神 奈 川 大 学 横浜市立大学
′′
′′
′′
子 有 造 憲 和
昭 清 周 義 仲
下 佐 尾 崎 木
山 遊 片 宮 玉
Ⅰ
は じめ に循環機 能を評 価す る指標 と して, 一般には一定 の運 動 負荷 に対 す る心 拍 数 ,あ るい は脈 拍の変 動が用い られ てい る。 わが国では, 一般 に文部省 スポー ツテス トの踏み台昇降 テス トが,全 国的に 使用 されてお り, すで に循 環 橡 能 テ ス トと して の 妥 当性 ・信 頼 性 が検 討 されてい るが,踏み台 昇 降運動の得点 と, 安静時 の心拍数 に高 い相関が 見 られ る こ と も報 告 されてお り, これ は安静心 拍数 から も循環機能を評 価できることを示唆する ものであ る。 しか し,個人の心拍 数応答 は,運動 強度あるいは,運動の種類 によって異な ることが 考え られ る。本研 究は,同一個人 に対 し,種類の 異な る幾つかの負荷 テス トを実施 し,その際の心 拍応答か ら循環株能 テス トとしての負荷強 度につ いて検討 した ものであ る。
Ⅱ 方 法
表1は,被験者の身体的特徴を示 した ものであ る。被験 者は,26歳〜47歳 までの成人男子9名, およ び32歳 の成人女子1名 の計10名 である. ロー レル指数で,被験者H.H.が158と他 の被験 者よ り 表1 PhysicalCharacteristicsofSubjects
美 樹 紀 晃 広
益 直 雄
川 藤 属 島 口
柳 斉 日 木 春
学 学 学
立 ..i=I?i,... 日 神 関
や ゝ高い値を示 しているoなお,被験者S.Y.香 除 く, 他の被験者はすべて大学時 代に運動部 の経 験 のあ るもので あ る。
今 回用いた循環機能 テス トの名称 と,その測定 方法 は, 図1に示 す。
フラック ・テス ト
フ ラック ・テス トは,血圧測定 に用いる水銀マ ノメー タを改良 した ものを使用 し,被験者は,20 m水銀 中を,20秒間加圧止息 させ, その際の心拍 変動を心電図 に記録 した。横軸 の太い実線は心 拍 数の測定時 間を示 した ものであ る。
シュナ イダー ・テス ト
まず被験者に 5分間の臥位安静状態を保 たせ, 最後の15秒 間の脈拍を測定 し,続 いて3分間の立 位 状態を維持 させ,その最後の15秒間で再 び脈拍 を測定 し, 更に被験者 には台高40cmの踏み台を15 秒間で5回,すなわ ち3秒 に1回 のペースで昇 降
させ,運動終 了直後か ら運動後3分15秒まで,15 秒 間隔 で脈拍を測定 した。
縄 とびテス ト
これは, 1分 間に120回 のペースで1分間, 1 回旋, 1跳躍 の両 足 とびにより行なわせ運動 中,
Subject Sex Age(yrs) Height(cm) Weight(kg) Rohrer'Slndex N.T Male 26
H.H. Male 27 M.Y. Male 29 A,K. Male 30 T.K. Male 30 Y.M. Male 30 N.S. Male 31 S.K̲ Male 39 S.Y. Male 47 A.Y. Female 32
176 63.7 156 60.0 165 59.0 167 64.5 179 74.0 161 ‑59.0 171 71.0 170 61.0 171 73.0 154 51.5
および運動終 了後3分 までの心拍数 を テ レメータ よ り心電図 に記録 した。
自転車 エル ゴメータ ・テス ト
最大下負荷 のテス トで あり,男子 は2kp, 女 子 は 1kpの強度 で1分間50回転を6分間行なわ せ,運動 中, および運動後3分 まで の心拍数 を心 電図に記録 した。
オール アウ ト・テス ト
自転車エル ゴメータによる最 大負荷 テス トで, 図1に示 したよ うな負荷漸増 法を用い, オ‑ルア
<図1>
F.。。k ,esI l躍 aLheごrot":a:!20nmHg̲I̲̲20sec'
S。h。e.de, Tes. 』軒 声 司什‑S:‑e‑I:‑up (5Esx:ercptss;.5SeC,
Rope Skipplng Test
BicycleEr90m eterTest
A H10 ut Test
雁 ご skl叫 lm l'meS'm'n'
L
≠ 羊
Ele'CIS十0 5 10 15
M lnUteS
ウ トに至るまでの心拍数を記録 した。
Ⅱ 結 果 と考察
図2の フラック ・テス トの結果 でわか るよ うに,
<図
2 >
Flack Test
80604020恥.,0餌4
LJ!∈ヽS一eaqate∝てtZaH
Breath Ho一ding
20秒 間の加圧止息 中 における心拍数 は全体的に上 昇 の傾向を示 している。太い実線 は各被験者の心 拍数変動の平均値を示 した、も、のである。被験者N.
