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4 章社会創造と農民

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(1)

4 章社会創造と農民

柳 田 泰 典 (教育学部助教授) はじめに

日本農業への最後の打撃,それが「例外なき関税化」であり,米の輸入自由 化である。しかも,この影響は,農業だけでなく日本という社会全体に及ぶで あろうことは確実である。私は,ここで米の輸入自由化の賛否を問おうとは恩 わないが,少なくとも「日本農業,とりわけ水田農業とは何なのか」、その社 会創造性について知ってもらいたいと思っている。

水田の生産物は,稲である。春になれば田植をし秋には収穫する。「田ん ぼは,いつも田んぼのままである」。私たちは,このあまりにもあたりまえの 営みに,その意味さえ問うことをわすれてしまっているかのようである。農業 用語に「連作」という言葉がある,同じ作物を同じ場所に繰り返し作付けする ことだが,小麦などの畑作物はこの連作ができないものなのである。しかし 水田は違う。水田は,弥生時代から二千年以上の連作に耐え,狭い国土にもか かわらず多くの人を扶養し文化を育ててきたのである。水田がなければ,日 本民族,日本という国,日本という社会は存在しなかったかも知れない,それ

くらい貴重なものなのである。

「歌をわすれたカナリヤは, うしろの山へすてましよか」という歌がある,

水田をわすれた日本人は,何処へ行こうというのだろうか。私たちは,あらゆ るものが売買される商品生産社会に暮している。その結果であろう,消費ばか りに目を奪われ,商品が「どのように生産されているのかJ,また,廃棄物は

「どのように処理されているのかJ, このきわめて重要な部分に無頓着をきめ こんできたのである。米は,ササニシキかコシヒカリ,いやいやヒトメボレ,

食味ばかりを話題にしている。農薬による水質汚染,メタンガスによる大気汚 染,糞尿の処理,水洗トイレに必要な大量の水の確保(ダム建設による環

n x

u  

(2)

境破壊〉など,食べることで発生している重要な課題は常に後回しにされてし まってきた。

よく言われることであるがより良いものを,より安く」という言葉があ る。これこそが消費行動の基準であると思っている。しかしこんなことはあ りえないことなのである。良いものを安くつくることはできない,できるとす るならば,それは原材料の略奪(自然、破壊),廃棄物の放置,長時間労働など を伴っているはずなのである。米の輸入自由化を肯定する根拠は,その価格の 安さ故であるが,これを基準とする社会のあり方は資源一環境問題を悪化させ ざるをえず,人類を取り返しのつかないところまで落し込めるであろう。安い 米の輸入によって何が起こるのか,それは高温多雨という自然環境をきわめて 合法則的に利用し資源と環境を保全してきた水田を基礎とする循環性社会の 破壊なのである。

世界は今,環境の悪化,資源の枯渇という危機のなかで,新しい方向を模索 しつつある。その方向こそ,サステイナブル・ディベロップメント(永続可能 な開発・発展〉よるサステイナブ、ル・ソサエティ(永続可能な社会〉の創造な のである。社会創造といえば,長時間労働の短縮,男女平等の実現,生活文化 の創造,高齢者の扶養,子どもの権利の確立などの課題が提起されることが普 通であった。しかし現在の私たちは,永続可能な社会すなわちサステイナブ ル・ソサエティの具体的な内容を枠組として持たなければ,社会創造について 語ることはできなくなっているのである。

1

サステイナブル・ディベロップメン卜と農業

1.サステイナブル・ディベロップメント

( S u s t a i n a b 1 eDeve1opment) 

サステイナブル・ディベロップメント,この言葉が社会創造のキーワードと して国際的に登場してくるのは, 1980年代にはいってからである

1)

国際自然保護連盟『世界保全戦略

(Wor1dConservation S t r a t e g y )

J] 境と開発に関する世界委員会『私たちの共有の未来

(OurCommon Futur  e )

J]が提起したサステイナブル・ディベロップメントの内容は未来の世代 が自らの必要を充足しようとする能力を損なわないようにしながら,同時に現 在の必要をも満足させられるような開発(または発展)

J

である。これを読む

‑ 1 8 2  ‑

(3)

