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3 アジア時報間4月6日夜 巡航ミサイル トマホーク がシリアに向け発射された 全世界に放映された映像は米国が新たな戦争に着手した事実を示していた トマホークが初めて実戦使用されたのは1991年の湾岸戦争だ 東西冷戦に勝利し 唯一の超大国 にのし上がった米国の最先端の軍事力を見せつける光景だった 1

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ト ラ ン プ 米 大 統 領 が 電 撃 的 な シ リ ア 攻 撃 に 踏 み 切 っ た。 サ ド 政 権 が 化 学 兵 器 を 使 用 し た と 断 定 し、 化 学 兵 器 の 保 基 地 を 破 壊 す る と と も に、 再 び 使 え ば よ り 大 き な 被 害 を 「単 で の 武 力 行 使 」 を 世 界 に 見 せ つ け た ト ラ ン プ 政 権 の 強 硬 勢 は 同 時 に 北 朝 鮮 へ の 強 い 警 告 と も 言 え る だ ろ う。 核 や 物・ 化 学 兵 器 と い う 大 量 破 壊 兵 器 に は 容 赦 し な い と い う 姿 勢 を ト ラ ン プ 大 統 領 は 明 確 に し た か ら だ。 ロ シ ア や 中 国 を 巻 き 込 み な が ら 突 如 と し て 世 界 に 目 を 向 け た「 ト ラ ン プ 氏 の グ ロ ー バ ル・ パ ワ ー・ ゲ ー ム 」 の 狙 い は ど こ に あ る の か。

「無名作戦」の電撃軍事介入

    地 中 海 の 米 駆 逐 艦「 ポ ー タ ー」 と「 ロ ス 」 か ら 米 東 部 時

寄稿

 

おいかわ

 

 

(毎日新聞論説委員)

 

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アジア時報 間 4 月 6 日 夜、 巡 航 ミ サ イ ル「 ト マ ホ ー ク 」 が シ リ ア に 向 け 発 射 さ れ た。 全 世 界 に 放 映 さ れ た 映 像 は 米 国 が 新 た な 戦 争 に 着 手 し た 事 実 を 示 し て い た。 ト マ ホ ー ク が 初 め て 実 戦 使 用 さ れ た の は 1 9 9 1 年 の 湾 岸 戦 争 だ。 東 西 冷 戦 に 勝 利 し「 唯 一 の 超 大 国 」 に の し 上 が っ た 米 国 の 最 先 端 の 軍 事 力 を 見 せ つ け る 光 景 だ っ た。 1 0 0 0 ㌔ 以 上 先 の 標 的 を 正 確 に 破 壊 す る 巡 航 ミ サ イ ル は「 パ ッ ク ス・ ア メ リ カ ー ナ 」 の 象徴になった。   その後のイラク戦争 (2003年) 、リビア攻撃 (2011 年 ) の「 開 戦 」 も ト マ ホ ー ク で 始 ま っ た。 イ ラ ク 戦 争 で は 最 初 の 3 日 で 5 0 4 発 が 発 射 さ れ、 リ ビ ア 攻 撃 で も 1 1 4 発 が 撃 ち 込 ま れ た。 今 回 の シ リ ア 攻 撃 も 59発 が 集 中 砲 撃 さ れ た が、 攻 撃 と そ れ に 至 る 過 程 は こ れ ま で と は 大 き く 異 なっている。   過 去 の 攻 撃 が 大 規 模 な 武 力 行 使 だ っ た の に 対 し、 今 回 は 極 め て 限 定 的 な 攻 撃 だ っ た こ と が わ か る。 米 軍 は「 化 学 兵 器 使 用 の 再 発 抑 止 」 が 目 的 だ っ た と す る が、 何 を 目 的 と す る か に 意 味 を 込 め た 作 戦 名 す ら 公 表 さ れ て い な い。 目 的 を 持 つ 大 規 模 な 軍 事 行 動 を「 キ ャ ン ペ ー ン 」 と 呼 ぶ が、 今 回 は「ワン・オフ」 (1回限り)だ。   な に よ り、 国 連 安 全 保 障 理 事 会 で の 武 力 行 使 容 認 決 議 を 得 よ う と す る 痕 跡 が ま っ た く な い。 国 連 安 保 理 で の シ リ ア 非 難 決 議 案 が ロ シ ア の 拒 否 権 行 使 示 唆 を 受 け て 採 決 が 見 送 地中海の米海軍ミサイル駆逐艦から打ち上げられる巡航ミ サイル「トマホーク」=2017年4月7日、AP

