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1 不当労働行為を構成する事実

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1 不当労働行為を構成する事実 (1) 不利益取扱い ① 解雇・雇止め等 〈業務委託契約の途中解除〉 ・S事件(22不22ほか2件、26.3.27終結、一部救済) 本件は、会社が副執行委員長との業務委託契約を解除したことが 組合員であること又は組合活動故の不利益取扱いに当たるか否かが 争われた事案である。 当委員会は、期間1年の契約を締結してわずか2か月で解約したこ とは極めて不自然でその理由も説得力がなく、組合活動及び副執行 委員長の言動を嫌悪して排除するために解約したとみるのが相当で あるなどとして、組合員から仕事を奪う不利益取扱い及び副執行委員 長を職場から排除することにより組合弱体化を図ろうとする支配介入 に当たると判断した。 〈執行委員長の雇止め〉 ・N(T支店)事件(23不70、26.2.19終結、棄却) 本件は、会社が執行委員長を雇止めしたことが不利益取扱い及び 支配介入に当たるか否かが争われた事案である。 当委員会は、短期雇用者という区分は組合結成とは無関係に設定 されており、執行委員長以外の短期雇用者も全員雇止めになってい るなどとして、不利益取扱い又は支配介入には 当たらないと判断し た。 〈執行委員長ら2名の雇止め〉 ・S事件(22不22ほか2件、26.3.27終結、一部救済) 本件は、会社が執行委員長ら2名との業務委託契約を更新しなか ったことが組合員であること又は組合活動故の不利益取扱いに当た るか否かが争われた事案である。 当委員会は、稼働予定の変更が多いことを理由として契約不更新

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としたことにはそれなりの合理性があるなどとして、組合役員であるが 故の不利益取扱いには当たらないと判断した。 〈支部執行委員長の雇止め〉 ・U事件(24不20、26.12.4終結、棄却) 本件は、会社が支部執行委員長を雇止めしたことが組合員である が故の不利益取扱い及び組合弱体化を企図した支配介入に当たる か否かが争われた事案である。 当委員会は、会社は一応の合理性が認められる雇止め理由の説 明をし、不合理とはいえない新たな契約締結の提案も行っており、組 合と会社との間で雇止め後の新たな労働条件に係る協議が行われた ものの、双方の見解が対立して合意成立が困難な状況に至っていた ものと評価せざるを得ないなどとして、不利益取扱い又は支配介入に は当たらないと判断した。 〈副執行委員長ら9名の雇止め〉 ・N(T支店)事件(23不70、26.2.19終結、棄却) 本件は、会社が副執行委員長ら9名を雇止めしたことが不利益取 扱い及び支配介入に当たるか否かが争われた事案である。 当委員会は、雇止め通告を行った時点で会社は副執行委員長ら が組合結成に向けた活動をしていたとの認識を持っていなかったなど として、不利益取扱い又は支配介入には当たらないと判断した。 〈組合員1名の雇止め〉 ・S事件(24不61、26.5.7終結、棄却) 本件は、法人が組合員1名との労働契約を更新しなかったことが同 人の組合活動又は組合員であるが故の不利益取扱い及び組合の弱 体化等を図る支配介入に当たるか否かが争われた事案である。 当委員会は、雇止めとなった組合員以外の組合員の評価結果が 非組合員と比べて必ずしも劣っていないこと、雇止めとなった組合員 は、業務を問題なくこなしていたとは認められず、法人から契約を更

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新できないとの説明を受けても異議を述べず、組合活動に積極的に 参加していないことなどから、組合員であることを法人が問題視し、法 人から排除することによって組合の弱体化や切崩しを企図したと評価 できないなどとして、不利益取扱い又は支配介入には当たらないと判 断した。 ・A事件(24不40、26.7.23終結、一部救済) 本件は、会社が組合員1名との労働契約を更新しなかったことが組 合員であることを理由とした不利益取扱いに当たるか否かが争われた 事案である。 当委員会は、本件雇止めの原因は組合員の業務遂行上の原因に よるものであるとして、正当な組合活動をしたことや組合員であることを 理由とした不利益取扱いには当たらないと判断した。 〈定年後の再雇用拒否〉 ・H事件(24不44、26.3.19終結、全部救済) 本件は、会社が組合員1名を定年後継続雇用しなかったことが組 合員であることを理由とした不利益取扱い及び組合運営に対する支 配介入に当たるか否かが争われた事案である。 当委員会は、会社は、団体交渉において前件申立ての和解にお ける合意事項に背く対応をするなど一貫して組合を嫌悪しており、長 期にわたって管理職ではない非組合員が1名しか存在しない中、取 締役登用を管理職の実質的な継続雇用制度として活用する一方で 組合員には劣悪な労働条件での継続雇用の機会しか与えていないこ となどから、事実上、非組合員と同視できる管理職と組合員との間で 継続雇用制度の適用に大きな差異があるなどとして、組合員であるが 故の不利益取扱い及び組合運営に対する支配介入に当たると判断 した。 〈定年後再雇用契約の更新拒否〉 ・E(雇用継続)事件(24不2、26.10.16終結、棄却)

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本件は、学園が、労使協定に基づき64歳に達した年度末をもって 終了するとして、組合員2名の定年後再雇用契約更新を拒否したこと が組合活動を理由とする不利益取扱い及び組合運営に対する支配 介入に当たるか否かが争われた事案である。 当委員会は、学園は労使協定に定める再雇用期間を一律に適用 したものと認められ、反組合的意図によるものとはいえず、その時期が たまたま別件命令の交付と重なったものとみるほかはないなどとして、 組合員であるが故の不利益取扱い又は組合運営に対する支配介入 には当たらないと判断した。 ② 賃金・一時金・格付等 〈組合員1名の降格〉 ・U事件(24不20、26.12.4終結、棄却) 本件は、会社が組合員1名を降格したことが組合員であるが故の不 利益取扱い及び組合弱体化を企図した支配介入に当たるか否かが 争われた事案である。 当委員会は、その理由が不自然ないし不相当とは認められず、そ の他、弱体化行為であることなどを裏付けるに足りる具体的事実の疎 明がないなどとして、不利益取扱い又は支配介入には当たらないと判 断した。 〈皆精勤手当の不払〉 ・D事件(24不49、26.9.25終結、一部救済) 本件は、会社が分会長に皆精勤手当を支払わなかったことが組合 員であるが故の不利益取扱い及び組合運営に対する支配介入に当 たるか否かが争われた事案である。 当委員会は、そもそも会社では賃金規定に基づいて年次有給 休 暇を取得した場合は全従業員一律に皆精勤手当を不支給としていた などとして、不利益取扱い又は支配介入には当たらないと判断した。 〈分会長の再雇用契約更新時の時給引下げ〉

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・D事件(24不49、26.9.25終結、一部救済) 本件は、会社が再雇用契約更新時に分会長の労働条件を引き下 げたことが、組合員であるが故の不利益取扱い及び組合運営に対す る支配介入に当たるか否かが争われた事案である。 当委員会は、労働条件引下げ後の分会長の時給は他の再雇用者 と比較して低額とはいえないなどとして、不利益取扱い又は支配介入 には当たらないと判断した。 〈家族手当の削減及び地域手当の廃止〉 ・R事件(22不53、26.1.15終結、一部救済) 本件は、新人事制度導入に際して会社が家族手当を削減し地域 手当を廃止したことが組合員に対する不利益取扱い及び組合運営に 対する支配介入に当たるか否かが争われた事案である。 当委員会は、申立期間を徒過していると判断した。 〈本件申立て審査手続中の証人出頭による賃金減額等〉 ・Z事件(19不95ほか3件、26.2.26終結、一部救済) 本件は、法人が、組合員1名の本件審問の証人出頭について不就 労とし、賃金等を控除したことが報復的不利益取扱い及び組合活動 に対する支配介入に当たるか否かが争われた事案である。 当委員会は、法人が組合員の不就労分を控除したのは労使の対 立が激化した直後であり、また、控除していなかった不就労分につい ても1年も経過した後に返還請求や調整的減額をしていることなどか ら、証人として活動した組合員に不利益を課そうとする意図が推認さ れるなどとして、報復的不利益取扱い及び同人の組合活動を妨害す ることを意図した支配介入に当たると判断した。 ③ 配置転換・職務割当 〈分会長ら2名の配転〉 ・E事件(24不57、26.9.4終結、一部救済) 本件は、財団が分会長ら2名を配転したことが組合員に対する不利

