●欧州における洋上風力発電の現状(その1)
2010 年 1 月 25 日~26 日にドイツ・ハンブルク市内で開催された Offshore-Windpark の講演 について報告する。内容としては、欧州における洋上風力発電の現状を報告するもので、主催 は Euroforum 社である。
1.E.ON 社の欧州における洋上風力発電への関与
Ralf Lamsbach 氏、E.ON Climate & Renewables Central Europe 社
1.1 E.ON 社の再生エネルギー分野における目標と戦略
E.ON 社は世界最大の電力および天然ガスの株式会社の 1 つであり、従業員数は約 93,500 人、 2008 年の売上は 870 億ユーロを記録している。顧客数も約 3,000 万を数え、営業活動は 30 ヶ 国以上で実施している。
E.ON 社の気候再生可能エネルギー部門である E.ON Climate & Renewable 社(以下 EC&R 社と 略する)の市場ユニット(Market Unit:図中では MU)について、図 1-1 に示す。
出典:Offshore-Windpark 講演資料、Ralf Lamsbach 氏、 E.ON Climate & Renewables Central Europe 社
図 1-1 E.ON 社の市場ユニット体系 EC&R 社のヴィジョンとして、世界の再生可能エネルギービジネスにおけるトップ企業であり 次世代産業を描く立場であること、また世界の炭素資源ビジネスを開発することの 2 つを掲げ ている。 EC&R 社が再生可能エネルギーに関する野心的な目標を達成するための設定を、図 1-2 に示す が、2007~2011 年には再生可能エネルギーに約 80 億ユーロの投資を行い、2030 年までに E.ON 社の現在の CO2排出量を 50%削減を達成する計画である。 E.ON AG 本社 デュッセルドルフ市
出典:Offshore-Windpark 講演資料、Ralf Lamsbach 氏、 E.ON Climate & Renewables Central Europe 社 図 1-2 E.ON 社の再生可能エネルギーに関する野心的目標 EC&R 社の責務 5 項目を、以下に挙げる。 ①戦略、各発電方式のバランス、再生可能エネルギーへの投資計画の設定 ②現存または将来の再生可能エネルギー運営の管理 ③全 E.ON グループに対する炭素排出権関連業務委託(JI や CDM) ④E.ON 社の主要成長志向の推進 ⑤新規市場での E.ON 社の行動の啓蒙 全世界における再生可能エネルギー発電の今後の展望を図 1-3 に示すが、似た傾向を持つも のもあるが、決して一様ではないことが示されている。
出典:Offshore-Windpark 講演資料、Ralf Lamsbach 氏、 E.ON Climate & Renewables Central Europe 社
図 1-3 全世界における再生可能エネルギー発電の今後の展望 再生可能(大規模水力含む) 原子力 石炭 天然ガス 2008 年 2015 年 2030 年 E.ON 社の発電バランス 再生可能エネルギー発電容量 (2007 年を 1 として) 2007 年 2010 年 2015 年 風力 バイオマス 太陽光 海洋エネルギー 全世界の 発電容量 (GW) 世界全体 での長期的 な潜在発電 容量(GW) 現在の 技術成熟度 進んでいる 今後の成長が 期待できる 技術的コンセプト の実証段階
再生可能エネルギーは、「小規模生産から産業へ」と変革が必要である。風力発電が産業発 展として、まさに完璧な例なのである。そのイメージを図 1-4 に示す。