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た 直 後 の 攻 撃 だ っ た が、 非 難 決 議 案 に は 武 力 行 使 を 求 ん な 電 光 石 火 の 攻 撃 は ど う や っ て 決 ま っ て い っ た の ト ラ ン プ 政 権 高 官 ら の 説 明 か ら 振 り 返 り、 何 が ポ イ ン 。4月6日午後、 フロリダ州パームビー 自 身 の 保 養 施 設 マ ラ ラ ー ゴ に 向 か う 大 統 領 専 用 機 の 機 ト ラ ン プ 大 統 領 は 同 行 記 者 団 に こ う 語 っ た。 子 供 や 女 化 学 兵 器 に よ っ て 殺 害 さ れ た 映 像 が 心 中 を 揺 り 動 か し い う。 軍 事 介 入 を 命 令 し た の は、 そ の わ ず か 2 時 間 後 1 月 29日 の イ エ メ ン 攻 撃 以 来 の 大 統 領 と し て 大 規 模 作 決 定 だ っ た。 「 ア サ ド( 大 統 領 ) の 行 動 を 変 え よ う と 過 去 の 試 み は こ と ご と く 失 敗 し た 」。 声 明 で 軍 事 介 入 ま り は 2 日 前 の 4 月 4 日 朝( 米 東 部 時 間 )。 の ち に サ だ と 判 明 す る 毒 ガ ス 攻 撃 で 苦 し む 人 々 の 映 像 に 世 界 に た。 5 日 朝 に は 情 報 機 関 が ア サ ド 政 権 に よ る 化 学 兵 器 だ と ほ ぼ 断 定。 5 日 昼 過 ぎ、 ホ ワ イ ト ハ ウ ス で 記 者 団 シ リ ア と ア サ ド 大 統 領 に 対 す る 私 の 立 場 は 一 気 に 変 た 」 と 明 言 し た。 シ リ ア 内 戦 に 関 心 を 示 さ な か っ た ト プ 大 統 領 が 表 舞 台 で 介 入 へ と ス タ ン ス を 変 化 さ せ た 瞬 っ た。 「 多 く の 越 え て は い け な い 一 線 を 越 え た 」 と 軍   5 日 午 後 に は「 3 つ の オ プ シ ョ ン 」 が 提 示 さ れ、 ト ラ ン プ 大 統 領 は、 攻 撃 的 だ が 紛 争 を エ ス カ レ ー ト さ せ な い 適 度 な 対 策 を 命 じ た。 オ プ シ ョ ン は 2 つ に 絞 ら れ、 化 学 兵 器 攻 撃 の 発 進 基 地 を 攻 撃 対 象 と す る 攻 撃 作 戦 が 精 査 さ れ た。 6 日、 習 近 平・ 中 国 国 家 主 席 を 迎 え る た め 向 か っ た フ ロ リ ダ 州 へ の 大 統 領 専 用 機 中 で も 協 議 を 続 け、 「 ゴ ー」 サ イ ン を 出 し た の は 習 主 席 と の 夕 食 会 の 直 前。 米 軍 は ロ シ ア 軍 に 警 告のため「 90分以内」の攻撃予告が通知された。   午 後 7 時 40分 に 攻 撃 が 開 始 さ れ る と、 ペ ン ス 副 大 統 領、 テ ィ ラ ー ソ ン 国 務 長 官、 マ ク マ ス タ ー 国 家 安 全 保 障 担 当 大 統 領 補 佐 官 ら が 手 分 け し て 同 盟 国 や 議 会 幹 部 に 通 告 を 始 め た。 1 時 間 後 の 午 後 8 時 40分、 時 速 8 8 0 ㌔ で 飛 ん で い た ト マ ホ ー ク が 次 々 に 標 的 を 撃 破。 飛 散 を 回 避 す る た め 化 学 兵 器 の 保 管 庫 は 標 的 か ら 外 さ れ た と い う。 ト ラ ン プ 大 統 領 は習主席と中座し、攻撃の事実を直接通告したという。