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益取扱い及び組合運営に対する支配介入に当たるか否かが争われ た事案である。 当委員会は、分会長らが勤務していた動物飼育の職場では配転 は異例の措置であり、新設ポストに配属した組合員をわずか1年で配 転するなど配転に真に業務上の必要性があったか疑いを持たざるを 得ず、配転当時の労使関係から財団が組合加入者拡大の阻止を考 えていたと推認されるなどとして、不利益取扱い及び支配介入に当た ると判断した。 〈支店のフランチャイズ化に伴う分会長ら2名の異動〉 ・D事件(24不49、26.9.25終結、一部救済) 本件は、会社が分会長ら2名の勤務する支店をフランチャイズ化し て同人らに異動を命じたことが組合員であるが故の不利益取扱い及 び組合運営に対する支配介入に当たるか否かが争われた事案であ る。 当委員会は、店舗のフランチャイズ化は当事者自らの自由な意思 に基づくものであり、それに伴う分会長らの異動は会社における通常 の手続きどおりであって非組合員と比較して差別的な取扱いがあった とはいえないなどとして、不利益取扱い又は支配介入には当たらない と判断した。 〈分会長の勤務日の削減〉 ・D事件(24不49、26.9.25終結、一部救済) 本件は、会社が、週休2日の再雇用契約を締結して実際には週休 1日で勤務していた分会長に対し、週2日休むよう通告したことが組合 員であるが故の不利益取扱い及び組合運営に対する支配介入に当 たるか否かが争われた事案である。 当委員会は、会社は週休の運用を変更したことに関して合理的な 理由を説明しておらず、同人が組合に加入して団体交渉が行われた ことを理由としたものであると強く推認されるなどとして、組合加入や組 合活動を理由とした不利益取扱い及び組合活動の抑制を企図した

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支配介入に当たると判断した。 〈組合員3名の職務内容等の変更〉 ・U事件(24不20、26.12.4終結、棄却) 本件は、会社が組合員3名の職務内容等を変更したことが組合員 であるが故の不利益取扱い及び組合弱体化を企図した支配介入に 当たるか否かが争われた事案である。 当委員会は、会社が殊更組合員に対してのみ異なる処遇あるいは 措置を執っていたとの事情は認められないなどとして、不利益取扱い 又は支配介入には当たらないと判断した。 〈契約更新時に副執行委員長らの契約期間を短縮したこと〉 ・N(T支店)事件(23不70、26.2.19終結、棄却) 本件は、会社が契約更新の際に副執行委員長ら9名を含む一部 契約社員の契約期間を従前の6か月から3か月に短縮したことが不利 益取扱いに当たるか否かが争われた事案である。 当委員会は、雇用契約期間を3か月とする旨記載した書面を交付 した時期に会社は副執行委員長らが組合結成に向けた活動をしてい たとの認識を持っていなかったなどとして、不利益取扱いには当たら ないと判断した。 ④ 制裁処分 〈組合の事務室内立入りほう助等を理由とするけん責処分〉 ・Z事件(19不95ほか3件、26.2.26終結、一部救済) 本件は、法人が、組合の事務室内立入りほう助等を理由として、組 合員をけん責処分としたことが組合活動に対する支配介入に当たる か否かが争われた事案である。 当委員会は、法人が団体交渉に一切応じない状況が続いたので あるから、組合が法人を訪れて団体交渉開催要求書を提出したのに はやむを得ない事情があると認められ、唯一の職員である組合員に 対してあえて処分を行ったものとみることができるなどとして、組合活

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動を嫌った不利益取扱い及び組合活動を制約することを狙った支配 介入に当たると判断した。 〈分会長ら2名に始末書の提出を命じたこと〉 ・D事件(24不49、26.9.25終結、一部救済) 本件は、会社が分会長ら2名に始末書の提出を命じたことが組合 員であるが故の不利益取扱い及び組合運営に対する支配介入に当 たるか否かが争われた事案である。 当委員会は、分会長らが勤務していた店舗では他店舗と比較して 業務のミスが際立って多かったなどとして、不利益取扱い又は支配介 入には当たらないと判断した。 ⑤ その他 〈事情聴取等における担当課長の発言〉 ・N(T支店)事件(23不70、26.2.19終結、棄却) 本件は、執行委員長と非組合員である期間雇用社員とのトラブル に係る事情聴取等における担当課長の発言が不利益取扱い及び支 配介入に当たるか否かが争われた事案である。 当委員会は、事情聴取等の状況から組合の主張するような発言を 担当課長が行ったとは考え難いなどとして、不利益取扱い又は支配 介入には当たらないと判断した。 (2) 団体交渉拒否 ① 団体交渉拒否の理由 ア 労働者性 〈組合員と雇用契約を締結していないこと〉 ・I事件(23不79、26.7.23終結、全部救済) 本件は、会社が、店舗営業契約を締結するなどして店長として勤 務していた組合員の未払賃金に係る団体交渉申入れに対し、雇用 契約を締結しておらず団体交渉を行う前提を欠いているとして応じ ていないことが正当な理由のない団体交渉の拒否に当たるか否かが

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争われた事案である。 当委員会は、組合員は会社の事業の遂行に不可欠な労働力とし て事業組織内に確保され組み入れられており、その契約内容は会 社が一方的に決定したものとみるのが相当であり、就労実態や店舗 運営の実態から組合員が独立事業主であったとはいえないなどとし て、組合員は雇用契約下にある労務供給者及びこの者と同程度に 団体交渉の保護を及ぼす必要性と適切性が認められる同種労務供 給下にある労組法上の労働者に当たり、会社の対応は正当な理由 のない団体交渉拒否に当たると判断した。 イ 使用者性 〈労働組合法上の使用者に当たらないこと〉 ・E事件(24不57、26.9.4終結、一部救済) 本件は、指定管理者として区の施設を管理運営している財団に 事務局長等の役職者を派遣している区が団体交渉に応じなかった ことが正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否かが争われた 事案である。 当委員会は、区が事務局長の派遣を解除しなければ、財団職員 の作業環境という基本的労働条件の維持・回復が図れないことを示 す具体的事実の疎明がないことなどから、区は財団職員の基本的 労働条件について現実的かつ具体的に支配、決定できる地位にあ るとはいえず、団体交渉に応ずべき使用者には当たらないと判断し た。 ・K事件(24不45、26.11.21終結、棄却) 本件は、国家公務員の給与の改定及び臨時特例に関する法律 により2年間国家公務員の給与が臨時特例措置として減額されるこ とになった際、国が法人に対して給与削減実施状況調査及び給与 臨時特例減額措置要請をするなどしたことについて、国に労働組合 法上の使用者性があるか否かが争われた事案である。 当委員会は、組合員の基本的労働条件である給与等に関して、

