わが 国 にお ける伝 統 的酒造業 の革新 と持続 的成長
八 久 保 厚 志
1は じめ に
II酒 造 業 の分 類 と生 産 形 態 皿 現 代 酒 造 業 の 革 新
IV持 続 的生 産 シス テ ム の展 望 V結 語
1は じ め に
工 業 の 持 続 的 な成 長 を 図 る た め に は,工 業 全 部 門 の 生 産 シ ス テ ム を検 討 しな け れ ば な らな い 。 特 に,在 来 技 術 を基 に展 開 して きた伝 統 的 な産 業 分 野 の研 究 を 欠 落 させ る こ と は で き ない 。 伝 統 的 な 工 業 部 門 の 生 産 シ ス テ ム は,近 代 技術 を基 に した 生 産 シ ス テ ム に対 置 され,独 自の 成 長 を遂 げ て き た か らで あ る 。 同 時 に地 域 の 経 済 活 動 の 主体 とな っ て い る場 合 もあ る 。 日本 で は,こ の よ う な在 来 技 術 を革 新 し,広 域 市 場 を獲 得 した 産 業 を 「地 場 産 業 」 と呼 ん で い る 。 したが って,地 場 産 業 の持 続 的 な 成 長 は,地 域 と国 民 経 済 に重 要 で あ る。 本 稿 で は,酒 造 業 を事 例 に,日 本 酒 造 業 の 現代 的 な 存 在 形 態 を明 ら か に し,伝 統 的 工 業 の持 続 的 な 発 展 を展 望 す る1)。
蒸 留 した もの で あ る。 本 格 焼 酎(醒 取 焼 酎,粕 取 焼 酎)と 呼 ば れ,主 原 料 の 違 い に よ り米 焼 酎,麦 焼 酎,甘 藷 焼 酎(イ モ焼 酎)等 に分 け られ る。 沖 縄 の 泡 盛 も基 本 的 に は この 部 類 に入 る。 酒 精 式 焼 酎(酒 精)は 明 治 末 期 頃 よ り糖 化 発 酵 した醒 を連 続 式 蒸 留 機 で98%程 度 まで 濃 縮 した ア ル コ ール に加 水 し20〜30度 程 度 に希 釈 した 焼 酎 で,新 式 焼 酎 と呼 ば れ る。 日露 戦 争 後 に 酒 精 の 利 用 が 認 め
られ た 酒 類 で あ る。
現 代 酒 造 業 を分 類 す る と表1,表2,表3の と お りで あ る 。 分 類 の指 標 は,立 地 区 分 と生 産 形 態 で あ る。 立 地 上,遠 隔 地 酒 造 業 と して の 産 地 酒 造 業 は,具 体 的 に は灘,明 治 期 に 台 頭 す る伏 見 で あ る 。 他 に地 方 酒 造 業 が あ る。 地 方 酒 造 業 は ま た, 湯 沢,会 津 若 松,西 条 な ど新 興 産 地 が 展 開 す る在 町,城 下 町 の 酒 造 業 者,広 く農 村 に形 成 され た地 主 兼 営 副 業 型 酒 造 業,共 同 醸 造 場 に細 分 で き る 。
また,生 産 形 態 を示 す 指 標 と して 出 自,市 場,経 営 形 態,原 材 料 の 入 手 方 法,生 産 構造,技 術,労 働 力,市 場 拡 大(指 向)を お い た。
lI酒 造業 の分類 と生産形態
酒 造 りの 全 体 を 詳 述 す る の は紙 幅 の 関 係 で 困 難 で あ る。 こ こ で は,基 本 的 な酒 造 りの 分 類 を 述 べ る。 まず 酒 類 は,発 酵 技 術 の 違 い に よ り醸 造 酒 と 蒸 留 酒 に 分 け られ る。 醸 造 酒 は,糖 化 した原 料 を 発 酵 させ,そ の後 澱 引 き,搾 取 した もの と,そ の ま まの もの が あ る 。 前 者 は 「日本 酒 」 の 中 で は 清 酒 で あ り,後 者 は 「濁 酒:ど ぶ ろ く」 で あ る 。 蒸 留 酒 は,糖 化 発 酵 した もの(酪)を 単 式 蒸 留 機 で
表11ヨ 本 の 酒 造 業 の 分 類
酒造 業
伝統的な部門{魏 焼酉寸
近代 的 な部門
ビ ー ル 甲 類 焼 酎 ウ ィ ス キ ー
そ の 他(ワ イン,ブ ランデー等)
資 料:「 酒 の しお り」 国 税 庁2002
表2酒 造 業の立 地 と生産形 態
立地区分 主要都 市内部 主要都 市以外
灘,伏 見 城 下 町,そ の他 農業地域 周辺 地域
出 自 醸造資本 地 主,商 人 地 主 自 ・小 作 農
市場 大 都 市
(江戸=東 京,大 阪,京都) 地方 村落 集落 内
技術 近代的技術 在来技術
労働 力 専 門職 家内労働1小 作労働 力
指向 市場 拡大 保 守的
表3酒 類 の 課 税 移 出数 量 と酒 造 業 者 数(1997)
部 門 製品 課税移出数量 ㈹ 酒造業者数 出荷指数
伝統 的 清酒 1,060,860 2,206 90.7
本格焼酎 345,755 783 104.5
近代 的 ビ ー ル 5,819,988 251 94.4
甲類焼酎 410,164 88 102.5
ウ ィ ス キ ー 130,880 44 96.4
1997酒 造 年 度 出 荷 指 数:1998/1gg7 資 料:国 税 庁
111現 代 酒 造 業 の 革 新
本 章 で は 国 際化 期 を迎 え た 我 が 国 酒 造 業 の伝 統 部 門 で あ る清 酒 ・本 格 焼 酎 業 が,国 際 化 と ネ ッ ト
ワ ー ク化 の 進 展 の 中 で,ど の よ うな 酒 造 りの革 新 や 産 業 空 間,企 業 空 間 を再 構 築 しつ つ あ る か を明
らか にす る。
1.国 際 化 の進 展
(1》 酒 造 業 に お け る海 外 生 産 の動 向
