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情報工学教室村上周太 日本放送協会 川 野 順 一 郎

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(1)

北九州市における地域省エネルギーシステム

         に関する意思決定分析

      (昭和53年10月31日 原稿受付)

情報工学教室村上周太日本放送協会   川    野    順 一 郎

Decision Analysis on Development of Regional    Energy Saving System in Kitakyushu

       by Shuta MURAKAMI        Junichiro KAWANO

  It is a very important issue to save energy and resources because of the limitation of energy resources. Many researches on the development of new energy resources and on the energy saving systems have been carrying out in all countries.

  In this paper, we propose the regional energy saving system. It is said that a half of energy consumption in Japan is abandoned. This abandoned energy causes air pollution and heat pollution. In this system, the energy that is abandoned from heavy industries, chemical plants,

incinerators, and steam power generation plants in Kitakyushu is collected and reuse as a heat resource for the regional air conditioning system, desalination plants, warm water swimming pools, and so on. And we analyse the decision problem whether to adopt this system or not, and that if this system is adopted, how large facilities should be constructed.

      1013kcal(原油換算約3億4千k2)で,このうちエネル  1.まえがき

      ギー源としての需要は約286×1013kcal(原油換算約3  1973年のオイルショック以来,「省資源・省エネル   億k£)である。他はナフサなど主に石油化学工業用の原 ギー」ということが各方面でさかんに議論されている。   料としての需要である。そして,わが国のエネルギーの エネルギーの有効利用を考えるには,エネルギーのシス   供給および消費の構成とそれらの相互間の7ローは図1 テム的利用の考え方が必要である。その1つの方法とし   の通りである…)ここでまず注目されるのは廃棄エネル て,高温ガス炉の多目的利用がある;)これは原子力の燃   ギーの量が非常に多いことである。現在のシステムでは,

料・材料・設計などに工夫をこらすことによって,730  投入エネルギーのほぼ50%が廃棄されていることにな

℃〜1000℃の高温の熱を取り出し,発電ばかりでなく,   る。しかもこの廃棄エネルギーは熱汚染,大気汚染など 製鉄や化学工場のプロセスヒートにも利用するもので,   の環境問題を惹き起こしている。省エネルギーの立場か 熱効率の面や公害・安全面など多方面にわたり有効な特    らも,熱汚染・大気汚染の緩和の意味からもこの廃棄工 徴をもっている。しかし1000℃の高温ガス炉はまだ研   ネルギーの有効利用が必要となろう。

究中の段階であり実用化にはいたっていない。もう1つ    そこで,この大量の廃棄エネルギーの有効利用,つま の考え方として,現在火力発電所,重化学工業,ごみ焼    り,工業都市を中心とする集合住宅地域を対象とした地 却場などから廃棄されている熱エネルギーと太陽熱,地   域エネルギー再利用システム(地域冷暖房など)につい 熱などの大自然のエネルギーの有効利用が考えられる。    て考察することは大変有意義であると思われる。廃熱の 現在わが国のエネルギー最終需要は約322×   有効利用の例としては,モスクワや北欧のパリ,ベルリ

(2)

90

一●エ子力2.3

−====23

石炭57.2   国産18.3七   輸入38.9

一天瀬一

図1 わが国のエネルギーの供給・消費    フローチャート(単位:原油換算百万k2)2)

ン,ウィーンなどがあり,日本でも札幌市効外の下野幌    そのエネルギーを地域冷暖房,給湯,海水淡水化,温水 などがある。しかしモスクワの場合は市内で消費される   プール,植栽,魚介養殖などの地域的再利用システムに 熱の60%が熱一電力プラントから温水または蒸気の形   有効に利用しようというものである。その概要を図2に で供給されるものであり,北欧の諸都市の場合には地域   示す。このシステムの実施にあたっては次ような長所や 冷暖房の熱源に専用ボイラーからの蒸気,火力発電所の    短所がある。長所1)現在供給エネルギーの約50%が廃 排気,ごみ焼却炉からの発生蒸気の3つを組み合せたも   棄されているが,その未利用の廃棄エネルギーの有効利 のである。札幌市にしても,ごみ焼却場で発生する蒸気   用をはかることができると同時に再利用システムで今ま を発電,地域冷暖房,温水プールに供給するもので,規   で使用されていたエネルギーを節約できる。長所2)熱 模としても小さく,廃熱源として,重化学工業などの廃   発生設備を集約化することにより,燃焼管理を徹底し公 棄エネルギーやその利用側でも海水淡水化などを考慮に   害防止設備を完備するなどして,大気汚染防止に役立て,

