Real-time RT-PCR 法によるアストロウイルス遺伝子の検出
千葉市環境保健研究所
横 井 一 北 橋 智 子
(平成 20 年 9 月 25 日受付)
(平成 21 年 1 月 7 日受理)
Key words : Human astrovirus, Real-time RT-PCR, TaqMan MGB probe
要 旨
アストロウイルス(Human astrovirus : HAstV)を検出するための Real-time reverse transcription- polymerase chain reaction(RT-PCR)法を開発した.
HAstV ゲノムの Open reading frame 2(ORF2)のうち,比較的保存性の高い 5ʼ末端領域を Real-time RT- PCR 法の標的配列として選択し,プライマーおよび TaqMan MGB プローブを新たに設計した.HAstV 1 型から 7 型の各血清型(コントロールプラスミド)ともに 30copies! tube から 3.0×10
7copies! tube の範囲で 遺伝子の定量が可能であり,検出感度は各血清型ともに 30copies! tube であった.また,HAstV 陽性の臨 床検体から抽出した遺伝子についても検出が可能であった.
Real-time RT-PCR 法は Conventional RT-PCR 法に比べ,10 から 10
3倍感度が高く,ノロウイルス,サポ ウイルス,A 群ロタウイルス,及びアデノウイルスとの交差反応は全く認められなかった.
以上の結果から,今回開発した Real-time RT-PCR 法は,従来の Conevntional RT-PCR 法と比較して,簡 便で迅速に HAstV1 型から 7 型までの各血清型の遺伝子を検出し,定量することが可能であると考えられ た.
〔感染症誌 83:120〜126,2009〕
序 文
アストロウイルス(Human astrovirus : HAstV)は,
小児の糞便から電子顕微鏡により発見された星状の表 面 構 造 を 持 つ 直 径 28〜30nm の 球 形 ウ イ ル ス で あ り
1)2),ウイルス構造蛋白質の抗原性により,1 型から 8 型の血清型に分類されている.HAstV のゲノムは,
1 本鎖のプラス RNA であり,3 つの翻訳領域(Open reading frame : ORF)から構成され
3),5ʼ側の非構造 蛋白質をコードする ORF1a と ORF1b,その下流に ウイルス構造蛋白質をコードする ORF2 が存在する.
HAstV の主な臨床症状は下痢および嘔吐であるが,
ノロウイルスに比べ一般的に胃腸炎症状が軽く,乳幼 児における散発的な発生が多い.日本における乳幼児 感染性胃腸炎患者からの HAstV の検出率は 3.2% で あり,その血清型は 1 型が多いことが報告されている が
4),その一方で軍隊における HAstV3 型の流行
5)や HAstV6 型による集団食中毒
6)も報告されている.
近年,Reverse transcription-polymerase chain reac-
tion(RT-PCR)法がウイルス遺伝子の検出法として 用いられるようになり,ウイルス量が少ない検体から 高 感 度 に HAstV を 検 出 す る こ と が 可 能 で あ る た め
7)8),HAstV の流行状況調査や集団感染事例におけ るウイルス検出法として,必須の診断技術となってい る.しかしながら,RT-PCR 法による遺伝子検出は,
電気泳動による PCR 産物の確認,および得られた PCR 産物の確認検査(シークエンス解析やハイブリ ダイゼーション等)を必要とするため,迅速性に欠け る一面もある.
そこで,著者らは迅速性,高感度,および定量性を 併せ持った HAstV 遺伝子検出法の開発を目的とし て,各種ウイルス感染症領域でその有用性が確認され ている Real-time RT-PCR 法に着目し,HAstV 1 型か ら 8 型までの全血清型の検出が可能な遺伝子診断法の 構築について検討したので報告する.
材料および方法
1.ウイルス検体の前処理
HAstV RNA の調製には,愛媛県立衛生環境研究所 から分与された血清型 1,2,3,4,5,6,および 7
原 著別刷請求先:(〒261―0001)千葉市美浜区幸町 1―3―9 千葉市環境保健研究所医科学課 横井 一
のウイルス株を使用した.これら 7 血清型の分与ウイ ルス株を CaCo-2 細胞により 2 回継代した後,培養上 清を回収し,RNA の抽出時まで−80℃ に保存した.
