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失業時生活保障システムの再構築-公的扶助と雇用政策の交錯-: 沖縄地域学リポジトリ

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(1)

Author(s)

嶋貫, 真人

Citation

沖縄大学人文学部紀要 = Journal of the Faculty of

Humanities and Social Sciences(5): 87-105

Issue Date

2004-03-31

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12001/6086

(2)

失業時生活保障システムの再構築

一公的扶助と雇用政策の交錯一 嶋貫真人 要約

近年の深刻化しつつある失業状況の中にあって、労働市場政策の一環である雇用保険

制度は、失業労働者の生活保障装置としては、非常に限られた範囲でしか機能していな

い。他方、生活保護の受給者は、高齢者などの非稼動層に収束していく傾向にあるため、

労働市場との接点は極めて少ないといえる。すなわち、わが国においては、雇用保険制

度と生活保障制度とが、互いに連絡を取り合うことなく、全く別個に機能しているため

に、両者の間に大きな不連続領域が発生しているのである。本稿は、このような雇用保

険制度と生活保護制度との狭間に抜け落ちている失業労働者の生活保障制度のあり方

に関して、新たな立法政策の提言を行うものである。結論として、本稿では、従来の

「雇用保険か公的扶助か」という二分法の発想を払拭し、「生活を保障しつつ、就労の

支援も行う」というpolicymixの視点に立った、第三の道の構築が必要であることを

指摘している。

キーワード:労働市場適合性、政策間の連携、ワークインセンティブ

第1章序論 第1節はじめに 本稿は、公的扶助(主として生活保護)と 雇用保険との狭間に抜け落ちている失業者の 生活保障のあり方を探りつつ、いかにしてそ れらの者をもう一度労働市場に復帰させてい くのかに関する立法政策論の提示を試みるも のである。 1990年代から上昇基調で推移を続けてい るわが国の失業率は、98年以降男女ともに上 昇傾向が一層加速し、2001年11月には完全失 業率が調査開始後初めて55%に達している。 しかも最近10年間で、失業期間1年以上の失 業者(以下「長期失業者」という。)の増加が 著しく、2003年l~3月期には112万人(長 期失業率L7%)に達している(1)。 このような雇用情勢の中にあって、失業者 世帯の生活が厳しいものになるであろうこと は、想像に難くない。厚生労働省監修『労働 経済白書』(2002年)によると、勤労者世帯 のうち世帯主年齢が40~59歳であるものの 実収入平均をloOとしたときの失業者世帯 (世帯主年齢同じ)の実収入平均は、他に有 業の世帯員が存在する場合で57、存在しない 場合だと37となっている(2)。 一般に、働いていた者の稼働収入が失われ た場合に、その世帯の家計を支える主な手段 としては、他の世帯員の稼働収入、貯金の切 り崩し、親族からの仕送り、社会保障給付な どが考えられる。前記『労働経済白書』によ ると、他に有業者がいる失業者世帯において は、世帯の実収入の544%を有業者の稼働収 入が占め、社会保障給付の31.7%がそれに次 ぐ。しかし、他に有業者がいない世帯におい ては、社会保障給付が最も大きな割合である 40.1%を占めている。すなわち、世帯主が失 業した場合、配偶者などの世帯員が働いてい る場合にはそれらの者の収入によって家計の 圧迫度はある程度緩和されるものの、そうで ない場合(配偶者などが働いていない世帯お よび単身世帯)においては、雇用保険を中心 とする社会保障給付が、生計を維持するため -87-

(3)

帯員の収入)に依存しつつ生活しているとい うことであり、そのうちのかなりの割合(特 に単身者)が生活保護の受給を必要とする程 度に困窮しているのではないかと推測される (2)生活保護の受給状況 そこで生活困窮者に対するもうひとつの社 会保障給付である生活保護の適用状況につい てみてみることにしよう(7)。 2002年度(年間平均)の被保護世帯総数は 86.9万世帯であり、そのうち働いている者の いない世帯は76.6万世帯である。この76.6万 世帯の中に、完全失業者はどのくらい含まれ ているのだろうか。 76.6万世帯の世帯類型別内訳をみると、386 万が高齢者世帯(65歳以上の者のみで構成さ れている世帯)、29.2万が傷病・障害者世帯 (世帯主が傷病・障害者である世帯)、38万 が母子世帯、4.7万がその他世帯となってい る。このうち完全失業者としてカウントされ ている者、すなわち稼働の意思と能力をもつ 者が含まれているのは、母子世帯の大部分(8) とその他世帯の一部分のみ(9)であり、それ以 外の世帯類型にはごくわずかしか含まれてい ない('0)と考えられる。したがって、その数は おおよそ3万人から8万人の範囲('1)というこ とになるであろう。 このように働いている者のいない被保護世 帯約76万の少なくとも9割が非労働力人口で あるということになるから、完全失業者であ りながら生活保護を受給している者はごくわ ずかしかいないということになる。 の重要な手段となるということである。 そこで、以下ではまず、失業者の家族構成 別にみた雇用保険給付の受給状況および生活 保護の受給状況をみていくことにする。 第2節現状分析 (1)失業者の家族構成と雇用保険給付の受給 状況 総務省「労働力調査(詳細結果・平成14年 平均)」によると、完全失業者359万人を世帯 構成別内訳でみると、失業者自身が世帯主で ある者は男女合わせて150万人であり、かつ そのうち単身者は49万人となっている。ま た、調査時点で1年以内の失業期間の者は254 万人おり、これらの者について前職の雇用形 態別内訳と家族構成別内訳とを重ね合わせて みると、失業後1年以内の世帯主は76万人 (1年以上の世帯主は74万人)であるが、そ のうち前職が非正規雇用(日雇い、パート 派遣労働等)であった者は、男女合わせて21 万人である。これらの事実から、以下のよう なことが指摘しうる。 第1に、完全失業者のうち約42%(150万人 /359万人)が世帯主であり、また14%(49 万人/359万人)は他世帯員の収入で家計を 補填されえない単身者である。第2に、失業 後1年以内の世帯主76万人のうち、前職の雇 用形態からみて雇用保険の被保険者である可 能性が低い非正規雇用労働者(3)が、失業後1年 以内の世帯主だけで少なくとも18万人前後(上 記の21万人から日雇雇用保険受給者数2.7万 人を除いた数)(4)は存在するということにな る。さらに失業後1年以上を経過すると、雇用 保険給付の受給者はごく少なくなる(5)ので、 世帯主である完全失業者全体のうち、上記18 万人と1年以上の失業者74万人を合計した約 92万人は、雇用保険給付を始めから全く受け ていないかまたは給付期間が終了している者 であると考えられる(6)。第3に、以上2つの 考察を重ね合わせると、世帯主失業者150万 人のうちの61%に相当する約92万人が雇用 保険以外の収入(貯金の切り崩しないし他世 第3節問題の所在 わが国の失業労働者の状況に関する以上の 分析を通じて、以下のような問題を指摘する ことが可能である。 労働市場政策の一環である雇用保険制度 は、失業労働者の生活保障装置としては非常 に限られた範囲でしか機能しておらず、特に 非正規雇用労働者(縁辺労働者)が失業した 場合には、失業給付を受けられない場合がほ とんどである。他方で、生活保護法は労働市 -88-

(4)

