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グローバル社会における企業活動と 法システム

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Academic year: 2021

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1.プロジェクトの目的

現代社会はあらゆる側面においてグローバ ル化し,社会生活のあらゆる分野が国際的な 動向と無縁に存在することはできない。この 点は,企業活動もまた例外ではない。今日で は,大企業はもとより,資本規模の比較的小 さい企業でさえ,東南アジア諸国や中国との 関係においてグローバルな視点で企業活動を 展開している。

ところが,法的な観点から見ると,企業活 動を規律する法システムは,基本的に国家単 位に分断されているのが現実である。個々の 国家による個別の法規制の創設,運用,改廃 は,国境を越えて活動を展開する企業にとっ て大きなリスクとなるだけではなく,こうし た活動によって影響を受ける他の企業,個人 などにとっても,個々の企業活動に整合性を 与えることが困難になるというデメリットを もたらす。また,規制を試みる国家の側から 見ても,多数の国にまたがる企業活動を,自 国の政策と法のみに基づき規律することはま すます困難になってきており,専ら一国の法 制度に依存する規制はその実効性を失う傾向 にある。

本研究企画「グローバル社会における企業 活動と法システム」は,企業活動を取り巻く こうした状況を念頭に,国際法,国際経済法,

国際取引法,国際関係論などの観点から,グ

ローバル化した企業活動を律する新たな法シ ステムを探求することを目的としている。グ ローバルな活動を実効的に規律する規範は,

一国の法制度を超えた国際的な法システムを 構成することが必要であるが,これは条約や 慣習法といった伝統的な国際法規範に限定さ れるものではない。むしろ,今日では,特定 の規制当局間の合意,民間企業間の合意,

NGOの決議,さらにはこれらの活動主体(ア クター)のインターアクション等によって生 み出される広い意味での国際規範が,現実の 企業活動にインパクトを与えている。本研究 企画が主眼とするのは,こうした新たな国際 規範の機能と効果に関する分析である。もち ろん,こうした国際規範の内容と意義は,企 業活動が展開される個々の分野に応じて多様 である。しかし,企業活動が立脚するグロー バル社会の現状を見るならば,そこに統合的 な「法システム」が現出しつつあることも否 定できない。本研究企画では,特定の分野に おいて国際規範がどのように創造・展開され るかを検証しながら,さらにこれらに通底す る,グローバル社会における「法システム」

の本質は何かを追究しようとするものである。

2.グローバルな視点で検証が必要とさ れる分野

グローバルな視点での検証が必要とされる 分野としては,以下のものが想起される。

¸ 銀行:国際金融システムの安定化に向 けた国際的な法システムの創造が展開されて

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グローバル社会における企業活動と 法システム

島田征夫

*1

・古谷修一

*2

*1 早稲田大学法学部教授

*2 早稲田大学大学院法務研究科教授

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いる。市場の変化が激しく,法の支配が極め て難しい分野であるが,国際金融危機から通 貨危機がもたらされることを考えると,市場 原理だけで規律されるべきものとはいえない。

企業法制の視点では,バーゼル委員会諸規則 を中心とした国際銀行活動を規律する一群の ルールの意義が注目される。

¹ 証券:証券取引の国際的な拡大に伴う 国際的な法システムの創造が展開されている。

これまでは各国の国内証券規制の域外適用に よる抵触が中心的な論点であったが,近年で はIOSCO諸規則を通じたハーモニゼーショ ンが進み,各国の証券規制に導入されている。

º 投資:国際的な投資を保護するルール としては,二国間投資協定などを通じた個別 的 な 対 応 が 中 心 と な っ て お り ,OECDや WTOで試みられている多国間枠組は十分な 成果をあげていない。ここでは特に国家プロ ジェクトに相当するような大規模投資におい て,通常の国際私法によっては解決されない 問題をどう解決すべきかが問題となる。二国 間投資協定,国際投資契約,国際仲裁判断な どの類型的分析によって,国際投資における グローバルな法システムの方向性を探る必要 がある。

» 貿易:国際貿易システムはWTOを中 心とした多国間枠組と,FTAによる二国間 または地域的な枠組の相克の状態にある。特 に昨今のFTAは企業の国際戦略に死活的な 影響をもたらしている。WTOやFTA自体は 企業が直接利用できるシステムではないが,

国内の通商法を通じて企業の国際活動に密接 に関連している。これらの錯綜した現状がグ ローバルな法システムとしてどのような意味 を持つのか追究する必要がある。

¼ 通信:インターネットの急速な普及に よって通信におけるグローバルな問題は一気 に拡大した。それは統一規格などの技術的な 問題から,コンテンツ配信と知的財産,サイ バーテロに至るまで多様な問題をはらんでい る。国際的にはITUが中心的な場になってい

るが,変化の激しい市場だけに,ルールがど のように定立され適用されるかは,企業に とって大きな問題となる。

½ 環境:環境対策は企業にとって喫緊の 課題となっている。環境問題は,生活環境か ら地域,自然,地球規模の問題まで大きな広 がりをもっている。グローバルな問題に関し ては近年幾多の多数国間環境条約が締結され,

企業活動に影響を与えている。さらに注目す べきは,企業の社会的責任論(CSR)から生 じる市場の圧力である。開発に対する各国の 思惑から多数国間条約枠組は停滞気味である が,市場の目にさらされる企業は別の視点か らグローバルなルールを模索しつつある。

3.グローバルな法的規律の問題

ここに挙げた以外にも,会計,競争,知的 財産,海運・航空,宇宙開発など,多くの分 野でグローバルな法的規律が問題となる。

国際社会の緊密化の中で,企業は統一的か つ安定的な法システムを模索している。国家 は基本的に自己の管轄権の維持を望む一方,

企業は個々の国家の規制を逃れて自由な活動 を求めている。しかし,グローバル化した

「市場」においては,いずれも自らの意思の みでその動きを制御できるものではない。言 葉を換えれば,グローバル社会においては,

「市場」が国家と企業との新たな関係構築を 求めているのである。本研究企画は,個別分 野の検討を通じて実務的にも有用な貢献をす るとともに,それを通じて「国家―市場―企 業」をつなぐグローバルな法システムの本質 を理論的に検証することも企図するものであ る。

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参照

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