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ハイリスク者選定を目的とする健診項目の検討

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厚生労働科学研究補助金(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業)

分担研究報告書

「ハイリスク者選定を目的とする健診項目の検討

〜地域住民における慢性腎臓病に関する検証  吹田研究〜」

      研究分担者  国立循環器病研究センター部長  宮本恵宏       研究協力者  国立循環器病研究センター室長  東山  綾

研究要旨 

  メタボリック症候群(MetS)のスクリーニングにより、循環器疾患ハイリスク者を選定する健康診 査において、慢性腎臓病(CKD)をスクリーニングする意義を検証するために、吹田市一般住民 集団の循環器疾患発症を追跡している吹田研究のデータベースを用い、MetSやその構成因 子とCKDとの関連、またCKDや古典的な循環器疾患危険因子の合併と循環器疾患発症との 関連などを検討した。

2010/11年度データでの横断解析では、CKDはMetS日本基準よりも、ウエスト周囲長を除い たMetS構成因子の重積とより強い関連があることが示唆された。しかし19997/98年をベースラ インとし2009/10年まで追跡した縦断解析結果では、MetS日本基準は、糖尿病やCKDの発 症と有意な関連があった。従って、CKDの発症に関連するのは血圧、血糖、脂質など古典的循 環器疾患危険因子の集積であるが、MetS日本基準で糖尿病やCKDのハイリスク者をスクリー ニングすることは可能だと考えられた。また2007年までの追跡データで、循環器疾患ハイリスク 者の選定のために、循環器疾患循環器疾患危険因子の重積に加え、CKDをスクリーニングす る意義があるかを検討した。脳卒中、冠動脈疾患、循環器疾患ともに、CKDがあり危険因子数 が最も多い群でハザード比が最も高くなる傾向は認められたが、CKDの有無によるリスクの違い は明確ではなかった。

  以上より、1)CKDはMetS日本基準よりも血圧高値、血糖高値、低HDL血症、高中性脂肪 血症、高LDL血症の重積との関連が強いが、MetS日本基準による発症予測は可能であるこ と、しかし2)循環器疾患予防をターゲットとした健診で、古典的循環器疾患危険因子に加えて、

蛋白尿やクレアチニン値によりCKDをスクリーニングする意義は明らかでないことが示された。

上記の結果を他の日本人コホート研究の結果と比較検討する必要はあるが、1)よりCKD自体 も血圧、血糖、脂質等の管理にゆだねられる症例が多いと考えられるため、健診でMetSに加 えCKDをスクリーニングする意義につき再考する必要性が示唆された。

A.研究目的

本研究班の目的に従い検証する上で、①ス クリーニングする意味があるか(ハイリスク 者を同定できるか)、②効果的な介入手法があ るか(保健指導の意味があるか、受診勧奨し

て治療手段があるか)、③検査を導入した場合 の有所見率はどうかという視点が必要である。

昨年度はハイリスク者選定を目的とする健診 項目のコアとして設定し「確定項目」とされ た①高血圧、②糖尿病、③脂質異常症、④喫

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78 煙や、他の研究班で検討中の腹囲・メタボリ ック症候群(以下、MetS)の基準を除いて、

引き続き健診項目見直しのためのエビデンス を検証した。今年度は、将来のハイリスク者 をスクリーニングできるかという観点で特に 重要と考えられる古典的危険因子との重複に 着目し、慢性腎臓病(以下、CKD)を検討対 象と、CKDとMetSとの関連や、CKDが古 典的危険因子と重複した場合の循環器疾患発 症リスク等について検討した。

B.研究方法

(1)MetSやその構成因子と、蛋白尿・CKD との関連(横断研究)

本横断研究は、昨年度の解析と同様に、

2010/11年度に吹田研究の追跡調査健診を、8 時間以上の空腹後に受診した40-74歳の男女 1,469人から、健診時の尿がないかつ/または 中性脂肪が400mg/dL以上の者を除外した 1,424人(男性548人、女性876人)を対象 とした。MetSの日本基準により、ウエスト周 囲長が男性85cm以上、女性90cm以上を必 須条件とし、次の①から③のうち2項目以上 に該当する場合を「MetSあり」とした;①中 性脂肪150mg/dL以上かつ/またはHDLコレ ステロール40mg/dL未満、②収縮期血圧 130mmHg以上かつ/または拡張期血圧 85mmHg以上かつ/または高血圧治療中、③空 腹時血糖100mg/dL以上または糖尿病治療中。

