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平成24年度厚生労働科学研究費補助金
(新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業)
Ⅱ.分担研究報告書
新型インフルエンザ発生時の公衆衛生対策の再構築に関する研究
研究分担者 齋藤 玲子 新潟大学大学院医歯学系・教授 研究協力者 小野 靖彦 おの小児科
研究協力者 菖蒲川由郷 新潟大学大学院医歯学系 研究協力者 鈴木 翼 新潟大学大学院医歯学系 研究協力者 鈴木 宏 新潟青陵大学
研究要旨
2011-2012シーズンの長崎県諫早市(人口14万人)におけるインフルエンザ
サーベイランスと疫学解析・ウイルス学的検索・時空間解析を行った。
シーズンを通して、A型3624例、B型1715例、計5719例のインフルエンザ 症例が報告された。年代別の罹患率はA型では小学生年齢(7-12才)で、B型で は乳幼児年齢(0-6才)で最も高かった。ウイルス学的検索からはA型では
A(H3N2)のみであり、B型はビクトリア系統と山形系統が混在していた。小学校
区ごとの流行開始のタイミングを評価することで地域の伝播様式を明らかにする 試みを行ない、A型、B型ともに伝播様式に地理的な特徴があることが示された。
また、学校における平日と休日の感染者数に違いを認め、今後の課題として、学 校単位での伝播様式の解明をさらに詳しく行うことが、地域における流行を抑制 する公衆衛生的対策を講じる上で重要と考えられた。
A.研究目的
2009年3月にメキシコで発生した新型 インフルエンザ、pandemic 2009
A(H1N1)ウイルスはおよそ1ヶ月あまり で世界中に流行が拡がり、死者・重症者 を含め、多大な犠牲を出した。本邦では、
他国からのウイルス・感染者の進入の可 能性を最小限に抑えるための水際対策に
始まり、地域での流行を遅らせ、犠牲を 最小限に食い止めようとする試みとして のnon pharmaceutical interventionと しての学校閉鎖や集会の中止・自粛など 様々な手段を駆使した公衆衛生的予防手 段が講じられた。
本研究では、特に我々は2006-2007シ ーズンより開始した長崎県諫早市におけ
2 るインフルエンザサーベイランスシステ ムによるサーベイランス情報の結果から、
季節性インフルエンザの地域流行の伝播 様式を一地方都市で観察した。最終的に は、これらの情報から新たに新型インフ ルエンザが発生した際の公衆衛生的対策 を勘案する。
B.研究方法
i)サーベイランスと流行地図の作成 長崎県諫早市(人口約14万人)の医師 会に協力を得て、諫早市内の全ての小児 科とほぼ全ての内科の医院または病院で、
2011-2012シーズンにインフルエンザと 診断された患者の情報(性別、年齢、住 所〔大字レベル〕、発症日、診断日、迅速 診断キットによる診断〔A型、B型、臨 床診断、A型+B型〕、治療〔処方した抗 ウイルス薬〕、ワクチン歴、所属学校名ま たは職場名、感染経路〔どこで感染した と思われるか患者に聴取〕、入院の有無)
をいったん医師会で集計し、1週間単位で 新潟大学国際保健学に電子情報として送 付してもらった。このデータに基づき、
毎週のインフルエンザ流行の様子をイン ターネット経由で閲覧可能なWebマップ として出力し医師会に還元した。地図作 成には、ArcGIS Online(Esri社)のWeb マップサービスを使用した。地図はA型、
B型の別に加え、年代別の地図を出力し、
小学校区と中学校区を重ねて表示するこ とで、どの地域でどの年代の流行がある のかが一目でわかるようにし、臨床に役 立てる工夫をした。
ii)ウイルス学的検索
i)におけるサーベイランス実施小児科 医院のうちの一医院から臨床検体(鼻腔 咽頭拭い液または鼻汁)を採取しウイル ス学的検索を行った。調査に協力が得ら
れた患児または両親に同意を得られたケ ースのうち、ランダムに選択した症例か ら臨床検体を得た。検体は冷蔵保存の後、
新潟大学国際保健学に輸送し、リアルタ イムPCR法とウイルス培養で型と亜型 を決定した。
iii)拡大パターンの時空間解析
i)のサーベイランス情報を基にして、イ ンフルエンザの拡大パターン解明を目的 にGIS(Geographic Information
System:地理情報システム)を用いた地
図上での空間解析を試みた。A型とB型 に分けて、各小学校区内での全年齢の罹 患者を集計し流行開始週を算出した。流 行開始週は、その学校区内の罹患者数が ピーク時の罹患者数の20%を初めて超え た週と定義した。最も流行開始が早い小 学校区を基準として、週ごとに流行開始 のタイミングを数値化し、その数値に基 づいて内挿補間法の1つであるKriging 法を用いて流行がどこで早く(遅く)起 こったか地図上で把握した。
iv) 感染日曲線の推定
i)のサーベイランス情報を基にして、発 症日から潜伏期間を考慮した感染日の推 定を行った。Lesslerら(2009)によるA型 インフルエンザの潜伏期間の分布から、
発症者のうち20%が発症の1日前、60% が発症の2日前、残り20%が発症の3日 前に感染したと仮定した。1)この仮定に基 づきA型インフルエンザ罹患者の感染日 を推定し、年齢別、感染経路別に分けて 集計、日単位での疫学曲線を作成した。
(倫理面への配慮)
患者には各医療機関で十分な説明を行 い調査の協力について承諾を得た。なお 本調査は新潟大学医学部倫理委員会にて 承認された。
3 C.研究結果
結果
i)サーベイランス結果概要2011-2012 2011-2012シーズンに諫早市内の調査協 力医療機関を受診し、インフルエンザ(A 型、B型または臨床診断)と診断された 者は5719例で、そのうちA型は3624例
(63.4%)、B型は1715例(30.0%)であ った。年代別の罹患率(1000人あたり発 症者数)はA型では、0-6才で105.2、7-12 才で89.5、13-15才で49.0、16-18才で 22.2、19-39才で18.9、40-64才で13.9、 65才以上で9.5であり、B型では、0-6 才で34.7、7-12才で89.6、13-15才で34.8、 16-18才で21.4、19-39才で6.2、19-64 才で3.1、65才以上で1.4であった。A 型では乳幼児年齢(0-6才)、B型では小 学生年齢(7-12才)で罹患率が最も高か った。A型は2012年年明けから流行が始 まり、2月にかけてピークを迎えた(図1)。 B型はやや遅れて2月から流行が開始し、
A型と比べて小さな流行にとどまった。
途中、春休み期間の3月下旬から4月初 旬に流行がおさまりかけたが、春休み明 けに再燃し4月下旬まで流行が続いた。
年代別では、A型では2012年1月下旬に 乳幼児年齢(0-6才)で急速に罹患者の増 加があった(図2)。その他の年齢では1 月から2月にかけて徐々に報告数が増加 し一気にピークを迎えた。B型では乳幼 児年齢と小学生年齢(7-12才)を中心に 2月から3月にかけて流行が認められ、
春休みに一度おさまりかけたが、春休み 明けの4月に小学生年齢、中学生年齢
(13-15才)、高校生年齢(16-18才)で 罹患者の増加を認めた。各年代の2回目 のピークは高校生で第15週、小学生で第 16週、中学生で第17週といずれも異な
