長野工業高等専門学校紀要・第26号 (1992) 59
交通状態の不確実性 を考慮 した 時差出勤策について
柳沢吉保 飯田恭敬 内田敬
The Stagger Working Hours Considering the Uncertainty
of Peak‑Hour Travel Demand By Yoshiyasu YANAGISAWA Yasunori IIDA Takashi UCHIDA
Thispaperexaminestheproblemofpeak‑hourstrafBccongestionandtheanalysis ofalternativescongestionreliefmethods.Itpresentsaestimationmodelofthedepar・ turetimeandroutechoice,andsystem perfom ancefunctionconsideringtheuncer‑ taintyoftraveltimeandcommuter'sutility.Themodelconsistsoftheestimatedtravel timeandscheduledelay.Numericalexamplewereperformedinordertocleartheeffect ofthestaggerandthe8exibilityofworkstarttime.
1. は じ め に
(1) 研究の背景
都市内交通 における自動車の利用率は増大傾向にある.特 に通勤時に起 こる道路混雑 は社 会 ・経済活動 に重大な影響を及ぼしている.そこで,道路混雑を緩和す るための何 らかの方 法が講 じられなければならない.その渋滞解消策 の一つ として,交通施設の整備が考 え られ るが,財源上の制約 も大 きく,また短期間にその効果を期待す ることはできない.そ こで道 路上 の交通量 ピークを低 くし混雑を緩和す る方法1)を考 えることとす る.
朝 の通勤交通 について考 えると,各通勤者の勤務す る会社 には始業時刻が決め られている ため,通勤者 はこれに間に合 うように居住地を出発す る.そのため各会社の始業時刻が同一 の時間帯 に集中 してい る場合,企業立地の集中している都心付近 の道路では通勤 による交通 量が集中 し,渋滞を引 き起 こす ことになる. この ことを考慮 し,本研究では時差出勤政策 に よ り会社の始業時刻を変更 し,通勤者の出発時刻分布をず らす ことによ り,道路上 の発生量 ピークを低 くし,混雑 を緩和するための方法論の提案を行 う.
(2)従来の研究 と本研究の位置付け
時差出勤政策による渋滞緩和効果を具体的に分析 した研究 は少ない.時差 出勤 に関す る従 来の研究 について①定井,新矢 らl)は,時差出勤 の実施状況,時差出勤への対応理 由, また
●平成4年11月第15回土木計画学研究講演会にて発表 日 土木工学科 助手
=●京都大学工学部 教授
●'''京都大学工学部 助手
時差出勤推進策 について, アンケー ト調査を行い,実施可能な事業所が実際に実施 した場合 のピーク交通量 の削減の程度 を試算 している.②加藤,門田,高田2)らは,始業時刻 と通勤 者の出勤行動 との関連性 について実態調査を行い,始業時刻 と準備時間,始業所要時間およ
び交通手段選択 との関連性 を明 らかにし,時差出勤を行 った場合の出発時刻の ピークの大 き さについて計算 を行 っている. しか し,政策 によって始業時刻 を変 えた通勤者 の通勤行動 と, そのほかの通勤者の通勤行動 とが互いに影響 を与 えながら通勤者全体 の出発時刻,経路選択 は決 まってくると考 えられるが,①,②ではこのような通勤挙動については考慮されていな い.③BEN‑AKIVA小 6)は10D多経路での経路選択,出発時刻選択 の推定 モデルを通勤効 用関数をもとに構築 し,交通条件を変 えた場合の通勤者の トランジェソ トな通勤挙動などを 分析 している. よって時差出勤政策などの効果の計測 について, このモデルを用い ることが できるが, この研究では,時差出勤政策の効果を計測するための評価関数については示 され てお らず,混雑緩和 のための具体的な計算は行われていない.