出典:Offshore-Windpark 講演資料、Ralf Lamsbach 氏、 E.ON Climate & Renewables Central Europe 社 図 1-4 全世界における風力発電の成長の見通し E.ON 社の再生可能エネルギーに関する戦略は、明確に定義された基礎の上に立つ 1 つの主要 テーマである。その主要テーマとは、「小規模生産から産業へ」である。具体的には、すべての 価値連鎖および商業的経験の産業化、E.ON 社の持つ能力を市場に影響力を与え続けること、成 長市場および成長技術に重点を置く柔軟な企業構造、戦略的提携関係の構築、並びに最優先事 項としての安全性の確保が挙げられる。 技術および市場の管理に当たって、EC&R 社が最も注目する点は、最も魅力的な技術を構築す ることである。そこで、2009 年およびそれ以降の各再生可能エネルギー戦略の展望を、各国ご との状況で図 1-5 に示す。
出典:Offshore-Windpark 講演資料、Ralf Lamsbach 氏、 E.ON Climate & Renewables Central Europe 社 図 1-5 欧米各国の再生可能エネルギー戦略の概要
E.ON 社としては、これまでの実績では最も魅力的な市場へ注目してきたと言える。E.ON 社 が 2010 年 1 月時点までに設置した再生可能エネルギー施設の容量を表 1-1 に示す。 表 1-1 2010 年 1 月までに EC&R 社が設置した再生可能エネルギー施設の容量 地域、エネルギー種類 容量 アメリカ 1,721MW イベリア半島 396MW イギリス 245MW 北極圏 57MW ドイツ 208MW イタリア 278MW 他の欧州 58MW 風力発電 2,963MW その他の再生可能エネルギー 90MW
出典:Offshore-Windpark 講演資料、Ralf Lamsbach 氏、 E.ON Climate & Renewables Central Europe 社
市場条件に対する要求がますます高くなるにもかかわらず、E.ON 社は再生可能エネルギー設 置容量増加のペースを加速させているのである。2007 年以降の各年の新設容量の推移を図 1-6 に示す。
出典:Offshore-Windpark 講演資料、Ralf Lamsbach 氏、 E.ON Climate & Renewables Central Europe 社
図 1-6 EC&R 社の新設設置容量の推移 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 1,004 1,979 984 2,963 2007 年 2008 年 2009 年 新設 2009 年 (MW )
さらに主要プロジェクトは、強力な資本力をベースとして建設されているのである。その状 況を表 1-2 に示す。 表 1-2 EC&R 社が手掛ける主要プロジェクト一覧 技術 設置容量 操業中の主要施設 建設中の主要プロジェクト 陸上風力発電 2,760MW ・Rescoe(782MW)、 アメリカ ・Panther Creek(458MW)、 アメリカ ・Wielkopolska(48MW、2010 年)、 ポーランド ・La Victoria(24MW、2010 年)、 スペイン 洋上風力発電 113MW ・Scroby Sands(60MW)、 イギリス ・Alpha Ventus(60MW)、 ドイツ ・London Array(630MW、2012 年)、 イギリス ・Robin Rigg(180MW、2010 年)、 イギリス ・Rödsand 2(207MW、2010~2011 年)、 デンマーク バイオマス 44MW ・Steven’s Croft(44MW)、 イギリス ・建設中プロジェクトなし バイオガス、 メタン 20MW ・Schwandorf(90GWh/年)、 ドイツ ・Aiterhofen(95GWh/年)、 ドイツ ・建設中プロジェクトなし 太陽エネルギー 1MW ・Le Lauzet 1(1MW、2009 年)、 フランス ・薄型フィルム JV の Malibu 社 を Schüco 社と設立 ・Helioenergy 1(50MW、2011~2012 年)、 スペイン ・Helioenergy 2(50MW、2011~2012 年)、 スペイン ・Le Lauzet 2(2.5MW、2010 年)、 フランス 海洋発電 計画中 未稼働 ・Pelamis 社とのベンチャー(2010 年)、 イギリス
