19
わが国の公益企業の範 囲
(4)‑各種法規に散在 しているものを整理 して‑
藤 田 正 一
目 次
〔1〕は じめに
〔2〕 公共の利益 とい う目的のために私権を規制 している法律 (1)土地収用法
(2)独 占禁止法
〔3〕 一般公衆の需要に供す るとい う目的を明示 している法律 (1)労働関係調整法 (以上,第21巻第2号)
(2)個別事業法 (以下,第22巻第2号)
① 公衆通信事業系統 1.郵便法 2.電気通信事業法 3. 日本電信電話株式会社法 4.国際電信電話株式会社法 5.電波法
6.放 送法
7.有線 テ レビジ ョン放送法
② 市民生活必需用役(財)供給事業系統 (以下,第23巻第2号) 1. 電気事業法
2.電気事業争議行為規制法 3. ガス事業法
4.熱供給事業法 5.水道法 6.下水道法
③ 公衆運輸事業系統 (以下一本号) 1. 鉄道事業法
2. 日本国有鉄道改革法
20
3.旅客鉄道株式会社及び 日本貨物鉄道株式会社に関す る法律 4.新幹線鉄道保有機構法
5. 日本 国有鉄道清算事業団法 6.帝都高速度交通営団法 7.軌道法
8.道路運送法 9.通運事業法 10.海上運送法 11. 内航海運業法 12.港湾運送事業法 13.航空注
〔4〕 公営を基盤 としなが ら公共 の福祉 の 目的を明示 している法律 (以下 ,次号) (1)公共企業体等労働関係法
(2)地方公営企業法 (3)地方公営企業労働関係法
〔5〕むすびにかえて
③ 公衆運輸事業系統
1.鉄道事業法 (昭和61年12月4日公布,法律第92号,昭和62年4月1 日施行)
この法律は, 日本国有鉄道 の経営形態 の抜本的な改革に基づいて廃止を余儀 な くされた 日本国有鉄道法や地方鉄道法等 の鉄道事業等に関す る法律に代替す るものとして,制定 された法律であ る。すなわ ち,同法の 目的は,同法第1条 に明示 されているように, 「鉄道事業等 の運営を適正かつ合理的 な もの とす る ことに よ り,鉄道等 の利用者の利益を保護す るとともに,鉄道事業等 の健全な 発達を図 り, もって公共の福祉を増進す ること」を 目的 としている。
しか るに,同法第1条は鉄道事業等の用役を公衆 の用に供す ることに よって, 公衆 の利益を保護 し,公共 の福祉を増進 させ ることを明示 している法律であ り, 公益事業法の意味を十分 に有 している。 また,同法第1条を考察す る限 りにお いて,同事業は公益事業 としての意味を十分に有 している。
21 同法第2条第1項では,鉄道事業 として,第1種鉄道事業,第2種鉄道事業, 第3種鉄道事業を明示 し,同条第2項以下では,鉄道事業 の業務内容を区分 し ている。
第1種鉄道事業 とは,他人 の需要 に応 じ,鉄道 に よる旅客又は貨物 の運送を 行 う事業であ って,第2種鉄道事業以外 の ものをい う。 (同条第2項)
第2種鉄道事業 とは,他人の需要に応 じ, 自らが敷設す る鉄道線路以外 の鉄 道線路を使用 して鉄道 に よる旅客又は貨物 の運送を行 う事業をい う。 (同条第
3項)
第3種鉄道事業 とは,鉄道線路を第1種鉄道事業を経営す る者に譲渡す る目 的を もって敷設す る事業及び鉄道線路を敷設 して当該鉄道線路を第2種鉄道事 業を経営す る者 に専 ら使用 させ る事業をい う。 (同条第4項)
ここで,上記に示 された鉄道事業 としてのそれぞれ の事業 内容の全てに公益 事業 としての地位を与 えることが可能か否かを考察す る。 また,上記の第2条 の各項が公益事業法 としての意味を有す るか否かを も併せて考察す る0
周知の ように,公益事業 のサ ービス供給の本質は,「公衆の用に供す ること」
と 「公共 の利益に資す ること」である。 しか るに,前述 した同法第1条に,秩 道事業は 「利用者 の利益を保護す ること」 と 「公共 の福祉の増進」を 目的 とす る事業であると明示 され ていることか ら,同事業は公益事業 の本質の一つであ る公共 の利益に資す ることに合一す る。それゆえ, もう一つの本質である公衆 の用に供す るとい う旨の ことが,同法第2条の各項 に明示 されているか否かに よって,それぞれの事業内容が公益事業 に合一す るものであ るか否か とい うこ とになる。
第2条第1項は,鉄道事業の構成を明 らかに した ものであ り,鉄道事業 の在 り方や内容を示 しているものでないので,公益事業法 としての意味を有 してい ない。
同条第2項 ・第3項は,他人の需要 に応 じて旅客や貨物 の運送を行 うことを
22
明示 していることか ら,第1種鉄道事業 も第2種鉄道事業 も公衆 の用に供す る 事業であることに合一 している。それゆえ,第1種 ・第2種鉄道事業 とも公益 事業 の意味を十分に有す るし,同条第2項 ・第3項 は,公益事業法 としての意 味を十分に有 している。 しか るに,経済性を指導原理 として,合理的,継続的, 統一的,計画的に旅客や貨物 の運送を行 う第1種鉄道事業や第2種鉄道事業 の 個別生産経済体は,公益企業である。
同条第4項 に明示 されている第3種鉄道事業は,第1種鉄道事業や第2種鉄 道事業 の‑‑ ド部門 (設備装置)を取 り扱 う事業であるが,直接に他人の需要 に応 じて旅客や貨物を運送す るとい うソフ ト部門 (サー ビス供給活動)を取 り 扱 っていない事業 であ る。それゆえ,第3種鉄道事業 は公益事業 とはいえない し,同事業 の個別生産経済体は,公益企業 の カテ ゴ T)‑ではない。 また,当然 の ことなが ら,同条第4項 は公益事業法 としての意味を有 していない。
