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「家族関係」授業を通してみた女子大学生の家族観

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Academic year: 2021

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

「家族関係」授業を通してみた女子大学生の家族観

著者 藤田 祥子

雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要

23

ページ 23‑28

発行年 1987‑03‑01

その他のタイトル The Home‑life View of Woman Students Observed in the Class of "Family Relations"

URL http://hdl.handle.net/10105/6635

(2)

「家族関係」授業を通してみた女子大学生の家族観*

藤 田 祥 子**

 (家政学教室)

要旨:大学での「家族関係」授業を効果的に展開するための一助として、受講 女子学生の家庭観を明らかにした。第一に、彼女らは現在の自己の家庭生活を 肯定的に受け収め、将来彼女らが創り出そうとする家庭像に結びつけていく面 の強いこと。第二に、彼女らの結婚観は、自己主体性をもちつつも両親や配偶 者に対する依存性を有し、かつ理想志向の高いこと。第三に、高齢化問題に対 する関心や認識がきわめて希薄であること、の三点が指摘できた。

キーワード:家庭観、結婚観、高齢化問題への関心

は じ め に

 r家族関係」を学校教育の中で授業として取り扱うのは、どの段階においても困難さがある。

それは、学習者の誰もが経験している身近な存在ではあるが、彼らの個々人が認識している家庭 や家族というものが千差万別であり、「家族」という語からイメージされるものの共通性が乏し いということ、さらにまた身近すぎてかえって客観的に把握しにくいということなどがあげられ る。しかしながらこのことは逆に、授業の展開の中で自分と違う家族や家庭生活を認識する場と なり、他の家族を通して身近な存在である自分の家族を客観的に見つめ直す機会を与える場にな るとも考えられる。

 大学生に対するr家族関係」の講義においても同様のことが言え乱筆者は、大学生段階は、

いわゆる定位家族(生まれた家族)から生殖家族(生み出す家族)への過渡期とみており、現在 の自分の家族や家庭生活を見つめ直す中で、将来自分が創り出していこうとする家族の概念を形 成する時期と位置付けている。その意味でなるべく多くの家族関係のあり様を見聞し、事実認識 を客観的に拡大し、それを通じて自分としての問題意識を明確にする中で将来の生き方や家族・

家庭生活に対する価値認識を形成してくれることを意図している。その際、受講学生の家庭観が どのようであるかを把握することは、講議内容を身近な素材から展開し、彼らの認識を拡大させ ていく上で有効である。

 そこで本稿では、昭和56年〜59年にr家族関係I」を受講した女子学生(通常、家庭科専攻の 一回生を対象に開講されているが他の学科の学生も受講している)の家庭観を明らかにし、大学 でのr家族関係」講義の展開の一助としたい。

*  The Home_life View of Woman Students Observed in the Class of■Family   Re1ations

** Sachiko Fl〕jita(D幼。材mm宕〆Ho刎e亙。OmOm c3,肋mσ m73κツρグ亙伽。0サづ0m,MOm)

(3)

方      法

 調査方法は、まず家庭観・家族観をみるために各年度の受講生に対して「私の家庭と10年後の 私」という題で作文を書いてもらう。その際、「私の家庭」に関しては現在の家族構成や家庭の 雰囲気などを盛り込むように、また「1O年後の私」に関しては職業・結婚の有無・結婚年齢・家 族構成・家庭の雰囲気等を想定して内容を構成することを指示した。また彼女らの結婚観や高齢 化問題への関心を知るためには、質問紙を用いたアンケートを行った。

 対象となった各年度の学生数は、昭和56年度39名、57年度57名、58年度42名、59年度32名であ

る。

結果と考察

 (1〕家庭観一彼女らの家庭観をみると、各年度の受講生ともかなり類似した家庭像・家庭観を 有していることがわかった。まず現在の彼女らの家庭は、その9割近くが両親と子どもから成る 核家族で、父親は公務員や会社員といった都市型俸給者であり、母親は専業主婦が多く、時にパ ート労働者が含まれている。きょうだい数は2人が最も多く、大学生や高校生の兄弟姉妹がいる。