一方,臨床検体における本法の有用性と他の下痢症 ウイルスとの交差反応の有無を検討するために,千葉 市内医療機関で感染性胃腸炎と診断された患者から採 取された HAstV 陽性糞便 13 検体(1 型:10 検体,3 型:1 検体,4 型:1 検体,および 2 型と 6 型の混合:
1 検体),ノロウイルス(Norovirus : NV)陽性糞便 43 検体,サポウイルス(Sapovirus : SV)陽性糞便 4 検 体,A 群ロタウイルス(Rotavirus : RV)陽性糞便 9 検体,およびアデノウイルス 40! 41 型(Adenovirus : ADV)陽性糞便 3 検体をウイルス RNA の調製に使 用した.これらの糞便検体について,PBS(−)を用 いて 10% 糞便乳剤を作製した後,7,000rpm で 1 分間 遠心した上清を回収し,RNA の抽出時まで−80℃ に 保存した.
2.ウイルス RNA の抽出
HAstV 分離株の培養上清 200µL,または 10% 糞便 乳剤 200 µ L から High Pure Viral RNA Kit(Roche)
を使用してウイルス RNA の抽出を行った後,RNA を DNaseI により処理した.すなわち,ウイルス RNA 45µL に DNaseI 反 応 液(5units! µL RNase-free DNaseI(TaKaRa)4.0µL と 10×DNaseIBuffer 21.0µL を混合)を 5 µ L 加え,37℃ で 30 分間反応させた後,
75℃ で 5 分間処理したものを DNaseI 処理ウイルス RNA とし,使用時まで−80℃ に保存した.
3.Real-time RT-PCR 用 プ ラ イ マ ー お よ び TaqMan MGB プローブの設計
HAstV ゲノムの ORF2 遺伝子領域のうち,各血清 型 間 で 保 存 性 の 高 い 5ʼ末 端 か ら 250bp の 領 域
8)を Real-time RT-PCR 法の標 的 配 列 と し て 選 択 し た.
GeneBank に登録されている HAstV 38 株の塩基配列 250bp をインターネット Web 上のソフトウェアであ る MultAlin(http:!! bioinfo.genotoul.fr! multalin! mul- talin.html)を用いてウイルス株相互の配列アライメ ントを行い,1 型から 8 型の共通配列を検索した(Fig.
1).検索結果に基づき,プライマーまたはプローブ配 列と共通配列のミスマッチが最小となるように,sense プライマー 3 種類,antisense プライマー 1 種類,お よび TaqMan MGB プローブ 1 種類を設計した(Ta- ble 1).なお,各プライマーの合成は Invitrogen に依 頼し,TaqMan MGB プローブについては Applied Biosystems(ABI)に依頼した.
4.コントロールプラスミドの作製
HAstV の各血清型(T1! Oxford! L23513,T2! Oxford
! L13745,T3 ! S3 ! AB000291,T4 ! ORF1b ! AF292075,
T5! Oxford! U15136,T6! ORF1b! AF292077,お よ び
T7! ORF1b! AF248738)に お け る ORF2 の 5ʼ末 端 領 域の遺伝子を後述の AC1ʼおよび AC230 プライマー
(Table 1)を用いた Conventional RT-PCR 法によっ て増幅させた.これらの PCR 産物を TOPO TA Clon- ing Kit for Sequencing(Invitrogen)を用いて pCR4- TOPO vector にサブクローニングした.PCR 産物の 塩基配列をダイレクトシークエンス法により確認した 後,Plasmid Mini Kit(Qiagen)により環状プラスミ ドを精製し,制限酵素 Spe I で切断した.得られた直 鎖状プラスミドの OD 値を測定し,TE buffer(10mM Tris-HCl,pH8.0 ; 1mM EDTA,pH8.0)にて 3.0×10
8copies! 5µL の濃度に調製した後,使用時まで−80℃
に保存した.