場の外で機能しており、労働市場との接点は

極めて少ない。したがって、雇用保険給付も

生活保護の適用も受けられないまま生活が困

窮していく失業者が両制度の狭間に大量に発

生しており、それらの者は、生計を維持する

経済的基盤が全くないまま失業が長期化して

いくため、新たに技能を修得するなど自らの employabilityを高めていくための方策を

講ずることも、あるいは求職活動を続けるこ

とすらもできないまま、ますます労働市場から

遠ざかっていくことになる。そしてその中の

一部は、やがて就労意欲そのものを喪失して、

経済社会から完全にドロップアウトし、ホー

ムレス化の運命をたどることになるであろう。

換言するならば、わが国においては、雇用

保障制度と生活保障制度とが互いに連携する

ことなく全く別個に機能しているために、そ の間に大きな不連続領域が発生しており、こ

のギャップに落ち込んだ者は、所得保障の面

でも就労支援の面でも、公的機関の関与を全

く受けることなく放置されているおそれがあ る。そして前節にみたとおり、その数は決し て無視することのできない数字に達してお り、経済社会全体に与える影響も小さくない ものと思われる。

本稿では、このような雇用保険法と生活保

護法の狭間に抜け落ちている失業労働者の生

活保障制度のあり方に関して、新たな立法の

提言を行うものである。

の軽視ないし無視が生じてきたという(13)。ま

た、このような失業給付の雇用政策への従属

傾向の結果として、雇用保険法が現実にカ

バーしている範囲が徐々に縮小していくこと の問題の指摘は、労働経済学者の中からもな されている('1)。しかし、先に指摘したような

雇用保険法と生活保護法の中間領域を埋める

ための施策については、十分な検討がなされ てこなかった。

他方、このように雇用保険法が失業労働者

に対する生活保障機能をはたせなくなってい

く中で、もう一方の所得保障制度であるとこ

ろの生活保護法の現状についても、その問題

性が指摘されている。清水浩一氏らによれば、

生活保護の受給者は、長期的に見て、「非稼働・

単身の高齢・傷病・障害者世帯」といった「被

m救層」に収束しつつあるという「保護の硬

直化」が最大の問題であるとされている05)。

つまり生活保護法は、稼働能力をもつ壮年以

下の者にとっては、失業時の生活保障装置と

しては極めて限定された機能しかはたしてい ないと考えられているのである。 第2節外国制度に関する研究

第1章で提示した本稿の課題認識に立つな

らば、公的扶助と雇用保険との間の空白領域

を埋めるための所得保障制度の構築の形態を

どのようなものとしていくのかが、まず最大

の関心事となる。この点で、無拠出の失業扶

助の形でこの空白領域を埋め、なおかつこの

給付を失業の長期化防止(労働市場復帰促進)

策と結びつけたイギリスの立法例を検討する

ことは、本稿の課題を考えていくうえで非常

に有効なアプローチとなるはずである。

イギリスの制度について紹介した先行研究

はあまり存在しないが、比較的最近のものの

中ではほとんど唯一の研究である丸谷浩介氏

の論文を外国制度に関する研究の代表として

あげておきたい(l6Xl7)。

イギリスでは1995年の求職者法制定に

よって、失業者に対するそれまでの所得保障

のあり方が抜本的に改革されている。すなわ

第2章先行研究の紹介と本稿の検討課題

第1節現行制度の分析に関する研究

雇用保険法等の失業立法が失業者の生活保

障機能を十分にはたすべきことについては、

早くは1970年代から荒木誠之氏によって指

摘されてきた('2)。同氏の指摘によれば、「失業

給付の本来なすべき生活保障が、はたして失

業保険法において十分であったか、という点

については、ほとんど検討された形跡はない」

にもかかわらず、失業保険法および雇用保険

法は雇用政策への傾斜を強め、社会保障原理

-89-

(5)

ながら現実にそれを活用する場がない(失業

中であって仕事が見つからない)者に対して

は、広く公的扶助による生活保障機能の網を かぶせていこうとする立場に立つものと考え られる。 しかし、わが国における若年層の生活困窮 者に対する保護の捕捉率の極端な低さは、必 ずしもこのような保護の補足イ性に関する厳格 な法解釈だけで説明しきれるものではなく、 やはり制度利用者(およびそれを取り巻く一 般市民)による制度そのものに対する強い否 定的感'情、すなわちスティグマの問題を抜き にして語ることはできないだろう(20)。した がって、公的扶助の側から、その門戸を広げ る形で失業問題にアプローチしていこうとし ても、法解釈論だけでは克服することのでき ない社会的な心理障壁の問題が、依然として 大きく立ちはだかっているといえよう。 一方、雇用保険法については、そのカバー する範囲が縮小していく傾向に歯止めをかけ るべく、パート、短期間雇用などの縁辺労働 者の被保険者資格を拡張していくべきとの制 度改革論が布川日佐史氏等によって提示され ており(2')、現実にもパートタイム労働者への 適用拡大などにおいて、そのような動きがみ られる。また、既に保険適用の対象となって いる労働者についても、失業の長期化に対応 できる制度へと転換すべく、所定給付日数の 延長もあわせて主張されている(22)。 しかし、このような雇用保険制度の改革は、 あくまでも保険原理を堅持することを前提と した社会保険の枠内での議論であって、その ような枠組みそのものを見直す扶助原理との

関係についての検討は、いまだ十分な議論が

尽くされているとはいえない(23)。つまり、雇

用保険制度の側からの失業問題へのアプロー

チの研究においても、保険原理によって拾い きれない生活保障の問題については、フォ ローできていないといえるだろう。 ち、失業者に対する所得保障を拠出制の社会

保険と無拠出制の公的扶助の二本立てからな

る制度に再編した。そして、そのいずれにつ いても、求職に際しての希望条件等を記した 求職者同意書(jobseeker'sagreement)への 署名を要件として失業給付を行うこととし、 所得保障の仕組みの中にworkincentiveの 考え方を明確に組み込む形へと移行した。 このような制度改革により、一方で失業率 の低下に向けて一定の成果をみたものの、他 方で求職者同意書の内容が、その作成にあた る雇用事務官の広範な裁量によって、一方的 に変更(例えば、賃金などの雇用条件の切下 げなど)され、結果的に求職者にとって不本 意な仕事に半ば強制的に就かされてしまうと いう大きな弊害も指摘されている('8)。 以上のように丸谷氏の論文においては、イ ギリスの制度の概要の紹介とそこで生じてい る問題が指摘されてはいるものの、わが国の 失業問題への適用可能性については全く言及 されていない。よって、本稿は、このような 外国の立法例に関する先行研究を参考にしつ つも、そのような外国の制度が、はたしてわ が国の失業問題の解決に向けてどの程度有効 性をもつのか、ということを最終的に考えて いくことになる。 第3節日本の失業問題に対する取り組み に関する研究 生活保護法4条の保護の補足'性要件のひと つである「稼働能力の活用義務」については、 現行実務上の法解釈のあり方に疑問を呈する

見解は多く示されている。代表的な論者とし

て、前田雅子氏は「医師の診断による健康状 態や一般的な求人状況をもって稼働能力をな お活用しうると認定し、保護の実施要件の充 足を否定するという判断方法は、申請者が現 におかれている生活困窮状況を勘案すると、 やはり疑問が残る。」として、現行実務の稼働

能力の認定に関する画一的判断のあり方を解

釈論上も批判している('9)。 つまり前田氏は、稼働の意思と能力があり 第4節小括

以上みてきた結果、失業労働者の生活保障

-90-

(6)

