IC 日本における生態系と生態観 (『人間と地球環 境』プロジェクトメンバー研究中間報告 : 環境変 動と生態系・人間(生活)への影響)
著者 佐藤 洋一郎
雑誌名 静岡大学学内特別研究報告
巻 1
ページ 40‑41
発行年 1999‑06
出版者 静岡大学
URL http://doi.org/10.14945/00008228
IC.
日本の生態 系は、 この 10000年 ほどの歴史の 間にどう変化 してきたのだろうか。 またそれ に 応 じて、私たちの生態観 一生態系に対する考 え 方 一はどう変化 して きただろうか。 このプロジ ェク トでは、 日本の生態系の変化や、生態系 と いうものに対す る 日本 人の考 え方の変遷 を調べ てみるとに した。参加 メンバー はさまざまな時 代の生態系やその時代 の人々の生態観に興味を もち、それぞれの立場か ら研究 をすすめ `
てき た。 ′
佐藤は、登 呂の時代
(弥生時代 )の 全般 を通 じて、稲作が どのよ うに行われていたか、 また それ′ を取 り巻 く環境が どうであつたかな どにつ いて議論 を展開 した。私たちが現在の感覚で水
F11と
いう場合、広大な平野全体 に広がる一面の 水田を想像す る。 しか し、そ うした水田の景観 はおそ らくず つと後 の時代の景観で あ り、弥生 時代頃の水 田はむ しろ休耕田な どが混在す る極 めて雑多な環境であつた と考え られる。田の中 にも、稲だ けでな く多様な植物が生育 し、また 昆虫、魚類、両生類、爬虫類な どが生息す る環 境があつた とみ られ る。おそ らくこうした多様 性が生態系の安定 を助 けていた もの と思われ
る。
静岡平野の森 は、カシ、シイな どの照葉樹の ほか、スギが卓越 してみ られたようである。多 くの遺跡か ら、カ シな どとともに多量のスギ材 が検出され るのはそのためであろう。
滝沢は、登呂の時代か らやや下 った古墳時代 ころの生態 系につ いて研究 をすすめている。 こ の時代の大 きな社会的活動の一つは古墳の造営 であった。その数 は全国で10万 にも及ぶ とい う か ら、それ による生態系への直接、間接の影響 はさぞ大 きかつた ことと想像 され る。古墳の造 営 とそれ に先立つ水 田の拡大の生態系への影響 は、滝沢 によると、以下のよ うに集約 され る。
1)水 田の拡大は、縄文時代 まで森 に覆われて いた平野部の景観 を一変 させた。つま り水田は
日本 にお け る生態系 と生態観
農学 部
佐 藤
洋 一郎
平野部 に展 開 していた森 を切 る ことで拡大 され た。
2)材 は、農具、畔や水路 の土止めな どに多量 に 使われた。
3)こ うした行為は森 を切 る 「開発」 であった が、それ はいわゆる森林 破壊 をもた らし、それ によって洪水な どの 自然 災害 が増加 した。
さらに、平安時代噴 には ,住 居や水田区域 の 後背丘陵 に針葉樹が
1曽えた とい う。マツが 日本 でポ ピュラー になったの も この ころの ことで あ ろうか。
小和 田は、中 世、近世 にお ける森の状態 を森 林保護思 想 との関係で論
tlている。 この時代 に は森 はず いぶ
Aノ大 きく切 られ て いた。 とくに平 野部の森 の減少は著 しか ったで あ ろう。小和 圏 によると、森の保護には、怖 れ、長怖 の念 が必 要であつた。畏
1市の念 にネ
1.会性 をもたせた もの がたた りだ とすれば、それ′ は何 らかの意 図 を
もって作 り出された もので ある ことはい うまで もない。鎮守の森の伐採 に対 す るたた りもそれ に発す るものなのであろ う。
これ と併せて、森の木 々 を切 る ことに対す る 様 々な禁 則が各地に認 め ら
)れる という。木 々、
とくに大本 はり
,って しま うと回復 までには とて つ もな く長い時間を要す る。 当時の人々は、 こ うした禁則 を設 ける ことで少 し
/でも木々 を残そ うとして いたのか もしれ な い。
今回の報告は研究 の途 中経過であるが、それ で も静 岡を中
Jいとした 日本 にお ける生態 系の変 化、生態 系 に対する人々の こころの移 り変わ り のあ らま しを旬
lることがで きる。静岡周辺で は、森 は もう 2000年 以 上 も前か ら切 られ は じめ ていた。 切 らヤ
lたあとには田が広が ったよ うだ がそれ は決
tノて現在のそれ のよ うな整然 と した ものではなかった。進む森林 破壊 に対 して、そ れを保護す る思想 も、中世 にはすでに生 まれて いた。森 に囲まれ、森 に支 え られて発達 してき た 日本の文化 には、森 を護 る という思想が発達
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