出典:Offshore-Windpark 講演資料、Ralf Lamsbach 氏、 E.ON Climate & Renewables Central Europe 社
EC&R 社の開発計画を、2009 年 12 月時点での状況を表 1-3 に、その開発計画のうち、北アメ リカと欧州の比率を示したものを表 1-4 に、それぞれ示す。開発計画は風力発電が中心である が、特に欧州では洋上風力発電に対する注目が高まっていることが特徴として挙げられる。 表 1-3 EC&R 社の開発計画(2009 年 12 月時点) プロジェクトの状況 施設容量 建設中 694MW 実現可能性 90% 1,015MW 実現可能性 50% 3,698MW 実現可能性 20% 8,269MW 実現可能性 10% 3,392MW 合計 17,068MW
出典:Offshore-Windpark 講演資料、Ralf Lamsbach 氏、 E.ON Climate & Renewables Central Europe 社
表 1-4 EC&R 社の開発計画(2009 年 12 月時点)における北米と欧州の比較 容量 割合 北アメリカ 9,496MW 55% 陸上風力発電 9,496MW 100% ヨーロッパ 7,572MW 45% 陸上風力発電 3,324MW 44% 洋上風力発電 3,482MW 46% その他 766MW 10%
出典:Offshore-Windpark 講演資料、Ralf Lamsbach 氏、 E.ON Climate & Renewables Central Europe 社
EC&R 社の「小規模生産から産業へ」のアプローチが、成果を挙げ始めているところなのであ る。その結果を表 1-5 に示すが、操業と調達における双方の産業化に向けた明確なステップが、 当社のビジネスに新たな価値を創造し始めている。 表 1-5 EC&R 社の「小規模生産から産業へ」のアプローチの成果 2007 年時点の状況 2008~2009 年の新設 傾向 風力発電平均規模(MW) 15 75 ↑ 風力発電タービン平均サイズ(MW) 1.4 1.9 ↗ 風力タービンの OEM 9 8 ↗ 風力タービンのタイプ 53 13 ↑ 2007 年 2009 年 風力タービンの有用性 91% 94% ↗
出典:Offshore-Windpark 講演資料、Ralf Lamsbach 氏、 E.ON Climate & Renewables Central Europe 社 本章の最後に、EC&R 社の戦略における重点 5 項目を以下に示す。 ①最も魅力的な市場で、最も魅力的な技術に焦点を当てる。 ②再生可能エネルギービジネスを、「小規模生産から産業へ」の移行を図る。 ③陸上/洋上風力発電施設容量の強力な拡大を維持しながら、太陽光を 2 番目の強力な柱 とする。 ④EC&R 社による設置容量の継続的な成長を図り、運営上の優れた経験を積む。 ⑤無駄のない、迅速で効率的な構造を維持する。
1.2 洋上風力発電実現に向けた中心となる作業
EC&R 社の洋上風力発電の現状を図 1-7 に、また再生可能エネルギーに関する公約を実現させ るためのロードマップを図 1-8 に、それぞれ示す。
出典:Offshore-Windpark 講演資料、Ralf Lamsbach 氏、 E.ON Climate & Renewables Central Europe 社
図 1-7 EC&R 社の洋上風力発電施設開発状況
出典:Offshore-Windpark 講演資料、Ralf Lamsbach 氏、 E.ON Climate & Renewables Central Europe 社 図 1-8 E.ON 社の洋上風力発電施設開発ロードマップ EC&R 社の戦略の中でも、洋上風力発電が主要な役割を果たすことになる。具体的には段階的 アプローチに基づくものとなるが、 ①幅広い容量および立地における、洋上風力発電の開発 ②建設発電容量は、最初ほど挑戦的状況ではなくなっている。 ③洋上での実プロジェクトからの、継続的な学習と改善 ④全体の価値連鎖に渡る、改善と開発 操業中 建設中 計画中 E.ON 社の洋上風力発電施設容量 E.ON 社の洋上風力発電計画容量 E.ON 社が注目する市場 113MW 3,100MW 以上 イギリス、ドイツ、デンマーク、 スウェーデン 北欧 イギリス ドイツ 過去 今日 将来の選択肢 スウェーデンの沿岸 イギリスの沿岸 ドイツの遠洋プロジェクト
