患者の権利確立への道
−患者の権利に関する世界的基準たるべきものを参考としてー
石 崎泰 雄
はじめに
一︑人格の尊厳の尊重
二︑患者の意思決定権
三︑情報に関する権利
四︑秘密保持とプライバシーの権利
五︑その他各憲章等において特徴的な内容の権利
おわりに 資料︵筆者訳︶
患者の権利に関する世界医師会リスボン宣言
ヨーロッパにおける患者の権利の促進に関する官三口
患者の権利についてのヨーロッパ憲章
患者の権利確立への道 ︵都法四十九ー一︶ 一七一
一七二
はじめに
︵1︶ 患者の権利を保護・実現するのに最も有効な方法は︑﹁患者の権利法﹂を法律として制定することであろう︒近 ︵2︶ 年ヨーロッパを中心としてその法制化に踏み切った諸国家が見られるが︑患者の権利に関する医療先進国といわれ
る諸国においても︑いまだ立法化がなされずにいるところも多い︒これらの国にあっては︑裁判規範とはなりえず ︵3︶ 弱い効力しかない﹁患者の権利憲章︵章典︶﹂という形での国家レベルの指針を定めているところが多い︒
これに対し︑日本にあっては︑﹁患者の権利法﹂成立への最大の﹁抵抗勢力﹂として︑日本医師会の存在が大き ︵4︶ くその前に立ちはだかっていた︒というのは︑一九九五年の第四七回世界医師会総会で修正されたリスボン宣言の
採択に際し︑唯一棄権したのが︑日本医師会だったからである︒しかし︑その日本医師会が定めた﹁診療情報の提
供に関する指針﹇第2陛﹂などを見ると・現在では・その姿勢にもかなりの実質的変化を認めることができる・
日本においても︑究極的には︑患者の権利法を制定することが望ましいが︑より現実的には︑まず︑国家レベル
での﹁患者の権利憲章﹂を策定し︑これを世に示すことが肝要であろう︒この目的に沿うためにも︑現在︑世界的
水準を示す﹁患者の権利憲章﹂を採り上げ︑これらを分析することにより︑日本の国家的レベルの﹁患者の権利憲
章﹂ひいては﹁患者の権利法﹂への示唆を得ることができればと考える︒
一、
l格の尊厳の尊重
患者が︑その人格を尊重された医療を受ける権利があることは︑既に一九七三年のアメリヵ病院教会の患者の権
利章典において示されていた︒この患者の人格の尊重というものが︑患者の権利の根幹を形成し︑患者の個別のさ
まざまな権利がそこから導出されると考える︒
リスボン宣言においては︑その序文で︑患者の自立と正義が保障されるものでなければならないことが宣言され︑
﹁10.尊厳への権利﹂において︑患者の尊厳が尊重されねばならないこと︵一〇ρ︶︑患者は人間らしい終末期医療を
受け︑できうる限り尊厳ある快適な死を迎えるに際し︑助力を提供される権利を有する︵﹂O°ρ︶ことが示される︒
芳︑〒・ッパにおける患者の権利の促進に関すゑ罰︵以下・﹁ヨー︒ッパ宣一日﹂と略記する︶においては・
特に﹁患者の権利 一.医療における人権と人たる価値﹂において︑これが医療制度に反映されねばならないこと
が述べられ︑人間としてその人格が尊重される︵一゜﹂︶ことが示され︑以下︑自己決定の権利︵一゜心︒︶︑身体的・精
神的不可侵の権利およびその人格を保護される権利︵﹂°ω︶︑プライバシーを尊重される権利︵﹂°﹄︶︑倫理的・文化
的価値観および宗教的・思想的信念を尊重される権利︵﹂°α︶等︑人格の尊重の権利がまず冒頭に列挙されている︒
このように︑患者は︑治療・ケアを必要とする単なる客体ではなく︑尊厳あるひとりの人間としてその人格が尊
重されねばならないことが大前提とされている︒既述したようにこれは︑患者の種々の権利を考える際の重要な基
準となる概念であり︑これら権利憲章では︑実際にそれが反映されているものと考える︒以下︑患者の権利として
掲げられたもののうち特に注目すべきものを採りあげてみたい︒
患者の権利確立への道 ︵都法四十九ー一︶ 一七三
一七四
二︑患者の意思決定権
個別具体的な患者の権利の中にあって︑その中心的なものの一つは︑患者の意思決定権である︒リスボン宣言で
