ニット地の衣類乾燥機による乾燥
著者 片山 倫子, 川田 理会, 宮崎 伊津子
雑誌名 東京家政大学研究紀要 2 自然科学
巻 35
ページ 81‑86
発行年 1995
出版者 東京家政大学
URL http://id.nii.ac.jp/1653/00010562/
〔東京家政大学研究紀要 第35集 (2),P.81〜86,1995〕
一.−d一 bト地の衣類乾燥機による乾燥
片山 倫子,川田 理会,宮崎伊津子
(平成6年9月30日受理)
The Drying of Knit Fabrics by Laundry Dryers
Michiko KATAYAMA, Rie KAwADA and Itsuko MIYAzAKI (Received September 30,1994)
1.緒 言
前報1)でニット地を電気衣類乾燥機で乾燥した場合に 生じる試料布の表面状態変化を調べる方法として,布の 摩擦係数を測定する機器として開発されている摩擦感テ スターの応用を試みたところ,布の表面状態の乱れ具合 を摩擦係数μの変化として表わせることがわかった.そ こで本報では,綿および合繊のニット地を用いてガス衣 類乾燥機で乾燥を行ない洗濯・乾燥による収縮と,表面 状態変化を調べたところ,2.3の知見が得られたので
ここに報告する.
2.実験方法
2−1.試料布
試料布としては,表1に示した綿100%スムース(A とした),綿100%片面ネル(Cとした),ポリエステル 100%ジャージ(Eとした),ナイロン6100%ジャージ
(Hとした)の5種のニット地と綿100%金巾(Jとした)
の計6種類の,50cm×50cmの試料布を前処理せずその
まま使用した.
2−2.洗濯および乾燥方法
一定容量の負荷物にっいて20回繰り返し洗濯・乾燥を 行なった.
2−2−1.使用機器
電気洗濯機には家庭用全自動洗濯機として市販されて いる日立製作所㈱製KW−23LX型を用いた.ガス衣類 乾燥機には,一般に家庭用として東京ガス㈱で市販して いる松下電器産業㈱製MA−040−S( 乾太くん )
(乾燥容量4kg:GH機とした),およびコインランド リー用として市販されている三洋電機㈱製SCD−3050 G(乾燥容量5kg:GC機とした)を使用した.使用 したガス衣類乾燥機の使用を表2に,GH機の構造を図 1に,またGH機およびGC機のドラムの形状を図2に
示した.
表1 試 料 布 諸 元
試料(略号) 厚さ(㎜〉
綿10Q% スムース(未晒) (A) (㈱色染社製試験用繊維) 0.663 綿100% 片面ネル (C) (㈱色染社製試験用繊維) O,731
ポリエステル100% ンヤh...ン (E) (㈱色染社製試験用繊維) 0.619 アクリル100% ジヤージ (F) (㈱色染社製試験用繊維) 0,682 ナイロン6 100% ジヤージ (H) (㈱色染社製試験用繊維) 0.827 綿100% 金巾 (J) (日本油化学協会人工汚染布用白布) 0.330
服飾美術学科第2被服管理研究室
片山 倫子・川田 理会・宮崎伊津子 表2 使用したガス衣類乾燥機の仕様
乾燥機の種類
(略号)
家庭用ガス乾燥機
(GH)
コインランドリー用ガス乾燥機
(GC)
機種 MA・040・S(松下電器産業㈱製)
(東京ガス:乾太くん)
SDC−3050G(三洋電機㈱製)
製品寸法 幅6 9 4 aitn×奥行520㎜×高さ680㎜ 幅606㎜×奥行661nim×高さ1110mn1
製品重量 約32.Okg 約56,0kg
熱源 都市ガス LPガスまたは都市ガス
乾燥制御 電子制御式 出口温度サーモ(強・中・弱可変)内蔵
入口温度サーモ(固定設定)内蔵 過熱防止サーモ(2連)内蔵
ドラム回転数 48回/分 50回/分
乾燥容量 4㎏ 5kg
ドラム寸法 直径6051m×奥行360tntn 直径560㎜×奥行506曲 電源 100V、50Hz/60Hz 100V、50Hz/60HZ
ガス消費量 13A 4000kca1/h 1 2A 3890kcal/h
LPガス O,625kg/h 都市ガス 6500〜7500kca1/h
消費電力 250W 200W
風量 約3. 9㎡/分 5.5㎡/分(50Hz)、6.5㎡/分(60Hz)
ドラム
1
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煙候用 邸漏サーモλ9ット
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ドラムペルト切れ安 メインバーナ
ガス躍帳0 コントロールガバナ
(比9啄弁} 電磁痢
乾燥機 ドラムの形状
1β飯温厘用 サーミスタ
マルペ レト
GH
360回
φ6115闘
響一噌一一
G二:::一一,一響
高さ(沿㎜のバッフル3個 容積:0.103 m
GC
506㎝
φ560面
一 一 一 冒 , 一 一
F二ニニニニ [一,一一一
高さ90㎜のバッフル3個 容積 :0.124m菖
竃碕嘗?