章 社 会 創 造 と 農 民

かぎり,開発や発展の具体的な方向は定かではない。そのためであろう,解釈 を巡って対立が引き起こされている。

サステイナブル・デ、ィベロップメントの日本語訳は持続的成長

J I

永続可 能な開発J

I

永続可能な発展」などであるが,それぞれ意味する内容はまった く違っている。「持続的成長」は,成長を持続しながら技術開発によって危機 を突破するというテクノクラー卜的なもの,あるいは,環境と開発との調和・

妥協を図って行こうとするものである。これにたいし「永続可能な開発J

I

続可能な発展

j

は,略奪的な開発とそれを引き起こしている社会構造を変えて 行こうとするものである。しかし「開発」とするか「発展」とするか,その 差はきわめて大き ~\o その差を明らかにするため,それぞれの改革戦略を比べ

ることにしよう

2 )

開発論の戦略は,総量抑制と民主的な規制による環境上位の開発を目指して いるようだ。その内容は,①「環境上位の開発」を実現しうる行政上の制度の 確立。②政策決定過程の実質的な民主化と,これに連動する環境アセスメント 制度の実現。③環境容量の設定と環境影響,さらには人間活動の総量を抑制す

る発想の普遍化となっているのである。

これにたいして,発展論の戦略は,①地球の生命維持の仕組みと生態系の保 全。②基本的ニーズ、の充足。③社会正義と公平の原理。④民主主義と住民参加 の原理。⑤統合,止揚の原理(政治的・経済的・制度的・技術的変革をめざし ていく民主的な統一理念)なのである。開発論との違いは,永続可能性を生態 系の維持と人類のニーズの抑制(過剰な欲求の抑制)に置いていることであろ

開発論は環境「汚染」を相対的に容認し発展論は「開発」を拒否する傾向 にある。そんな違いはあるものの,両論に共通していることは「生産力の発展 と環境の保全・発展とは矛盾する

Jと把握されていることである。

生産力の発展と環境の保全・発展とは矛盾するものであるなら,私たちは,

生産力を抑制する社会を創造しなければならないだろう。消費は抑制され,生 活構造も変えられなければならない。べっ甲細工など言語道断になるだろう,

自動車は,テレビは,ケーキは,メロンはどうなるのだろうか。資源を略奪し 環境を破壊するものとして,とりあげられてしまうのであろうか。

(4)

このような対立と論争は,社会創造すなわち未来社会へ向けた緊急で真剣な ものである。私は,開発論とも発展論とも違う方向を提起したいと思う。サス テイナブル・ディベロップメントは生産力の発展が環境の保全・発展へと 結合するものである

J

,そういうものとして把握したい。この意味で日本語訳 色「永続可能な開発・発展」とする。なぜこう規定することができるのか,

それを農業に限定して分析してみたいと思う。

2 .   r

永続可能な開発・発展」と農業

「永続可能な開発・発展

J

を支える産業は,農業である。そういうと,いや いや「農業こそが最大の環境破壊である」と反論がありそうである。

4

大文明 のひとつメソポタミアは,現在,砂漠になっている。チグリス,ユーフラテス の流域は,かつて濯蹴水路が張りめぐらされた肥沃な農業地帯(小麦栽培〉

だった。それが濯概法と管理の失敗によって砂漠と化してしまったのである。

ギリシャ文明の崩壊も,森林の過伐採による丘陵の耕地化,その結果としての 激しい土地浸食,農業と環境の破壊,それが原因となっているのである。この ようなことは,現在のアメリカ農業にも当てはまるのである。激しい土壌流出 によって地力は低下し作付け放棄と砂漠化が進んでいるのである。また,ブ ラジル・アマ、ノ、ン川流域における熱帯雨林の伐採と急激な農地造成は,地球環 境を危機に落し込もうとしているのである。

こういう事実を突きつけられると,農業こそが最大の環境破壊であるという のも確かなようである。しかしこれらの事実から私たちが考えるべきは,農 業イコール環境破壊ということではないだろう。問題の本質は,農業の仕方に 問題がある,すなわち自然、の循環性と合法則性を無視したこと,そこにこそ焦 点をすえるべきなのである。そう考えるならば,農業の方法によっては,生産 力の発展が,環境の保全・発展へと結合させるサステイナブルな道が見出せる のではないだろうか。これを,水田農業を例に検討してみよう。