は︑まず﹁2.選択の自由の権利﹂において︑医師・病院を選択する自由があり︵N蝉゜︶︑いかなる治療段階におい
ても他の医師の意見を求める権利︵N金●°︶が認められており︑セカンド・オピニオンの権利が︑患者の医師.病院
の選択の自由の規定の中に入れられている︵bo°げ゜︶ところが重要である︒
次に﹁3.自己決定の権利﹂において︑患者は︑自分自身に関し意思決定をするための自己決定の権利を有する
︵ω゜知゜︶ことが示されるが︑これには︑その意思決定の結果がどういう意味を持つのか︵ω゜知もピぬ︶ということを患
者が理解していることが必要だとされている︒意思決定は︑自己責任という側面を伴うが︑それもその意思決定の
結果ということが十分に理解された上での決定でなければならず︑そのために医療提供者が情報を患者に提供して
おくべきだということを強く喚起するものである︒
意識がない患者︑意思を表示できない患者︑法的無能力者︵制限行為能力者︶の患者の場合にあっては︑その患
者の意思を代理できる者から同意を得なければならず︵吟゜③゜m°③゜ ∨︶︑またそのような場合でも︑患者の能力の許す限
り︑患者本人の意思決定が尊重されねばならず︵0°知二O°ぴ゜︶︑さらに代理人に対する情報の開示を禁ずる権利︵㎝ピ゜︶
まで認められている︒
一方︑ヨーロッパ宣言では︑これらの規定がさらにより詳細になり︑代理人がいない場合の︑その代わりとなる
意思決定過程を提供するための適切な措置︵ω゜べ︶が必要であるとされている︒これは︑特に日本の医療の現状に
対して示唆的である︒日本の医療現場の慣行では︑このような場合︑担当医が患者本人に代わってその判断をした
り︑患者の適当な家族に意思決定をさせることが一般的であったとい︑麓・患者の代わりにその意思決定過程に関
与する法定代理人︑任意代理人・さらには代わりとなる親族の順枇を含めて・できうる限り・患者の意思決定に近
いものが反映できるようなシステムが目指されており︑きわめて有益な示唆を提供するものと評価できよう︒これ
は︑法的に正当な代理人による意思決定が︑患者本人の意思決定の実現を図るようなシステムでなければならない
のと同時に︑たとえ正当な代理人といえども︑患者本人による意思決定ではないのであるから︑できうる限り︑患 ︵10︶ 者本人の意思を尊重しなければならないことを表明したものであり︑きわめて重要な視点であると考える︒
三︑情報に関する権利
患者の意思決定権と密接な関係にある権利として︑情報に関する権利がある︒リスボン宣言においては︑患者は自
己の診療情報をすべて提供される権利を有する︵S知゜︶ことが原則とされ︑二つのケースがその例外とされる︒一
つは︑第三者に関する秘密の情報は︑その者の同意がなければ患者に提供してはならない︵べ゜③゜︶とされるもので
あり︑もう一つは︑患者の生命・健康に重大な危険をもたらすと信ずる充分な理由があるときのケース︵Sぴ゜︶で ︵11︶ ある︒この規定は︑日本の厚生労働省ほかの﹁診療情報の提供に関する指針﹂に採用されている︒
また︑患者の明示の意思表示による情報を提供されない権利︵べ江心oα .∨︶︑さらには︑患者自身に代わって情報を
提供される者を選任する権利︵量心・色が認められている・これは・自分自身は直接知りたくない纂であって
も︑自分の代わりに提供される者を確保し︑自分にとって必要となったときに︑その者から情報を得たり︑その情
患者の権利確立への道 ︵都法四十九ー一︶ 一七五
一七六
報を前提とした意思決定をする際等に自己に不利益が及ばないようにするための手段として有益であると考える︒
他方︑ヨーロッパ宣言で注目されるものとして︑患者の病気に対する詳細な情報提供の規定がある︒患者は︑そ
の病状についての医学的事実を含めたその健康状態︑提示された治療︑その治療に伴う危険性と利益︑治療をしな
