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William Faulkner : 作品とその技巧William Faulkner : 作品とその技巧
―Light in August の場合 その2―
ザ福 井 日日 子
The Sound and the Fury, As I:Lay Dying等と,つぎつぎに問題作を発表したFaulkner
は,1932年重ねて,長篇:Light in Augustを世に送った。彼の最も重要な作品を生み出し,
また最も力にあふれた時期の最後を飾るのにふさわしい作品となっている。
Faulknerの他の作品におけると同じようにこの作品においても,前作ほどではないにしで も,現在と過去の時間が,複雑に交錯する。その中に,Christmasを中心として,一群の人汝 の悲劇の過程が画かれて行く。一既成通念にとらわれて自己を見失った者,過去の命題に従 うことに汲汝として,現在の自己の尊厳と自由を自ら放棄した人,あるいは叉,過去の影の虜 となり,現実の意味を認めようとしなかったもの,等の悲劇が刻明に写されて行く。
一読して,この作品の中でも,「時」が重要な役割を果していることに気付く。おもだつナこ一 人物は,「時」に対して,それぞれに異った,特色のある反応を示し,それが又,彼等の運命一 を決定して行く。以下,それぞれの人物について検討してみたいと思う。
Lenaは現在を,ひたむきに歩く若い女である。両親の死後,家事のやりくりと,幼い弟妹 達の養育に明け暮れて,娘らしい余裕ある生活を夢みることもなげれば,自分自身の生活を顧み
る心のゆとりもない。唯,現在の一点を見つめて必死に生きて来た女である。彼女の愛人であ ったLucas Bunchは突然,都会に出て行った。音信もなく,すでに六ケ月も経った。少しの・
疑いもなく,なお,彼の誠実を信じ,生れ出ようとする子供のために,周囲の反対を押し切っ て,その後を追って行く。旅の結果について,あれこれ思い迷うこともなく,ひたすらに歩きつ づけて行く。彼女を乗せた荷馬車が,Jeffersonの町への山道をゆっくりと,しかし,休みなく,
ω 着実に登って行くのを遠望する時,馬車の動きは,時計によって刻み得るmechanical time などで,測ることの出来ない悠久の世界における「時」の歩みを象徴するかのようである。
she wagon moves slowly, steadily, as if here withi11七he sunny loneliness of the (2)
enormous land it were outsidc of, beyond all time and all haste, :更に, The wagon
(3) \ (4)
goes on, slow, timeless, と写し, The wagon has not stoPPed;time has not stoPPed.
とも言っている。
このように考えてみると,彼女の行動が,現在形で語り始められて行くのには意味がある。
即ち,彼女は,「時」の支配と制約を受けるような,そして又「時」と対立するような存在で
{1)William Faulkncr::Ligh七1n August, P.346
(2) Ibid.,
(3) Ibid.,
(4) Ibid.,
P・24 P.25 P・26
はななかった。彼女みずからが「時」なのであり,「時」の本質を内包していると考えられる のではないのであろうか。従って,彼女には,Christmasとはちがって,現在の時の支配を意 識することもなげれば,肩をいからせて,これに抵抗しようとする所もない。彼女は,唯,静 かに,「時」の前進にともなう動揺に,その身を素直に合わせて行くに過ぎない。The Sound (5) (6)
and the FuryのQuen七inの自殺の場における針を折られた時計,それは彼の敗北を意味したも のであった。彼女には,外的束縛をあたえるような,刹那的な,mechanical dlneは存在して
いなかった。挑戦すべき「時」がある筈がなかった。何故ならば,彼女には,「時」の流れは 行動の実体としてのみ意識されていたからである。それは,唯,休みなく,前進することであ った。一ケ月近くも真夏の太陽の下を歩き続けながら,その肉体的な苦痛を意識するよりも,
既に踏破した距離の長さに目をみはる。全く自然そのものとして, 「時」の本質を把握してい た。彼女は「時」と共に行動する。「時」と本質を同じうして,前進する彼女に, 「時」は特 別に存在しない。彼女は timeless の中に生きる事を身につけた自然児である。彼女の行動の リズムは,常に「時」のリズムと一致しているのである。As I Lay DyingにおけるCashもま た,行動の人として表現され,特にその前半,Addieの納棺に至る迄は, Cashは,鉋の音に よって表わされ,刻汝に追る「時」の刻みを表わしており,彼の行動のリズムは同じく「時」
のそれと一致している点は興味深い。
