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構造 用合金鋼 ( SNCM‑ 8 ) の Ms 点 に 及 ぼ す 加 工 熱 処 理 の影 響 *

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(1)

構造 用合金鋼 ( SNCM‑ 8 ) の Ms 点 に 及 ぼ す 加 工 熱 処 理 の影 響 *

小林義一 片山修一

1. 緒

筆者 らは,構造用合金 鋼 ( S NCM‑ 8 ) の恒温変態曲線 ( S曲線)が加工熱処理に よってど のように変化す るかについての研究を行な ってお り,前報

(1)

において, ニッケル ・クロム ・ モ リブデン鋼の S曲線は加工熱処理によって短時間側に移行 し, これは準安定 オーステナイ

ト領域での塑性加工に よって転位密度が高 くな り,かつ転位の周辺に炭化物が析出 しやす く なるためであることを報告 した.今回は,加工熱処理を効果的に行な う上で , S曲線のパー ライ ト及びべ‑ナイ ト変態の変化とともに重要な意味を もつ マルテンサイ ト変態の Ms 点が, 加工熱処理に よってどのように変化す るかについて実験 したので,その結果を報告す る.

2 . 試料と実験方法 2 ‑1 試 料

市販 されている直径 1 9 mm の Ni ‑ Cr ‑ Mo鯛 ( S NCM‑ 8 ) の丸棒を, 熱間鍛造 で 直径約 8 mm に加工 し,その後 8 5 0 o C で 3 0 分間焼なましをしてか ら,直径 5 mm 長 さ 5 r J m に丸

衣 1 試料の化学分析値 ( %)

P I S Ni I Cr 0 . 0 2 0 1 0 . 0 2 1

削 りして試料 とした.試料の化学分析値を表 1 に,また試料 の盛 恵子朗徴鏡組織を写真 1

に示す. L 1‑ I

写真 1 に よると,試料の組織 はパーライ トとフェライ トか らなち・ てお り,細長い棒状析出 物はセメンタイ ト ( Fe S C) で,粒状析出物は Cr と Mo の炭化物 ' : ( CF 2 ' s C6 ,Mo 2 C)である t ' 通 われ る.また同写真左上隅に示 した電子回折像か ら・. ヽ 地碑 晶鹿 鴨 坤 方格子であ ることがわかる.

2 ‑2 実験方法 ● : . ・ 一・ ・ ● ● .p ■ ■

.

図 1 に示す ように,試料は 8 5 0 o C で 3 0 分間加熱 してオー ステナイ ト化 してか ら i5 5 0o C に

.* 蒜

琵月助最 悪今野 会挿 信喝 滞 伽 に墾 ㌍ 発考駆 3 '

***機 械工学奉p 教授

原稿受付 昭和 5 3 年 9 月 3 0 日

(2)

3 0

長野工業高等専門学校紀要 ・第

9

時 間

1

実 験 方 法

保 持 して あ る ソル ト/1ス に 3秒 間 入 れ , た だ ち に 同温 度 に 加 熱 して あ る加 工 装 置 で 0% , 20%

及 び 40% の加 工 (高 さの減 少 率 ) を 加 え て か ら, 250‑ 300oC の 間 の5oCお きに 保 持 して あ る鉛 浴 に急 冷 して 5秒 間 保持 した . そ の後 , た だ ち に 400oCに保 持 して あ る別 の ソル トバ スで 10秒 間 焼 も ど して の ち , 2oCの 水 に 焼 入 れ した . また , 比 較 の た め に , 普 通 焼 入 れ の 場 合 , す なわ ち850oCで 30分 間 加 熱 後 た だち に 250‑ 300oC の 間の 5oC お き に保 持 してあ る 鉛 浴 に 急 冷 し 5 秒間 保 持 し た 後 , 400oC に 保 持

し て あ る ソ ル ト/;ス で 10秒 間 焼 も ど し て の ち , 2oC の 水 に 焼 入 れ し た 試 料 も 作 成 し た . な お , こ の 実 験 に お い て , 250‑ 300o C お き に 保 持 し て あ る 鉛 浴 の 温 度 は M s 点 に 直 接 影 響 を 与 え る の で 極 め て 重 要 で あ る . そ の た め , 本 実 験 で は , 検 定 済 の 水 銀 温 度 計 を , 鉛 浴 の 試 料 が 入 る 近 く に 入 れ て お き , 試 料 を 鉛 浴 に 入 れ た 瞬 間 に 水 銀

度 計 の 目盛 を読 ん で , その 値 を 急 冷 時 の 温 度 と し た . ま た , 塑 性 加 工 の

度 と して ほ ,筆

らが Ni‑Cr‑M o 鯛 (SNCM ‑8) で 求 め た S 曲 線 の 湾 の 部 分 の 550oC を

採用し,加工

装 置

詳 紳 こつ

い てはす でに前 轍( 1 )で報告

し た .