T.の よ うに著 しい変動を示 さない者 もいた。 ま た,負荷後20秒 (止息開始 後40秒) では, ほぼ全 員が 自己の直前値 よ りも低 い心拍数 になりいわ ゆ る陰性相 が見 られ, その後 は一定の値 とな ってい る。な お, この10名 にお ける心拍応答の個人差 は, 被験者H.H.が負荷 直前 で54柏 と低 く,負荷後20
秒で も48柏 と最 も低か ったの に対 し,被験 者T.
K.は負荷直前が96柏 と高 く,負荷後20秒では90 拍 まで低下 したが全般 的 に高い値 を示 し,両者 の 心拍数の差は約40柏で あった。
図3の シュナイダー ・テス トの結 果では,臥位 か ら立位‑ と体位が変化す る ことによ り,眼拍数 はや ゝ上昇 している。 また,15秒 間で5回の踏み 台昇 降 による脈拍数変動 は,全員上昇 を示 してい るが,昇 降運動後 の1分後 には立位 の値 まで低下
<図
3 >
S chneider Test
>.
こjEJ<JM∴SHtsSAYzzH
ReCJine Stand O 1 2 3
MlnUteS
し, それ以後 ではほとんど一定の値 を示 している。
踏み 台昇 降運動直 後の脈拍 数において最高 を示 し たのは,被験者T.K.で100 拍,最低 はfiH.の 60泊 でその差 は40柏であった。なお, 図3では運 動 終了直後 を 0としての暗闇 経過 を横軸 に示 した。
図4は,縄 とび テス トにお ける心拍数 の経過で, 運動中の心拍数 は全員著 しい上昇を示 し,最 高値
は160柏,最低値が112柏で平均値が141柏であ く図
4 >
340200080的4
UILLJ/S一eaqa一e∝tJeaH
Rope‑Skipplng 丁est Rope‑SklPPlng
BO 1 2 3 4
MlnUteS
った。平均値 では運動後約2分 で運動 直前値 に回 復 し, それ以後 は一定である。被験者N.S.お よ び,H.H.は運動前の心拍数が低 く,運 動後でも 他の被験者 と比較 し著 しく低 いとい う傾 向を示 し
てい る。な お,縄 とびの 回数は被験 者N.S.と, S.Y.が90回 と規 定 され た120回のペ ー スを追 う ことができずに少なか ったが, 他の被験者 は117
‑122回 の範 囲で あった。被験 者のN.S.とS.
Y.の心拍 数 が低 いのは, N.S.は縄 とび に不慣 れの為, また, S.Y.は不慣れ とともに年令差な どが影響 した と考え られ る。
図5は,一定 の最 大下負荷 によ る 自転 車エルゴメ ータ .テス トの結 果で,運動 中の心拍数変動 は,
<図
5 >
BICyCle Er90m eler Test
180r
(U!∈\Steaq)ate∝二E!a工 4。2。0。8。約4
80 1 2 3 4 5 6 7 8 9 州lnUteS
運動開始後1分, あ るいは2分 までは上昇 す るが, 運動終 了までほぼ一定 の値 を示 している。また, 運動後 の心拍数回復 も早 く,約 1分 後には被験者 T.K.を除き, 全体 的 にはば運動前 の値 まで低 下 して いる。 また被験者 による心拍数の差 は他の テ ス トよ り小 さい傾向 が示 されて い る。
図6は,負荷 漸増法によるオIJL,アウ ト・..・テス トの 結果 で, 自転 車エル ゴメ ータの負荷の増 加 と比 例 して心 拍数 も上昇 を示 し,12分 以後で は直線的 に
< 図
6 >
A lトO ut Test 200r
00000
0
06420q)6
4人uLuJ/Steaq)aletIこea
H
MlnUteS
上昇 して いる。オ ール アウ ト時の最高心拍数 は, 被験者N.T.が194泊 と最 も高 く,最低 はS.Y.
