K. Hori & H. Ohta-1
車軸藻クレブソルミディウムのゲノムから見た植物の陸上化
堀孝一
1, 太田啓之
1,2 1東京工業大学・大学院生命理工学研究科
現在の所属:東京工業大学・生命理工学院
〒226-8501 横浜市緑区長津田町 4259 B-65
2東京工業大学・地球生命研究所
〒152-8550 東京都目黒区大岡山 2-12-1-IE-1
Koichi Hori
1& Hiroyuki Ohta
1,2Klebsormidium flaccidum genome reveals genome evolution for plant terrestrial adaptation
Key words: charophyte, klebsormidium, genome analysis, land colonization
1Tokyo Institute of Technology, Department of Biological Sciences.
Present address : Tokyo Institute of Technology, School of Life Science and Technology
2 Tokyo Institute of Technology, Earth-Life Science Institute.
地球における生命の歴史において,生命の陸上進出は多様な種を生み出し,現在の生物多 様性の礎となっている。最初の生命の陸上進出の過程はいまだ不明な点が多く,植物よりは るか先にバクテリアの陸上進出があったと考えられている(Battistuzzi & Hedges 2009)。しかし ながら,動物をはじめとした複雑な陸上生物を発達させ,今日の地球環境を形成するに至っ た直接の原動力として,光合成によって二酸化炭素を固定し有機物を合成できる植物の陸上 進出は大きな役割を果たした事は確かである。本総説では植物の陸上化を解明するにあたっ て 重 要 な 位 置 づ け に あ る 車 軸 藻 植 物 門 の う ち , ク レ ブ ソ ル ミ デ ィ ウ ム(Klebsormidium flaccidum)のゲノム解読と他生物との比較の結果を紹介する。
1.植物の陸上化について
植物の陸上進出がいつ起きたのかは定かではなく,分子系統解析から有胚植物(陸上植物) の出現の推定年代も諸説あるのが現状である。しかしながら,分子系統解析と胞子の化石よ り約4 億 7 千万年前にはすでに現生の陸上植物の共通祖先は誕生していたと考えられている(Rubinstein et al. 2010, Clarke et al. 2011, Magallón et al. 2013, Edwards & Kenrick 2015)。
陸上は,乾燥はもちろん強い紫外線,大きな温度変化,重力,栄養の欠乏など様々なスト レスが存在する過酷な環境であり,植物が陸上進出するにあたって,これらのストレスに適 応する必要があったと思われる。植物の陸上化はこのような当時の陸上環境に大きく影響を 受ける一方,酸素濃度の増大(Parnell & Foster 2012),二酸化炭素固定,風化作用や堆積(Scott & Glasspool 2006)など地球環境の形成に大きく寄与し,相互に深く影響を及ぼしあったと考え られる。
K. Hori & H. Ohta-2
2.陸上植物の起源
陸上植物は緑色藻類の一群から分岐し,現在の多様な陸上植物へと発展してきたが,どの ような植物が陸上に進出し,どうやって陸上環境に適応し発展を遂げていったのだろうか。 その解明には陸上植物に近い藻類の特性を明らかにし,他の藻類や陸上植物と比較すること が重要なアプローチの一つとして期待される。 多様な藻類が存在する中で細胞分裂の特徴や系統解析から車軸藻植物門(Charophyta)に属 する藻類が陸上植物に最も近いと考えられている(Lewis & McCourt 2004, Leliaert et al.,2012) 。(車軸藻植物は多系統群であり,分類上の表記はまだ統一されてはないが,本稿では