同法の中には,上記 の第1条,第2条第2項 ・第3項 の他に,下記 の ような 条項 も公益事業法 として指摘 され る。
㊦ 鉄道事業法第 5条 (鉄道事業 の免許基準)
第5条第1項 は,鉄道事業 開業 申請者に対す る免許基準を明示 している法律 であ る。 この基準は,以下の ような内容である。
i)その事業 の開始が輸送需要に対 し適切 な ものであること。
ii)その事業 の供給輸送力が輸送需要量に対 し不均衡 とならない ものであ るこ と。
iii)その事業 の基本計画が経営上及び輸送の安全上,適切 な ものであること。
iv)その事業を適切に遂行す るに足 る能力を有す るものであること。
Ⅴ)その他その事業 の開始が公益上必要であ り,かつ適切 な ものであること。
また,同条第2項 は,運輸大臣が第3種鉄道事業を免許す る時は,第3種鉄道 事業 に係 る第1種鉄道事業又は第2種鉄道事業 と同時に免許 しなければならな い ことを,免許基準の内容 として明示 している。
23 そ こで,上記 の基準 内容の意味 と公益事業法的 な意味 との関連性 につ いて考 察す るな らば,次 の よ うな ことが指摘 され るであろ う。 同条第 1項 のi) の基 準は,公衆 の用に供す る ことを意味 してい る。
ii)の基準は,同一地域 内の無競争に よって,破滅的競争が回避 され て需要 者 の利益が保護 され ることを意味 している。
iii)とiv)の基準は,安定 した計画の下におけ る継続的 サ ー ビス供給が需要 者 の利益保護 に合一す ることになることを意味 してい る。
V)の基準は,鉄道事業 のサ ー ビス供給が公共 の利益 に合一す ることを意味 している。
しか るに,上記 の よ うな関連性か ら指摘 され る ように,同条第 1項 の各基準 は,公益事業法 としての意味を十分 に有 してい る法律であ るといえ よう。
一方,同条第2項は,第3種鉄道事業 の免許取得時に関す る内容であ り,公 益事業法 としての意味を有 していない法律であ る。
① 鉄道事業法第16条 (運賃 ・料金 の認可制 と基準)
同法第16条は,鉄道運送事業者 (第1種 ・第2種鉄道事業者) の旅客又は貨 物 の運賃及び料金 につ いての認可制 と認可基準を明示 してい る法律である。
同条第1項は,旅客又 は貨物 の運賃及 び料金 について主務大 臣に よる認可制 を定め ている法律であ る。 しか るに, この認可制か らは,鉄道運送事業者が法 外 な運賃や料金 の負担を一般需要者 に科す ことな く一般需要者 の利益が遵守 さ れ る ように,行政 当局にチ ェック機能を与 えてい るとい うことが理解 され る。
同条第2項 は,前項 の認可基準を下記の よ うに明示 してい る。
i)能率的 な経営 の下 におけ る適正 な原価 を償い,かつ,適正 な利潤を含む も のであること。
ii)特定 の旅客又は荷主 に対 して不当な差別的取扱 いをす るものでない こと。
iii)旅客又 は貨物 の運賃及 び料金を負担す る能力にかんがみ,旅客又は荷主が 当該事業 を利用す ることを困難 にす るおそれがない ものであ ること。
24
iv)他 の鉄道運送事業者 との間に不当な競争を引 き起 こす こととなるおそれが ない ものであ ること。
i)は,需要者 の利益が保護 され るように,鉄道運送料金上,原価主義が採 用 されなければな らない ことを明示 している。
ii)は,一般 の需要者が公平にサ ー ビス供給 され ることを保障 し,一般需要 者の利益が保護 され るべ きであ るとい う内容である。
iii)は,需要者に法外 な運賃や料金が科せ られない ように,需要者 の利益が 保護 され ることを明示 している内容である。
iv)は,同一地域 内での破滅的競争が回避 されて,一般公衆 の用に供す るこ とと,需要者 の利益が保護 され ることを意味 している。
同条第3項 は,鉄道運送事業者が運輸省令で定め る料金を定め る場合,その 旨を主務大臣へ届け出 しなければならない ことを明示 している法律である。 し か るに,同項は,需要者に法外 な運賃や料金が科せ られ ない ように,需要者の 利益が保護 され ることを明示 している法律である。
同条第4項は,鉄道運送事業者が,健全経営 とゴーイング ・コソサー ンの可 能な範 国内で,一定 の条件を定めて,運賃や料金の割引をす ることが可能であ るとい う法律であ る。 しか るに,同項 には,一般公衆の用に供す ることの意味 が包含 されている。
か くして,第16条の第1項 か ら第4項 まで考察 した限 りにおいて,同条には,
「一般需要者 の利益保護」 と 「一般公衆の用に供す ること」の2つが遵守 され ていることが明示 され ている。それゆえ,同条は,公益事業法 の意味を十分に 有す る法律であるといえる。
⑨ 鉄道事業法第28条 (事業 の休廃止)
この法律は,鉄道事業 の休廃止を当該鉄道事業会社 の都合で慈意的に行 って ほならない とい う法律である。それゆえ, この法律は,鉄道事業者は公衆の用 に供 しなければならない とい う意味を有 してお り,慈意的に事業を休廃止 して
25 はならない とい う法律であ り,公益事業法 としての意味を十分に有 していると いえる。
2. 日本国有鉄道改革法 (昭和61年12月4日公布,施行,法律第87号) この法律は,経営破綻 した 日本国有鉄道を抜本的に改革す るための基本的方 針 と, 日本国有鉄道 の事業等 の引継 ぎ等に関す ることを明示 している法律であ る。 しか るに,同法は個別事業法でな く,改革法であるので,公益事業法の意 味を有 していない法律である。