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国が法人に減額時期や金額を具体的に指示したとの事実は認めら れないなどとして、国が、雇用主である法人と部分的とはいえ同視で きる程度に現実的かつ具体的に支配、決定できる地位にあるという ことはできず、労働組合法上の使用者には該当しないと判断した。 〈不当労働行為責任の承継〉 ・N事件(24不4、26.1.27終結、棄却) 本件は、組合員の解雇撤回等に係る団体交渉継続中にN社が解 散して清算結了となり、その後、N社と親会社を同じくするB社が組 合の申し入れた団体交渉に応じなかったことが正当な理由のない団 体交渉の拒否に、また、団体交渉におけるN社の対応が不誠実な 団体交渉に当たるか否かが争われた事案である。 当委員会は、N社とB社の間の実質的な同一性ないし連続性が 認められないなどとして、B社に、使用者としてのN社の不当労働行 為責任が承継されるということはできないと判断した。 ウ 交渉の行き詰まり 〈交渉進展の見込みがないこと〉 ・Y事件(24不52、26.4.16終結、棄却) 本件は、これ以上交渉を重ねても成果がないことは自明であるな どとして、会社が定年退職後に期間1年の嘱託雇用契約により再雇 用された組合員1名の契約不更新に係る団体交渉申入れに応じな かったことが正当な理由のない団体交渉の拒否に当たるか否かが争 われた事案である。 当委員会は、第1回から第5回の団体交渉期間中、会社は雇止め に至った評価内容について具体的事例を挙げて組合員本人に説 明しており、代替案としてビル管理人業務を提示して労働条件に関 する説明も行ったが、組合は雇止めの具体的事由について団体交 渉において取り上げることも、代替案の労働条件を議論することもせ ず、従前の再雇用継続に固執したのであるから、組合が申し入れた のは既に交渉が行き詰まっているといえる過去の交渉と同じ議題で

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あり、交渉を再開すべき事情の変化もないなどとして、正当な理由の ない団体交渉の拒否には当たらないと判断した。 〈既に十分に説明したこと〉 ・G事件(24不54、26.10.16終結、棄却) 本件は、会社が、組合から回答を要望された事項は既に十分に 説明したとして、解決すべき事項を組合が具体的に示すのであれば 団体交渉に応ずることを検討すると文書で回答し、組合員の業績賞 与等に係る団体交渉申入れに応じなかったことが正当な理由のない 団体交渉拒否に当たるか否かが争われた事案である。 当委員会は、過去の団体交渉において組合が探索的、模索的な 質問を繰り返すなどした経緯から、解決すべき事項を具体的に示す よう会社が事前に求めたことには相応の理由があり、既に行われた 本件団体交渉において組合は人事評価のどの部分に誤りや不当な 点があるのかを明らかにするなどしていないが、会社は組合員の役 割・目標配分表の内容や人事評価に対する上司の修正点などの具 体的な根拠を示して説明しているなどとして、正当な理由のない団 体交渉拒否には当たらないと判断した。 〈一定の説明を行ったこと〉 ・K事件(24不45、26.11.21終結、棄却) 本件は、国家公務員の給与の改定及び臨時特例に関する法律 により2年間国家公務員の給与が臨時特例措置として減額されるこ とになった際、給与減額に係る団体交渉における法人の対応が不 誠実な団体交渉に当たるか否かが争われた事案である。 当委員会は、法人は運営費交付金削減見込みや人件費予算確 保の努力に関して説明し、組合要求に対する資料も提供しているが、 組合は運営費交付金が削減されてから対処すべきであるとの対応 に終始していたことなどから、交渉は行き詰まりの状況にあり、これ以 上団体交渉を重ねても進展する可能性はなくなっていたと認められ るなどとして、不誠実な団体交渉又は正当な理由のない団体交渉拒

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否には当たらないと判断した。 エ 他の係争事件の存在 〈組合員の解雇について訴訟係属中であること〉 ・K事件(24不89、26.4.16終結、全部救済) 本件は、法人が、解雇については裁判の判断に従うなどと主張して、 組合員1名の解雇に係る団体交渉申入れに応じなかったことが正当 な理由のない団体交渉の拒否に当たるか否かが争われた事案であ る。 当委員会は、組合員の解雇について訴訟係属中であることは団体 交渉拒否の正当な理由とならず、法人の解雇の方針が変わらないと しても組合からの求めがあれば、団体交渉で説明して組合の理解を 得るよう努める義務があるなどとして、正当な理由のない団体交渉の 拒否に当たると判断した。 〈都労委の調査期日で話合いをすること〉 ・K事件(24不76、26.6.9終結、一部救済) 本件は、会社が、組合員の勤務不良を理由とする降職・減給等に 係る団体交渉を3回行った後、同組合員の懲戒解雇等に係る団体 交渉申入れに応じなかったことが正当な理由のない団体交渉の拒 否に当たるか否かが争われた事案である。 当委員会は、会社は、第3回団体交渉において組合員の復職の 判断時期や前提条件の有無について2週間後に回答すると言明し て以降、医療情報の確認を理由に団体交渉の開催に猶予を求め、 組合員に休職を命じたことを理由に団体交渉の必要性を否定し、組 合員の経歴詐称に係る懲戒判断が出るまで団体交渉の保留を求め、 当委員会の調査期日で話合いをすることを理由に団体交渉を拒否 するなどしているが、いずれの理由も必要性や妥当性は認めがたい などとして、正当な理由のない団体交渉拒否に当たると判断した。 〈別件都労委命令の判断を待って検討するとしたこと〉

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・E(雇用継続)事件(24不2、26.10.16終結、棄却) 本件は、学園が、別件都労委命令の判断を待ってから検討すると して、雇用継続に係る団体交渉に応じなかったことが正当な理由の ない団体交渉拒否及び組合運営に対する支配介入に当たるか否か が争われた事案である。 当委員会は、使用者が裁判所や労働委員会で係争中であること を理由に応じないことが許されないことはいうまでもないが、本件にお いては別件を議題とする団体交渉において本件雇用継続問題に係 る一定のやり取りが行われており、また、別件命令が交付された際に 団体交渉に応ずることを約束せよとの組合要求は団体交渉申入れ そのものとはいえないなどとして、正当な理由のない団体交渉拒否 又は組合運営に対する支配介入には当たらないと判断した。 オ その他 〈事業譲渡直後の会社の混乱〉 ・S事件(24不26、26.8.20終結、一部救済) 本件は、申立外S社の破産手続きの中でその営業権と工場資産 が会社に事業譲渡された後の、労働諸条件等に係る団体交渉にお ける会社の対応が不誠実な団体交渉に当たるか否かが争われた事 案である。 当委員会は、事業譲渡直後の会社の対応は、前社長が交渉はS 社とやってくれなどと回答し、団体交渉にはS社が出席するのみであ ったことから、正当な理由のない団体交渉拒否に当たると判断した。 〈会社が解散して清算結了していること〉 ・N事件(24不4、26.1.27終結、棄却) 本件は、組合員の解雇撤回等に係る団体交渉継続中にN社が解 散して清算結了となり、その後、組合が申し入れた団体交渉にN社 が応じなかったことが正当な理由のない団体交渉の拒否に、また、 団体交渉におけるN社の対応が不誠実な団体交渉に、それぞれ当 たるか否かが争われた事案である。