Lewis & McCourt 2004 の分類に基づき車軸藻植物の分類を表記した。)車軸藻植物門はクロロ
キブス藻綱,クレブソルミディウム藻綱,コレオケーテ藻綱,接合藻綱,シャジク藻綱の 5
つの綱が含まれる(図1)。このなかで後者の3 つは特に陸上植物に近いとされ,そのうちど
の綱が陸上植物の姉妹群であるかは長らく議論が続いてきた。近年,転写産物情報の蓄積と ともに,より精度の高い解析が行われ,現在は接合藻綱が陸上植物の姉妹群とする説が有力 となっている (Timme et al. 2012, Wickett et al. 2014) 。実際,31 種類の保存された配列に基づ いた図1の解析結果もそれを支持している。 我々は陸上化にいたる過程のより初期に,どのような遺伝子を獲得したのかという観点で 植物の陸上進出について研究を進める事を考え,これらの車軸藻植物のうち比較的初期に分 岐し,多細胞性であるがシンプルな体制を持つクレブソルミディウムのゲノム解読を進めた。
3.クレブソルミディウムとは
クレブソルミディウムは糸状性の多細胞の藻類であり,遊走子による無性生殖は報告され ているが,細胞分化や有性生殖は報告されていない(図2a)。生息環境は淡水および陸上の 湿潤な環境であり,世界中に分布する。藻類ではあるが,ある程度陸上環境に適応した気生 藻類であり,乾燥(Morison & Sheath 1985, Elster et al. 2008, Karsten & Holzinger 2012)や凍結図1 31 種類の保存されたタンパク質による系統樹
21 生物種に共通して保存された核コードのタンパク質配列(一部 EST 配列から推定)を基に作 成した最尤系統樹 (Hori et al. 2014. Fig. 2 を改変)
タテブエ (EST) アオミドロ (EST) フラスコモ (EST) ケートスフェリディウム (EST) コレオケーテ (EST) クレブソルミディウム クロロキブス (EST) ミクロモナス オストレオコッカス ヒメツリガネゴケ クロレラ クラミドモナス イヌカタヒバ フェオダクチラム シアニディオシゾン シロイヌナズナ ポプラ イネ ボルボックス シオミドロ コンドラス 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 88 100 97 93 93 100 55 0.2 クレブソルミディウム (EST) 紅藻 緑藻 有胚植物 (陸上植物) ⾞軸藻 植物⾨ 2次共⽣藻 シャジク藻綱 接合藻綱 コレオケーテ藻綱 クレブソルミディウム藻綱 クロロキブス藻綱
(Elster e ると再び ト壁や路 の多い所 2b, c)。 適応して 境への適 興味深い 陸上植物 ウムも独 ミディウ 真に共通 がある。
4.車軸
我々は flaccidum 表記した anium と Mb の転 olds, ピ ゲノム ソルミデ ミドライ 配列決定 写産物情 117 遺伝 などから genesis.b5.ク
ゲノム 種の藻類 において った結果 事が明ら ると,陸 が増加し et al. 2008, N び増殖する事 路面などで水 所にしばしば 。どのような ているのか明 適応を明らか い。ただし, 物が分岐して 独自の進化を ウムと陸上植 通派生形質で軸藻植物門