っていた。罹患者の感染経路は、家族内 感染が1137例(19.9%)、学校・職場内 感染が2560例(44.8%)、人が集まる場 所での感染が332例(5.8%)、旅行・出 張先での感染が24例(0.4%)、不明が 1498例(26.2%)であった(図3)。不明 の中には、感染経路の心当たりが複数あ り特定できないものが含まれる。年代別 では高校生年齢(16-18才)以下では学校 内感染が最多で、成人年齢(19−39歳)
以上では家族内感染が最多であった。こ れらのサーベイランス集計情報は週ごと に地図として出力し諫早医師会に還元し た(地図の例:図4)。
ii)ウイルス学的検索
臨床検体は2012年2月23日〜4月22 日の間に11検体採取できた。リアルタイ ムPCR法またはウイルス培養により11 検体のうち6検体(54.5%)はA(H3N2)、 3検体(27.3%)はB型ビクトリア系統、
2検体(18.2%)はB型山形系統であった。
この期間にA(H1N1)pdm09の検出はな かった。
iii)インフルエンザの拡大パターン A型、B型ともに、地域における流行 開始時期に差が表れた。A型では諫早市 中心部、佐賀県に隣接する地域、長崎市 に隣接する地域で流行が早く開始したの に対し、大村市に隣接する地域、雲仙市 に隣接する地域では流行開始が遅かった
(図5)。B型では流行の1回目(2月か ら3月)と2回目(4月)で地域により 流行開始時期が異なった。B型1回目の 流行では、佐賀県に隣接する地域、長崎 市に隣接する地域で流行が早く開始した のに対し、諫早市中心部では流行開始が 遅かった(図6)。B型2回目の流行では、
長崎市に隣接する地域で流行が早く開始
4 したのに対し、大村市に隣接する地域、
雲仙市に隣接する地域では流行開始が遅 かった(図7)。また諫早市中心部ではB 型2回目の流行開始が早い地域と遅い地 域が混在していた。
iv)感染日曲線の推定
発症日と潜伏期間から推定したA型イ ンフルエンザ感染のタイミングには年代 と感染経路による特徴がみられた。年代 別には、乳幼児年齢(0-6才)と小学生年 齢(7-12才)で流行開始からピークに至 るまでの間に平日では感染者が増加し、
休日では減少するパターンが顕著にみら れた(図8)。感染経路別には、学校・職 場内感染に場合には流行開始からピーク に至るまでの間に平日では感染者が急速 に増加し、休日では減少するパターンが みられた(図9)。
考察
2011-2012シーズンはA型とB型の混 合流行でA型の流行がB型に比べて大き かった。ウイルス学的検索からは、
A(H3N2)、B型ビクトリア系統、B型山 形系統の混合流行で、B型はビクトリア 系統がやや優位であった可能性がある。
A(H1N1)pdm2009の検出はなかった。年 代別の罹患率はA型では小学生年齢、B 型では乳幼児年齢で最も高かった。学童 と乳幼児では罹患率が高く、地域におけ る流行拡大の鍵となるのは小児であると いう考え方を支持する結果となった。A 型の流行は冬休み明けのタイミングから 始まり、乳幼児での流行が他の年齢に先 行した。B型の流行は春休みに重なり、
この期間は学童だけでなく成人を含む地 域全体の流行が抑えられたが、春休みが 明けると再燃した。このことは、流行時 の小中学校の休業が、地域における感染
の伝播拡大を一時的に抑制する効果があ ることを示唆した。
今年度新たに項目を設けた感染経路の 聴取では、未就学児・小中高生の半数以 上が学校内で感染したと回答した。一方 成人では職場内に比べて家族内での感染 が多かったものの、どこで感染したか不 明であった、もしくは特定できないとの 回答も多かった。このことは、子どもは 一日の生活のほとんどを家庭または学 校・保育園で過ごすことから感染源への 接触の場が限定されること、一方成人で は行動範囲が広く感染源との接触機会が 多岐にわたることに関連すると考えられ た。学齢期の子どもは学校での罹患率が 高いことから、学校・保育園における公 衆衛生的対策が感染拡大抑制に大きな役 割をもつ可能性が示唆された。
疫学曲線だけを見た場合、流行の違い はサイズと期間の違いとしてしかとらえ ることができなかったが、地図上で拡大 パターンを視覚化することで、拡大様式 に地理的特性があることが明示された。A 型とB型に共通する点として、長崎市に 隣接する地域と佐賀県に隣接する地域で 流行開始が早かった。長崎市は人口44万 人の大規模な都市であり、佐賀県側には 人口24万人の佐賀市が位置し、諫早市よ り規模の大きな都市に近い地域で流行開 始が早かった。一方、大村市に隣接する 地域と雲仙市に隣接する地域はA型、B 型ともに流行開始が遅かった。大村市と 雲仙市はそれぞれ人口9万人、5万人で あり、諫早市より規模が小さい都市に近 い地域では逆に流行開始が遅かった。こ のことから、地域におけるインフルエン ザ流行開始のタイミングには周辺都市の 人口規模が影響する可能性が示唆された。
Kriging法を用いた図では流行開始のタ
5 イミングだけでなく、地域での拡大様式、
すなわち、どこからどこに伝播したかを 推察することが可能であり、伝播拡大予 防策の策定に有用である可能性が示され た。
発症日と潜伏期間をもとに推定した感 染日曲線から、未就学児と小学生はピー ク前の期間の感染者が平日では増加、休 日では減少するパターンがみられた。ま た学校内での感染者でも同様のパターン であった。休日は学校・保育園での接触 が少なくなることから伝播拡大が抑制さ れると推察された。このことから、流行 中、特にピークを迎える前に意図的に休 日の状態をつくりだす学級閉鎖・学校閉 鎖といった措置は学校における伝播拡大 を抑制するために有効である可能性が示 唆された。中学生・高校生では一定のパ ターンがみられず、小学生に比べて行動 範囲が広いことや、部活動により休日も 登校していることが多いことが考えられ るが、現段階では原因は明らかでない。
今回の調査ではインフルエンザサーベ イランスの結果に加えて、地理空間的解 析を加えた。この結果、地域により流行 開始のタイミングが異なることが明らか となった。また、個々の感染のタイミン グを推定することで、地域における伝播 拡大における学校の役割が特に重要であ ることが示された。今後、伝播拡大の鍵 となる小学校内の流行の拡がり方を、ク ラス単位・個人単位の詳しい欠席データ や、学級閉鎖・学校閉鎖といった実際に 講じられた公衆衛生的対策のデータとと もに解析する必要がある。また対策をど の時期に実施するか(ピーク前の実施か、
ピーク後の実施か)によって拡大抑制に 与える影響が異なる可能性が考えられ、
対策時期による効果の違いを解析するこ とも重要である。
結論
2011-2012シーズンの長崎県諫早市(人 口14万)におけるインフルエンザサーベ イランスと疫学解析・ウイルス学的検 索・時空間解析を行った。
A型とB型では拡大様式の違いが認め られ、B型では学校の長期休業との関連 性が認められた。今後、さらなる伝播様 式の解明には、小学校の学級・学校閉鎖 情報を加味した解析と、小学校内・クラ ス内での時系列的伝播状況を観察し解析 する必要がある。
謝辞
調査にご協力いただいた諫早医師会の 諸先生方、諫早医師会事務局に感謝いた します。
参考文献
1. Justin Lessler, Nicholas G Reich, Ron Brookmeyer, Trish M Perl, Kenrad E Nelson, Derek AT Cummings.
Incubation periods of acute respiratory viral infections: a systematic review.