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当委員会は、N社は本件申立時点において法的にも実態的にも 既に存在しておらず、組合の請求する救済内容を法令上又は事実 上実現することが不可能であることが明らかであると判断した。 〈組合の結成目的が私怨であること〉 ・Z事件(25不50、26.6.23終結、全部救済) 本件は、K組合が、暫定労働協約締結及び再雇用職員労働契約 更新に係る団体交渉申入れに回答せず、従業員組合の結成目的 は私怨を晴らすためであり、利益代表者の参加を許す疑いもあるとし て本件申立て後も団体交渉に応じなかったことが正当な理由のない 団体交渉の拒否に当たるか否かが争われた事案である。 当委員会は、従業員組合の組合長は長期間にわたりK組合と争 訟を行っているものの、従業員組合が義務的団体交渉事項につい て団体交渉を求めていたことは明らかであり、また、K組合は、従業 員組合の組合員のうち1名の氏名が明かされていないことをもって単 に漠然と利益代表者の参加を許す疑いがあるとするのみで、利益代 表者と疑われる者がいることによって適正な団体交渉が実施できな い事情については明らかにしておらず、従業員組合には実際にはK 組合のいう利益代表者がいなかったなどとして、正当な理由のない 団体交渉の拒否に当たると判断した。 ② 交渉方式・態様 ア 交渉ルール 〈組合員名簿の不提出〉 ・Z事件(25不50、26.6.23終結、全部救済) 上記①オ参照 〈組合側の交渉人数〉 ・G事件(24不103、26.7.28終結、全部救済) 本件は、学園が組合側団体交渉出席者が8名であることを理由に 団体交渉を途中退席したことが正当な理由のない団体交渉拒否に当

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たるか否かが争われた事案である。 当委員会は、学園は従前より団体交渉出席者数を双方7名とする よう求めてはいたが、組合と学園との間で団体交渉に関するルールは なく、組合側出席者数が10名であった過去の団体交渉においても、 出席者数が原因となって不正常といえるほど混乱が生じたとは認め難 いなどとして、正当な理由のない団体交渉拒否に当たると判断した。 イ 組合の交渉態度 〈組合の不穏当な態度〉 ・Z事件(19不95ほか3件、26.2.26終結、一部救済) 本件は、法人が、事務局長解任に係る団体交渉において、第21 回以降の団体交渉申入れに応じていないことが正当な理由のない 団体交渉拒否に当たるか否かが争われた事案である。 当委員会は、法人は、組合の交渉態度を理由として謝罪要求等 に固執し、こじれた労使関係の打開に向けて何らかの措置を講ずべ く努力した形跡はないなどとして、正当な理由のない団体交渉拒否 に当たると判断した。 〈組合が自ら団体交渉を打ち切ったこと〉 ・K事件(24不89、26.4.16終結、全部救済) 本件は、法人が、2回行った団体交渉を組合自らが打ち切ったな どと主張して、組合員1名の解雇に係る団体交渉申入れに応じなか ったことが正当な理由のない団体交渉の拒否に当たるか否かが争わ れた事案である。 当委員会は、既に2回行った団体交渉において、法人が解雇事 由、経緯について組合の疑問を払拭できるまでの合理的な説明を 行ったとはいえず、組合から団体交渉を打ち切った事実も認めらな いなどとして、正当な理由のない団体交渉の拒否に当たると判断し た。 〈組合が団体交渉を申し入れていないこと〉

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・S事件(24不61、26.5.7終結、棄却) 本件は、組合員1名の労働契約更新に係る団体交渉における法 人の対応が不誠実な団体交渉に当たるか否かが争われた事案であ る。 当委員会は、法人がパート職員の評価項目及び雇止めとなった 組合員への指導内容について組合が認識できる程度の説明をして いること、第4回団体交渉以降は組合が本件に係る団体交渉の申入 れをしていないことなどから、不誠実な団体交渉には当たらないと判 断した。 ウ 使用者の交渉態度 a 説明の程度 〈新人事制度の説明〉 ・R事件(22不53、26.1.15終結、一部救済) 本件は、新人事制度を議題とする団体交渉における会社の一連 の対応が不誠実な団体交渉及び組合運営に対する支配介入に当 たるか否かが争われた事案である。 当委員会は、新人事制度導入後の団体交渉において組合は具 体的な要求や質問を行っていないが、会社は譲歩提案等をしてい るなどとして、不誠実な団体交渉及び支配介入には当たらないと判 断し、一部の団体交渉については、申立期間を徒過していると判 断した。 〈事業再編に係る説明〉 ・R事件(24不9、26.2.26終結、一部救済) 本件は、希望退職優遇制度への応募に応じなかった従業員らに 会社が配転・出向を命じたことを契機として結成された組合が申し 入れた、事業再編を議題とする団体交渉における会社の対応が不 誠実な団体交渉に当たるか否かが争われた事案である。 当委員会は、本件配転・出向は事業再編の一環として行われて おり、組合が説明を求めたのは組合員の労働条件にかかわる事項

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であるため説明すべきであるところ、会社は団体交渉を通じて一切 説明を行っていないなどとして、不誠実な団体交渉に当たると判断 した。 〈事業の縮小・廃止に伴う雇用・労働条件に係る説明〉 ・N事件(24不37、26.3.27終結、棄却) 本件は、事業の縮小・廃止に伴う組合員の雇用及び労働条件に 係る団体交渉における会社の対応が不誠実な団体交渉に当たる か否かが争われた事案である。 当委員会は、組合に「事業計画について」と題する書面を提示 するなど、会社はその時点でできる範囲の説明をしているなどとし て、不誠実な団体交渉には当たらないと判断した。 〈副執行委員長ら2名の人事異動に係る説明〉 ・N事件(24不37、26.3.27終結、棄却) 本件は、副執行委員長(当時)ら2名の人事異動 に係る団体交 渉における会社の対応が不誠実な団体交渉に当たるか否かが争 われた事案である。 当委員会は、人事異動は事前に組合の同意を得てから行うとす る協定や慣行は認められないにもかかわらず、会社は副執行委員 長ら2名の人事異動について発令前に内訳、実施後の人員、理由 を説明しているなどとして、不誠実な団体交渉には当たらないと判 断した。 〈組合員1名の退職願撤回に係る説明〉 ・N事件(24不37、26.3.27終結、棄却) 本件は、組合員1名の退職願撤回の各事項に係る団体交渉に おける会社の対応が不誠実な団体交渉に当たるか否かが争われ た事案である。 当委員会は、組合員1名の退職手続を進めていることや退職願 撤回は今までも認めていないことを説明した後も、会社は組合から

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の再検討要求に応じて退職願を受け取った状況等について追加 の説明をしているなどとして、不誠実な団体交渉には当たらないと 判断した。 〈組合員1名の労働契約更新に係る説明〉 ・S事件(24不61、26.5.7終結、棄却) 上記イ〈組合が団体交渉を申し入れていないこと〉参照 〈組合の要求事項等に対する回答〉 ・U事件(24不20、26.12.4終結、棄却) 本件は、団体交渉における会社の対応が不誠実な団体交渉に 当たるか否かが争われた事案である。 当委員会は、会社が組合の要求事項に回答しなかった理由は、 組合が専ら支部執行委員長の契約条件という喫緊の課題に係る交 渉に終始したことによるなどとして、不誠実な団体交渉には当たら ないと判断した。 ・S事件(22不22ほか2件、26.3.27終結、一部救済) 本件は、メッセンジャー(自転車による即配便業務に従事する配 送員)の人員削減や契約の更新問題等に係る団体交渉における 会社の対応が不誠実な団体交渉に当たるか否かが争われた事案 である。 当委員会は、組合の申入れ事項はいずれも労働組合法上の労 働者である組合員の待遇に関わる申入れであり義務的団体交渉 事項であるところ、業務委託契約の途中解除、及び契約期間満了 後不更新の理由について組合からの要求や質問に会社は一切回 答していないなどとして、不誠実な団体交渉に当たると判断した。 〈労働契約更新等に係る説明〉 ・A事件(24不40、26.7.23終結、一部救済) 本件は、組合員1名の労働契約更新に係る団体交渉における会