い場合の結果を含めたその治療の代替療法︑および診断・予後・治療の経過について充分な情報を提供される権利 ︵13︶ を有する︵心oN︶ことが明記されている︒これは︑インフォームド・コンセント法理が形成・発展されていく過程
で判例・学説によって明らかにされてきたものの採用といえよう︒
四︑秘密保持とプライバシーの権利
患者は︑その健康状態︑病状︑診断︑予後︑治療︵鼻゜一︶︑その他の個人を識別できるすべての情報︵°︒°知゜否﹂︶の
秘密保持がなされる権利を有し︑その死後においても秘密保持がなされねばならない︵o◎◆①︽﹂ .W︶︒この点に関して
は︑日本では︑患者の死後のその権利保護の姿勢は希薄であり︑全くといってよいほど顧慮されない状況にあるこ ︵14︶ とを批判していたが︑その状況が改善されていないことは︑個人情報保護法等が施行されている今日でも同様であ ︵15︶ り︑また各種﹁診療情報の提供に関する指針﹂においてもやはり同様であり︑これは今後の課題であろう︒
リスボン宣言には見られないが︑ヨーロッパ宣言に採用されているものとして︑いわゆる自己情報の訂正権の規
定がある︒患者の個人データ・医療データが不正確・不完全・不明瞭・旧くなったり︑診断.治療.ケアの目的に
とって重要でないときは︑その訂正・補完・削除・明確化・更新を請求する権利︵+㎝︶が認められている︒この
ような個人医療情報の患者による訂正等の請求権は︑そうした情報をそのままにされていたのでは︑そのデータを
もとに誤った医療行為がなされる危険性があるのを回避する意味もあり︑患者の生命・身体に対する保護の点から
︵16︶ も重要な規定であるといえよう︒
〒・ッパ宣言独自のものとしては︑さらにプライバシーの議に関する規定がある・医療行為は・原則として
それに必要とされる者のみの前でなされねばならないこと︵吟゜べ︶︑入院患者が︑プライバシーを確保された物的施
設を求める権利を有すること︵吟゜o◎︶が規定される︒
さらに患者の権利に三ての〒・ッパ戴︵以下・ヨー︒ッパ憲章と略記する︶では・診断行為・専門医の受
診︑内科的.外科的治療一般においても受診の間︑そのプライバシーを保護される権利︵6ープライバシーと秘密
保持の権利︶が認められている︒
五︑その他各憲章等において特徴的な内容の権利
リスボン宣言は︑世界医師会により作成されたものであるだけに︑その﹁1.正当な水準の医療を受ける権利﹂
において︑特に医師の患者に対する責務を背景とした規定が列挙されているところにその特徴がある︒たとえば︑
患者が︑医療上の判断等を自由になすことのできる医師だと考えている医師から治療を受ける権利を有する︵﹂°
ぴ・︶こと︑医師は︑医療水準の擁護者たる責任を担わねばならない︵ピ9︶こと︑患者は︑健康教育を受ける権利
を有しており︑医師が︑その教育活動に積極的に関与する義務を有する︵9.健康教育の権利︶ことなどである・
ここには︑根底に患者の人格の尊厳への尊重の理念に裏打ちされた医師の崇高な責務が脈打っている︒
一方︑ヨーロッパ宣言は︑リスボン宣言よりすべてにわたって︑その内容がより詳細となっており︑患者の権利
患者の権利確立への道 ︵都法四十九ー一︶ 一七七
一七八
憲章なり患者の権利法を策定する際の︑最も参考になるものだといえよう︒リスボン宣言において見られなかった︑
裁判所︑その他の機関に対する苦情申立てシステムの必要性や殊にそれに関し相談すべき利害関係者以外の者の存
在︑さらに患者のための助力や代理を可能とすることを保証するシステムの構築が要請されている︵Φ゜0︶︒このよ
うに患者は︑ケア・治療の過程において︑助力や助言をその家族・親類・友人から受ける権利を有する︵㎝゜㊤︶こ
とも規定される︒ ロ 他方︑ヨーロッパ憲章は︑イタリアに本拠を置くNGO︵非政府組織︶によるものではあるが︑EU基本権憲章
を受けて策定されたものである︒EU基本権憲章は︑二〇〇〇年一二月ニースにおいて採択されたものである︒