⑤知見を次段階の挑戦へ活用すること
の以上 5 項目が戦略である。EU20-20 パッケージにおける EC&R 社の洋上風力発電の開発戦略 について図 1-9 に、またプロジェクトの進捗計画について全体のスケジュールと主要な段階的 事項の一例を図 1-10 に、それぞれ示す。
出典:Offshore-Windpark 講演資料、Ralf Lamsbach 氏、 E.ON Climate & Renewables Central Europe 社
図 1-9 EC&R 社の EU20-20 目標へ向けた洋上風力発電施設開発戦略
出典:Offshore-Windpark 講演資料、Ralf Lamsbach 氏、 E.ON Climate & Renewables Central Europe 社
EC&R 社は洋上風力発電部門では世界有数の先導的能力を持つものの、洋上風力発電固有の問 題はすべて解決していかなければならない。ここでは環境関連項目について、以下 4 項目を挙 げる。 ①開発 気候目標達成は、エネルギー生産の不確実性を削減することと風環境が決定的に重要である が、コスト高が問題である。 ②設計 予測精度向上が、風力発電の設計やレイアウトの改善に必要である。 ③建設 納期厳守が、収益性に非常に大きな効果をもたらす。天候によるスケジュール遅延リスクは、 軽減されなければならない。 ④操業および維持管理 先進的な気候警報が、修理やアクセスのスケジュールに大変重要となる。 先進的な気象予測モデルについては、予測トレンドとほぼ一致し得ることもあるが、いまだ に弱点も見せているのが現状である。先進的気象予測モデルの長所としては、正しいレンジに 予測が収まっていることが多いことであるが、限界としては、決定を下す際に予測が正しいか をどうやって判断するかが問題となる。 ここでは、ドイツ北海沿岸の Amrumbank 洋上風力発電施設建設計画地における実際の風速と 予測結果の比較を図 1-11 に示す。
出典:Offshore-Windpark 講演資料、Ralf Lamsbach 氏、 E.ON Climate & Renewables Central Europe 社
図 1-11 Amrumbank 洋上風力発電施設建設計画地における実際の風速と予測の比較
1.3 洋上風力発電のプロジェクト実施
洋上風力発電プロジェクトにおいて、実際に個人が洋上に出て作業するための資格が、Alpha Ventus HSEコンセプトによって必要とされる。HSEとはすなわち、健康(health)、安全(safety)、 環境(environment)を指す言葉であるが、そのコンセプトの内容を以下に示す。 ・医療的健康診断として必要とされるもの 応急処置のセミナー:2 日間 海のサバイバルコース:3 日間 ヘリコプターからの水への避難訓練:1 日間 合計で最低 6 日間 風速( m /s ) 実際の風速 9 月 19 日 0 時の予測 9 月 19 日 12 時の予測 0 時の予測 12 時の予測 予測が大きく 外れた箇所 9/19 9/20 9/21 9/22 9/23 9/24