オバマ氏の「失敗」

    シ リ ア 攻 撃 後、 オ バ マ 政 権 の 元 高 官 が 日 本 政 府 関 係 者 に こ ん な 分 析 を 示 し た。 「 米 国 が 軍 事 介 入 す る 場 合、 軍 事 作 戦 の 詳 細 だ け で な く、 そ れ に よ る 外 交 的 な 影 響 と そ れ を 最 小 限 に 抑 え る た め の 手 立 て な ど を 事 務 方 が 積 み 上 げ た う え で 整 合 性 の あ る オ プ シ ョ ン に 仕 立 て る。 し か し、 い ま の ト ラ ン プ 政 権 に は 国 防 総 省 も 国 務 省 も 中 枢 と な る 高 官 が ま だ

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アジア時報 そ ろ っ て い な い。 ト ラ ン プ 大 統 領 の 意 向 が 先 行 し た 決 定 で、 事 後 の こ と が ど こ ま で 考 え ら れ て の 判 断 だ っ た のか」 。   ト ラ ン プ 大 統 領 が シ ョ ッ キ ン グ な 映 像 を 見 た こ と で 急 き ょ、 軍 事 介 入 へ と 舵 と 切 っ た と す れ ば、 「 や は り 何 を す る か ま だ 分 か ら な い 政 権 と い う 不 安 の 方 が 大 き い 」( 日 本 政 府 関 係 者 ) と い う の が 本 音 だ ろ う。 外 交 プ ロ セ ス を 捨 象 し た こ と に よ る 問 題 も 指 摘 さ れ る。 次 に そ の 点 を み て み よう。   シ リ ア 情 勢 を 巡 っ て は、 4 年 前 に も 同 じ よ う な 状 況 が あ っ た。 2 0 1 3 年 夏、 ア サ ド 政 権 が 自 国 民 に 化 学 兵 器 サ リ ン を 使 用 し、 こ れ を「 レ ッ ド ラ イ ン 」 と 警 告 し て い た オ バ マ 大 統 領 が 軍 事 介 入 に 踏 み 切 る 方 針 を 表 明 し た。 後 に 軍 事 作 戦 か ら 外 交 決 着 へ と 大 き く 舵 を 切 り、 「 世 界 の 警 察 官 」 の 座 を 辞 し た 米 国 の 衰 退 を 示 す 一 方、 経 済 的・ 軍 事 的 拡 大 を 続 け る 中 国 の め ざ ま し い 台 頭、 冷 戦 の 敗 者 だ っ た は ず の ロ シ ア の 急 激 な 復 活 を 世 界 は 目 の 当 た り に し た。 国 際 的 な パワーバランスの変化を感じ取ったわけだ。   当 時、 私 は ワ シ ン ト ン 支 局 で 取 材 し た が、 オ バ マ 大 統 領 の 武 力 行 使 の 決 断 に は 明 ら か に 迷 い が あ っ た。 最 強 の 同 盟 国 で あ る は ず の 英 国 は 議 会 が 反 対 し て 共 同 作 戦 を 見 送 り、 日 本 で す ら「 証 拠 」 を 示 す よ う 求 め た。 日 英 が 支 持 し た イ ラ ク 戦 争 で 開 戦 理 由 の 一 つ だ っ た 大 量 破 壊 兵 器 が 結 局 発 見 さ れ な か っ た か ら だ け で は な い。 国 際 法 に 照 ら し て 法 的 正 当性が担保されるのか、という疑念もあった。   国 際 法 上、 軍 事 介 入 の 根 拠 と な る の は 国 連 安 全 保 障 理 事 会 の 武 力 容 認 決 議 か、 自 国 へ の 脅 威 が 切 迫 し た 場 合 の 自 衛 権 の 行 使 の 二 つ だ。 シ リ ア 攻 撃 で は 安 保 理 決 議 は ま と ま ら ず、 オ バ マ 大 統 領 は「 米 国 の 安 全 保 障 へ の 深 刻 な 危 険 」 を 指 摘 し た が、 直 接 の 脅 威 は な か っ た。 「 化 学 兵 器 の 使 用 拡 大 や テ ロ 組 織 へ の 拡 散 」 も 挙 げ た が、 化 学 兵 器 禁 止 条 約 な  及川 正也(おいかわ・まさや)毎日新聞論説委員。早稲 田大学政治経済学部卒。1988年毎日新聞社入社。水戸支 局を経て、92年政治部。首相官邸、自民党、新進党、民主党、 防衛庁(現防衛省)、外務省などを担当。自民党下野から自社 さ政権、野党再編などを経て民主党政権に至る日本政界の 激動を20年余取材。2005年からワシントン特派員としてホ ワイトハウスや国防総省を担当。オバマ氏が勝利した08年大 統領選では全米を取材で回った。政治部、経済部、外信部各 副部長(デスク)を経て13年4月、北米総局長(ワシントン支 局長)。16年4月から現職。米国政治や社会問題から国際政治、日米関係など幅広く 取材している。「琉球の星条旗」(毎日新聞政治部、講談社)、「検証『大震災』」(毎 日新聞『震災検証』取材班、毎日新聞社)などの執筆、編集に参加した。