の168柏であ った。なお, オ ールア ウ トの タイム は被験 者N.T.が最 も長 く,16分1秒, S,K.が
最 も短 く12分4秒 である。 ま た, 被験 者全休 の心 拍 数の幅 は運 動直前 が約20拍 と個人差が 小 さいの に対 し, オ ールア ウ ト時 で は約40拍 と徐 々に幅が 増大 してい る。
表2は:各 テス トにおけ る負荷終 了直後の15秒間 と, オ ールア ウ ト・テス トの終 了直 前15秒間の心 拍数 の相 互相 関を示 した もので あ る。 シ ュナイダ ー ・テス トとフラック・テス トの項 目間 に,r‑.863 蓑2
CorrelationMatrixofSomeCardiovascularTests Flack Rope‑ Bicycle All‑Out
Test Skipping Exercise Test
★★
Schneid erTe st .863 ̲389 .204 FlackTest .041 .232 Rope‑Skipping ・249 BicycleExercise
All‑OutTest
271912443233
H significantatthe.01level
で危険率1%水準の有 意な相 関が見 られ たが,他 の項 目間では有意 な相 関は認 め られ なか った。 し か し,フラック ・テ ス トと縄 とび テス トの項 目間を
除 く他 の項 目間では,すべてr‑.204‑.389程度の 正 の相 関を 示 して お り,これ は各テ ス トの測 定 に1 週 間の間隔 をおい たため の影響, または被験 者の 数が少 ない ため に有意性 が認 め られな か ったため と考え られ る。 しか し,この裏 の相関係数算出に 用いた心拍数 は, 負荷終 了の直前 , あ るい昼直 後 の値で あ り, この時 期は個 人間の心拍数 の変動が 大 きいため, テス ト相 互に有 意 な 相関が認 め られ なか った と も考え られ る。
図7は,オールアウ ト・テス トの最 高心拍数 に対 す る各 テス トの負荷終 了時の心 拍数の比率を示 し
<図 7 >
0005
求、‑冨t‑⊃〇二一くLoo6DJU¢U,ad
霊 ut f,csh.ne'der 慧 k …kOiP,e;.n, eBl…Ycci',ee
た もので あ る。すなわ ち,オールアウト・テス トの 最 高心拍数 を100 と した場合,最 も高 い比率を示 した の は 縄 と び テ ス トで78%,続 い て 自転 車 エ/レゴメ ータの61%, シュナ イダ ー ・テス トおよ び フラック・テス トの約45%程度 であ った。この こ とか ら1分間の縄 とび運動の運動強度は,心拍数 か ら見 た場合 にか な り高 い ことが明 らかである。
ま た 日馬ら(2)の 「最大酸素摂取量の間接 測定の 検討」 の結果 によ ると,最大酸素摂取量 に対 す る 割合 でみ た縄 とびテス トの運動 強度 は約70%で, 心 拍数 による運動 強度 とはば一致 してい る。
負荷前 の心拍 数 に対す る負荷終 了時 の心拍 数の 増加率 を示 した ものが 図8であ り,負荷前 を 0と して負荷 後の値 が%で示 されてい る。オ ール ア ウ ト・テス トの心拍数 増加 率が 高いのは当然の結 果
<図
8 >
0005ri
%'aSeaJUul
‑0
3)e∝Before Afte√
で あるが , その 値 は約130%であ った。次 に縄 と び テス トの84%, 自転車 エル ゴメータ ・テ ス トの 48%, シュナイダー ・テス トの18%, フ ラック ・ テ ス トの4.3%であ った。なお,フラック ・テス ト では負荷終 了後,約20秒で はば全員 に陰 性相が認 め られたが, これ は20m水 銀柱20秒 とい う加圧止 息が迷走神経 緊張状態を生 じさせ,心拍 数を低 下 させ た もの と考え る。 この ことか らフラック ・テ ス トのよ うな努 責テ ス トは,個人 の安静心拍数を を探 るテス トと して有効 な ものであ ると考 え られ