・さらに必要とされるもの 救急訓練:6 日間 ヘリコプターアクセス:1 日間 風力発電タービンの高所からの安全および救助:2 日間 以上、合計で標準的に 15 日間が必要となる。さらには業務内容によっては、それ以上とな る場合もある。この訓練は絶対に必要であり、自分自身の自信にもつながり、他者を助けるこ とが可能になるのである。 洋上プロジェクトを安全に遂行する上での、教訓と取るべき行動を分けると、以下のように なる。また洋上風力発電施設での作業の写真を図 1-12、図 1-13 に示す。 ・教訓 -PSA(確率論的安全評価)が、従業員に応じて設定されなければならない。 -洋上救命胴衣、安全帯、カラビナも、PSA として考慮される必要がある。 -すべての技術者および従業員にとって、洋上にいることは「新しい」ことであり、ルーチ ンワークはなく、経験もなく、それゆえに HSE(健康、安全、環境)が高い意味を持つの である。 -長期間、究極の環境で、高いストレスが懸念される。したがって洋上にいた後のケアの時 間が重要である! -洋上にいる際には、すべての従業員が無線システムを携帯することが、連絡を取り合う上 で必要である。 ・取るべき行動 -従業員全員の体に関するデータを集めておく。 -従業員の HSE に関する予算を保証しておく必要がある。 -リスク評価がなされていること、および HSE 管理システムを活かすこと。 -回復時間は、洋上作業の後に、管理部門から直接与えられる。 -洋上作業における調整は、今後の課題でもある。 (参考資料)
・Offshore-Windpark 講演資料、Ralf Lamsbach 氏、 E.ON Climate & Renewables Central Europe 社
作業用船“Wind Force 1”による現場への移動
洋上での安全装備
出典:Offshore-Windpark 講演資料、Ralf Lamsbach 氏、 E.ON Climate & Renewables Central Europe 社 図 1-12 洋上風力発電施設に関する作業状況(1)
船からタービン設備への移動
作業員の様子
出典:Offshore-Windpark 講演資料、Ralf Lamsbach 氏、 E.ON Climate & Renewables Central Europe 社 図 1-13 洋上風力発電施設に関する作業状況(2)
2.洋上風力発電施設からの送電網接続への挑戦 Gert Schwarzbach 氏、50Hertz Offshore GmbH 社
2.1 50Hertz Offshore 社の紹介 当社は元々は Vattenfall 社の送電網管理部門であったが、Vattenfall 社が送電部門を分離 し、2010 年 1 月 5 日に 50Hertz Transmission GmbH 社として発足したものである。業務内容は、 送電網への接続手続や海洋送電網の操業管理である。 さらに 50Hertz Offshore GmbH 社は、特に洋上風力発電施設の設置と送電網接続の運営業務 を行っている。業務のキーワードとして、安全と信頼、透明性と技術、革新と国際性を掲げて いる。 2.2 洋上風力発電の目標と現状 EU 目標としては、気候変動エネルギーパッケージ、すなわち 2020 年までにエネルギーの 20% を再生可能エネルギーから生産することがまず挙げられる。また洋上風力発電に関する 2008 年 EU コミュニケ第 768 号(12 月 12 日発令)では、2009 年末までに洋上風力発電を 2GW に、2020 年目標として 30~40GW、2030 年には 150GW にまで拡大する目標を掲げている。 ドイツの目標は、2007 年 8 月 24 日の Meseberg(ベルリンの北約 70km に位置する連邦政府 迎賓館)における閣議において、2020 年までに発電に占める再生可能エネルギー源の割合を 25 ~30%に引き上げることを目標とした。また 2008 年 6 月 18 日に発表された総合エネルギー気 候プログラムの第 2 次計画案、および 2008 年 10 月 25 日に発効された再生可能エネルギー法に よって、2020 年までに発電に占める再生可能エネルギー源の割合を少なくとも 30%に引き上げ ることを掲げている。さらにドイツ連邦環境省は、2030 年までに洋上風力発電を 25GW にまで 引き上げる目標を提示している。 現状は、最初となる洋上風力発電タービンが 2009 年に送電網に接続されたところである。 他の洋上風力発電施設は、建設中もしくは計画段階である。 