のあり方に関するこれまでのいくつかの研究 によってもなお検討されていない領域が残さ れていることが明らかになった。

荒木氏の論文によってわが国の失業給付が

労働者の生活保障機能としては不十分である ことが指摘されてはいるものの、現在のよう な失業者の急増および失業期間の長期化した 状況下での制度設計のあり方については全く

検討されていない。この点、外国制度を参考

にする際の材料として、イギリスの失業給付

制度の現状を紹介する丸谷氏の論文がある が、これにおいても、外国制度をわが国の失 業問題にどのように応用していくのかという 課題が残されている。 また清水浩一氏ら社会福祉プロパーの側か ら提起されている生活保護法の機能不全の問 題については、あくまでも公的扶助の枠内で

の制度改革論にとどまり、雇用政策との連携

についてまでは言及されていない。 前田氏の論文で示された現行生活保護法の 解釈論によるアプローチには、その実効』性の 程度についてなお疑問が残る。さらに布川氏 等による雇用保険法の改革論においては、保

険原理と扶助原理との関係に関する理論的架

橋のあり方という課題が残されている。 よって、本稿に先行するいくつかの研究を 通じて、なお未解明のまま残されている課題 とは、わが国の公的扶助と雇用保険とが相互 に連携を取り合う姿勢を全くもたないまま、 それぞれ独自の原理に基づいて固有の守備範 囲を守ってきたこれまでの状況に対し、どの ような制度によって対応していくのかという 点に要約されるであろう。そして、そのよう な問題状況の背景には、それぞれの制度が歴

史的・構造的に抱える問題(公的扶助につい

ては劣等処遇の思想、雇用保険については雇

用政策への従属傾向)が横たわっており、そ れ故に両者の間の溝を容易に埋めることがで きないまま今日に至っていると考えられる。 したがって、本稿に与えられた課題は、こ

の2つの制度に関する憲法原理上の関係にま

で遡りつつ、両者の間の理論的架橋を試みる ことであると考える。換言すれば、現行制度 の解釈・運用の枠組みにとどまらず、制度の

本質まで掘り下げた、新たな立法のあり方を

探究していくことが求められているといえる だろう。 第3章現行雇用保険法の分析と検討 第1節本章のねらい

本章では、まずわが国の雇用保険が失業者

の生活保障の手段として十分には機能してい ないという事実を指摘しつつ、その原因につ いて被保険者資格、給付水準の両面から検討 を行う。完全失業者の中には、配偶者その他 の家族の稼働収入によって失業中の生計を維 持できる者もおり、そのような場合には、必

ずしも雇用保険給付が生活保障のために不可

欠なものとはいえない。しかし、第1章第2 節にみたように、完全失業者の中には世帯主 である者が少なからず含まれており、そのよ うな世帯においては、雇用保険給付のカバー する範囲が縮小することは、失業者の生活基 盤の低下、ひいては勤労権の保障の後退に直 結する可能性が高い。したがって、まず雇用 保険給付の状況を知ることは重要であると考 えられる(第2節)。そしてそのような雇用保

険のもつ生活保障機能の理論上の限界を見極

めていく(第3節)。 第2節雇用保険給付の対象範囲の縮小傾 向に歯止めはかけられるか

完全失業者の中で雇用保険の給付を受ける

者の割合(以下「受給者比率」という)は、

長期的にみると低下の一途をたどっている。

83年には55.9%だった受給者比率は、99年

には33.3%にまで下がっている。 ところが、ここで注目すべき事実は、全雇

用労働者に占める雇用保険被保険者の割合(以

下「被保険者比率」という)は、83年の635% から99年の643%に至るまでほぼ横ばいであ り、長期的にみてもほとんど変化がないとい

う点である(型)。すなわち、受給者比率の低下

-91-

(7)

数の延長)を行うことによって、一定程度の 受給者比率の改善は可能であろう。しかし、 社会保険といえども保険制度の一つである以 上、民間保険のような厳格な「給付・反対給 付均等の原則」の貫徹はなくとも、やはり拠 出期間と給付期間との間には、一定の対応関 係が保たれなければならない。つまり、保険 事故が止むまで(再就職をはたすまで)の間、 無期限に給付を行うことは、理論的に不可能 なのであって、ii)の要因を操作することに よって受給者比率の改善を図るには、おのず と限界がある。のみならず、雇用保険給付の 期間を伸長したとしても、受給期間の終了間 際になるまで求職活動を開始しない者が必ず 一定割合存在するという「スパイク効果」も 指摘されており(27)、単純な給付期間延長措置 だけではモラルハザードを招来せしめるだけ で、かえって失業の長期化を促進するという 懸念も存する。 の原因は、被保険者比率の変化に起因するも のではなく、i)被保険者でない者の失業率が 上昇していること、Ⅱ)給付期間の過ぎた長期 失業者が増大していることの2点に集約され るのではないかと考えられる。 上記i).Ⅱ)の2つの原因のうち、i)に ついては、現行法が被保険者資格を少しずつ 緩和(パートタイマーの加入要件緩和等)し て、保険給付の人的対象範囲を拡張する方向 に進んできているにもかかわらず、そのよう な対象者の拡大の効果を打ち消して余りある 程の勢いで制度の外側において発生する失業 者が急増しているということを意味してい る。したがって、被保険者資格の緩和を、もっ と短期間にドラスティックに行えば、受給者 比率についてはあるいは改善できるかもしれ ない。 しかし、いずれにせよ、失業者の発生率に 関する保険制度の内外格差の問題は、「内と 外」との境界をどこに画するかという保険技 術上の操作を用いても、被保険者の範囲の広 狭の程度差をコントロールできるにすぎず、 内外格差の存在自体をなくせるわけではない いから、被保険者資格の有無で対象者を振り 分ける保険原理を維持する限り、決定的な解 決方法を見いだすことはできない。 次に、Ⅱ)については、わが国の雇用保険の 給付期間の設定の仕方が問題となる。現行雇 用保険法における所定給付日数は、一般の離 職者については90~180日間、「解雇、倒産 等による離職者」(特定受給資格者)について は90~330日間(障害者等の就職困難者につ いては150~360日間)である(法22条)(25) が、この日数はOECD諸国の中では最短のグ ループに属しているとされる(26)。このこと が、全体の受給者比率を引き下げる要因とし て作用し、とりわけ長期失業者にとっては、 雇用保険給付が生活保障制度として十分な機 能をはたしていないと批判されるゆえんとも なっている。 たしかに、前述の被保険者資格の問題と同 様に、保険給付の量的拡大(この場合給付日 第3節雇用保険給付の限界 以上のような検討の結果いえることは、雇 用保険制度は、失業者の生活保障システムと しては極めて限定された範囲でしか機能する ことができないということであり、そのよう な機能的限界は、被保険者資格の要件を緩和 するとか、保険給付日数を伸長するといった 保険制度の枠内での手直しではどうしても克 服することのできない、制度の限界からくる ものであるということである。このことをも う少し掘り下げて分析してみると、次のよう な理解が可能となる。 社会保険というのは、本来拠出と給付との 間の対応関係(もちろん民間保険におけるよ うな算術的比例関係とは違うが)を柱にした 保険原理に立脚した制度であるから、保険事 故発生時における被保険者の個々具体的な生 活上の需要(資産が残っているか否か、扶養 家族がいるか否か、稼働する他の世帯員がい るか否か等)を勘案しながら給付内容を決定 するものではない。すなわち、雇用保険の給 付内容は、失業前賃金水準と拠出期間の長短 -92-

(8)