また,実際の通勤では毎 日の所要時間の変動が考えられ るが,従来 の研究ではこれ らのこ とが考慮 されていない.そこで,ある通勤者の始業時刻を変えた場合の通勤者全体 の通勤挙 動変化 も説明できるモデルであること.毎 日の交通状態の変動 も考慮できること. また実際 の道路網への適用を考え, 1つの リンクに複数のOD交通 が流れている多経路多ODに適用 できるモデルに拡張す ることが,交通運用へ適用す る場合,重要なこととなる.
本研究で提案するモデルは,上で述べた点 を考慮 し,
(1)経路,出発時刻選択 などの通勤行動 は,個人の通勤効用をもとに動的な扱いを行 う.
(2)多経路多ODにも適用で きるような,動的交通流モデルを用いる.
(3)道路上の交通状態は日々変動 していることか ら,所要時間の不確実性を考慮 した通勤行 動 モデルと,時差出勤政策 などの効果を評価するための評価関数を構築す る.
(4) 時差出勤策や フレックスタイム策 の効果を数値計算により確かめ,それぞれの政策 の有 効性について考察 を行 う.
2.動的交通流モデル9)Ill) (1) モデルネ ットワーク
1章で述べた1つの リンクを複数のOD交通が利用する場合の最 も簡単 な例 として,図‑
1の ようなモデルネ ットワークを考える.
ODlはノー ド1‑ 3間,OD2はノー ド2‑ 3間 とし,各 ノー ドか ら発生 した トリップは ノー ド3 (CBD)に向か って流れている.
(2)動的交通流モデルの考 え方
通勤者は,時々刻々 と変化す る所要時間をもとに, 目的地までの経路や出発時刻 の選択行 動を行 う.そ こでここでは,ある時刻 に出発 し,ある経路 を利用 した フローの目的地までの 平均所要時間を求め るための動的交通流モデル
を示す.
本研究で用いる動的交通流モデルの, リンク
リ ンク 1 リンク2
内フローの基本的な考え方について次 に示す.
図‑2のような リンクを自由走行の箱 と自由 図‑ 1 モデルネットワーク
CBD
交通状態の不確実性 を考慮 した時差出勤策 について 走行時間か らの遅れ待ち行列箱 により構成す る.
前 リンクからのフローはこの リソクを流出す るまでに少 なくとも自由走行時間は要す るので, 自由走行箱の最 も後端である第K番 目の箱以降 の空いている部分にフローを埋めてい く・箱の 1 中のフローは1単位時間 ごとに進行方向側 の箱 に1つだけ移動す るので, リンク所要時間 は通 過 した箱 の数を数 えることによって求めること がで きる.1つの箱の大 きさは,その リンクの 単位時間当 りの流出容量 となる.ただ し,同 じ
□ lI
[亘□ 岳
T,日 口
61
自 由走 行 時 間 籍
遅 れ待 ち時 間 持
前 時 間 帯 に流 入 した フ ロー
現 時 間 帯 に流 入 す るフ E,‑
E 宙固 ・ . [ こ こ ]
図‑2 リンク内の走行状態の箱
OD,経路,出発時刻 に出発 した交通量で も目
的地 に到着するまでに拡散 しているため,所要時間が異 なって くる.
そこでその平均所要時間については次式 より求める.
fl(ts)
∑Ⅹ1ta (ts,ta)・(t8‑ts)
XI(t,) (1)
も(ts):ODi,出発時刻 t,のフローの所要時間の平均値 Xl(ts,ta):ODi,出発時刻ts,到着時刻t8の交通量
XI(ts) :ODi,出発時刻 tsの交通量
(1)式で得 られた平均所要時間を出発時刻,経路選択行動 モデルの中で用いる.
3.通勤交通行動のモデル化8)・10)Ill)
通勤者は, 日々変動 している所要時間 と遅刻ペナルテ ィーを考慮 して,出発時刻や経路 の 選択行動を行 っている. ところで,短い時間間隔で選択行動を分析す る場合,勤務地 に到着 してか ら始業時刻 までの到着余裕時間の項 も選択行動に大 きな影響を与える場合 がある.そ こで本研究では,
a) 所要時間の評価 については, 日々の変動 も考慮 にいれ表現す る.
b) 経路や出発時刻の選択行動は評価 された所要時間 (見積所要時間)をもとに,到着余裕 時間や遅刻時間 も考慮 して行われると考える.