「水田は日本の自然条件をうまく生かし同時に日本の自然条件からもたら されるおそれのある危険をみごとに緩和ないし消去している,実にうまい装置 である

3) J

,これは本当であろう。日本の気候は夏雨型湿潤気候で,年聞をと おして水不足は起こらない。台風の常襲地帯で激しい土壌浸食を引き起こす。

地形は山と谷が複雑に入り組んだモザイク構造をなしている。河川は小さく,

‑ 1 8 4一

(5)

4

短くて,山地から急流をなして一気に海に注ぐ。国土の六分のーが火山灰土壌 である。関東地方から西南日本にかけて暖温帯照葉樹林が広がっている。自然 の生産力が高く,雑草の繁茂が激しい。

農業技術的な分析と説明を詳しくする余裕はないが,水田によって土壌浸食 を防いだり,水を確保したり,また,水を張ることによって土壌成分の急速な 分解を防ぎ,雑草の繁殖を抑えてもいるのである。ジャポニカ稲の食糧として の優秀さ,さらに,水稲は無限の連作に耐えるなどを合せ考えると,生産力の 発展と環境の保全・発展が統一されたシステムと言えるのではないだろうか。

3 .

サステイナブル・ソサ工ティへの努力と社会創造

現在の生産力の発展は,資源 環境問題を引き起こすあり方なのである。農 業でも「選択的拡大Jr主産地形成Jr単作化Jr規模拡大

J

r機械化Jr施設 化」が行なわれ,多肥多薬によって水質,大気,土壌,農民などを汚染し続け ている。この問題を無視し

l

1

1. 

5

次産業の形成,特産品づくりなど に努力しでも,あたらしい社会の創造にはつながらないであろう。逆に,地域 社会の資源と環境を破壊する場合さえ考えなければならないのである。

サステイナブル・ソサエティへの努力は,販売と消費を基準とするものでは なく,生産一消費一廃棄のなかに有機的な循環をもたらすものでなければなら ない。また,それだけではなく,生産力の発展が環境の保全・発展となるよう な可能性を追及しなければならないのである。新しい社会創造とは,これらを つくりだすことであり,そして地域住民が主体となって守り発展させるなかで 具体的な姿を現わしてくるものであろう。

これを,単なる「規制

j

論ではなく,発展論として把握できるものは,実践 し矛盾を一番知っている農民なのかもしれない。サステイナブルこそは,農民 の努力に水をさし上からの「近代化」を押し付けてきたものたちへの,新し い武器となるであろう。

2

サステイナブル・ソサエティへの可能性

農業におけるサステイナブル・ディベロップメントの努力は,営々と続けら れてきたのである。有機農法,無農薬や低農薬農業,産直運動,有畜農業,マ イペース酪農なと、安全性や人間性を守ってきたものは多い。そしてこれらは,

‑ 1 8 5一

(6)

個々の農民のものもあるが,多くは地域ぐるみで努力しサステイナブル・ソサ エティをつくっているのである。

3

つの実践によって,その意味と可能性につ いて検討してみよう。

1 .   r

生産用水と環境保全」一一山形県遊佐町の実践

4 )

一一

水稲単作地帯の遊佐町農業は,有機農法稲作,低農薬,推厩肥投入,生活ク ラブ生協との米の産直などを特徴としているが,その基盤は健全な月光川にあ る。そのため農民は,水と川を守る実践を積み重ねてきた。たとえば,魚毒性 除草剤の使用中止,月光川の取水口上流へ進出したアルミ工場を移転させる,

家庭における合成洗剤の追放などを地域ぐるみ,消費者との連携で行ってきた のである。これは環境保全型農業水利の地域的確立J

I

農法変革から生活変 革へ」と性格づけられるものである。

生産のあり方が,生活と地域を変革し,生活と地域が生産のあり方を支えて いく。これこそが,サステイナブルなのである。もし,遊佐町農業が労働生産 性のみに走り,機械化,大規模化,肥料と農薬の多投化という形だったとした ら,月光川は農業排水,産業排水,生活排水の巨大な下水となり,地域の人々 は分裂し対立を余儀なくされていたであろう。

遊佐町の「月光川の清流を守る基本条例

J I

町環境保全基金条例」などは,

「永続可能な開発・発展」が住民の生産,労働,生活での主体性の発揮だけで なく,地域を統治する能力を形成していったことを物語っていると思われるの である。

遊佐町の農業は,環境を保全・発展させることで,同時に,農業生産力を安 定的に発展させてきたのである。

2 .   r

瞳は未来ヘ」一一大分県大山町の実践(

5)