だけで画一的に決せられるのであるから、被 保険者に対する「生活維持機能」(従前の生活 水準にできるだけ近いものを保障しようとす る機能)はある程度擬制されるものの、これ が現実の受給者の生活へのあてはめの結果、 生活上のニーズに即応した給付水準となって いるか否かということは、別途検討されなけ ればならない問題である。例えば、従前賃金 が比較的低かった勤続年数の短い労働者が、 多人数の扶養家族を抱えて失業した場合など を想定してみれば、雇用保険のもつ「生活保 障機能」の弱さは明白である。 換言するならば、雇用保険給付は、「従前賃 金を失う」という保険事故に対応する制度で はあるが、このことがイコール「生活困窮状 態を救う」ことを意味しないということであ る。すなわち第一に、雇用保険は保険原理に 支配された給付である以上、被保険者でない 者については、どんなに生活に困窮していよ うとも、はじめから給付の対象にはならない し、第二に、その給付水準・範囲は、離職前 貸金額と拠出期間という被保険者としての過 去の行動を主たる決定要素としているため、 現在の生活の困窮の程度とは全く無関係に確 定されている。 つまり、雇用保険の被保険者として、最も 有利な条件(給付水準と給付期間)をもって 退職した者であっても、失業期間が長期化し たり、生活上のコストが非常に大きかったり というように、保険制度上の有利さを打ち消 す程の不利な条件が保険制度外に存在したな らば、結果的に生活は困窮することになる。 逆に、最も不利な条件下で退職した者であっ ても、そのような不利な条件が生活の困窮に 直結しない場合もあるだろう。社会保険によ る生活保障機能の限界は、以上のような論理 的仕組みによって理解することができる。 したがって、失業労働者の生活保障として のセイフティーネットをより完全に構築して いくためには、どうしても雇用保険以外の制 度の併存が必要になってくるのである。 第4章現行生活保護法の分析と検討 第1節本章のねらい 前章で検討したとおり、雇用保険法は失業 者の生活保障機能の点で原理的に制約を抱え たものであり、したがって、その不足分をカバー する制度としては、現行制度上は生活保護法 がその中心的位置を占めるはずである(28)。す なわち、生活保護法による扶助は、社会保険 給付とは異なり、無差別平等原則(同法2条) に基づき支給決定の際には過去の拠出要件 の充足等を全く問わないし、給付水準の確定 にあたっては、必要即応の原則(同法9条) に基づき、あくまで現実の生活上のニーズに 見合ったものでなければならないとされてい る。これらの点で、雇用保険と比較したとき 失業者の生活保障機能として、生活保護法の 方が原理的に優れていることは明らかであ る。 ところが、序章でみたとおり、わが国の生 活保護制度は、稼働の意思と能力をもつ失業 者に対しては、ほとんど生活保障機能をはた していない。そこで本章では、まずわが国の 生活保護制度が労働市場とのかかわりをほと んどもたないまま、経済活動との接点のない 「特殊・例外的な人々」のみをその対象とす る方向へと歩んできている現状を分析する (第2節)。さらに、そのような現状に至った 原因であるところの現行法の解釈・運用上の 問題について検討を加えていく(第3節)。最 後に本章の結論を簡単にまとめる(第4節)。 第2節保護の硬直化の現状 ここでは、第1章第2節(2)で示した現在の 生活保護の実施状況について、雇用政策との 関連から分析を行ってみたい。 まず、保護受給者の中の「仕事をしていな い者」全体を、労働市場との距離の長短によっ てカテゴリー化するならば、距離の近い順に (a)元常用労働者、(b)元縁辺労働者(パート労 働者等の不安定雇用であった者)、(c)完全な非 就業者(高齢者、重度障害者等)の3つのグルー プを観念することができる。次に、第1章第 -93-

(9)

2節(2)で分析した被保護世帯の就労状況の データをこの3つの類型に重ね合わせてみる と、「仕事をしている者のいない世帯」の世帯 員の9割以上は、完全失業者ですらない、す なわち上記のに)にあたるということになる。 すなわち、日本の生活保護受給者は、労働市 場からは全く隔絶された層に収束しており、 失業者が再就職するまでの間、暫定的に生活 を維持するためにこれを利用するという使わ れ方は、ほとんどみられないというというこ とになる。 護を受給させることがその者の勤労意欲の低 下を招き、かえって自立を阻害する危険をは らんでいるという、いわゆる「惰民防止論」 の影響を受けた判|新に流れやすく(30)、保護要 件充足判断のメルクマールとしては、はなは だ法的安定性を欠くものであることは否定で きない。しかも、保護の要否判定の権限をも つ福祉事務所は、個々の保護申請者の置かれ た状況(年齢、能力の程度等)に対応した求 人が、実際にどの程度存在するのかといった 生の求人情報は全く持ち合わせていないの で、このような中で申請を受理した日からわ ずか14日以内に保護の開始・却下の決定を行 う(法24条3項)というのは、実際上極めて 困難な作業であるといえよう。 それゆえ、いきおい判断の根拠を医師の診 断書の内容や有効求人倍率の数字(3Dといった 客観的で他律的な材料に求めがちになり、例 えば申請者が若く、特段の病気もないまま職 に就けないでいれば、それだけで「努力が足 りない」という推定を働かせることになる。 そして、繰り返し述べるように、このよう な形式的・画一的な判断方法に流れてしまう ことは、「能力活用」を保護要件の一つとし、 なおかつその判断を行うための現実的・具体 的データを自ら持ち合わせていない中で仕事 をせざるをえない保護の実施機関にとって は、ある程度無理からぬことでもあるといえ よう(32)。 第3節現行法の解釈・運用上の問題点 このようにわが国の生活保護法が、失業者 に対する生活保障機能をはたせていない現状 をみるときその原因としては、i)制度設計 のあり方そのものに由来する問題、Ⅱ)現行制 度を所与の前提としつつ、その枠内での法解 釈のあり方に起因する問題という2つの段階 に分けて考えることができる。このうち、i) の立法論的な課題の検討については、第6章に 譲ることとし、ここではひとまずii)の解釈論 上の問題に焦点を絞って考えてみたい。 生活保護法4条1項は、「保護は、生活に困 窮する者が、その利用し得る資産、能力その 他あらゆるものを、その最低限度の生活の維 持のために活用することを要件として行われ る。」と規定している。この「能力活用要件」 の内容に関する厚生労働省の解釈は、①健康 状態、年齢、性別等を総合的に検討して稼働 能力を判定する。②実際にこの能力を活用す る機会が存在しない場合には、本人の求職に 向けた努力が認められれば、「能力活用要件」 の充足を認め、保護の適用を行う、というも のである(29)。すなわち、医師の診断書と一般 的な求人状況(有効求人倍率等)という客観 的判断材料をベースにしつつも、本人の「能 力」の程度と実際の求人とのミスマッチにつ いては、本人の「努力」という主観的材料に よって補填して判断するということである。 しかし、「努力の程度」というような極めて 主観的な価値判断を伴う問題においては、保 第4節小括 以上、本章で検討したことは、失業者に対 する生活保障制度として、雇用保険と並ぶも う一つの柱となるべき生活保護法は、稼働能 力をもつ(と思われる)者に対しては、極端 にその適用を狭める方向で解釈・運用が行わ れているという事実である。 このため、雇用保険の給付を全く受けられ ない(あるいは給付期間が満了した)失業者 は、多くの場合、労働市場への復帰問題以前 の「日々の生活をどうやって維持していくか」 というより切実な問題に直面させられるとい -94-