5.ウイルス RNA の逆転写反応による cDNA の作 製
1 tube あたり 40 µ L の反応量で実施した.すなわち,
RNase-free 滅菌蒸留水 3.9µL,5×First-Strand Buffer 8.0µL,10mM dNTP Mix 2.0µL,1.0µg! µL pd(N)
6Random Hexamer(Amersham)1.0µL,100mM DTT 2.0 µ L,40units ! µ L RNaseOUT Recombinant Ribonu- clease Inhibitor(Invitrogen)1.1µL,200units! µL Su- perScriptII RNaseH(−)reverse transcriptase(Invi- trogen)2.0µL,および DNaseI 処理ウイルス RNA 20 µ L を混合した後,42℃ で 60 分間反応させた.次い で 99℃ で 5 分間処理したものを cDNA とし,使用時 まで−30℃ に保存した.なお,HAstV の cDNA につ いては,各血清型の 10 倍段階希釈液を作製した(10
−1から 10
−7倍希釈まで).
6.Real-time RT-PCR 法
1 tube あたり 50µL の反応量で実施した.すなわち,
MicroAmp Optical 96-Well Reaction Plate(ABI)に QuantiTect Probe PCR Master Mix(Qiagen)25µL,
100µM プライマー各 0.2µL,10µM TaqMan MGB プ ローブ 0.5 µ L,および滅菌蒸留水 18.7 µ L,および 5.0 µ L の cDNA を加えた後,ABI PRISM 7000SDS(ABI)
を使用して増幅反応を行った.反応条件は,95℃ 15 分の後,94℃ 15 秒(熱変性)と 62℃ 1 分の反応を 45 回繰り返した.一方,コントロールプラスミドについ ては,TE buffer にて 10 倍段階希釈を行い,3.0×10
7copies! 5µL から 3.0×10
1copies! 5µL までの 10 倍希釈 系列を作製した後,cDNA と同様に増幅反応を行っ た.反応終了後に ABI Sequence Detection System Software ver. 1.1 を使用し,ウイルス遺伝子の検出と 定量解析を実施した.
7.Conventional RT-PCR 法
1 tube あたり 50µL の反応量で実施した.すなわち,
0.2ml PCR tube に 10×Ex Taq Buffer 5.0 µ L,100 µ M
プライマー各 0.25µL,2.5mM dNTP Mix 4.0µL,5
Fig. 1 Aligment of 38 conserved-region nucleotide sequences in the 5’ end ofthe capsid gene (ORF2)ofHuman Astrovirussero- type 1 (T1),2 (T2),3 (T3),4 (T4),5 (T5),6 (T6),7 (T7)and 8 (T8). The Serotype/accession number is shown beside the sequence.
Asterisksbelow alignmentindicate the consensusnucleotide sequence.Solid-line arrows:newly designed primers.Double-line arrow:TaqMan MGB probe.
Table 1 Primerand Probe Oligonucleotidesused forReal-time Quantitative Human AstrovirusRT-PCR and ConventionalRT-PCR.
Location Polarity *b
Sequence (5’ → 3’ )* a PrimerorProbe
PCR Assay
4349-4367 *d
+ CAG GTA ACT GTT GAG GTC A
HuAstVf2240 Real-time
RT-PCR HuAstVf2140 GCA AGT YAC TGT TGA GGT CA + 4345-4364 *e 22-39 *f
+ GAA GTC ACT GTG GAG GTC
HuAstVf2239T4
4562-4544 *d
- GTT TWG GTC CTG TGA CAC C
HuAstVr4123
4515-4501 *d
- FAM-TTA CGG ACA CGY TGA-MGB-NFQ
HuAstV/1-8/TP * c
1-21 *g
+ ATG GCT AGC AAG TCT GAC AAG
AC1’
Conventional
RT-PCR *h AC230 GGT TTW GGT CCT GTG ACA CC - 236-217 *g 4563-4545 *d
+ GAC GAA GCG GAC AGG TTT GA
AC4
6771-6748 *d
- GCT TCT GAT TAA ATC AAT TTT AAA AC6
* aMix basesin degenerated primersand probe are :Y,C orT ;W,A orT.