しか しなが ら,同法は,昭和62年3月末 日まで我が国の基幹的輸送機関 とし て重責を果た してきた 日本国有鉄道 の経営を抜本的に改革す るための基本法で あ り,国民生活や国民経済に与 える影響が,極めて大 きい法律である。それゆ え, この改革が確実かつ 円滑に遂行 され,国民生活や 国民経済 の安定及 び向上 に資す るように,国は もちろんの こと全ての利害関係者は,最大限の努力を尽
くさねばならない。
3.旅客鉄道株式会社及び 日本貨物鉄道株式会社に関す る法律 (昭和61 年12月4日公布,施行,法律第88号)
この法律は, 日本国有鉄道 の改革を 目的 として制定 された 日本国有鉄道改革 法に基づいて廃止を余儀 な くされた 日本国有鉄道に代替す る旅客鉄道株式会社 (北海道,東 日本,東海,西 日本,四国,九州) と日本貨物鉄道株式会社 の経 営 に関す ることを明示 している法律である。 しか るに,鉄道事業法 の ように鉄 道事業 の性格や高遠 な 目的を明示 している個別事業法 と異 な り,個別事業法下 の個別生産経済体であ る各旅客鉄道株式会社や 日本貨物鉄道株式会社 の経営に 関す る法律であるので,公益事業法 としての性格を有 していない。
しか しなが ら,同法に基づいて経営 されている各旅客鉄道株式会社や 日本貨 物鉄道株式会社 は,鉄道事業サー ビスを供給 している個別生産経済体であるの で,鉄道事業法の管掌下にあ り,公益事業 としてのステ ィータスを有 してお り, 公益企業 の カテゴ リーである。
26
4.新幹線鉄道保有横構法(昭和61年12月4日公布,施行,法律第89号) この法律は,国鉄改革を 目的 として制定 された 日本国有鉄道改革法に基づい て廃止を余儀な くされた 日本国有鉄道の新幹線鉄道施設 の保有主体 (新幹線鉄 道保有機構) ・保守管理 と,新幹線鉄道保有機構か ら旅客鉄道株式会社‑の新 幹線鉄道施設 の貸 し付けについて明示 している法律である。 しか るに,同法は, 鉄道事業 の性格や高遠 な 目的を明示 している個別事業法 とは異 な り,個別事業 法下の個別生産経済体であ る新幹線鉄道保有株構 の経営 に関す る法律であるの で,公益事業法 としての性格を有 していない。
また,同機構は鉄道事業法の管掌下にあ るが,第3種鉄道事業であ り,直接 に他人の需要 に応 じて旅客を運送す るとい うサー ビスを供給 していない個別生 産経済体であ り,公益事業 としてのステ ィータスを有 していない。それゆえ, 当然の ことなが ら,同機構は公益企業 の カテゴ リーではない。
5. 日本国有鉄道清算事業団法 (昭和61年12月4日公布,施行,法律第 90号)
この法律は,国鉄改革を 目的 として制定 された 日本国有鉄道改革法に基づい て組織 された 日本国有鉄道清算事業団の役割について明示 している法律であ る。
すなわち,同事業 団は,国鉄改革 の実施に伴い,旅客鉄道株式会社等‑ の 日本 国有鉄道か らの事業等 の引継 ぎ並 びにその権利及び義務の承継等 の後において,
日本国有鉄道 の長期借入金及び鉄道債権に係 る債務その他の債務の償還, 日本 国有鉄道の土地その他の資産 の処分等を適切 に行い, もって 日本 国有鉄道改革 法に基づ く施策の円滑 な遂行に資す ることと,その職員の うち再就職を必要 と す る者についての再就職 の促進を図るための業務を行 うことを 目的 として組織 された事業団である。
しか るに,同法は,国鉄を新 しい経営形態で再生 させ るための管財人的役割 を果す事業 団の運営規程 の意味を もつ法律である。それゆえ,継続性のない移 行措置法的性格を有 し,公益事業法 の意味を もつ法律でない。 また,当然 の こ
27 となが ら, 日本国有鉄道清算事業団は公益事業 のステ イ‑ タスを有 してお らず, 公益企業の カテゴ リーではない。
6.帝都高速度交通営団法 (昭和16年3月7日公布,同年5月1日施行, 法律第51号)
この法律は,東京を中心 とす る地域 の交通機関の整備拡充のため,地下高速 度交通事業 の営業をなす ことを 目的 として組織 された帝都高速度交通営団 (営 団地下鉄)の経営 に関す る法律である。 しか るに,同法は,個別事業法 とは異 な り,個別事業法下の個別生産経済体である営団地下鉄の経営 に関す る法律で あるので,公益事業法 としての性格を有 していない。
しか しなが ら,同法に基づいて経営 されている営団地下鉄は,近年,モータ リーゼ‑シ ョンの進展に伴 う都市 の路面交通 の混雑等 の状況か ら都市公共交通 機 関 として, と くに位置づけ られ るようになった。 さらに,最近では,地方中 核都市 にまで も営団地下鉄 と同様な施設 ・装置を もつ地下鉄が建設 ・配車 され 公共交通機関 として経営 されている。それゆえ,営団地下鉄は,公衆 の用に供 す る公共交通機関であ り,公益事業 としてのステ ィータスを十分に有 してお り, 公益企業 として継続的,合理的,計画的,統一的に経営 されている。
7.軌道法 (大正10年4月14日公布,大正13年1月1日施行,法律第76 号)
同法は,軌道経営者が一般交通 の用に供す るために,軌道を道路上 に敷設 し
(注 1)
て,交通事業をなす場合,適用 され る法律である。
か くして,一般交通 の用に供す ることと,公用地であ る道路を使用す るとい う意味で,同法第1条 (本法の対象)や第2条 (道路‑の敷設)は,公益事業 (注1)軌道法第1条第1項 本法 ‑一般交通 ノ用 二供 スル為敷設 スル軌道 二之 ヲ適用
ス