2.3 重要な法的根拠 洋上風力発電を支える、法的根拠の主なものを以下に挙げる。 ①第 3 次エネルギー国内市場パッケージ 欧州方針 2009/72/EG:電力市場の自由化 欧州通達 714/2009/EG:国境を越える電力取引 欧州通達 713/2009/EG:ドイツ連邦送電網規制庁の業務代理機関 ②再生可能エネルギーの奨励策 欧州方針 2009/28/EG(欧州方針 2001/77/EG の改正) 「加盟国は送電および配電網インフラを拡大し、送電網インフラへの接続許可を促進するた めに適切な処置を取る必要がある。」(第 16 項) ③システムの安全性、欧州横断ネットワーク(TENs) 欧州方針 2005/89/EG:システムの安全性 決定番号 1364/2006/EG:欧州横断ネットワーク ④2005 年 7 月 7 日発効のエネルギー産業法 接続に関しては、電力 NAV と発電所 NAV が適用される。 (NAV:Niederspannungsanschlussverordnung→低圧電力接続規則)
優遇策に関しては、電力 NEV と ARegV が適用される。 (NEV:Stromnetzentgeltverordnung→送電網電力報酬規則) (ARegV:Anreizregulierungsverordnung→優遇策調整規則) ⑤2008 年 10 月 25 日発効の再生可能エネルギー法 電気事業法の改正を含む第 3 条 4 項も含む。 これによって、送電網管理事業者は、洋上発電所から陸地までの海洋ケーブル接続の適切な 設置と運営に対して責任を持つことになる。(2015 年までに、洋上風力発電施設の建設が開始 されるという前提である。) ⑥送電網拡充法 ⑦海洋施設指令 ⑧ドイツの排他的経済水域における国土整備に関する規則 2.4 洋上風力発電施設の送電網接続手続 洋上風力発電施設の送電網への接続手続概要を、図 2-1 に示す。
出典:Offshore-Windpark 講演資料、Gert Schwarzbach 氏、50Hertz Offshore GmbH 社 図 2-1 洋上風力発電施設が送電網へ接続するまでの手続の流れ
2.5 プロジェクト実現時期の検討
洋上風力発電の判定団体として、Ökos、Kuhbier RA、IMS、Dt. WindGuard(de la Motte)
などが挙げられる。「早期の建設開始に向けた楽観的視点」に基いた場合の、2007~2009 年に 鑑定を受けたプロジェクトの実現可能性を示すと、表 2-1 に示すようなスケジュールが考えら れる。 洋上風力発電施設の計画、認可、調達、建設 申請 実施可能性の調査 -適正 -環境との調和 接続および建設契約 (およびその他) 操 業開始 送電網接続関連設備の調達と設置 送電網接続の認可手続 送電網接続仕様と送電ルート計画 電気事 業法第 11 8 条 第 3 項に 応じ た 検査 (海洋で の 接 続 に 対す る 事項) 50Hz 社の 送電網接続 および利用 規則を遵守 すること! 調査用紙 鑑定書 顧客と協議 YES NO モニタリング
表 2-1 2007~2009 年に鑑定を受けたプロジェクトの実現可能性 2007 年鑑定 2008 年鑑定 2009 年鑑定(暫定) 2011 年末までに、 ・4 つのプロジェクトは 「見込みあり」 ・4 つのプロジェクトは 「実現性は低い」 2011 年末までに、 ・2 つのプロジェクトは 「見込みあり」 2015 年末までに、 ・すべてのプロジェクトは 実現可能 2011 年末までに、 ・1 つのプロジェクトは 「見込みあり」 2015 年末までに、 ・すべてのプロジェクトは 実現可能
出典:Offshore-Windpark 講演資料、Gert Schwarzbach 氏、50Hertz Offshore GmbH 社 プロジェクトが遅延する理由として、大抵の場合はプロジェクトが考えられているほど進展 しないこと、もう 1 つは認証までに時間がかかり過ぎることが挙げられる。金融経済危機の影 響や、最初の洋上風力発電施設の経験となることに慎重姿勢を見せていることも要因として考 えられる。 2.6 送電網接続のコストと資金調達 洋上風力発電におけるコスト要素として、海洋ケーブル(+陸地も必要)、プラットホーム を含む変換装置(直流のみ)、チョークコイル(交流のみ)、変圧器、開閉装置の 5 項目が挙げ られる。またイメージを図 2-2 に示す。