は国立環境研 m NIES-228 た。)を用い と Illumina G 転写産物配列 ピークカバー (約106 kbp ディウムの核 イブラリーの 定が困難な反 情報や配列解 伝子,ミトコ ら,これら1 bio.titech.ac.レブソルミ
ム解析の次の 類と比較した て,藻類のみ 果,クレブソ らかとなった 陸上植物は藻 しているこ Nagao et al. 2 事ができる。 水抜きパイ ば群集を形成 な機構によ 明らかでは かにしてい ,クレブソル てから,ク を遂げてお 植物に共通 であるのか注門 Klebsorm
研究所微生物 85 株(以下 いてドラフト GAIIx の超 列を取得した ー率:40 倍)の p),転写産 核ゲノムサイ の端読みの 反復配列領域 解析などか コンドリアの 16,215 遺伝 .jp/~algae_geミディウム
の段階とし た。これら みに存在す ソルミディ た(図3)。 藻類より多 とが,総遺伝 K. H 2008)などス 。非常に身 プの脇など 成している り,陸上環 ないが,陸 くうえで非 ルミディウ レブソルミ り,クレブ している形 注意を払うmidium flacc
物系統保存 本稿では K トゲノム配列 並列シーケ た。これらの の核ゲノム配 物(17,422 イズは核の 結果 20%強 域などを除 らタンパク の35 遺伝子 子の機能予 enome_projeと他生物種
て,クレブ の生物の全 るタンパク ウムの 1,23 また各生物 くの遺伝子 伝子数と遺 Hori & H. Oh 図 a. K b. c. トレスの強 身近な藻類で ど湿気 (図 環境へ 陸上環 非常に ムと ディ ブソル 形質が, 必要cidum(クレ
存施設より分 K. flaccidum 列の解読を行 ンサーを用 の配列をアセ 配列と葉緑 座位, 約 2 蛍光染色像 強程度の反復 除いてゲノム 質をコード 子を予測し, 予測を行った ect/klebsorm種の遺伝子
ソルミディ 全タンパク質 質か陸上植 38 タンパク 物種内の類似 子を保持して 遺伝子ファミ hta-3 図2クレブソ K. flaccidum N クレブソルミ ていたコンク (b)から採取し 強い環境でも でもあり,直レブソルミ
分譲を受ける NIES-2285 行った。ゲノ 用いて約 6.1 センブルした 緑体ゲノム( 1 Mb)を再 像から約117 復配列領域が ムのほぼ全域 ドする核ゲノ 既知の機能 た(Hori et al midium/)。比較解析
ウムの遺伝 質配列をクラ 植物のみに存 質(約 8 % 似遺伝子を遺 ているが,主 リー数をプ ルミディウム NIES-2285 株 ミディウムと思 クリート路面 した藻類の顕微 もある程度耐 直遮光の当たディウム)
ることができ 株をクレブ ノム解読には Gb のゲノ た結果約10 約181 kbp) 再構築する事 Mbp 程度と があると推定 域の解読が完 ムの16,063 能が明らかな . 2014, http 伝子を 5 種の ラスタリング 存在するタン %)は陸上植 遺伝子ファミ 主に遺伝子重 プロットする ムの顕微鏡写 (固体培地にて 思われる藻類 微鏡写真 耐え,環境が たらないコン)のゲノム
きる Klebsor ブソルミディ は454 GS ム配列と, 04 Mbp(18 ),ミトコン 事ができた。 と推定され, 定されたこ 完了した。つ 3 遺伝子,葉 な遺伝子との p://www.plan の陸上植物お グし,比較生 ンパク質か分 植物に特異的 ミリーとして 重複により遺 る事ではっき 写真 て生育) 類が生育し が良くな ンクリーム解読