図1 ガス乾燥機(GH機)の構造図 図2 使用したガス衣類乾燥機のドラムの形状
ニット地の衣類乾燥機による乾燥 2−2−2.洗濯方法
洗濯は標準コース(洗剤洗いを12分間,すすぎ3分間 を2回繰り返し脱水を5分間おこなう)によった.使用 洗剤は市販の弱アルカリ性洗剤を用い,その標準使用量 で洗った.
2−2−3.乾燥方法
負荷量としては試料布と補助布(平織綿白布90cmX9 0cm)を組み合わせそれぞれのガス衣類乾燥機の乾燥容 量の1/4量および4/4量にっいて実験を行なった.ファ
ジーセンサーによる乾燥方式のGH機については,乾燥 容量の1/4量,4/4量共に標準コースによる乾燥を行なっ た.一方GC機はタイマーにより乾燥時間を設定する方 式であったたあ,乾燥容量の1/4量にっいては25分間,
4/4量については75分間の乾燥を行なった.
2−3.洗濯・乾燥による表面状態変化の測定 前報1)で使用した摩擦感テスター(カトーテック㈱製
KES−SE)を用いて6種の試料布の表面状態変化を 測定した.摩擦子としては接触面が2cm×2cmの中型 を用い,荷重は509とした.摩擦係数(μ)の測定時に は,試料布は2っ折りにして,アルミ板(8cm×14cm)
を挾み,試料台に大型のクリップ2個で固定し,平に引 張った状態にして測定した.測定は20℃の恒温室で行なっ た.その他の条件は前報 )の方法によった.
2−4.試料布の収縮性
JIS L1042 織物の収縮率試験方法に準じる方法 によって洗濯・乾燥後の試料布の形状変化を測定した.
3.結果および考察
A
C
GC機
=T ==t■覧__TrL
GH機
E
F
H
J
=: ==一二t−=:「一一;一
:v_==L3電 =■:
一...__t−」
図3は,用いた6種の試料布にっいて実験開始時,洗 濯・乾燥1回後,および20回後の形状を示したものであ
る.
綿100%のA,C, Jについてみると,平織地のJ,
および片面ネルのCに比べるとスムースのニット地Aの 洗濯・乾燥1回で著しく収縮するが,そのまま変化がな
く20回後にも同程度の形状を保っていた.
合繊の中ではポリエステル100%ジャージE,および アクリル100%ジャージFは洗濯・乾燥を20回繰り返し たときの収縮率が小さかったが,ナイロン6100%ジャー ジHはやや収縮が大きかった.
図4〜7には,GH機で20回乾燥した場合の摩擦係数 μ変化を示し,図8〜11にはGC機で20回乾燥した場合 の摩擦係数μ変化を示した,負荷量をそれぞれの乾燥容
L呂■ヨ.」置r_
1r nh_yr7
原寸 1回後
一一一一一 Q0回後
図3 GC機・GH機での乾燥による 各試料布の収縮性
量の1/4量で実験した結果が図4,5,8,9で,それ ぞれの乾燥容量を負荷量(4/4量)として実験した結果 が図6,7,10,11である.試料布のたて方向について 調べたデータは図4,6,8,10に示し,よこ方向につ いて調べたデータは図5,7,9,11である.また,洗 濯・乾燥後の各試料布にっいて得られた摩擦係数μの値 の最大値と各試料布の実験開始時のμの値との差を示し
0.8
O.7
0.6
0.5
ヨα4Σ
0.3
0。2
O.1
片山 倫子・川田
O
O5101520
洗濯.乾燥回数
一瞠 :A d」 :C − e−一:E rムー:F 十:H O :J
図4 GH機で20回乾燥した場合の摩擦係数μ変化 負荷量:乾燥容量の1/4量
糸方向:たて
0.8
0.7
O.6
0.5
三〇.4 Σ
0.3
O.2
O.1
︑
︐ ︐雷Ψ−!﹁ ︐ 弓
0
0 5 10 1S
洗濫乾燥回数 一邑 :A 一」 :C 十:E 十:F 輌費一
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;H −o・ ;J
図6 GH機で20回乾燥した場合の摩擦係数μ変化 負荷量:乾燥容量の4/4量
糸方向:たて
理会・宮崎伊津子
0.8
O.7
O.6
0.5
ヨo.4 Σ
0.3
O.2
o.1
o
O 5 10 15 20
洗濯、乾燥回数
一B冒:A 一直 :C −0−:E 十:F 「→霞一:H 90 :J
図5 GH機で20回乾燥した場合の摩擦係数μ変化 負荷量:乾燥容量の1/4量
糸方向:よこ
0.8
0.7
0.6
O.5
ヨo.4 Σ
O.3
0,2
0.1
︑
一︑
四
ー−ー1畠1●■軍■ ■聖 1︐.11⁝ 戒 ト⁝ーqづ ≧ \
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O 5 10 15 20
洗濯、乾燥回数
陥 :A ・△ :C −一く〉一:E 一台r:F −・霞t・一:H し :J r
︐臨 §■ .圃 1・ 踵 ︐昌 ・ 一 ⁝.⁝︐圏4卜 ︑ ︑ ︑ ︑⁝⁝.へ⁝ー.
