Nonorientable genus of a knot in punctured CP 2
佐藤 光樹 (東京学芸大学)
∗1丹下 基生 ( 筑波大学 )
∗2概 要
本稿では,
S
3内の結び目K
を境界にもつnCP
2− B ˚
4内の向き付け不可能曲 面F
について考察し、F
がnull-homologous
な場合に得られた不等式β
1(F ) ≥ − σ(K)
2 + d(S
−31(K)) − n
およびその応用よって得られた結果ついて紹介する。1. 結び目の向き付け不可能 4 次元種数とその拡張
本稿を通して, category は smooth category を仮定する.また 4 次元多様体は全て単 連結で向き付け可能,かつ向き付けられているもののみを考え,曲面はコンパクトな もののみを考える.さらに, M を 4 次元閉多様体とするとき, M から 4 次元開球体を 取り除いた空間を puncM と表し, M を n 個連結和した多様体を nM と表す.
結び目 K の向き付け不可能 4 次元種数 γ
4(K) とは、 K を境界にもつ B
4内の向け付 け不可能曲面の 1 次ベッチ数の最小値のことをいう. γ
4(K) については, [2] , [3] , [5] , [12] ,および [13] において研究が行われてきた.本節では, γ
4(K) の定義を次のように 拡張する.
定義
M を 4 次元閉多様体, K を ∂(puncM ) 内の結び目とする.このとき, γ
M(K) お よび γ
M0(K) を以下のように定義する.
γ
M(K) = min
{
β
1(F )
F : puncM 内の向き付け不可能曲面
∂F = K
}
γ
M0(K) = min
β
1(F )
F : puncM 内の向き付け不可能曲面
∂F = K
[F, ∂F ] = 0 ∈ H
2(puncM, ∂(puncM ); Z
2)
定義から,任意の K と M に対して以下の 4 つの関係式がなりたつことは容易に確かめ られる.ただし, O は自明な結び目を, K は K の鏡像を表す.
1. γ
4(K) = γ
S4(K) = γ
S04(K) 2. γ
M(O) = γ
M0(O) = 1
3. γ
M(K) ≤ γ
M0(K) ≤ γ
S4(K ) 4. γ
M(K) = γ
−M(K)
∗1〒
184-8501
東京都小金井市貫井北町4-1-1 東京学芸大学 大学院教育学研究科e-mail: [email protected]
∗2
e-mail: [email protected]
+1
{
2k{
2k-1 full-twist handle
slide
+1
図 1: ( − 2k, 2k − 1)- トーラス結び目 T
−2k,2k−1については, γ
S4(T
−2k,2k−1) = k − 1 , γ
CP0 2(T
−2k,2k−1) = 1 となることが知られている.
2. 問題の提示と主結果
本節以降では,次の問題について考察する.
問題
1 γ
Mおよび γ
M0は任意に大きい値をとり得るか?
この問題の解答は M の選び方に依存する.例えば,鈴木氏は [11] において,任意の結 び目 K が puncS
2× S
2および puncCP
2#CP
2内の円板の境界になることを示している.
このことから, γ
S2×S2(K) = γ
CP2#CP2(K) = 1 が任意の K について成り立つことがわ かる.
一方で,2012 年に Batson 氏は [2] の中で次の定理を用いて γ
S4におけるこの問題を 肯定的に解決した.
定理
1 (Batson,[2]) K ⊂ S
3を結び目とする.このとき,次の不等式が成り立つ.
γ
S4(K) ≥ − σ(K)
2 + d(S
13(K ))
ここで, σ(K ) は K の符号数, d(S
13(K)) は K に沿った 1-surgery により得られる 3 次元 多様体の d 不変量を表す.
d 不変量は Heegaard Floer homology から得られる有理係数ホモロジー球面の不変量
であり, Ozsv´ ath 氏と Szab´ o 氏 [6] によって定義されている. Batson 氏の結果より以前 は 3 より大きい γ
S4を持つ結び目が発見されていなかったことを考えると,この定理は 向き付け不可能種数の研究に飛躍的な進歩をもたらしている.
本研究では,定理1を次のように γ
nCP0 2に拡張した.
定理
2 K ⊂ ∂(punc(nCP
2)) を結び目とする.このとき,次の不等式が成り立つ.
γ
nCP0 2(K ) ≥ − σ(K )
2 + d(S
13(K)) − n
定理 2 を用いることで, γ
nCP0 2の場合において問題1の肯定的解決が得られた.
定理
3 任意の自然数 k について,γ
nCP0 2(K) = k をみたすような結び目 K が存在する.
実際, k に対して Rolfsen table[9] の 9
42という結び目を (n + k) 個だけ連結和した結
び目を K とすれば定理 3 は示されることがわかる.このとき,σ(K ) は容易に計算でき
るが, d(S
13(K )) の計算のためには工夫を要している.
図 2: 9
42は B
4内で M¨ obius band を張る
1
1
handle slide
図 3: 9
42は puncCP
2内で円板を張る
3. 証明の概要
本節では,定理 2 の証明の概要を紹介する。まず,定理 2 の証明のために次の補題を 証明した.
補題
4 K ⊂ ∂(punc(nCP
2)) を結び目, F ⊂ punc(nCP
2) を K を境界にもつ向き付け 不可能曲面とする.このとき,次の不等式が成り立つ.
β
1(F ) ≥ e(F )
2 − 2d(S
−31(K)) ここで,e(F ) は F の法オイラー数を表す.
この不等式は Batson が [2] で γ
S4の場合において示した不等式とまったく同じもので ある.また,この不等式自体は γ
nCP2の lower bound にもなっている.しかし, e(F ) が F の選び方に依存するためこのままでは種数を評価することができない.そこで我々 は次の定理を用いた.
定理