家族像や家庭の雰囲気として盛り込まれている内容は、表現の違いこそあるが全体的に両親の生 き方、とくに母親の生き方を表現する者が多く、専業主婦としての母親に対して肯定的な者、あ るいはやや否定的ではあるがそのおかげで自分達が楽をさせてもらっているということを述べる 者が多い。父親に対する記述がすくない点や、両親を夫婦としてどうかという観点から見る者は すくなく、やはり子という位置からそれも将来自分がなるであろう母親=家政主体者という者に 対する見方が強い。さらに家庭の雰囲気として述べられているのは、コミュニケーションの多さ や、家庭に帰るとホッとする、くつろぐといったこと等、肯定的な面が多い。このように現在の 彼女らは、すくなくとも文章でみる限り、かなり安定した恵まれた家庭生活を営んでいる者が多

く、家族関係に対しても肯定的見解を有していると言える。

 次にユ0年後に彼女らが想定している生活をみると、教員養成系大学という事情を反映して8割 以上の者が教職に就いている自分を描いている。また9割の者が結婚していると想定しており、

その結婚年齢も25〜27歳頃と想定する者が半数、22〜24歳が4割近くで、現在の女子の平均結婚 年齢(25.1才)と相前後して結婚することを考えている。家族構成としては、夫婦と子ども2人

(長子に男の子、2〜3歳の間隔で次子に女の子)の核家族を想定する者と、両親十夫婦十子ど も2人の三世代家族を想定する者とがほぼ同数である。現実の彼女らの家族構成は核家族が圧倒 的に多かったので、将来も核家族で気楽にすごしたいと望む者が多いだろうと予想していたのに、

むしろ三世代家族の想定される割合が高いことは驚きであり注目に値する。このことは三世代家 族のどういう側面が女子学生の頭の中で想定され選択されたのかを知ることが、近い将来の高齢 化社会における家族関係のあり方を探る際の重要なポイントになると感じた。また家庭の雰囲気 として表現されているのは、明るくて笑いが絶えない・精神的にくつろげる・まとまりのある・

大らかで豊かな・平穏な・r大草原の小さな家」(テレビドラマの題)のような等が多くみられる。

(4)

 以上のように、作文を通してみた女子大学生の家庭観・家族観は、自分達の現在の家庭生活を 肯定的に受け収め、その生活を将来の自分が創り出すであろう家庭像に結びつけている面が強い。

その意味で、彼女らは幸福な存在であるといえるが、このことは逆に現実肯定的であるがために 家族関係に対する問題意識が発生しにくいという欠点も含んでいるように思われる。

 12帽権饒一彼女らが想定している家庭生活を共同で創り出してくれる相手としてどのような 配偶者が求められているのか、彼女らの結婚観をみてみよ㌔

表1.結婚観賜

恋愛を結婚の前提と 結 婚 は 配偶者の学歴は

考える蘇鮒 自分で親ご塞か汽 雄麗     わかb     ない

昭和56年度 68  16  16 85  4  11

74  3  23

昭和57年度 66  17  17 88  4  8 73  5  22 昭和58年度 50  18  32 86  4  10

71  0  29

昭和59年度 53  14  33 88  3  9

74  2  24

Y女子短大(S−55) 73  26  1 脆  2  2

78  0  22

丁大学(S.50) 70  30  0 70  10  20

100  0   0

 前述のように8割近くの者が27歳までには結婚することを考えている。そして表1に示すよう に、恋愛を結婚の前提と考える者が、各年度とも5〜7割をしめ、恋愛から結婚へという最近の 恋愛媛のパターンを支持している。ただ他大学での調査結果と比較すると、恋愛が結婚の前提と なるかどうかはrわからない」とする者が多く、その割合も上昇している点が目立つ。実際に直 面しないことには決定できないと慎重なのであろうか。次に結婚の主体性をみると、9割近くの 者が「自分で決める」としており、「親に任す」という者は僅少である。また配偶者の学歴は、