我 が 国酒 造 業 の 伝 統 部 門 で あ る清 酒 業 は,現 在, 1980年 代 後 半 か ら続 く欧 米 か らの規 制 緩 和 ・産 業 構造 改 変 圧 力(八 久 保1993)を 止 揚 し,自 らの 国 際 化 戦 略 を展 望 しつ つ あ る。 一方,本 格 焼 酎 業 は, 酒 税 の 格 差 是 正 政 策 に よ って ウ イス キ ー とほ ぼ 対 等 な税 率 を受 容 せ ざ る を得 ない状 況 に あ る。た だ, こ の状 況 が か え って 同業 の 国 際 的 な市 場 形 成 に路 を 開 く画 期 と位 置 づ け る産 地 ・企 業 もあ る 。 こ の よ う な状 況 は,我 が 国 の伝 統 的 酒 類 部 門 の活 発 な 企 業 空 間 の 再 構 築 を進 め,同 業 の 再 活 性 化 の 要 因 とな っ て い る 。 この よ うな 環 境 変 化 の 下 で我 が 国 の 酒 造 業 界 は,海 外 市 場 の 形 成 に伴 う現 地 生 産, 技 術 移 転,輸 出 の 増 大 とい っ た 国 際 化 状 況 を示 し
て い る 。 た だ,清 酒 に つ い て は過 去 にお い て 海 外
生 産 に つ い て い くつ か の経 験 を有 して い る。 した が っ て,現 代 に お け る清 酒 業 の 「国 際 化 」 は そ の 前 史 か ら連 担 して い る場 合 と,初 現 と を分 け る必 要 が あ る。 明 らか に海 外 生 産 は進 出 先 の 清 酒 生 産 の 経 験 の 違 い に よ っ て異 な っ た生 産 構 造 を な して い る か らで あ り,伝 統 的 産 業 に お け る企 業 空 間 の 再 構 築 を明 らか にす る には この 点 の 解 明 が必 要 で あ る。
(2)清 酒 ・本 格 焼 酎 の 海 外 市 場 形 成
清 酒,本 格 焼 酎 は 現 在,日 本 国 内 で の 製 品 流 動 だ け で は そ の実 態 が つ か み に く く な っ て い る。 図 1,2は 最 近 の酒 類 の輸 出 入 を示 した もの で あ るが, これ に よ る と清 酒,本 格 焼 酎 が 国 際 市 場 を形 成 し つ つ あ るの と同 時 に輸 入 が 始 ま っ て お り,国 際 的 な流 動 の 段 階 にあ る こ とが わ か る 。 す な わ ち 清 酒 は輸 出 が 顕 著 に延 び て お り,筆 者 の 調 査 に よれ ば その 動 き は1や 伏 見,新 潟 な どの 大 産 地 の企 業 ば か りで な く,地 方 産 地 の リ ー デ ィ ン グ企 業 で も見 られ る 。 清 酒 の輸 出 は,2002年 に58,234klと な っ た 。 ま た,ウ ル グ ア イ ラ ウ ン ドに よ る 新 しい 貿 易 秩 序 は海 外 産清 酒 の輸 入 を可 能 に した結 果,国 内 に お い て も飲 用 が 進 み つ つ あ る。2000年 代 に入 る と清 酒 輸 入 が伸 長 し,2002年 に は377,996klと な っ た 。 一 方,本 格 焼 酎 は,輸 出 入 が 活 発 化 して
kl 25,00a
20,000
15,000
14,000
5,000
0
196519701975198019851990(年)
資 料:国 税 庁
図1清 酒 の 輸 出 量(1965年 〜1993年)
'
一口
層 ■ ■
600
500 400
300
200
100
k
(年>a 198819931998
資 料=国 税 庁 図2清 酒 と本 格 焼 酎 の 輸 入 量(1988年 〜1998年)
お り,ス ピ リ ッ ツ系 の酒 類 と して ウ イ ス キ ー な ど との 同 質 性 が ヨ ー ロ ッパ を 中 心 に受 容 さ れ て お り,そ の 市 場 ポ テ ンシ ャル は 国 際 市 場 で は 後 発 な が ら清 酒 を凌 駕 す る可 能 性 もあ る。 国 内 に お け る 税 率 が ウ イ ス キ ー並 に 上 昇 させ られ た こ と は,国 内 産 地 で 中小 部 門 の再 編 が 進 む き っ か け とな っ て
い る もの の,「 焼 酎 」 がshouchuに な る画 期 と も 言 え よ う。 た だ2000年 代 に 入 る と本 格 焼 酎 を 中 心 と した焼 酎 ブ ー ム が 再 来 し,韓 国 焼 酎 を 中心 に 輸 入 の伸 びが 著 しい 。
以 上 の よ う な海 外 生 産 の 展 開,国 際流 動 の展 開 を基 礎 づ け て い る新 しい 局 面 は 生 産,流 通,消 費 段 階 に お け る ネ ッ トワ ー ク 化 の 進 展 で あ る。 そ こ で 現 代 の 酒 造 業 に お け る 国 際 的 な企 業 空 間再 編 の 実 態 を把 握 す るた め に は,「 ネ ッ トワー ク化 」 を酒 造 業 界 に お け る生 産 ・販 売 ・消 費 者 間 に お け る製 品 ・情 報 の 連 関 装 置 に限 定 して 捉 え る こ とが 重 要 で あ る と考 え られ る。 そ の こ とに よ っ て酒 造 業 の 産 業 組 織 の 変 動 を 国 際 化 状 況 の 下 で 理 解 しな け れ ば な らな い か らで あ る。 以 下J企 業 空 間編 成 の 視 点 か ら清 酒 業 を中 心 に 国 際 化,と くに海 外 生 産 と ネ ッ トワ ー ク化 の 現 状 とそ の問 題 を明 らか にす る。
2.清 酒 の海 外 生 産 と前 史
2000年 現 在,清 酒 の 海 外 生 産 は 南 北 ア メ リカ, ア ジ ア諸 国 を中 心 に行 わ れ て い る。 こ れ らの 地 域 に お け る清 酒 生 産 は最 近 に な っ て 生 産 を始 め た地 域 ば か りで な く,戦 前 か ら生 産 を行 っ て い る歴 史 の長 い 地 域 もあ る。 か っ て,我 が 国 の 清 酒 企 業 は,