一一

大山町のサステイナブル・スローガンは梅栗植えてハワイに行こう」と

「瞳は未来へJである。この運動

(NPC

運動)は,生産のあり方,人のあり 方,地域社会のあり方をより人間らしいものへと飛躍させようとするもので あった。

N P C

運 動 は , 第

l

次が,

New Plum Chestnut

,第

2

次が,

New  P e r s o n a l i t y   Commbination

,そして,

3

次 が

New Paradise 

Community

であった。

1 8 6  ‑

(7)

4

章 社 会 創 造 と 農 民

それぞれの目標としたものを推進要綱でくらべてみると,大山町が何を求め て努力してきたかが分かるのである。第

1

次は「総べての生産活動にたずさわ る人々が,各々の組織を活用し近代的装備を充実した中で,省力的,軽活動,

快適労働を条件に,

1

8

時間,年間1

8 0

臼の労働基準を原則として,文化的 生活を営むに足る所得の追及を図るものとする(第

2

条)

j

,第

2

次は「地域の 住民が普遍的に継続的に各種行事に参加し,喜び合い,励み合い,慰め合い,

助け合いの機会を得て双互に錬磨し,好ましい習慣を身につけて自然の裡に人 格の向上をはかるものとする(第

2

条)

j

,そして,第

3

次は「この要綱に基く 文化集積団地の設定は,地域住民の連帯感を基盤として,すべての地域住民が 平等な文化の恩恵を享受できるものでなければならない(第

2

) j

となって

いるのである。

ここで徹底的に追及されているものは,人間らしい労働と生活,人間らしい 人聞の育成,それを実現する場としての地域社会である。重労働にあきらめ,

ただもくもくと働くしかなかった時,何のために働くのかを問い,人間のため にこそ生産と生活を変革してきたのである。サステイナブル,その永続可能は まずもって人間性の尊重にあるだろう。

3 .

曲がったキューリ」一大分県下郷農協の実践

6)

「下郷農協と消費者の取引は,単なる物の売り買いではありません。生産者 と消費者が手を取りあって,資本の収奪から命とくらしを守るための,経済民 主主義を築いて行く運動です。自分と皆を守る運動です。

j r

下郷では各農家が 家畜を飼い,推厩肥をっくり,これを田畑に施して地力のある土地をっくり健 康な土の上に健康で安全な農産物を生産することに努めています。このように してつくった農産物は一般市場取引では,その価値が正しく認められませんの で,その価値を認めて貰える消費者との提携(産直〉に全力を入れています」

「野菜一野菜を作る人は,有機農業生産組合もしくは有機農業研究会に入って 化学肥料も農薬も一切使わない無農薬有機栽培をやっていますJ

農協のしおりからいくつかを抜き出してみたが,これだけでも下郷農協の性 格は分かるであろう。

生産と消費の聞に「資本」が介在することによって,消費も生産も破壊され る。サステイナブルの永続可能性は,利潤追及の犠牲になってしまうのであ

‑ 1 8 7  

(8)

る。下郷農協は「資本」を排除することによって,安全を確立してきたのであ

サステイナブル・デ、ィベロップメントとサステイナブル・ソサエティは,車 の両輪のような関係にある。生産の環境保全性,生活の環境保全性を基礎に社 会は民主性と人間性を高めることが可能となるのであろう。

3

節農民による地域活性化一長崎県地域活性化グループアンケー卜

7)ー

地域おこしが盛んに行われている。長崎県,どこの町へ行っても地域を活性 化しようと努力している人々がいるようになってきた。地域活性化はもの づくり(特産品川「ことおこし(イベン卜)

J  I

人づくり

Jであるととらえら

れ,宅急便での輸送,イベントの多様化,夜なべ談義などは,今や普通のこと になったようである。人々は集い,交流し地域は活性化している, しかし 地域が産業的に発展した,生活課題が解決されたなど地域社会づくり」に までは至っていないと思われるのである。

地域おこしの主役は青年たちである。この青年たちを励まし支えている青 年たちがいる。その多くは町役場の職員か商工青年である。農業青年のリー ダーは少ないようだ。もちろん地域差はあるが,大事なことは農業青年の地域 おこし(社会創造)への要求を聞くことである。なぜなら,それを欠いたまま では,サステイナブルな「地域社会づくり」に発展しないと思われるからであ