軌道法第1粂第2項 一般交通 ノ用 二供 セサル軌道 二閑 スル規定 ‑命令 ヲ以テ 之 ヲ定 ム
軌道法第2条 軌道 ‑特別 ノ事 由アル場合 ヲ除 クノ外之 ヲ道路 二敷設 ス‑ シ
28
法の意味を十分に有 している。
それゆえ,一般交通の用に供す るとい うことは,公益事業 の公衆 の用に供す ることと軌を一にす るので,軌道交通事業は公益事業である。 しか るに,経済 性を指導原理 として,同事業を合理的,継続的,計画的,統一的に経営す る個 別生産経済体は公益企業であ る。
同法の中には,同法第1条,第2条 の外に,下記 の ような条項 も公益事業法 として指摘 され る。
㊦ 軌道法第3条 (事業 の特許制) と第11条 (運賃 ・料金 ・運転に関す る 認可制)
同法第3条の主務大臣が特許を与えるとい うことは,軌道事業は,その性質 上,物理的に も経済的に も自由競争 の行 なわれ る余地はな く,一定 の地域 の中 で行政や地域公衆は,独 占を容認 しなければな らないとい うことを意味 してい る。
他方,第3条に照応す るように,第11条では,独 占の弊害か ら地域公衆の利 益を擁護す るため,運賃 ・料金 ・運転に関 して主務大臣の認可を受け るように, 経営者に義務づけている。
それゆえ,第3条 と第11条は,それぞれ単独では公益事業法 とな りえないが, お互に補足 しあ うことに よって公益事業法 として容認 され る。
(江 2)
佐) 軌道法第26粂 (鉄道事業法の準用)
軌道法第26条に鉄道事業法の準用が明示 されてお り,その準用の中に事業 の 休廃止 (鉄道事業法第28条第1項) と法人の解散 (同29条第1項)がある。 こ れ らの法律は,軌道交通事業 の休廃止 ・解散を当該軌道交通事業者の都合で行
(注2) 軌道法第26条 鉄道事業法第20条,第21条,第23条第1項第3号,第5号及第 6号並第2項,第26条第4項,第27条第1項,第2項及第4項,第28条第1項, 第29粂第1項,第54条第1項並第56粂第1項 の規定 ‑軌道 二之 ヲ準用 ス但 シ此等 ノ規定中運輸大臣 トアル‑主務大臣 トシ運輸省令 トアル‑命令 トシ鉄道事業法第 21条中鉄道抵当法 トアル‑明治42年法律第28号 トス
29
ってほならない とい う法律である。それゆえ,軌道法第26条は,軌道交通事業 は公衆の用に供 しなければな らない とい うことを意味 してお り,公益事業法 と しての意味を十分に有 してい る。
8.道路運送法(昭和26年6月1日公布,同年7月1日施行,法律第183 号)
同法の第1条に示 されているように,同法は,道路運送事業の適正な運営 と 公正 な競争を確保 し,道路運送の秩序を確保す ることに よって,道路運送の総 合的発展を図 り,公共の福祉を増大す ることを 目的 とす る法律である。 しか る に,同法第1条は,運送 とい う用役を公衆の用に供す ることに よって,公共の 福祉 を増大 させ ることを明示 している法律であ り,公益事業法の意味を十分に 有 してい る法律である。
同法第2条第1項では,道路運送事業 として, 自動車運送事業, 自動車道事 莱, 自動車運送取扱事業,軽事柄等運送事業を明示 し,同条第2項以下では, それぞれの事業 内容 と用語の定義について明示 してい る。
自動車運送事業 とは,他人の需要に応 じ, 自動車を使用 して,旅客や貨物を 運送す る事業をい う。 (同条第2項)
自動車道事業 とは,一般 自動車道を もっぱ ら自動車の交通の用に供す る事業 をい う。 (同条第3項)
自動車運送取扱事業 とは,他人の需要に応 C,有償で,以下の行為を行 う事 業をい う。
・3) 自己の名を もってす る自動車運送事業者に よる貨物運送の取次又は運送貨 物の 自動車運送事業者か らの受取,
(参 他人の名を もってす る自動車運送事業者‑の貨物 の運送の委託又は運送貨 物の 自動車運送事業者か らの受取,
③ 自動車運 送事業者の行 う運送を利用 してす る貨物 の運送, (同条第4項) 軽事柄等運送事業 とは,他人の需要に応 じ,有償で,軽車輪を使用 して旅
30
客を運送す る事業及び軽事柄又は軽 自動車を使用 して貨物を運送す る事業を い う。 (同条第5項)
同条第6項は 「自動車」,同条第7項は 「道路」,同条第8項は 「自動車道」
を定義 している。
ここで,上記に示 された道路運送事業 としてのそれぞれの事業内容の全てに 公益事業 としてのステ ィー タスが与え られ るか否かを考察す る。 また,上記の 第2条の各項が公益事業法 としての意味を有す るか否かを も併せて考察す る。
同法第2条第1項は,道路運送事業の構成を明示 した ものであ り,道路運送 事業 の在 り方や 内容を示 した ものでないので,公益事業法 としての意味を有 し ていない。
同条第2項は,他人の需要に応 じて, 自動車を使用 して,旅客や貨物の運送 を行 うことを 自動車運送事業 として明示 していることか ら,公衆の用に供す る
ことに合一 しているので公益事業法 としての意味を十分に有 している0 しか し,公衆の用に供す るとい う特性を充足 しているだけでは, 自動車運送 事業 の全てに公益事業 としてのステ ィータスが与え られない。なぜなら,上記 の特性 の中に,公益事業サー ビスにおいて供給側が非貯蔵性,非移転性 の性質 を有 し, さらに消費者側の需要において,随時かつ即時に需要が充足 されてい なければならないか らである。す なわ ち, 自動車運送事業 の場合,路線を定め て,定期的に運行す る自動車に より,旅客や貨物を運送す ることに よって,公 益事業 としてのステ ィー タスが与え られ るのである。それゆえ, 自動車運送事 業 の中で,路線定期バス,路線貨物運送事業に公益事業 としてのステ ィー タス が与え られ る。