入れた総合的地域省エネルギーシステムとはなっていな   今まで廃棄されていた熱を有効利用するために,熱汚染 い。      を緩和でき,いわゆる環境汚染を防止できる。長所3)

 本論文では,これらを有機的に結合した地域省エネル   地域冷暖房などを行なうことにより,各戸への頻繁な燃 ギーシステムを提案し,このシステムを採用すべきかど   料輸送がなくなり都市交通が緩和される。長所4)各戸 うか,もし採用するとしたら,どれくらいの規模のもの   の暖房設備から火災の発生を防止できる。長所5)海水 が可能かについて意思決定分析を行なう。特に事例とし    淡水化を行なうことにより水不足を一部解消できる。長 て,北九州市における地域省エネルギーシステムにっい   所6)ビルの冷暖房を行なうことによりボイラー付属設 て分析を試みる。      備が不要になって,ボイラーマンなどの人件費を節約で

2.地域省エネルギーシステム     きる・短所1)配管網などの高額の設備腰し・先行投

      資が大きくなる。短所2)熱負荷密度が大きくまた年間  一般的な地域省エネルギーシステムというのは,火力   利用率が高くないと経済的に困難である。短所3)配管 発電所,製鉄所や化学工業などの重化学工業,ごみ焼却   網からの熱損失が大きい。短所4)自治体,企業,住民 場,し尿・下水処理場などからの廃棄エネルギーと太陽   の協力が必要である。このような地域省エネルギーシス 熱,地熱,風力,波力などの自然エネルギーを回収して,   テムを採用すべきかどうかは,以上の長所や短所を加味

(3)

ア      チ ぽ  コロ ロコロロロロコロひ  ひ ひ  

・  [⊇〔二互コ蒸気.温水「噸瓢三三1冷水.温水ト巡三三Li

図2 地域省エネルギーシステムの概要

廃棄エネルギー源  距離(km)       匡[鰍m) 再利用システム

「口元言蒜元1記1・      i:i

i力        i      4.5 i発戸畑共同火力1

l       l4.0

1電       i i所電源醗若松il2・°

「一一… 一.… 一一一一一一一一一『一 ;一一一一一一一]3.O

i 新日鉄 畑1

新日鉄・澗i1°・

友 金 属 1

1.0

地域冷暖房A 温水プールA 植 栽 園

海水淡水化プラント

2.5

廃熱回収

3・0 温水プ_,レB畑地域冷暖房B戸

熱供給システム         6・5  地域冷暖房C 八        8・0  温水プ_ルC 璽

1学東京製鉄ill°

1工         1、{

三菱化成ll」{iio.5

新日鉄・口鉄化学

@    l     i10.5

三井コークス」一一一一一⌒一一一一一一一一一一一一一一一ラ⌒一一一一一一「

@    19.5    ス

西 部 ガ     |一一一一一一一つ一…一一⌒一一一一一一一一一⌒^「     114.0

新  門  司 1

熱供給

 プラント

恒日  峠2・°

i [      i

7.5 11.⑪ 8.0

地域冷暖房D 地域冷暖房E 温水プールD

5.5 12.5 5.5

地域冷暖房F 地域冷暖房G 温水プールE

16.0 11.O 15.0 15.0   6.5  1.0  6.5 ]2.5  2.O

惨皇后崎12・5

門  新

地域冷暖房H 1也域冷暖房1 地域冷暖房J

西

西 14.0

港 湊 明崎 15.0 し尿・下水処理場

7.5 地域冷暖房K 地域冷暖房L 温水プールF

図3 北九州における地域省エネルギーシステム

した意思決定分析が必要である。本論文では,現段階の    各製鉄所,三菱化成,新日鉄化学,日鉄化学の各化学工 技術から,このシステムの事例として図3のような北九   業,及び三井コークス・ガス製造としては西部ガス・ご 州市における地域省エネルギーシステムを考える。廃棄   み焼却場としては新門司,日明・皇后崎の各清掃工場・