とい う2項 目を考慮 し,以下 に示す2段構成で通勤選択行動モデルの定式化を行 った.
(1) 通勤者の見積所要時間の決定法
通勤者は所要時間の変動を考慮 し,通勤前にある特定 の経路,出発時刻における所要時間 の見積 を行 う.すなわち見積 った所要時間による損失費用 と見積値を上回る場合 の遅刻 な ど の損失 との トレー ドオフによ り所要時間の見積 りを行 う.
そこで所要時間が正規分布 に従 うとす ると,所要時間の見積 りは(2)式のLを最小 にす るよ うに行 うと考 えられる.
m
in L‑Pt(ts)+γF(?(ts)) β :時間価値 (円/分)
γ:見積 った値を上回った場合の損失 (円)
(2)
F(・):所要時間が tよ りも大 きくなってしま う確率
所要時間が正規分布N [も o・T]に従 うと仮定す ると,(2)式を 言で微分LdL/d7‑0とし, i(ts)‑千(ts)・6"ts)×¢ll(卑㌢) (3)
¢(・):標準正規確率密度関数
モ(ts):所要時間の平均値.(1)式 よ り求める である.ただ し,(β/γ)o・T≦0.399,β,γ>0
(3)式 より右辺第 2項 は通勤者が出発前 に見積 る安全余裕時間である. また β,γについて は(3)式 よ り(β/γ)として用い られているため,γの単位 を時間に し,βを1としてもさ しつかえない10).
(2)道路利用者の効用関数4) 7)
一般道路利用者が通勤行動を起 こす前 に見積 る出発か ら仕事開始 までに消費す るコス トに ついては,毎 日の通勤により出発から通勤先 までに見積 もる所要時間,遅刻 してしまった場 合 の損失からなるが,それ以外 にも到着か ら始業時刻 t。までの到着余裕時間 も通勤効用 に 影響を与 えていると考 えられる.そこで次のような効用関数が考えられ る.
vl正Its,t。)ニーat(ts)‑C,(ts) (4) vI仔Its,t。):時刻tsに出発 した,ODiの通勤者の見積効用関数値
t(ts):居住地か ら勤務先 までにかかる通勤者の見積所要時間
Cp(ts,t。):到着余裕時間, または遅刻時間に関す る消費 コス トで以下のように定義す る.
C。(ts,td)‑ b(td‑ta(ts)):t。≧ta(ts) C(ta(ts)‑td):td<ta(ts)
a,b,C:所要時間,到着余裕時間,遅刻時間に関す る不効用パ ラメータ ta(ts)‑ts+モ(t,)
なお,td≧ta(ts)は遅刻 しない場合であ り,t。<ta(ts)は遅刻 した場合を表 している.
(3)通勤効用関数による通勤行動モデル3)
通勤者は(4)式で表 され る効用が最大 となる出発時刻 と経路を選択す るが,個人の知覚の違 いなどにより常に合理的な選択行動を厳密に行 うとは限 らない.そこで通勤時の選択行動 は, 通勤行動により得 られる効用関数をランダム効用関数 とし,効用最大化理論によるロジ ッ ト
モデルを適用することによって説明す ることができる.
ここで出発時刻 に関す るスケールパ ラメータを,〟日とす ると,出発時刻 tsの選択確率 は 以下のように表す ことができる.
pl(tsItd)‑ eexX,Pllppll:vV,,gllt*S・,ttd.',]. (5, vI荏l*,t。)‑⊥ ln∑exp【pIIVIGlu,t。)]
JLn u
こうして(5)式 よ り出発時刻 の選択確率が得 られると,始業時刻 t。の場合 の時刻 tsを選択
交通状態 の不確実性 を考慮 した時差出勤策 について 63 す る通勤者 の発生量Ⅹl(ts,t。)は,対 象 とす る通勤 時間帯 の各始業時刻 の総発 生量 をⅩ (t。) とす ると次式で求め られる.