Lancet Infect Dis 2009; 9: 291–300.
D.健康危険情報 なし
E.研究発表 1. 論文発表
なし
2. 学会発表
鈴木 翼、菖蒲川 由郷、齋藤 玲子、小 野 靖彦:長崎県諫早市における2011/12 シーズンのインフルエンザ流行と患者特
6 性の検討―諫早医師会インフルエンザ流 行調査より―.第44回日本小児感染症学 会学術集会.2012年11月
F.知的所有権の取得状況 1. 特許取得
なし
2.実用新案登録 なし
3.その他 なし
図1. 1. 諫早市内インフルエンザ罹患者数の推移(諫早市内インフルエンザ罹患者数の推移(諫早市内インフルエンザ罹患者数の推移(A型・型・B型別)2011
7
2011-12シーズン
図 2. 2. 年代別のインフルエンザ(年代別のインフルエンザ(A型・型・B型)罹患率の推移型)罹患率の推移
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図3.年代別のインフルエンザ患者の感染経路.年代別のインフルエンザ患者の感染経路.年代別のインフルエンザ患者の感染経路.年代別のインフルエンザ患者の感染経路
- 9 -
図 4. インフルエンザ患者分布マップ(毎週インフルエンザ患者分布マップ(毎週インフルエンザ患者分布マップ(毎週インフルエンザ患者分布マップ(毎週更新し諫早医師会に送付
- 10 -
諫早医師会に送付、諫早市のケーブルテレビで市民に公表)諫早市のケーブルテレビで市民に公表)諫早市のケーブルテレビで市民に公表)諫早市のケーブルテレビで市民に公表)
図5.A型インフルエンザの流行開始のタイミング(赤色が早い流行開始、緑色が遅い流行開始)型インフルエンザの流行開始のタイミング(赤色が早い流行開始、緑色が遅い流行開始)型インフルエンザの流行開始のタイミング(赤色が早い流行開始、緑色が遅い流行開始)型インフルエンザの流行開始のタイミング(赤色が早い流行開始、緑色が遅い流行開始)
- 11 -
型インフルエンザの流行開始のタイミング(赤色が早い流行開始、緑色が遅い流行開始)型インフルエンザの流行開始のタイミング(赤色が早い流行開始、緑色が遅い流行開始)
型インフルエンザの流行開始のタイミング(赤色が早い流行開始、緑色が遅い流行開始)
図6.B型インフルエンザの流行開始のタイミング(型インフルエンザの流行開始のタイミング(型インフルエンザの流行開始のタイミング(型インフルエンザの流行開始のタイミング(1回目、赤色
- 12 -
回目、赤色が早い流行開始、緑色が遅い流行開始)が早い流行開始、緑色が遅い流行開始)が早い流行開始、緑色が遅い流行開始)が早い流行開始、緑色が遅い流行開始)
図7.B型インフルエンザの流行開始のタイミング(型インフルエンザの流行開始のタイミング(型インフルエンザの流行開始のタイミング(型インフルエンザの流行開始のタイミング(2回目、赤色が早い流行開始、緑色が遅い流行開始)
- 13 -
回目、赤色が早い流行開始、緑色が遅い流行開始)
回目、赤色が早い流行開始、緑色が遅い流行開始)
回目、赤色が早い流行開始、緑色が遅い流行開始)
回目、赤色が早い流行開始、緑色が遅い流行開始)
図8.年代別の.年代別のA型インフルエンザ罹患者の感染タイミング型インフルエンザ罹患者の感染タイミング型インフルエンザ罹患者の感染タイミング
- 14 - 型インフルエンザ罹患者の感染タイミング
図9.感染経路別の.感染経路別のA型インフルエンザ罹患者の感染タイミング型インフルエンザ罹患者の感染タイミング型インフルエンザ罹患者の感染タイミング
- 15 - 型インフルエンザ罹患者の感染タイミング
- 16 -
平成24年度厚生労働科学研究費補助金
(新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業)
Ⅱ.分担研究報告書
新型インフルエンザに対する公衆衛生対応としての有効な検疫のあり方に 関する研究
研究分担者 砂川富正 国立感染症研究所 感染症情報センター主任研究官 研究協力者 八幡裕一郎 国立感染症研究所 感染症情報センター主任研究官 研究協力者 神谷 元 国立感染症研究所 感染症情報センター主任研究官 研究協力者 谷口清州 国立感染症研究所 感染症情報センター客員研究員 研究協力者 阪口洋子 北里大学大学院、東京検疫所支所検疫衛生課看護師
研究要旨 我が国の検疫所における新型インフルエンザ対応能力(IHR、健康相談室等)
に関する評価の実施を、今年度は一つの空港検疫所Aについて実施した。入室者においては、
医療上要フォロー群が62.5%を占め、発熱、咳、咽頭痛、鼻閉・鼻汁、頭痛、関節痛が統計 学的に有用な症状であることが推定され、特に発熱・関節痛はORが2以上であった。サー モスキャンでは偽陽性が一定頻度で存在したもののスクリーニング手段としては有用であ り、特に37℃以上の発熱性疾患においては要フォロー結果につながる有用性は顕著であっ た。全体として、発熱・関節痛などの有用な臨床所見の検出に、他の疫学的なスクリーニン グ項目を加えること等で、新型インフルエンザ発生当初の水際対策の一つのツールとしての 有用性があるものと考えられる。
A.研究目的
海外から我が国に侵入する感染症を水 際で防止する検疫所の果たす役割は、特 に重症急性呼吸器感染症(SARS)や新 型インフルエンザなどの新興感染症発生 時において大きくクローズアップされる。
2009年のインフルエンザ(pH1N1)発 生時においては、潜伏期間が短く不顕性 感染もあるインフルエンザに対する検疫 所の検出能力は高くないと評価されてい た(WHOなど)。
しかしながら、インフルエンザを含めて、
病原性も不明な新興感染症発生時初期に おいて、島嶼国である我が国においては、
陸続きで他国と接している国々と比較し て,空港および海港における入国管理が 文献上も有用とする報告は数多くある
(1) Brownstein et al. PLoS Med 2006;
3(10): e401., 2) Cooper et al. PLoS Med 2006; 3(6): e212., 3) Viboud et al. PLoS Med 2006; 3(11): e503., 4)
Hollingsworth et al., Nat Med 2006;
12(5): 497 499., 5) Nishiura et al., BMC
- 17 - Infect Dis 2009; 9: 27.)。また、水際対策 は社会的な理由からも一定期間、進めざ るを得ないであろう。
本研究グループでは、これまでにパンデ ミックインフルエンザ水際対策に関する 文献等の把握を行う一方、工業国・途上 国における国際保健規則(International Health Regulation:以下、IHRと略す)
を中心とした対策について、情報収集を 行って来た。今年度からの研究では、制 度としての水際対策のあり方と言うより もむしろ、わが国の検疫所の技術的な側 面に注目して分析を行うことを検討した。
その理由としては、新型インフルエンザ に対する検疫所のキャパシティービルデ ィングを考えるうえで、現行の感染症検 出機能は(インフルエンザを含めて)ど のような症状や疾患に対してより有効か を正しく評価することが重要であると考 えられるからである。それゆえ、検疫所 の通常業務として行われている健康相談 室での対応・機能が重要だと考えられる からである。
具体的に、今年度の研究の目的を、検疫 所相談室に入室する者の症状・症候群の うち、潜在的な新興感染症(新型インフ ルエンザなど)を含む重要な感染症の検 出により有用で注目すべき項目(症状?