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うのが現実であって、この問題を克服しなけ

れば次の「失業状態からの脱却」というステッ

プにはたどりつくことができないのである。 イギリスの失業状況に関しては、18~24歳 の若年層の失業率が全体の平均の2倍に達す るということ、および長期失業者の割合が 361%(96年7月)と非常に高いということ が、特に問題視されている(33)。 このような失業状況を受けて、イギリスの 公的扶助である所得補助(incomesupport) の受給者のうち、1995年時点で失業者世帯は 29%を占めているが、これは所得補助の受給 者のうち31%を占める高齢者に次いで多く なっている。また、所得補助受給世帯の中に 占める失業者世帯の割合は、90年以降増加傾 向にあり、しかも95年時点での所得補助受給 失業者世帯のうち、10歳刻みの世帯主年齢別 構成比で、最大の割合を占めるのは20~29 歳という若年層の39%となっている(34)。 イギリスの失業の動向が、このような特色 をもったものであることから、必然的にその 雇用政策の力点は、若年者の長期失業化につ いてどのように対処していくのか、という部 分に置かれることになる。 (2)1995年求職者法 90年代前半のイギリスの失業者給付は、上 に見たように、拠出制の失業者給付を受けら れない失業者(主として若年者)を公的扶助 の一種である所得補助が最終的な受けⅢとし て受け止めるという二段構えの構造をなして いた。そして、そのような二層構造の中で、 早期自立を図るための給付の引き締めが行わ れてきたということになる。 しかし、いかに保険・扶助共通の受給要件 をあてはめてみても、しょせん両制度は異な る法原理の下に、別個の法制度として別々の 行政機関が運用するものであるから、制度間 の連携や共通目標の設定には、おのずと限界 がある。 そこでイギリス政府は、95年に新たに制定し た求職者法(JobseekersAct)によって、従来 失業者給付と所得補助という2つの制度に分立 していた失業者に対する所得保障施策を抜本 的に再編し、これらを「求職者手当(jobseeker's allowance)」として一本化した。またその事務 第5章イギリスの制度の検討 第1節本章のねらい 前章までにみてきたとおり、わが国におけ

る失業者に対する生活保障制度は、雇用政策

(雇用保険法)の側からも、生存権(生活保 護法)の側からも不十分なものでしかなく、 その狭間の空白地帯に抜け落ちている失業者 たちは、所得保障の面でも就労支援の面でも、 全く公的関与がないまま放置されている。 そこで、本章ではこのような狭間の層に対 する雇用政策と社会保障政策との連携のあり 方の一つのモデルとして、イギリスの制度を

検討してみたいと思う。イギリスの現行制度

は、失業者に対する諸施策を、拠出制手当の 受給資格の有無と連動させず、拠出制・無拠 出制の両制度を一元的に「労働市場への復帰 促進」(workincentive)の観点から統合し、 体系化したものである。したがって、個々の 失業者手当受給権の法的根拠が保険原理に基 づくものなのか、扶助原理に基づくものなの かの区別はさほど重要な意味をもたない。つ まり、イギリスの制度においては、わが国に おけるように雇用保険給付も生活保護の適用 も受けられないまま生活が困窮していく失業 者を、原則として発生させないような制度の 仕組みをとっているのである。 このことは、わが国の制度全体のフレーム ワークをいったん相対化して、他と比較考察 する際には、極めて興味深い視点を提供して くれるはずであり、このような比較検討作業 を通じて、本稿が最終的に目指す立法論や制 度改革論の全体構造が、より明確にされてい くものと考えられる。 第2節1980年代以降のイギリスの失業状 況と雇用政策の展開 (1)イギリスの失業状況 -95-

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|ま、同一の行政機関(雇用サービス庁)に行 わせることとした(その結果、従来の所得補 助は、非就業者に対する生活保|庫制度へと純 化されることになった)。 (3)求職者手当制度の内容とその意義 求職者手当制度の具体的な内容は、おおよ そ次のようなものである。 労働者が失業した場合の所得保障は、第一 次的には拠出制の求職者手当によるが、この 手当の支給期間(6か月)満了までの間に再就 職できなかった者や、拠出要件(2年)を満た せず、はじめから手当の受給資格がない者、 あるいはまた拠出制手当の被保険者から除外 されている者(自営業者、低賃金労働者等) については、資産に関するミーンズ・テスト をパスすれば無拠出の求職者手当が支給され る。この無拠出の求職者手当については、拠 出制手当のような支給期間の制限はなく、要 件を充足している限りいつまでも支給は可能 である。つまり、この2種の手当の相互関係は、 その所得保障機能の側面だけからみるなら ば、保険原理と扶助原理との一般原則上の区 分に適合しているのである。 しかし、イギリスの求職者手当制度におい て特徴的なのは、手当の支給がただ単に失業 者に対する所得保障の機能を担っているだけ ではなく、個々の失業者の置かれた状況に応 じて、労働市場に復帰するために必要な支援 をあわせて行っていくという点にある。 例えば、失業期間が長くなった者に対して は、手当の支給の他に、再スタート面接(求 職活動の方法を随時吟味していくためのカウ ンセリング)、職業訓練、体験就業、ジョブク ラブ(失業者同士の交流を取り入れたグルー プワーク)への参加等の多様なメニューが用 意されている(351。また、幼児を抱える母親の ために保育サービス利用のアドバイザーを つける等の工夫もなされている(36)。 ここで特に留意すべき点は、このような対 人サービスは、拠出制手当・無拠出制手当の 区別に全く関わりなく付随しているものであ るということである。一般に、失業期間が長 くなる程(すなわち労働市場から遠ざかる程) に、経済的基盤以外の面での就労阻害要因も また深刻になっていくものと考えられる。ま た、元常用労働者よりは不安定就業者の方が、 同様の阻害要因を多く抱えているものと思わ れる。つまり、このようなきめ細かな対人サー ビスを真に必要とする人々は、相対的に無拠 出制手当の受給者の中に多く存在していると 考えるべきで、対人サービスの対象を手当の 受給者全体に広げておくイギリスのシステム は、実務的に見ても妥当な対応を可能にして いるものと思われる。 第3節95年求職者法の評価とわが国への 適用の可能性 (1)95年求職者法の評価 このように「労働市場への復帰インセン ティブ」機能に特化された公的扶助であると いう点が、イギリスの求職者手当制度の最大 の特徴である(37)。これは後述のとおり、給付 の引き締めに傾斜しすぎているという批判は あるものの、わが国には存在しない特異な所 得保障の形態であるため、本稿の問題関心か らは、わが国の問題状況に対する解決策の一 つの有力なオプションとして、評価・検討の 対象となる。すなわち、イギリスの現行制度 は、以下のようないくつかの点で有益な材料 を提供してくれていると思われる。 第1に、第3章でみたような保険原理に基 づく所得保障システムの限界を克服するため には、税によって運用される扶助主義に立脚 した給付とワンセットで提供されることが有 効である。この点に関し、イギリスの制度が、 雇用政策の観点から、保険原理に基づく拠出 制手当と扶助原理に基づく無拠出制手当とを 一体的に運用していることは参考になる。な ぜならば、これによって、過去の職歴や失業 期間の長短を問わず、ともかく本人に再就職 に向けた意思さえあれば(もちろんそのよう な内心の意思を客観的に表象する行動が伴う ことが必要だが)、どの失業者にももう一度 チャンスが与えられているという点で、極め -96-