Ⅹ.(ts,t。)‑Ⅹ(t。)・PI(tslt。) (6) 4.所要時間の不確実性 と時差出勤政策問題の設定
朝の通勤交通では,通勤者 は始業時刻に間に合 うように居住地を出発するため,各会社 の 始業時刻がある時間帯 に集中している場合,通勤 による交通量が集中し,渋滞を引 き起 こす ことになる.そこで時差出勤により企業の始業時刻をず らす と,集中していた発生交通量が 分散 し,通勤時の所要時間 と到着余裕時間が短 くなることか ら,通勤者の所要時間や不効用 を低 くす ることが期待できる.
ところで実際の通勤では日々の交通状態 は変動 しているため,同 じ経路を同 じ時刻 に出発 しても日によってその所要時間は異なる.そこで所要時間の平均値をもとにした平均的 な効 用だけの評価による政策では,実際の通勤での所要時間の変動による予想外の損失 を受 けた 場合の評価を行 うことはできない.
そ こで政策の評価関数 としては,通勤者の効用を用い,交通状態の不確実性,す なわ ち所 要時間の変動による損失 も考慮 した評価関数の構築を行 う.
(1) 所要時間の不確実性
所要時間については上述の通 り,同一の経路 と出発時刻 を選択 しても交通状態の毎 日の変 動により一定 となっていない.所要時間の不確実性 については渋滞,非渋滞の2つの事象 に 分けて考える方法がある10). ここで所要時間の不確実性 について,次に示す状 態を考慮す る.
状態1:同 じ経路,時刻か ら出発 した車群でも,信号や他のODか らの車群 と.混合 し拡散す ることによって,到着時刻 に差が出て くる. このように,対象道路網の各 リンクの流出容量 の平均的な交通量処理能力によって所要時間がばらつ くような交通状態を状態1と定義す る.
この状態1の所要時間はN F,otT]の正規分布 に従 うもの とす る.
(2)評価関数 と政策の評価方法
ここでは時差出勤政策による始業時刻の設定や交通量が交通状態に与 える影響 も考慮す る.
そこで政策の評価関数 としては,通勤者の走行時間 と効用を用い,交通状態の不確実性,す なわち所要時間の変動によ‑る損失 も考慮 して(7),(8)式のような期待総走行時間,見積総不効 用を用いる.ただ し,始業時刻を変 えることによって生 じる各企業の損失については考 えず, 始業時刻の設定範囲については企業 より与 えられているものとす る.
ET(Ⅹ)‑冨冨芋Ⅹ(t。)・p(tstt。)
・ (
l t(ts,t.)p(tlts,td)dt〉 (7)EV(Ⅹ)‑∑∑tdts∑Ⅹ(r t。)・p(t,一td)・VGlts,t.) (8) t(・):条件 ・のもとでの所要時間
p(tl・):条件 ・のもとで,所要時間がtとなる確率
Ⅴ仔I・):条件 ・のもとでの見積効用関数値であ り,(4)式 よ り求めることがで きる.
p(tslt。):出発時刻の選択確率であ り,(5)式 より求めることができる.
ところで出発時刻の選択行動 の収束状態においては,見積 った所要時間 よ りも短い値が得 られても安全マージンを含めた見積値の決定を行 っているので,そのことによる効用の増分 は考 えない.そ こで,(7)式の確率変動である所要時間については次のように表す.
t‑(吾 …霊 (9,
よって(7)式で示 した評価関数は通勤者の見積所要時間 と,その見積値を上回った場合 の損失 も考慮にいれていることになる.
政策の評価 については,政策変動を時差出勤の始業時刻やそのときの時差出勤量 とし, こ の政策変動を操作 し,その変動 に対す る通勤者の出発時刻分布 を第3章で述べた通勤行動に より求める.そ してそのときの評価値を(7),(8)式 より求める.
