アメリカ株式市場における公募・私募の 境界の曖昧化について
佐 賀 卓 雄
要 旨
1990年代後半より現在に至るまで,アメリカ株式市場においては上場会社数が ほぼ一貫して減少している。これを受けて,議会,政府,規制当局はこれまで株 式市場の活性化策を実施してきた。
上場会社数の減少の原因としては,IPO の減少や M&A による上場廃止などが あげられてきた。規制強化による上場会社の減少としては,2002年の SOX 法に 基づく内部統制報告書の提出の義務づけがしばしば指摘されるが,上場会社数の 減少は1997年より始まっており,時期的にズレがある。また,統計的にも SOX 法を契機に IPO の減少や上場廃止の増加という事実は確認できない。同じよう に,2012年の JOBS 法も中小の IPO の増加には結びついていない。
上場会社数の減少は,株式市場の構造変化から生じる様々な要因が絡み合って おり,特に私募市場の規制緩和により公開市場との境界が曖昧になっていること が大きい。非上場会社が既存の上場会社を殻会社(shell company)として,そ れに買収された後に社名を変更して上場会社に変身するという,裏口上場
(backdoor listing)も増加している(reverse merger)。また,金融的に困難に 陥った上場会社が私募で資本調達する一方で,あらかじめ発行登録の手続きも 行って投資家が短期の転売によるリスク回避の道筋をつけることが行われたりす る(private investment in public equity)。
このような金融取引は公募と私募の境界が曖昧になっていることを示している
が,これらのことが上場会社数の減少として現れているのである。さらに,非公
開株の流通市場も形成されており,この面でも公開市場との差異は小さくなって
いる。また,同じく私募市場の規制緩和によって,ヘッジ・ファンド(HF),ベ
ンチャー・キャピタル(VC),プライベート・エクィティ(PE)などの専門性
の高い投資家の資金力が強化され,エグジット(出口)としての IPO を急がな
くなっている面もある。ユニコーンが増加しているのも同じ理由による。
目 次 はじめに
Ⅰ.アメリカ株式公開市場の構造変化
Ⅱ.私募市場における規制緩和
Ⅲ.公募・私募の境界の曖昧化とユニコーンの増加 終りに
ソフトウェア,コンピュータなどの先端技術部門のスタートアップ企業の間で は,IPO により十分な知識のない投資家が増加するのを敬遠する傾向もあるとい う。むしろ,GAFA などの大手情報関連企業に買収されることを名誉と考え,
M&A が重要な出口戦略の一つになっている。
このように,IPO の減少,上場会社数の減少は様々な要因によってもたらされ ており,株式市場の規制の見直しだけでは対応できない問題である。その場合で も,資本形成と投資家保護のバランスという証券規制の基本的視点は遵守される べきである。
はじめに
1990年代後半から2008年のリーマンショック を挟んだ現在までの20数年間に,アメリカ株式 市場の様相は大きく変化したようにみえる。
顕著な特徴の一つは,1996年をピークに現在 に至るまで上場会社数がほぼ一貫して減少して いることである。その一つの原因は株式の新規 公開(Initial Public Offering,IPO)の減少で あるが,それ以外にも M&A や上場廃止によ る上場会社数の減少がある。しかし,上場会社 の時価総額はこの間に約 4 倍に増加しているか ら,単純に株式公開市場の衰退とはいえない。
他方では,時価総額が10億ドルを越えるユニ コーンといわれる非公開会社が増加しているこ とがもう一つの特徴である。この背景として,
ベンチャー・キャピタル(VC)などの資金動 員力が強まったために,必ずしも IPO を急が
なくなったことが指摘されている。
このような構造変化を背景に,議会,政府,
SEC,および SIFMA などが,その原因分析と ともに,株式市場の活性化策に取り組み,立法 や規則の制定が行われてきた。SOX 法,JOBS 法,ドッド・フランク法のような,この間に行 われた規制の見直し―必ずしも規制の強化ばか りではないが―が原因としてあげられることが 多い。しかし,上場会社数や IPO の減少はそ れ以前から生じており,時期的なズレがある。
もちろん,それ以前の規制の見直しが影響を与 えている可能性があるが,それらについても整 理が必要であろう。
上場会社数の減少は多様な要因が絡み合って 起きていると思われるが,とりわけ私募市場の 規制緩和により,私募による発行が公募による 発行を凌ぐほど増加していることが最大の要因 であると考えられる。また,ソフトウェア,エ レクトロニクス,コンピュータなどでの M&A
による上場会社数の減少が顕著であることか ら,これらの産業分野での急速な技術革新に対 応した戦略や組織構造の変化に対応した動きで あることも指摘されている。
本稿では,私募市場における規制緩和により 公募市場との区分が曖昧化する一方,私募市場 の拡大が IPO の減少,M&A などによる上場 廃止の増加,上場会社数の減少の背景にあるこ とを分析するが,その背景であるアメリカ株式 市場の構造変化についても言及する。
Ⅰ.アメリカ株式公開市場の構造 変化
株式市場は公開市場と私募市場に分けられ る
1)
。1980年代以降の私募についての規制緩和 により,私募市場は大きく拡大し,2017年には 公募による資金調達が1.5兆ドルに対して,私 募によるそれは 3 兆ドルを記録している。最初に,公開市場の現状をみよう。アメリカ に は,2019年 5 月 に シ リ コ ン バ レ ー の ベ ン チャー・キャピタリストや起業家が創設したロ ン グ・ タ ー ム・ ス ト ッ ク・ エ ク ス チ ェ ン ジ
(Long Term Stock Exchange),ウォール街の 主要業者が SEC に創設の申請を行ったメン バーズ・エクスチェンジ(The Members Ex�Ex�
change,MEMX)(2020年中頃までに創設予 定 ) を 加 え て, 現 在,15の 証 券 取 引 所 が あ る
2)
。 こ の う ち, ニ ュ ー ヨ ー ク 証 券 取 引 所(New York Stock Exchange, NYSE)と NASDAQ が中心となる 2 大取引所であり,そ れ以外の取引所は「非上場取引特権」(Unlisted Trading Privilege, UTP)により他の取引所に 上場されている銘柄の取引が中心である。
アメリカの企業数は1996年に4,693,080社,
2003年に初めて500万社を越える5,007,771社,
その後2010年には4,994,080社に減少したもの の,2012年には5,030,962社に回復している。
上場会社数は1996年に8,025社のピークを記録 し,この年の企業総数に対する割合は0.171%
で,1977年以降の最高水準を記録している。こ の比率は2005年以降,0.1%を下回り,上場会 社が1996年の約半分の4,102社に減少した2012 年には0.082%に低下している
3)
。上場会社数 からみると株式市場が停滞している印象がある が,時価総額などの指標からは必ずしもそうは いえない。取引所の上場会社数と時価総額の推移をみる と,前者は大きく減少しているのに対して,後 者は2000年代初頭の IT バブルの崩壊や2008年 の金融危機の際には大きく落ち込んでいるもの の,2013年以降は回復している(図表 1 )。対 GDP 比でみても,2017年には1996年以来のピー クを記録している(図表 2 )。ただし,その構 成をみると,時価総額が 1 億ドル以下の会社数 の割合が減少し,上場会社の平均時価総額が上 昇している,つまり,時価総額でみた上場会社 の規模が大きくなっていることが分かる(図表 3 )。上場会社の平均時価総額は1996年には18 億ドルであったが,2017年にはその 4 倍の73億 ドルに増加している。また,2017年初めには,
時価総額が500億ドル以上の上場会社140社が時 価総額全体の50%を占め,時価総額が最大の 1 %の上場会社が29%を占めていた
4)
。このよ うに,上場会社間の規模の格差も広がってい る。上場会社数が大きく減少している一方で,時 価総額は増加しているのであるから,単純に停 滞しているとはいえない。しかし,前者の原因 としては,IPO の減少や M&A などによる上
$25,000,000
$20,000,000
$15,000,000
$10,000,000
$0
$5,000,000
0 2,000
1,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 8,000
2015
2013 2011
2009
2007 2005
2003 2001
1999 1997
1995 1993
1991 1989
1987
1985
1979
1977 1975 1983 1981
社 ドル
上場企業数
時価総額
図表 1 上場会社数と時価総額
〔出所〕 Doidge et al.[2018]
図表 2 時価総額対 GDP 比(%)の推移
〔出所〕 FRB of St. Louis, FRED Economic Data-Stock Market Capialization to GDP for US,より作成
1997 /1/1
1999 /1/1
2001 /1/1
2003 /1/1
2005 /1/1
2007 /1/1
2009 /1/1
2011 /1/1
2013 /1/1
2015 /1/1
2016 /1/1
2017 /1/1 1996/1/1 1998
/1/1 2000
/1/1 2002
/1/1 2004
/1/1 2006
/1/1 2008
/1/1 2010
/1/1 2012
/1/1 2014
/1/1 20.00
−
40.00
60.00
80.00
100.00
120.00
140.00
160.00
180.00
場廃止があるため,活性化しているともいえな い。
IPO 数 は,1999年 以 前 の 年 間547件 に 対 し て,99年以降は年間192件,約 3 分の 1 近い水 準まで減少している(図表 4 )。しかも,時価 総額が 5 千万ドル以下の中小の IPO の減少が 顕著である。図表 4 の出所は議会調査局(Con�Con�
gressional Research Service) で あ る が, 政 府,規制関係者が IPO の減少に危機意識を募 らせている背景を良く表していると思われる。
IPO の減少については,様々な要因が指摘さ れている。一つは規制強化の影響である。2000 年代初頭,IT バブルの発生とその崩壊によっ て顕在化した企業(会計)スキャンダルによっ て,サーベンス・オクスレー(SOX)法は内 部統制システムの導入や情報開示規制を強化し た。この結果,規制コストが増加し,それを忌
避した企業が非公開会社化に踏み切る例もあっ た。スタートアップの企業にとってはもっと負 担が重いのである。
し か し, こ の 過 剰 規 制 説(the regulatory overreach hypothesis) に は 有 力 な 反 論 が あ る
5)
。2002年の SOX 法により,上場会社は監 査証明付きの内部統制報告書の提出を義務づけ られた(404条)。これに伴うコスト負担に配慮 して,SEC は企業規模に応じて段階的に施行 することにしたが,これを忌避して IPO を控 えたり,上場会社の一部が海外取引所への上場 に,さらには上場廃止に踏み切る動きがみられ ることが指摘された。しかし,上場会社数の減 少,その企業総数に対する割合は一貫して低下 おり,特に SOX 法成立後に大きく減少した事 実はない。さらに,上場廃止(delist)も SOX 法成立後に大きく増加してはいない6)
。$7,000,000