同条第3項は,一般 自動車道事業に関す る法律である。す なわ ち,一般 自動 車道事業 とは, 自動車運送事業者が もっぱ らその事業用 自動車の交通の用に供 す ることを 目的 として設け られた専用 自動車道 とは異 なる自動車の交通の用に 供す る一般 自動車道を事業 としているものである。 しか るに,今 日の ようなモ
31
‑ タリーゼーシ ョン進展化の時代において,同事業が 自動車の交通 の用に供す るとい うことは,公衆 の用に供す ることと軌を一 にす ることにな るので,同条 第3項 は,公益事業法 の意味を,漸次,有す る ようにな りつつあるといえる。
一般的に, 自動車道事業 は有償であ り,それが私営 の場合,観光道路事業 であ る場合が多い し,公営 の場合,高速道路事業であ る場合が多い。か くして,同 事業は私営,公営を問わず有償であ るが, モー タ リーゼ‑シ ョン進展化に とも ない公衆の利益 に供す るとい う色彩が濃 くな りつつあ る。それゆえ,公益事業 のステ ィー タスが,漸次, 自動車道事業に も与 え られつつあ る。
同条第4項 は,他人 の需要 に応 じて貨物運送に関す るサ ー ビス供給をなす 自 動車運送取扱事業について明示 していることか ら,公衆 の用に供す ることと軌 を一 に している法律であ る。それゆえ,同条第4項 も公益事業法 としての意味 を十分に有 してい る。
しか し, 自動車運送取扱事業 は,直接, 自らが運送 とい うサ ー ビスを供給す るのではな く,運送 とい うサ ー ビスの前後のサ ー ビスであ る取次 ・委託 ・受取 辛, 自動車運送事業者 の行 う運送を利用 しての貨物運送を行 う事業であ る。そ れゆえ,直接,運送 とい うサ ー ビスを供給 していない ことか ら,他人の需要 に 応 じてサ ー ビス供給す るとい うことを拡大解釈 して も,公衆 の用に供す ること と軌を一 にす ることにはならず, また,公益事業 サ ‑ ビスの特性 としての非貯 蔵性,即時性 とい う面 も充足 していない ことか ら, 自動車運送取扱事業は公益 事業 としての ステ ィー タスを有 しない。 したが って, 自動車運送事業者がその 業務拡大 とその業務 の円滑化のために,付随業務 として 自動車運送取扱事業を 行 ってい ることが一般的であ る。
同条第5項 は,他人の需要 に応 じて,有償 で軽 車輪で旅客を運送 した り,餐 自動車で貨物を運送す る軽事柄等運送事業 について明示 してい ることか ら,公 衆 の用に供す ることと軌 を一 に してい る法律であ る。それゆえ,同条第5項 も 公益事業法 としての意味を十分 に有 している。
しか しなが ら,現実 として,軽車軸等運送事業 の中で,他人 の需要 に応 じ,
32
軽車輪を使用 し,一定路線を旅客運送す る事業 としてほ,観光地等 で人力車や 馬車を使用 して有償で運送す る事業が存在 しているにす ぎない。 これ らの事業 は,一応,一定路線 を運送 しているのであ るが,観光客 の一部 の希望者 のみを 運送す るにす ぎず,公衆 の用に供す る事業であ るといえない。それゆえ, これ
らの事業 には公益事業 としてのステ ィー タスは与え られ ない。
また,軽 車輪等運送事業 の中で軽 自動車で貨物を運送す る事業 として,近年, 最 も成長 の著 しい宅配便を指摘す る ことがで きる。 この事業 (軽 自動車貨物運 送事業)の業務 として,以下の2つの業務が指摘 され る。
i)いろいろな個人商店を取次場所 として,貨物 (小荷物)を収集す る収集運 送機能を もつ業務。
ii)仲継運送機能を もつ路線貨物運送事業者か ら貨物を受 け と り,最終 の宛先 にその貨物 (小荷物)を届け るとい う分散運送機能を もつ業務。
上記のi) とii)の内容を もつ軽 車軸等運送事業 は,路線を運送す るとい う 路線貨物運送事業 ではない。 しか し,一般公衆 の小荷物 を収集運送 した り,分 散運送 した りす る事業 であ り, さらに,公益事業サ ー ビスの特性であ る非貯蔵 性,非移転性,随時性,即時性を十分 に充た してお り,社会的に公衆 の用 に供 す る事業 として容認 され ている。それゆえ,軽 車輪等運送事業 の軽 自動車貨物 運送事業 は,公益事業 としての ステ ィー タスを十分 に有 してい る。 さて, ここ で必要条件 となるのほ,収集 ・仲継 ・分散 とい う機 能が迅速かつ 円滑に構築 さ れ ていなければな らない とい うことであ る。 もし, これ らの機 能が迅速かつ 円 滑に機能 され ていないな らば,軽 自動車貨物運送事業は,公益事業サ ー ビスの 特性であ る随時性,即時性を充た してい ることにはな らず,公益事業 のステ ィ
ー タスは与 え られ ない。
か くして, これ まで一般的に理解 され てい る公益事業は,地域独 占が容認 さ れ ているとい うことであ るが,軽 自動車貨物運送事業 で特筆 され る点は,非独 占であ り,競争場裡 におかれ てい るとい うことであ る。いわゆ る, これ までの