「蛋白尿あり」は、午前健診の随時尿で蛋白

(1+)以上とし、「CKDあり」は蛋白尿あり かつ/または推定腎糸球体濾過量(eGFR <60 mL/分/1.73m2(以下、「CKD60あり」)と、蛋 白尿ありかつ/またはeGFR <45 mL/分

/1.73m2(以下、「CKD45あり」)の2通りで 定義した。eGFRの推定式は、eGFR= 194×(血清クレアチニン1.094)×(年齢

-0.287)(女性:×0.739)とした。

解析は以下1)〜6)の項目につき実施し、MetS やその構成因子と、蛋白尿やCKDの有無と の関連を検討した。

1)MetSの有無による蛋白尿有所見率 2)蛋白尿の有無によるMetS有病率 3)CKDの有無によるMetSありかつ/または 高コレステロール血症の有病率

(高コレステロール血症の定義;高コレステ ロール血症治療中かつ/またはLDL コレステ ロール(LDL-C)160mg/dL以上。高コレス テロール血症治療中かつ/または総コレステロ ール(TC)240 mg/dL以上)。本研究では、

LDL-C、TCの各々を用いて解析した。

4)CKDの有無によるウエスト周囲長を除く MetSの構成因子重複の有病率。本解析での MetSの構成因子重複は、血圧高値、脂質異常

(低HDL・高TG)、高血糖のうち2つ以上あ る場合と定義した。

5)CKDの有無による4)の定義でのウエスト 周囲長を除くMetSの構成因子重複かつ/また は高コレステロール血症の有病率。高コレス テロール血症の定義は3)と同様。

6)血圧高値、高血糖、高TG、低HDL、肥 満(ウエスト周囲長はMetS日本基準)の MetS構成因子合併個数(0個、1個、2個、3 個以上)別のCKD有病率。

(2)MetSと糖尿病・CKD発症率との関連、

およびCKDMetS構成因子の合併と循環 器疾患発症リスクとの関連(縦断解析)

  本縦断研究は、いずれも吹田研究のベース ライン調査と追跡調査のデータセットを使用 した。次の1)〜5)の個々の解析目的に応じて データセットを作成した(詳細は後述)。先に 述べたMetS日本基準に加え、MetS国際基準 も検討した。MetS国際基準は、以下の①から

③のうち3項目以上に該当する場合とした

1);①ウエスト周囲長が男性90cm以上、女性

(3)

79 80cm以上、②収縮期血圧130mmHg以上か つ/または拡張期血圧85mmHg以上かつ/また は高血圧治療中、③中性脂肪150 mg /dL以上 かつ/またはHDLコレステロール男性

40mg/dL未満、女性50mg/dL未満、④空腹 時血糖100mg/dL以上かつ/または糖尿病治療 中。

1)性別のMetS有無による糖尿病年齢調整 発症率(/1000人年)と多変量調整ハザード 比(年齢、喫煙、飲酒を調整)。MetSは日本 基準と国際基準。糖尿病発症ありには、糖尿 病治療開始を含む。年齢調整は、1997年人口 を用いて直接法で行った。

2)性別のウエスト周囲長4分位別糖尿病年 齢調整発症率(/1000人年)と多変量調整ハ ザード比(年齢、喫煙、飲酒を調整)。糖尿病 発症ありには、糖尿病治療開始を含む。年齢 調整は、1997年人口を用いて直接法で行った。

3)性別のCKD年齢調整発症率(/1000人年)

と2、4、6、8、10、12年後の年齢調整累積 発症率。吹田研究は2年に1回、追跡調査を 行っているため、2年毎の累積発症率を算出 した。年齢調整は、1997年人口を用いて直接 法で行った。