﹁第一章尊厳︑第二章自由︑第三章平等﹂の三つの基本的人権を機軸として構成されている︒まず︑ヨーロ ッパ憲章との関連で重要なところは︑﹁第一章尊厳第三条人たる完全性の権利﹂である︒人たる身体的.精
神的完全性を尊重されるところから︑医療に関し︑法律に定められた手続に従った情報提供に基づく患者の自由な き 同意等重要な権利が導かれる︒また︑﹁第二章自由第八条個人的なデータの保護に関する規定﹂では︑個人
情報の保護とアクセス権に加えて情報訂正権などが規定されている︒医療に最も直接的に関連する規定として﹁第
三章平等第三五条疑﹂がある・そ︑三は・特に予防医療を受ける権利⊆一・及があるのが注目されるほか︑
人の健康の保護が︑高いレベルで保障されるべきことが宣明されている︒
このように人の尊厳に至尊の価値を認めるEU基本権憲章全五四条を土台として形成されたものがヨーロッパ憲
章である︒ヨーロッパ憲章の中で興味を引く規定としては︑できうる限り個人の必要に適応した診断.治療内容を
求める権利︵12ー個人に適応した治療に対する権利︶があり︑いわゆるオーダーメイド医療を含めて︑それぞれの
患者ごとに最適の治療法を目指すものである︒他に︑迅速に予定時間に必要な治療を受ける権利︵71患者の時間
を尊重する権利︶もみられるが︑一四個に集約された患者の基本的権利として認めるにはあまりに墳末的なもので
あるとの感は拭えない︒しかし︑この点に関しては︑この憲章が︑EU基本権憲章と密接な関連のもと形成された
ものであり︑双方の参照により︑その内容の意味するものが明確化するという意味で︑常にEU基本権憲章を前提
として考察する必要があるということを忘れてはならないであろう︒
おわりに 患者の人禁明確に認識されだしたのは・ようやく一δ世紀の中葉に至っての題であり・人類の医療の歴史か
ら見るとごく最近のことにすぎない︒しかし︑その後の進展は目覚しく︑先進諸国では︑国家的レベルでの患者の
権利憲章︑さらに進んで患者の権利法という法制化を実現した諸国家も現れだしている︒確かに患者の権利憲章と
いう形態では︑実効性が弱く︑患者の権利保護を図ることは難しいといわれている︒しかし︑それが︑国家レベル
のものとして採用されると︑たとえば︑日本において︑厚生労働省が患者の権利憲章を策定したとすると︑所管の
国立病院機構等においては︑それに従った実務的運用が求められることになる︒そして︑それは結果として︑文部
科学省所管の国立大学付属病院︑日本医師会所属の会員にも影響が及ぶこととなり︑ほぼ同一内容の﹁指針﹂なり
がそれぞれ策定され︑その運用を見ることになろう︒こうした先例は︑すでに︑﹁診療情報の提供に関する指針﹂
の実施において実証済みである︒このようにして︑日本のほとんどすべての病院で︑患者の権利憲章の実現が図ら
れていくことが予想される︒そして︑そのような医療の現場の実態を踏またうえでの︑患者の権利法の制定という
ことが︑より容易となり︑単なる机上の絵ではなく現実的なものとしてその実現を見ることが可能となるものと思
患者の権利確立への道 ︵都法四十九ー一︶ 一七九
一八〇
われる︒
︵1︶ 法制化のために国会審議の参考に供すべく作成されたものとして︑林かおり﹁ヨーロッパにおける患者の権利法﹂︵二〇
〇六年︶参照︒これに関しては︑含§ 葺σ︒o甘這昌昌ミ9這Ω゜︒OO霧8\°︒°︒忠心︒一゜︒°︒心︒心︒°︒c︒°忠㊤留品OOOOOOまOO\笥﹈↑国\
NO自O⑩心︒一﹂°︒員o島﹂も烏︾を参照︒
︵2︶ たとえば︑フィンランド︵一九九二年︶︑オランダ︵一九九四年︶︑イスラエル︵一九九六年︶︑リトアニア︵一九九六
年︶︑アイスランド︵一九九七年︶︑ラトビア︵一九九七年︶︑ハンガリー︵一九九七年︶︑ギリシア︵一九九七年︶︑デン
マーク︵一九九八年︶︑ノルウェー︵一九九九年︶︑ジョージア州︵二〇〇〇年︶︑フランス︵二〇〇二年︶︑ベルギー︵二
〇〇二年︶︑エストニア︵二〇〇二年︶︑ルーマニア︵二〇〇三年︶︑キプロス︵二〇〇五年︶などである︒なお︑これに関