* b + :Sense ;- ,antisense.
* cThe MGB probe islabeled with 6-carboxyfluorescein (FAM)reporterdye atthe 5’ end,and with minorgroove binder(MGB)and a nonfluorescentquencher(NFQ)atthe 3’ end ofthe oligonucleotide.
* dLocation isrelative to the human astrovirusserotype 1 Oxford strain genome (accession numberL23513).
*eLocation isrelative to the human astrovirusserotype 2 Oxford strain genome (accession numberL13745).
* fLocation isrelative to the human astrovirusserotype 4 Oxford strain genome (accession numberZ33883).
* gLocation isrelative to the human astrovirusserotype 6 Oxford strain genome (accession numberZ46658).The AC230 primerwasmodified to detected human astrovirusserotype 3 in thisstudy.
* hThe ConventionalRT-PCR wasdone using Sakon’ sprimerset.8)
units ! µ L Ex Taq(TaKaRa)0.25 µ L,および滅菌蒸 留 水 35.25µL,お よ び 5.0µL の cDNA を 加 え た 後,
GeneAmp PCR System 9700(ABI)を使用して増幅 反応を行った.反応条件は,94℃ 30 秒,55℃ 30 秒,
および 72℃ 1 分の反応を 35 回繰り返した.PCR 産 物の確認は 2.5% アガロースゲル電気泳動により行 い,目的のバンドが確認されたものを陽性とした
8).
結 果
HAstV 1 型から 7 型の各コントロールプラスミド の 10 倍段階希釈系列を用いて,Real-time RT-PCR 法 における増幅曲線および検量線の検討を実施した.そ の結果,1 型から 7 型の各血清型において,それぞれ 3.0×10
1copies! tube か ら 3.0×10
7copies! tube の 範 囲 内で,PCR サイクル数に比例した遺伝子の増幅が認 められ,cDNA 量に基づく PCR 増幅曲線が得られた.
また,X 軸にコントロールプラスミドのコピー数(対 数表示),Y 軸に PCR サイクル数(Ct 値)をプロッ トした場合の検量線は,Fig. 2(A〜G)に示すよう に 1 型(R
2=0.998,Slope:−3.065),2 型(R
2=0.999,
Slope:−3.792),3 型(R
2=0.998,Slope:−3.448),
4 型(R
2=0.999,Slope:−3.311),5 型(R
2=0.999,
Slope:−3.362),6 型(R
2=0.999,Slope:−3.232),
および 7 型(R
2=0.999,Slope:−3.305)の各血清型 において,それぞれ良好な直線性を示した.以上の結 果から,本法による HAstV 1 型から 7 型の各血清型 の遺伝子検出と定量が可能であることが明らかとな り,検出感度は各血清型ともに 3.0×10
1copies! tube であると推定された.また,HAstV 陽性糞便 13 検体
(1 型,2 型,3 型,4 型,および 6 型)から作製した
cDNA を 用 い て Real-time RT-PCR 法 を 行 っ た と こ ろ,1.65×10
2copies! tube から 4.15×10
8copies! tube の範囲内で全ての検体に遺伝子の増幅が認められた.
なお,NV 陽性糞便 43 検体,SV 陽性糞便 4 検体,RV 陽性糞便 9 検体,および ADV 陽性糞便 3 検体につい ては,遺伝子の増幅は全く認められなかった.