33 公益事業 は,公衆 の用に供す る (必需性)事業 であ ると同時に,設備投資産業 としての性格が強 いので,同一地域におけ る二重投資は,用役や 財の生産 コス ト高を もた らすので必然的に独 占を余儀な くされ る地域独 占事業であ ると理解 され て きた。 しか し,軽 自動車貨物運送事業 は,設備投資産業 ではな く, コス トや サ ー ビスの質等 の面で,競争場裡 におかれ てい る事業であ ると同時に,公 衆の用 に供 し,公共 の利益を 目的 としてい る事業であ る。それゆえ, これ まで 地域 自然独 占性 とい う属性が具備 されていなければな らない と理解 され ていた 公益事業 ステ ィー タスが軽 自動車貨物運送事業 には該 当 しな くなって きた。す なわ ち, この ことの意味す るところは,軽 自動車貨物運送事業 の ような公益事 業 の生成を契機 に,社会経済環境の変化や技術革新に よ り,必ず しも地域 自然 独 占性を具備 していな くとも,公衆 の用に供 し,かつ公共 の利益 と軌を一にす るな らば,公益事業 のステ ィー タスを有す ることになるとい うことを意味 して いる。 この よ うな意味か ら,軽 自動車貨物運送事業を公益事業 として理解す る ことは, これ までの公益事業概念に重大な変化を もた らす こととなる。
同条第6項 ,7項 ,8項 は, 「自動車」「道路」「自動車道」の定義 を明示 してい る法律であ り,公益事業法の意味を有す る法律ではない。
これ まで,道路運送法第2条 に明示 され てい る諸事業 の考察を とお して,わ れわれは,路線バ ス事業 ,路線貨物運送事業 ,一般 自動車道事業,軽 自動車貨 物運送事業を公益事業 として理解 して きた。それゆえ,経済性を指導原理 とし て,合理的,継続的,計画拍,統一的に経営す る上記の事業 の個別生産経済体
(経営体 )は公益企業 といえるのである。
同法の中には,同法第1条,第2条第2項,同条第3項 ,同条第4項,同条 第 5項 の外に,下記 の ような条項 も公益 事業法 として指摘 され るであろ う。
⑦ 道路運送法第6条 (免許基準)
同法第6条第1項 は,一般 自動車運送事業 開業 申請者に対す る免許基準を 明 示 してい る法律であ り,その基準内容は下記 の ように列挙 されてい る。
34
i)当該事業 の開始が輸送需要 に対 し適切 な ものであ ること。
ii)当該事業 の開始に よって当該路線又は事業区域 に係 る供給輸送力が輸送需 要量に対 し不均衡 とならない ものである こと。
iii)当該事業 の遂行上適切 な計画を有す る ものであ ること。
iv)当該事業を 自ら適確 に遂行す るに足 る能力を有す るものであ ること。
Ⅴ)その他当該事業 の開始が公益上必要であ り,且つ,適切 な ものであ ること。
さて,上記の基準 内容の中に公益事業法 として適切 な意味が包含 され ている か否かを考察す るな らば,次の よ うな ことが指摘 され るであろ う。
i) とii)か らは, 「公衆 の用に供す る」 とい うことが理解 され る。iii)と iv)か らは, 「需要者 の利益を保護す る」 とい うことが理解 され る。Ⅴ)か ら は, 「公共 の利益を遵守す る」 とい うことが理解 され る。
しか るに,上記の ような考察か ら同法第6条第1項は公益事業法 としての意 味を十分に有 してい る法律であるといえる。
同条第2項 は,運輸大臣が免許 申請 を審査す る場合,第1項 の基準を適用す るに当 っては,形式的,画一的に流れ る ことな く,実情 に沿 うように努め るこ とを明示 している法律であ る。
それゆえ,同条第2項 は免許基準の運用方法を明示 している法律であ り,公 益事業法 の意味を有 してい る法律ではない。
① 道路運送法第49条 (自動車道事業免許基準)
同法第49条第1項は, 自動車道事業 開業 申請者に対す る免許基準を明示 して い る法律であ る。その基準 内容は,一般 自動車運送事業 と自動車道事業 のサ ー ビスが事業 の性格上,異 な ってい るので,多少,異 なってい るが,一般 自動車 運送事業 の免許基準 (同法第6条第1項 ) とは とん と同様であ る。それゆえ, 第49条第1項 は,公益事業法 としての意味を十分 に有 している。
同条第2項 は,免許 申請 内容が同条第1項 の基準 に適合 してい るな らば,運 輸大臣は,特別 な事情 のない限 り, 自動車道事業 の免許を しなければ な らない
35
とい う法律であ る。それゆえ,免許基準運用 内容を 明示 してい る第6条第2項 とは異 な り,第49条第2項は,同条第1項 と補完 しあいなが ら,運輸大 臣の免 許授与 について明示 してい るので,公益事業法的性格 を有 してい る法律 であ る。
㊥ 道路運送法第 4条 (自動車運送事業 の免許) と第 8条 (運賃及び料金 の認可)
(注3)
同法第4条は,供給側に用役 の安定供給を保証 し,義務づけてい る。一方,
(注4)
この安定供給義務をチ ェ ックす るもの として第8条 の政府 に よる運賃 ・料金 の 認可制が強制 されてお り,公共 の利益が擁護 されてい る。 しか るに, これ らの 両法は,それぞれ単独では公益事業法 としての意味を有 しないが,お互に補足 (注3) 道路運送法第4条第1項 一般 自動車運送事業を経営 しようとす る者は,運輸
大臣の免許を受けなければな らない。
同条第2項 一般 自動車運送事業 の免許は,路線又は事業区域及び前条第2項 各号に掲げ る一般 自動車運送事業の種類について行 う。
同条第3項 一般 自動車運送事業 の免許は,運送 の需要者,運送す る旅客又は 貨物その他業務の範囲を限定 して行 うことができる。
同条第 4項 一時的な需要のための一般 自動車運送事業 の免許は,期限を限定 して行 うことができる。