しては︑目Φ勺知註Φ昌ω.國信け9↑§切巨国巨80︽宮百ミ昌Φ一゜巨切雪o\〜司巴・o﹃竃o§昌①巨゜︒°宮日︾︑弓ゴΦ国ξo冒Φ芦○ぎ已昔日碧
c︒bΦΦ畠︽巨百⁚妻︒日亘已ユ゜︒目雪゜Φ自o苫b∈⑮︒bΦΦ︒冨゜︒\︒之b︒OO朝⊥︶叩Oc︒°暮∋︾など参照︒
︵3︶ たとえば︑イギリス︵一九九一︑一九九七年︶︑チェコ︵一九九二年︶︑スペイン︵一九九四年︶︑アイルランド︵一九九
五年︶︑マレーシア︵一九九五年︶︑南アフリカ︵一九九六年︶︑ポルトガル︵一九九七年︶︑香港︵一九九九年︶︑スロバキ
ア︵二〇〇〇年︶︑ドイツ︵二〇〇二年︶︑オーストリァ︵二〇〇一︑二〇〇三年︶︑などである︒なお︑これらに関しても︑
前掲注︵2︶のホームページ等を参照︒
︵4︶昌︒§邑呂Φ合巴﹀°︒°︒︒6一豊8ぎ邑寓Φ9巴>m°︒︒○一豊自O︒︒巨③試8︒5日Φ冒雷︒h号Φ霊9艮Φ合8は巴苫2ma巴夢︒
一已啓Oo∈ぎ戸゜︒N巨⌒躍゜u心︒OOロ゜︽ゴけ●b⁝⁝き③゜5Φ<m心︶O巨OS一︽右プ雪︾なお︑この日本語訳として︑後掲﹁資料﹂︵筆者訳︶ のほか日本医師会訳﹁患者の権利に関するWMAリスボン宣言﹂︵二〇〇五年︑︽宮百一i°日Φユb巳b言ぎ≧°︒ぴ05°置邑︾︶
も参照︒
︵5︶ 日本医師会﹁第2版 診療情報の提供に関する指針﹂日本医師会雑誌一二八巻一〇号付録︵二〇〇二年︶︒なお︑︽宮8⁚\
ぎ目o伜自包\巳︒巨︵胃思oゴo心︒°宮邑︾も参照︒
︵6︶ ﹀日①臣oふ5=o°︒甘け巴︾°・°︒09巴δP︾勺①け信旨︒︒︒ロ巨o﹃國唇盲一qっやω゜これに関しては︑︽葺号⁝ミ亘自ΦO≦o完Φ冒o﹃管旨﹃§這四け﹂o昌
﹄巨ーo戸冒けω゜宮日︾参照︒
︵7︶づS法口Φ③穿○田§③江︒5口畳8巴○旨8穿国烏8P>OΦ︒巨巴一88夢Φ写︒目呂︒づ︒竜餌・信§.冒訂日国ξ8P﹂㊤・⊃吟゜
︽宮百 きo°ヨ蒜㊦コo巨9心与巨6\Φ已゜⊆°巳胃③註oづ一Φ忠゜b烏︾なお︑この日本語訳として︑後掲﹁資料﹂の筆者訳のほか︑患者
の権利法を作る会訳﹁ヨーロッパにおける患者の権利の促進に関する宣言︽宮8⁝﹂9江Φロ寸﹃唇古゜︒°o巳b\c・巨目○巳◆宮ヨ︾
も参照︒
︵8︶ 石崎泰雄﹁患者の意思決定権確立への道﹂法学会雑誌四八巻二号︵二〇〇七年︶一六二頁以下参照︒
︵9︶ 石崎・前掲注︵8︶一六六頁︒
︵10︶ 石崎・前掲注︵8︶一七八頁︒
︵H︶ この問題に関する分析は︑石崎泰雄﹁日本の病院における﹃診療情報提供﹄の法的課題﹂法学会雑誌四七巻二号︵二〇
〇七年︶七頁以下参照︒
︵12︶ 知らされない権利に関しては︑石崎泰雄﹁医療における癌患者のインフォームド・ディシジョン﹂駿河台法学一七巻二
号︵二〇〇四年︶三二頁以下参照︒
︵13︶ 石崎泰雄﹁医療契約における医師の説明義務と患者の自己決定権﹂早稲田法学会誌四二巻︵一九九二年︶三九頁以下参
照︒ ︵14︶ 石崎泰雄﹁日本の病院における﹃カルテ開示﹄の法的問題点﹂法律時報七三巻二号︵二〇〇一年︶六六頁︒
︵15︶ 石崎・前掲注︵H︶一五頁︒
︵16︶ 石崎・前掲注︵11︶二二頁︒
︵17︶ これに関しては︑開原11樋口・医療の個人情報保護とセキュリティ︵第2版︶︵有斐閣︑二〇〇五年︶参照︒
︵18︶ ﹀昆くΦ9昔o⇒︒︒巨bZΦ苔o﹃●国自o廿o碧○け①詳20﹃㊥巴一〇昌乙︒.國唇貫心︒OO卜︒°これに関しては︑︽宮9⁝菖゜①6﹇冒oo︷爵Φ⇒°︒巨b59
∋8ざ巨o自︒弓窪 ︒冨詳︒汽b島︾参照︒
︵19︶目︒国已︒廿Φ昌田邑昌巴け三ゴΦ○︒芦o旨巳葺︒○︒目已゜︒﹂︒ロ這冨9§2︒弓巨合∋巴巴冒書︒﹃夢①国ξ︒廿Φ芦d巳βNOO⇔
これに関しては︑︽巨9⁚§ミ゜Φ已o廿邑゜Φ已冨゜Φミ︒冒詳豊創Φ註巨13°巨目︾参照︒
︵20︶ 第3条 人たる完全性の権利
1 すべて人は︑その身体的・精神的完全性を尊重する権利を有する︒