問診項目?)はどれか、あるいはより有 効なスクリーニングのあり方について見 出すこととした。
これらの情報をもとに、現在の検疫所の 強みを生かしつつ、インフルエンザを含 む新興感染症対策として、今後どのよう に検疫所の機能強化を図っていくべきか の一端が明らかとなり、我が国において
真に有効な水際対策の一助となることが 期待されると考えられる。
上記を研究グループの活動の中心とし て、引き続き、国内においては各地の新 型インフルエンザ公衆衛生体制に関する 情報収集を、海外、特にインドネシアに おいてはインフルエンザを含む重症肺炎
(SARI)の発生状況および同国における インフルエンザパンデミックへの公衆衛 生対応に関する動きを、関係する大学や 医療機関、行政機関などと情報交換を継 続している。これらについても結果の中 で触れる。
B.研究方法
[研究デザイン] 症例対照研究
[対象検疫所] 調査協力検疫所を国内の 主要5空港検疫所として調整中である。
今回、うち一つの空港検疫所(空港検疫 所A)からの協力を得て分析に供した。
[調査対象(本年度のみの暫定案として)] 1)症例(=要フォロー群):検疫所健康 相談室入室者で医療専門職の診断により、
「指定病院紹介」「空港クリニック紹介」
「入室者近医受診勧奨」のいずれかとな った者
2)対照(=フォロー不要群):症例と同 時期の検疫所健康相談室入室者で医療専 門職の診断により、「指定病院紹介」「空 港クリニック紹介」「入室者近医受診勧奨」
のいずれにもならなかった者。
[分析方法]
単変量あるいは多変量解析により、検疫 所において健康相談室にて「入室者近医 受診勧奨」「空港クリニック紹介」「指定
- 18 - 病院紹介」に関連する以下の因子を検討 する。
(発熱、腹痛、せき、嘔吐、呼吸困難、
発疹、咽頭痛、下痢、鼻閉・鼻汁、黄疸、
頭痛、倦怠感、関節痛、胃痛、眼窩痛、
自己申告入室、サーモメータ検知、事前 通報、医療専門職の診断(コメント)、(実 施されている者における)各種病原体検 査結果)
*ただし今後、空港検疫所A以外に、各 検疫所健康相談室に関する情報が得られ た場合に、その診断や検査方法は異なる ことが考えられることから、各検疫所健 康相談室の状況に応じて、適宜、データ 分析の方法を調整する。
(倫理面への配慮について)
本調査は、特に個人を特定する内容を 含まないことから、現段階では国立感染 症研究所等においてヒトを対象とする医 学研究倫理審査委員会で審査することを 想定していない。今後の調査内容によっ ての変更はあり得る(平成25年2月現 在)。
C.研究結果
(1)検疫所の通常業務として行われてい る健康相談室での対応・機能に関する研 究
1)全体の状況
以下は、空港検疫所Aのみから現時点 で得られている暫定的な結果である。
<空港検疫所Aの検疫実績に関する情報
>
平成23年検疫所業務年報(データ編):
– 2011年1月1日〜12月31日 – 空港検疫所 A における検疫機数:
18,283機。
– 検疫人員:乗員 227,805 人、乗客等 3,535,761人(計3,763,566人)。 – 病原体の有無に関する検査:19件。
– 発見した検疫感染症による患者数:2 例(死亡0)。
– 交付した済証の種類:検疫済証:504、 仮検疫済証:17,779。
– 暫定的に得ることの出来た空港検疫 所 A の健康相談室入室者情報:915 例(乗客のみの入室率:0.03%*)* この数値は本研究グループによる単 純計算による推定であり、 公式な情 報として検疫業務年報に掲載されて いるものではないことに注意された い。
2)2011年の空港検疫所A健康相談室入 室状況の推移(n=906)(図1)
全体として年末年始やゴールデンウィ ーク、夏季休暇等の市民生活の休暇にお ける行動に影響を受けていると考えられ るが、特に冬季(1-3月)の健康相談室 入室者数が多く、この期間に毎週15例以 上が入室している要フォーロー群の動向 が大きく影響を与えている(15例以上の 週は1−3月のみである)。
3)推定感染地域(図2)および自己申告 による症状(複数回答)(表1)(n=904) 全ての健康相談室入室者のうち、推定 感染地域の情報が得られている者につい て、東アジアがほぼ半数であり、他のア ジアの国々を加えると79%となった。
入室時の症状として、(表1)に示すよ うに発熱者は全体の68.8%と最多で、下
- 19 -
痢が43.6%、嘔吐・下痢がそれぞれ
32.8%・28.3%と続いた(複数回答)。 4)空港検疫所A健康相談室入室者にお ける「要フォロー群」の内訳(表2)
(表2)に示すように、健康相談室等 にて対応した医療職により「要フォロー 群」としての対応を受けた者572例(健 康相談室入室者の62.5%)について、指 定医療機関へ搬送(検疫対応)を受けた 者は0例、クリニック紹介(空港内クリ ニック)となった者は129例、近医受診 指示となった者は464例となった(重複 あり)。フォロー不要群となった者は343 例(健康相談室入室者の37.5%)であっ た。
5)性別、年齢ごとの人数(n=913*)・要 フォロー率(*性別・年齢の情報の無い2 例を除く)(図3)
旅行者の特性を表しているのであろ うが、健康相談室入室者は20代、30代 の順で多く、男性が56%であった。その 年齢分布の一方で、要フォローと考えら れたグループの年齢分布は0歳、80代、
1−4歳、70代、60代の順となった。
6)「要フォロー群」(=入室者近医受診勧 奨、空港クリニック紹介、指定病院紹介)
となった者に関連する因子の検討(表3)
「要フォロー群」を症例群(n=572) として、「フォロー不要群」を対照群
(n=343)として、「要フォロー群」とし
た。まず、年齢中央値の差の検定を行っ たところ、Mann-whitneyのU検定で
P=0.156となり、中央値の差はなかった。
次にフォロー対応の転帰に至る因子を検 討した。その結果、自己申告による症状
(複数回答)において、発熱(オッズ比
[OR]=2.22, 95%信頼区間[95%CI]:
1.66-2.93)、咳(OR=1.82, 95%CI:
1.20-2.75)、咽頭痛(OR=1.42, 95%CI:
1.00-2.01)、鼻閉・鼻汁(OR=1.73, 95%CI: 1.14-2.62)、頭痛(OR=1,55, 95%CI: 1.08-2.22)、関節痛(OR=2.66, 95%CI: 1,14-6.12)が統計学的に有意に 要フォロー群であることと関連した。特 に発熱と関節痛はオッズ比が2を超え、
他の症状と比較し強い関連を示した。年 齢、男女比、入室方法(自己申告、サー モスキャン、事前通報)は統計学的に有 意な結果ではなかった。
7)サーモスキャン入室者の実測値および 実測値によるフォローの違い(n=188)
表4に示されるように、サーモスキャ ンにて陽性の所見で健康相談室入室とな ったもののうち、実測値で38℃以上のも
のは42.5%に留まった(記載なしを除く)。
37℃未満の者は21.8%であった。しかし、
37℃以上のものにおいては、0.5℃刻みで
「要フォロー群」を検出する上での有用 性は高くなっていた。
(2)海外におけるインフルエンザパンデ ミックへの公衆衛生対応に関連する情報 収集
新型インフルエンザとして世界的大流 行が発生すると大きな被害が発生するこ とが懸念されているH5N1インフルエン ザは、特にインドネシアにおいてヒト感 染の報告が継続している。本研究グルー プでは、同国中央部に位置する南スラウ ェシ州において、基幹病院である国立ハ サヌディン大学付属病院群において、必 ずしも家禽との接触のない鳥インフルエ