エネルギー源のうち,火力発電所としては九州電力新小    し尿・下水処理門としては門司,新町,西湊・皇后崎・

倉発電所,戸畑共同火力発電所,電源開発若松火力発電    日明の各処理場を取り上げる。また熱供給プラントは九 所,重化学工業としては新日鉄,住友金属,東京製鉄の   州電力新小倉発電所の近くに設置するものと仮定する。

(4)

92

さらに再利用システムであるが,これは地域省エネル   (・41 ,・42」,・43々,・44Z)=@,ノ,〃,1)を構成する。そして廃 ギーシステムにおける代替案のもとになるものであっ   棄エネルギー源及びその再利用システムから熱供給プラ て,次のようにそれぞれの規模を設定する。         ントまでの距離は図3に示すとうりである。

°地域冷囎・A・(i=°,1,2,3)     3.廃棄エネルギー量再利用システムの必要エネ、レ

 ・410:行なわない

      ギー量及びエネルギー損失量の推定  ・411:対象地区を小倉北区,戸畑区,八幡東区に限る

 、41、:対象地区をAllに加え小倉南区,若松区に限る    北九州市の地域省エネルギーシステムにおける意思決  、41,:対象地区を北九州市全区とする。         定分析を行なうためにはまずこのシステムのモデルの基

○海水淡水化プラント,、42」6=0,1,2)         礎となる廃棄エネルギー量,再利用システムの必要エネ  、42。:つくらない      ルギー量及び配管網からのエネルギー損失量を推定す  、421:造水能力30,000m3/日のプラントを造る      る必要がある。

 、422:造水能力100,000m3/日のプラントを造る       3.1.廃棄エネルギー量の推定

○温水プール,・43々(ん=0,1,2)       廃棄エネルギーの各工場からの主な排出源とその大ま  、43。:っくらない       かな量を表1に示し,年を月別に分けた詳細なデータ  ・431:小倉北区,戸畑区,八幡東区に一つづつ造る     を表2に示す。

 、432:A31に加え小倉南区,門司区,若松区に一つづっ     3.2.廃棄エネルギー再利用システムの必要エネル     造る。      ギー量の推定

○植栽園:・4、 (1=0,1,2)      地域冷暖房については一般住居だけを対象として考  ・4、。:つくらない       え,一戸の冷暖房床面積を20㎡とする。また,一般住  ・441:ガラスハウス10個の規模とする      居の冷房負荷指数は130kcal/m2h,暖房負荷指数は93  ・4、2:ガラスハウス20個の規模とする         kcal/m2hである1)海水淡水化プラントについては造水  上記のような地域冷暖房,海水淡水化プラント,温水   能力30,000m3/日,100,000m3/日のプラントにっいて

プール,植裁園の各規模の組み合わせで一つの代替案    考える。必要なのは加熱蒸気で,各々の必要蒸気量を推

表1 排気エネルギー源および回収期待量

工  場 廃棄エネルギー源 回収可能廃棄エネルギー源 回収期待エネルギー量 火力発電所 大気中へ燃焼排ガス

恊?墲ゥらの温排水 復水器からの温排水@  (20℃〜40℃)

0.80兆kcal/年(総排気エネルギーの5%)

製 鉄 所 冷 却 水

サ品顕熱スラブ顕熱

rガス顕熱

2.64兆kcal/年 i総排気エネルギーの30%)