以上のようにし て られ た試 料 の場 面 をエ メ リーベ ーパ及 び

バ フ 仕 上 げ 後 , 5 % ビ ク リ /

表2 ソル ト / ミ ス及び鉛浴の組成 酸 アル コール溶液 で腐食

し , 光 学 顕 微 鏡 組 温度

( 。 C) t 溶 融 点 ( 。 C) l 組 成 ( %) 織 を調べ て M s点を決定 した . また ,

一 部

の試 料 につい ては, 日本電子製 1 00 ‑C型電

子顕微鏡 を使用 し,加速電圧 1 00kvで透過

電子顕微鏡 組織 観察及び電子 回折 を行 な っ

た. このときの薄膜試料 の作成は,試料か

ら高速 切断 機 で約 0.8mm の板 を 切 り出 し,

耐水研摩紙 でほぼ0.15mm まで薄 くしての

ち,過塩 素酸50ml ,酢酸950m】の混 合液 を

(3)

構造用合金鋼

(SNCM

‑ 8)の Ms 点に及ぼす加工熱処理の彩管 31

使用 し,液温 1 3oC ,電圧 60Vで電解研摩 して作成 した.なお,木実験に使用 した ソル トパ ス及び鉛浴の組成を表 2 に示す .

3 . 実 験 結 果

実験 に よって得 られた顕微鏡組織 の うち代表的な ものを写英 2 ‑写真 5 に示す .写其 2 は 8 50oC で 3 0 分間保持 して オーステナイ ト化 してのち, 55 0oC の ソル トバスに 3 秒間保持 し てか ら, Ms 点近 くの各温度に保持 してあ る鉛浴に急冷 して 5 秒間保持 し,ただちに400 o C

に保持 してあ る別の ソル トパスで1 0 秒間焼 もどしを した のち水焼入れ した試 料 の麟徴鏡 組織 を示す .また,写真 3 ほ オーステナイ ト化後,55 0oCの ソル ト

スに 3 秒間 陳持 し,た だち に20%の加工を加 えてのち , Ms 点近 くの鉛浴に急冷 してか ら ,400oCに焼 もど した試 料 の 顕微鏡 組織 であ り,写真 4 ほ オーステナイ ト化後,55 0oCで 3 秒間保持 し,ただ ちに40%の 加工を加えてのち, Ms 点近 くの鉛浴に急冷 してか ら ,4 00oC に焼 もどした試料 の顕微鏡 組 織 であ る. また,写真 5 ほ普通焼入れの ときの Ms 点を調べ るための もので,オ ーステナイ ト化後 ,途中の温度で保持す ることもな く,また加工 も加 えないで,ただちに Ms 点近 くの 鉛浴に急冷 してか ら ,400oC に焼 もどした試料 の顕 微鏡 組織 であ る. これ らに よると, オー ステナイ ト化後, 5 5 0oCで 3 秒 間保持 して, 加工を加 えないで急冷 した 試料の顧徴鏡 組織 ( 写真 2)は,27 3oC 以上 の鉛浴に急冷 した ときは全 体が マルテ ンサイ トであ るが,2 67o Cの 鉛浴に急冷 した ときは一部分に焼 もどし炭 化物が認 め られ る. この炭化物 は,急冷に よって で きた マルテ ンサイ トが焼 もどされ て,焼 もどし トルースタイ トに変わ ったためであ り,そ の本質 は ご く微粒 のセ メンタイ トと フェライ トとの混合状態 であ る.そ して, これ よ り低 い

3

0

0 0C 2 8 00C

2730C

2 9 00C

2810

C 2 7 0oC

隣 謂 ≒ 語

5

1

!

