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低酸素暴露解除後の動脈系化学受容器におけるペプチド性神経支配 Peptidergic innervation in the arterial chemoreceptors
after the termination of chronic hypoxia
日下部 辰 三*,林 田 嘉 朗**
Tatsumi KUSAKABE* and Yoshiaki HAYASHIDA**
動脈系化学受容器(頚動脈小体)の低酸素暴露 実験の多くが、低酸素暴露中の構造および機能の 変化を検討したものであり、低酸素暴露解除後の 変化に関しての報告は極めて少なく、血液中の酸 素および炭酸ガスの化学受容に関する“構造ー機 能連関”を究明する為には、低酸素暴露解除後の 形態変化ならびに生理応答をもふまえた検討が必 要であることは言うまでもない。この様な観点か ら、昨年度は前段階として低酸素暴露解除後の頚 動脈小体の動態ならびに小体内血管の動態を組織 計測することにより、低酸素暴露解除後の化学受 容器の形態変化について考察を加えた。
本研究課題では、低酸素暴露解除後の頚動脈小 体を対象に、化学受容調節に大いに関与する神経 支配の変化を各種神経ペプチドを指標に免疫組織 化学的に検討した。
Wistar 系ラット(7週令) を低酸素環境下
(Hypocapnic Hypoxia:10% O2 in N2)にて8週 間飼育した。その後正常環境下(大気圧)に戻し、
1週、2週、4週および8週後に試料を採取した。
4%パラホルムアルデヒドおよび2%ピクリン酸 を含む 0.1M リン酸緩衝液で灌流固定し、頚動脈 小体を採取した。 常法に従い 10 μm の凍結切片
を作成し、Hematoxylin Eosin(HE)染色を施し た。500 倍に拡大したモニター上で頚動脈小体の 長径と短径、および小体内血管の短径を ARGUS 100を用いて組織計測し、形態変化の基準とした。
免疫組織化学的検討には、4%パラホルムアルデ ヒドを含む 0.1M リン酸緩衝液で灌流固定した頚 動脈小体から、 常法に従い 16 μm の凍結連続切 片を作成した。一次抗体としては、Substance P
(SP)、Calcitonin gene-related peptide(CGRP)、
Vasoactive intestinal polypeptide(VIP)、およ びNeuro peptide Y(NPY)に対するウサギ抗血 清を使用し、PAP 法に従い免疫染色した。 形態 観察の為には一部の切片を Hematoxylin Eosin
(HE)染色し、上記手法に従い単位面積(104μm2) 当たりの varicosity 数を測定し(ARGUS 100)、
低酸素暴露解除群とコントロール群で比較した。
SP および CGRP 陽性線維の密度は、低酸素暴 露解除後に徐々に回復傾向を示した。解除後8週 の SPおよび CGRP線維の単位面積(104μm2)当 たりのvaricosity数密度はそれぞれ7.8±1.2およ び17.2±2.3となり、ほぼ正常環境下の密度(SP:
8.5±1.1、CGRP:20.7±2.0)にまで回復した(図 1)。VIP 陽性線維の単位面積(104μm2)当たり の密度は、 低酸素暴露解除後1週(15.3 ± 4.0)
* 国士舘大学体育学部スポーツ医科学科(Department of Sport and Medical Science, Kokushikan University)
** 四天王寺国際仏教大学(International Buddhist University)
THE ANNUAL REPORTS OF HEALTH, PHYSICAL EDUCATION AND SPORT SCIENCE
VOL.27, 123-124, 2008
報告書(体育研究所プロジェクト研究)
日下部・林田
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な変化は認められなかったが、暴露解除後1週か ら4週の間で有意な増加が認められた。低酸素暴 露後の血管拡張は一部にはVIP線維の血管拡張作 用による可能性を考えているが、これに合わせて 低酸素暴露解除後の血管収縮は、一部には血管収 縮性の NPY 線維が関与している可能性も示唆さ れる。
低酸素暴露解除後1週で、頚動脈小体は小体内 血管の縮小を伴う著明な縮小化が始まり、暴露解 除後4週から8週にかけてはほぼ正常環境下の形 態像にもどることを昨年度報告したが、本研究課 題により、低酸素暴露解除による頚動脈小体の縮 小化のメカニズムに各種神経ペプチドの関与する ことが推察された。これらの所見から、高地トレ ーニング後の呼吸および循環動態を推測するうえ で極めて重要な基礎データを提供するものであ る。
本研究は国士舘大学体育学部体育研究所・平成 20 年度研究助成ならびに文部科学省・平成 20 年 度科学研究費補助金(基盤研究 C)により行なわ れた。
ですでに正常環境下レベル(15.1 ± 3.1) にまで 回復傾向を示した(図1)。NPY陽性線維の単位 面積(104μm2) 当たりの密度は、 低酸素暴露解 8週(45.7±4.8)では正常環境下レベル(46.6±
7.1) と変化は認められなかったが、 低酸素暴露 解除後1週(54.7± 3.8)、2週(55.3± 4.8)およ び4週(53.5 ± 9.5)で有意(p<0.005)な増加傾 向を示した(図1)。
ラットを長期間低酸素暴露すると、頚動脈小体 は数倍にも肥大する。3ヶ月間低酸素暴露後の肥 大した頚動脈小体では、VIP線維の単位面積当た りの密度は 1.8倍に増加(p<0.01)し、SPおよび CGRP線維は50%以下に減少(p<0.005,p<0.01)
するが、NPY線維の密度には変化が見られないこ とを既に報告している。本研究課題において、長 期間低酸素暴露後に正常環境下に戻すと SP およ びCGRP陽性線維の密度は徐々に回復する傾向を 示したが、VIP陽性線維は解除1週後で既に回復 しており、含有するペプチドの種類により分布密 度の回復傾向には差が認められた。 一方、NPY 陽性線維の密度は長期間の低酸素暴露後には有意
図1 低酸素暴露解除後のペプチド性神経線維の分布密度