4)性別のMetS有無によるCKD年齢調整発 症率(/1000人年)と多変量調整ハザード比

(年齢、喫煙、飲酒を調整)。MetSは日本基 準と国際基準。年齢調整は、1997年人口を用 いて直接法で行った。

5)CKDなし危険因子0個群に対する、CKD 無し危険因子1個、CKD無し危険因子2個、

CKD無し危険因子3個以上、CKD有り危険 因子0個、CKD有り危険因子1個、 CKD有 り危険因子2個、CKD有り危険因子3個以上 の群の、性別年齢階層別の多変量調整循環器 疾患(CVD)発症ハザード比。危険因子は、

血圧高値、高血糖、高TG、低HDL、肥満(ウ

エスト日本基準以上)、高コレステロール血症 の6個とし、年齢階層は65歳以上・65歳未 満・全年齢とした。CVDの内訳は、全CVD、

全脳卒中、脳梗塞、冠動脈疾患とし、ハザー ド比は年齢、喫煙、飲酒で調整して算出した。

高コレステロール血症は、LDL コレステロー ル(LDL-C)160 mg/dL以上とした。

<各縦断解析の対象者と追跡期間>

1)2):1997/98年の吹田研究ベースライン 調査を受診した男女5,176名のうち、ベース ライン調査で空腹時間が8時間未満の者、糖 尿病があった者、40歳未満75歳以上の者、

2009/10年の追跡調査を受診しなかった者、

欠損値のある者を除外した、男性1,021人、

女性1,283人を対象とした。吹田研究のベー スライン調査は、吹田市住民基本台帳から無 作為抽出された市民を対象に実施されている。

追跡は2009/10年までとした。

3)1997/98年の吹田研究ベースライン調査 を受診した男女5,176名のうち、ベースライ ン調査で空腹時間が8時間未満の者、CKD45 に該当する者、40歳未満75歳以上の者、欠 損値のある者、2009/10年の追跡調査を受診 しなかった者を除外した、男性1,535人、女 性1,995人を対象とした。CKD60についての 解析は、男性1,406人、女性1,903人を対象 とした。追跡は2009/10年までとした。

4)1997/98年の吹田研究ベースライン調査 で空腹時間が8時間未満の者、CKD45に該当 する者、40歳未満75歳以上の者、欠損値の ある者を除外した男性1,077人、女性1,287 人を対象とした。CKD60についての解析は、

男性982人、女性1,227人を対象とした。追 跡は2009/10年までとした。

5)吹田研究の1997/98年のベースライン調 査を8時間以上の空腹後に受け、中性脂肪 400mg/dL未満で、データに欠損値がない

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80 40-74歳の男性1,832人、女性2,100人を対 象に、CVDの発症について2007年12月31 日まで追跡したデータセットで解析した。

C.研究結果

(1)MetSやその構成因子と蛋白尿・CKD との関連(横断解析)

対象者の特性を表1に示す。平均年齢は男性 64.9歳、女性64.2歳、MetS該当者は男性 26.6%、女性4.8%、平均eGFRは男性73.1 mL/

分/1.73m2、女性75.4 mL/分/1.73m2、高血圧 治療中は35.4%、女性21.9%、糖尿病治療中 は男性9.9%、女性4.7%であった。

1)MetSの有無による蛋白尿有所見率 結果を表2に示す。40-74歳男女での蛋白尿 有所見率は、MetSなし群で3.5%、あり群で 12.2%であった。いずれの性・年齢階層でも MetSあり群がなし群に比べ、蛋白尿有所見率 は高かった。

2)蛋白尿の有無によるMetS有病率 結果を表3に示す。40-74歳男女でのMetS 有病率は、蛋白尿なし群で12.2%、あり群で 34.8%であった。いずれの性・年齢階層でも 蛋白尿あり群がなし群に比べ、MetS有病率は 高かった。

3)CKD有無別のMetSありかつ/または高コ レステロール血症の有病率

TCを用いた結果を表4-1に、LDL-Cを用い た結果を表4-2に示す。

40-74歳でのMetSありかつ/または高TC血症 の有病率は、男性のCKD60なし群で40.4%、

あり群で49.1%、女性のCKD60なし群で 43.8%、あり群で57.4%、男女のCKD60なし 群で42.5%、あり群で53.4%であった。性別 や年齢によらず、CKD60でもCKD45でも、