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際 規 約 が 武 力 行 使 を 認 め ら れ て い る わ け で は な か っ 弱 な 法 的 根 拠 を 補 う た め、 オ バ マ 大 統 領 は 議 会 に 武 力 を 認 め る 決 議 採 択 を 求 め た。 イ ラ ク 戦 争 の よ う な 大 規 闘 と 違 っ て 限 定 爆 撃 で 議 会 承 認 を 求 め る の は 異 例 だ。 間 の 武 力 行 使 で あ れ ば 戦 争 権 限 法 の 範 囲 内 で 議 会 承 認 に 実 行 で き る か ら だ。 オ バ マ 大 統 領 は「 議 会 承 認 な し 軍 事 行 動 を 遂 行 す る 権 限 は 大 統 領 に あ る 」 と し つ つ、 承 認 を 求 め た こ と は、 大 統 領 権 限 だ け で 武 力 行 使 す る 無 理 が あ る こ と を む し ろ 告 白 し た こ と に な る。 責 任 の を 議 会 に も 共 有 さ せ る 考 え だ っ た と み ら れ る が、 議 会 ず か 2 日 半 で 武 力 行 使 を 決 断 し た 今 回 の 攻 撃 の 法 的 根 遥 か に 脆 弱 だ。 事 前 の 外 交 活 動 の 時 間 的 余 裕 は な く、 行 使 容 認 の 国 連 安 保 理 決 議 を 取 り 付 け よ う と す る 動 き な か っ た。 攻 撃 に 際 す る 声 明 は「 化 学 兵 器 の 拡 散 と 使 阻 止 し 抑 止 す る こ と は 米 国 の 重 要 な 国 家 安 全 保 障 上 の 」 な ど、 オ バ マ 大 統 領 の 4 年 前 の 声 明 を ほ ぼ な ぞ っ た 国 の 軍 事 介 入 や 侵 攻 の 多 く は 自 衛 権 の 行 使 で あ る。 ガ ン 政 権 は 1 9 8 6 年、 西 ド イ ツ の デ ィ ス コ 爆 弾 テ ロ 事 件 で 米 兵 2 人 が 死 亡 し た こ と へ の 報 復 措 置 と し て リ ビ ア を 爆 撃。 2 0 0 1 年 の 米 同 時 多 発 テ ロ に 対 す る ア フ ガ ニ ス タ ン 攻 撃 は 米 本 土 攻 撃 へ の 反 撃 だ っ た。 こ う し た 個 別 的 自 衛 権 だ け で な く、 西 側 の 代 表 国 と し て 集 団 的 自 衛 権 も 行 使 し た。 1 9 6 5 年 の ベ ト ナ ム 戦 争 本 格 化、 1 9 8 3 年 の 中 米グレナダ侵攻はその例だ。   ゴ ム の よ う に 弾 力 が あ り、 鋼 の よ う に 固 い ――。 米 国 の 自 衛 権 の 解 釈 は 融 通 無 碍 で、 い っ た ん 行 使 す れ ば 強 力 な 軍 事 力 を 動 員 す る。 た だ、 米 国 が 武 力 行 使 の 発 動 根 拠 を あ ま り 気 に し な い の か と い え ば、 必 ず し も そ う で は な い。 1 9 9 9 年 に セ ル ビ ア に よ る コ ソ ボ で の 民 族 浄 化 に 対 抗 す る た め 北 大 西 洋 条 約 機 構( N A T O ) 主 導 の 空 爆 に 米 国 が 参 加 し た。 こ の と き は 国 連 安 保 理 決 議 で も 自 衛 権 行 使 で も な い「 人 道 介 入 」 と い う 概 念 で 説 明 さ れ た が、 そ れ が 法 的 根 拠 と な る か ど う か の 説 明 は な か っ た。 オ バ マ 政 権 は 4 年 前 の 攻 撃 決 断 の 際、 最 終 的 に は こ れ を 援 用 す る こ と は 困 難 と判断したという。   シ リ ア が 再 度 サ リ ン を 自 国 市 民 に 使 っ た と す れ ば、 爆 撃 を 回 避 し た オ バ マ 政 権 に は 衝 撃 だ っ た に 違 い な い。 ア サ ド 政 権 の 後 ろ 盾 と な っ た ロ シ ア と の 外 交 交 渉 を 主 導 し た ケ リ ー 米 国 務 長 官 は 2 0 1 4 年 に「 1 0 0 % 化 学 兵 器 を 排 除 し た 」 と 明 言 し て い た。 オ バ マ 政 権 が シ リ ア と ロ シ ア に だ ま さ れ た と 後 悔 し、 ト ラ ン プ 政 権 は オ バ マ 政 権 が ヘ マ を し