2 医学および生物学の分野においては︑以下の点が特に尊重されねばならない︒ 1法律に定められた手続に従った︑情報提供に基づく当人の同意 −特に人の選別を目的とした優生学的な施術の禁止
人体およびその一部から営利を得ることの禁止
クローンにより人間を生み出すことの禁止
︵21︶ 第8条 個人的な情報の保護
患者の権利確立への道 ︵都法四十九ー一︶ 一入一
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1 すべて人は︑自分に関する個人データの保護の権利を有する︒
2 個人的なデータは︑特定の目的のために当人の同意に基づいて︑あるいは法に定められた他の何らかの正当な根
拠に基づいて︑公正に処理されねばならない︒
3 この規則の遵守は︑利害関係のない機関による管理に服さねばならない︒
︵22︶ 第35条医療
すべて人は︑国内法と慣行によって確立された条件のもとで︑予防医療を受ける権利および医療による給付を受ける 権利を有する︒人の健康の保護が︑EUのすべての政策と活動の定義と実行の際に高いレベルで保障されねばならな
い︒
︵23︶一九四八年の﹁世界人権宣言﹂や﹁ジュネーブ宣言﹂などである︒己巨a2①試05ΦΦ9邑﹀°・°︒Φ日げ貯︵心︒aωm仇︒︒δ5︶ご巳くΦ〒
°︒巴OΦ︒巨巴け田9出巨目5國唇貫一⑩﹄︒︒°これに関しては︑︽●σ一b⁝﹂°巨゜O﹃処○<ΦヨΦ冬§吟oo°け計邑︾参照︑および弓ゴΦ゜︒Φ8昆
ΩΦ5Φ邑ピωΦ∋巨冒昆夢oぎ﹃一〇呂o合o巴﹀°︒°︒oo︷豊oPOΦ6巨騨け∈oロo﹃ΩΦ田①<靭﹂逡○︒°これに関しては︑︽宮百 ぎ≦⇒③゜ロ①■\Φ\
冒o巨ミo°︒°宮日︾参照︒
資料︵筆者訳︶
患者の権利に関する世界医師会リスボン宣言
一九八一年九月二〇月︑ポルトガル︑リスボンにおける第三一回世界医師会総会で採択
一九九五年九月︑インドネシア︑バリ島における第四七回世界医師会総会で修正
二〇〇五年一〇月︑チリ︑サンティアゴにおける第一七一回世界医師会総会で編集上の修正
序文 医師とその患者および広く社会との関係は︑近年著しい変化が見られる︒医師は︑常にその良心に従い︑かつ常に
患者の最善の利益のために行為しなければならないが︑同時に同様の努力を患者の自律と正義を保障するために払
わねばならない︒以下に掲げる宣言は︑医療従事者が支持・推進する患者の主要な権利を表明するものである︒医
療の提供に関与する医師およびその他の人および組織は︑この権利を認め・擁護する共同の責任を担っている︒立
法︑政府行為︑あるいはどのような行政機関・組織であろうと︑患者のこの権利を否定する場合には︑医師は︑常
にこの権利を確保・回復する適当な手段を遂行しなければならない︒
原則 1.正当な水準の医療を受ける権利
a すべて人は︑差別されることなく適切な医療を受ける権利を有する︒
E すべて患者は︑いかなる外部的干渉を受けることなく臨床上・倫理上の判断を自由になすことができると患者
が認識している医師から治療を受ける権利を有する︒
C 患者は︑常にその最善の利益に従って治療を受けることができる︒その治療は︑一般的に認められた医療原則
に従ってなされねばならない︒
患者の権利確立への道 ︵都法四十九ー一︶ 一八三
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止 医療水準の保障は︑常に医療の一部となっていなければならない︒特に医師は︑医療水準の擁護者たる責任を
担わねばならない︒
巳 供給に制限のある特定の治療の患者となる者を選定しなければならない場合は︑すべての患者は︑その治療に
対する公正な選定手続を受ける権利がある︒その選定は︑医療水準に基づき差別なくなされねばならない︒
£ 患者は︑医療を継続して受ける権利を有する︒医師は︑患者の治療をしている他の医療提供者と医学的に必要
な治療を調整して協力する義務がある︒医師は︑治療が医学的に引き続き必要である限り︑治療の代替的措置