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図7 GH機で20回乾燥した場合の摩擦係数μ変化 負荷量:乾燥容量の4/4量
糸方向:よこ
O.8
O.7
O.6
O.5
ヨo.4
Σ
0.3
0.2
0.1
ニット地の衣類乾燥機による乾燥 0.8
0 5 10 15 20
洗濯、乾燥回数
一一 E :A r直 :C −0−:E r色一:F −一喪一;H O :」
図8 GC機で20回乾燥した場合の摩擦係数μ変化 負荷量:乾燥容量の1/4量
糸方向:たて
0.8
O.7
0.6
0.5
20.4Σ
0.3
O.2
O.1
0 0
一陰一 :A ・一▲
5 10 15 洗濯.乾熾回数
:C →一:E 十:F r自卜:H 20
:J
図10 GC機で20回乾燥した場合の摩擦係数μ変化 負荷量:乾燥容量の4/4量
糸方向:たて
O.7
O.6
0.5
ヨo.4Σ
O.3
0.2
o.1
0
05101520
洗濯.乾燥回数
一■一:A r直 :C −◇一:E 十:F −1自ト;H O 二」
図9 GC機で20回乾燥した場合の摩擦係数μ変化 負荷量:乾燥容量の1/4量
糸方向:よこ 0.8
0.7
O.6
0.5
ヨo.4 Σ
0.3
0.2
0.1
︐ . 3 ・ ︐ ︐︐↓. .⁝・⁝−↑⁝⁝・⁝⁝・⁝⁝ゆ⁝⁝⁝⁝⁝⁝⁝i;⁝⁝
0 0
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1
一e− :A −▲
5 10 15 20 洗濯.乾燥回数
:C −←:E 十:F・→陶一:H ・◎・:J
図11 GC機で20回乾燥した場合の摩擦係数μ変化 負荷量:乾燥容量の4/4量
糸方向:よこ
片山 倫子・川田 理会・宮崎伊津子
表3 洗濯・乾燥後の各試料布にっいて摩擦係数μの値の最大値と各試料布の実験開始時のμの値との差
GH機 GC機
試料布 1/4量 4/4量
1/4量 4/4量
たて方向 よこ方向 たて方向 よこ方向 たて方向 よこ方向 たて方向 よこ方向
A O.315 0.141 0.192 0.104 0.154 0.060 0.162 O。076
C 0.178 0.171 0.132 0.171 0.121 0.149 0.118 O,121
E 0.053 0.083 0.Ol4 0.060 0.015 0.015 0.030 0,012
F 0.111 0.061 0.066 0.049 0.084 0.011 0.058 0.011
H
O.135 0.134 0.154 0.137 0.030 0.026 O.039 O.016 J 0.120 0.097 0.098 0.098 0.111 0.102 0.086 O.062が表3である.
綿100%ニット地の試料布Aは,洗濯・乾燥後の摩擦 係数のたて方向とよこ方向による違いが大きい.特に他 の5種に比べるとAのたて方向の摩擦係数μが非常に大 きいことがわかる.
綿100%片面ネル地の試料布Cは,たて方向とよこ方 向による違いは小さいが,乾燥後の布の摩擦係数μはど ちらも大きな値を示した.
綿100%金巾の試料布Jは,平織で糸密度が大きいた めか乾燥による摩擦係数μの変化は中程度であった.
ポリエステル100%ジャージの試料布Eとアクリル100
%ジャージのの試料布Fは,洗濯・乾燥による摩擦係数 μの変化が小さかった.
洗濯・乾燥による摩擦係数μの変動と収縮性と比較す ると,乾燥後の収縮率の大きいものは乾燥後の摩擦係数 μの変動が大きいことがわかった.
以上,洗濯・乾燥による表面状態の変化を,綿および 合繊のニット地にっいて調べたところ,織物の組織や素 材による違いが大きいことがわかったことから,さらに,
多くの試料布について実験をする必要があるものと思わ
れる.
引用文献
1)片山倫子,川田理会,宮崎伊津子:東京家政大学紀 要,34(2),p.p.97−102(1994)