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アジア時報 た か ら だ と 憤 っ て も 不 思 議 で は な い。 ト ラ ン プ 大 統 領 は た め ら う こ と な く 引 き 金 を 引 い た と い う こ と だ ろう。

対ロシア「衝撃と畏怖」戦略

    し か し、 今 回 の シ リ ア 攻 撃 が ト ラ ン プ 大 統 領 の 衝 動 の 帰 結 だ っ た か ど う か は ま だ 様 子 を 見 る 必 要 が あ る。 確 か に、 関 係 改 善 を 探 っ て い た ロ シ ア と の 関 係 は 瞬 時 に 冷 え 込 ん だ が、 そ の 先 に ど う い う 戦 略 が あ るか、見えないからだ。   米 軍 が 今 回 攻 撃 し た 空 軍 基 地 は ロ シ ア も 共 同 利 用 し て い た。 ト ラ ン プ 政 権 は ロ シ ア が 化 学 兵 器 保 有 を 黙 認 し、 サ リ ン 攻 撃 も 事 前 に 知 っ て い た と 疑 っ て い る。 ロ シ ア は シ リ ア 機 が 空 爆 し た 反 体 制 派 の 施 設 に 化 学 兵 器 が 偶 然 あ っ た と 説 明 す る が、 米 ホ ワ イ ト ハ ウ ス は サ リ ン を 搭 載 し た 爆 弾 が 着 弾 し た の は 建 物 で は な く 痕 跡 な ど の 照 合 か ら 路 上 だ っ た と 確 認 し て お り、 ロ シ ア の 説 明 を「 作 り 話 」 と 断 定 し て い る。 国 際 社 会 は 今 回 の シ リ ア 攻 撃 を 支 持 す る 意 見 が 大 勢 だ。   ト ラ ン プ 氏 が 大 統 領 就 任 直 前 の 1 月、 次 期 国 務 長 官 に 指 名 し た の は 米 石 油 大 手 エ ク ソ ン モ ー ビ ル の 前 最 高 経 営 責 任 者( C E O )、 レ ッ ク ス・ テ ィ ラ ー ソ ◆ シリアを巡る米ロと中東情勢 ◆