を行うための合理的な助力と充分な機会を患者に与えることなしに︑患者の治療を中断することはできない︒
2.選択の自由の権利
ぴ 患者は︑医療⁝機関が公的なものであれ私的なものであれ︑自由にその医師︑病院︑医療施設を選択・変更する
権利を有する︒
翫 患者は︑いかなる治療段階においても他の医師の意見を求める権利を有する︒
3.自己決定の権利
硫 患者は︑自分自身に関し自由な意思決定をするための自己決定の権利を有する︒医師は︑患者の意思決定の結
果について患者に情報を提供しなければならない︒
E 判断能力のある成人の患者は︑あらゆる診断行為や治療に対し︑同意をする権利も同意しない権利も有する︒
患者は︑その意思決定をするのに必要な情報を得る権利を有する︒患者は︑あらゆる検査や治療の目的︑その
結果が意味すること︑そして同意をしないことの結果がどういうものであるのかを明確に理解しておくことが
必要である︒
C 患者は︑医学研究や医学教育に参加することを拒否する権利を有する︒
4.意識のない患者
a 患者が︑意識がないかあるいは意思を表示できない場合は︑可能な限り法的に権限のある代理人から︑情報提
供に基づく同意を得なければならない︒
E 法的に権限のある代理人が間に合わず︑医療行為が緊急に必要な場合︑患者の同意があるものとみなす︒ただ
し︑患者が︑その状況において医療行為への同意を拒絶するという事前の明白な意思表示・確信に基づくもの
であることが明らかで疑いのない場合を除く︒
巳 しかしながら︑医師は常に︑自殺未遂により意識のない患者の生命を救うよう努めねばならない︒
5.法的無能力の患者
a 患者が未成年者や法的無能力者の場合︑法域によっては法的に権限のある代理人の同意が必要となる︒それで
患者の権利確立への道 ︵都法四十九ー一︶ 一八五
一八六
もやはり患者は︑その能力の許す限りその意思決定に関与することが必要である︒
E 法的無能力の患者が合理的な判断ができる場合は︑その意思決定は尊重されねばならず︑患者は法的に権限の
ある代理人に対する情報の開示を禁ずる権利を有する︒
仁 患者の法定代理人︑あるいは患者によって正当な権限を与えられた者が︑医師の見解では患者の最善の利益と
なる治療を禁ずる場合は︑医師は当該法的機関その他の機関に異議申立てをしなければならない︒緊急の場合
には︑医師は患者の最善の利益のために行為しなければならない︒
6.患者の意思に反する治療
患者の意思に反する診断行為や治療は︑特に法が認め︑医の倫理の原則に合致する例外的な場合においてのみなす
ことができる︒
7.情報に対する権利
a 患者は︑そのすべての診療録に記録された自己の情報を得る権利を有し︑その病状についての医学的事実を含
めその健康状態について充分に情報を提供される権利を有する︒ただし︑患者の診療録上の第三者に関する秘
密の情報は︑その第三者の同意がなければ患者に提供してはならない︒
E 情報は例外的に︑その情報が患者の生命・健康に重大な危険をもたらすと信ずる充分な理由があるときには︑
患者に対し提供しないことが認められる︒
C 情報は︑患者の文化に適応した方法で患者に理解できるように提供されねばならない︒
吐 患者は︑その明示の意思表示に基づき︑情報を提供されない権利を有する︒ただし︑他人の生命の保護に必要
な場合を除く︒
巳 患者は︑代わりに情報を受けるいかなる者をも︑選任する権利を有する︒
8.秘密保持の権利
a 患者の健康状態︑病状︑診断︑予後および治療その他個人情報に関し個人を特定できるすべての情報は︑その
死後も秘密保持がなされねばならない︒患者の子孫は例外的に︑その健康上の危険を示唆する情報を得る権利
が認められる︒
E 秘密情報は︑患者が明示の同意をしているか法に明記されている場合にのみ開示することができる︒情報は︑
患者が明示の同意をしていない限り︑厳格な﹁知る必要性﹂に基づいてのみ他の医療提供者に開示することが