- 20 - ンザ人感染疑い例や、他の呼吸器疾患を 含む重症呼吸器感染症(SARI:特にここ では重症ウイルス性肺炎)の病原体鑑別 を中心に据えた病原体サーベイランスを 開始している。定期的に、本サーベイラ ンスの進捗状況の確認、および、同州公 衆衛生部局において収集されている SARI関連疾患のサーベイランスデータ を収集し、それらの比較、および新型イ ンフルエンザに対する公衆衛生対応に関 する準備状況について情報収集を行って いる。
2012年度は12月中の渡航を行った。
得られた特記すべき情報としては、同州
におけるAnimal sectorから得られた鳥
インフルエンザに関する対応の情報であ る。鳥インフルエンザ(1月から4月が 多い)について、Commercial poultries については、ケージの中の鶏は殺すが、
周辺のケージの鶏は殺さないことになっ ており、ワクチンをすることもしないこ ともあるとのことである。ワクチンの実 施の判断および内容については、獣医の 指導のもとに農家自身が選ぶことが出来 る。Backyard poultriesについては、ウ イルスを持った鶏が動き回ることになる ので、その家屋に属する鶏が動き回る範 囲で鶏を殺す。Epi-centerからの距離な どの指針はない、とのことである。さら に、インドネシアで流通している鶏用の ワクチンはH5N1用であり、最近の流通 している承認を受けた正式なワクチンの みである。野鳥に関しては、animal
sectorとして対応する責任はないものの
(インドネシアではforestry officeが担 当)、家禽としてのDuckについては対応
に関して責任がある(2012年、インドネ シアではジャワ島東部およびスラウェシ 島においてもduckのH5N1による大量 死が報告されている)。以上の情報は、
2008年当時に得られた非公式情報の内 容よりさらに更新されたものである。
それ以外の情報については特に目新し いものはなく、医療機関において継続さ れているSARI強化サーベイランスと、
公衆衛生部局が収集している情報の内容 について一部の乖離が認められた。サー ベイランスの精度に関する分析は本研究 班における主題ではないため、本報告書 においては割愛する。新型インフルエン ザに対する特別な公衆衛生対応の強化が 予定されている等の情報は、2012年末時 点で同州保健部局からは得られていない。
D.考察
ここでは、本年度の活動の中で、検疫 所の通常業務として行われている健康相 談室での対応・機能に関する研究に関し て考察する。
新型インフルエンザに対する公衆衛 生対応の一つとしての水際対策を準備す るにあたり、通常の検疫所における感染 症の検出機能を正しく評価することは重 要である。特に、検疫所の日常業務とし ての健康相談室等の機能について、どの ような症候群・症状であればより有効に 感染症を検出しうるか、スクリーニング 方法の開発と共に分析することは有用で あると考えられる。医療職により医療上 のフォローが必要と考えた「指定病院紹 介」「空港クリニック紹介」「入室者近医 受診勧奨」を症例(要フォロー群)とし
- 21 - て、今年度は分析を進めることとした。
国内の主要な国際空港を対象に、現在、
複数の検疫所と協議に入ったところであ る。うち1つの健康相談室(空港検疫所 A)において暫定的に得られた情報から は、2011年は旅行者約3,000人のうち1 人が入室していた。
空港検疫所A健康相談室入室者は1〜 3月に多かった。20-30代で半数強を占め、
乳児・高齢者にて要フォロー率高であり、
注意すべき群として注目された。渡航先 はアジアが4分の3であった。入室者に おいては、医療上要フォロー群が62.5%
を占めた。以前はコレラ検疫を主として いた時代があり、その時代から移行して、
発熱性疾患に注目されるようになってき ている。発熱、咳、咽頭痛、鼻閉・鼻汁、
頭痛、関節痛が統計学的に有用な症状で あることが推定され、特に発熱・関節痛 はORが2以上であった。本研究のみか ら、特異的な疾患に関する情報は不明で あるが、前者にはインフルエンザが含ま れ、後者においてはデング熱やチクング ンニャ熱が含まれることは容易に想像で きる。
サーモスキャン陽性による検出で健 康相談室入室となった者全体で、その後
「要フォロー」となるかどうかを有用性 として検討した場合には、統計学的には 必ずしも有意ではなかった。これには、
様々な理由(例:日焼け、飲酒等)によ る避けられない偽陽性が一定存在するこ との影響が考えられ、スクリーニング手 段としての評価や工夫がさらに必要であ る。サーモスキャンの目的を単純なスク リーニングとすると、偽陽性が高くなる
ことは本来問題ない。必要な偽陰性の低 さを証明するためのさらなる証拠として、
例えばサーモスキャン通過者をランダム に選び、体温との相関を見ることなどが 考えられるかもしれない。本研究におい て、「発熱」と「関節痛」の症状として後 に要フォローとなる注目すべき症状であ ることの有用性と併せて、および、これ までにわが国の検疫所で検出された疾患 などより、発熱者を検出することが、特 にデング熱、チクングンニャ、マラリア については有用性が高いことが考えられ る。非特異的な症状が多く、また不顕性 感染の者も存在するインフルエンザに関 しては、発熱者を検知するには限界があ ると考えられるが、本人の病識や、感染 源等との接触の情報(いわゆる疫学的リ ンクなど)により注目することで、新型 インフルエンザ発生時の一定の検出能力 向上に寄与することが出来ると考えられ る。
以下が制限として考えられる。検査情 報が限定的であること、検査情報とライ ンリスティングとの突合が出来なかった こと、入力された情報のばらつき(特に 医療職コメント)、日々の検疫対象者数
(分母情報)が不明であること、ひとつ の空港検疫所のみの情報であったこと、
単年度のみの情報しか把握出来ていない ことなど、である。
今後、さらに他の検疫所などの協力も 得ながら、検疫所健康相談室において優 れて検出可能な症状・感染症について明 らかにし、特にインフルエンザの検出感 度を上げるために必要な提言を整理する。
また、感染症発生動向調査との連動の中
- 22 - で、幾つかの疾患について、入国後のフ ォローアップ方法のあり方についても検 討したい。
E.結論
我が国の検疫所における新型インフル エンザ対応能力(IHR、健康相談室等)
に関する評価の実施を、今年度は一つの 空港検疫所Aについて実施した。入室者 においては、医療上要フォロー群が
62.5%を占め、発熱、咳、咽頭痛、鼻閉・
鼻汁、頭痛、関節痛が統計学的に有用な 症状であることが推定され、特に発熱・
関節痛はORが2以上であった。サーモ スキャンでは偽陽性が一定頻度で存在し たものの、偽陰性が低いことが重要であ るスクリーニング手段としては問題が無 いことが考えられ、一定の有用性は示さ れた。他の疫学的なスクリーニング項目 を加えること等で、新型インフルエンザ 発生当初の水際対策の一つのツールとし ての有用性があるものと考えられる。来 年度に向けた課題として、本調査を他空 港に拡大する際に、有用な調査結果が得 られ、健康相談室の対応・機能を適切に
評価できるよう、データの収集項目を検 討することとする。
謝辞:今年度の研究を行った空港検疫所 Aにおいて、日頃、検疫業務に従事され ている皆様へ心より感謝申し上げます。
F.健康危険情報 なし
G.研究発表
1.論文発表(著書を含む)
なし 2.学会発表 なし
H.知的財産権の出願・登録状況 1.特許取得
なし
2.実用新案登録 なし
3.その他 なし
図1.