同左

化学工場 燃焼排ガス顕熱コークス炉からの水蒸気

Aンモニァ脱炭酸水蒸気

竅@却 水

コークス炉からの水蒸気 Aンモニア脱炭酸水蒸気

0.3兆kcal/年 i総排気エネルギーの30%)

コークス場 コークス炉からの水蒸気 コークス炉からの水蒸気 0.11兆kcal/年 ごみ焼却場 燃焼ガス

{イラからの水蒸気

0.14兆kcal/年 同左

ガス製造 ボイラからの水蒸気 同左 0.007兆kcal/年 し尿・下水処理場 消化ガス(主にメタン) 同左 0.014兆kcal/年

(5)

      月 ェ類  工場

4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3

九州電力

V小倉発電所 489.00 530.32 468.33 406.35 420.12 385.69 420.12 454.56 495.88 506.21 537.21 537.21 5651.00  (ホ利

ヘ用 ュ可d5

梶刀@)

戸畑共同

ホ力発電所 181.76 197.12 174.08 151.04 156.16 143.36 156.16 168.96 184.32 188.16 199.68 199.68 2100.48

電源開発若松

ホ力発電所 45.28 49.10 43.36 37.63 38.90 35.71 38.90 42.09 45.92 46.87 49.74

49.74 523.24

新日本製鉄

@ (戸畑) 664.52 686.67 664.52 686.67 686.67 664.52 686.67 664.52 686.67 686.67

620.22 686.67 8084.99

新日本製鉄

@ (八働 664.52 686.67 664.52 686.67 686.67 664.52 686.67 664.52 686.67 686.67

620.22 686.67 8084.99

住友金属 335.56 346.74 335.56 346.74 346.74 335.56 346.74 335.56 346.74 346.74 313.19 346.74 4082.61 東京製鉄 100.67 104.02 100.67 104.02 104.02 100.67 104.02 100.67 104.02 104.02 93.96 104.02 1224.78

三菱化成 203.50 21028 203.50 210.28 210.28 203.50 210.28 203.50 21028 21028 189.93 210.28 2475.89

新日鉄化学

咩S化学 50.78 52.57 50.78 52.57 52.57 50.78 52.57 50.78 52.57 52.57

47.48 52.57 618.57

三井コークス 93.73 96.86 93.73 96.86 96.86 93.73 96.86 93.73 96.86 96.86 87.48 96.86 1140.42

ガス

サ造 西部ガス 5.47 5.66 5.47 5.66 5.66 5.47 5.66 5.47 5.66 5.66 5.11 5.66 66.61

新 門 司 69.78 67.76 44.27 64.78 77.48 62.20 79.78 69.32 62.61 62.61 46.81 44.42 757.04

日   明 35.74 48.65 46.43 42.82 50.18 5329 36.70 41.18 41.84 41.82 32.28 32.62 503.55

皇 后 崎 14.06 16.81 17.73 17.68 16.51 15.73 17.00 15.90 14.75 15.46 1128 10.72 183.63

シ尿・下水処理場 10.48 11.59 8.61 9.51 10.52 13.10 13.99 11.93 14.05 13.14 9.36 9.63 135.91

合  計 2964.85 3110.82 2921.56 2919.28 2959.34 2827.83 2952.12 2922.69 3054.06 3063.74 2863.95 3073.49 35633.73

定すると,2500ton/日(11.95×108kcal/日),6,250 ton/   ために冬季期間に暖房するのに必要なエネルギーであ 日(29.88×108kcal/日)である。温水プールについては   る3これらをまとめて表3に示す。

桃園市民プールと同規模(大きさ50m×15m,深さ1.    3.3.エネルギー損失量の推定

25m〜1.5m,室内の広さ,57m×21 m×9m,水温27    配管網における熱損失量はその中を流れる熱媒(蒸気,

℃)のものを考える。必要エネルギーは,プールの熱損   温水,冷水)によって異なる。熱媒が温水,冷水の場合 失量129,031.60kca1/h補給水の加熱用184.785×    には保温管からの放散熱量の計算式から求め 蒸気の場