∴ i ∴ \ ∵ . ≡ ≡ 三

2 6 7 0C 2 6 0 0C 2 5 0 0C

2670

C

2610

C

255oC

1・

‑ ■

写真

2

8 5 0 oC

x

3 0 分間保持後.5 5 0 oC で 3 秒間 保持 してのち急冷 したときの温度と顕微 鏡組織 ( 4 0×5)

写真

3

8 5 0 oC x 3 0 分間保持後,5 5 0 oC で3 秒間

保持 してのち 2 0 %加工 して急冷 した とき

の温度 と顕微鏡組織 ( 4 0×5)

(4)

3 2

長野工業高等専門学校紀要 ・節 9号

2 9 5 0C 2 8 1 0C 2 7 1 0C 3 5 0 0C 2 9 20C 2 8 4 oC

2 6 60C 2 61 0C 2 5 60C 2 7 6 0C 2 61 0C 2 5 0 oC

竃 璽 転

写真

4

8 5 0 oCx3 0 / / 1 m 保持後,5 5 0oC で3 秒ド り 保持してのち 4 0 % J ) nt して急冷 したとき の温度と顕微鏡机織 ( 4 0×5)

.

. :二 二 h i . . . 吏 凝

写真

5

8 5 0 oCx3 0 分間保持後,ただちに急冷し たときの脱皮と野徴銃組織 ( 4 0×5)

温度 の鉛浴に急冷 した ときは焼 もどし炭化物が多盛に認め られ,その畳は温度が低いほ ど多 くな っている.以上 のことか ら, この場合の Ms 点は次の よ うにしてわか る.す なわ ち,汁 ーステナイ ト化後 2 73oC 以上 の鉛浴に急冷 した ときの組織 はオーステナイ トであ り, これを 400oC に焼 もどして も組織に変化は生ぜず,その後 の水焼入れに よって全体が マルテ ンサイ トにな ったので, これ らの温度は Ms 点以上 である.しか し,2 6 7oC以下の鉛浴に急冷 した ときは,その組織 がオーステナイ トと一部分のマル テンサイ トとか らな り, これを 400oCに 焼 もどす と,オーステナイ トの部分は,その後の水焼入れに よってマルテ ンサイ トにな るが, マルチ ソサイ トの部分か らは炭 化物を析 出 して,その結果焼 もどし トルースタイ トにな った ので, これ らの温度は Ms 点以下である.そ こで, この場合の Ms 点は焼 もどし炭化物が析 出し始めた ときの温度 とい うことにな り,それは 2 6 7 o Cである.

同 じように して,他の場合の Ms 点を調べ てみ ると,オーステナイ ト化後,550oCで 3 秒 間保持 してのち2 0%加工 した とき ( 写真 3 )紘,2 81oC以上に急冷 した ときは,40 0oCに焼 もどし後の水焼入れに よって,全体が マルテ ソサイ トにな っているが,2 7 0oC に急冷 した と きは焼 もどし炭化物が析 出 し始め,2 67oC 以下に急冷 した ときは多量の焼 もどし炭化物が認 め られ る. よって, この場介の Ms 点は2 7 0oCであ る. また.オーステナイ ト化後,55 0oC で 3 秒間保持 してのち40%加工 した とき ( 写真 4 )紘,2 8loCに急冷 した試料に焼 もどし炭 化物が認め られ,それ以上 の温度 では炭化物は認め られないので, この場合の Ms 点は2 8lo

Cである. さらに,オーステナイ ト化後,55 0oCで保持す ることもな く,また加工 も加 える

こともせず にただちに 急冷 したとき ( 写真 5 )紘,2 92oC以上では 炭化物は 認め られず,

2 84oC以下 で焼 もどし炭化物が認め られ,温度が低 くなるにつれて炭化物は多 くなってい る.

(5)

構造用合金鋼 ( SNCM ‑ 8)の Ms 点に及ぼす加工熱処理の影響 3 3

よって, この場合の Ms 点は 2 84oC と 2 92oC の間に あ り,焼 もどし炭化物が析 出 し始め る温度 を外接 に よって求め ると 2 8 8oC とな る.

図 2 は,以上 に よって求め られた Ms 点が,加工 度 の大小 と中間温度 ( 5 50oC) での保持の有無に よ って, どの ように変わ るかを示 した もので,国中の

◎ 印は普通焼入れの場合の Ms 点であ る.図 2 か ら, オーステナイ ト化後焼入れす る と き に, 中間温度 ( 550oC) に‑たん保持す ると Ms 点は下 が り, ま た,準安定 オーステナイ ト領域 で塑性加工 を加え る と Ms 点は上が り,; u l l 工皮が大 きいほ ど, Ms 点 が 上が る程度 も大 き くな ることがわか る.