(注4) 道路運送法第8条第1項 一般 自動車運送事業を経営す る老 (以下 「一般 自動 車運送事業者」 とい う。)は,旅客又は貨物 の運賃その他運輸に関す る料金を定 め,運輸大臣の認可を受けなければな らないO これを変更 しようとす るときも同 様 とす る。
同条第2項 運輸大臣は,前項 の認可を しようとす るときは,左 (この場合, 下)記 の基準に よって, これを しなければな らない。
一,能率的な経営の下におけ る適正な原価を償 い,且つ,適正な利潤を含む も のであること。
二,特定の旅客又は荷主に対 し不当な差別的取扱をす るものでないこと。
三,旅客又は貨物 の運賃及び料金を負担す る能力にかんがみ,旅客又は荷主が 当該事業を利用す ることを困難にす るおそれがない ものであ こと。
四,他の一般 自動車運送事業者 との問に不当な競争をひ きお こす こととな るお それがないものであること。
五,運賃及び料金が対距離制に よる場合であ って,運輸大臣がその算定の基礎 となる距離を定めた ときは, これに よるものであ ること。
同条第3項 第1項 の運賃及び料金は,確定額を もって定め られなければな ら ない。但 し,一般乗合旅客 自動車運送事業及び一般乗用旅客 自動車運送事業以外 の一般 自動車運送事業の うち運輸大臣の指定す る種類については,最高額及び最 低額を もってこれに代 えることがで きる。
36
しあ って公益事業法 としての意味を もつのであ る。
㊤ 道路運送法第20条 (運輸に関す る協定) と第21条 (私的独 占禁止法 の 適用除外)
同条第20条第1項 と第2項 を要約 した意味は,一般 自動車運送事業者が運輸 に関す る協定を しようとす る場合,その協定に よって,公衆 の利便が もた らさ れ ると判断 され る場合に限 り,運輸大臣は,そ の協定を認可 しなければな らな い とい うことを意味 してい る。
第21条 の意味は,上記 の協定 に よって もた らされ る正 当な行為 には独 占禁止 法が適用 され ない とい うことを意味 してい る。
しか るに,同法第20条 と第21条 は,それぞれ単独では公益事業法であ るとい えないが,お互 に補 足 しあ うことに よって公共の利益を もた らす ようにな り, 公益事業法 としての意味を有す る ようになる。
㊥ 道路運送法第32条 (公衆 の利便を阻害す る行為 の禁止等)
この法律 の内容は以下 の とお りである。す なわ ち,一般 自動車運送事業者が 旅客や荷主や同業者に対 して,不 当な運送条件や不 当な差別的取扱や不 当な競 争 な どの公衆 の利便を阻害す る行為を した と認め られ る場合,運輸大 臣は,当 該行為 の停止又は変更を命ず ることがで きるとい うことであ る。 しか し,停止 又は変更を命ず る場合,あ らか じめ 当該事業者 に聴聞を しなければな らない と い うことであ る。それゆえ,同条は,一般 自動車運送事業者 の用役供給 に よっ て,一般公衆 の利益が損われ ない ように一般 自動車運送事業者 に規制を課 して, 公衆を保護 してい る法律であ る。 しか るに,公益事業法 の意味を十分 に有 して い る。
㊥ 道路運送法第33条第1項 (事業改善 の命令)
同条項 は,一般 自動車運送事業者 の事業が公共 の福祉を阻害す る事実があ る と認め られ るときは,事業 内容 の改善を運輸大 臣は命ず る ことがで きるとい う 法律であ る。事業 内容 の改善 として,事業計画,運送約款 の変更,他 の運送車
37 業者 との協定 な どが示 されてい る。それゆえ,同条項 は,同法第1条 に一般 自 動車運送事業 の 目的は公共 の福祉 の増大 であ ると明示 してい ることを, さらに 具体的 に明示 した ものであ る。 しか るに,公益事業法 としての意味を十分に有
してい る法律 といえ よう。
㊥ 道路運送法第41条 (事業 の休止及 び廃止)
この法律 は,一般 自動車運送事業者は慈意的 に事業を休止 した り,廃止 した りしてほな らない とい う法律であ る。
同事業者 には,免許や道路使用権 な どの特権 が付与 され てお り,行政上,読 争排除 の状態におかれてい る。 しか し,その ような特権を享受 で きる反面 とし て,公衆 の用に供 しなければな らない とい う義務を負わ され,サ ー ビス継続が 課せ られ ているのであ る。それゆえ,原則 として同事業者は,サ ー ビスの休廃 止を行 うことはで きない。
しか し,特殊 の事業状況の下においてほ,それ らを是認せ ざるをえない場合 も生ず る.例えば,あ るバ ス会社が全系統 の経営 において赤字を累積 してお り, かつ,それを回復す るための打開策の 目処が, まった く立たない状況にあ るこ
とが認め られ る場合においてほ,サ ー ビス継続を強要す ることはで きない。そ の よ うな場合には,営業 の休廃止を認め ざるをえない。 しか し,あ るバス会社 の全系統 の一部 の経営 において赤字を累積 してお り,回復不可能の状態 であ る として も,全系統 の トー タル経営 において利益を生 じているような場合には,
(注5)
その赤字系統 だけの休廃止を行 うことは許 され ない。
しか るに,上記 の ような意味か ら,同条は公益事業法 としての意味を十分に 有 してい る法律であ るといえ よう。
9.通運事業法 (昭和24年12月7日公布,昭和25年2月1日施行,法律 第241号)
通運事業法 の制定以前の小運送業を規制す る法律 としての小運送法 (昭和12 (注5) 北久一著 『公益企業論』 東洋経済新報社,昭和36年,p・67.
