2013/11/27
地盤振動工学特論(芝浦工大・紺野)統計的グリーン関数法
■出典
本章の内容は主に,
野津・菅野:経験的サイト増幅・位相特性を考慮した強振動評価手法-内陸活断層地震およ び海溝型地震への適用性の検討-,No.1120,港湾空港技術研究所資料(プログラム付)
,2006.
久田:6章 地震と地震動,建築の振動-応用編-西川他著),朝倉書店,2008.
ウェブテキスト2000
版,強震動の基礎,防災科研,http://www.k-net.bosai.go.jp/k-net/gk/publication/を参考あるいは引用している.
■断層の表示方法
出典:http://www.k-net.bosai.go.jp/k-net/gk/publication/Sect-1/Fig5.2.1-1.JPG
■地震モーメントM0とモーメントマグニチュードM w
0 2
0
0
0
0
2 5
lo g 1 6 .1
( : d y n c m ) 1 .5
lo g 9 .1
( : N m ) 1 .5
1[ ] 1 0 0 0[ ] 1 0 0[ c m / s ] 1 0 d y n
s
M D S
V
M
M w M
M
M w M
N g
例題 断層面で強い地震波を発生させる領域をアスペリティという.ある地震で,2つのアスペリ ティが存在し,そのモーメントマグニチュードM w が 6.3 と 6.9 であった.全体のM w はいくらに なるか.
解答例
(1 .5 9 .1 )
0 1 0 MW [ N m ]
M
より,全体の地震モーメントM0は,
(1 .5 6 .3 9 .1 ) (1 .5 6 .9 9 .1 ) 0
1 8 1 9
1 9
0
1 9
1 0 1 0
3 .5 4 8 1 0 2 .8 1 8 1 0 3 .1 7 3 1 0 [ N m ]
lo g 9 .1
1 .5
lo g 3 .1 7 3 1 0 9 .1 1 .5
6 .9 3 M
M w M
■各種マグニチュード
各種マグニチュードの比較(宇津徳治, 1984)
■浅い地震のマグニチュードと各種パラメータの標準的な関係(『地震の事典』,宇津他編著) 断層面積
S (km
2):
lo gS 1 .0M 3 .9断層長さ
L (km):
lo gL 0 .5M 1 .8断層幅
W(km):W=L/2
すべり量
D (cm):
lo g D 0 .5M 1 .3ライズタイム
(s):
lo g 0 .5M 3 .2S L W D
τkm2 km km cm s
5 13 5 3 16 0.2
6 126 16 8 50 0.6
7 1,259 50 25 158 2.0
8 12,589 158 79 501 6.3
9 125,893 501 251 1,585 20.0
M
■観測スペクトルO( f)
地震動は次のように表現できる.
( ) ( ) ( ) ( )
O f S f P f G f
ここで,
( )
O f :地震動のフーリエ振幅スペクトル
( )
S f :震源特性
( )
P f :経路特性
( )
G f :サイト特性
である.したがって,任意の建設サイトにおいて,右辺の各特性が設定できれば,この地点の地震 動波形を推定することができる.
■震源特性S(f )
2 0
2 3
2 ( )
4 1 /
0 .6 6 /
e
c
c e
M f S f R F S P R T I T N
V s f f
f V s S
( )
S f :ω-2則を満たす震源波形の加速度フーリエ・スペクトル(補足:M5程度までの中小地震で は、放射される地震波はほぼω-2則に従うが、大地震の場合は断層破壊の非一様性や破壊伝播の影 響によって必ずしもω-2則を満たさない。)
R :ラディエーション係数.各小断層から計算地点への方位角,射出角により計算される.
F S :自由表面による増幅の効果(=2)
P R T I T N :地震動のエネルギーが水平2成分に分散する効果.P R T I T N は水平2成分の二乗和が1
になるように設定(P R T I T N 1 / 2 0 .7 0 7 1)
0e
M :小断層の地震モーメント
fc:小断層のコーナー振動数.
,V s:地震基盤における媒体の密度,S波速度 放射特性について
例題 S( f)の項である
2
1
1 (f / f c) を描画せよ.
解答例
図から分かるように平らな区間と傾きが1 / f 2の区間の直線の交点の振動数
f
がコーナー周期fc
と一致する.0.01 0.1 1 10 100
1E-4 1E-3 0.01 0.1 1
1/(1+( f / fc)2 )
f (Hz) fc=0.5 fc=1 fc=1.5
傾き 1/f 2 fc=0.5 1 1.5
補足 以下は,http://www.k-net.bosai.go.jp/k-net/gk/publication/1/I-5.2.5.html より引用.