300

290

82

(a.)tq

ByV

三 二 二

加 工 度 (%)

図 2 Ms点に及ぼす加工熱処理 の彫智

4. 考 察

Ni ‑Cr ‑Mo鯛 ( SNCM‑8) の Ms 点は, 準安定 オーステナイ ト領域 で 塑性加工 を加 える と上 が り, またオーステナイ ト化後,焼入れす る前に準安定 オーステナイ ト領域 に‑ た ん保

写真 6 オーステナイ ト化後 2 9 0 oC の鉛浴に急冷 し 5 秒間陳持後 ,4 0 0 oC で 1 0 秒間 焼もどした試料の電子顕微鏡組織

( a) 普通焼入れ

O ) ) 5 5 0 oC で 3 秒間保持後 2 9 0 oC に急冷

( o ) 5 5 0 oC で 3 秒間扶持後 2 0 % 加工 して 2 9 0 oC に急冷

( a ) 5 5 0 oC で 3 秒間保持後 4 0 % 加工 して 2 9 0 oC に急冷

(6)

3 4

長野工業 高等専門学校紀要 ・第9号

写真 7

オ ーステナ イ ト化後

2 68oC

の鉛浴 に急冷 し

5

秒 間保持後

,40 0oCで1 0

秒 間焼 もど した試料 の 電子野徴鏡 組織

(a) 普通熱入れ

( 也 ) 5 50oCで 3

秒 間保持後

2 68oC

に急冷

持 して, 焼入 れを中断す ると, Ms 点は下が るこ とが木実験の結果 か ら 明 らかに なっ た.そ こで, この よう な ことが, ど の ような理由に よって 生ず るか を確 かめ るために,各試料 の透過昭 子顕 微鏡組織観察 と電子回 折を行な った .その一例を写貞 6‑

写真 7に 示す .写 貞 6ほ85 0o Cで30 分間加熱 してオ ーステナイ ト化後, 中間温度 ( 5 5 0o C)で各種の処理を してのち, 2 9 0oC の鉛浴に急冷 し5 秒間保持後, 4 0 0o Cで1 0秒間焼 もど してのち,水焼入れ した試料 の透過 電子顕教鏡組織 と電子回折像 で,( a ) は中間温度での保持がな く, また加 工 も加えない普通焼入れの場合,仲 はオーステナイ ト化後,5 5 0o C で 3 秒 間保持 してのち,加工を加えない

で2 9 0o Cに急冷 した

合,( o ) はオー ステナイ ト化後,55

0o

C で 3秒間保 持 してのち2 0%の加工を加えてか ら 29 0o Cに急冷 した場合,そ して( ( I ) は オーステナイ ト化後,55 0o C で 3秒 間保持 後4 0%の加工を加 え て か ら 29 0o Cに急冷 した場合である. これ に よると,オーステナイ ト化後,55 0o Cの中間温度に保持せず,また加工 も加えない で急冷 した ときは, ラス状 マルテ ソサイ トが認め られ るが,オーステナイ ト化後,55 0o C に 3秒間 保持 してのち急冷 した ときは,写黄 6( 叫の右上部に示す制限視野電子回折像か ら明 らかな残 留オーステナイ トの存在が認め られ る.また,準安定 オーステナイ ト領域で塑性加工を加 え ると,写 真 6の( 0 ) 及び( d) にみ られ るように,残留オーステナイ ト は少な くな り,かつ密度 の 高い転 位が多 く認め られ 加工度が2 0%のときよ り 40 % のときの 方が転位密度は高 くな って い る.そ して,電子回折像か らも加工 の影響がは っき り現われて いる . これ らのことに よ り オーステナイ ト化後,準安定 オーステナイ ト領域 で塑性加工を加える と M s点が上が る理 由 は,加工に よって転位密度が高 くな り,かつ転位の周辺に炭素が凝集 しやす くなるため,也 の炭素濃度が低下 して,その結果 Ms点が上が るものと思われ る.