る。また, 6分間の 自転車 エル ゴメ ータ ・テス ト において負荷終 了後1分 で陰性相が認め られ た被 験者 もあ り,西郊(5)(6)・酒井(10)らは,膝屈伸 運動 のよ うな軽 い負荷 では負荷終 了後に陰性相 が 示 され,特 に運 動選手で は著 明であるとの報告 か ら考 えて,本研究の 1kp,あ るいは2kpによる 自転車 エル ゴメ ータの負 荷強度 は,かな り低い も のであ った と考 え られ る。
Ⅳ ま と め
本研究 で は,種類 の異 な るい くつかの循環機能 テス トを同 一被験者 に 日を変 えて実施 させ, その 心拍応答 か ら各 テス トの運 動強度 を検討 したが, オ ール アウ ト・テ ス トによ る各 個人 の最高心 拍数 を1恥 と した場合,毎分120回の ペ ースで とんだ 1分間の縄 とび運動 は,約80%程 度の強度 であ り, イ ンターバ ルをおいて実施すれ ば,全 身持久性の
トレーニ ングを兼 ねたテス トと して用い る こと も 可能 とい え る。 また, 1kp,あ るい は2kp毎分
50回転の負荷 強度 に よる自転 車エル ゴメ ータ ・テ ス トは,6分間の 持続時 間 に もか ゝわ らず心拍数 の増 加は僅 か であ り, この ことか ら比 較 的軽い運 動 強度のテ ス トと思われ る。また, シュナイダー
・テス ト, あ るいは フラ ック ・テス トでの心拍数 増加 は きわめ て低 い もので あ るが,特 に フラ ック
・テス トの よ うな加圧 とい う静的な負荷 テス トは 個人 の安 静心 拍数 を探 るための テ ス トと して用 い ることも可能 と考え られ る。
参 考 文 献
(1)石河利寛 (1974):持 久性 の評 価と しての ステ ップテス ト, 休育科学 2, 8‑16.
(2) 日馬雄紀 ほか (1977):最大 酸素摂 取量の間接 測定 の検討 。 日本体育学会 神奈川支 部研究 発表 会 での報告 。
(3) Larson,A.L,&Yocom,良.D.(1951)二 MeasurementandEvaluationinPhysical, Health.andRecreation.TheC.V.Mosdy.
(4) 名 取礼二 ,横堀 栄, 小川義雄 ,木村邦 彦, (1970):最新 休力測定法 同文書 院.
(5)酉郊 文夫 (1957):深屈膝運動 負荷 試験 に依 る 循環機能検査Ⅰ,検査方 法 に就ての検討 。体 力 科学7, 3, 107‑ 117.
(6)西郊文夫(1958):深屈膝運動 負荷試験 に依 る 循環機能検査 Ⅱ,検査成績 に裁 ての検討 。 体 力科学 9,6,477‑493
(7)小川義雄 ,遊佐清有 ,高橋政子 (1962):
簡易循環榛能検査 と しての40nm水銀加圧試験 (Flackの トス ト)についての検討 (第1報 ) 横浜市立 大学紀要seriesC‑41 恥 1421‑6. (81小川 義雄,遊 佐 清有 ,高橋政子 ,鈴木辰雄,
片尾周 造 (1962):簡易循 環機 能検査 と して の40 Enn水銀加 圧 試験 (Flackのテス ト) に つ い て の 検討 (第2報) 横 浜市立 大学紀要 sevies C‑41,.Nu142 7‑16.
(9) Ogawa,Y.,S.Yusa,F.Nishi
d(
a,and M.Satoyoshi (1965):A.Cardiovascular TestVsingKnee‑BendExercise,J.YokohamaCitySeviesC‑45,Jh152
1‑12.
(10酒井敏 夫,高橋 清 ,井 田拝 礼 山本善三 , 椎原秀 一 (1951):負荷 試験 と しての膝屈 伸運動 について 。体 力科学 Ⅰ,92‑97.
(川 遊 佐清有,里吉 政子, 片尾周 造,宮 崎義憲 (1974):中学生 を対象 と した踏 み 台昇 降 テス ト の検 討 (異 な る時点 での テス ト成績 の検討 およ び深屈膝運 動 負荷 テス ト 加圧止 息テ ス トの成 績 との比較 に ついて )体 育科学2,22‑・32. ua Yusa.S.,(1974):Breath・HoldingTest
益 aMeasuveofCardiovascularFitness, ResearchJournalofPhysicalEducation
18, 6,323‑329.(1974)
u3 遊 佐清有 (1973):中学 校生徒 を対 象 と した踏 み 台昇 降テス トについての検討 ,休育科 学1
182‑192.