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社の対応が不誠実な団体交渉に当たるか否かが争われた事案で ある。 当委員会は、会社は組合の疑問に対して相応の回答を行ってい たなどとして、不誠実な団体交渉には当たらないと判断した。 〈給与改定及び定年延長に係る説明〉 ・G事件(24不103、26.7.28終結、全部救済) 本件は、学園が、団体交渉において組合の質問に回答しないな どの対応をしたことが不誠実な団体交渉に当たるか否かが争われ た事案である。 当委員会は、学園は従前から組合との協議を拒否する姿勢を取 り続けており、本件団体交渉においても組合が求めた人件費比率 等の回答や資料提示をせず、給与改定及び定年延長について検 討するとして持ち帰った直後の団体交渉においては実質的な協議 に入らぬまま退席したのであるから、組合の理解及び納得を得るべ く努力する姿勢に欠けていたなどとして、不誠実な団体交渉に当た ると判断した。 〈分会長ら2名の配転に係る説明〉 ・E事件(24不57、26.9.4終結、一部救済) 本件は、分会長らの配転を議題とする団体交渉における財団の 対応が不誠実な団体交渉に当たるか否かが争われた事案である。 当委員会は、配転に係る団体交渉において、財団は配転対象 者を選択した理由を十分に答えないなど誠実さを欠くものであった などとして、不誠実な団体交渉に当たると判断した。 〈事務局長の女性職員に対する発言に係る説明〉 ・E事件(24不57、26.9.4終結、一部救済) 本件は、同僚や事務局長の女性職員に対する発言等を議題と する団体交渉における財団の対応が不誠実な団体交渉に当たる か否かが争われた事案である。

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当委員会は、財団は、同僚の言動については具体的防止策や 処分の説明を行っており、事務局長の発言については事務局長よ り上位の職にある専務理事も出席して一定程度の対策を示したな どとして、不誠実な団体交渉には当たらないと判断した。 〈分会長の再雇用契約更新・書記長の再雇用条件等に係る説明〉 ・D事件(24不49、26.9.25終結、一部救済) 本件は、分会長の再雇用契約更新、書記長の再雇用条件、分 会長ら2名の勤務する支店のフランチャイズ化問題等の各事項に 係る団体交渉における会社の対応が不誠実な団体交渉に、それ ぞれ当たるか否かが争われた事案である。 当委員会は、再雇用条件は義務的団交事項であるにもかかわら ず、会社は契約更新前の協議に応ずる考えがないと述べて実質的 な交渉を行っておらず、週休2日は組合員に不利益な結果をもたら すにもかかわらず、会社は従来の運用を変更する理由を説明せず にその後の交渉を拒否したなどとして、不誠実な団体交渉に当たる と判断し、上記以外の会社の対応については、不誠実な団体交渉 には当たらないと判断した。 b 資料の開示等 〈経営資料の書面による開示〉 ・T事件(23不60、26.1.27終結、棄却) 本件は、昇給及び一時金に係る団体交渉において会社が書面 による経営資料の開示をしなかったことが不誠実な団体交渉に当 たるか否かが争われた事案である。 当委員会は、会社は口頭で会社回答額の根拠である経営数字 を明らかにしており、書面で開示をしないことにより団体交渉の進展 が妨げられたというような事情は認められないなどとして、不誠実な 団体交渉には当たらないと判断した。 〈組合員の勤務成績や支店の損益が分かる資料の開示〉

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・N(T支店)事件(23不70、26.2.19終結、棄却) 本件は、団体交渉における会社の対応が正当な理由のない団 体交渉拒否又は不誠実な団体交渉に当たるか否かが争われた事 案である。 当委員会は、会社は、雇止めの理由は経営上の事由であって勤 務成績ではなく、経営上の事由とは支店の赤字ではなく会社全体 の赤字であるとの説明を行っているのであるから、勤務の成績や実 態を示す資料及び支店の損益が分かる資料を開示しなかったこと が不誠実な対応とはいえないなどとして、不誠実な団体交渉には 当たらないと判断した。 〈特別監査報告書の開示〉 ・Z事件(19不95ほか3件、26.2.26終結、一部救済) 本件は、事務局長解任に係る団体交渉における法人の対応が 不誠実な団体交渉に当たるか否かが争われた事案である。 当委員会は、法人は、解任の前提となった特別監査報告書に関 して具体的な応答もせず、解任撤回要求に応じないことについても 理由を示していないなどとして、不誠実な団体交渉に当たると判断 した。 〈配転・出向者の人選理由と人事考課の開示〉 ・R事件(24不9、26.2.26終結、一部救済) 本件は、希望退職優遇制度への応募に応じなかった従業員らに 会社が配転・出向を命じたことを契機として結成された組合が申し 入れた、配転・出向者の人選理由と過去の人事考課を議題とする 団体交渉における会社の対応が不誠実な団体交渉に当たるか否 かが争われた事案である。 当委員会は、会社は使用者として配転・出向の具体的な必要性 や組合員を配転・出向の対象とした理由等について説明するなど して誠実に応ずべきであるところ、組合の要求事項に対する具体的 な回答を一切していないなどとして、不誠実な団体交渉に当たると

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判断した。 〈希望退職者応募結果の開示〉 ・R事件(24不9、26.2.26終結、一部救済) 本件は、希望退職優遇制度への応募に応じなかった従業員らに 会社が配転・出向を命じたことを契機として結成された組合が申し 入れた、希望退職者の応募結果を議題とする団体交渉における会 社の対応が不誠実な団体交渉に当たるか否かが争われた事案で ある。 当委員会は、本件団体交渉当時、既に会社は本件配転・出向を 行っており、組合は希望退職者の応募者数が本件配転・出向の必 要性に関連する問題であると会社に表明していたのであるから、団 体交渉当時対外的に一切公表していないことは応募結果開示拒 否を正当化するものとはならないなどとして、不誠実な団体交渉に 当たると判断した。 c その他 〈経営資料の開示に係る労働協約を締結しなかったこと〉 ・T事件(23不60、26.1.27終結、棄却) 本件は、冬季一時金に係る団体交渉において経営資料の開示 についての合意があったか否か、また、合意があったとして、その後 も会社が労働協約を締結しなかったことが不誠実な団体交渉に当 たるか否かが争われた事案である。 当委員会は、会社側出席者は「従来どおりの経営資料を開示す る」旨の発言をしたが、同人が説明又は開示する項目として明言し たのは売上高と営業利益のみであることが明らかであるなどとして、 組合主張の経営資料の開示についての合意があったとは認められ ないなどとして、不誠実な団体交渉には当たらないと判断した。 〈団体交渉の開催を引き延ばしたこと〉 ・K事件(24不76、26.6.9終結、一部救済)

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上記①エ〈都労委の調査期日で話合いをすること〉参照 〈実質的権限のない交渉担当者〉 ・T(非常勤賃金改定等)事件(23不108ほか1件、26.6.2終結、棄却) 本件は、組合が、非常勤職員である専務的、臨時的及び専門的 非専務的の各非常勤職員の賃金、退職手当等に係る団体交渉を 申し入れ、実質的な権限はS局にあるとしてS局の出席を求めたの に対し、S局を担当部局としなかった都の対応が不誠実な団体交 渉に当たるか否かが争われた事案である。 当委員会は、都側の交渉担当部局としてSR局等が出席したこ れまでの団体交渉の経緯等をみれば、各局担当者に交渉権限が 与えられていなかった、あるいは実質的権限がないために交渉が 形骸化していたということはできず、内部的な決定権等を有するS 局の担当者が出席しなければ各非常勤職員の報酬決定等に係る 団体交渉が誠実に行われない虞のあることが明らかであったとはい えないなどとして、不誠実な団体交渉には当たらないと判断した。 ・A事件(24不40、26.7.23終結、一部救済) 本件は、組合員1名と会社の顧問社会保険労務士の面談及び 組合員1名の労働契約更新に係る団体交渉における会社の対応 が不誠実な団体交渉に当たるか否かが争われた事案である。 当委員会は、会社が団体交渉に社長を出席させなかったのは、 顧問社労士のセクハラ発言について謝罪するという前回団体交渉 における社長の約束を合理的理由なく覆し、約束違反を直接追及 される事態を避けるためであったとみざるを得ないなどとして、不誠 実な団体交渉に当たると判断した。 ・M ( 団 体 交 渉 ) 事 件 ( 2 4 不 4 8 、 2 6 . 8 . 2 0 終 結 、 一 部 救 済 ) 本件は、組合は取締役の出席する団体交渉を申し入れたが、会 社は取締役の出席は差し控えると回答し、その後の交渉が行われ ていないことが正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否かが