5.仮想モデルによる数値計算例 と考察
本研究では,(7),(8)式で示 した評価関数を用い,時差出勤, フレックスタイム策の効果の 評価 を仮想的な道路網を用いて行 う.
(1) モデルの設定
図‑1で示 した仮想道路網で計算を行 う.
<通勤時間帯>7:00から9:20までのラ ッシュアワーを対象 とし,時間間隔は5分 を単位 とす る. また政策前のCBDの企業の始業時刻 は9:00とす る.
<総発生量>OD1, 2とも500台 とする.
<動的交通流モデルの諸条件> リンク1, 2の流出容量 と自由走行時間はそれぞれ95,105台 と15分,25分 とす る.
<パ ラメータの設定>見積所要時間に関す る(3)式のβ,γについては,γの単位を時間 とし β‑ 1,γ=35とお く.効用関数のパ ラメータについては,所要時間 と到着余裕時間 の ウエ イ トa,bを等 しく,遅刻 による損失をこれ らより大 きくした場合で,a‑0.08,b‑0.08,
C‑0.5とした. また,(5)式のスケールパ ラメータ〟1については,簡単 のため1とした.以 上のデータは操作性 を考慮 し仮想的に与えた ものである.
<通勤者の所要時間 と分散> ここでは,対象道路網の各 リンクの流出容量の平均的な処理機 能 による所要時間のばらつ きよ り生 じる状態1を考慮する.
状態1の平均所要時間 tlは式(1)より求め られ る. また,各出発時刻 に対す る到着時刻分 布がシ ミュレーシ ョンか ら得 られるので,分散についても求めることができる.
(2)数値計算の結果 と考案 (a)時差出勤策 の効果 について
数値計算については以下 のケースで計算を行 う.
ケース1:ノー ド1を出発す る通勤者の始業時刻を9:30にするか, ノー ド2を出発す る通 勤者の始業時刻を8:30に早め る場合.
ケース2:ノー ド1を出発す る通勤者の始業時刻を8:30に早めるか, ノー ド2を出発す る 通勤者の始業時刻を9:30にす る場合.
本数値計算では,固定 されている始業時刻を1つにしているので,時差出勤策 などで変更
交通状態の不確実性を考慮した時差出勤策について 65 される始業時刻が1通 りの場合,各 ケース中のそれぞれの時差出勤策は結果的に同 じ効果が あるので, ここではノー ド2か ら出発す る通勤者の始業時刻を変更することを考 える.各 ケ ースにより得 られた結果を表1 1,図‑3,4,5に示す.
まず,時差出勤策を行 う前の交通状態について見 る.図‑ 3, 4の中に描かれている時差 出勤前の出発時刻分布をみてみ ると,OD1,2の発生量 ピークはそれぞれ8 :05, 8 :20に 現れている.図‑ 4よ り所要時間分布 をみるとOD2の所要時間で40分以上あ り,発生量が 流出容量以内のときと比較 し1.6倍以上かかっている.す なわち, ノー ド1か ら発生 した ピ ーク交通量が ノー ド2を通過す るとき, ノー ド2か らの発生交通量 と重 な り,大 きな渋滞 を 引 き起 こしていることになる.