日本 資 本 主 義 の 海 外 展 開 に よ って そ の生 産 現 場 を 海外 に展 開 させ た。 台 湾,朝 鮮 半 島 な ど東 ア ジ ア で は本 土 の 酒 造 業 資 本 や 邦 人 が 直 接 的 に 進 出 し, 旺盛 な 生 産 活 動 を続 け て い た。一 方,新 大 陸 で は, 移 民 の た め の 清 酒 供 給 を 目 的 と した小 規 模 な清 酒 生 産 が 移 民 に よ っ て行 わ れ た 。 そ こ で東 ア ジ ア諸 国 と南 北 ア メ リカ にお け る清 酒 生 産 の前 史 をみ る こ と にす る。
(1}東 ア ジア に お け る清 酒 生 産
明 治 来 日本 に併 合 さ れ た 台 湾,朝 鮮 半 島 で は 進 出 した邦 人 や 清 酒 資 本 に よ って 清 酒 生 産 が 行 わ れ て き た(台 湾 酒 専 売 史1941,朝 鮮 酒 造 組 合1930)。
台 湾 で は,1928年(大 正元 年)に 酒 専 売 制 が布 か れ る前 は 台 湾 在 来 の 酒 類 の 他,清 酒 が 日本 本 土 か ら進 出 した 邦 人 や 酒 造 資 本,お よび 現 地 資 本 の 下 で 生 産 され て い た 。 彼 らの 酒 造 場 の 一 部 は専 売 局 に接 収 され たが 清 酒 生 産 は 終 戦 まで 続 け られ 需 要 に応 えた 。朝 鮮 半 島 で は 在 来 の マ ッコ ル リ を駆 逐 し,日 本 化 の 一 装 置 と して 清 酒 生 産 とそ の 普 及 が 図 ら れ た(鄭 大 肇i1987,八 久 保1988,2003, 2004)。 在 来 の 諸 酒 類 に 高 率 の 酒 税 を か け,清 酒
に は低 率 の酒 税 と した の で あ る 。 そ の結 果 清 酒 は
「法 酒:合 法 的 な 酒 」 と呼 ば れ,在 来 の 酒 類 の ほ とん どが 駆 逐 さ れ,ま た,非 合 法 の 自家用 酒(マ ッ コ ル リ)に 対 抗 した 酒 と認 識 され る に至 っ た 。 しか し,日 本 統 治 下 に は法 酒 飲 酒 の慣 行 が 普 及 し 生 産 量 も増 え て い っ た 。
中 国本 土 にお け る 清 酒 生 産 は,満 州 国 に お い て 日満 資 本 の 手 に よ って 生 産 が 行 わ れ て い た が,残
さ れ た記 録 も少 な くそ の解 明 は進 ん で い な い 。 た だ,本 土 か らの 進 出 は清 酒 の 他,焼 酎 企 業 が 活 発 で あ っ た(満 州 国事 情 案 内 所1939,南 満州 鉄 道 株 式 会 社1929)。
② 南 北 ア メ リカ に お ける清 酒 生 産
日本 人 移 民 が 南 北 ア メ リ カ に お い て清 酒 生 産 を 始 め た の は ハ ワ イ(ア メ リ カ合 衆 国),ブ ラ ジ ル で あ っ た。 ハ ワ イで は1992年 まで は ホ ノ ル ル 酒 造(会 社 名)が 現 地 生 産 を行 っ て きた 。 しか し, 大 陸本 土 で の清 酒 生 産 が 始 ま る と競 争 に破 れ る こ と に な る 。 同社 の フ ラ ガ ー ル(銘 柄)は 米 国 タ カ ラ に買 収 され た後 もハ ワ イ で使 わ れ て い る。
ブ ラ ジ ル で の 清 酒 生 産 は極 め て歴 史 が 古 い 。 ブ ラ ジ ル で の 清 酒 生 産 の 嗜 矢 は 東 麟 麟 で あ る 。 三 菱 系 の東 山 農 場 に お い て 日本(日 系)の 入 植 者対 策 と して 企 画 され た もの で あ る。 また,い くつ か の 清 酒 企 業 が展 開 した時 期 もあ っ た(石 田1997)。
3.現 代 にお け る清 酒 の 海 外 生 産 (1)ア メ リカ に お け る清 酒 生 産
現 在 もっ と も活 発 に清 酒 が 生 産 さ れ て い る国 は ア メ リ カ合 衆 国 で あ る 。 西 海 岸 を中 心 に桃 川,白 山,月 桂 冠,松 竹 梅,大 関 とい っ た 日本 企 業 と系 列 も し くは提 携 関 係 に あ る企 業 が 生 産 を行 っ て い る(八 久 保1993)。 こ の うち 桃 川,白 山 を 除 け ば 日本 で も代 表 的 な清 酒 企 業 で あ る。桃 川 は 青 森 県 の 企 業 で あ り,白 山 は鹿 児 島 に本 拠 が あ る 本 格 焼 酎 企 業 で あ る本 坊 酒 造 の 関 連 企 業 の 銘 柄 で あ る 。 こ れ らの 企 業 は そ の 創 業 の 動 機,時 期 が異 な っ て お り独 自 な企 業 空 間構築 上 の 清 酒 生 産 拠 点 の 配 置 で あ っ た 。 ブ ラ ジ ル にお い て は,前 述 の東 頗 麟, 大 地 とい った 銘 柄 が 生 産販 売 され て い る。 しか し, 技 術 的 に は 困難 な状 況 で あ り,製 品 と して の性 格
もま た低 レベ ル で あ る。
② ア ジア 諸 国 に お ける清 酒 生 産
現 在 で も清 酒 消 費 は 韓 国 に お い て は法 酒 と して 一 般 的 で あ る
。 また,同 国 の 清 酒 企 業 の 中 に は, 韓 国 産 の 低 価 格 酒 を 日本 に輸 出 して い る企 業 もあ る。 価 格 競 争 に お い て は 十 分 競 争 可 能 な酒 質 の 生 産 に 成功 した が,技 術 者 を 日本 企 業 に研 修 に出 向 かせ る な ど韓 国 企 業 の 企 業 努 力 が 大 き い 。 た だ, 産 業 組織 と して は 戦 後 の 原 料 米 の制 約 か ら企 業 が
集 約 化 させ られ てお り,ま た,ビ ー ル企 業 の 系 列 企 業 な ど数 社 に よ っ て 寡 占状 態 に あ り,競 争 に よ