自分と同等以上のr大学卒以上」を選択する者が7書1」をしめる。

 そこで次に配偶者を選択する際に、それぞれの項目をどの程度重視するかをたずねたところ、

図1に示すように年度による違いは若干あるものの、かなり共通した傾向がみられる。すなわち r性格」r愛情」r健康」の3項目は、ほぼ全員が重視しており配偶者選択時の三種の神器と言 える。求められている性格は、やさしさ・大らかさ・明るさ・誠実さが多く、これは詫摩武俊氏 が東京の大学生を対象に行った調査結果と類似した傾向を示している。ついで重視率の高いのは r両親の賛成」r将来性」r頭の良いこと」rスタイル・身長」r顔立ち」などである。両親の 賛成が重視されているのは、前述の結婚の自己主体性からするとやや異なる感もあるが、このこ とは自分の決めた結婚相手に両親が満足し賛成してくれてゴールインしたいとする現代の女性の 若者気質と言えようか。おそらく両親の反対を押し切ってまで結婚するという強さには欠けるの かもしれない。また将来性や頭の良いことが重視されているのは、経済的な面での男性依存型と も言える。スタイル・身長や顔立ちといった外面的部分が重視されるのは、老若男女古今を問わ ずというところであろう。逆に重視率が低いのは、「宗教の一致」「生育環境の類似性」「兄弟 姉妹順位」r趣味の一致」などである。r宗教の一致」はともかくとして、「生育環境の類似性」

(5)

(%)

。O 誧ヲ

90 80

●   ●昭和56年度

◎.■◎昭和57年度

▲i ▲ 昭和58年度

■一 一i■ 昭和59年度

(注)重視すると回答した者

  の割合を図示した。

70 60

50 1、

40 30

20

10

  性 愛 健 収 職 趣  宗        琴董

  絡 情 康 入 業 致  数

将顔ス両頭重生児 1立 褐x春1隻語

性ち長成と性境位

図11配偶者選択時の重視度

や「趣味の一致」などは、共同で家庭生活を創り出す場合には、かなり重視されてもよい項目で はないかと筆者は考えるが、彼女らにとってはどうやらそれほど重視すべきものではないらしい。

その意味では、生育環境が異なっても、また趣味が不一致であっても共通の基盤を創り出してい けるだけの柔軟性があるとも解釈できる。しかし逆に、生活を共同で創り出していくということ に対する問題意識が希薄であるとも言えよう。また兄弟姉妹順位は、一昔前のようにきょうだい 数の多い時には問題になるのかもしれないが、最近のように2人きょうだいが一般的である場合 にはそれほど意識されないのかもしれない。しかしながら一般に依然として長子同居が支持され る中にあっては、将来の親との同居や別居を考える際には配偶者選択時にそのことがある程度選 択組上に関与してくると思うのであるが、その点の意識も柔軟性があるのか、あるいはまた問題 意識が希薄であるのか断定し難い。

 以上のように彼女らの結婚観をみると、結婚に対する自己主体性をもちつつも、両親から祝福 された結婚を望み、配偶者に対してはやや経済的依存志向を有していると言え、結婚とは夫婦が 共同して共通基盤を創り上げていくプロセスであるというところまでは認識されていない。もち

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ろん20才前の現段階では認識されていなくても当然と言えるが、授業展開の中では、その点への 事実認識の付加が充分配慮されねばならないであろう。

 131高崎化門田への関心一高齢化社会の到来が叫はれている昨今、今後の家族関係のあり方を 考える場合にはその点を抜きにしては論じられないと思う。とくに現在大学生段階である彼女ら は、予測される我国の本格的な高齢社会においては、老人扶養の最初の当事者となる世代にあた るからである。そこで彼女らが、どの程度高齢化問題に対して関心をもち、実態を正確に認識し ているかをみてみたい。

 前述のように、現在の彼女らの家族構成は9割近くが核家族世帯であり、祖父母と同居してい る三世代家族世帯は1割程度でしかない。そのため各年度とも共通して高齢化問題に対する関心 は低く、表2に示すようにr何も感じたことはない」r自分とは関係ない」とする者が多数をし め、r身近なことと思う」を上回っている。また我国の高齢化の現状をどの程度正確に認識して いるかを、女性の平均寿命や平均寿命の諸外国比、傍歳以上人口の家族構成比でたずねると、実 態を正確に把握している者はすくなく、r平均寿命は75歳位で諸外国に比べてやや長寿の方と思