さらに,HAstV 分離株か ら 作 製 し た cDNA の 10 倍段階希釈液を用いて,Real-time RT-PCR 法と Con- ventional RT-PCR 法の検出感度を比較した.その結 果,Real-time RT-PCR 法では,Table 2に示すように,
HAstV 1 型から 7 型の各血清型全てにおいて 10
−5希 釈まで遺伝子が検出された.また,10
−5希釈における 各血清型の Ct 値は 1 型で 41.27,2 型で 40.61,3 型で 38.09,4 型で 38.26,5 型で 38.16,6 型で 39.19,およ び 7 型で 36.71 であった.一方,AC1ʼ ! AC230 プライ マーセットを用いた Conventional RT-PCR 法では,
HAstV1 型で 10
−4希釈,2 型で 10
−3希釈,3 型で 10
−4希釈,4 型で 10
−4希釈,5 型で 10
−2希釈,6 型で 10
−4希釈,および 7 型で 10
−4希釈まで遺伝子が検出され た.また,AC4! AC6 プライマーセットを用いた場合 では,HAstV 1 型で 10
−3希釈,2 型で 10
−2希釈,3 型 で 10
−3希釈,5 型で 10
−3希釈,6 型で 10
−3希釈,およ び 7 型で 10
−3希釈まで遺伝子が検出されたが,4 型で は全く検出されなかった(Table 2).
考 察
HAstV の検出として早期から ELISA 法が開発さ
れ,使用されてきたが,検出感度が低く,ウイルス量
が少ない糞便検体,食品,および下水等の環境由来検
体からの検出には不向きであった.
Fig. 2 Amplification of 10-fold serial dilution from Human Astrovirus serotype1 (T1),2 (T2),3 (T3),4 (T4),5 (T5),6 (T6),and 7 (T7)controlplas- mid template in Real-time Quantitative RT-PCR assay.
Log10 ofknown numbersofT1 (A),T2 (B),T3 (C),T4 (D),T5 (E),T6 (F), and T7 (G)controlplasmids,containing of3.0×107to 3.0×101copiesperre- action,plotted againstthe corresponding cycle threshold (Ct),to generate a standard curve.
近年,PCR 法や RT-PCR 法をはじめとする遺伝子 検出法が各種ウイルス感染症の診断に広く用いられる ようになった.中でも迅速性,高感度,および定量性 を併せ持った Real-time PCR 法は,優れた遺伝子検 出法として着目され,既に NV
9),SV
10),および RV
11)等の下痢症ウイルスの遺伝子検出に用いられている.
HAstV においても Real-time RT-PCR 法を用いた遺
伝 子 検 出 が 試 み ら れ て お り,Royuela ら
12)と Zhang
ら
13)は SYBER greenI を用いた検出方法を報告してい
る.しかし,SYBER green 法は TaqMan プローブ法
に比べ,反応系の構築が容易である反面,非特異的な
PCR 産物も測定してしまうために特異性が低くなる
Table 2 Human AstrovirusReal-time Quantitative RT-PCR vs.ConventionalRT-PCR Sensitivity.
Maximum 10-fold serialdilution detected by PCR assay * a ViruscDNA
concentration (copies/tube)
Serotype ConventionalRT-PCR * c
(AC4 & AC6 primerset) ConventionalRT-PCR * c
(AC1’ & AC230 primerset) Real-time RT-PCR
(Ct*b)
10 -3 10 - 4
10 - 5(41.27) 2.78×106
T1
10 -2 10 -3
10 - 5(40.61) 2.54×105
T2
10 -3 10 - 4
10 - 5(38.09) 1.91×106
T3
Notdetected 10 - 4
10 - 5(38.26) 1.25×106
T4
10 -3 10 - 2
10 - 5(38.16) 1.84×106
T5
10 -3 10 - 4
10 - 5(39.19) 1.34×106
T6
10 -3 10 - 4
10 - 5(36.71) 2.08×106
T7
* acDNA solution obtained from human astrovirusRNA serotype by the RT reaction was10-fold serialdiluted by sterilized TE buffer.
* bCt,threshold cycle
* cAC1’ and AC230 primerwere prepared using the 5’ end ofthe ORF2 region.AC4 and AC6 primerwere pre- pared using the 3’ end ofthe ORF2 region.ConventionalRT-PCR resultswere considered positive when the excepted amplification productwasvisible on agarose gel.
