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日本のエネルギー将来像にバイオマスを

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Academic year: 2021

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巻 頭 言

新 名 惇 彦

Atsuhiko SHINMYO

− 34 − 1942年生

大阪大学大学院工学研究科発酵工学専攻  博士課程修了(1970年)

現在、奈良先端科学技術大学院大学  理事・副学長 工学博士 生物工学、植 物代謝工学

TEL:0743-72-5187 FAX:0743-72-5409

E-mail:[email protected]

Add biomass energy to Japanese energy strategy in the future Key Words:Biomass energy, Energy strategy, Future

生産と技術 別冊 震災特集(2011・7)

 3 月 11 日の東日本大震災は福島原発の壊滅的な 事故を伴った。この事故はわが国のみならず世界に 大きな衝撃を与えた。さらに 5 月 9 日、中部電力は 菅直人首相による浜岡原発(静岡県御前崎市)の全 面停止要請の受け入れを決定した。これだけでもわ が国の電力エネルギー供給に多大な不足が生じるが、

わが国の電力供給の 30%を占めている原発は、今 回の大地震、津波を経験した地震国日本では大きく 後退せざるを得ない。

 今、再生可能エネルギーの議論が沸いている。

CO 2 削減も考慮し、太陽光、風力、地熱、水力、そ してバイオマスが話題になっている。地球全体の潜 在的エネルギー量は太陽光が圧倒的に豊富で、年間 10 万テラワット(TW、1 テラ= 1 兆)と現在の世 界の消費エネルギー量、12 T W の約 1 万倍ある。

次いで多いのが植物バイオマスの 100 T W、地熱の 10 T W であり、風力、水力は 4 および 0. 5 T W と案 外少ない。これはあくまで潜在的にあるということ で、電力に利用するにはそれぞれの変換効率と経済 性は異なるし、各国・地域での局在性もある。

 太陽光発電の魅力は大きいが、弱点は昼間の晴天 の時しか利用できないことと発電コストが火力発電 より一桁高いことであり、技術革新が急がれる。地

熱は火山、温泉の多いわが国には豊富であるが、多 くの地域が国立公園内にあることから電力開発が難 しい。観光資源をとるか電力をとるかの選択である。

降水量が多く、急傾斜の日本の河川では水力発電は 有利で、かつては電力供給源の主流であった。一方、

降水量も多く温暖な気候のわが国ではバイオマスの 生産性は高い。わが国は営々と植林事業を行ってき たし、最近では市民運動的な緑化事業も各地で盛ん である。バイオマスエネルギーは増量が可能なので ある。しかも遺伝子組換え技術を使えば生産性は数 倍に増やせる。エネルギー量を人為的に増やせる再 生可能エネルギーはこれしかない。

 動物の生命は光合成を行う植物なくしては存在し 得ない。そして 19 世紀までは植物バイオマスが衣 食住すべてを賄ってきた。燃料もまたしかりである。

20 世紀に入り、これまで自然の物質・エネルギー 循環系の外にあった化石資源、原子力がエネルギー 源の主役になった。人類は大量のエネルギーを手に 入れた結果、食糧生産が大幅に増え、人口が爆発的 に増え、快適な生活が可能になったが、それと裏腹 に深刻な環境問題、安全・安心をどう確保するかと いう大きな悩みを背負い込んだ。

 改めて自然の循環系の中にある植物バイオマスを 現在の科学技術を駆使して液体燃料、化成品、電力 に変換することが世界各国で活発になってきた。エ タノール、バイオディーゼル、ポリ乳酸などは既に 市民に馴染んできた。バイオマス発電はわが国でも 活発になってきた。建築廃材、間伐材、街路樹剪定 枝などを直接燃焼し、蒸気で発電するものである。

原料を長距離輸送するにはコスト面で不利なので、

規模は小さく、10 万トンのバイオマスから最大出 力 1 万 kW 程度の発電力である。しかし、これで

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生産と技術 別冊 震災特集(2011・7)

4,600 人の消費電力を賄える。ただ、エネルギー利 用効率が低く、25%位しか利用できていないという。

無駄に放出される熱を回収利用する技術はそれほど 難しくないのでは。

 再生可能エネルギーは全て地産地消が原則である。

石油に比べ重量当たりのエネルギー量が小さいバイ オマスを長距離輸送するのは無意味である。効率の 悪い太陽光・風力で作った電力を高圧線で遠距離運 ぶことはできない。50 万トン級タンカーで原油を 中東から輸送したり、パイプラインで石油を数千 km 先まで送る時代は終わった。

 これまでバイオといえば医薬品、食品、酒、醤油 というイメージが強く、一部の専門領域の研究者・

技術者の世界であった。今や、バイオがプラスチッ

クなどの化成品、電力供給のエネルギー源にもなっ

た。利用技術の開発には工学全般の皆様の参加が必

須であり、ご理解とご協力をお願いしたい。ここに

掲載する<バイオマス特集>記事は昨年 11 月に開

催されたセミナーの抄録である。ここでは、いろん

な角度からバイオマスの活用について討論されてい

る。日本のエネルギー将来像を考えるときの参考に

して頂きたい。

参照

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