る 活 性 化 が 必 要 に な っ て い る と もい わ れ て い る (石 田1997)。
一 方,台 湾 で は酒 類 生 産 が 長 ら く専 売 制 度 の 下 で 統 制 生 産 にあ っ た こ と と,技 術 的 な 問 題 に よ っ て朝 鮮 半 島 に比 べT今 日,そ の 消 費 は 少 ない 。 た だ,今 日 で もそ の生 産 は継 続 され て お り,民 営 化 の 進 展 や 台 湾 のWO加 盟 後 に は そ の 生 産 は活 発 化 す る事 が 予 想 され る 。 中 国 で は1990年 代 の初 め よ り 日本 企 業 と合 弁 で の 清 酒 生 産 が 始 ま っ て い る。 た だ,主 に,進 出 す る 日本 側 の 問 題 に よっ て 現 在 で も活 発 と は い え な い。 中 国 に お け る進 出形 態 が 中 国 側 との 合 弁 形 態 を余 儀 な く され,大 手 企 業 で は 進 出 メ リ ッ トが 少 な い 。 そ の た め 日本 に お け る 中 小 部 門 が 進 出 し て い る に す ぎ な か っ た 。 1996年 に至 り宝 酒 造 が 合 弁 企 業 の 設 立 を果 た し進
出 の緒 に つ い た 。 また,中 国 の 民 族 酒 造 企 業 で あ る天 津 市 の企 業 は,自 前 で 技 術 者 を 日本 の 企 業 に 研 修 に出 す な ど技 術 支 援 を受 け独 自 に生 産 を始 め て い る。 中 国 にお け る 醸 造 酒 飲 酒 の 傾 向 に対 応 し た行 動 で あ る。
また,ベ トナ ム や タ イ で は 酒 造 米 入 手 の 利 便 性 に そ の 生 産 が 基 礎 づ け ら れ て い る。 オー ス トラ リ ア で も 日本 企 業 との合 弁 企 業 形 態 で の 清 酒 生 産 が 始 まっ て い る。
4.酒 造 業 の 国 際 化 とネ ッ トワ ー ク化
以 上,主 に海 外 で の 清 酒 生 産 の 歴 史 と現 状,市 場 形 成,清 酒 企 業 の 国 際化 戦 略 の 現 状 を み て きた 。 次 に この よ う な様 々 な 局 面 で の 国 際 化e生 産 環 境 変 化 が 日本 の 酒 造 業 界 に どの様 な状 況 と対 応 を 求 め て き た か につ い て 見 る こ と にす る。 そ の 際,清 酒 生 産 は酒 類 市 場 全 体 の 中 で捉 え な け れ ば全 体 と
して理 解 で き な い の で,こ の 章 で は,我 が 国 の酒 類 生 産 業 全 体 を視 野 に入 れ な が ら,伝 統 部 門 で あ る本 格 焼 酎 業 の 動 向 も示 す こ と にす る 。 ま た,再 編 の た め の ネ ッ トワ ー ク構 築 が どの 様 な 局 面 で 進 展 して い る か につ い て は い くつ か 得 られ た 事 例 を 示 す こ と にす る。
q)清 酒 業 の 国際 化 対応
清 酒 業 全 体 と して の 国 際 化 戦略 は,国 税 庁 と酒
造 組 合 中 央 会 に よ っ て 進 め られ て い る構 造 改 善 事 業 の も とで い くつ か の 局 面 で見 られ る もの の,大 手 企 業 を 中 心 に 各 企 業 の 独 自行 動 が 目立 っ て い る 。 また,卸 業,商 社,消 費 者 団 体 との 連 携 に よ っ て 海 外 市 場 の 開 拓 を進 め て い る。 た だ,産 地 独 自 で積 極 的 で 国 際 的 な 市 場 開拓 を進 め て い る の は 希 で あ る。 清 酒 の 現 地 生 産 の メ リ ッ トは 原 料 米 の 入 手 の 容 易 性 で あ り,い わ ば原 料 を指 向 す る もの が 多 い 。 こ の 点 で,大 市 場 立 地 の 市 場 戦 略 を とる ビー ル とは異 な っ て い る。 した が っ て,直 接 的 な 市 場 拡 大 の た め の 現 地 生 産 は本 来 的 に多 くの 問題 を抱 え て い る と言 え よ う。
{2)本 格 焼 酎 業 の 国 際化 対 応
鹿 児 島 産 地 の 本 坊 酒 造 はす で に ア メ リ カ とブ ラ ジ ル に酒 類 工 場 を持 って い る 。 た だ,ア メ リカ で は清 酒 生 産,ブ ラ ジ ル で は ア ル コ ー ル生 産 に留 ま っ て お り,本 格 焼 酎 そ の もの の 生 産 とは い え な い 。 同社 は 本 拠 地 を鹿 児 島 産 地 に置 き な が ら首 都 圏 を 初 め全 国 に市 場 を持 っ て い る ほ か,福 島 県 塙 町 に ア ル コ ー ル工 場 を設 置 す る な ど本 格 焼 酎 企 業 と し て は 希 な企 業 空 間 の構 築 を果 た して い る。 ま た, 三 和 酒 類 は 台 湾 市 場 な ど ア ジ ア 諸 国 の市 場 開拓 を 活 発 化 して い る。 同社 の 製 品 は 麦 で あ り,原 料 を オ ー ス トラ リ ア に依 存 す る な ど,国 際 的 な 企 業 空 間構 築 に対 して 積 極 的 な戦 略 を持 っ て い た が,生 産 面 で は大 分 県 の 拠 点 工 場 で の み の 生 産 で あ り, 産 地 化 を よ り進 め る こ とで 国 際 化 状 況 を 止 揚 し よ う と して い る。 同 社 の 戦 略 は あ る意 味 で 今 後 の 同 業 の あ り方 の 典 型 を示 す か も しれ な い 。 本 格 焼 酎 は ウ イ ス キ ー の よ う に産 地 名 が ブ ラ ン ドを形 成 し た よ う な,海 外 型 の 産 地 形 成 の 可 能 性 が 認 め られ る か らで あ る。