できる︒
α 個人を特定できるすべての患者のデータは︑保護されねばならない︒患者のデータの保護は︑その保管方法が
適切でなければならない︒個人を特定できる身体構成物質も同様に保護されねばならない︒
9.健康教育の権利
患者の権利確立への道 ︵都法四十九ー一︶ 一八七
一八八
すべて人は︑個人の健康と利用可能な医療に関し︑情報提供に基づく選択に資する健康教育の権利を有する︒その
教育は︑健康な生活様式︑病気の予防と早期発見の方法に関する情報が含まれねばならない︒自分自身の健康に対
するすべての人の個人的責任が強調されねばならない︒医師は︑積極的に教育活動に関与する義務を有する︒
10.尊厳への権利
a 患者の尊厳と秘密保持の権利は︑その文化や価値観と同様に︑医療と医学教育において常に尊重されねばなら
ない︒
E 患者は︑最新の知見に基づきその苦痛を免れる権利を有する︒
α 患者は︑人間らしい終末期医療を受け︑できうる限り尊厳ある快適な死を迎えるに際しあらゆる利用可能な助
力を提供される権利を有する︒
H.宗教的支援への権利
患者は︑信仰する宗教の牧師の助力を含めた精神的・倫理的慰安を受けるか拒否するかの権利を有する︒
ヨーロッパにおける患者の権利の促進に関する宣言
患者の権利に関するヨーロッパ会議
一九九四年三月二八〜三〇日 於アムステルダム ︒
世界保健機関 ヨーロッパ地域事務所
患者の権利
1.医療における人権と人たる価値
序論で引用された文言は︑特に医療の場面においても適用されるものと理解されねばならず︑したがって︑この文
言に表明された人たる価値は︑医療制度に反映されねばならない︒患者の権利に対し例外的な制限が課される場合
も︑この制限は︑人権規範に従いその国の法に法的基盤を有するものでなければならない︒以下に掲げられる権利
は︑他人の健康およびその同様の権利に適正な配慮をして行使すべき調和のとれた責任を担うものであるというこ
とがさらに注目されねばならない︒
一﹂ すべて人は︑人間としてその人格を尊重される︒
患者の権利確立への道 ︵都法四十九ー一︶ 一八九
一九〇
一゜N すべて人は︑自己決定の権利を有する︒
﹂°ω すべて人は︑身体的・精神的不可侵の権利およびその人格を保護される権利を有する︒
﹂ム すべて人は︑そのプライバシーを尊重される権利を有する︒
一ひすべて人は︑その倫理的・文化的価値観および宗教的・思想的信念を尊重される権利を有する︒
一゜Φ すべて人は︑病気の予防・治療のための適切な措置を提供されるといった健康を保持する権利および達成可
能な最高水準の健康を求める機会を持つ権利を有する︒
2.情報 心︒°一 医療とその最善の利用法に関する情報は︑関係するすべての者の利益のために公に利用ができなければなら
ない︒
NN 患者は︑病状についての医学的事実を含めたその健康状態︑提示された治療︑その治療に伴う危険性と利益︑
治療しない場合の結果を含めたその治療の代替療法︑および診断・予後・治療の経過について充分な情報を
提供される権利を有する︒
N°°︒ 情報は︑その提供により明らかに積極的な効果の期待がなく︑重大な被害をもたらすことを信じる充分な理
由がある例外的な場合においてのみ患者に提供しないことができる︒
心。
x 情報は︑患者の理解力に適応した方法で︑一般的でない専門用語の使用は最小限にして提供されねばならな
い︒患者が一般的言語を話さないときは︑何らかの形の通訳が提供されねばならない︒
心︒.α 患者は︑その明示の意思表示により情報を提供されない権利を有する︒
b︒°Φ 患者は︑自分の代わりに情報を提供されるいかなる者をも︑選任する権利を有する︒
b。
リ患者は︑セカンド・オピニオンを得る機会を与えられねばならない︒
b︒・︒︒ 患者は︑医療施設に入院した場合には︑治療に当たる医療提供者の名前・職務上の地位および入院・治療に
関する規則・きまりについて情報を提供されねばならない︒
心。