CKDあり群はなし群に比べ有病率は高かっ た。

40-74歳でのMetSありかつ/または高LDL-C 血症の有病率は、男性のCKD60なし群で 39.4%、あり群で52.7%、女性のCKD60なし 群で37.8%、あり群で55.7%、男女のCKD60 なし群で38.4%、あり群で54.3%であった。

性別や年齢によらず、CKD60でもCKD45で も、CKDあり群はなし群に比べ有病率が高か った。

4)CKDの有無によるウエスト周囲長を除く MetSの構成因子重複の有病率(構成因子重複 は、血圧高値、脂質異常(低HDL・高TG)、

高血糖のうち2つ以上。以下、MetS構成因 子2個以上)

結果を表5に示す。40-74歳男女でのMetS 構成因子2個以上の有病率は、男性のCKD60 なし群で31.0%、あり群で43.8%、女性の CKD60なし群で11.8%、あり群で21.3%、男 女のCKD60なし群で18.8%、あり群で32.1%

だった。性別や年齢によらず、CKD60でも CKD45でも、CKDあり群はなし群に比べ有 病率は高かった。

5)CKDの有無によるウエスト周囲長を除く MetSの構成因子重複かつ/または高コレステ ロール血症の有病率

TC を用いた結果を表6-1に、LDL-Cを用い た結果を表6-2に示す。

40-74歳でのMetS構成因子2個以上ありか つ/または高TC血症の有病率は、男性の CKD60なし群で46.1%、あり群で55.4%、女 性のCKD60なし群で46.9%、あり群で63.1%、

男女のCKD60なし群で46.6%、あり群で 59.4%であった。性別や年齢によらず、CKD60 でもCKD45でも、CKDあり群で有病率が高 かった。

40-74歳でのMetS構成因子2個以上ありか つ/または高LDL-C血症の有病率は、男性の CKD60なし群で45.2%、あり群で58.9%、女 性のCKD60なし群で41.8%、あり群で62.3%、

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81 男女のCKD60なし群で43.0%、あり群で 60.7%であった。CKD60でもCKD45でも、

性別や年齢階層によらず、CKDあり群はなし 群より、CKDあり群で有病率は高かった。

6)血圧高値、高血糖、高TG、低HDL、肥 満(ウエスト周囲長は、MetS日本基準)の MetS構成因子合併個数別のCKD有病率 結果を表7に示す。40-74歳男女でのMetS 構成因子が0、1、2、3個以上の時のCKD 60 の有病率は、8.6%、16.4%、24.5%、26.9%、

CKD45の有病率は、1.7%、3.6%、10.1%、

13.5%であった。CKD60の女性を除き、合併 個数が多いほどCKD有病率は高く、性別・

年齢階層別の解析でも傾向はほぼ同様であっ た。

(2)MetSと糖尿病・慢性腎臓病の発症率、

慢性腎臓病とMetS構成因子の合併と循環器 疾患発症リスクの関連(縦断解析)

1)性別のMetS有無による糖尿病年齢調整 発症率(/1000人年)と多変量調整ハザード 比

結果を表8に示す。いずれの性・MetS基準 においても、MetSあり群はなし群に比べ、年 齢調整糖尿病発症率は高く、ハザード比は有 意に高かった。日本基準と国際基準の比較で は、ハザード比はほぼ同等であった。

2)性別のウエスト周囲長4分位別の糖尿病 年齢調整発症率(/1000人年)と多変量調整 ハザード比

結果を表9に示す。男女とも、年齢調整糖尿 病発症率は腹囲の第2、第3分位で低下する ものの、第4分位で最も高かった。第1分位 に対する糖尿病発症のハザード比は、男女と も第4分位で有意に高く、男性では1.92、女 性では3.33であった。

3)性別のCKD年齢調整発症率(/1000人年)、 および2、4、6、8、10、12年後の年齢調整 累積発症率

結果を表10に示す。12年間の追跡で、男性 のCKD60では累積発症率は24.3%、年齢調 整発症率は22.5、CKD45では累積発症率は 12.4%、年齢調整発症率は11.2であった。同 様に女性で、CKD60の累積発症率は17.9%、