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てフェアな仕組みであるといえるからであ る。 この点、日本の制度は、雇用保険のカバー する領域がパートタイマー等の縁辺労働者に 対しては限定的であるうえに、そのような保 険原理による制約を補完するための無拠出の 失業給付が雇用政策の分野には存在しないた めに、不安定就労層や長期失業者は、いかに 再就職に向けた強い意思をもっていようと も、失業給付にアクセスする途は閉ざされて しまっている。したがって、これらの者にとっ て、所得保障の形態を用いた労働市場への復 帰インセンティブが作用する余地は全くな く、再就職以外の方法で生活保障の手段を得 ようとするならば、むしろ逆に労働市場から 遠ざかっていることを受給要件とする生活保 護にたどり着くまで待つほかないということ になる。 つまり、日英を比較したとき、日本の制度 では、雇用保険が唯一の失業給付であるため に、失業者全体を見渡したときの労働市場復 帰インセンティブとしての効果は、イギリス と比べて極めて脆弱であるといえるだろう。 第2に、イギリスの求職者手当においては、 単に所得保障を行うだけでなく、失業期間の 長さや、ひとり親世帯等の社会的ハンディ キャップの有無を考慮に入れて、個々の世帯 の置かれた具体的状況に応じた対人サービス がきめ細かく用意されている点が重要であ る。 この点、日本の制度においては、雇用保険 の給付要件としての「労働の意思と能力」の チェックは、4週間に一度の職安への出頭によ るごく形式的な審査にとどまり、経済給付と 連動した対人援助の効果は、ほとんど期待し がたい状況にある(38)。その他には、雇用保険 の受給者だけに限定されない一般求職者向け の職業紹介業務はあるものの、これは履歴書 の書き方の助言や就職セミナーの開催等、求 人情報の提供に付随する内容にとどまり、 個々の失業者の状況に応じた支援プログラム までは構築されていない。 (2)現行制度の問題点 以上のような点において、イギリスの求職 者手当制度は、総じてわが国の現行制度と比 較したとき、失業者の生活保障施策としてよ り優れた制度であると評価しうるが、しかし これをそのままの形で日本に導入すればよい ということにはならない。イギリスにおける 仕組みを日本に適用するにあたっては、以下 のようないくつかの問題点について検討を加 えたうえで、わが国の実情に合った形に修正 を行うことが前提となるであろう。 第1に、求職者の「同意書」というのは、 多分にフィクション化しつつあり、実際には 雇用サービス庁職員の提示した求職条件が、 全く自分の意に沿わないものであったとして も、手当受給権を失わないために、しぶしぶ それに「同意」の署名をしているというのが 一般的傾向のようである(39)。 第2に、雇用サービス庁職員と求職者との間 の2週間に一度の話し合いの場は、今後の求職 活動の支援を行うというよりも、求職活動状 況を定期的に厳しくチェックすることで、「や る気」のない者を排除し、単に手当の支給対 象者を選別していくためだけのプロセスとし て機能していると批判されている(40)。 (3)わが国への適用可能性 最後に本章の結論として、イギリスの求職 者手当制度をめぐる評価を総括しつつ、日本 への適用の可能性を探る。 イギリスの求職者手当制度は、社会保障給付 のもつ負の側面(povertytrap)を克服するた めの仕組みとしては、確かに一定の効果をあげ てはいるものの、それは失業者のemployability を高めることによって労働市場の側から自然 に失業者を吸引する動きを喚起するというや り方ではなく、むしろ失業者の背中を力づく で押すことによって、無理矢理労働市場の中 に押し戻すというやり方に近いといえるので はないかと思える。 イギリスの求職者手当制度の現状から学ぶ べき点は、一方で保険原理に基づく手当と扶 助原理に基づく手当とを、雇用政策の観点か -97-

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ら一体的に運用することの有効性であり、他 方で就労インセンティブの形成要因としての 「強制」の契機と「非強制」の契機との使い 分けを誤ることによって引き起こされる弊害 という教訓であるといえよう。 社会保険と公的扶助との二本建てのスタイル を採用することが主流である(虹)。 問題なのは、この2つの所得保障制度を連結 する仕組み、あるいは両制度の相互関係をど う構築していくかということである。第4章で みたように、日本においては、公的扶助が社 会保険のカバーする領域からあまりにかけ離 れたところで機能しているため、両制度間の 連絡が全くといってよい程とれていない。こ れと対照的に、イギリスの制度では、第5章 でみたように、失業問題への対応に特化した 公的扶助が社会保険と緊密な連携をもちつ つ、それと一体化して運用されているという 点で、日本におけるような所得保障の空白地 帯が発生するという問題は生じない。しかし、 他面で求職者のemployabilityを高めるため の諸施策が所得保障の要件と緊密に連動しす ぎているために、本来求職者の自発」性にゆだ ねられるべき能力開発・職業訓練プログラム までもが、本人の任意性を封殺した形で受講 させられるという弊害が生まれている。 本稿に与えられた課題は、このような社会 保険と公的扶助との狭間の部分に位置する失 業者の所得保障のあり方につき、日本の社会 に適合した形で制度設計を行うことにある。 この「日本の社会に適合した制度」を考える とき、まず念頭に置かなければならないこと は、ただ単に「仕事が見つかるまでの間の生 活を保障する」というような事後的・対症療 法的施策では、社会のコンセンサスを得られ ないということである。つまり、この狭間の 部分を埋めるための所得保障制度は、雇用保 険給付のない失業者を対象とするのであるか ら、租税を財源とする扶助の形態をとらざる をえないが、これを稼働能力をもつ者に限定 して適用する以上、その支給要件は、再就職 の促進という最終目的から帰納されたプログ ラムと一体化されたものでなければ、とうて い納税者感情の承認を得ることはできないで あろう。 以上のように考えていくと、本稿では最終 的には以下のような提言を行うことを結論と 第6章立法論の提示 第1節総説 (1)前章までのまとめと問題点の整理 前章にみたように、イギリスの求職者手当 制度創設の根本的な動機は、稼働能力のある 失業者をいかにしてまず社会保障給付の対象 者から労働市場へと押し戻していくかという 点にあった。これに対して、わが国の現状は、 第1章にみたように、稼働能力のある失業者に 対して、いかにしてその稼働能力を活かしつ つ、社会保障の場面に登場させていくかとい う段階にある。つまり、ひと口に「失業者対 策」といっても、イギリスの制度が抱える問 題と日本のそれとでは、問題の出発点や前提 条件が全く異なっているのである。 日本において、今後の制度設計のあり方を 考えていくうえで、真先に解決しておかなけ ればならない課題は、稼働能力をもつ失業者 に対して、何らかの所得保障の網をかぶせて いく方策の構築である。つまり、求職活動の ための経済的基盤を整えながら同時にワーク インセンティブを高めていく手法を構築して いくことが、求められているのである。 そして、このような失業者の生活保障の形 態としては、社会保険による失業給付の形と、 税に財源を求めるミーンズテスト付きの扶助 の形の2つが考えられるが、第3章で検討し たとおり、前者による給付は、i)被保険者資 格の有無によって対象者をはじめから振り分 けてしまうこと、ii)保険事故発生時における 被保険者の個々具体的な生活上の需要に対応 するようには組み立てられていないこと等の 理由により、生活保障機能としては限界があ り、これだけで全ての失業者をカバーするこ とは不可能である。諸外国の立法例を見ても、 -98-