Byronもまた,行動の人であるが,彼の「時」に対する反応は,:Lenaのそれとは,性質を 異にする。彼は,「時」の動きに,自己の行動,生活の基盤を合せ得る人である。彼は,Lena のように,「時」の本質を内包しているわけではない。彼は現在の「時」を象徴する銀時計を いつもポケットに入れている。彼は,「時」の外的な抗東力を認めている。その支配する世界 を知っている。しかし,QuentinやChristmasのように,時間に挑戦したり,逆らったりは
しない。意識して,時間の中に住もうとする人である。 「時」のリズムに,自分の歩調を意識
.的に合わせて行くこと,それは,社会の一員として行動することを意味する。そこに,彼の生 きる道があることを知っている。Byronにとっては,時間は,社会に対する自分の責任の遂行 を促す契機であり,同時に,彼の理性を正す道具であったわけである。云いかえれば,時間は 一道徳的な規準であり,また,忠実な僕として,神への献身の誓を守らせる規律でもあった。
彼には,時間はなくてはならないものであったし,それによって生きることが出来た。生活に リズムをあたえるものであった。彼は,時間によって支配されたが,恰も自分を支配する神の ような存在として,受け取っている。挑戦も抵抗もしない。Hightowerにめぐり会えたのも,
時のリズムに自分の日課を合わせたことによるものであった。時間に合わせて週日はせっせと 働き,土曜日の夕方には,きちんと,時間通りに仕事をやめ,町に出て,教会の合唱団の指導
をする。また,彼の生活は一週間を単位に,更に大きく区切られて行く。
しかしこのようなByronの日課のリズムも, Lenaの出現によって,次第に変えられて行
(5)William:Faulkner、The Sound and七he Fury, P.95
曳6) Ibid., p. gg
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〈。自ら定めて,破ることのなかった仕事中の休、息時間をあっさり延長したり,日曜日の夜,
珍らしく,Hightowerを訪ねたり,一週間の予定にも大きな修正が,加えられるようになる。
He takes from his pocke七the silver watch and looks at it;then he七〇〇sits, at (7)
the other end of t畑stack of lllmber. lreckon five minutes will be about righ七. 休 息時間迄も,時計によって計画通りに休むのを見て,Lenaが And every time you s七〇pl for a minute, you keep a count of itP Row will they know you stoppedP A few (8)
minutes wouldn t make no difference, would i七P と目をみはるのも無理はない。彼がsilver
watchの支配から脱け出して, Lenaの影響を受けるようになった時,彼は始めて大きく人間 として成長し,いつまでも生き続けて行くであろうことが約束される。「時」に挑戦して敗北 したQuen七inと対照的な人として画かれている。 ……time is dead as long as i七is being (9>
clicked. off by little wheels;only when the clock stops does time come to Iife.
Byronはその意味で「時」の勝利者となった。
このByronとは又対立的な,時に対する反応を示す人物が紹介される。それは,かっての牧 師,今は引退し,教会の近くに,ひそやかに暮すHightowerである。
病弱な母と,Dr,であり,謹厳な牧師であった父によって,育てられた彼の家庭は,寒汝と して荒涼たるものであった。幼時,病弱であった彼にとって,現在は苦しみであり,悪であり 又,堕落であり,死を意味するものでもあった。そして祖父達が,活躍し,英雄達の活力に満 ちていた過去の世界こそ,光であり,善であり,生であるように思われた。そして Beyond the d6sk High七〇wer sits erec七. Between his parallel and downturlled palms and with (10>
his lower body concealed by七he desk, his at七itude is that of an eastern ido1・ と写し 出されるHightowerには,現在の時間に反応する柔軟性があるとは考えられない。まるで化石 のような印象を与えている。正に,過去に論りついた執念そのもの、ような姿である。事実 High七〇werにとって,現在の時間が支配する世界は存在しない。彼は,窓辺の机の前に坐っ て,大部分の時を過す。訪れる人も皆無に近い。時λ訪れて来るByronと,窓から直接聞こえ て来る教会のオルガγの音や人声だけが,彼を現在とつなぎとめていた。 しかしそれ等も,彼 を現在にひき戻すことは出来なかった。彼の化石のように動かない静かな姿勢を変える力を持 たなかった。
The study is lighted now, by a greenshaded readillg lamp sitting upon七he desk.