$4,000,000
$5,000,000
$6,000,000
$3,000,000
$2,000,000
$1,000,000
$0 0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
1991 1993 1995 1997 1999
1981 1983 1985 1987 1989
1975 1977 1979 2001 2003 2005 2007 2009 2011 2013 2015
ドル
図表 3 時価総額別の上場会社数の内訳(注) 左目盛は時価総額が 1 億ドル以下の会社の割合(黒実線),右目盛は平均時価総額(2015年のドル平価による)
〔出所〕 Doidge et al.[2018]
これらの事実を根拠に,Gao et al.[2013]
は,「多角化仮説」(the economies of scope hy�hy�
pothesis)を主張する。経済構造の変化により 小企業の収益性は低下しており,独立の存在と して事業を継続するよりも,同一あるいは関連 産業の企業に買収され,大きな組織の一部と なって多角化の利益を実現したり,新しい技術 をより迅速に市場に登場させることができる。
多くの産業において技術革新のスピードに対応 するために素早く大規模化する重要性が高まっ ていると主張する。たしかに,M&A による上 場会社数の減少は2000年代以降,高い水準で推 移しているが,上場会社数の減少全体の10から 20%程度を占めるに過ぎず(図表 5 ),それが M&A の増加によるものであるかどうかははっ きりしない。
この主張と一部分は重なるが,Govindarajan et al.[2018]は,純上場廃止会社数(上場会 社廃止数マイナス上場会社数)が最多の産業部 門がソフトウェア,エレクトロニックス,コン ピュータ産業であることに注目し,これらの産 業ではデジタル・ストラテジーと急速な技術の
陳腐化が既存の上場会社の死亡率(mortality rate)を高めているという。この傾向こそ,上 場会社が減少している最大の原因であると主張 する。これらの産業部門におけるデジタル化に ともなう組織構造の変化とは,無形資産や知識 のインプットが重要になり,それに必要な人材 などの経営資源を確保するために,専門性の高 い VC,PE などの投資家を選好する傾向が強 まった。また,デジタルなプラットフォームを 活用して,アウトソーシングによって調達する ことも行われる。したがって,資金調達面で IPO によって新たに株主になるこれらの知識に 乏しい大手の機関投資家や一般の個人投資家を 必ずしも歓迎しない傾向が強くなっているとい うのである。
これらの主張は大変興味深いのであるが,残 念ながら現時点では十分な体系的かつ実証的分 析に裏付けられているとはいえず,今後の分析 の深化が待たれるところである。
第二に,同じく規制の影響であるが,2012年 4 月の JOBS 法(Jumpstart our Business Startups Act)により私募市場の規制が緩和さ 図表 4 IPO 数の推移
〔出所〕 CRS[2018], p.14
1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009 2011 1996
1995 1994 1993 1992
1991 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010
100 0 200 300 400 500 600 700 800
900 1999年以前の平均
547 IPOs/年 1999年以後の平均
192 IPOs/年 社
レギュレーション ATS
グラス・スティーガル 法の見直し
レギュレーション ドッド・フランク法 SOX法 アナリスト問題に
ついての包括的和解
5 千万ドル以下 5 千万ドル以上 規制の実施
NMS
れ,非自衛力認定投資家数が499人を越えない という条件で,それまでの登録免除の上限で あった投資家数500人が2,000人まで引き上げら れ,資金調達が容易になったことである。「自 衛力認定投資家」(accredited investor)とい うのは,1982年のレギュレーション D と共に 導入された概念で,証券法の登録プロセスによ る保護を必要としない,金融知識,洗練度,リ スク負担力の代理指標として富を基準にしてい る。銀行や投資会社だけではなく,純資産が 100万ドル以上,あるいは過去 2 年間の年所得 が20万ドル(妻帯者の場合は合算所得が30万ド ル)以上の個人も含まれる
7)
。第三に,金融緩和による資金の累積である。
運用資産額は2000年の 1 兆ドルから17年には 5 兆ドルに増加している
8)
。この豊富な資金を背 景に,メガ VC は必ずしも IPO を急がなくな り,また豊富な資金を抱える GAFA などのプラットフォーム企業に M&A を仲介したりし ている。
しかし,先にみたように,IPO の推移をみる と,その減少はこれらの規制前の1997年から始 まっており,時期的なズレがある。この関連で 注目すべきは,1996年に成立した証券改革法
(National Securities Markets Improvement Act of 1996, NSMIA)である。同法は,基本 的には連邦証券法と州の証券法(ブルー・スカ イ法)との重複を避けるために,「対象」証券
(“covered” securities)についてブルー・スカ イ法の規制対象外としたものである。「対象」
証券には証券取引所や NASDAQ 上場証券など が含まれるが,SEC のレギュレーション D に 基づく規則506による登録免除発行,つまり私 募についても州法の規制対象外としたのであ る。証券法の発行登録が義務づけられている公 募とは異なり,そもそも私募はそれが免除され 図表 5 上場会社の買収による非上場化(1977-2014年)