1.農民の地域活性化要求

『地域活性化グループアンケ}ト集』には,

1 4 8

のグループが登場してい る。そのうち,農民が何らかの形で参加しているものが

6 0

,さらに

6 0

のうち農 民だけのグループは

2 0

くらいである。すなわち,農民がぜんぜん入っていない グループが

9 0

,混在しているのが

4 0

,農民だけのものが

2 0

となるが,これだけ をみても農民の社会創造要求は相対的に低下していると思われるのである。

「地域活性化グループと活動の動機J(表 1)は,農民だけのグループを抜 き出したものである(ただし農協の地区婦人部などを除く〉。ここから,農 民の地域活性化要求を考えてみよう。

もっとも多いと思われるものは,農産物の商品化にたいする要求であろう。

1 8 8  

(9)

1

地域活性化グループと活動の動機

グループ名

青空グループ...・H

4

町内の専業農家の主婦たちが,家庭から一歩外に踏み出して,仲間

│をつくることによって生きがいを見い出そう

大島生活改善グル・

4

町の奨励で,昭和

4 7

年からビワの埴栽をはじめたのを機に,ビワの ループ i埴栽技術の習得,農業全般にわたる技術改善・生活改善を推進 太田尾生活改善グ…農業改良普及所の奨励ではじめた,ベっ甲漬(しょう油漬)が商品 ループ │化の目途がついたことからグループを結成

松島おこしの会…・・

4

松島に活力をもたらすため

松島農産加工組合...1もっと楽しい農家の主婦のイメージづくりをしよう。「売れるから 作ろう」という百姓をしたい。「ふる里便」のメニューを豊かにす るために加工品が必要

フェルムド出津

. . . . . . 1

まわりを荒畑に固まれていながら,他町からトラック販売に来てい る野菜をこぞって買ったり,野菜は出来てもそれを利用せず無駄に することが多く,また,野菜や添加物に無関心だったりすることか

がんばろう会 一一│農業に対する知識を深め,農地の有効利用,農産部の流通経路など の指導をうけながら将来の農業の基盤を固めたい。婦人部では農業 婦人のあり方や農産物の有効利用をはかるため,専門家の指導を受 けたいと思ったこと

精農会…・…・・…・・旧家用として生産した農産物が,消化できずムダに捨てられること 阪あったので,こういう無農薬の新鮮野菜を集めて,販売するため 東彼杵町特産品加…闘光客が増えているのに,町特有のお土産が少なく,個性ある特産 工研究会 回開発に着手した

有明ハウス部会…・出互いの農業に対する向上と親睦を図り,より以上の高所得と技術 阿上をめざして

がんこ村どじょっ…憧産物のブランド化が小口でもできないものかということで発足

たけのこグループ…国でとれる農水産物をドッキングした加工品作り

朝市振興会………

. . 1

島内でとれた野菜の良さを知ってもらい,島内の産業振興と生産物 同島内消費拡大を図る。

粟迎稲作研究会…・様落の会合の場の話の中に農業の会話がなくなり,他産業の話が多

K

なったので,なんとか農業の話がふえることを願って

fGAK 1  J会……尼岐の島おこしの一体化と「フラワーランド構想」の実現

長崎県地方課『地域活性化グループアンケート集』 平成

2

9

月より作成

「ベっ甲漬の商品化J

I

売れるから作ろう

J I

農産物の有効利用

J I

個性ある特産 品の開発J

I

農産物のブランド化J

I

ドッキングした加工品作り

Jなど,ほとん

どが農産物の商品化をめざしたものである。これは,婦人を中心とする要望で もある。この表をみて驚かされるのは,農業経営,生産技術などにたいする要 求がきわめて低いことであろう。

1 8 9 一

(10)

ここに,地域農業の可能性を切り開くという要求が含まれているのだろう か。たしかに,加工による販路の確立は希望を与えるものであるが,それほど 簡単なことではない。生産一加工一販売というサイクルが必要であり,多くは プラスアルファの現金収入でとどまってしまうと思われる。