(11)
High七〇wer sits behind i七, in an ancient swivel chair, Byron in a straight chair opposite.
これは,B貰onが,例になく日曜日の夜, LenaのことでHigh七〇werを訪れた夜の場面であ る。それは,過去と現在の接触点を表わすかのような,symbolicな場面を作っている。
(7)William:Faulkner::Light in Augus七, P・47
(8) di七to.,
(9)William Faulkner l The Sound aud七he Fury, P.104
(!0)William Faulkncr::Ligh七in Augcst, P・83
〔口) 1bid.; p.71
更に,
Go away, Byron. Go away. Now. At once.:Leave七his place forever,七his terrible place, this七errible terrible place. I can read you. You will tell me that you have just learned love;Iwill tell you that you have just learned hope・ That s all;
hope.・・………・There is but one end to this, to the road that you are taking:sin or
. (璽
marrlage 。● 。●● ●。
とLenaという現実から目を離せとす、めるHightowerの言葉は,そっくりそのま、,彼 の人生観でもある。
H:ightower leans七here in七he window, in the Augus七heat. obvious of the order ㈲
in which he lives−the smell of the people who no Ionger live in life。
彼の中にのみ生きている過去の時によって支えられている。彼は,現在の時の支配を拒否す る。彼は暗い窓辺に坐って,日曜日と水曜日に,教会から聞こえて来る音楽を待ちうける。そ してその音楽は,彼が追われる以前の教会における日別の出来の思い出と結びつく。
Hightower hears七he distan七music when it first begins.……He knows almost七(>
the second when he should begin to hear it, wiヒhout recourse to watch or clock. He uses neither. has needed neither for twentyfive years now. He lives dissociated from.
αの mechanica1七ime.
彼の世界は,過去の死んだ時間に支配される。彼は過去の中に生きている。窓から直接聞こ、
える音楽も,彼の過去の世界を呼びさますスイッチの役割を果すに過ぎない。その音楽にまつ わる過去の一こま一こまが,まるで目前の出来事のように,鮮明に脳裡に画き出される。今は.
亡き,20年前のオルガγ演奏者のMiss carruthersの一挙手まで彼は思いうかべる。現実には一 全くmotionless eastern idolのように見える彼も,過去の幻想の世界では,自由に動き回る
ことが出来た。彼の住む世界は,正に,mechanica1七imeとは無縁と云うよりは,時とのつな がりを,自ら絶った孤立の世界である。彼はす、んで孤独の中に生き,過去の幻影と行を共に
した。そこに,彼の平和があり,静寂の世界があった。
彼の平和と静寂な世界を乱す者は,すべて閉め出さねばならなかった。Christmasは,次第一 に,彼の孤城をかき乱すものとなって行った。彼にとって,平和の乱されるところに,「生」
はなかった。Christmasの苦しみを,自らの苦しみと感じながら,これを救うことは出来なか った。自分の「生」が失われることを恐れた。しかし,彼の必死の努力も室しく,Christmas の土足は,平和の孤城を文字通り踏みにじった。彼の平和の城が崩れ去った時,彼もまた,生 きる力を失っていた。現実の強い破壊力の前では,はかない過去の幻影の孤塁は,ひとたまり もなかった。彼の勝れアこ知性も,感性も,道徳的基準も,すべて過去と言う「時」に合わされ一
②William Faulkner:Op. ci七り p.298
(B) Ibid., P・345
(14) Ibid., P・346
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ていた。現実の「時」に背を向けた彼の行手を暗示するもの,それは「死」しかあり得なか った。現在に生きながらえる資格に欠けていた。そこに,彼の悲劇があると作者は言っている もの〜ようである。
Hightowerのこのような「時」に対する反応とは,又違ったものを示すものとしてChristmas を取りあげたいと思う。言うまでもなく,彼は,この話の中で最も重要な役割を果している。