(注) 左目盛は買収により非上場化した会社数の非上場化会社数全体に対する割合(折線グラフ),右目盛はその時価総額 の割合(棒グラフ)
〔出所〕 Ljungqvist et al.[2016]
0 % 5 % 10%
15%
20%
25%
0 % 30%
20%
10%
40%
50%
60%
1991 1993 1995 1997 1999 1981 1983 1985 1987 1989
1977 1979 2001 2003 2005 2007 2009 2011 2013
ているから,州法の規制の対象外とすることは 何の規制も受けないことになり,「規制上のブ ラックホール」を生み出すことになったと評価 されるのである
9)
。私募についての規制緩和が IPO の減少の発端になった最初の契機である。VC や PE は,同法によって自由化された私 募によって資金調達力を高め,スタートアップ 企業のレイトステージの資金調達にもコミット できるようになったのである
10)
。Ⅱ.私募市場における規制緩和
1933年証券法と34年証券取引所法が制定され た時には,公募と私募の区別は明確であった。
前者は証券発行に対する規制であり,証券の発 行にはすべての重要情報を開示した登録届出書
(Registration Statement)の提出が求められ た。後者は流通市場に対する規制であり,年次 報 告 書( フ ォ ー ム10-K) や 四 半 期 報 告 書
(フォーム10-Q)などの継続的な情報開示を 義務づけている。
しかし,発行開示規制は登録費用などのコス トがかさみ,零細な企業にとっては資金調達そ のものが禁止される効果を持つため,証券法 4 条(a)( 2 )では,公募(public offering)を 伴わない募集すなわち私募における登録義務の 除外を規定している。この判断は SEC に任さ れてきたが,実務に携わる弁護士などから SEC に対して法的不確実性を取り除く「セー フハーバー・ルール」の制定が求められた。こ のような動きを受けて,SEC は1982年にレギュ レーションDを創設した。
その後,政府の資本形成促進策,また資本調 達機能の強化を求める産業界やファンドなどの 投資家からの要望を背景に,私募の形態は徐々
に拡大し,近年では,公募による資金調達を越 える金額を記録している。2012年の JOBS 法は 新たに新興成長企業(EGC, emerging growth company)という定義を設け(直前事業年度 の年間総収益が10億ドル未満の発行会社),資 本調達面での規制を緩和している。
私募の中でも,最も利用されているのがレ ギュレーションDと規則144A に基づく発行で ある(図表 6 )。規則144A はほとんどが債券 の発行に利用され,最初,少数の金融仲介業者 に対して発行され,その後,適格機関投資家へ の転売を認めている。JOBS 法ではこの転売の 制限について撤廃している。図表 6 では「その 他私募」に一括されているが,JOBS 法はレ ギュレーションAについても改正,緩和を行っ ている。まず,発行上限額と12ヶ月以内の転売
(secondary sales)についてティア 1 (州法の 登録が必要,発行上限額 2 千万ドル,転売上限 額600万ドル)とティア 2 (州法の登録は免 除,発行上限額 5 千万ドル,転売上限額1,500 万ドル)に区分した。JOBS 法制定以前には募 集に先立って募集への関心の有無を投資家に打 診することはオファーに相当するため禁止され ていたが,いずれの発行に対しても,機関投資 家への事前調査(testing the water)を解禁し た
11)
。JOBS 法はレギュレーションDの規則506で は私募(private offering)に当って自衛力認定 投資家に対する一般的なマーケティングと勧誘
(general solicitation)の禁止を撤廃した。これ により,公募と私募の境界が極めて曖昧になっ たことから,JOBS 法の中でも最も重要な規定 である
12)
。いくつかある私募の方法の中では,レギュ レーションDの規則506(b)が最も良く利用さ
れている。これは元々あった規則506を506(b)
と506(c)に分けたもので,違いは新設された 後者では一般的な勧誘が認められていることで ある。両規則には上限額はないが,規則506(b)
は非自衛力認定投資家は35人までという条件が ある。規則506(c)は第三者による証明のある 自衛力認定投資家であれば,無制限である。
しかし,実際には元からある規則506(b)の 利用が圧倒的に多い。これは,従来の規則506 あるいは新設の506(b)は自衛力認定投資家で あることを自己申告すれば良いのに対して,新 設の規則506(c)が投資家が自衛力認定投資家 であることの第三者による証明を求めているこ とが大きな理由の一つにあげられている。投資 家が個人的な資産や収入に関する情報を開示す るのを敬遠しているのが原因とみられている
13)
。1982年に自衛力認定投資家という範疇が導入 された時には,富裕層であれば,金融知識,投 資経験,そして仮に投資に失敗した場合でもそ
の損失に耐えることができるという前提があっ た。しかし,その後の物価上昇を考慮すると,
この前提はかなり疑わしくなっている。また,
そもそも金融資産や収入を金融知識や投資経験 の代理指標とみなすことには疑問が提起されて いる。特に,401(K)プランや個人退職勘定
(IRA)などの年金収入に頼っている高齢者は この対象からは除外するべきだという意見も強 い
14)
。Ⅲ.公募・私募の境界の曖昧化と ユニコーンの増加
私募に対する規制緩和により,私募市場は大 きく拡大している。転売制限は残っているもの の,投資家の範囲を限定しているとはいえ一般 的なマーケティングや勧誘が認められるように なったため,公募と私募の境界は以前ほど明確 ではなくなっている。
2,000 1,800 1,600 1,400 1,200 1,000 800