(27_tw)kcal/h(tw:補給水の水の温度),室内暖房用   合は温水より大きく取った。これらをまとめて表3に示 333,963kcal/hである3補給水の温度は北九州市にお   す。また・熱供給プラントの熱効率を0・5〜0・9とし・不 ける平均水温を用いる。植栽についてはZM−150型ガ   足エネルギーを補充するボイラーの熱効率を0・8〜0・93 ラスハウスを例にとって必要エネルギー量を推定する。   とする。

このエネルギーはハウス内の気温を約20℃に維持する

(6)

94

表3 廃棄エネルギー再利用システムに必要なエネルギー量および損失量

         月再利用システム

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

地域冷暖房 i20m2/戸)

okcal炉]

供給時間 341 280 90 0 0 75 310 341 90 0 120 310

必要熱量 634,260 520,800 167,400 0 0 195,000 806,000 886,600 234,000 0 233,200 576,600 海水淡水化

i30,000m3/日)

m×108kcal]

供給時間 744 672 744 720 744 720 744 744 720 744 720 744 必要熱量 370.52 334.67 370.52 358.57 370.52 358.57 370.52 370.52 358.57 370.52 358.57 370.52 海水淡水化

i100,000m3/日

@[×108kca1]

供給時間 744 672 744 720 744 720 744 744 720 744 720 744 必要熱量 926.30 836.66 926.30 896.42 926.30 896.42 926.30 926.30 896.42 926.30 896.42 926.30 供給時間 225 207 234 216 225 234 0 0 216 225 216 234 温水プール

i1施設)

m×108kca1]

加温用 0,434 0,393 0,420 0,402 0,404 0,012 0 0 0,008 0,406 0,405 0,424

暖房用 0.75142 0.6913 0.78147 0.72136 0.75142 0.78147 0 0 0.72136 0.75142 0.72136 0.78147 必要熱量 1.1852 1.0843 1.20147 1.12336 1.15542 0.79347 0 0 0.72936 1.15742 1.12636 1.20547

植栽園i1ハウス)

m×108kcal]

供給時間 428 412 378 404 436 0 0 0 0 394 408 437

必要熱量 0.27 0.22 0」9 0.10 0.05 0 0 0 0 0.07 0.15 0.25 蒸気の配管熱損失

@    (kca1/Kmh) 152,870 151,740 146,900 139,060 132,280 126,460 118,710 117,580 123,880 130,340 141,270 148,840 温水の配管熱損失

@    (kcal/Kmh) 127,540 126,600 122,560 0 0 22,490 28,960 29,900 24,650 0 ll7,850 124,180

 4.意思決定モデル      植栽園建設費,配管工事費が含まれる。システム事業費  地域省エネルギーシステムにおける意思決定では,昭    とは,このシステムを稼動するのに必要な電力費,人件 和53年度の初めに意思決定がなされ,もしこのシステ   費などで,熱供給プラント事業費,海水淡水化プラント

ムが採用されれば,昭和53年度からシステムの建設を   事業費,温水プール事業費,植栽園事業費が含まれる。

行ない,5年後の昭和57年度までに完成し,昭和58年度    エネルギー節減費とは,もし地域冷暖房が行なわれれば,

から稼動し始めるものと仮定する。図4に北九州市の地   今まで夏の冷房時に使っている電気クーラーを使わずに 域省エネルギーシステムにおける意思決定モデルを示   すむので,電気代が節約でき,また冬の暖房に使ってい す。ここで,システム建設費とは,このシステムに必要   る石油ストーブの灯油代が節約できる。この節減費と海 な設備の建設費および装置の費用で,熱供給プラント建   水淡水化で使う蒸気の節減費,温水プール,植栽園の重 設費,海水淡水化プラント建設費,温水プール建設費,   油節減費が含まれる。システムの収益とは,地域冷暖房

システム建設費

システム建設費

エネルギー節減費

時間 ь蛯I好

観引

Iきw率

険選

D干

ステムの収益

充エネルギー費

災防止費

4 地域省エネルギーシステムの意思決定モデル

(7)