年齢調整発症率は16.0、CKD45の累積発症 率は6.2%、年齢調整発症率は5.5であった。

いずれも男性が女性より高かった。

4)性別のMetS有無によるCKD年齢調整発 症率(/1000人年)と多変量調整ハザード比

(MetSは日本基準と国際基準)

結果を表11に示す。男女とも日本基準でも国 際基準でも、MetSあり群がなし群より発症率 は高かった。CKD60発症のハザード比は、男 性のMetS日本基準あり群で、女性ではMetS 国際基準あり群で、それぞれMetSなし群に 比べ有意に高かった。CKD45発症のハザード 比は、いずれの基準でもMetSあり群がなし 群に比べて有意に高かった。

5)CKDとMetS構成因子数の組み合わせと 循環器疾患発症リスク

結果を表12(40-74歳)、表13(40-64歳)、

表14(65-74歳)に示す。表15には本解析 対象者のベースライン調査における特性を示 す。表8以降の解析対象者は、表15の対象者 に含まれており、各解析条件に従い

必要に応じて除外されている。

40-74歳の循環器疾患リスクは、CKDがあり 危険因子数が最も多い群で最も高く、脳卒中 や冠動脈疾患の発症リスクも同様の傾向だっ た。しかし脳卒中、冠動脈疾患、循環器疾患 ともに、有意な発症リスクの上昇はCKDの 有無にかかわらず認められ、古典的CVD危険 因子の集積数が増えるほどリスクが上昇する 傾向がみられた。以上の傾向は、CKD 60で

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82 もCKD45でも同様であった。女性では発症 数が男性に比べて少なく、結果の解釈は困難 であるが、性・年齢階層に関わらず、結果は 40-74歳男女とほぼ同様の傾向だった。

D.考察

  本検証の横断解析における対象者は、平均 年齢約65歳の吹田市一般住民男女で、吹田研 究の2010/11年度追跡調査を受診した集団で ある。 

  MetS日本基準と蛋白尿との関連では、男性 で蛋白尿陽性者の約40%が、女性では約20%

がMetSに該当していた。また男女ともMetS

あり群の12%程度しか蛋白尿は陽性ではなか

った。以上より健診で測定する(1+)以上の蛋 白尿に、MetSが関与している割合は多くはな いこと、蛋白尿陽性者をスクリーニングする ためには、MetSの有無ではなく尿蛋白検査が 必要であることが示唆された。

  CKDとMetSありかつ/または高コレステロ ール血症の有病率との関連(表4)では、40

〜74歳男性のCKD60やCKD45の該当者の うち、半数弱がMetS+高TCやMetS+高LDL に該当し、女性では約60%前後が該当してい た。特に40~64歳の女性では、CKD60該当 者の60%がMetS+高TC、MetS+高LDLに 該当し、CKD45該当者の70%以上がMetS+

高TC、MetS+高LDLに該当していた。しか し、男性、女性ともにCKDなし群の有病率

も40%前後あった。次に、ウエスト周囲長を

除くMetSの構成因子2個以上の有病率の解 析では、CKDなし群でのMetSの構成因子2 個以上の有病率が表4より低下し、CKDあり 群でのMetSの構成因子2個以上の有病率が 女性ではコレステロールの影響が除かれるた め有病率は低下したが、CKD45を中心に CKDなし群とあり群の有病率の差が表4より 大きくなる傾向がみられた。さらに、ウエス

ト周囲長を除くMetSの構成因子2個以上に 高コレステロール血症を追加した結果では、

表4の結果に比べ高齢者女性のCKD45を中 心に、CKDなし群とあり群の有病率の差が大 きくなった。従って、表4〜6の結果をまと めると、CKDには内臓脂肪肥満よりも循環器 疾患危険因子の集積がより強く関連している 可能性が示唆された。