コーナー振動数
fc
は,おおよそ以下の関係がある.0 .3 / : S
f c V s R V s
R
波 速 度
: 震 源 断 層 を 円 盤 近 似 し た と き の 半 径
したがって,震源が大きくなればなるほど,コーナー振動数は小さくなる.
下記の図は,実際の地震の観測スペクトルで
fc
は約1.5Hz
と読み取れる.上部地殻の平均的な S波速度をVs=3.5km
を用いると,震源断層の半径はR=0.7km
となる.したがって,観測スペクト ルから,おおよその地震規模を読み取ることができる.傾き:-2
(出典:木下,大竹,2000.) 例題 下図は,表面波マグニチュード(周期
20
秒の表面波の振幅と震源距離の関係から推定され る地震規模)ごとの変位スペクトルである.地震規模に応じて,変位は大きくなり,コーナー振動 数は低振動数側に移動していることが分かる.図
4.4-1
地震動変位スペクトルの相似則http://www.k-net.bosai.go.jp/k-net/gk/publication/2/II-4.4.html
注釈:①上図の縦軸は,変位振幅に対応している.②地震規模が大きくなると,単純に震源スペク トルが大きくなるわけではない.したがって,中小地震を重ねて,大地震を表現するには,それな りの工夫が必要である.
■経路特性P( f)
( ) 1e x p f r
P f
r Q V s
Q:伝播経路における媒体の Q
値実体波の幾何減衰
E:地震波エネルギー,A:地震波の振幅 E∝A2 ①
震源から放出される地震波は球状に広まるため,震源距離 r でのエネルギ ーは,半径rの球の表面積Sに逆比例する.
E∝1/S=1/(4πr2) ②
①②より,A∝1/r
exp(-πfr/(QVs))について
exp(-πfr/QVs)=exp(-πr/(Qλ))=exp(-π/Q*r/λ)= exp(-2π/2/Q*r/λ)=
■サイト特性G( f)
・地下構造を基に重複反射理論を用いて求める方法
・地震観測記録のスペクトルインバージョンにより求める方法 などがある.
■複雑な断層破壊(http://www.k-net.bosai.go.jp/k-net/gk/publication/1/I-5.3.2.html)
実際の地震では、断層破壊の過程はきわめて複雑である。例えば、1995 年兵庫県南部地震は、
大局的に見て3つの地震(サブイベント)から構成されていた。第
1
のサブイベントが最も大きく、その断層長は淡路島北部から神戸市西部まで約
25km
に達する。これに続いて北東側で第2、第3 のサブイベントが発生した。このように、断層破壊は、急激な進行と停滞を交えながらぎくしゃく とした過程をたどった。1983
年日本海中部地震(M=7.7)の場合はもっと極端であった。この地震は2つのサブイベント からなるが、第1
のサブイベントの断層破壊がほぼ終了した後、10 数秒してから第2の破壊が始 まった。震源断層の長さはそれぞれ60km、40km
程度で、両者あわせて南北約100km
の断層破壊 が生じた。このように、幾つかのサブイベントからなる地震を、「複合地震」または「マルチプルショック」
と呼ぶ。実は、上に紹介した2つの地震は特殊な事例ではない。M7以上の大地震は、ほぼ例外な く複合地震の性質をもつ。
震源断層面上では、最終的なすべり量も一様ではない。図
5.3.2-1
は、兵庫県南部地震の断層す べり量の分布を示したものである。断層面は垂直に近く、長さ約45km(北東―南西方向)、幅約 20km(深さ方向)の広がりをもっている。断層すべり量は淡路島側で大きく、野島断層直下の浅
部では2m
以上に達する。野島断層では、地表にも断層ずれが現れた。一方、すべり量が大きい場所と地震波エネルギーを強く放射する場所は、必ずしも一致しない。
例えば、断層破壊が急激に停止するときには、強い地震波が放射され、地震波形に「ストッピング・
フェイズ」として現れる。こうした複雑な断層破壊過程を解明することは、強震動を予測する上で も重要な意味をもっている。
図5.3.2-1 1995年兵庫県南部地震の断層すべり量分布 [井出・他 (1996)による].☆印は本震の震源,小さい丸は余震
を示す.