行なった場合の水の収益,温水プールや植栽園の収益が   0.08,物価上昇率を0.07,エネルギー価格上昇率を0.16 含まれる。また補充エネルギー費とは,この地域省エネ    とする。廃棄エネルギー回収上昇率は0.04とする。さら ルギーシステムにおいて,再利用システムで不足するエ    に,危険選好にかかわる効用関数として,次式を用いるき}

三{藷難難鱗轍謄1 姻={言警)㌣)iiiiiD

損害額だけ損をしなくてすむので,これを利益と考えた

       5.意思決定の基準と結果 ものである。各建設費,配管工事費,事業費,収益など

の見積りは表4に示している。ここで,熱供給プラント    この地域省エネルギーシステムを採用するかどうかの の建設費,配管工事費については不確定なものとし,図   意思決定基準として,昭和58年から昭和68年までの10 5,6に示すような費用分布をもつものとする。また火災   年間の期待効用の最大のものを最良の決定とすることに 防止費は北九州市消防局の過去5年間の統計から4,244   する。上述の意思決定モデルを用いて分析した結果,

万円/年と見積った。      (・413,・423,・43。,A、。)の代替案が最良であることがわかっ  っぎに,将来の利益や費用を現在価値になおすための   た。つまり,このような北九州市の地域省エネルギーシ 時間選好の割り出き率を0.15とする。また各種プラン   ステムは採用すべきであり,その規模としては北九州市

表4 各費用および収益の見積り

建設費 事業費 収  益 エネルギー節減費

熱供給センター 39.8億円 1.99億円/年 地域冷暖房(配管設備) 2.326億円/km

暖  房  時 R.5円/1000kca1 竅@ 房  時 W.5円/1000kcaI

暖  房  時 R6.7円〃

竅@ 房  時19.6円/kWH

海水淡水化プラント

@  30,000m3/日

@ 100,000m3/日

46.8億円 W0.0億円

9.8億円/年 Q9.6億円/年

70円/m3 蒸気代節減費 V00円/ton 温水プール 3億円 0.15億円/年 0.17億円/年

31.5円/τ

植 栽 園 0.014億円/ハウス 0.016億円/年 0.02億円/年

1.0

0.5

0

1.0

0.5

・・4・6・8・1・・(億円) ° 1 2 3⊇m)

図5 熱供給センター建設費の確率分布       図6 配管設備工事費の確率分布

(8)

96

全域を地域冷暖房の対象とし,海水淡水化プラントは造     表5 水能力10,000m3/日のものを建設し,温水プールと植栽

園はつくらないのが最良の決定である。これは温水プー    割り引き率 ルや植栽園は建設費や事業費の割に利益が少なく,今こ

こで問題となっている省エネルギー性にあまり効果がな

       _      0.175 いためであろう。これに対して,各家庭1 当りの冷暖

房に必要なエネルギーは少なくても,いくつかの戸数が     015 集まれば,その消費量は多くなるので,地域冷暖房を行     0・10 なうことによって,エネルギー節減に大きく貢献し,省

エネルギーにかなうものである.そして地域冷願の規  表6 模の大小にかかわらず,初期投資にかなりの費用がかか

るので,再利用システムの必要熱量が廃棄エネルギー回     割り引き率 収量よりもそれ程多くならない限り,エネルギー節約の     0・20 利点の多い大規模地域冷暖房システムを採用した方がよ     0.175

いという結果が出ている。また海水淡水化はやがて当来     0.15 するであろう水資源の不足に対処するものであり,初期     0.10 投資も多くかかるが利益も多い。そして小規模であると

どうしても造水費用が多くかかるので,建設するとした    表7 ら大規模なものを採用する方がよいと思われる。

エネルギー価格上昇率

割り引き率 0.20 0,175 0.16 0,125 0.20 ト(3,2,0,0) (0,0,0,0) (0,0,0,0) (0,0,0,0)

0,175 (3,2,0,0) (0,0,0,0) (0,0,0,0) (0,0,0,0)