③ ネ ッ トワ ー ク化 と産 業 組織
清 酒 企 業 も本 格 焼 酎 企 業 も国 際 化 へ の 対 応 は全 体 と して は 鈍 い が,そ れ は 国 内 で の 既 存 の 市 場 確 保 が 第 一 で あ り,不 安 定 な 海外 市 場 展 開 へ 踏 み 込 め な い 歴 史 的 な構 造 が あ る 。伝 統 部 門 の 企 業 行 動 は 保 守 的 で あ り,家 業 維 持 の 傾 向 が 強 い 。 た だ, 確 実 に一 部 の 企 業 は 規模 の大 小 を問 わ ず,国 際 化 の た め の 戦 略 を 進 め つ つ あ る 。 大 関 酒 造kk,月 桂 冠kk等 の 清 酒 企 業,合 同酒 情kk,中 国醸 造kkの
よ う に海 外 生 産 の 歴 史 が 古 い 企 業 だ け で な く,
様 々 な問 題 を抱 え つ つ も中 国 にお い て 合 弁 企 業 を 立 ち 上 げ たA社,ベ トナ ム に お い て 生 産 を企 画 し て い るB社 が あ る。 注 目 され るべ き こ とは,生 産 部 門 よ り流 通 部 門 で の 行 動 が活 発 で あ る こ とで あ る。 流 通A社 は 欧 州,米 国 で 清 酒 ・本 格 焼 酎 の コ ンペ テ ィ シ ョ ンや イベ ン トを 活 発 に行 い,当 地 で の 販 売 とそ の 後 の輸 出 に成 功 して い る 。 これ らの 清 酒 業 に お け る生 産 ・流 通 部 門 の 注 目す べ き ネ ッ トワ ー ク 化 は,大 企 業 で は 自前 の ネ ッ トワ ー ク を 形 成 して い る もの の,中 堅 や 地 方 の企 業 は 自前 ネ ッ トワ ー クの 他 流 通 業 者 な ど との ジ ョイ ン トネ ッ トワ ー ク を併 用 させ て い る。 中 小 企 業 は 少 な い な が ら 自前 ネ ッ トを構 築 して い る企 業 もあ る。 こ の 場 合,自 前 ネ ッ トは水 平 的 で あ るが 流 通 ネ ッ トは 垂 直 的 で あ る 。 名 門 酒 会 な どの ネ ッ トは拡 散 的 で あ るが 生 産 企 業 か らの 発 信 よ りむ しろ 川 下 か らの 要 求 に対 応 しや す い構 造 で あ る。 双 方 向 か らの ネ ッ トは 自前 だ が,大 手 も流 通 も完 全 独 立 とは い え な い の は 重 要 で あ る 。 中小 の ネ ッ トの 場 合,NTT の ホ ー ム ネ ッ トの 利 用 に よ り情 報 の 発 信 が 主 で あ
り,ネ ッ トを 十 分 活 用 して い る と は い え ない 。 本 格 焼 酎 企 業 の状 況 もあ ま り異 な っ て い な い よ うで あ る。 企 業 成 長 が 急 で あ り,ま た,そ の 成 長 が 全 国 的 な流 通 資 本 との結 合 に よっ て 達 成 され た こ と が 流 通 資 本 との 結 合 関 係 を改 め る こ とが 出 来 な い 栓 桔 で あ り,自 前 ネ ッ トの 構 築 に踏 み 出 せ ない 理 由 で もあ る。 自前 の企 業 行 動 が 規 制 され て い る の で あ る。
一 方,本 格 焼 酎 企 業 は か っ て ウ イス キ ーが 日本 市 場 を獲 得 して きた 産 地 の ブ ラ ン ド化 戦 略 を進 め る こ とに よっ て 日本 版 の ス コ ッチ ウ イス キ ー,バ ー ボ ン ウ イ ス キ ー と して のkuma‑shouchu(球 磨 焼 酎:米),imo‑shouchu(イ モ 焼 酎:甘 藷), magi‑shouchu(麦 焼 酎:麦)を ブ ラ ン ド化 し よ う
と して い る。 原 産 地 呼 称 制 度 を業 界 で 作 りあ げ た の は そ の 流 れ に よる もの で あ る。個 別 企業 も中 国, 韓 国,台 湾,タ イ,ベ トナ ム 等 ア ジ ア 諸 国 の 他, 貿 易 問 題 で 本 格 焼 酎 の 税 率 格 差 を問 題 視 しウ イス キ ー との格 差 是 正 要 求 を行 っ た ウ イス キ ー輸 出 国 で あ る イギ リス,ア メ リカ,カ ナ ダ等 の 諸 国 へ の 輸 出 を行 って い る 企 業 も見 られ る。 本 格 焼 酎 企 業 の う ち ウ イス キ ー との 税 率 格 差 問 題 は 「絶 好 の ビ
表4本 格焼 酎業 の概 況
銘柄 原料 主要生産地 課税移 出数量 ㈹ 出荷指数
(%)
イモ焼 酎 甘藷 鹿児島 65,584(19.5) 1ao.1
米焼酎 米 熊本 56,961(16.9) 141.6
麦焼 酎 大麦 大分 184,152(54.fi) 116.9
蕎麦焼酎 蕎麦の実 宮崎 20,739(6.2) 118.4
酒粕焼酎 酒粕 全国 825(03) 18.5
その他 その他 全国 8,901(2.6) 193.7
(合計) 337,189{100.0) 117.4
1998酒 造 年 度 出 荷 指 数:1999/五998 資 料:国 税 庁
ジ ネ ス チ ャ ンス で あ る」 と捉 え る と こ ろ もあ る 。 なぜ な ら,伝 統 的 で ± 産 的 な 生 産 を行 って きた 本 格 焼 酎 産 地,企 業 に と っ て本 格 焼 酎 が ウ イ ス キ ー と同 格 に扱 わ れ始 め た こ とが 局 地 市 場 に 閉塞 され つ つ あ っ た本 格 焼 酎 企 業 を 地 域 外,特 に海 外 へ 向 け させ る エ ポ ック と考 え れ ば,あ な が ち悲 観 す る 状 況 ば か りで は な い との 認 識 が あ る か らで あ る 。