社会創造的な要求は,

IGAKIJ

会に現われているのではないだろうか。

2.IGAKIJ

IGAK 1  J

会の名称は,壱岐島の

4

町の頭文字をとってつけられている。

構成人員は

3 1

名(男

2 6

名,女

5

名),平均年齢

3 0

歳,主な職業は農業である。

設立は昭和6

1

年で,比較的新しい会である。

この会の将来目標は,花を中心とした壱岐島おこしの一体化(環境美化,農 業活性化,観光振興〉→「フラワーランド構想」の樹立におかれている。具体 的 な 活 動 は 菜 の 花 シ ー ダ 一 事 業J I欄ちゅ りつぷ

CompanyJ I

豚汁サー

JI

2

回春一番イベン卜

89

風のフェスタ"参加J I春一番和船通信使参

J I

ひまわりシーダ一事業

JIGAK 1

おこし塾

JI

護美心配ジウム

J

などで

ある。

この会の環境美化,農業活性化,観光振興という課題の設定に,サステイナ ブルな地域社会創造の萌芽をみいだすことができるだろう。環境美化では不十 分であり,さらに環境の保全・発展を考える必要があるだろう。しかし地域 活性化グループのなかで唯一環境に視点をおいている会である。

長崎県における地域活性化グループを農民に即して考えると,流通過程を中 心とし,かっ多くは婦人にとって取り組まれているのである。彼らは,特産品 開発,イベン卜の開催,人づくりなど、に熱心であるが,まだ,地域づくり,す なわち,社会創造についての要求は出し切れていないと思われるのである。こ れを,サステイナブルなものに限定する必要などないが,生産,労働,生活,

消費を総合的に把握すべき段階にきていると思われる。

まとめ

サステイナブル・ソサエティ, こ れ を 永 続 可 能 な 開 発 ・ 発 展 の 社 会 」 と 訳すことにする。この内容は,今年(1

992

年)

6

月,ブラジルで開催される国 連環境開発会議

CUNCED)

において,利害対立的な議論が行われるはずで ある。しかしいかにその議論がまとまりのないものになろうとも,環境を保

‑ 1 9 0 ー

(11)

4

章社会創造と農民

全しなければならないという点まで崩れることはありえないだろう。この会議 は,今後の世界の方向を考える上でも注目してほしいと思う。

社会創造を一般的に考えるならば,実質民主主義的な実践と要求すべてがは いってくるであろう。しかしここでは社会創造の方向を,サステイナブル・

ソサエティとして規定した。こう性格づけると,多くのものが違って見えてく るようだ。遊佐町,大山町,下郷農協のそれぞれは,多くの研究者に高い評価 を受けているところであるが,これをサステイナブル,すなわち「永続可能な 開発・発展」論から見ると,地域農業論をこえて未来社会論まで構想できるの である。

長崎県における農民が,社会創造にどうかかわろうとしているか。それを,

地域活性化グループをとおして分析したが,地域社会づくりにまでは至ってい ないようである。これ以外にも,産直グループなどあるが同じような状況と恩 われる。長崎県農業は果樹をはじめとして傾斜地農業が多く,同時に,所有面 積は小さいのである。そのため農業での展望を語ることができるのは,みかん くらいなのかもしれないという現状がある。この困難を乗り越え,サステイナ ブルな地域社会をめざすには, もう少し時間がかかるであろう。

j

1 .  

この経過については,林智,西村忠行他『サステイナブル・ディベロップメント』

法律文化社

1 9 9 1

年に詳しい。

2 .

前掲書。尚,西村(発展論)と林(開発論)の論争になっている。

3 .

吉田武彦『水田軽視は農業を亡ぼす』農山漁村文化協会 昭和5

3

p p . 57~58。

尚,本書から多く学んでいる。

4 .

池上甲ー「農業水利近代化のもたらしたものと環境保全的農業水利の模索

J ( W

農業 と経済 別冊』富民協会

1 9 9 1

7

月)を参考に,まとめた。

5 .

大山町『けふもまたこころの鐘をうちならし』昭和5

7

年を参考に,まとめた。

6 .

下郷農業のしおり』昭和

6 1

年より引用。尚,渡辺成美『共同の原点を求めて』農 業・農協研究問題研究所

1 9 8 5

年も参考になる。

7 .

長崎県地方課『地域活性化グループアンケート集』 平成

2

9

月を参考に分析し

nud 

参照

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