そこで渋滞を緩和するため, ケース1,2で示 した時差出勤策を行 うが,そのときの評価 値 を表‑1に示す.まず総走行時間についてみ ると, ケース2による始業時刻設定 の効果が 大 きい ことがわか る.図‑ 3よ り, このケース2の出発時刻分布 をみるとOD2の始業時刻 を30分遅 らせ たため,発生量 ピ‑ クが政策前 よ り35分ずれ て8 :55に現 れ てい る.また
OD1,2とも政策前 よ りも発生量 ピークが始業時刻 に対 して 5分短 くなってい る. これ は OD2の始業時刻を後 ろに大幅 にず らしたため,ODlの ノー ド1か らの最後 の発生交通が,
発生量 (台) 2CO 188
let‑1
140
128 1㈲
88 60 40 28
07:?:7:7:7:7:7:7:7:7:7:7:8:3:8:8:8:8:e:8:8:8:8:e.:q:‑i:
㈲0518152825383548455055㈹匂510152925383540455tZlFJ5㈹耶 出発時別
図‑3 ケース2の発生交通の時刻分布
秦‑ 1 ケース1, 2の評価関数値 ケース1 ケース2 期待総走行時間 41557.1 ̲41245.5
所要時間 (令 )
68
5 5
58 45 48 35 38 25 20
7:7:71.7・.7・.7:7:7 ..7'.7'.7:7・.8・.8・.8..81.8:3 '.3'.31.8'.8・.8・.8 1.勺 ..91.
CO8518152025303540455055000510152025勿 354¢45585 5eO 85
出発時別
図‑4 ケース2の実所要時間分布
発生量 (台) 2CO 189 168 140
1 2 0 l e o
∈物 60 40
ニ8
8
7:7:7:7:7:7:7:7:7:7:7:7:8:8:8:ら:8:8:ラ:3:8:3:3:3:つ:
㈹¢5101528=5:匂^J5484558551姻051815二や2E=,三835̀伯455055紳
出晃時刻
図‑5 ケース1の発生交通の時刻分布
ノー ド2を通過 し終 えるまでOD2からの発生交通量は小 さい. したがってODlと2の発生 交通がお互いに重 な り合 う量が少な く,通勤時間帯全体で所要時間が短 くなったためである.
所要時間分布 をみても,OD1,2とも政策前 と比較 して, ピーク時で25‑30%改善 されて いる.
ケース1についてみ ると,図‑ 5よ り,OD2の始業時刻 を8:30に早めたため発生量 ピ ークが7:55に現れている. このOD2のピーク発生量が ノー ド2を通過す るODlの発生交
通 に影響 を与 えている.すなわち トリップ長の長いODlの所要時間分布 はODl自身 の発生
量 ピークによる所要時間 ピークとOD2の発生量 ピークによ り生 じる所要時間 ピークの2つ のピークを持つ ことになる. よって,総走行時間 も大 きくなる.
このことよ り, トリップ長の短いODの始業時刻を早い時刻 に変更す る場合,長い トリッ プ長 に影響を与 えない ように,かなり早めの始業時刻に設定す る必要があることがわかる.
総不効用については, ケース1の方が小 さい. これは前述のようにケース2と比較 し, ケ
‑ス 1の方が所要時間が長 くなる出発時刻が多 く, しか も不効用の大 きい選択肢があ るため, ピーク発生時刻などのように不効用の小 さい選択肢 に, よ り多 くの通勤者が集 まる可能性が ある.すなわち小 さい不効用を受ける通勤者が多 くな り,見積総不効用が小 さ くなってい る.
(b) フレックスタイム政策の効果 について
フレックスタイム策 として,以下の始業時刻範囲を設定する.ただ し,通勤者の到着時刻 が始業時刻範囲内では所要時間のみが不効用 とな り,通勤者は所要時間が短 くなる出発時刻 を選択すると仮定す る.
ODlの通勤者について始業時刻を8:30‑ 9:00, 9:00‑ 9:30, 8:30‑ 9:30に設定 した場合をそれぞれケ‑ス3, 4, 5とす る.
OD2の通勤者 について始業時刻を8:30‑ 9:00, 9:00‑ 9:30, 8:30‑ 9:30に設定 した場合をそれぞれケース6, 7, 8とす る.
各 ケースにより得 られた結果を図‑ 6, 7, 8, 9,表‑ 2に示す.