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して導くことになる。すなわち、失業者のう ち、雇用保険法の給付では再就職までの生活 の維持が不可能である者を対象とし、税財源 に依存する扶助の形態をとる新たな所得保障 制度の創設が必要であるとの考え方である。 この制度は扶助の形態をとるものではある が、その法目的は失業者の再就職促進という 点に向けられているという点で、生存権保障 を目的とする生活保護法とは一線を画するも のであるし、他方で保険原理によらないとい う点で、雇用保険法とも異なるものである。 しかも、失業者の中でも主として労働市場か ら脱落しかかっている者を対象として、対人 援助サービスと併せて提供されるという意味 では、種々の社会福祉援助法制とも密接な関 わりをもち、そのような対人援助プログラム の内容は、労働者が「仕事に就けないでいる」 事情にきめ細かく対応したものでならないと いうことになる。 (2)「就労支援」という公共政策の法的位置づけ 次にこのような就労支援に向けられた法 政策が、憲法体系上どのような位置づけにな るのかという点について考えてみたい。 ひと口に「失業者」といっても、労働市場 復帰に向けて必要とされる支援の程度や内容 は千差万別であり、そのような多様な支援の 形態と所得保障のあり方とを、どう有機的に 結びつけていくのかが重要な課題となる。そ れは、現行の生活保護法における保護の受給 要件としての能力活用義務を発展させていく こととは別次元の、積極的労働市場政策の一 環としての就労支援である。すなわち、労働 市場に復帰できる能力を身につけることを支 援するという点で、消極的な金銭給付の条件 設定とは全く異質な、価値創造的な支援活動 を意味する。 このように考えていくと、上記のような対 人援助の制度は、生存権を保障することを本 来的な目的とする生活保護法の枠内にとどめ ておくことは不適当であるということにな る。 なぜならば、国民の生存を最終的に担保す ることを本来の責務とする生活保護法の運用 の中には、労働市場の動向分析や求職者の employabilityのレベルの把握といった専 門・技術的ないし雇用政策的な裁量判断を持 ち込まない方が、憲法の生存権保障の趣旨に より合致したものになるといえるからであ る。 憲法25条1項にいう「健康で文化的な最低 限度の生活」を下まわる生活不能状態に陥っ た者に対応するための生活保護法は、「人間と してのギリギリの値切れない生活確保を図る 法制」(⑫)であって、そうであるがゆえに生活 困窮に至った原因のいかんを問わないという 無差別平等原則(生保法2条)が定められて いるのである。このような「緊急的生存権」(43) の保障は、最低限度の生活をとりあえず確保 したうえで、さらにそこからの向上を実現し ようとする国家の努力義務(憲法25条2項)と も、また稼働能力をもつ者のみを対象として、 いかにそれを労働市場で有効活用させるかに ついて規定した勤労権保障(同27条)とも、 明確に区別されるべき内容をもっている。し たがって、この「緊急的生存権」保障の要件 判断の中に、雇用政策上の広範な専門技術的 行政裁量を伴う就労支援活動を持ち込むこと は、上記のような憲法の重層的な保障構造を 無視することにつながりかねない。 以上要するに、就労支援という対人援助 サービス及びこれと結びついた金銭給付は、 あくまで憲法27条の勤労権保障に根拠をも つ施策なのであるから、生存権保障を基底に 置く生活保護法とは別個の法体系の中で実現 する方が、憲法の精神をより生かした立法態 度であるといえよう。 このように考えていくと、本稿で提言する 立法論は、失業者がemployabilityを完全に 喪失してしまう前に、もう一度労働市場に復 帰させるための援助を加えていく法制とし て、労働市場法ないし雇用政策法の一環とし て位置づけることができるが、同時にそれは ソーシャルワークの手法を用いた社会福祉援 助のための諸法制(身体障害者福祉法、母子 -99-

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い制度であるので、ここでは仮に「失業扶助」 と呼ぶことにする。 (2)失業扶助におけるワークインセンティブ の仕組み 失業扶助は金銭給付と種々の対人援助プロ グラムとが一体的に提供されるものである。 例えば、求職活動の方法に関する助言、幼児 の保育所未入所等の就労阻害要因の除去方法 に関するカウンセリング、本人の適`性に合致 し就職にも有利な技能修得プログラムの立案 等、およそ当該失業者の再就職に必要な社会 的・心理的援助の全てが、この範蠕に含まれ うることになる。 このようなemployability向上策の一環 としての強制の契機に関しては、第5章で検討 したイギリスの求職者手当制度の教訓も踏ま えつつ、以下のような点に留意しながら制度 設計を行う必要がある。 第1に、求職者に最もふさわしい援助プログ ラムの立案に関しては、その者との接触機会 が多く、またそれ故にその者の性格や職業上 の適'性をよく知る公共職業安定所の担当官の 専門技術的裁量判断に、基本的にゆだねられ るべきである。例えば、職業訓練や技能修得 によるemployability向上のための長期的 スキームの立案とか、求職努力として最低限 こなさなければならないノルマの内容の設定 については、求職者自身との十分な話し合い をもちつつも、最終的には公共職業安定所の 担当官の判断によって決めるほかないであろ う。 これに対して、基本的な社会生活適応能力に 問題があるために就職に至らない者(例えば、 約束した時間どおりに面接場所に行けないと か、面接時に清潔な服装で現れない、粗野な 言動で対応するなど)については、その者の employability向上のための対人援助の中核 をなすものは、第一次的にはソーシャルワー クの技法に基礎を置く社会福祉援助であると 考えられるから、そのような援助プログラム に従うこと自体は扶助の受給要件となるが、 その内容にどの程度強制の契機を含ませるべ 寡婦福祉法等)と境を接し、それらとの密接 な連携をとりつつ運用されていく制度である ということになる。 第2節「失業扶助」創設の必要`性 (1)無拠出制失業者手当導入の意味 前節で提案した手法を用いて就労再開に向 けた様々な援助プログラムを具体的に進めて いくことになったとしても、実際に就職に結 びつくまでの間の生活の保障手段が伴わなけ れば、このような援助方策は実質的に画餅に 終わってしまうことになる。つまり、当該失 業者について、雇用保険の給付期間が既に終 了している場合であっても、また最初から受 給資格自体がない場合であっても、本人が稼 働の意思と能力を有する者である以上、再就 職に向けた金銭面・対人援助面の両方で支援 を継続していくことが、憲法27条の勤労権保 障の精神に合致するということになる。 イギリスの95年求職者法は、まさにこのよ うな視点から保険原理に基づく拠出制手当と その受給資格のない(あるいは受給期間の満 了した)者のための無拠出制手当という二段 構えの所得保障制度を、同一法体系の中で運 用していこうするものである。日本において も、労働市場から脱落しかかっている失業者 をもう一度市場の内側に押し戻すためには、 どうしてもこのような所得保障の二層構造が 必要となってくる。すなわち、被保険者資格 の有無によって対象者を選別せず、なおかつ 対象者の現在の生活上の需要に即応した給付 内容をそなえた所得保障制度を新たに創設す ることによって、保険原理の限界を補うこと が可能になる。また同時にそれは、失業者の 生活保障と労働市場への復帰促進をあわせも つものとして機能させていくことが可能とな るのである。 このようにして、100%税財源に依存し失 業者に対象を限定した所得保障制度を、雇用 保険法の外側に創設すべきであるという結論 に至るが、これは同じく税によって運営され る生活保護法とは対象者を全く異にする新し -100-