彼の出生は,詳かでないが,Christmas Eveに拾われたのだと言う。両親を知らず,孤児院で 幼時を過ごした彼は,真偽の程は知る筈もないが,Negroの血が混っていると,人に云われて
いる。確かな証拠を持っているわけではないが,彼も亦何となくそれを信じている。 Idon 七 (15)
:hnow. I believe I had! と云っている。 McEachernが,彼を養子にと申し出た時,院長が,
α6)
4 撃・@the child s parentage is important to you, you had better not a dopt one a七all と答
えたのは事実であった。 、 彼の孤児院での幼年時代は,まるで「影」のような存在であった。5才のChristmas間近か
1に,McEachernに,ひきとられて行った。神を恐れ,怠惰と虚栄を忌む長老会精神に徹した 人に育て上げるため,養父は厳しい訓練を課した。養家は,彼が,その社会に加えられる資格 を得るための訓練の場となった。宗教問答集の暗諦は,そのために,越えねばならない一つの 障碍物であった。養父は文字通り彼を鞭回した。銀時計を片手にして,一時間毎に,勉強の成
,果をはかるのであった。Christrnasにとって,養父の持つ銀時計は,守らねばならぬ掟の威力 を示すものであり,匁向えば,恐ろしい刑罰のあることを予告するものに他ならなかった。
:McEachernにとっては,生活活動を規制し,それを測定するところの客観的尺度であった。
それは,自らの行動を合一させる基準と言うよりは,他を批判し,懲らしめるための尺度と云 ってもよかった。こうした掟に従うには,Christmasは余りに野人であった。彼は,失心まで してこれに抵抗しだ。
これほどまでに,養父のsilver watchが表わすものに反抗しだChristmasではあったが,そ
:れは,彼が世間なみの人間社会に生きたい望を持っていなかったことを示すわけではなかっ た。彼の一生は,その普通の人間社会に生きたいという欲望につらぬかれていたと言ってよい のではないのであろうか。養父から預けられた仔牛を売り飛ばして,彼が生れて始めて,買い
=求めたものが,adollar watchであったと言うことは興味あることではないのであろうか。
彼は女に会いに行くために,真新しい洋服と,そして時計を買ったのである。養父の持つ銀 時計が,冷い掟を表わすものであるならば,この一二時計は,彼の青春の欲望,世間並の社会 生活へのあこがれ,意欲を表わすものと見てよいのではないのだろうか。しかし彼は,時計の ねじを巻かなかった為に,待ち合わせの時間に遅れて了うのである。即ち意欲を持ちながら,
それを生かして使う条件を守ることが出来なかったのである。
He took out the dead watch again and looked at it. The watch was dead because
㈲William Faulkner::Ligh七in August, P・84
(1⑤ Ibid,, p.184
nhe had had Ilo chance七〇wind i七. He had been made late by七hem who had given α7)
∫him no opportunity七〇wiαd the watch a,nd so know if he were late or not.
彼は掟を守ることにも,条件を満すことにも不得手であった。そして又,彼をそこに追いや った彼の環境も無視することは出来ない。世間なみの生活に合わせたいと云う強い欲望を持ち
.ながら,これを満たすことが出来ない。彼はいつも,時計のねじを巻く条件を満たす事が出来 ずに,現在の社会に入り込むことが出来なかった。そして次第に,死へと追いやられて行く。
、時間を合せ得ないことは,「死」を意味することであった。
McEachernにひきとられてから,成人になるまでの彼の生活は,殆ど土曜日と日曜日を周 期として一週間という比較的長い時のリズムの中に色汝な体験がつまれて行く。前述の宗教問 答集の暗記をはじめ,長い女性遍歴等汝,すべてがそうである。しかし,金曜日夜半行われた
と思われるBurden夫人殺害後,捕われるまでの一週間は一日一日を単位として画かれてい る。曜日が明確に記されて区切られて行く。Christmasが愈・々追いつめられて,「時」の支配 から,社会から,正に切り離されようとする。必死に,「時」にしがみっこうとして,狂奔す る様はすさまじいばかりである。
Christmasの逃走過程に点けるFaulkncrの時の扱い方は至妙である。
When he thinks about time, i七seems to him now七ha七for thirty years he has lived ゴnside an ordery parade of named and numbered days董ike fellce pickets, and that one 9:night he went to sleep and when he waked up he was outside of them. For a七ime . ⑱
&fter he fled on that:Friday night he tried to keep up with the days, after the old habit.