rmidium ィウムと FLX Tit 約 578 812 scaff ンドリア クレブ ,フォス とから, ついで転 葉緑体の の類似性 ntmorpho および 9 生物種内 分類を行 的である てまとめ 遺伝子数 きりと見て取れる はあまり 境に応答 物である の推移と の比較解 また我 質ドメイ 合わせパ 打ちにな かとなっ ターンを に共通す の藻類よ が陸上植 図3 15 生 藻類 る(図4)。ク り変わらなか 答していく過 るゼニゴケは と植物の陸上 解析がキーポ 我々は遺伝子 インの構成に パターンと総 なっているが った(図5) を藻類がどれ する 90.7%の より2〜3 割 植物に共通の 3 15 生物種 生物種の全タン 類と陸上植物の クレブソル かったこと 過程で有効 は遺伝子の重 上化の関与 ポイントと 子ファミリー についても比 総遺伝子数 が,その組み 。また解析 れだけ獲得 のドメイン 割程度高いこ のタンパク質 種間での遺伝 ンパク質配列を のどちらに特有 K. H ミディウム から,遺伝 に働いたの 重複が少な を明らかに なっていく ーのほか, 比較解析を をプロット み合わせパ 析した5 種の しているか と 84.3%の ことが分かっ 質の機能を 子比較 をクラスタリン 有であるかを基 Hori & H. Oh は他の藻類 伝子重複は植 ではないか いとの報告 するために であろう。 タンパク質 行った。各 した結果, ターンは被 の陸上植物に かを調べた結 ドメインの った(図6) 作るうえで ングし,クラス 基にして分類を hta-4 類と遺伝子数 植物が組織分 かと考えられ 告もあり(大 にはより多く 質を構成する 各生物種のド ドメインの 被子植物でさ に共通するド 結果,クレブ の組み合わせ 。これらの で多くの基本 スター内の他生 を行った。 (Ho 図4 15 遺伝子 各生物 ファミ と遺伝 した。藻 ている。 似曲線で 数あたりの遺 分化を獲得し れる。しかし 大和・河内, 2 の車軸藻植 るパーツと考 ドメインの種 の種類数は陸 さらに増加し ドメインや, ブソルミディ せパターンを のことはクレ 本的なパーツ 生物種のタンパ ori et al. 2014. F 生物種の総 ファミリー数 種内の類似遺 リーとしてま 子ファミリー 藻類は図3と同 。点線は藻類の である。 遺伝子ファミ し,陸上の複 しながら基部 2012),遺伝 植物と基部陸 考えられるタ 種類数や,そ 陸上植物です していること その組み合 ィウムでは陸 を獲得してお レブソルミデ ツをすでに獲 パク質が, Fig. 3a を改変 総遺伝子数と 数のプロッ 遺伝子を遺伝子 とめ,総遺伝子 ー数でプロッ 同じ種を使用 のプロットの近 ミリー数 複雑な環 部陸上植 伝子重複 陸上植物 タンパク その組み すでに頭 とが明ら 合わせパ 陸上植物 おり,他 ディウム 獲得して ) ト 子 子 ト し 近
K. Hori & H. Ohta-5 いることを意味する。クレブソルミディウムは車軸藻植物の中で早いうちに分岐し,非常に シンプルな体制であるにもかかわらず,陸上植物特有の様々なシステムを,原始的な形であ ったとしても予想以上に獲得しているかもしれない。 以上の結果をまとめると,植物が陸上に適応していく過程で遺伝子の多様性の獲得は,次 の3 段階のステップに分けられると考えられる(図7)。 i) 陸上植物の共通祖先である緑藻からクレブソルミディウムが分岐するまでの間は遺伝子 数の増加が遺伝子の種類の増加をもたらしたと考えられる。 ii) コケ,シダ植物のように陸上環境により適応し,組織分化が形成されるには,同遺伝子族 の中でバリエーションを増加させ,細かな機能調節や発現調節を可能にしたと考えられる。 iii) 種子植物のような高度な陸上環境への適応と組織分化を可能にするには既存のパーツの 新しい組み合わせを生み出し,新しい機能の遺伝子を生み出したことが重要だったと考えら れる。 