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ン 氏 だ っ た。 エ ネ ル ギ ー を 通 じ て 世 界 を 知 る 人 物 だ っ た。 ロ シ ア 通 と し て 知 ら れ る テ ィ ラ ー ソ ン 氏 を 推 薦 し た の は、 大 統 領 補 佐 官 や 国 務 長 官 を 務 め た キ ッ シ ン ジ ャ ー 氏 と さ れ る。 対 ソ 連 抑 止 と し て ニ ク ソ ン 大 統 領 の 電 撃 的 な 中 国 訪 問 を 実 現 さ せ た パ ワ ー ポ リ テ ィ ク ス の 戦 略 家。 46年 前 の 脅 威 は ソ 連 だ っ た が、 現 在 は 中 国 だ。 対 中 抑 止 の た め に 今 度 は ロ シ ア と 連 携 す る メ ッ セ ン ジ ャ ー 役 が テ ィ ラ ー ソ ン 氏 だ っ たというわけだ。   シ リ ア 攻 撃 は、 そ の 構 図 を 大 き く い と も 簡 単 に 崩 し た よ う に み え る。 「 限 定 攻 撃 」 と は い え 軍 事 介 入 す れ ば 中 東 と 世 界 は 大 き な 混 乱 の 渦 に 巻 き 込 ま れ る。 オ バ マ 大 統 領 の シ リ ア 攻 撃 決 断 時 に は ツ イ ッ タ ー で「 借 金 が 増 え、 長 い 紛 争 に 巻 き 込 ま れ る 恐 れ が あ る と い う 以 外、 シ リ ア を 爆 撃 し て い っ た い 何 を 得 ら れ る と い う の だ?   オ バ マ は 議 会 の 承 認 を 得 る べ き だ 」 と 注 文 を 付 け て い た ト ラ ン プ 氏 で あ る。 今 回、 議 会 承 認 の 打 診 は お ろ か、 事 前 の 根 回 し す ら や っ た 節 はない。ただ、 大統領選出馬前とはいえ、 なぜ持論を封じ、 態度を急旋回させたのか。   俯 瞰 し て 見 え て く る の は、 シ リ ア 問 題 を 解 決 す る の は ロ シ ア だ と い う 大 国 外 交 の 強 い メ ッ セ ー ジ だ。 ト ラ ン プ 大 統 領 は シ リ ア 攻 撃 に 踏 み 切 っ た と は い え、 総 攻 撃 に よ る 政 権 転 覆 や 国 連 を 動 か し て の 和 平 交 渉 後 押 し へ の 関 心 は 引 き 続 き示していない。 シリア攻撃後の米紙ウォールストリート ・

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アジア時報 を「 主 権 国 家 に 対 す る 侵 略 行 為 で あ り、 国 際 法 に 違 反 し て い る 」 と 反 発 し た が、 テ ィ ラ ー ソ ン 国 務 長 官 と ラ ブ ロ フ 露 外 相 と の 会 談 で は、 険 悪 だ っ た 米 露 関 係 を こ れ 以 上 こ じ ら せ な い よ う 対 話 を 継 続 す る こ と で 一 致。 国 連 安 保 理 で は 反 対 し た 化 学 兵 器 禁 止 機 関( O P C W ) に よ る 調 査 団 派 遣 も 受 け 入 れ た。 国 際 世 論 は ア サ ド 政 権 の 化 学 兵 器 を 野 放 し に し た ロ シ ア と い う 目 で 見 て お り、 厳 し い 立 場 だ。 む し ろ 弱 い 立 場 を 作 り 出 し、 解 決 に 動 か せ る と い う の が ト ラ ン プ 政 権の戦略であれば、奏功していることになる。