と はい っ て もほ とん どが 中小 企 業 範 疇 で あ り,清 酒 同 様 保 守 的 な企 業 経 営 に安 息 して い る多 くの 焼 酎 企 業 の経 営 継 続 は よ り困 難 と な っ て お り,多 様 な 存 続 形 態 を模 索 して い る状 態 に あ る とい っ て よ
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V持 続 的な生産 システムの展望
さ て}日 本 の 酒 造 業 は伝 統 的 工 業 と して 成 長 し て き た 。 日本 の 代 表 的 な酒 類 は清 酒 で あ り全 国 に 立 地 して い る(図3)。 現 代 で は焼 酎 も飲 まれ て い る。 日本 の 酒 造 業 の 立 地 は全 国 的 で あ る。加 え て,
資 料:酒 造 業者 名鑑 図3市 町 村 別 清 酒 醸 造 場 の 分 布(2002)
清 酒 と焼 酎 は,海 外 市 場 を獲 得 して い る。 そ の た め,生 産 拠 点 が グ ロー バ ル に展 開 して い る。た だ, 酒 造 業 は,環 境 に対 して 問 題 が 出 て き た。 そ れ は 第 一 に,原 料 の 有 効 利 用 の 問 題 で あ る。 第 二 に, 廃 棄 物 の 海 洋 投 棄 の 問 題 で あ る。 この 点 に つ い て は後 に述 べ る。
国 際 化 の 企 業 空 間 再 編 上 の 問 題 は,第 一 に 中 国 な ど進 出 先 の 生 産環 境 変 動 に対 応 で き な い 中小 部 門 の 進 出 が 必 ず し も成 功 しない こ とで あ る。 そ の 理 由 は 日本 国 に お け る ブ ラ ン ドに 規 定 され る状 況 にあ る こ と な ど に よ り,進 出 先 で もブ ラ ン ド形 成 が 困 難 な こ とで あ る。 こ の こ とは 商 品 情 報 が ネ ッ トワ ー ク 化 の 進 展 に よ り海 外 市 場 に お い て も 日本 国 内 の 状 況 が 伝 わ っ て い る こ とで あ る。 第 二 に, ブ ラ ジ ル,ア メ リ カで は現 地 生 産 銘 柄 の シ ェア が 高 く,新 規 市 場 と見 ら れ る もの が す で に い くら か の 銘 柄 に よ っ て 固定 化 しつ つ あ る こ とで あ る 。 大 企 業 で あ っ て も新 規 市 場 を企 業 戦 略 の み で 開 発 す る こ とは 難 しい 。 一 方 で,輸 出 商 社,卸 に よる 海 外 市 場 開拓 も現 地 商 社(輸 入 元)と の 関 連 で 困 難 な点 も多 い。 海 外 の 小 売 店 との 直 接 取 引 も問題 が 多 い 。
こ の よ う な状 況 の 下 で酒 造 業 の 海外 へ の展 開 を 積極 的 に 進 め る た め に は,国 内 企 業 の 海 外 生 産 は 両 刃 の 剣 で あ る。 ウ イ ス キ ー ・ビー ル 等 を 洋 酒 と して 受 容 して きた我 が 国 の 経験 を 考 えれ ば歴 然 で あ る。 海外 にお け る清 酒 受 容 は ま さに,日 本 文 化 受容 と同 義 で あ る こ と で あ るか らで あ る。 した が って,多 様 な存 在 形 態 へ の 一 つ の 路 は,国 内 で の 産 地 構 造 を強 化 し,海 外 向 け の 産 地 形 成 を進 め る
こ とで あ る。 国 内 市 場 が 成 熟 化 し新 規 市 場 の 開拓 が 年 々困 難 と な りつ つ あ り,こ の 点 で行 政 ・酒 造 組 合 の 国 際 化 戦 略 が 流 通 部 門 や 製 品 政 策 に 偏 り, 海 外 型 の 産 地 形 成 の た め の施 策 が 少 ない の は企 業 空 間 と産 業 組 織 の 再 編 視 点 か ら は問 題 で あ り,自 前 の 国 際 化 戦 略 を持 た ね ば な ら な い 状 況 は 前 稿
(八久 保1993>か ら進 展 して い な い よ うに み え る。
また,海 外 市 場 へ の 展 開 は 流 通 部 門 との 結 合 を再 強 化 して い るが,そ の よ うな 結 合 形 態 は か つ て の 生 産 か ら流 通 へ の ア クセ ス とい う よ り消 費 者 か ら 流 通 へ の ア クセ ス とい う川 下 か らの 圧 力 が 進 ん で い る とみ るべ きか も しれ な い 。 こ の点,流 通 の情 報 化 戦 略 の 評 価 は 大 き い とい え よ う。 た だ,流 通 企 業 へ の 対 応 が 独 自 に とれ な くな る 可 能 性 が 大 き
くな る の は問 題 と な ろ う。 清 酒 品評 会 で の 外 国 産 清 酒 の 出 品 な ど活 発 化 を 進 め 国 際 的 な権 威 形 成 を 進 め る必 要 が あ る 。
VI結 語
以 上,日 本 に お け る伝 統 工 業 と して の 酒 造 業 の 現 状 と今 後 の 展 望 を示 した 。こ こで 示 した こ とは, 国 内 に限 れ ば,企 業 の規 模 に 関 わ らず,酒 造 業 は 継 続 す る で あ ろ う こ とで あ る。 また,積 極 的 な展 望 を持 つ 企 業 が あ る こ とで あ る 。伝 統 的 な 生 活 を 守 る た め,当 面 問 題 は 少 な い 。 一 方,国 際 的 にみ る と多 くの 問題 が あ る 。 今 後,伝 統 産 業 は 芸 術 的 な生 産 に 向 か うで あ ろ う。 生 産 国 で は伝 統 工 業 製 品 は よ り一層 高 度 化 が 求 め られ るか らで あ る。 一 方 で,伝 統 工 業 は,産 業 と して 継 続 され ね ば な ら
ない 。これ まで の文 化 的 な状 況 を保 つ た め で あ る。