このような過程の中でクレブソルミディウムの祖先は,陸上植物が多細胞体の構築や陸上環 境に適応するために発達させていった遺伝子,あるいはそのパーツの多くをすでに獲得して いた事が推定された。 図5 15 生物種の総遺伝子数と ドメインの種類数およびドメイ ンの組み合わせ数のプロット 各生物種内の全タンパク質の pfamA および pfamB を検索し,ドメインの 種類数および組み合わせパターンを カウントした。藻類は図3と同じ種を 使用している。多くの藻類において, ドメインの種類数よりもドメインの 組み合わせパターンが少なくなって いるのは,ドメインの組み合わせパタ ーンが少なく決まった組合せが多い ためである。 0 2000 4000 6000 8000 10000 0 10000 20000 30000 40000 50000 イネ シロイヌナズナ ポプラ ヒメツリガネゴケ クレブソルミディウム 藻類 ⼩葉類 コケ植物 被⼦植物 ド メイン 数 およ び ド メイン の組 み合 わせ数 総遺伝⼦数 イヌカタヒバ 藻類 陸上植物 ドメイン数 ドメインの組み合わせ数 図6 陸上植物に共通する ドメインおよびドメインの 組み合わせの獲得率 ヒメツリガネゴケ,イヌカタヒ バ,イネ,ポプラ,シロイヌナ ズナに共通する pfam ドメイン (4,894 ドメイン)および,ドメイ ンの組み合わせパターン(2,801 パターン)のうちそれぞれの藻類 で獲得している割合。 0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 : 4,894 domains (%) 陸上植物に共通するドメイン数陸上植物に共通するドメイン組み合わせ: 2,801 combinations ドメ イ ン 獲 得 の 割 合
6.ク
クレブ 境応答, ているも 中でも こでクレ 物ホルモ モンの測 リチル酸 さらに植 の受容体 植物ホル その一 存 性タ PYR/PY ルモン情 ストーク 経路は陸 な経路と クレブソ る過程で る。 陸上 共通 (緑クレブソル
ブソルミディ 細胞壁合成 ものや,陸上 も植物ホルモ レブソルミデ モン合成系が 測定を行った 酸と多数の植 植物ホルモン 体,輸送系や ルモン応答が 一方でTIR1 ン パク 質分 YL/RCAR も 情報伝達にお クを生み出す 陸上植物の主 とは異なった ソルミディウ で,植物ホル 緑藻 上植物の 通祖先 緑藻)多細
Aミディウム
ィウムの遺伝 成,植物ホル 上植物特異的 モン情報伝達 ディウムにお が存在してい た結果,オー 植物ホルモ ンのシグナル や情報伝達系 が存在してい 1(オーキシ 分解 を介 し 存在してい おいて主要 す経路とし 主要な情報伝 た原始的な植 ウムの植物 ルモンの起源 図7 植物 クレブソ 陸上化に関 遺伝⼦の種 A B C i)細胞化?
K. Hムにおける
伝子と藻類 ルモン関連 的なものが 達は陸上植 おいて植物 いることが ーキシン, ンがクレブ ル情報伝達 系が存在し いることが シン受容体), た情 報伝 達 いないことが な経路を担 ても知られ 伝達経路を 植物ホルモ ホルモンの 源や役割を 物の陸上化の ソルミディウ 関わる 種類の増加 ii)遺伝バ陸上化?
Hori & H. Oh植物ホルモ
類,陸上植物 連因子などに 多い傾向が 植物の環境応 物ホルモンの 推定された アブシジン ブソルミディ 達系の関連因 ており,ク 示唆された ,COI1(ジ 達経路 の多 が明らかとな 担っていると れている。ク 獲得する前 ン伝達経路 作用や伝達 どのように 過程と遺伝子 ウム コケ植 伝⼦種内の リエーション A B C A B?