まず,始業時刻範囲を30分 に設定 した場合 の交通状態について考察を行 う.図‑6よ り, ケース3の発生時刻分布についてみる.始業時刻が30分広がったため, この範囲内では到着 余裕 ・遅刻時間による損失がな くなり所要時間による損失のみが不効用 となる. したがって
発生量 (古)
oa851815甜 =5303540455855CO0510152825393540455855髄 出発時別
図‑6 ケース3の発生交通の時刻分布
発生量 (台) 20a
180
168 140 120 100
80 60 40 20
O7:7:7:7:7:7:7:7:7;7:7:7:8:8:8:8:8:8:8:8:8:8:8:8:9:
ObO51015:カ25383540455955aZI◎51015282530354045585500 出発時別
図1 7 ケース4の発生交通の時刻分布
▲
交通状態の不確実性を考慮した時差出勤策について 67 政策前 と比較 し,到着時刻の選択肢が多 くなったのでODlの発生量 ピークは低 くな り,全 体的になだ らかな分布 となる.ただ し, このケースのフレックスタイム設定では7 :40以降 の大部分の発生交通 はOD2の発生交通 と重なってい るため,ODlか らの発生交通 は政策前 の分布 と比較す ると,OD2の発生量 ピークを避 けるよ うな出発時刻選択が行われてい る.
ただ し,OD2の所要時間については大 きな改善 がないため,OD2の発生交通 は政策前 と比 較 し,大 きな変化はない.
ところが図‑ 7のケース4の場合には, ケース3と比較 し,OD2の ピークが終わ った後,
ODlのピークが現れているので,ODlと2の発生交通 が重 なる部分が少な く,全体的 に所 要時間が小 さい. このためODlの発生量 ピークは低 くな り,一定 の交通量 を発生す る時刻
も存在す る. またOD2のど‑クは5分後 ろにずれている.
図‑ 8より, ケース7の交通状態 もケース4の場合 と似ている.表‑ 2よ り,期待総走行 時間は最 も小 さく,見積総不効用 についてはケース4の次に小 さいが, この現象は時差 出勤 策の項で行 ったケース1と2の比較の考察を当てはめることができる.
表‑ 1と2を比較す ると,総不効用 については一般的にフレックスタイム制の方が小 さい 値を示すが, これは始業時刻の範囲内に到着 した場合 に,到着余裕,遅刻時間による不効用 がな くなるためである. しか し,総走行時間については時差出勤策の方が小 さい値 を示す.
これはフレックスタイム策の場合,始業時刻範囲内に到着できれば,所要時間の短い出発時 刻を選択す る.そのため, フレックスタ
イムにおける出発時刻が,他のOD交通 の効用の高い,すなわち所要時間の短い 出発時刻 と重 なると,混雑状態の解消 に 対す る効果が少な くなる場合があること を示 している.通勤者全体への効果を考 えると時差出勤 により強制的に制御 した 方が効果が大 きい場合がある.
次 に,始業時刻範囲を1時間に広げた 場合 について考察を行 う.図‑ 9より,
発生.重 (台) 2¢8 日監 1LJa 140 120 100
e匂 60 40 20 0
義‑2 ケース3‑ 8の評価関数値 ケース3 ケース4 ケース5 期待総走行時間 43345.9 41767.6 41060.9
ケース6 ケース7 ケース8 期待総走行時間 44219.1 41425.6 41023.3
発生量 (台) 200 180 168 148 120 leo 80
bO 48 20
0
7:7:7:7:7:7:7:7:7:7:7:7:弓;8:8:8:3:8:8:8:8:8:8:8:9:9: 7:7:7:7:7:7:7.・7:7:?:7:T:.!:≡:ラ:8:.3:8:守:3:3:3:3:3:?:
㈲ 85101528;5383540455855(泊05101528;5三83540455055(姻05 COO51015202538354Ct455955ul15101ミニ9こ538354045f855細
出発時刻 出対等丁・j
図‑8 ケース7の発生交通の時刻分布 図19 ケース5の発生交通の時刻分布
ケース5の よ うに フレ ックスの幅 を広 げると,始業時刻 の選択 の幅 も広 が り,通勤者 は
OD2の需要の影響 を十分避 けるように通勤できる. よってODlの需要 ピークもさらに低 く なっていることがわかる.表‑2より,総走行時間,総不効用 ともに時差出勤策 よりも効果 が高 くなっている.
