン(小泉 八雲、1850-1904)は、安政元(1854)年の12 月23日(旧暦)に起こった「安政の東海地震」
を発端に、その翌日に発生した「安政の南海地 震」に誘発された津波が襲来した際の紀州の 人々の振る舞いを“A living God”(『生神』)と して随筆に著しました。これはハーンが主に欧 米の人々に向けて書いたものですが、この作品 が貢献して我が国でも災害時の冷静沈着な振る 舞いの模範として現在に伝わっています。ここ では、平井呈一氏の名訳(1)に沿ってこの話を 振り返りたいと思います。
■「生神」とは
この『生神』とは和歌山の有田郡広村(現在 の広川町)に地震に引き続いて、大津波が押し 寄せてきた時の話です。事前に自然環境の変化 から津波の到来を察知し、取り入れ間近の稲束 に次々と火を放ち、村人を高台に誘導して全員 の命を救った濱口梧陵(1820-1885)のことを 取り上げたものです。
この二つの大地震と津波が発生した安政元
(1854)年の12月23日は、嘉永から改元(11月 27日)されて一ヶ月になろうとする時期でした。
約9 ヶ月前の嘉永7年の3月3日には徳川幕府と ペリー提督の間で日米和親条約が結ばれていま した。ハーンの『生神』の主人公のモデルとなっ た「五兵衛」、すなわち濱口梧陵は文政三(1820)
年の生まれで、34歳の頃に津波を体験していた
のでした。
この短編の随筆は、「一」から「三」に別れ ており、それぞれの番号に言葉は添えられてい ません。これは「部」、もしくは「章」と理解 すべきでしょう。元々「神」に関心が高かった ハーンは「一」で詳しく日本の神と神社を紹介 し、「二」では全国の村邑に共通した取り決め や風俗と習慣を述べています。これによって、
この作品の主題『生神』の意味が欧米の人々に もわかるようになっています。
その「三」の冒頭で、「これから語る浜口五 兵衛のはなしは、明治を去ることほど遠い昔に、
日本の国のべつの海岸地方に、やはりツナミの 災害がおこったときの話である。」と述べ、ど の地方の出来事か分からなくしています。しか し、前述の「一」の末尾に「国の神というので はなくて……村邑の神とか、一地域の神として 祭られたのである。たとえば、紀州有田郡の百 姓で生きているうちに神に祭られた、浜口五兵 衛のばあいなどがそれだ。」としていることか ら、私たち、後世の日本人には和歌山を襲っ た安政の南海地震と津波であることを連想さ
ラフカディオ・ハーンの
『生神』が「世界津波の日」につながった話
奥 正敬
Gleaning in Buddha-fi elds.(本学図書館所蔵)