hta-6モン関連因
物の遺伝子を に関わる因子 が明らかとな 応答において の合成系遺伝 た。またクレ ン酸,サイト ウムに存在 因子の詳細な レブソルミ た(図8)。 ジャスモン酸 多 くが存 在し なった。これ 考えられて レブソルミ 前段階にある 路である可能 達経路を明ら に発達させて 子多様性の獲 植物、⼩葉類 iii) ンの増加 A Bʼ C Aʼ B 新し 組み子
を比較した結 子に,陸上植 なった(Hori e て重要な役割 伝子を探索し レブソルミデ トカイニン, 在することが な解析を行っ ディウムに 酸受容体)な し ておら ず れらの受容体 ており,植物 ディウムの ると考えられ 能性が考えら らかにし,植 てきたか解明 獲得 類 被 しいドメイン み合わせの獲 A Bʼ C Aʼ B D E 結果,情報伝 植物で大幅に et al. 2014)。 割を担ってい した結果,主 ディウムの植 ジャスモン が明らかとな った結果,い においても何 などのユビキ ず,ABA 受 体は,現在の 物ホルモン間 の植物ホルモ れ,陸上植物 られる。次の 植物が陸上に 明していくこ 被⼦植物 ンの 獲得 ʼ ʼ 伝達,環 に増加し いる。そ 主要な植 植物ホル ン酸,サ なった。 いくつか 何らかの キチン依 受容 体の の植物ホ 間のクロ モン伝達 物の主要 課題は, に進出す ことであK. Hori & H. Ohta-7
7.クレブソルミディウムにおける転写因子
植物ホルモンの他に,転写因子も環境応答に関わる非常に重要な因子である。Plant Transcription Factor Database v3.0 (Jin et al. 2013)の分類法に基づいて 58 種類の転写因子の同定
を行った結果,クレブソルミディウムから266 遺伝子の転写因子が同定された(図9)。他の 藻類と比べると若干多いものの,陸上植物と比較すると圧倒的に少ない。全遺伝子に占める 割合も約1.5%と他の藻類と同程度であり,陸上植物の全遺伝子に占める転写因子の割合より 少ないものであった。しかしながらその種類を比較すると,他の藻類より格段にバリエーシ ョンが増えていることがわかる(図10a)。またクレブソルミディウムと陸上植物の共通祖 図9 15 生物種において検出された転写因子数 図内の数値は全遺伝子に占める転写因子の割合を示す。 図8 クレブソルミディウムに検出された植物ホルモンと類似遺伝子が見出された 情報伝達因子 植物ホルモンのうち検出されたものは水色のボックスで示した。エチレンは未測定である。陸上植 物で明らかとなっている情報伝達因子のうち,クレブソルミディウムで類似遺伝子が存在していた ものを緑で示した。点線は類似遺伝子が見つかっていない。 PYR/PYL/RCAR オーキシン ARF IAAs 植物ホルモン応答遺伝⼦の発現 PIN AUX1 COI1 MYC JAZ GID DELLA エチレン ETR1 CTR1 EIN2 EBF1 TIR1 ABP1 PIF ROP EIN3 growth regulation ジャスモン酸 ジベレリン SCF complex CUL1 ASK1 RBX AREB/ABF アブシシン酸 サリチル酸 サイトカイニン NPR3/4 NPR1 AHP TypeA ARR TypeB ARR CRFs PP2C SnRK2 GTG CUL3 ? phytochrome CRE1,AHK ? ?
陸上
植物
藻類
シアニディオシゾン コンドラス シオミドロ フェオダクチラム オストレオコッカス ミクロモナス クロレラ クラミドモナス ボルボックス クレブソルミディウム ヒメツリガネゴケ イヌカタヒバ イネ ポプラ シロイヌナズナ 1.5% 0.8% 0.8% 1.2% 1.2% 1.4% 1.6% 1.1% 0.8% 1.5% 4.3% 5.8% 6.1% 転写因⼦数 3.3% 2.9% 0 500 1000 1500 2000 2500 3000K. Hori & H. Ohta-8 先が分岐した後にも転写因子の種類の増加がみられ,植物の陸上化の前後で転写因子の種類, 数が増加し,多様な遺伝子制御を身に着けたことが伺える。さらに転写因子に限ったドメイ ンの組み合わせ数をプロットした結果,被子植物ではドメインの組み合わせパターンを増加 させており,転写因子の多様化は項目5で述べた遺伝子の多様性の獲得過程の典型的な例と 考えられた(図10b)。このような転写因子の種類増加や,組み合わせパターンの増加は, 急激に遺伝子ネットワークを指数的に複雑化させた事は間違いないであろう。