㌔65歳以上の人の3〜5割が同居していると思う。」といった回答が目立つ。

表2.高齢化問題に対する関心度・認識度協

身近なことと患う    46

平寺 70歳未満 均命   4

諸国 外比

最も長寿   4

1〜2割

 15

70〜74歳  31

自分とは関係ない    20

やや長寿  67

3〜5割

 54

75〜79歳  46

何も感じたことはない     34

80〜84歳

 16

音  通

6−8割

 26

85歳以上   3 やや短命   2

9割以上

 5

(注)各年度に共通性が高いので、4年間の平均値を示した。

 高齢化問題への取り組みや世論が高まり、新聞誌上を賑わせているにも関わらず、自分とは関 係ないこと、老人だけの問題と受け収めている者が多いと言える。しかしながら高齢化問題を家 族関係の側面からとらえた場合には、配偶者選択時にすでに同居か別居かといった家族形態上の 選択を迫られることにも一なり、そこで展開されるであろう三世代の家族関係を考えると全く無関 係ではいられないはずである。さらに老人の三大不安要因(俗に老人の三悪と言われる)は何か をたずねると、r病弱」と回答できる者が多く、ついでr孤独」もでてくるが、「貧困」と回答 する者はすくなく、老人が経済的弱者であるとは認識できていない。回答の中にはrあまりきれ いでない」「物事が遅い」「病院を占領する」といったものも含まれており、人問の老いそのも のに対する認識が希薄かつ否定的であった。

 以上のように、彼女らが想定した前述の家庭像では三世代家族が多かったにもかかわらず、現 実の高齢化問題に対する関心は概して低く、現状把握も不正確である。それは老人と身近に接し

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ていないという彼女らの家族構成からくるものかもしれないし、あるいはまた高齢化問題は老人 の問題と単純に見てしまう若年屑の特徴かもしれない。しかし今後の家族関係を考えた場合には、

近未来のことであり、それは同属か別居かといった家族形態上の選択に関わるだけではなく、共 働き問題やライフサイクル、夫婦関係のあり方、終末介護の問題という広範な課題を含んでいる。

その意味で、高齢化問題に対する正確な事実認識を付与し、高齢化を身近なこととして意識させ るための授業展開が、今後の家族関係講義の中ではとくに必要になってくるのではないかと思わ

れる。

ま   と  め

 「家族関係」授業を有効に展開するための一助として、女子大学生の家庭観をみてきたが、そ こから次の諸点が指摘できる。第一に、彼女らの家庭観・家族観は、現実の自己の家庭生活を肯 定的に受け収める中で、その生活を将来の家庭像に結びつけていく面が強い。第二に、彼女らの 結婚観は、結婚に対する自己主体性をもちつつも、一方では両親や配偶者に対する依存性を示し ており、かなり現実遊離の理想志向と言える。第三に、高齢化問題に対する関心や認識は全般に 低く、来るべき高齢社会が家族関係に与える影響が如何なるものかについてはほとんど無関心と

も言える。

 以上の結果は、受講学生の現実の家庭生活が安定的で幸福なことを示すものとして評価できる が、逆に家族形成の前段階に位置する者、また社会に巣立つ前の者としてはあまりにも問題意識 が希範で社会認識に乏しいとも言える。その意味で、r家族関係」授業においては、まず家族と

くに高齢化に関する正確な実態認識をさせ、そこから生ずる家族関係のさまざまな事象、例えば 結婚問題、夫婦関係、共働き問題、親子関係、終末介護の問題などを関連的に展開していくこと が有効ではないかと思われる。また現在の彼らの家族構成を考えた場合には、身近に高齢者と接 する機会がすくないことからみて、なるべく視覚的に問題を意識させていくことが必要と思われ

る。

 彼らの価値認識を形成していくためには、正確な事実認識の付与と同時に、広範な人々の家族 に関する考え方を見聞させたり、新聞記事・ビデオの活用、見学なども有効な手段として、講義 の中に配置される必要があると痛感した。

引用・参考文献 詫摩武俊 1971性格  講談社

白石浩一 1965愛と性のレポートーその心理学的考察一  現代教養文庫

岸本幸臣・矢沢正子 1983女子短大生の同居意識に関する考察  大阪教育大学家政学研究会 生活文化研究第26冊

岸本幸臣・矢沢正子 1984男子大学生の同居意識に関する考察  大阪教育大学家政学研究会 生活文化研究第27冊

参照

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