38
午,法律第45号)は,小運送業の もつ 「公共の利益」 と 「鉄道施設 の利用効率 の向上」の達成 のための規制を 目的 とす ると同時に,小運送業 の乱立競争をお さえ,企業合同を促進 させ るとい う目的を もつ法律であ った。いわゆる,当時 の一連 の統制経済 の一環 として, この法律に よって,小運送業者は国家統制下 に位置づけ られ るようになったのである。
しか しなが ら,戦後 の独 占禁止法,過度経済力集中排除法等 の経済民主化政 策の施行に ともない,小運送業に も営業の 自由化の気運が高 ま り,それまで小 運送業において独 占的地位を確立 していた 日本通運株式会社 に過度経済力集中 排除法が適用されたのであ る。
上記の排除法の適用を契機 として, 自由公正 な競争に よって独 占の弊害をな くし,小運送サ ー ビスを改善 向上 させ,小運送力を増強 し,又経営 の効率化を 図ることが必要であ るとの考えの下に,小運送業法に代わ るもの として通運事 業法が制定 され るようになったのである。
か くして, この ように制定 された通運事業法の 目的は,同法第1条に示 され ているように,通運事業の 「秩序 の確立」 と 「公正 な競争」を通 じて,通運事 業の健全な発達 と鉄道運送効率の向上をはか り,それに よって公共 の福祉を増
(注6)
進 させ ることを 目的 とした法律である。それゆえ,同法第1条は,公益事業法 としての意味を十分に有す る法律であるといえる。
同法第2条には,通運事業 とは,「他人の需要に応 じて,鉄道 (軌道を含む) 運送を軸 とした物 品運送の受取,取次,集貨,配達,貨車積込 ・取卸を行 う事 業である。」 と定義 されてい る。 したが って,上記 の ような事業を他人の需要 に応 じて経営す るとい うことは,同事業 の運送 とい う用役が公衆の用に供す る ことと軌を一にす ることになるので,通運事業は公益事業 としてのステ ィータ
(注6) 通運事業法第1条 「この法律は,通運に関する秩序の確立,通運事業におけ る公正な競争の確保及び通運事業の健全な発達並びに鉄道による物品運送の効率 の向上を図り,もって公共の福祉を増進することを目的とする。」
39 スを十分 に有 してい る事業であ る。それゆえ,経済性 を指導原理 として同事業 を合理的,継続的,計画的,統一的に経営 してい る個別生産経済体 は,公益企 業 としての地位を有 している。 また,当然 の ことなが ら,同法第2条 は,公益 事業法 としての意味を十分に有 してい るといえ よう。
同法 の中には,上記 の第1条,第2条の外に,公益事業法 として指摘 され る 下記 の ような条項 もあ る。
㊦ 通運事業法第6条 (通運事業 の免許基準)
同法第6条は,通運事業 の免許基準を主 として明示 してい る条項 であ る。す なわ も,第6条第1項 の意味す るところは,免許基準 内容に関 して,
i)一般 の需要 に適合 し, ii)公衆 の利便を増進 させ, iii)事業遂行能力を有 し,
iv)鉄道 に よる物 品運送の効率 向上 に資す る
とい うことを 明示 してお り,同条第2項 では, これ らの基準 に適合 してい ると 運輸大 臣が認めた ときは,事業開業 申請者 に通運事業者 として免許を与 え ると い うことを明示 してい る。
上記 のi) とii)の内容は, もちろんの こと,iii)とiv)の内容 も公衆 の用 に供す るとい う意味を もってい る。す なわ ち,iii)の事業遂行能力を有 してい るとい うことは,継続的にサ ービス供給をす ることに よって,公衆 の用に供す るとい うことであ り,公益事業 の属性 の一つであ る必需性 (サ ービスの非移転 性,サ ービスの非貯蔵性,需要 の即時性,需要 の随時性) とも軌を一 にす る。
iv)の鉄道 に よる物 品運送の効率 向上 に資す るとい うことは,鉄道運送を軸 と した物 品運送 の受取,集貨,配達,貨車積込 ・取卸 とい うサ ー ビス供給を,可 能な限 り廉価 に,迅速 に,安全に,効率 よ く遂行す るとい うことを意味 してい る。それゆえ, この ことは,荷主公衆 の保護 と利便 のための事業の公正 な運営 を意味 してお り,公衆 の用に供す ることとつなが ってい る。
40
また,通運事業は地域独 占事業でな く,公正な 自由競争場裡におかれている とい うことは,すでに同法第1条に明示 され ている。 さらに,通運事業開業 申 請者は一定 の基準を充た しておれば免許 され るとい うことを明示 している同法 第6条第2項か らも,通運事業は地域独 占事業ではな く,公正 な 自由競争場裡 におかれていることが理解 され る。それゆえ,一般的に公益事業の属性の一つ と容認 されている地域独 占とい う属性は,通運事業には該当 しない ことを第6 条2項は示 しているのである。す なわ ち,地域独 占,必需性 とい う属性が具備 され ていなければ,従前は一般的に公益事業 としてのステ ィータスが与 えらな なか ったのであ ったが,通運事業 の場合,両方 の属性が具備 されて経営 されな くとも,必需性 とい う一つの属性に よる経営であ って も,荷主公衆 の保護 と利 便性につなが ると容認 され るようにな り,公益事業 としての ステ ィータスを有 す るようにな ったのである。
か くして,上記の意味か ら,同法第6条は公益事業法 としての意味を十分に 有 している法律であ るといえ よう。
① 通運事業法第4条 (通運事業 の免許) と同法第14条 (事業 の停止及び 免許の取消)
同法第4条の通運事業 の免許 内容は,通運事業 の免許 申請者 (同法第5条) が,免許を受け る上での要件 (同法第6条)を充足 している場合,運輸大臣か
ら免許を受けなければ,営業で きない ことを意味 している。
同法第14条の通運事業 の停止及び免許取消の内容は,同法や同法に基づ く命 令等に違反 した場合や正当な理 由がないのに許可や認可を受けた事項を実施 し ない場合には,同事業 の停止や免許取消を命 じられ ることもあるとい う内容で ある。
それでは,同法第4条 と同法第14条 とも公益事業法であると容認 され るのは, どの ような理 由か らであ るのかを考察す る。すなわち,条4条 の免許を広義に 解釈す るならば,第6条 ない しは第1条 の 目的に第4条が合一 していないな ら,