0.15 (3,2,0,0) (3,2,0,0) (3,2,0,0) (0,0,0,0)

0.10 1(3,2,0,0) (3,2,2,2) (3,2,2,2) (3,2,0,0)

システム建設費上昇率

割り引き率 0.15 0.09 0.07 0.05 0.20 (0,0,0,0) (0,0,0,0) (0,0,0,0) (0,0,0,0)

0,175 (0,0,0,0) (0,0,0,0) (0,0,0,0) (0,0,0,0)

0.15 (3,2,0,0) (3,2,0,0) (3,2.0,0) (3,2,0,0)

0.10 (3.2,2.2) (3,2,2.2) (3,2,2,2) (3,2,0,0)

6.意思決定者の主観的指数と意思決定       割り引き率

 時間選好の指数である割り引き率やシステム建設費,

事業費,エネルギー価格,物価,廃棄エネルギー回収量 の各々の上昇率は現時点で意思決定者がこれらをいかに

評価するかという主観的な問題であって,これらの主観     0 10 的指数の取り方によって最良の意思決定は当然違ってく

るであろう。表5〜表7に意思決定者の主観的指数のい

      _      7.あとがき くつかの組み合わせに対して最も望ましい決定を不す。

ただし変化させない主観的指数は4節の値を取るもの    本稿の意思決定モデルには評価関数の要素として,利 とする。これらの表より次のことが分かる。        益や費用などの金額で与えられるものだけについて考慮 1)意思決定に大きく影響を及ぼすのはエネルギー価格   しており,金額で表わされない,例えば公害防止度,住  上昇率で,割り引き率にもよるが,エネルギー価格上   民の満足度,温水プールによる市民へのレクリエーショ  昇率が大きいほど大規模なシステムが採用され,それ   ンの提供などは考慮に入れなかった。本来ならこのよう  が0.125未満ではほとんど採用されない。        な要素も含めた総合的な意思決定分析が必要であろう。

2)割り引き率が0.2以上ではこのようなシステムはほ   さらに廃棄エネルギー回収量も不確定なものと取り扱か  とんど採用されなく,その値が小さいほど大規模なも   う必要があろう。そしてこのような地域省エネルギーシ  のが採用される。       ステムの実現には,排気エネルギー回収技術の進歩が大

3)意思決定はシステム建設費や廃棄エネルギー回収量   きな鍵を握っている。

 上昇率にはほとんど無関係である。      最後に,本研究をまとめるにあたって,資料の提供を 以上まとめると,意思決定者の将来の石油価格動行や,    載いた北九州市役所,消防局,清掃局,新日本製鉄所,

経済活動の評価の仕方によって,このシステムが採用さ   三菱化成工業,九州電力小倉発電所,九州地域冷暖房株 れるかどうかが大きく左右される。      式会社に感謝の意を表します。また資料の収集・整理に

廃棄エネルギー採取量上昇率 割り引き率 0.08 0.04 0 一〇.04

0.20 (0,0,0,0) (0,0,0,0) (0,0,0,0) (0,0,0,0)

0,175 (0,0,0,0) (0,0,0,0) (0,0,0,0) (0,0,0,0)

0.15 (3,2,0,0) (3,2,0,0) (3,2,0,0) (3,2,0,0)

0.10 (3,2,2,2) (3,2,2,2) (3,2,2,2) (3,2,2,2)

(9)

ご協力いただいた本学卒論生の村上亮祥君,山口孝嗣君 に心から感謝いたします。,

      参考文 献

1)未来工学研究所編:エネルギー危機の現状と展望,教育社  (1974).

2)工業技術院編:省エネルギー技術への展望,通商産業調査会  (1974).

3)早川:都市環境とエネルギー,環境情報科学センター(1977).

4)空気調和・衛生工学便覧II,空気調和衛生学会(1968).

5)村上,築山, 上水道システムのコンピュータ導入に関する意思 決定分析 ,九州工業大学研究報告(工学),No・34,1977.

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