表1.自己申告による症状(複数回答)
図1.2011年の
表1.自己申告による症状(複数回答)
年のA健康相談室入室状況の推移(
表1.自己申告による症状(複数回答)
健康相談室入室状況の推移(
表1.自己申告による症状(複数回答)
23 健康相談室入室状況の推移(
図2.推定感染地域(
表1.自己申告による症状(複数回答)
健康相談室入室状況の推移(n=906)
図2.推定感染地域(
図2.推定感染地域(n=904n=904)
2011
指定医療機関搬送 空港クリニック紹介 近医受診指示 (重複あり)
表2.
図3.性別、年齢ごとの人数(
例を除く)
表3.「要フォロー群」(=入室者近医受診勧奨、空港クリニック紹介、指定病院紹介)
となった者に関連する因子の検討 2011年の要フォロー群
指定医療機関搬送 クリニック紹介 近医受診指示
(重複あり)
表2.要フォロー群の対応内訳(
図3.性別、年齢ごとの人数(
例を除く)
表3.「要フォロー群」(=入室者近医受診勧奨、空港クリニック紹介、指定病院紹介)
となった者に関連する因子の検討 年の要フォロー群 572 指定医療機関搬送
クリニック紹介
(重複あり) 計
要フォロー群の対応内訳(
図3.性別、年齢ごとの人数(
表3.「要フォロー群」(=入室者近医受診勧奨、空港クリニック紹介、指定病院紹介)
となった者に関連する因子の検討 572例の内訳
129 464 593 要フォロー群の対応内訳(n=572
図3.性別、年齢ごとの人数(n=913*
表3.「要フォロー群」(=入室者近医受診勧奨、空港クリニック紹介、指定病院紹介)
となった者に関連する因子の検討
24 例の内訳
0 129 464 593 n=572)
n=913*)、要フォロー率(
表3.「要フォロー群」(=入室者近医受診勧奨、空港クリニック紹介、指定病院紹介)
)、要フォロー率(*性別・年齢の情報の無い
表3.「要フォロー群」(=入室者近医受診勧奨、空港クリニック紹介、指定病院紹介)
性別・年齢の情報の無い
表3.「要フォロー群」(=入室者近医受診勧奨、空港クリニック紹介、指定病院紹介)
性別・年齢の情報の無い
表3.「要フォロー群」(=入室者近医受診勧奨、空港クリニック紹介、指定病院紹介)
性別・年齢の情報の無い2
表3.「要フォロー群」(=入室者近医受診勧奨、空港クリニック紹介、指定病院紹介)
表4(上)サーモスキャン入室者(
(下)実測値によるフォローの違い 表4(上)サーモスキャン入室者(
(下)実測値によるフォローの違い 表4(上)サーモスキャン入室者(
(下)実測値によるフォローの違い 表4(上)サーモスキャン入室者(n=188
(下)実測値によるフォローの違い
25
n=188)の実測値
(下)実測値によるフォローの違い
)の実測値
26
平成24年度厚生労働科学研究費補助金
(新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業)
Ⅱ.分担研究報告書
新型インフルエンザ等対策特別措置法の自治体における公衆衛生対応に必要 なツール開発
研究分担者 和田耕治(北里大学医学部公衆衛生学 准教授)
研究要旨:本研究では、新型インフルエンザ等対策特別措置法に関連した自治体の公 衆衛生対応に必要なツールの開発を目的とした。自治体において新型インフルエンザ 対策に携わる都道府県・市町村の担当者ならびに有識者 11 名にて委員会を設置し、
ご議論をいただいた。平成 24 年度は、今後危機管理担当者など健康に関する施策に 関わっていない人が新型インフルエンザ等対策特別措置法に関する議論を行うに当 たっての教育ツールが全国的に必要となる可能性があるため作成を行った。教育ツー ルは今後自治体担当者が版権フリーで利用が可能なようにした。さらに教育ツールの ビデオを作成した。ビデオは平成 23 年度にまとめられたインフルエンザに関するエ ビデンス集についても解説を作成した。来年度はさらに新型インフルエンザ等対策特 別措置法の政令などに対応するためのツールを自治体の担当者の委員などの協力の もとで特に市町村向けのものを作成する。
研究協力者
岩田 眞美 横浜市健康福祉局健康安全 部 医務担当部長
瀬戸 成子 川崎市役所健康安全室 室 長
小林 良清 長野県健康福祉部 健康長 寿課長
齋藤 實 元東京都総合防災部情報統括 担当課長
藤内 修二 大分県中部保健所 所長 廣川 秀徹 大阪市健康局大阪市保健所 管理課 医務主幹
前田 秀雄 東京都福祉保健局 保健政 策部長
三宅 邦明 石川県健康福祉部長 山崎 浩 大和市役所健康福祉部健康づ くり推進課 係長
山崎 哲 新潟市保健所 保健管理課感 染症対策室 主幹
吉田 英樹 大阪市健康局医務監兼保健 所感染症対策課長
矢野 岬 山梨大学大学院医学工学 総合研究部臨床研究開発学講座特任助教 長瀬 仁 小牧市民病院
27 A. 研究目的
本研究では、新型インフルエンザ等対 策特別措置法に関連した自治体の公衆 衛生対応に必要なツールの開発を目的 とした。自治体において新型インフルエ ンザ対策に携わる都道府県・市町村の担 当者ならびに有識者 11 名にて委員会を 設置し、ご議論をいただいた。
また、ご議論のなかでニーズの高かっ た市町村などの担当者向けの教育ツー ルの作成と、バランスの良い公衆衛生対 策のためにインフルエンザのエビデン ス集の解説ビデオを作成した。
B.研究方法
平成 24 年 6 月より本研究期間である 2 年間を任期として新型インフルエンザ等 対策特別措置法に関わりの深い自治体関 係者をもとに委員会の設置(新型インフ ルエンザ等特別措置法に関連した都道府 県担当者向けガイダンス検討委員会)を 行った。平成 24 年 7 月 27 日に第 1 回委 員会を行った。第 2 回を平成 25 年 2 月 4 日に開催した。
第 1 回目は、法令に関する説明と簡単 な質疑応答(内閣官房参事官平川幸子様)
の後に、1.各自治体の対策の現状 2.