しか し,陶 芸 産 業 の よ うに,芸 術 家 に よ る生 産 に 特 化 す る こ と は で き な い。 酒 造 業 も芸 術 的 な部 門 が 成 長 しつ つ あ る 。 ま た,生 業 的 な生 産 も,存 続 で きる。 何 故 な ら,酒 生 産 は 税 金 を生 む か らで あ る。 政 府 に と っ て,酒 造 業 は 大 切 な産 業 で あ る 。 酒 の 技 術 を上 げ る こ と は重 要 で あ り,旨 い酒 を 消 費 者 は 求 め て い る 。 しか し問題 は,芸 術 的 で 高 価 な酒 生 産 は,原 料 の 消 費 が 大 きい とい う こ とで あ る。 す な わ ち,米 の精 白歩 合 が 大 き く,リ サ イ ク ル に 回 る 部 分 が 年 々 大 き くな り,そ の有 効 利 用 を 考 え ね ば な ら な くな っ て い る 。 こ れ は 重 要 な 問題 で あ る 。 先 進 国 の伝 統 産 業 が,芸 術 的 な高 い原 料 消 費 と,高 価 な製 品 設 計 の た め に,資 源 を浪 費 し てい る 。 これ ま で の よ うに,日 本 産 の 原 料 だ け で 充 足 で き な い の はWTOを 持 ち 出す まで もな く明 ら か で あ る。 世界 の 半 分 が 飢 え て い る とい う現 状 が あ る 。 そ して そ の 現 状 に大 きな 変 化 が な い 。 筆 者 は,こ の よ う な状 況 の 下 で,芸 術 的 で 高 価 な酒 生 産 へ の 傾 斜 は 国 際 的 に受 け入 れ られ な い だ ろ う
と考 え る 。
また,筆 者 は,こ の よ う な現 状 で,こ れ まで の 日本 の 酒 生 産 の 国 際 化 戦 略 は,国 際 的 に受 け 入 れ られ ない こ と を指 摘 し たい 。 将 来 の 世 界 人 口 の 増 加 は,日 本 で の 酒 の 芸術 的 な生 産 を継 続 で き る要 因 で は な い。 したが っ て,持 続 的 な酒 の 生 産 継 続 は,こ れ ら文 化 的 及 び 伝 統 的 な 製 品 の生 産 に と っ て,先 進 国 が 国 外 市 場 に高 級 品 で 高 価 な物 だ け で な く,一 般 的 な もの の 普 及,及 び現 地 生 産 を考 え る べ きで あ る と指 摘 した い。 そ して,企 業 が 如 何
表5清 酒 の種 類
銘柄 精白率 課税移出数量 出荷指数の変化
(20%)
純米 60‑70 55,194(kl) 6.4‑一+7.1
純米吟醸 60 28,224 3.2→3.6
吟醸 6fl°/p 37,833 4,3→4,9
本醸造 70 146,798 19.7‑一コ18.9
普通酒 70‑80 400,205 52.0‑i51.4
三醸酒 70‑80 110,316 14.4‑一コ14.2
(合計) 778,568
1998酒 造 年 度 出 荷 指 数:1998/1997 資 料:国 税 庁
に協 調 的 で あ る こ とが で きる か にか か っ て い る と 考 え る 。
工 業 地 理 学 者 に とっ て,伝 統 的 な生 活 と,そ れ を支 え る製 品 の 生 産 の シス テ ム を明 らか にす る こ とは必 要 で あ る。 そ うす れ ば,国 際 理 解 も進 展 す る で あ ろ う。 しか し,こ の 問 題 は単 純 で は な い 。 何 故 な ら,こ れ ら製 品 の 継 続 的 な生 産 と供給 の シ
ス テ ム は,多 くの 問 題 が 生 じる 。 そ して,そ の あ り方 を考 え る の が 工 業 地 理 学 者 の役 割 の 一 つ で あ ろ う。 特 に後 発 工 業 国 に と っ て,今 後,伝 統 的 な 工 業 の 国 際 化 に とっ て,日 本 の 酒 造 業 展 開 の 事 例 が 役 に立 つ か も しれ な い 。 何 故 な ら,日 本 の伝 統 工 業 は,伝 統 部 門 と近 代 化 部 門 とが 同 じ市 場 で 競 合 しつ つ,国 際 的 な市 場 展 開 と,工 業 立 地 を進 展 しつ つ あ る か らで あ る。 西 洋 に お け る工 業 化 理 論 が,日 本 の 展 開 に直 接 的 に応 用 で き る面 と,独 自 日本 的 な成 長 の 側 面 が,ま さ に,対 峙 して い るの が 日 本 に お け る伝 統 産 業 の 現 在 で あ る か らで あ る。 筆 者 は,日 本 の 事 例 が,今 後 発 展 す る で あ ろ うア ジ ア諸 国 地 域 の 工 業 化 にお け る伝 統 部 門 と地 域 経 済 の 形 成 に と っ て,重 要 な経 験 を示 す こ とに
な る と考 え る。
(2004)「 戦 前期 朝鮮 半 島 にお け る邦 人 酒 造 業 の 地 域 的 展 開 と特 質」 酒 文 化,第14巻 第1号,酒 文 化 研 究 所 。
鄭 大 肇(1987)『 朝 鮮 の 酒』 築 地書 館 。 台 湾 総 督 府(1941)『 台 湾 酒 専 売 史 』
満 州 国 事 情 案 内所(1939)『 満 州 国 各県 事 情 』(昭 和54 年 に宏 文 社 よ り 『昭 和 十 四 年 度 版 旧 満 州 国 全 県 略 史 』 と して復 刊)
南 満 州 鉄 道 株 式 会 社(1929)『 昭和 四 年 版 南 満 州 鉄 道 旅 行 案 内 』
注記
1)本 稿 は2000年 中 国 東 莞 市 で 行 わ れ た 国 際 地 理 学 連 合 工 業 空 間 コ ミ ッ シ ョ ン で,小 田 宏 信(筑 波 大 学)
と 共 同 で 報 告 し た 英 文 論 文(KoskiHACHiKUB4, HironobuODA:Developmentofthebrewing
