<東日本大震災特集>
福島原発事故に伴う食品の放射能汚染とその健康影響評価
秋田大学名誉教授 滝澤行雄
はじめに
平成23年3月11日、世界最大級M9.0、震度7という未曽有の東北地方太平洋地震が発生した。
巨大地震に伴う津波の襲来、その津波によって惹き起こされた東京電力福島第一原子力発電所の 事故は、地震から1カ月半が経った今なお事態鎮静化の見通しが立っておらず、被ばく地域はも とより、国内の多くの人々が放射性物質に対し不安を募らせている。
厚生労働省は被災当初、原発事故炉の周辺環境から通常よりも高い程度の放射能が検出された ことを受けて、平成23年3月17日に原子力安全委員会が定めた「飲食物制限に関する指標1)」を 暫定規制値として示し、これを上回る食品は、食品衛生法第6条第2号にあたるものとして食用 に供されることがないよう各自治体に通知した。本規制値は、食品衛生法の観点から緊急を要す るため、当面の間、食品健康影響評価を受けずに発効した。 厚生労働省は平成23年3月20日、
食品安全基本法(平成15年法律第48号)第24号第3項に基づき、食品健康影響評価を食品安全委 員会に求め、その結果を踏まえて必要な管理措置をとることにした。
ここに原発事故に起因する食品の放射能汚染の実態を鳥瞰し、緊急時の放射性物質に対する食 品健康影響評価の成果を考究し、参考に供したい。
放射性物質による環境汚染
放射能汚染の来歴:人類初の核爆発以来、度重なる核実験により生成された放射性物質は870 メガトン(TNT火薬に換算)を超えたと考えられる2)。核分裂生成物(fission products)は
89Sr、90Sr、144Ce、103Ru、106Ru、137Cs、140Ba、140La、131I、85Kr等で、このほか中性子誘導放射性 核種や核融合生成物の14C、239Np、239Pu、237Pu、237U、59Fe、60Co、65Zn等がある。これらは高く 成層圏に打ち上げられ、新旧の核種が入リ混じりながら今日なお、地上に降りまかれている。
核実験に伴う対流圏降下物は早期に降り積るため短寿命核種の影響が注目される。人体被ばく
キーワード:食品の放射能汚染・健康影響評価、飲食物摂取制限の指標導入 〒174-0064 東京都板橋区中台2丁目34-9
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放射線生物研究 46(2),2011 P108 ~ 117
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