本委員会での成果物のあり方などを検討 いただいた。
第 2 回目は、新型インフルエンザ等対 策特別措置法に合わせて自治体でどのよ うな議論が行われているかと本委員会で の今年度ならびに来年度の成果物につい て検討をいただいた。
C.研究結果
議論では公衆衛生対応を進めるために 必要なツールなどに関しては以下のよう な意見があがった。
・ 国は行動計画のモデルを提示す る。モデルに対する説明(解釈)があると モデルとセットになって良い。
・ 学校閉鎖の基準などは、国は言え ないのではないか。参考にしたい人が参照 できるツールとして、基準を策定するのは どうか。
・ 教育ツール(自治体職員のための ツール)
・ エビデンスに基づいて、非常に極 端なことが起きないような仕組みが必要。
予測がつかないことがかなりた くさんあって、エビデンスに沿って対応し ていくのは難しいのではないか。
・ 柔軟さやスピード等に沿って専 門家とコンサルしていく形が作れれば良 い。
・ 状況によって科学的根拠が変わ ってくるが、そういうことができる体制に なっていない。
・ 専門家集団とは何か、といった定 義づけが必要。
・ 判断をするために役に立つツー ルとは何か。
・ 全然違う病原体にも対応すると いうことなので、基盤を整えるべき。
・ 県で、市町村に対してどのような アドバイスをすれば良いのか。自治体では、
上が示すマニュアルや指針をそのまま名 称変更で使用しているケースもあるし、そ れが可能だが、市町村レベルではそれはで きない。市町村がどう考えるか、を示すこ
28 とができれば。
・ 国の指針を肉付けするようなも のがあれば良い。
・ 何が縛られているのか何が最良 なのかが確定していないと対応できない。
以上より、当面は新型インフルエンザ等 対策特別措置法がより具体化されるまで に時間を要することから教育ツールの開 発とエビデンス集の解説資料の作成を優 先して行うこととなった。
2回の議論を通して全国的な共通課題と して都道府県担当者があげたことは、市町 村への対応であった。市町村に対して都道 府県は情報提供のためのセミナーなどが 行われているが、新型インフルエンザ等の 感染症のイメージがつきにくいこともあ り極端な意見が多く示されると議論が進 まなくなる。そうしたことに対して基礎知 識を提供する場があれば良いであろうと のことで教育ツールを作成するようにと の要請があった。これらの教育ツールは最 終的には絵などを作成することで著作権 のないものとし、自治体関係者の方がある 程度自由に使えるものとした。
教育ツールは、既存の成書や、行動計画 などをもとに作成した。今後研究班のホー ムページで公開する。スライドは資料とし て本報告書に掲載した。
教育ツールは4章構成とし、入門編、初級 編、中級編、上級編とし、それぞれ15分ぐ らい(合計60分)で学べる教材とした。
また、昨年度作成したインフルエンザに 対する公衆衛生対策のエビデンス集につ いて医療従事者を対象としたビデオを作 成した。これらのビデオもYoutubeに掲載 した他、前述の教育ツールのビデオととも
にDVDを作成し、都道府県などの担当者に 配布した。なお。本報告書にそれぞれの分 担研究者の作成したエビデンス集の解説 ビデオの資料を添付した。
押谷仁先生にはエビデンスを政策に生 かすための基礎知識をまとめていただい た。神垣太郎先生には学校における休業措 置、砂川富正先生には水際対策、齋藤玲子 先生には抗インフルエンザウイルス薬と ワクチン、和田耕治が個人防御についてま とめた。
来年度の初めにむけて市町村がセルフ ラーニング形式で、体制などを考えること ができるツールの作成を開始した。ツール では、想定シナリオをもとにして検討が行 えるものを作成する予定である。また、今 後具体化される新型インフルエンザ等対 策特別措置法への対応をめざした活動に 支援を行い良好事例の収集などを行うな どして対策の新型インフルエンザ等対策 特別措置法への対応の推進をめざす。
D. 研究発表
1. 教育ツールとビデオの掲載
http://www.youtube.com/channel/UClcN 9dl97VY0HVjVgm4IhUQ?feature=watch なお、研究班のサイトにも掲載を調整 中である。
http://www.virology.med.tohoku.ac.jp/
pandemicflu/
2. Hirotsu N, Wada K, Oshitani H. Risk Factors of Household Transmission of Pandemic (H1N1) 2009 among Patients Treated with Antivirals:
A Prospective Study at a Primary Clinic in Japan. PLoS ONE 2012;
29 7(2):
e31519.doi:10.1371/journal.pone.
0031519
3. Sakaguchi H, Tsunoda M, Wada K, Ohta H, Kawashima M,Yoshino Y, Aizawa Y. Assessment of border control measures and community containement measures used in Japan during the early stages of pandemic (H1N1)2009.PLos One 2012;7(2):e31289
4. Wada K, Ezoe‑Oka K, Smith DR.
Wearing Face Masks in Public During the Influenza Season May Reflect Other Positive Hygiene Practices in Japan. BMC Public Health 12;1065,2012
5. Wada K, Smith DR. Factors Associated with Intention of Influenza Vaccination among working age in Japan: Results from a National Cross‑Sectional Survey.