出典:Offshore-Windpark 講演資料、Gert Schwarzbach 氏、50Hertz Offshore GmbH 社 図 2-2 洋上風力発電におけるコスト要素の概要 一方で資金調達面においては、送電網運営企業を通じての(事前的)資金調達が特に重要で あり、他にも送電網運営企業 2~4 社との水平的財政調整や、送電網報酬による(再)資金調達 が、重要な要素となる。 洋上風力発電施設の建設コストは、1 施設当たり 1 億~5 億ユーロとされている。効率的な 資金調達が必要であり、先行投資や無用な投資は最小限に留めなければならない。 2.7 ドイツ連邦送電網規制庁の役割 送電網を国家が独占するのは当然のことである。そこで、規制機関であるドイツ連邦送電網 規制庁による監視が、送電網使用者の権益を守るために必要なのである。 ドイツ連邦送電網規制庁代表 Matthias Kurth 氏は 2008 年 7 月 7 日午後に、同規制庁はドイ ツ送電網系統への投資の魅力を拡大するために、適切な制度の設立に注目し、新設計画のリフ ァイナンスのための長期的にも十分対応可能な、経済的かつ法律的に投資計画の安全性を確保 洋上風力発電施設 洋上変圧施設 海底ケーブル 陸上変圧施設
する、と述べている。 ここで優遇策調整規則(ARegV)について説明する。送電網運営企業にとっては、金融面の 著しいリスクが続くことになる。そこで 2009 年に初めて本規則の適用が実施された。特徴とし ては、額面自己資本利益率は 9.29%以下であること、また優遇策適用は規制期間内に限定され ることである。 次に維持管理費についても優遇策が適用されるが、特徴としては時間に融通性を持たせた認 可制度とすることであるが、維持管理の効率基準については未解決のままである。 2.8 ドイツ連邦送電網規制庁の政策方針声明書(ポジションペーパー) ドイツ連邦送電網規制庁の政策方針と、それに対する送電網運営企業側が採るべき行動のガ イドラインを示した書類(ポジションペーパー)の概略を、表 2-2 に示す。期日として、年に 2 回(3 月 1 日と 9 月 1 日)の基準達成検査がある。しかし現状で法的拘束力を持たせるまでに は、実践に即した一連の経験が不足していると考えられている。 表 2-2 ドイツ連邦送電網規制庁のポジションペーパーの概略 政策方針基準 送電網運営企業の行動 [基準 1]洋上風力発電施設の承認 計画 [基準 2]洋上風力発電の具体的な建設時期計画 実行案 [基準 3]用地の調査 送電網接続の条件付での承諾 [基準 4] a)風力発電施設の義務的な資金調達 b)洋上風力発電施設の拘束力を持つ事前契約 公募 送電網接続の正式承諾 送電網接続の契約
出典:Offshore-Windpark 講演資料、Gert Schwarzbach 氏、50Hertz Offshore GmbH 社
2.9 送電網接続に対する技術的概念 洋上風力発電施設を送電網へ接続する際に、検討しなければならない選択的事項が当然なが ら存在する。具体的には、個別の接続か複数施設の接続とするか、三相交流か直流か、標準部 材とするか最適化された施設規模で行うか、などである。言うまでもなく、安全な接続である ことが大前提である。 結局はケースバイケースとなるのだが、以下の項目を考慮しながら、複雑な決定をしなけれ ばならない。すなわち、技術的有用性、施設の使用可能性(使用開始日)、コスト(金額、承認)、 認証の可能性がその考慮すべき項目となる。
2.10 実践への移行
ここでは、50Hertz 社が経験した洋上風力発電施設の計画から操業までの流れを図 2-3 に示 すが、効果的な計画から実施への転換は、良好な連携体制から生まれるものである。