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争われた事案である。 当委員会は、取締役の処遇(退任)に係る団体交渉については、 取締役本人の真意確認が交渉進展の重要事項となっていたところ、 取締役の言動が暴行について謝罪した者とは思えないものであっ たこと、取締役が実際に退任したとの事実は認められないこと、社 長自らが取締役のコントロールが効かないと発言していることなどか ら、社長の説明だけでは足りず、取締役の出席も必要とする特段の 事情が認められるなどとして、正当な理由のない団体交渉拒否に 当たると判断し、取締役の暴言・暴行傷害の事実関係等に係る団 体交渉については、社長が団体交渉出席者として交渉権限を欠い ている等の事情は認められず、取締役が出席しなければおよそ実 効的な団体交渉が行えないとまでいうことはできないなどとして、正 当な理由のない団体交渉拒否に当たらないと判断した。 〈労使で確認した事項を履行しないこと〉 ・K事件(24不76、26.6.9終結、一部救済) 本件は、組合員の勤務不良を理由とする降職・減給等に係る団 体交渉における会社の対応が不誠実な団体交渉に当たるか否か が争われた事案である。 当委員会は、会社が常務の出席や回答期限を約したことを裏付 けるに足りる疎明はないなどとして、不誠実な団体交渉には当たら ないと判断した。 ③ 交渉事項 〈経営努力・経営責任に関すること〉 ・R事件(24不9、26.2.26終結、一部救済) 本件は、希望退職優遇制度への応募に応じなかった従業員らに会 社が配転・出向を命じたことを契機として組合が結成され、経営努力、 経営責任を議題とする団体交渉における会社の対応が不誠実な団 体交渉に当たるか否かが争われた事案である。 当委員会は、組合員の労働条件等に直接の関係や影響はない事

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項であるなどとして、不誠実な団体交渉には当たらないと判断した。 〈組合に継続雇用制度の適用対象者がいないこと〉 ・H事件(24不44、26.3.19終結、全部救済) 本件は、前件申立ての和解後に組合が申し入れた継続雇用制度 改定を議題とする団体交渉に会社が誠実に応じたか否かが争われた 事案である。 当委員会は、前件申立ての和解における合意事項には継続雇用 制度の改定について会社と組合とが誠実に団体交渉を行うことが含 まれていたものと解すべきであるところ、会社が団体交渉において適 用対象者が現在いないので交渉しないとしたことは正当な理由となら ないなどとして、不誠実な団体交渉に当たると判断した。 (3) 支配介入 ① 反組合的言動 ア 職制上の地位にある者の言動 〈面談等における社長及び取締役の発言〉 ・S事件(24不26、26.8.20終結、一部救済) 本件は、申立外S社の破産手続きの中でその営業権と工場資産 が会社に事業譲渡された後の、面談等における支部執行委員長ら3 名に対する社長及び取締役の発言が組合からの脱退を強要する支 配介入に当たるか否かが争われた事案である。 当委員会は、支部執行委員長らに管理職就任を依頼する際の、 受諾する場合は組合を脱退してほしいとの取締役の発言は、脱退強 要を企図したとまでは評価できないが、発言自体が組合活動に影響 を及ぼすものであり、組合員の範囲という本来組合の自主的な決定 に委ねられるべき事項に介入すべき行為として看過できないなどとし て、支配介入に当たると判断し、上記判断以外の発言は支配介入 には当たらないと判断した。 〈事情聴取等における担当課長の発言〉

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・N(T支店)事件(23不70、26.2.19終結、棄却) 上記(1)⑤参照 〈面談における顧問の言動〉 ・A事件(24不40、26.7.23終結、一部救済) 本件は、組合員1名との面談における会社の顧問社会保険労務 士の言動が組合運営に対する支配介入に当たるか否かが争われた 事案である。 当委員会は、顧問社労士の発言は会社業務の一部を担う形で行 われたというべきであり、組合員の組合活動を抑制する効果を持つも のであることは明らかであるなどとして、組合運営に対する支配介入 に当たると判断した。 イ その他の従業員の言動 〈面談等における会社従業員の発言〉 ・U事件(24不20、26.12.4終結、棄却) 本件は、面談における会社従業員の組合員1名に対する発言が 組合弱体化を企図した支配介入に当たるか否かが争われた事案で ある。 当委員会は、会社従業員の発言がなされたとされる日は本件申 立ての1年以上前であることから、申立期間を徒過したものと判断し た。 ウ 団体交渉等における言動 〈労使協定を破棄するなどの発言〉 ・R事件(22不53、26.1.15終結、一部救済) 本件は、会社が団体交渉において時短(休日増加)や労使協議 会に係る協定を「破棄する。」、「90日条項を使う。」などと発言したこ とが組合弱体化を意図した組合運営に対する支配介入に当たるか 否かが争われた事案である。 当委員会は、会社の発言は協定を見直す旨の表明にすぎないな

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どとして、組合運営に対する支配介入には当たらないと判断した。 〈事業譲渡前の組合名での申入れに対し回答義務はないとしたこと〉 ・S事件(24不26、26.8.20終結、一部救済) 本件は、申立外S社の破産手続きの中でその営業権と工場資産 が会社に事業譲渡された後、会社が組合への回答書に「申立外S 社支部としての申入れに対しては回答義務はない」などと記載したこ とが支部の組織・運営に対する支配介入に当たるか否かが争われた 事案である。 当委員会は、回答書の文言は支部が自主的に決めるべき組合の 名称に不当に介入し組合の自由かつ自主的判断を侵害するもので あり、支配介入に当たると判断した。 エ その他の言動 〈社内報に組合に係る記事を掲載したこと〉 ・R事件(22不53、26.1.15終結、一部救済) 本件は、会社が、全社員に配布している人事及び労働ニュースに ストライキや団体交渉、上部団体を批判する内容の記事を掲載した ことが組合弱体化を意図した組合運営に対する支配介入に当たる か否かが争われた事案である。 当委員会は、一部の記載内容は本来労働組合が自主的に決定 すべき組合の内部運営や組織形態に言及して本部の下部組織とし ての支部の行動を問題視するものであったなどとして、組合らの運営 に対する支配介入に当たると判断した。 ② 制裁処分 〈組合の事務室内立入りほう助等を理由とするけん責処分〉 ・Z事件(19不95ほか3件、26.2.26終結、一部救済) 前記(1)④参照 〈分会長ら2名に始末書の提出を命じたこと〉