  血圧高値、高血糖、高TG、低HDL、肥満

(ウエスト周囲長は、MetS日本基準)のMetS 構成因子合併個数別のCKD有病率との関連 では、年齢にかかわらずCKD有病率は構成 因子の個数が多いほど高く、特にCKD45で はその傾向が明らかであった。

  縦断解析は、住民基本台帳から無作為抽出 された平均年齢57歳の吹田市一般住民集団 でのコホート研究(吹田研究)で解析を実施 した。

  MetSと糖尿病発症の関連では、男性で、国 際基準のハザード比が日本基準よりやや高く、

女性では日本、国際基準でほぼ同等であった。

日本・国際基準によらず、MetSはDM発症 リスクを予測できると考えられた。

  ウエスト周囲径と糖尿病発症の関連では、

ウエスト周囲径が大きいほど糖尿病発症リス クが高く、糖尿病対策としてウエスト周囲長 を測定する意義があると考えられた。

  CKD発症率では、吹田研究ベースライン調 査での年齢が男性55歳、女性52歳であり、

表10の結果からCKD60の累積発症率が10%

を超えるのは男女とも58~59歳で、男性は65

歳から20%を超えると考えられる。従って

CKD予防対策では、60歳前後が一つの節目 である可能性が示唆された。

  MetSの日本基準、国際基準のCKD発症予 測能に関する比較では、CKD45はどちらの MetS基準でもCKD発症リスクを予測できる が、男性のハザード比は日本基準が高かった。

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CKD60では、男性は日本基準、女性は国際基

準が優れていると考えられた。以上より、

CKDの発症予測には、男性はMetS日本基準 が、女性は国際基準がよいと考えられるが、

女性では予測したいCKDの重症度により、

日本基準、国際基準のどちらが優れているか は異なる可能性がある。

  CKDとMetS構成因子数の組み合わせと循 環器疾患発症の関連については、CKDありか つ危険因子の個数が多い群で、該当者や発症 数が少ないため、解釈が困難であるが、脳卒 中、冠動脈疾患、循環器疾患ともに、CKDが あり、古典的CVD危険因子の数が多い群で最 も発症リスクが高かったが、有意なリスクの 上昇は、CKDの有無に関わらず古典的CVD 危険因子の重積個数が多い群で認められた。

従ってCVD予防対策を考える上では、CKD の有無によらずCVD危険因子の管理が重要 であり、CKDにもCVD危険因子のリスク重 積が関与していることから、CVD危険因子を 管理することでCKDの発症リスクも減少し、

集団全体の循環器疾患発症リスク減少につな がることが期待できる。

E.結論

吹田研究での検討では、CKDに対する内臓 脂肪肥満の影響は大きくなく、血圧高値、血糖 高値、高中性脂肪、低HDLコレステロール血 症、高LDL血症などの古典的CVD危険因子 の重積が、CKDと関連していることが横断解 析により示された。また縦断解析の結果から CKD発症リスクはMetSにより予測可能であり、

循環器疾患の発症リスクはCKDがあり、かつ

CVD危険因子の集積数が多い群で最も高か ったが、循環器疾患の発症リスクは、CKDの 有無にかかわらずCVD危険因子の重積があ れば上昇することも示された。

  従って、CVD予防に重要なのは古典的危険 因子やその集積の管理であり、これらが同時 にCKDの予防にも有用であって、集団全体の 循環器疾患発症リスク減少が期待できること、

また循環器疾患予防を目的とした健診におい ては、CKDがあるかないかのスクリーニングよ りも、CVDとCKDの共通リスク因子として CVD危険因子によるスクリーニングと管理が 重要であることが示唆された。

以上より、循環器疾患予防のためにMetSを 根幹に据えた健診を行う際には、他のコホート 研究の結果もあわせ、CKDをスクリーニングす ることの意義について再考する必要がある。

参考文献

1) Okamura T, Kokubo Y, Watanabe M, et al. A revised definition of the metabolic syndrome predicts coronary artery disease and ischemic stroke after adjusting for low density lipoprotein cholesterol in a 13-year cohort study of Japanese: the Suita study.

Atherosclerosis. 2011; 217: 201-6.

G.研究発表 該当なし

H.知的所有権の取得状況 該当なし

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