600 400 200 0
公募債券 公募株式 レギュレーション D 規則144A
調達額 その他私募
2017 2016 2015 2014 2013 2012 2011 2010 2009
図表 6 募集方法別資本調達額の推移(2009-2017年,10億ドル)(注) 「その他私募」はレギュレーション S, 証券法4条(a)(2),レギュレーション・クラウドファンディング,レギュレーション A によ募集である。
〔出所〕 SEC(DERA)[2018],p.8
これに拍車を駆けているのが,新たな金融取 引と私募証券のセカンダリー・マーケットの登 場である。新たな金融方法として注目されるの は,リバース・マージャー(reverse merger,
RM)と PIPE(private investment in public eq�eq�
uity)である。リバース・マージャーは非上場 企業が殻となる上場会社(shell company)の 株式発行によって買収される。非上場会社は殻 会社の過半の株式を保有し,実質的な支配権を 取得し,社名を変更する。こうして,上場を果 たすのである。
RM は資本市場へのアクセスが困難なスター トアップのハイテク企業や中国企業によって利 用されている。2004年から2008年の間に,RM は1,065件,これに対して IPO は672件であっ た
15)
。また,公開会社会計監査委員会(Public Company Accounting Oversight Board,PCAOB)によると,2007年 1 月 1 日から2010 年 3 月31日の間に,159社の中国企業が RM を 行っている。その動機は IPO であれば半年以 上の時間がかかり,規制当局や引受証券会社の 審査など煩わしい手続きと費用が必要である が,RM では 3 ヶ月程度で完了し,それらの手 続きを省略できるからである。もっとも,この 裏口上場(backdoor listing)は通常の上場手 続きを踏まない方法であり,財務内容等に問題 がある場合が多いため,その42%が最初の 3 年 間で上場廃止になっているという
16)
。RM による裏口上場は上場企業数が増加する 訳でもないし,新たな資本の調達を行う訳でも ない。こうした金融取引が IPO や上場会社数 の減少に結び付いている面がある。
もう一つは,PIPE である。金融的に困難に ある上場会社が私募で資金調達を行おうとする と,場合によっては数ヶ月で倒産に追い込まれ
るかもしれない状況で,投資家はその保有にと もなうリスクを回避するために,ごく短期間で 転売できる条件で応募しようとする。それに応 えるためには,発行会社は SEC に登録届出書 を提出しそれが受理されれば,転売が可能にな る途を開いておくのである。リスクの高い取引 であるから,市場価格よりも大幅なディスカウ ントで取引され,取引相手はヘッジ・ファンド
(HF),VC,EF などである
17)
。RM にしろ PIPE にしろ,公募と私募にわた る取引であり,両市場の境界がはっきりしなく なっていることの現れといえよう。
次に,非上場株式を売買する市場(secondary market)の登場である。シリコンバレーのス タートアップ企業は優秀な経営者や従業員を確 保するために,ストック・オプションを積極的 に活用している。しかし,知名度が低く情報も ほとんど手に入らないこれらの株式を売却して 換金しようと思ってもほとんど不可能である。
そうしたニーズに応えているのが,2004年に創 業したセカンドマーケット(SecondMarket)
と2009年に創業したシェアポスト(SharesPost)
である。これらはいずれも近年の ICT の発達 が可能にしたオンライン上の取引プラット フォームである。非公開株は情報開示が大きく 見劣りするから,その取引市場を創造するため には,情報インフラの整備が不可欠である。セ カンドマーケット,シェアポストのいずれも取 引対象となる非公開株について一定の情報開示 を条件にしている。
セカンドマーケットは2015年にナスダック・
プライベート・マーケットが買収している。買 収前の2011年で取引参加者は10万人以上で,そ の内, 2 万人は自衛力認定投資家である。買い 手の73%は機関投資家で,27%が個人投資家で
ある。売り手は約80%が元従業員,11%が現従 業員である。2010年から発行会社に 2 年間の監 査済財務データの公表を義務づけている。
2009年創業のシェアポストは会員は 6 万人以 上,150社以上の株式を売買している
18)
。 非上場株式の取引市場は,取引相手を探す探 索費用(search cost)と取引費用(transaction cost)を引き下げるが,出口(exit)の機会が 提供されることによって取引の際の流動性プレ ミアムを縮減する効果も持つであろう。要する に,社会的コストの節約に寄与するのである。しかし,他方では,公募と私募の境界が不明確 になってきたため,株式市場に対する規制体系 の見直しも必要となってこよう。
上場会社数の減少の一方では,近年,時価総 額が10億ドルを越える非上場企業,いわゆる
「ユニコーン」が増加している。以前であれ ば,IPO は公開市場での資金調達の途を開くと 共に,社会的な認知度とブランドイメージが高 まるために,経営の大きな到達目標の一つで あった。それに投資している VC にとっても,
大きなキャピタルゲインを手にするチャンスで あった。しかし,ソフトウェアなどの専門性の 高い技術分野では,既存の大手関連企業に買収 されることがスタートアップ企業の技術力の高 さの証しとみなされる傾向が強い。このため,
この分野では敢えて IPO には拘らない傾向が 強い。
かくして,非上場のまま成長を続けるユニ コーンと呼ばれる企業が増加している。この命 名者であるカウボーイ・ベンチャーズ(Cowboy Ventures)のアイリーン・リー(Aileen Lee)