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・D事件(24不49、26.9.25終結、一部救済) 前記(1)④参照 ③ 非組合員との差別扱い 〈定年後の再雇用拒否〉 ・H事件(24不44、26.3.19終結、全部救済) 前記(1)①参照 ④ 人事権の行使 ア 解雇・雇止め 〈業務委託契約の途中解除〉 ・S事件(22不22ほか2件、26.3.27終結、一部救済) 前記(1)①参照 〈執行委員長の雇止め〉 ・N(T支店)事件(23不70、26.2.19終結、棄却) 前記(1)①参照 〈支部執行委員長の雇止め〉 ・U事件(24不20、26.12.4終結、棄却) 前記(1)①参照 〈副執行委員長ら9名の雇止め〉 ・N(T支店)事件(23不70、26.2.19終結、棄却) 前記(1)①参照 〈組合員1名の雇止め〉 ・S事件(24不61、26.5.7終結、棄却) 前記(1)①参照 〈定年後再雇用契約の更新拒否〉

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・E(雇用継続)事件(24不2、26.10.16終結、棄却) 前記(1)①参照 イ 賃金・一時金・格付等 〈組合員1名の降格〉 ・U事件(24不20、26.12.4終結、棄却) 前記(1)②参照 〈皆精勤手当の不払〉 ・D事件(24不49、26.9.25終結、一部救済) 前記(1)②参照 〈分会長の再雇用契約更新時の時給引下げ〉 ・D事件(24不49、26.9.25終結、一部救済) 前記(1)②参照 〈家族手当の削減及び地域手当の廃止〉 ・R事件(22不53、26.1.15終結、一部救済) 前記(1)②参照 〈本件申立て審査手続中の証人出頭による賃金減額等〉 ・Z事件(19不95ほか3件、26.2.26終結、一部救済) 前記(1)②参照 ウ 配置転換・職務割当 〈分会長ら2名の配転〉 ・E事件(24不57、26.9.4終結、一部救済) 前記(1)③参照 〈支店のフランチャイズ化に伴う分会長ら2名の異動〉 ・D事件(24不49、26.9.25終結、一部救済)

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前記(1)③参照 〈分会長の勤務日の削減〉 ・D事件(24不49、26.9.25終結、一部救済) 前記(1)③参照 〈組合員3名の職務内容等の変更〉 ・U事件(24不20、26.12.4終結、棄却) 前記(1)③参照 ⑤ 施設管理 〈防犯監視カメラの設置〉 ・S事件(22不22ほか2件、26.3.27終結、一部救済) 本件は、営業所に防犯監視カメラを設置したことが組合運営に対す る支配介入に当たるか否かが争われた事案である。 当委員会は、防犯監視カメラの設置目的は不自然ではなく、会社が 組合活動を監視したことを裏付けるに足りる具体的事実の疎明もない などとして、組合活動に対する支配介入には当たらないと判断した。 ⑥ 団体交渉拒否 〈別件都労委命令の判断を待って検討するとしたこと〉 ・E(雇用継続)事件(24不2、26.10.16終結、棄却) 前記(2)①エ参照 ⑦ 不誠実な団体交渉 〈新人事制度の説明〉 ・R事件(22不53、26.1.15終結、一部救済) 前記(2)②ウa参照 ⑧ その他 〈団体交渉議事録の確認事項を念のため破棄すると通告したこと〉

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・Z事件(19不95ほか3件、26.2.26終結、一部救済) 本件は、法人が、組合が労働協約であるとする団体交渉議事録の 確認事項について、念のため破棄する旨組合に通告したことが組合 活動に対する支配介入に当たるか否かが争われた事案である。 当委員会は、団体交渉議事録の確認事項は労使において明確な 合意は未だ存在しないという状況の確認にすぎないなどとして、支配 介入には当たらないと判断した。 〈雇止め通告を速やかに撤回しなかったこと〉 ・Z事件(19不95ほか3件、26.2.26終結、一部救済) 本件は、法人が、有期雇用の組合員に雇止めを通告し、同人の労 災認定後も速やかに撤回しなかったことが組合の団結をき損する支 配介入に当たるか否かが争われた事案である。 当委員会は、法人は組合員の腰痛等が労災によるものであると正 式に判断し得た時点から、社会通念上相当期間内にこれを撤回した と認められるなどとして、組合の団結をき損する支配介入には当たら ないと判断した。 〈組合にではなく組合員個人に雇止め理由証明書を交付したこと〉 ・N(T支店)事件(23不70、26.2.19終結、棄却) 本件は、会社が組合にではなく組合員個人に雇止め理由証明書 を交付したことが支配介入に当たるか否かが争われた事案である。 当委員会は、制度的に会社は雇止めとした本人に理由証明書を 交付すればよいのであって、会社の行為が組合の存在を殊更に無視 したものであるとの疑念を組合員に抱かせたとまではいえないなどとし て、支配介入には当たらないと判断した。 〈給与減額の実施状況に係る調査〉 ・K事件(24不45、26.11.21終結、棄却) 前記(2)①イ〈労働組合法上の使用者に当たらないこと〉参照

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(4) 労働委員会への申立て等を理由とする不利益取扱い 〈本件申立て審査手続中の証人出頭による賃金減額等〉 ・Z事件(19不95ほか3件、26.2.26終結、一部救済) 前記(1)②参照 2 不当労働行為の要件・救済手続 (1) 当事者適格 〈店舗営業契約を締結するなどした店長の労働者性〉 ・I事件(23不79、26.7.23終結、全部救済) 本件は、会社が、店舗営業契約を締結するなどして店長として勤務 していた組合員の未払賃金に係る団体交渉申入れに応じていないこと が正当な理由のない団体交渉の拒否に当たるか否かが争われた事案 であり、会社は、雇用契約を締結しておらず団体交渉を行う前提を欠 いていると主張した。 当委員会は、組合員は会社の事業の遂行に不可欠な労働力として 事業組織内に確保され組み入れられており、その契約内容は会社が 一方的に決定したものとみるのが相当であり、就労実態や店舗運営の 実態から組合員が独立事業主であったとはいえないなどとして、組合 員は雇用契約下にある労務供給者及びこの者と同程度に団体交渉の 保護を及ぼす必要性と適切性が認められる同種労務供給下にある労 組法上の労働者に当たると判断した。 〈指定管理者である財団に役職者を派遣している区の使用者性〉 ・E事件(24不57、26.9.4終結、一部救済) 本件は、指定管理者として区の施設を管理運営している財団に事 務局長等の役職者を派遣している区が団体交渉に応じなかったことが 正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否かが争われた事案であ り、被申立人らは、組合が区に要求した事項は区が独自に行い得るも のではなく、義務的団体交渉事項には該当しないと主張した。 当委員会は、区が事務局長の派遣を解除しなければ、財団職員の 作業環境という基本的労働条件の維持・回復が図れないことを示す具

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体的事実の疎明がないことなどから、区は財団職員の基本的労働条 件について現実的かつ具体的に支配、決定できる地位にあるとはいえ ず、団体交渉に応ずべき使用者には当たらないと判断した。 〈給与臨時特例減額措置要請をするなどした国の使用者性〉 ・K事件(24不45、26.11.21終結、棄却) 本件は、国家公務員の給与の改定及び臨時特例に関する法律によ り2年間国家公務員の給与が臨時特例措置として減額されることにな った際、国が法人に対して給与削減実施状況調査及び給与臨時特例 減額措置要請をするなどしたことについて、国に労働組合法上の使用 者性があるか否かが争われた事案であり、国は、法人職員の雇用主で はなく、そもそも国には、被申立人適格がないことは明白であり、本件 申立ては却下されるべきであると主張した。 当委員会は、組合員の基本的労働条件である給与等に関して、国 が法人に減額時期や金額を具体的に指示したとの事実は認められな いなどとして、国が、雇用主である法人と部分的とはいえ同視できる程 度に現実的かつ具体的に支配、決定できる地位にあるということはでき ず、労働組合法上の使用者には該当しないと判断した。 〈解散して清算結了している会社〉 ・N事件(24不4、26.1.27終結、棄却) 前記1(2)①オ〈会社が解散して清算結了していること〉参照 〈不当労働行為責任の承継〉 ・N事件(24不4、26.1.27終結、棄却) 本件は、組合員の解雇撤回等に係る団体交渉継続中にN社が解散 して清算結了となり、その後、N社と親会社を同じくするB社が組合の 申し入れた団体交渉に応じなかったことが正当な理由のない団体交渉 の拒否に、また、団体交渉におけるN社の対応が不誠実な団体交渉に 当たるか否かが争われた事案であり、B社は、本件解雇について、組 合との関係で労働組合法第7条の使用者には当たらず、団体交渉を