一方,口 村 ( 2 )に よると,各種合金鋼のマルテ ンサイ ト変態は,数%以内の加工では変態が

促進す るが,それ以上の加工ではかえ ってオーステナイ トが安定 し変態がお く れ,M s点が

下が り, この現 象は合金の積層欠陥エネルギーと深 い関係があるといわれてい る . しか し,

本実験では , 40% までの加工に よって Ms点は明 らかに上昇 したが,これは , M s点 に及ぼ

(7)

構造用合金鋼 ( SNCM ‑ 8 )の Ms 点に及ぼす加工熱処理の影響 3 5

す加工の影響が,合金元素の種炉,加工温度,加工速度,加工 までの保持時間などに よって 変化す ることに原因があると思われるので,詳細は今後の検討にゆだねたい.

写真 7 は 8 5 0oCで3 0 分間加熟 してオーステ>ィ ト化 してか ら ,26 8oCの鉛浴に急冷 して 5 秒間保持後,40 0oCで1 0 秒間焼 もどしてのち水焼入れ した試料の透過電子国教鏡組織 で ,( a ) はオーステナイ ト化後,中間温度で保持せずにただちに急冷 した場合,そ して,抑 よオース テナイ ト後,5 5 0oC で 3 秒間保持 してのち急冷 した場合である. これに よると,( a ) の中間温 度に保持 しない場合は,多数の焼 もどし炭化物が認められ るが,O j ) の中間温度 ( 55 0oC)に 保持 した場合は,マルテンサイ ト葉 と残留オーステナイ トのみで,炭化物は認め られない.

このことか ら,オーステナイ ト化後焼入れす るまえに,中間温度 ( 5 5 0oC)に‑たん保持す ると,オーステナイ トの安定化が起 ることがわか る.ノ

荒木 ら

(

a

)

は階段焼入れや中断焼入れに よって冷却を中断す ると,オーステナイ トは安定化 し. Ms 点は下が り,残留オーステナイ トは多 くなるとのべているが,本実験においても, 85 0oCx3 0 分間のオーステナイ ト化後,ただちに焼入れ した ときの Ms 点が2 8 8oCであるの に対 し,オーステナイ ト化後,5 50oCで 3 秒間保持 したときの Ms 点は2 6 7oCとなってお り, 両者の透過電子国教鏡組織観察か ら,中間温度 ( 5 5 0oC)に保持す ることに より,オ‑ステ ナイ トの安定化が起 っていることが確認 された.

5 . 結 論

Ni ‑ Cr ‑Mo鋼 ( SNCM‑8 )を8 5 0oCで30 分間加熱 してオーステナイ ト化後,準安定 オース テナイ ト領域の5 5 0oCで,加工度 0%,20 %及び40 %の塑性加工を加えた ときの Ms 点 と, 55 0oCの中間温度での保持の有無に よる Ms 点の変化を顕微鏡組織観察に よって調べた とこ

ろ,次のことがわか った.

( 1 ) 準安定オーステナイ ト領域で 加工を加 えると, マルテンサイ ト変態が 誘発 されて, Ms 点は上がる. この場合,加工度 0%のときの Ms 点が2 6 7oC であるのに対 し,加工度2 0

%のときは2 7 0oC,加工度40%のときは28l oCとな り,加工度が大 きくなるにつれて Ms 点 も高 くなった. これは,加工度が高 くなるほど転位密度が高 くな り,かつ転位の周辺に炭素 が凝集 しやす くなるため,地の炭素濃度が低下 して,その結果 Ms 点が上が った ものと思わ れ る.

( 2 ) オーステナイ ト化 してか ら,ただちに焼入れ した ときの Ms 点が2 8 8oCであるのに対 し,オーステナイ ト化後,準安定オーステナイ ト領域に‑たん保持 して,焼入れを中断 した ときの Ms 点は 2 6 7oCとなったが,これは,中間温度に保持す ることに よってオーステナイ

トの安定化が起 ったためであると思われる.

参 参 文 献

( 1 ) 小林義一,片山修一 :長野工業高等専門学校紀要,第 9 号 ( 1 9 7 8 ) Ip. 1 7 . ( 2 ) 田村今男 :日本金属学会会報,第 2 巻 ( 1 9 6 3 ) 第 8 号. p.4 2 6 .

( 3 )荒木透ほか :鋼の熱処理技術 ,( 1 9 6 9 ) ,p.5 9 .

参照

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