Christmasは逃走中,はじめの中はなんとか曜日の観念を維持していた。しかし,次第に曜 日の観念を失って行く。そしてそれが又一層彼の焦慮の念をかりたて、行く。彼にとって食物 よりも,何よりも,時間が大切であった。何曜日であるか確めたかった。時間から切りばなさ
』れた人の懊陰な姿がそこにある。そして次第に時間の秩序が失われて行く。 Time,七he space
・of light and dark, had long since lost orderliness, 時間の観念が薄れ、ば薄れる程,彼
の時間について執着が倍加する。そして,人汝は愈汝彼を恐れ,彼にあたえるものは,驚き と恐怖の叫び声だけとなって行く。そして今や完全に,人間の社会から,時間の支配から,
切り離されたことを自覚すする。そして遂に lt was as七hough now and at las七he had an actual and urgent need to strike off the accomplished days七〇ward some purpose,
⑲
some defini七e day or act, withou七either falling short or overshooting. と彼は静かに,
そして充実した日汝を何らかの目的に用いたいと願う境地になる。社会に生きる資格として のさとりを漸くにして得るのであるが,それも遅きに過ぎたようである。30年の生涯,すべて のものに反抗し,自分を忘れて駆けまわっていた彼が,漸くに辿りついたところ,それが,
GのWilliam Faulkner:Light in Angust, P・160
α8 1bid., p.314・
α9 1bid., p.317
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William Faulkner:作品とその技巧この静かなさとりであった。彼は,社会に歩調を合わせて,世間なみの生活を送りたいという 強い欲望を抱きながら,満たすべき条件を満たさなかっナこがために敗北しなければならなかっ た。彼は,漸くにして,如何にして時計のねじを巻かねばならぬかを会得したけれど,即ち漸 くにして,社会に生きながらえるべき条件を満たすことが出来たけれど,それは,遅きに過ぎ た。彼の行手には「死」以外の何物も見る事は出来なかった。dead wa七chこそ彼のsymbo1で あると言えそうである。
このように考えてみると,Faulknerがこの作品において示している「時」は極めて意味深い ものがある。「時」は人が人間社会に生きながらえて行くに大切な,欠くべからざる条件を意 味するものであり,約束とか基準とかを表はしているものと思われる。そしてこの「時」に反 抗したり,背を向ける事は,社会的の死を意味するもの、ようである。そして又過去の化石と 化した因襲その他,命のない栄光にこだわり,現在の「時」の意味を無視するものは,やがて 破減するものである事を暗示している。
「時」の自然児とも云うべきLenaと,彼女によって,現在の時間の世界を超越して,人間 的に大きく成長したByronこそ,人間社会の一員として生きながらえる資格ある人であり,明
日につながり得る人達であると言えるであろう。この意味でも,Ligh七in Augustは, The Sound and the Furyにおける「時」の命題を更に追求,発展させたものと言うことが出来る。
Bibliography.
(1)Faulkner William. As I Lay Dying, New York, Modern:Library,1946
(2)Faulkner, William. The Sound and七he Fury, N・Y・Modern:Library,1946
(3)Faulkner, William.:Ligh七in Augus七,:London, Cha七七〇&Windus 1952
(4)Campbe11, Henry,&Ruel Fos七er・William:Faulkner, Oklahoma Univ, of l)klahoma,195工
(5)0℃onner, William. The Tangled Fire of William Faulkner, Minnesota, Univ, of
Minneso七a,1954(6)Malin, Irviug. William Faulkner, an In七erpre七a七ion, Calif・S七anford Univ・Press,1954
(7)Hofflnan, Frederick. William Fau1kner, Two Decades of Cri七icism, Michigan, Univ. of
Michigan,1954(8)Miner Ward. The World of William Faulkner, Duke Univ・Press,1952