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きかについては、直接援助にあたるソーシャ

ルワーカーの裁量判断を尊重する形で最終的

には公共職業安定所担当官が決定を行うこと になる。

第2に、上記のような広範な裁量判断の権限

を行使する公共職業安定所の給付担当官につ

いては、その専門性を担保するような任用の

システムを確立しておく必要がある。例えば、

任用資格として一定の適性試験の合格を条件

とするとか、研修の受講を義務づける等の方

法が考えられるし、同時に職務上の判断の公

平・中立性を保つために、身分の保障を与え

ておくことも必要であろう。いずれにせよ、

求職者の援助に必要な高度の専門技術的判断

を公共職業安定所の職員に行わせるために は、現在のスタッフを質・量両面にわたって 大幅にレベルアップしていかなければならな いだろう。 た第三の道を模索していくことが求められて いるということである。以上のような観点か らすれば、本稿で展開してきた憲法27条等に 関する法理論は、裁判規範としてよりも、む

しろ立法政策の指針として、この新たな生活

保障制度のフレームワークを提供しうるもの と考えている。

なお、最近特に若年層の失業の長期化が問

題とされてきている(")が、この若年失業者は、

中高年失業者以上に「雇用保険か公的扶助か」

という伝統的な二者択一的施策になじみにく

いグループであり、このような失業動向が今

後も継続するようであれば、本稿で述べたよ

うな新たな施策の展開は、ますますその重要

性を帯びてくるのではないかと思われる。

本稿において提言した以上のような立法論

は、制度のあり方についてのグランドデザイ

ンを示すものであり、具体的な実現に向けて は他の様々な事情を考慮する必要がある。例

えば、職安職員の増員のための財源創出可能

性や、担当部局間の具体的な連携の仕組み等

の実際的な問題が考えられるが、これらは別

途検討すべき課題としたい。 終章まとめと今後の課題

不況が深刻化するに伴い、長期失業者が増

え、失業期間中に自らの知識や技能が陳腐化

してますます再就職が困難になっていくとい う悪循環が定着しつつある。このようなプロ セスをたどって労働市場からドロップアウト してしまった者については、いつからか「労 働の意思」をもたない者というラベリングが

行われ、専ら福祉施策からの援助を受けるこ

とになって、彼らが再び雇用政策の対象者と

して登場する機会は事実上奪われてしまって いる。 しかし、本稿で検討してきたとおり、この ような失業者が雇用政策から見放されていく

プロセスには、単純に「自己責任」として片

づけることのできない、制度そのものが構造

的に抱える問題が横たわっているのである。

つまり、労働市場から脱落しかかっている者

の生活保障施策については、従来の「雇用保

険か公的扶助か」という二分法の発想を払拭

し、「公費によって生活を保障しつつ、就労の

支援も行う」というpolicymixの視点に立つ

(1)総務省統計局「労働力調査(平成14年平均)」

〈http://www・statgojp/data/roudou/ 2.ht、/〉

(2)厚生労働省監修『労働経済白書(平成14

年度版)』(日本労働研究機構,2002)157頁。

(3)ただし、2年のズレがあるが、平成12年

度「雇用保険事業年報」によると、日雇雇

用保険の受給者が27,000人いる。なお、日 雇雇用保険の支給日数は、特例給付の適用 を受けたとしても、最長60日までである。

(4)日雇雇用保険の受給者2.7万人(上記注

(3))が全員世帯主であるとは限らないが、

仮に全員が世帯主であると仮定した場合

の、21万-2.7万=約18万人が、失業後1 年以内の者でかつ雇用保険を受給していな -101-

(17)

ので、「働いていないその他世帯」が全員完 全失業者であると仮定した場合を最大値 (47万人)とし、逆に全員が完全失業者で ないと仮定した場合を最小値(0人)とした。 これらと前記の完全失業者である母子世帯 の推計値(3.8万-0.19万)を合計すると、3.6 万~8.3万の範囲ということになる。 (12)荒木誠之「雇用保障の法的課題」有泉亨 先生古稀記念論文集『労働法の解釈理論」 (有斐閣,1976)505頁以下。 (13)荒木・前掲注(12)論文516頁。 (14)布川日佐史「雇用保障政策と生活保障政 策との交錯」社保15号(2000)208頁以 下。 (15)清水浩一「生活保護法の硬直化とその歴 史的文脈」社会福祉研究62号(1996)21 頁。 (16)丸谷浩介「イギリス社会保障給付とワー クインセンテイブ」九大法学74号(1997) 1頁。 (17)社会保険と公的扶助の狭間の領域に対応 する外国の立法例を紹介した研究として は、他にドイツの制度に関する以下のもの がある。布川日佐史「就労扶助(Hilfezur Arebeit)に関する政府回答(上).(下)就 労扶助の基本データと連邦政府の見解」経 済研究(静岡大学)5巻1号(2000)77頁、 5巻2号(2000)143頁。同「ドイツ社会 扶助法『就労扶助」に関する自治体福祉財 政削減効果」経済研究1巻3.4号(2000) 95頁。 これらは、ドイツの雇用政策の一つであ る就労扶助、すなわち自治体による非営利 的就労機会の提供に着目した研究であるが、 本稿の問題関心は主として失業者に対する 所得保障のあり方に向けられているため、 ドイツの制度に関する先行研究については 触れなかった。 (18)丸谷・前掲注(16)論文33頁。厚生労働省職 業安定局編「労働市場政策と公共職業サー ビスの課題一OECDプラハ会議[2000]の 報告より』(日本労働研究機構,2002,以下 い可能性が高い世帯主失業者推計値の最小 値ということになる(最大値は21万人)。 (5)雇用保険の一般被保険者の所定給付日数 は、倒産・解雇などによる特定受給資格者 であっても最長330日(障害者等の就職困 難者については360日)である。その他に、 訓練延長などの延長給付制度がある(後掲 注(25))ものの、その適用割合は全受給者の 1割前後である。 (6)ちなみに、前掲注(3)「事業年報」による と、平成12年度の完全失業者全体でみる と、340万人のうち雇用保険給付受給者総 数は103万人で、約30%となっている。 (7)厚生労働省「平成14年度福祉行政報告 例」。 (8)生活保護を受給中の母子世帯7.5万のう ち2.8万が稼働している。 (9)その他世帯には、例えば両親と多子から 成る世帯、高齢の親と病気の子から成る世 帯などが含まれる。その他世帯7.2万のうち 2.5万が稼働している. (10)障害者世帯8.7万のうち0.9万が、傷病世 帯23.2万のうち1.7万がそれぞれ稼働して いるが、そのほとんどが福祉作業所などの いわゆる「福祉的就労」の従事者である。 (11)母子世帯で求職活動そのものをできない でいる状態というのは、例えば未就学の子 が保育所に入所できないでいる場合等、母 親の心身状況以外の家庭的条件が就労阻害 要因となっている場合がほとんどであると 考えられるので、その割合は全国平均の保 育所待機児発生率(5%)に近い数字(すな わち3.8万×0.05=1,900人)ではないか と推定される。なお、母子世帯において「稼 働の意思と能力」をもつのは、通常は世帯 主である母親一人だけであるから、就労者 数や「働いていない者」の数を考える際に は、世帯数をそのまま置き換えて考えてよ いものと思われる。 それに対して、その他世帯の方は、世帯 構成の内訳(年齢、続柄、健康状態等)自 体が雑多であり、推定を行うことが難しい -102-

参照

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