出典:Offshore-Windpark 講演資料、Gert Schwarzbach 氏、50Hertz Offshore GmbH 社 図 2-3 洋上風力発電の計画から操業までの移行のイメージ 2.11 洋上風力発電の送電網接続~EnBW 社の Baltic 1 施設の例 洋上プラットホームから Bentwisch 変電所まで、三相交流システムで電力輸送をする施設で ある。送電線長さは、海底に 60km、陸上で 15km である。その概要を以下に示す。合わせてド イツ~デンマークのバルト海沿岸における洋上風力発電施設の送電網接続計画を図 2-4 に示す が、本 Baltic1 施設は図中ほぼ中央に位置している。 ・建設開始:2009 年 7 月 ・海底ケーブル:3×150kV AC、1200mm2 Cu、2010 年春から敷設と組立 ・陸地ケーブル:事前対策はほぼ完了(保護管、掘削) ・Bentwisch 変電所:基礎は完成、組立も間もなく開始 ・プラットホーム:鉄骨工事は完了、開閉所の組立も間もなく開始 →操業開始は 2010 年 9 月の予定である。
出典:Offshore-Windpark 講演資料、Gert Schwarzbach 氏、50Hertz Offshore GmbH 社 図 2-4 ドイツ~デンマークのバルト海沿岸における洋上風力発電施設の送電網接続計画 計画 承認 調達 建設 操業 ・2006 年 12 月以前 の計画 ・効率的な調査 ・自社内での計画 ・洋上風力発電施設と 送電網接続それぞれ の承認 ・国土整備に関する規則 ・設置開始期日 ・各部材の調達 ・インターフェイス ・変換プラットホーム の共用 ・手続の調整 ・概念段階を顧慮
2.12 Kriegers Flak 洋上風力発電施設の送電網接続プロジェクト ドイツ・バルト海に浮かぶリューゲン島沖合の Kriegers Flak 洋上風力発電プロジェクトが 計画されている。前述図 2-4 では、Baltic1 施設のさらに北東に位置する施設となる。これは 欧州の景気刺激に向けたエネルギー計画の一環に含まれるものであるが、そのプロジェクトの コンセプトを以下に示す。 -個別の国内的接続から、洋上風力発電施設からの国際的広域送電網連合へ -再生可能エネルギーの利用+国境を超える取引+電力安定供給確保 -国ごとに異なる規制を通じての挑戦 -Energinet.dk、50Hertz Transmission 社による検査体制の確立 2.13 陸上部での送電網建設 ドイツ連邦経済技術省、ブリューデルレ経済技術大臣は 2009 年 12 月 9 日に、以下の声明を 発表している。 「風力発電施設からの電力は、消費者に届けられなければならない。したがって、再生可能 エネルギーの拡大に対する重要な問題は、送電網にあると言ってよい。洋上風力発電施設の送 電網への接続、および必要な送電網の近代化は、早急に、かつ経済的な方法で実施されるべき である。」
50Hertz Transmission 社の送電網にとっては、“Windsammelschiene”(風の回収送電線)と 呼ばれる特高高架送電線、ドイツ・Uckermark 地域への送電線、テューリンゲン州の架電とい う大プロジェクトを始めとする、約 50 の送電網拡充対策が予定されている。 2.14 まとめ ドイツと EU においては、党派などの立場の違いを越えて、洋上風力の利用から気候保護へ の多大なる貢献が期待できる。洋上風力発電施設の送電網接続についても、理論から実践への 移行において、経験の積み重ねが重要となる。これを成功させるためには、リスク管理と協調 が主要な要因となる。 また法的根拠を基にした、大規模な投資に対する安定した優遇策制度の創設が必要である。 これに関連して、ドイツ連邦送電網規制庁は、風力発電施設の送電網接続のための重要な役割 を務めることになる。 さらに再生可能エネルギー利用目標を達成するためには、送電網拡充(ドイツ国内および欧 州全域)、および変動する電力供給の安定化と電力貯蔵に向けたさらなるポテンシャルの開発が 必要である。 (参考資料)