北朝鮮への「警告」

    シ リ ア 攻 撃 に 続 き、 4 月 13日 に 米 軍 が 非 核 の 通 常 兵 器 と し て は 史 上 最 強 の 大 規 模 爆 風 爆 弾「 G B U 4 3 B 」( M O A B ) を ア フ ガ ニ ス タ ン に あ る I S の 拠 点 に 投 下 し た。 実 戦 で の 使 用 は 初 め て だ。 I S が 利 用 す る ト ン ネ ル 施 設 を 標 的 と し た と い う。 だ が、 I S に こ れ ほ ど 強 力 な 爆 弾 の 投 下 が 必 要 か と い う 疑 問 が 出 て い る。 シ リ ア 攻 撃 は ま さ に 習 近 平・ 中 国 国 家 主 席 を ト ラ ン プ 大 統 領 が 自 身 の 保 養 地 に 招 い たタイミングで行われた。その直後に原子力空母 「カール ・ ビ ン ソ ン 」 を 朝 鮮 半 島 近 海 に 派 遣 し た。 習 主 席 は す ぐ に 動 き、 トランプ大統領との電話協議で平和的解決を促しつつ、 北 朝 鮮 へ の 独 自 制 裁 も 示 唆 し た と い う。 M O A B は イ ラ ン や 北 朝 鮮 の 地 下 核 施 設 へ の 攻 撃 に も 使 え る と さ れ る。 一 連 ジ ャ ー ナ ル と の 単 独 イ ン タ ビ ュ ー で ト ラ ン プ 大 統 領 は「 シ リ ア に は 深 入 り し な い 」 と 明 言 し て い る。 ロ シ ア が ア サ ド 政 権 を 支 持 す る 一 方、 米 国 や 親 米 ア ラ ブ 諸 国 は 後 継 政 権 を ど う す る か の 図 柄 が 描 け て い な い。 反 政 府 勢 力 に は イ スラム国 (IS) と 戦 う 過 激 派 集 団 も 含 ま れ、 一 筋 縄 で は い か な いからだ。   一 方、 ロ シ ア の プ ー チ ン 大 統 領 は シ リ ア 攻 撃 ◆ 主な米国主導の限定攻撃 ◆

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年 に キ ッ シ ン ジ ャ ー 氏 の 発 案 に 基 づ く「 ジ ャ イ ア ン ト・ ラ ン ス 作 戦 」 が 有 名 だ。 戦 略 爆 撃 機 に よ る ソ 連 へ の 核 攻 撃 作 戦 を 実 施 し、 途 中 で 感 づ か れ る よ う 仕 組 ん だ 作 戦。 狙 い は ベ ト ナ ム 戦 争 を 終 結 さ せ る に は 核 戦 争 も 辞 さ な い と い う 「 脅 し 」 を か け、 北 ベ ト ナ ム を 交 渉 に 引 き 入 れ る よ う 圧 力 を か け る 戦 略 だ っ た。 「 ニ ク ソ ン は 何 を し で か す か わ か ら ない」と思わせることがそのポイントだったという。   ト ラ ン プ 大 統 領 は「 マ キ ャ ベ リ ア ン 」 な の か。 戦 略 が あ るかどうかを読み取るには、もう少し時間が必要だ。 軍 事 行 動 は 北 朝 鮮 を に ら ん だ 意 図 的 な も の と の 見 方 も で る が、 何 よ り 北 朝 鮮 に 軍 事 的 圧 力 を 強 め る こ と が 中 国 を ト ラ ン プ 政 権 が 抱 え る 最 大 の 外 交 問 題 は、 シ リ ア・ I S 北 朝 鮮 だ。 だ が、 「 米 国 第 一 」 を 掲 げ る ト ラ ン プ 大 統 領 こ れ に 対 峙 す る 余 裕 は な い と 判 断 し て い る。 脅 威 を 放 置 ず、 脅 威 を 拡 大 さ せ な い た め に、 シ リ ア で は ロ シ ア、 北 鮮 で は 中 国 を 動 か す ダ イ ナ ミ ッ ク な 外 交 戦 略 を 描 い た と え ば、 言 い 過 ぎ だ ろ う か。 米 国 が そ の 先 の 中 東 安 定 化 や 鮮 半 島 非 核 化 へ の 戦 略 を 立 て て い る か は 不 明 で、 む し ろ 「丸投げ」 するという危うさを抱えるが、 「リトマス試験紙」 となる可能性もある。 「米中露」の新型外交ともいえるだろう。 狂 人 の 振 り を す る の は と き に と て も 賢 明 な こ と だ 」。 イ リ ア の 外 交 官 だ っ た マ キ ャ ベ リ が こ う 記 し た の は 今 か ら 0 0 年 前 の 1 5 1 7 年 だ。 ど ん な 手 段 を 使 お う と も 国 家 利 益 の た め に は 正 当 化 さ れ る と い う 権 謀 術 数 主 義 を 唱 著 書「 君 主 論 」 で 知 ら れ る が、 「 狂 人 の 振 り 」 は そ の と き に 狂 気 を 演 出 し、 外 交 を 後 押 し し よ う と す る 手 法 は ッ ド マ ン・ セ オ リ ー」 と 呼 ば れ る。 冷 戦 期 の 1 9 6 9

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