21
厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患等政策研究事業)
分担研究報告書
研究分担者 山岸 正和 (金沢大学医薬保健研究域医系研究科・教授)
特発性心筋症に関する調査研究 研究要旨
本研究班は、1974年に旧厚生省特定疾患調査研究班として、特発性心筋症の疫学・病因・診断・治療を明ら かにすべく設立され、その後約40年間継続して本領域での進歩・発展に大きく貢献してきた。本研究は、心 筋症の実態を把握し、日本循環器学会、日本心不全学会と連携し診断基準や診療ガイドラインの確立をめざ し、研究成果を広く診療へ普及し、医療水準の向上を図ることを目的とした。研究班による全国規模での心 筋症のレジストリー、特定疾患登録システムの確立を推進準備し、心筋症をターゲットとした登録観察研究 であるサブグループ研究を開始し、登録をすすめた。また、研究成果の社会への還元として、ホームページ 公開や市民公開講座を行った
A.研究目的
肥大型心筋症の原因は心筋サルコメア蛋白遺伝 子群の変異であることが判明しており、原因遺伝 子による臨床病型の違いが報告されている。しか しながら、臨床現場から遺伝子検査へのアクセス は保険収載もなく制限されているのが現状である。
一方で比較的簡便に実施可能な心臓MRIガドリニ ウム遅延造影法(LGE)により本症の病理学的本態 である心筋の線維化を捉えることが可能となった。
本研究の目的は、サルコメア蛋白遺伝子変異が心筋 の線維化を直接的にもたらすという仮説のもとに、
LGEの定量的評価により遺伝子変異の存在が予測 可能であるかを検証することである。
B.研究方法
金沢大学附属病院において肥大型心筋症と診断 され、心臓MRIによる評価が行われた82名を対象 とした。遺伝子解析に関しては次世代シークエンサ ーで多数の候補遺伝子を搭載した遺伝子パネルで 実施した。心臓MRI所見の解析では、心筋短軸像の 複数スライスにおいて正常心筋部位を基準とした 場合の6S.D. を超える輝度をもつ心筋部位をLGE として定義した。全てのスライスにおけるLGE総面 積をトレースにより求めた心筋総面積で除した値 を%LGEと定義した。
(倫理面への配慮)
本研究は金沢大学医学倫理審査委員会に承認され た。全対象者に対し文書を用いて説明し、同意を 得た。
C.研究結果
臨床的に診断された肥大型心筋症82例(男性57.3%、
平均年齢55.4歳、平均最大心筋壁厚19.2mm)にお いて、原因遺伝子変異が同定されたのは44例(5 4%)であった。LGEは60例(73.2%)に認められ、%
LGEの平均値は9.9%であった。%LGEの上昇は、
原因遺伝子変異の存在を有意に予測する独立した 因子であった(オッズ比=2.12、95%CI=1.5-3.8、 p<0.01)。%LGEの変異予測についてのROC解析 ではAUC=0.96と高い精度を有し、カットオフ値
=8.1%において、感度=93.2%、特異度=89.5%、
陽性的中率=91.1%、陰性的中率91.9%であった。
古典的な遺伝子変異予測ツールであるToronto sco reとの精度比較検定を行い、%LGEが従来法に比し て有意に優れた変異予測法であることを示した。
D.考察
肥大型心筋症における間質線維化はサルコメア蛋 白遺伝子変異に起因するコラーゲン生成関連パス ウェイの活性化による機序が示されており、心筋肥 大が顕在化する以前から存在する一次変化である と認識されている。一方で、LGEが検出する線維化 はreplacement fibrosis(線維性瘢痕)と呼ばれ、
主に壊死心筋細胞が線維組織に置換されて起こる 二次性変化として捉えられてきた。本研究では本症 におけるLGEの定量的評価は年齢などの時間的要 素とは独立して遺伝子変異の存在を予測し、サルコ メア変異と線維性瘢痕形成との直接的な関係を示 唆した。
E.結論
肥大型心筋症におけるLGE定量評価はサルコメア 蛋白遺伝子変異の有無を予測し、本症の管理戦略上 有用である。
F.健康危険情報
本研究においては後ろ向き観察研究であり該当し ない。
G.学会発表 1.論文発表
Teramoto R, Fujino N, Konno T, Nomura A, Nagata Y, Tsuda T, Tada H, Sakata K, Yamagishi M, Hayashi K, Kawashiri MA.
Late gadolinium enhancement for prediction of mutation-positive hypertrophic cardiomyopathy on the basis of panel-wide sequencing
Circulation Journal 2018; 82: 1139-1148
2.学会発表(発表誌面巻号・ページ・発行年等 も記入)
Teramoto R, Konno T, Tada H, Hayashi K, F ujino N, Kawashiri MA, Yamagishi M.
Comprehensive Approach Identifying Causativ e Mutations in Patients with Hypertrophic Ca rdiomyopathy Using Next Generation Sequenc ing Panels
The 81st Annual Scientific Meeting of the Ja panese Circulation Society 2017(Program JC S 2017, 253頁)
H.知的財産権の出願・登録状況(予定も含む)
22 1.特許取得
該当なし
2.実用新案登録
該当なし 3.その他 該当なし