industryinJapan‑Theresutracturingoftraditional industryanditsimplicationforsustainable development‑2000,IGUIndustrialcomis‑
shioninDongGang)を 基 に,そ の 後 得 ら れ た 知 見 や 資 料 を 加 え 修 正 し た も の で あ る 。 な お,和 文 論 文 の 作 成,修 正 に 当 た っ て は 八 久 保 が 行 っ た 。
文献
石 田信 夫(1997)「 海 の か な た に 蔵 元 が あ っ た』 時 事 通 信 社 。
八 久 保 厚 志(1988)「(書 評)鄭 大 肇 『朝 鮮 の 酒 』」 地 理 学 集 報,No.15,法 政大 学 地 理 学 集 報 刊 行 会 。 (1993)「 清 酒 業 の企 業 空 間 再 編 」(山 川 充夫,柳 井 雅 也 編 『企 業 空 間 とネ ッ トワー ク』)大 明 堂 。
(2003)「 戦 前 期 朝 鮮 ・台 湾 にお け る邦 人 酒 造 業 の 展 開 」 神 奈 川大 学 人 文研 究 所 報No.36神 奈 川 大 学 人 文 研 究所 。
DevelopmentofthebrevcringindustryinJapan
‐Theresutracturingoftraditionalindustry anditsimphcationf6rsustainabledevelopment一
HACHIKUBOKoshi(KanagawaUniversity)
Abstract
Itisnecessaryfordiscussionaboutsustainabledevelopmenttoexaminenotonlycontemporaryleading sectorsbutalsotraditionalmanufacturingsectors.Theproductions3Tstemoftraditionalindustrialsectors, contrastingwiththemanyleadingsectorsbasedonthemoderntechnologies,havedevelopedspontaneously andpeculiaruzutnow.Someofthemplayimportantpartintheformationoflocaleconomies.InJapan,the sectors,whichhaveinnovatedtheirexistingtechnologiesandmoreoverhaveobtainednon‑localmarkets,are called̀JibaSangyo'.Then,thesustainabledevelopmentof̀JibaSangyo'isimportantinregionalandnational economy.ThispaperreportsthedevelopmentandcontemporarysignificanceoftheJapanesebrewingindustry asacasestudytogavedirectiontothesustainbledevelopmentof̀JibaSangyo'.
ThemostpopularalcoholicdrinkinJapanis̀Seisyu'(refinesakejmadefromrice.Inadditiontothis, demandfor̀shochu'whitedistilledliquor)madefromvariousmaterialisgrowinginrecentyears.The companies,whichmakebothtypeofalcoholicdrink,aretraditionalsectorsintheJapanesebrewingindustries andarelocatedineverymajorregion.Now,theyareinvestingintheforeigncountriestoexpandtheirmarket overseas.Thetrendtowardmarketexpansionandlocatiarlaldiffusionismakingsomeenvironmentalproblem.
Wecanpointtwoproblem;thereuseofprocesswasteandtheefficientuseofrawmaterial.Forexample,inthe onehand,competitionfbrah塘hdegreeof̀Seishぜpuritywastesalotofmaterial,tntheotherhand,production ofhighquahtỳShotyu'makesunavoidablylargequantitiesofdist皿atiozi‑lee,whichisoftendischargeintothe
ocean.
Everycountrywillfacesameprobleminnearfutureasthedevelopmentoftraditionalsectors.However,in traditionalsectors,itisdifficultforthecompaniestogetgovernmentsupportsforminimizationof environmentalemission,becausetheircompanysizeisgenerallysosmall.Inthissense,theexperiencesofthe JapanesèJibaSangyo'companiesmaygivedirectiontothedevelopingsmall‑sizedtraditionalsectorsin anothercountries.