ことも知られている.一方,Le Cann ら
14)は ORF2 の 3ʼ末端に設定したプライマーと TaqMan プローブを 用いた遺伝子検出を報告しているが,他の下痢症ウイ ルスとの交差反応の有無,およびプローブが全ての血 清型を検出できるか否かについては示されていない.
また,Grimm ら
15)は ORF2 の 5ʼ末端に設定したプラ イマーと TaqMan プローブによる検出を行っている ものの,全ての血清型を検出するために 4 種類のプ ローブを使用するため,コスト削減の面で問題がある.
今回,著者らが開発した Real-time RT-PCR 法では,
全ての血清型(1 から 8 型)を検出するために設計し た 3 種類の sense プライマーと AC230 プライマー
8)の 配 列 の 一 部 を T か ら W に 変 更 し た 1 種 類 の an- tisense プライマーを使用した.また,プローブにつ いては,Tm 値の上昇,特異性の向上,および全ての 血清型を検出可能とするために設計した 1 種類の 15 mer の TaqMan MGB プローブを使用した.その結 果,1 型から 7 型いずれの血清型においても 30copies!
tube 以上の遺伝子が存在すれば,HAstV 遺伝子の検 出 と 定 量 が 可 能 で あ る こ と が 確 認 さ れ た.ま た,
HAstV 1 型,2 型,3 型,4 型,および 6 型が陽性の 糞便検体からも,本法によって問題なく遺伝子の検出 が可能であり,他の下痢症ウイルス(NV,SV,RV,
および ADV)との交差反応もなく高い特異性を有す ることが明らかとなった.本法の検出感度についても,
AC1ʼ! AC230 プ ラ イ マ ー セ ッ ト を 用 い た Conven- tional RT-PCR 法に比べ,10 倍から 10
3倍高く,A4!
AC6 プライマーセットを用いた場合と比べても 10
2倍 から 10
3倍高いことが確認された.
さらに,今回はアニーリング温度を 62℃ に設定し たが,これは Oka ら
10)が報告した SV の Real-time RT- PCR 法と同じ温度であり,HAstV と SV Real-time RT-PCR 法を 1 台の装置で同時に実施できることを示
している.現在,食中毒や感染性胃腸炎集団発生事例 における原因ウイルスの殆どが NV であるが,HAstV による事例も少なからず報告されている
5)6).従って,
患者から NV が検出されなかった場合には,他の下痢 症ウイルスの効率的な検索が必要であり,本法は検査 効率の向上にも貢献できるものと考えられる.
な お,T4! Oxford! Z33883 株(HAstV 4 型),お よ び HAstV 8 型については,ウイルス株,プライマー,
およびプローブの塩基配列から,本法を用いて理論上,
検出可能であると推定されるが,今回は実際のウイル ス株を用いて検討を行っていないため,さらなる検討 が必要であると思われる.しかし,sense プライマー の 3ʼ末端側にミス マ ッ チ の あ る T4! Ehime1992! AB 025810 株(HAstV 4 型)については,増幅効率が低 下し,場合によっては検出できないことが問題点とし て示唆された.
以上のことから,今回開発した HAstV の Real-time RT-PCR 法は,PCR 反応後の電気泳動や PCR 産物の 確認検査(ハイブリダイゼーションまたはシークエン ス)が不用であることから,簡便で迅速にかつ高感度 に HAstV1 型から 7 型までの各血清型の遺伝子検出 と定量が可能であり,食中毒や感染性胃腸炎の集団発 生時における行政検査,HAstV の流行状況等に関す る疫学調査,および臨床検査等に応用可能であると考 える.
謝辞:今回,血清型 1 から 7 のアストロウイルス株を分 与していただいた愛媛県立衛生環境研究所 山下育孝先 生,並びに元愛媛県立衛生環境研究所 大瀬戸光明先生に 深謝致します.
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Astrovirus RNA Detection Using Real-Time Reverse Transcription-Polymerase Chain Reaction Hajime YOKOI & Tomoko KITAHASHI
Chiba City Institute of Health and Environment