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行う立場にないと主張した。 当委員会は、N社とB社の間の実質的な同一性ないし連続性が認 められないなどとして、B社に、使用者としてのN社の不当労働行為責 任が承継されるということはできないと判断した。 (2) 救済利益 〈本件申立て後に行った団体交渉と救済利益〉 ・K事件(24不89、26.4.16終結、全部救済) 本件は、組合員1名の解雇に係る団体交渉申入れに対し、法人が、 2回行った団体交渉を組合自らが打ち切った、解雇については裁判の 判断に従うなどと主張して、法人が応じなかったことが正当な理由のな い団体交渉の拒否に当たるか否かが争われた事案であり、法人は、本 件申立て前の団体交渉に応じていない状態を完全に解消させているこ とから、組合の請求について救済の利益は消滅していると主張した。 当委員会は、本件申立て後の第3回団体交渉において法人が組合 の要求する資料を提示して質問にも回答したことが認められるが、今後 も法人が団体交渉拒否を繰り返す虞があることから、本件の救済利益 が消滅したとまでいうことはできないと判断した。 〈本件申立て後の会社の対応と救済措置の必要性〉 ・S事件(24不26、26.8.20終結、一部救済) 本件は、申立外S社の破産手続きの中でその営業権と工場資産が 会社に事業譲渡された後の、労働諸条件等に係る団体交渉における 会社の対応が不誠実な団体交渉に当たるか否かが争われた事案であ り、会社は、当初対応に遅れを取ったことは率直に認めるが、事業譲渡 が実行されたことによる会社運営上の混乱に起因するもので、組合の 排除を意図したものではなく、本件申立て後は組合からの団体交渉の 申入れ全てに応じていると主張した。 当委員会は、上記判断のうち団体交渉拒否については、本件申立 て後に会社が誠実に対応していることなどから、もはや団体交渉を命

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ずる必要性は消滅しており、文書交付を命ずる等の救済措置を講ずる 必要性は認められないと判断した。 (3) 却下事由 〈申立て期間の徒過〉 ・R事件(22不53、26.1.15終結、一部救済) 本件は、①新人事制度を議題とする団体交渉における会社の一連 の対応が不誠実な団体交渉及び組合運営に対する支配介入に、②同 制度導入に際して会社が家族手当を削減し地域手当を廃止したことが 組合員に対する不利益取扱い及び組合運営に対する支配介入に、ま た、会社が、③全社員に配布している人事及び労働ニュースにストライ キや団体交渉、上部団体を批判する内容の記事を掲載したこと、④団 体交渉において時短(休日増加)や労使協議会に係る協定を「破棄す る。」、「90日条項を使う。」などと発言したことが組合弱体化を意図した 組合運営に対する支配介入に、それぞれ当たるか否かが争われた事 案である。 当委員会は、①、③及び④の一部及び②については、本件申立て 時点で1年を経過しているとして、申立期間を徒過していると判断した。 ・U事件(24不20、26.12.4終結、棄却) 本件は、会社が、①支部執行委員長を雇止めしたこと、②組合員1 名を降格したこと、③組合員3名の職務内容等を変更したことが、それ ぞれ組合員であるが故の不利益取扱い及び組合弱体化を企図した支 配介入に、また、④団体交渉における会社の対応が不誠実な団体交 渉に、⑤面談における会社従業員の組合員1名に対する発言が組合 弱体化を企図した支配介入に、それぞれ当たるか否かが争われた事 案である。 当委員会は、⑤については、会社従業員の発言がなされたとされる 日は本件申立ての1年以上前であることから、申立期間を徒過したもの と判断した。

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〈会社が解散して清算結了していること〉 ・N事件(24不4、26.1.27終結、棄却) 前記1(2)①オ参照 3 救済命令 (1) 不利益取扱いの救済 〈解約予告通知がなかったものとしての取扱い及び報酬相当額支払〉 ・S事件(22不22ほか2件、26.3.27終結、一部救済) 本件は、副執行委員長との業務委託契約を解除したことが組合員か ら仕事を奪う不利益取扱い及び副執行委員長を職場から排除すること により組合弱体化を図ろうとする支配介入に当たると判断された事案で ある。 当委員会は、副執行委員長の解約予告通知がなかったものとして取 り扱い、報酬相当額を支払うことを命じた。 〈定年後継続雇用したものとしての取扱い、その労働条件について団体 交渉を通じて定めること〉 ・H事件(24不44、26.3.19終結、全部救済) 本件は、組合員1名を定年後継続雇用しなかったことが組合員であ るが故の不利益取扱い及び組合運営に対する支配介入に当たると判 断された事案である。 当委員会は、組合員を継続雇用したものとして取り扱い、その労働 条件について団体交渉を申し入れられたときは団体交渉を通じて労働 条件を定めることを命じた。 〈配転がなかったものとしての取扱い及び原職復帰〉 ・E事件(24不57、26.9.4終結、一部救済) 本件は、分会長ら2名の配転が組合員に対する不利益取扱い及び 組合運営に対する支配介入に当たるか否かが争われた事案である。 当委員会は、分会長ら2名の配転をなかったものとして取り扱い、原 職に復帰させることを命じた。

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〈週休1日で勤務したものとしての取扱い及び賃金相当額支払〉 ・D事件(24不49、26.9.25終結、一部救済) 本件は、会社が、週休2日の再雇用契約を締結して実際には週休1 日で勤務していた分会長に対し、週2日休むよう通告したことが組合加 入や組合活動を理由とした不利益取扱い及び組合活動の抑制を企図 した支配介入に当たると判断された事案である。 当委員会は、分会長について週休1日で勤務したものとして取り扱 い、賃金相当額を支払うことを命じた。 〈文書交付・掲示のみ〉 ・Z事件(19不95ほか3件、26.2.26終結、一部救済) 本件は、本件審問の証人出頭について不就労とし、組合員1名の賃 金等を控除したことが報復的不利益取扱い及び同人の組合活動を妨 害することを意図した支配介入に、組合員をけん責処分としたことが組 合活動を嫌った不利益取扱い及び組合活動を制約することを狙った 支配介入に、それぞれ当たると判断された事案である。 当委員会は、賃金等の減額については判決に基づく履行により既 に回復されており、けん責処分は裁判上の和解において撤回されてい ることから、文書交付及び掲示を命じた。 (2) 団体交渉拒否の救済 〈交渉拒否理由または交渉条件に関する指示〉 ・G事件(24不103、26.7.28終結、全部救済) 本件は、学園が、組合側団体交渉出席者が8名であることを理由に 団体交渉を途中退席したことが正当な理由のない団体交渉拒否に、 団体交渉において組合の質問に回答しないなどの対応をしたことが不 誠実な団体交渉に、それぞれ当たると判断された事案である。 当委員会は、組合側出席者数が7名以内でないことを理由に団体 交渉を拒否してはならず、組合が団体交渉を申し入れたときは誠実に 応ずることを命じた。

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