は2003年以降のデータベースを構築し,2013年 時点での「ユニコーン・クラブ」は39社から構 成されることを明らかにした。2013年までの10
年間にインターネット・ソフトウエア企業は 6 万社設立されており,この中からユニコーンに 成長した企業は,0.07%,1538社に 1 社の割合 であった。また,時価総額が1000億ドルを越え る「スーパー・ユニコーン」は10年に 3 社の割 合で誕生しているという
19)
。ユニコーンの数は その後も増加しており,2,019年 5 月現在,全 世界で344社,その内,アメリカが49%,中国 が26%を占めている20)
。図表 7 はアメリカにお けるユニコーンの数と時価総額の推移を示して いる。以上の分析によって,2010年代になって一部 では「IPO の死」とも呼ばれるほど IPO が顕 著に減少し,ユニコーンの数が急増しているこ との背景も明らかであろう。この間に採られた 規制強化のみをその原因とすることはできな い。株式市場の構造変化との関係では,何より も私募市場における規制緩和と非公開株の流通 市場が形成されたことにより,公開市場との間 の関係が曖昧になり,使い勝手の良い後者の活 用が増加していることである。また,M&A に よる非上場会社の増加との関連では,ICT 関 連産業におけるデジタル化戦略や組織構造の変 化への対応を指摘できる。これらの企業は,先 端技術分野についての知識の乏しい大手機関投 資家や個人投資家をむしろ敬遠し,必要であれ ば専門分野についての様々なアドバイスの提供 も可能であるような VC や EF のような投資家 の方を選好している面もあると考えられるので ある。
終りに
上場会社数の減少はそれほど問題にする必要 がないという議論もある
21)
。実際,上場企業の時価総額はむしろ増加しているし,株式市場が 低迷しているということではない。しかし,
リーマンショック以降の政府,議会,SEC は 資本形成の観点から新興成長企業の資金調達環 境の整備の必要性を強調してきた。
この場合,問題は SEC がその創設の理念と してきた投資家保護との関連をどう均衡をとる かということであろう。例えば,私募の対象と しての自衛力認定投資家という範疇は,現在で はハイリスクの投資を認めるには基準が緩すぎ るという批判も強い。「情報による規制」を伝 統的な証券市場の規制方法としてきた SEC の 立場からみれば,登録免除によって発行された 私募証券が半ば自由に流通し,それに関連した 投資詐欺などの問題が起きれば,その責任が問
われることになるのは避けられない。他方で は,IPO が減少しているため,個人投資家は成 長企業への投資からもたらされる可能性のある 利益機会から排除される傾向が強まっていると いう指摘もある。
こうした主張や懸念は証券市場についての規 制に対して常に提起されてきた古くて新しい問 題であり,簡単に結論を下せる問題ではない。
必要なことは,現実に発生している問題につい てのできる限り正確かつ詳細な分析と,それに 基づく迅速な政策対応ということになろう。
注
1) 公 募(public offering) と 私 募(private placement)
という区別は,一般投資家を対象にした証券の発行か,
あるいは限定された投資家向けに証券を発行するかによ
$500 138
27
$400
$300
$200
$100
$0 0
20 40 60 80 100 120 140
2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018
*2006
社
累積ユニコーン数
新規ユニコーン数
ユニコーンの時価総額(10億ドル)図表 7 ユニコーンの数と時価総額の推移
〔出所〕 Pitchbook[2018], Unicorn Report
る も の で あ り, 手 続 き 的 に は,SEC へ の 登 録 届 出 書
(Registration Statement)の提出が義務付けられている か,登録免除が認められるかの違いである。公募は取引 所に上場されて自由に売買されるから公開市場(public market)である。それに対して,後者は転売制限が課せ られ流通市場を欠いているから,非公開市場(private market)である。したがって,本稿では公募と公開市 場,私募と非公開市場は同じ内容の概念として使用する。
ただし,現在では民間業者が運営する非上場株式を取 引するプラットフォームが存在し,これらの銘柄につい ても一定程度の流通市場が形成されている。したがっ て,両者の境界は曖昧になっている。さらに,2012年の JOBS 法は私募を規定している1933年証券法 4 条(a)(2)
条を改正し,レギュレーション D の規則506を拡充して,
自衛力認定投資家に限定される限り,マーケティングと 一般的な勧誘を認めた(規則506(C))。
こうなってくると,SEC への証券発行にあたっての登 録届出書の提出義務を基準とする公募と私募の区別はほ とんど形骸化してくる。論文のタイトルとして,“publicly offered private placement” という内容的に矛盾した用語 が使用されている(Warren[2015])のが現状である。
2) Reuters, New Wall Street-backed Exchange MEMX Eyes Mid-2020 Launch, No. 1 , 2019
3) Doidge[2015], Table 3 4) CRS[2018]
5) De Fontenay[2017], Gao et al.[2013]
6) Doidge[2015], Table 4 。なお,上場廃止の理由は,
合 併(merger), 上 場 維 持 基 準 に 抵 触(cause), 任 意
(voluntary)の 3 つに分かれるが,どの理由による上場 廃止も目立った増加を示していない。
7) Zimmerman[2019]
8) Partnoy[2018]