■sgf28.exe(野津氏作成)の使用方法
ここでの目的:シナリオ地震の地震波作成方法には,数値計算(差分法,FEM,BEM など)や経 験的グリーン関数法,統計的グリーン関数法などがある.ここでは,統計的グリーン関数法を適用 して,地震波作成を経験してみることを目的とする.
◆以下の fort.1~4 は k_sgf28 を実行すると自動的に読み込まれる.各ファイルは以下の情報を含 んでいる.
>type fort.1 サイト特性のファイル
1 0.003052 16385 通し番号,振動数刻み,データ個数(I5,F10.6,I5)
AOMORI-G サイト名 1.6165625 以下,増幅倍率 2.7331250
3.8496876 4.9662499 6.0828123 7.1993752
・
・
・
>type fort.2 位相特性に使用する地震波のファイル
1 0 6000 0 0.010 通し番号,?,データ個数,?,時間刻み AOMORI-G(EW) 地震観測点名(成分)
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 ? 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 ? 0.00000000 0.00000000 0.00000000 0.00000000 0.00000000 ? 0.00000000 0.00000000 0.00000000 0.00000000 0.00000000 ? 0.00000000 0.00000000 0.00000000 0.00000000 0.00000000 ? 0.00000000 0.00000000 0.00000000 0.00000000 0.00000000 ? 0.7087262 以下,波形データ
0.7387262 0.5787262 0.2687262
・
・
・
>type fort.3 サイト波作成地点の座標のファイル 「ータを追加しなければいけない.
1 計算する地点数,地点数の分だけ,fort.1,2,4 のなかに同様の書式でデ 140.752 40.826 0.0 経度,緯度,深さ(ここでは,0km を入力すること)
◆地震断層の情報(ファイル名:t1968)※k_sgf28.exe では,自動的に読み込まれる
t1968 のデータフォーマットの説明(1968 年十勝沖地震を例として),野津・菅野(2006)の添付ファ イルより引用
3.1 3.9 114.0 0.92
143.58 40.73 9.0 16.0 8.0 70.0 84.0 156.0 20.0 7.2E+26 3.0 0.67 0.0
5 5 5
143.58 40.73 9.0 8.0 8.0 -24.0 64.0 156.0 20.0 1.8E+26 3.0 0.67 0.0
5 5 5
143.58 40.73 9.0 2.0 2.0 -60.0 100.0 156.0 20.0 2.3E+25 3.0 0.17 0.0
1 1 1
(第 1 行)左から順にρ(g/cm3),Vs(km/s),Q 値(振動数依存,この例では Q=114×f0.92)
(第 2 行)~(第 4 行)アスペリティ 1 のパラメタ
(第 2 行)左から順に破壊フロント中心の東経(°),北緯(°),深さ(km),アスペリティの長さ(km),幅(km),XS(km),YS
(km),走向(°),傾斜(°)
(第 3 行)左から順にアスペリティの地震モーメント(dyne-cm),破壊フロントの拡大速度(km/s),アスペリティのライズタイム
(s),破壊遅れ時間(s)
(第 4 行)アスペリティの小断層への分割数(長さ方向,幅方向,時間軸方向)
(第 5 行)~(第 7 行)アスペリティ 2 のパラメタ
(第 8 行)~(第 10 行)アスペリティ 3 のパラメタ
(注)XS,YS については,以下の「XS と YS の定義.ppt」参照
◆XS と YS の定義「XS と YS の定義.ppt」(野津・菅野(2006)の添付ファイルに一部加筆修正)
◆出力結果(ファイル名:t1968.out)
50332416 0 32768 0 0.010 ?,?,データ個数,?,時間刻み AOMORI-G(EW) サイト名
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0.00000000 0.00000000 0.00000000 0.00000000 0.00000000 0.00000000 0.00000000 0.00000000 0.00000000 0.00000000 0.00000000 0.00000000 0.00000000 0.00000000 0.00000000 0.00000000 0.00000000 0.00000000 0.00000000 0.00000000 -1.86682884 -1.58995383 -1.32578088 -1.13144666 -1.04035013 -1.05257638 -1.13639066 -1.24010211 -1.30979161 -1.30633324 -1.21567315 -1.04924387 -0.83545274 -0.60666764 -0.38756508 1.01859048 1.16519394 1.22901631 1.22064462 1.17628648
・
・
・
演習1
t1968 のアスペリティ1のときだけ,2のときだけ,3のときだけの3ケースで計算し,それぞ れの加速度波形をグラフに描け.また,これらを重ね合わせた波形を描け.
地図
旗 :震源 ピン:観測点