フレックスタイム策の場合ある程度,始業時刻範囲を広げないと全体的な混雑解消効果 は 現れない ことを示 している.
6. お わ り に
本研究では,通勤交通 の経路選択 と出発時刻同時推定モデルを用いて,混雑緩和策の一つ である時差出勤政策 の効果の評価を行 った. ここでは毎 日の所要時間の変動の学習を通 し, 経路 と出発時刻 などの通勤行動が行われるとしてモデルの構築 を行 った.そして,同 じ経路, 時刻か ら出発 した車群でも,信号や他のODか らの車群 と混合 し拡散す るため,到着時刻に 差が出て くるので,そのことによる所要時間の分散 も考慮 した.
また,時差出勤の効果を測 るための評価関数 としては,通勤者の所要時間 と効用を用い, 交通状態の不確実性,すなわち所要時間の変動 による損失 も考慮 した期待総走行時間 と見積 総不効用を提案 した.そ して時差出勤策や フレックスタイム策 の効果について,い くつかの 数値計算例を行い,以下のような結論が得 られた.
(1) 走行時間が小 さくても,必ず しも不効用が小 さい とは限 らない.客観的な混雑緩和,す なわち所要時間を小 さくす ることに重点を置 くならば(7)式による評価を重視 し,所要時間 だけでなく到着余裕 ・遅刻 などの通勤者の価値観 に重点を置 くならは(8)式による評価を重 視す ることになる.
(2)時差出勤策を行 う場合, トリップ長 の短いODの始業時刻を後 ろにもっていった方が効 果が大 きい. また, トリップ長の短いODの始業時刻を早い時刻に変更する場合,長 い ト
リップ長に影響を与 えないように,かな り早めの始業時刻に設定す る必要がある.
(3) フレックスタイム策 の場合,ある程度始業時刻範囲を広げない と全体的な効果は現れな い.始業時刻設定範囲によっては,時差出勤 により強制制御 した方が効果が大 きい場合が ある.
今後の課題 としては,
(1) 所要時間の不確実性 について,通勤者の気 まぐれな経路 ・出発時刻 の選択,事故・天候 な ど予測不可能 な事象により所要時間が増大す る状態についても考慮 した数値計算を行 う.
(2)OD,経路をも う少 し混雑 にし,始業時刻 を複数与 えた場合の時差出勤策 などの効果に ついて分析す る.
参 考 文 献
1) 飯田恭敬 :交通管理の‑イテク化 と都市交通計画,都市問題研究,Vol.41,No.12,pp.3‑ 15,1989
2) 定井,新矢 :地方中核都市における 「時差出勤」と 「相乗 り通勤」のフィージビt)ティ‑研 究,運輸と経済,第43巻,第11号,pp.64‑82,1983
3) 加藤,門田,高田 :時差出勤による交通需要の時間的分散政策に関する基礎的分析,土木計画
交通状態の不確実性を考慮 した時差出勤策について 69 学研究 ・論文集,No.6,pp.185‑192,1988
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5) BEN・AKIVA,PALMA,KANAROGLOU:EffectsofCapacityConstraintsonPeak・Period Tra爪ccongestion,Transpn.Res.Record1085,pp.16‑26
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Ⅳ,1990年10月
10)飯 田恭敬 ,内田 敬 ,泉谷 透 :旅行時間変動 による損失を考慮 した適正経路分担交通量 ,土 木計画学研究 ・論文集 No.8,pp.177‑184,1990年11月
ll)飯田恭敬 ,柳沢吉保 ,内田 敬 :通勤交通の経路選択 と出発時刻分布 の同時推定法 ,土木計画 学研究 ・論文集,No.9,pp.93‑100.1991年11月