9) Johnson[2010])。1933年証券法から始まる一連の連 邦証券諸法の制定に先立って,各州は独自のブルー・ス カイ法と総称される証券法を制定しており,州内での証 券の発行や取引についての規制を行っていた。連邦証券 諸法成立後もブルー・スカイ法は存続しており,この規 制の重複を解消し効率化を図ろうとしたのが NSMIA で ある。
10) Ewens and Farre-Mensa[2017]
11) この改正後は「レギュレーション A プラス」(Regulation A+)と呼ばれている。各私募発行の概要については SEC(DERA)[2018], Appendix Ⅱを参照されたい。
12) Thompson and Langevoort[2013]
13) Warren Ⅲ[2015]。なお,規則506(b),規則506(c)の 概要については,SEC(DERA)[2018],Appendix Ⅱ,
を参照されたい。
14) Zimmerman[2019]
15) Thompson and Langevoort[2013], p.1589, note 77 16) Vermeulen[2015]
17) Thompson and Langevoort[2013]
18) Pollman[2012], pp.193-205
19) Lee[2013]。なお,その後,ユニコーンの条件は,創 業10年以内,時価総額10億ドル以上,非上場,テクノロ ジー企業,と定義されている。なお,「スーパー・ユニ
コーン」は今では「ヘクトコーン」と呼ばれ,時価総額 100億ドル以上は「デカコーン」と呼ばれている。
20) CB insight[2019]
21) 例えば,Govindarajan et al.[2018]を参照されたい。
参 考 文 献
岩井浩一[2012],「JOBS 法の成立と米国 IPO 市場 の今後の動向」,『野村資本市場クォータリー』,
Autumn
岡田功太[2018],「米国の株式公開市場の活性化に 係る施策を巡る議論」,『野村資本市場クォータ リー』,Autumn
――――,下山貴史[2019],「米国の IPO 活性化及 びスタートアップ企業への投資促進に係る政策
―JOBS 法3.0を中心に―」,『野村資本市場クォー タリー』,Summer
若園智明[2019],「米国における資本形成の変遷:
公開市場と私募市場」,『証券経済研究』第107 号, 9 月
BerdeJÒ[2015], “Going Public after the JOBS Act”, Ohio State Law Journal, Vol. 76, No. 1 Brown K. C. and Wiles K. W.[2015], “In Search of
Unicorns: Private IPO and the Changing Mar� Private IPO and the Changing Mar�Private IPO and the Changing Mar�
kets for Private Equity Investments and Cor�
porate Control”, Journal of Applied Corporate Finance, Vol. 27, No. 3
Brorsen L.[2017], “Looking behind the Declining Number of Public Companies”, Harvard Low School Forum on Corporate Governance and Fi�
nancial Regulation, May 18
CB Insights[2019], Unicorn Hunters� �hese �nves�[2019], Unicorn Hunters� �hese �nves�2019], Unicorn Hunters� �hese �nves�], Unicorn Hunters� �hese �nves�, Unicorn Hunters� �hese �nves� Unicorn Hunters� �hese �nves�Unicorn Hunters� �hese �nves� �hese �nves��hese �nves�
tors have Backed the Most Billion-Dollar Com�
panies, May 7
Center for Capital Markets Competitiveness[2018], Expanding the On-ramp� Recommendations to Help More Companies Go and Stay Public, Spring Congressional Research Service[2018], Capital
Markets, Securities Offerings,and Related Policy
�ssues, July 26
Cox J. D.[2013-14], “Who Can’t Raise Capital?:
The Scylla and Charybdis of Capital Forma�
tion”, Kentucky Law Journal, Vol. 102
De Fontenay E.,[2017], “The Deregulation of Pri�[2017], “The Deregulation of Pri�2017], “The Deregulation of Pri�], “The Deregulation of Pri�, “The Deregulation of Pri�
vate Capital and the Decline of the Public Com�
pany”, Hastings Law Journal, Vol. 68
Doidge C., Karolyi A., and Stulz R.[2017], “The U.