Plos One(in press)
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平成24年度厚生労働科学研究費補助金
(新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業)
Ⅱ.分担研究報告書
新型インフルエンザ等発生時の診療継続計画作りに関する研究
研究分担者 吉川 徹 公益財団法人労働科学研究所国際協力センター(センター長、医師)
研究要旨
我が国の新型インフルエンザ等の公衆衛生対策の再構築に関連して、病院機能維持等に関する準備 が必要である。特に、特措法では医療等の公益的事業を含む法人を指定公共機関、指定地方公共機 関として定めることとされている。しかし、平成25年春の特措法施行後、各医療機関が業務継続計 画を策定する際の参考となるようなマニュアルは限られている。そこで、本研究では平成20年度厚 生労働省科学研究費において「新型インフルエンザまん延期の診療継続計画作りワークブック」を 参考に、新たに「新型インフルエンザ等発生時の診療継続計画作りの手引き」を作成した。平成21 年のインフルエンザA/H1N1の国内外での流行から、地域毎、病院規模毎、病院機能毎等に新型イ ンフルエンザ等発生時の診療継続方法が異なっているとの経験から、診療所、中小病院、大病院な どの機能毎に診療継続計画のモデル的なマニュアル(手引き)の必要性が指摘されていることから、
各団体に意見を「新型インフルエンザ等発生時の診療継続計画作りの手引き」の見直しにあたり、
病院ヒアリング、文献調査、記述項目の洗い出し、ドラフト作成、公開という5つのステップで研 究を実施した。特に、診療所、中小病院、大病院などの機能毎に診療継続計画のモデル的なマニュ アル(手引き)は異なると考えられることから、ステークホルダーとなる病院関連団体として、日 本医師会、全日本病院協会、日本病院協会の理事を研究協力者として協力を依頼し、多面の角度か ら意見を伺い、手引き作成に反映させた。その結果、1)地域での位置づけをはっきりさせた診療 継続計画の作成、2)初動体制を中心とした手引き、3)見出しなどを中心とした非常に簡便なマ ニュアルが有用であるとの意見が整理された。これらの結果に基づき、「本手引きの目的・利用法」
「新型インフルエンザ等の基礎知識と特措法」「診療継続計画(BCP)の策定、運用の要点」「診療継
続計画(BCP)作成のための具体的なヒント(10項目)」「付録」の5章からなる冊子を作成した。付
録には、大病院、中小病院、診療所・クリニックでの診療継続計画(BCP)の見出し例や有用な資料 などをつけることとした。診療継続計画は、各施設においてまず作成することが第一歩であり、本 手引きの活用により、各施設における診療継続計画作りが進むことが期待される。
<研究分担者>
吉川 徹 公益財団法人労働科学研究所国際協 力センター(センター長、医師)
<研究協力者>
和田耕治 北里大学医学部公衆衛生学(准教授、
医師)
小森 貴 日本医師会(常任理事、医師)
木村 哲 一般社団法人日本病院会(理事、医 師)・東京逓信病院(病院長)
永井庸次 社団法人全日本病院協会(理事、医
師)・ひたちなか総合病院(院長)
小木和孝 公益財団法人労働科学研究所(主管 研究員、医師)・国際産業保健学会(会長)
黒須一見 荏原病院看護部(看護師長、感染管 理認定看護師)
石丸知宏 日立横浜病院小田原健康管 理センター(産業医、医師)
53
<目次>
A.研究目的 ... 54 B.研究方法 ... 54 1. 手引き作成の手順 ... 54 2. 手引き作成ステップの具体的内容 ... 55 3. 成果物のイメージ ... 57 4. 倫理面への配慮 ... 57 1) 倫理的配慮1(調査の方法) ... 57 2) 倫理的配慮2(収集資料の取り扱い)
58
C.研究結果 ... 58 1. ヒアリング結果の概要 ... 58 診療所・クリニックにおける手引き作成視 点(日本医師会理事、小森先生) ... 58
C1-1-1 対象について ... 58 C1-1-2 内容量について ... 58 C1-1-3 掲載形式について ... 58 C1-1-4 ひな形の内容について ... 58 大規模病院における手引き作成視点(日本 病院会理事、木村氏) ... 59
C1-2-1 職員の感染予防策を徹底する . 59
C1-2-2 新型インフルエンザ流行時のシ
ミュレーション ... 59
C1-2-3 診療継続計画(BCP)の共通事項
及び診療継続のために整備すべき事項 59
C1-2-4 指定病院・指定協力病院と一般病
院、クリニックの具体的役割 ... 60 中小規模病院における手引き作成視点(全 日本病院協会理事、永井先生) ... 61
C1-3-1 診療継続計画(BCP)の枠組み .. 61 C1-3-2 診 療 継 続 計 画(BCP)の 基 本 事 項・具体的内容 ... 61
C1-3-3 平成20 年度の手引きに関するコ
メント ... 62
C1-3-4 平成20 年手引きの分析チャート
... 62 2. 新型インフルエンザ等特別措置法に関連 した都道府県担当者向けのガイダンス検討委
員会での手引きに関する意見 ... 62 C2-1 診療継続計画(BCP)の枠組み ... 62
C2-2 診療継続計画(BCP)の基本事項・具
体的内容 ... 63 3. ヒアリングの集約結果... 63
C3-1 診 療 所 ・ ク リ ニ ッ ク か ら の 視 点 小森 貴先生(日本医師会常任理事) . 63
C3-2 中小病院からの視点 永井庸次
先生(全日本病院会常任理事) ... 64
C3-3 大病院からの視点 木村哲先生
(日本病院会常任理事) ... 64
C3-4 地域医療からの視点 新型イン
フルエンザ等特別措置法に関連した都道 府県担当者向けのガイダンス検討委員会 ... 65 4. 欧州WHO、パンデミック対策手引きの 要点 ... 65
C4-1 書籍の概要 ... 65 C4-2書籍で注目すべき点 ... 66 5. 3つの調査から得られた手引きに反映さ れる視点 ... 67 D.考察 ... 68 E.結論 ... 68 F.健康危険情報 ... 69 G.研究発表 ... 69 H.知的財産権の出願・登録状況 ... 69 I.引用文献リスト ... 69 添付資料 1-1 ヒアリング調査結果要約1(日 本医師会) ... 70 添付資料 1-2 ヒアリング調査結果要約2(日 本病院会) ... 71 添付資料1-3 ヒアリング調査結果要約3(全日 本病院会) ... 74 添付資料1-3-1永井先生提供資料の要約 ... 76
添付資料 1-3-2 新型インフルエンザ診療継続計
画分析チャート(1) ... 78
添付資料 1-3-3 新型インフルエンザ診療継続計
画分析チャート(2) ... 79
54 添付資料 2-1 都道府県担当者向けのガイダン ス検討委員会でのヒアリング ... 80
A.研究目的
病原性が高い新型インフルエンザや同様の危 険性のある新感染症対策のための新たな法制度 として「新型インフルエンザ等対策特別措置法」
(以下、特措法)が平成24年5月11日に公布さ れ、平成25年春に施行予定となっている。平成 21年の新型インフルエンザは病状の程度がそれ ほど重くないものであったが、今回の法改正に 関連して我が国の新型インフルエンザ等の公衆 衛生対策の再構築に関連して、病院機能維持等 に関する準備などの研究が必要とされている。
特に、特措法では医療等の公益的事業を含む 法人を指定公共機関、指定地方公共機関として 定めることとされており、指定(地方)公共機 関は、新型インフルエンザ等対策に関して業務 計画を作成する必要がある。また、医療の提供 業務等を行う事業者として事前に厚生労働省に 登録を受けている者(「登録事業者」と呼ばれ る)は、新型インフルエンザ等が発生したとき において、医療の提供を継続的に実施するよう つとめなければならないとされる。平成25年春 の特措法施行後、各医療機関が業務継続計画を 策定する際の参考となるようなマニュアルは限 られており、平成21年の新型インフルエンザ
(H1N1)の流行時の知見を生かした手引きの作
成が望まれている。
そこで、平成20年度厚生労働科学研究費にお いて「新型インフルエンザまん延期の診療継続 計画作り」が作成されていることから、本研究 では、この手引きを参考に新たに「新型インフ ルエンザ等発生時の診療継続計画作りの手引き」
を作成する。特に、平成21年のインフルエンザ
A/H1N1の国内外での流行から、地域毎、病院
規模毎、病院機能毎等に新型インフルエンザ等 発生時の診療継続方法が異なっているとの経験 から、診療所、中小病院、大病院などの機能毎 に診療継続計画のモデル的なマニュアル(手引 き)に必要な内容を整理したものを作成する。
B.研究方法
1. 手引き作成の手順
「新型インフルエンザ等発生時の診療継続計 画作りの手引き」の見直しにあたり、主に以下 の5つのステップで研究を実施した。特に、診 療所、中小病院、大病院などの機能毎に診療継 続計画のモデル的なマニュアル(手引き)は異 なると考えられることから、ステークホルダー となる病院関連団体にヒアリングを行う方針と した。特に、日本医師会、全日本病院協会、日 本病院協会の理事を研究協力者として協力をお 願いし、多面の角度から意見を伺い、手引き作 成に反映させる方針とした。
5つのステップを図表1−1に示した。