このことは, 陸上に進出した植物が,様々なストレス環境に柔軟に適応し,様々な組織を分化させ,多様 な細胞の状態を実現できるようになった大きな要因と考えられる。以上の結果から,陸上植 物との車軸藻植物の共通祖先のなかで,比較的早くに分岐したクレブソルミディウムがシン プルな体制を持つにもかかわらず,陸上植物の礎となる基本的な遺伝子制御ネットワークを 獲得しており,陸上環境に適応していく過程で遺伝子重複とドメインの組み合わせ方を利用 して,既存の遺伝子制御ネットワークを転用して発達させていったという陸上進出のための 戦略が見えてくる。今後植物ホルモンの発達と同様,クレブソルミディウムの転写因子が何 に応答し,何を制御しているのか明らかにすることが重要となってくると思われる。
8.今後の展望
クレブソルミディウムのゲノム解読により,植物の陸上進出前の段階ですでに陸上化を可 能とするような因子が出現していることが分かってきた。クレブソルミディウム以外にも車 軸藻植物のゲノム解読が進んでおり,今後陸上進出の過程で起きたゲノムの変化をより詳細 に調べることができるようになっていくだろう。今後さらに植物の陸上化を明らかにしてい くためには,これらの因子が陸上化前の車軸藻植物にどのような影響を与えたのか解明する ことが次の段階であると思われる。車軸藻植物は淡水と陸上との際に生息しているものが多 く,部分的ながらこれらの因子が半陸上状態の生育に有利であり,徐々により厳しい陸上環 図10 15 生物種の転写因子の種類数,ドメインの組み合わせ数と総遺伝子数の関係 a. 各生物種内の転写因子の種類数と総遺伝子数のプロット b. 各生物種内の転写因子におけるドメインの組み合わせ数と総遺伝子数のプロット 58a
b
クレブソルミディウム 藻類 ヒメツリガネゴケ イヌカタヒバ シロイヌナズナ ポプラ イネ ポプラ イネ イヌカタヒバ ヒメツリガネゴケ クレブソルミディウム 藻類 シロイヌナズナ 0 100 200 300 400 0 20000 40000 60000 0 10 20 30 40 50 0 20000 40000 60000 転写 因 ⼦ の 種 類 数 転写 因⼦の ド メイ ンの 組み合わせ数 総遺伝⼦数 総遺伝⼦数K. Hori & H. Ohta-9 境に生育を広げていくにあたって,機能の多様化や強化を成し遂げた事が考えられる。また 他の可能性として,前適応として共通祖先では異なる機能を担っており,陸上化にあたって 予想外に有利に働いた因子がある可能性も考えられる。個々の具体的な因子の進化過程を明 らかにするためには,実験的にその機能を実証することが必要であり,遺伝子操作系を確立 し,培養法,実験系もより扱いやすくしていくことが必須である。このことは植物の陸上化 の解明のみならず藻類研究の発展にも大きく貢献するであろう。車軸藻植物門では接合藻綱 のヒメミカヅキモ,タテブエが,それぞれパーティクルボンバードメント法,アグロバクテ リウム法によって形質転換に成功しており(Abe et al. 2011, Sørensen et al. 2014),我々もクレブ ソルミディウムで急ぎ形質転換系の確立を進めている。今後クレブソルミディウムを初めと して様々な車軸藻植物がモデル藻類として確立し,植物の陸上化を含め,生物進化のありか たが垣間見えることを期待している。
謝辞
本研究は日本学術振興会,平成21年度~平成25年度グローバルCOE プログラム「地球 から地球たちへ」の一環として推進され,平成23年度から現在まで科学技術振興機構,戦 略的創造研究推進事業(CREST) 「植物栄養細胞をモデルとした藻類脂質生産系の戦略的構築」 の一環として加速的に推進されている。また一部は平成24年度からの文部科学省WPIプ ログラム,地球生命研究所に引き継がれている。なお Klebsormidium flaccidum NIES-2285 は国立環境研究所,微生物系統保存施設より分譲頂いた。また本研究はクレブソルミディウ ム解析チーム(http://www.plantmorphogenesis.bio.titech.ac.jp/~algae_genome_project/klebsormidiu m/kf_team.htm)による共同研究であり,全員の多大な貢献があっての研究となった。ここに記 して深く感謝の意を表したい。引用文献
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