S. Listing Gap”, Journal of Financial Economics, Vol. 123, Issue 3 , March
Ewens M. and Farre-Mensa J.[2017],“The Evolution of the Private Equity Market and the Decline in IPOs”(http://ssrn.com/abstract=3017610)
Gao X., Ritter J. R., and Zhu Z.[2013], “Where Have All the IPOs Gone ?”, Journal of Financial and Quantitative Analysis, Vol. 48, No. 6
Govindarajan V., Rajgopal S., Srivastava A., and Enache L.,[2018], “Why We Shouldn’t Worry about the Declining Number of Public Compa�
nies”, Harvard Business Review, Aug. 27 Jackson Jr., R. J.[2018], �he Middle-Market �PO
�ax, Speech, Apr. 25
Johnson J. J.[2010], “Private Placements: A Regu� J.[2010], “Private Placements: A Regu�J.[2010], “Private Placements: A Regu�[2010], “Private Placements: A Regu�2010], “Private Placements: A Regu�], “Private Placements: A Regu�, “Private Placements: A Regu�
latory Black Hole”, Delaware Journal of Corpo� Delaware Journal of Corpo�Delaware Journal of Corpo�
rate Law, Vol. 35
Kahle K. M., Stulz R. M.[2017], “Is US Public Cor� M., Stulz R. M.[2017], “Is US Public Cor�M., Stulz R. M.[2017], “Is US Public Cor� Stulz R. M.[2017], “Is US Public Cor�Stulz R. M.[2017], “Is US Public Cor� M.[2017], “Is US Public Cor�M.[2017], “Is US Public Cor�[2017], “Is US Public Cor�2017], “Is US Public Cor�], “Is US Public Cor�, “Is US Public Cor�
poration in Trouble?”, Journal of Economic Per� Journal of Economic Per�Journal of Economic Per�
spectives, Vol. 31, No. 3
Langevoort D. C. and Thompson R. b.[2013],“�Pub� C. and Thompson R. b.[2013],“�Pub�C. and Thompson R. b.[2013],“�Pub� b.[2013],“�Pub�b.[2013],“�Pub�[2013],“�Pub�2013],“�Pub�],“�Pub�, “�Pub�
licness’ in Contemporary Securities Regulation”,
�he Georgetown Law Journal, Vol. 101: 337 Lee A.[2013], “Welcome to the Unicorn Club:
Learning from Billion-Dollar Startups”, �ech� �ech��ech�
Crunch
Leuz C. and Wysocki P.[2015], “The Economics of Disclosure and Financial Reporting Regulation:
Evidence and Suggestions for Future Research”, The university of Chicago, Booth School of Busi� Booth School of Busi�Booth School of Busi�
ness, �GM Working Paper, No. 132
Ljungqvist A., Persson L., and T�g, J[2016],” Pri� Persson L., and T�g, J[2016],” Pri�Persson L., and T�g, J[2016],” Pri� and T�g, J[2016],” Pri�and T�g, J[2016],” Pri�g, J[2016],” Pri�, J[2016],” Pri� J[2016],” Pri�J[2016],” Pri�[2016],” Pri�2016],” Pri�],” Pri�,” Pri�
vate Equity’s Unintended Dark Side: On the Economic Consequences of Excessive del�
istings”, Research �nstitute of �ndustrial Eco� Research �nstitute of �ndustrial Eco�Research �nstitute of �ndustrial Eco�
nomics, �FN Working Paper, No. 1115Nov. 23 McKinsey & Company[2019], Private Markets
Come of Age, McKinsey Global Private Markets Review 2019
Partnoy F.[2018],” The Death of IPO”, �he Atlan�[2018],” The Death of IPO”, �he Atlan�2018],” The Death of IPO”, �he Atlan�],” The Death of IPO”, �he Atlan�,” The Death of IPO”, �he Atlan� �he Atlan��he Atlan�
tic, Nov
Pollard T. J.[2013], “Sneaking in the Back Door ? An Evolution of Reverse Mergers and IPOs”, University of Colorade, Accounting Graduate
�heses & Dessertation
Pollman E.[2012], “Information Issues on Wall Street 2.0”, University of Pennsylvania Law Re�2.0”, University of Pennsylvania Law Re�”, University of Pennsylvania Law Re� University of Pennsylvania Law Re�University of Pennsylvania Law Re�
view, Vol. 161: 179
Schwartz J.[2014], “The Law and Economics of Scaled Equity Market Regulation”, �he Journal of Corporation Law, Vol. 39: 2
Securities and Exchange Commission(SEC), Division of Economic and Risk Analysis(DERA)[2017], Re�(DERA)[2017], Re�DERA)[2017], Re�)[2017], Re�2017], Re�], Re�, Re� Re�Re�
port to Congress�Access to Capital and Market Li�
quidity, August
――――[2018], Capital Raising in the U� S� An Anal�[2018], Capital Raising in the U� S� An Anal�2018], Capital Raising in the U� S� An Anal�], Capital Raising in the U� S� An Anal�, Capital Raising in the U� S� An Anal� Capital Raising in the U� S� An Anal�Capital Raising in the U� S� An Anal� S� An Anal�S� An Anal� An Anal�An Anal�
ysis of the Market for Unregistered Securities Of�
ferings, 2009-2017, August
SIFMA(Securities Industry and Financial Markets Association)[2018a], Expanding the On- Ramp�recommendations to Help More Companies Go and Stay Public, April
――――[2018b], S�FMA �nsight� US Equity Capital Formation Primer, An Exploration of the �PO Process and Listings Exchanges, Nov.
Thompson R. B. and Langevoort[2013], “Redraw�[2013], “Redraw�2013], “Redraw�], “Redraw�, “Redraw�
ing the Public-Private Boundaries in Entre�
neurial Capital Rasing”, Cornell Law Review, Voi. 98, Issue 6 , September
Tuch A. F.[2017], “The Remaking of Wall Street”,
Harvard Business Law Review, Vol. 7
Vermeulen E. P. M.[2015],” High-TechCompanies and the Decision to �go Public’: Are Backdoor Listings(Still)an Alternative to �Front-door’
Initial Public Offerings?”, Penn State Journal of Law & �nternational Affairs, Vol. 4 , Issue 1 Zimmerman C. R.[2019], “Accredited Investors: A
Need for Increased Protection in Private Offer�
ings”, Northwestern University Law review, Vol.
114, No. 2
Warren Ⅲ, M. G.[2015], “The False Promise of Publicly Offered Private Placements”, SMU Law Review, Vol. 68, Issue 3
(当研究所特任研究員)