固武 慶, 鈴木 英之 †
福岡大学大学院理学部応用物理学専攻
† 東京理科大学理工学部物理学科
Abstract. はじめに
重力崩壊型超新星爆発(以下単に超新星と呼ぶ)とは、太陽のおよそ8倍以上の質量 を持つ重い恒星が 、その進化の最終段階に最も一般的に迎えると考えられている大爆発 現象である。超新星は一天体現象でありながら、様々な天体現象の謎を解き明かす鍵を 握っている。例えば超新星は爆発後に残される中性子星・ブラックホールといった高密 度天体の形成過程そのものであり、また爆発時に合成される元素組成は銀河の化学進化 を決め、さらには膨張する超新星の衝撃波は宇宙線加速の現場にもなっている。また最 近ではガンマ線バーストと呼ばれる、宇宙における最大級の爆発天体現象の駆動源とし てもその有力候補の一つとなっている。このような多面性から、超新星は宇宙・天文分 野において最も注目される天体現象の一つである。
上述のような天文学的な重要性にも関わらず、その根本となる爆発の物理的な機構 は、40年以上にわたる研究の歴史を持ちつつも、未だ完全には理解されていない。爆 発メカニズムの解明には、超新星の中心部で起こっている微視的な物理素過程を理解す ることが第一に重要である。さらにその上で、星が爆発していく巨視的なな流体現象と しての振舞いも同時に明らかにする必要がある。このようにマルチフィジックス・マルチ スケールの現象が非線形に進化していくその時間発展を追うためには、数値シミュレー ションの実行が欠かせない。そのためには、いわゆる自然界の4つの力‡を全て取り込ん だ数値スキームの開発が不可欠である。この難しさから超新星シミュレーションは数値 天文学の中でも最も挑戦的な課題の一つとされている。弱い相互作用を中心としたマイ クロ物理の精緻化に伴い数値コード も複雑になり、同時に数値計算もより大規模なもの になっていく。現在、我が国は京をはじめとする世界有数のスーパーコンピューターを 有している。飛躍的に性能が向上しつつある計算機の演算能力と足並みをそろえて、超 新星研究にも今後更なる弾みがつくことが期待されている。
理論研究の急速な進展に足並みを揃えるかのように 、観測面でも新たな展開が起き ている。従来の電磁波による観測に加え、宇宙を見る新しい「 目」として注目される、
ニュートリノや重力波による宇宙観測が今や花咲こうとしている。事実、小柴先生率い る東大宇宙線研グループの超新星 1987A からのニュートリノ検出は、宇宙をニュートリ ノで探る「ニュートリノ天文学」の幕開けとなったものであった。一方でアインシュタ インの一般相対性理論が予言する重力波は、時空の さざ 波 に例えられるほどシグナ ルが小さいことから、その直接検出には未だ誰も成功していない。日本をはじめ、世界 中の重力波検出器が重力波の到来とその検出を虎視眈々と狙っている§。巨大な質量が非 常に大きな加速度をもって爆発する超新星は重力波の放出源としても最有力候補の一つ であり、 「重力波天文学」の第一例となる可能性も秘めている。
爆発の際に星の中心部(コア)は超高温・高密度状態になるため、多量のニュートリ ノ、重力波が生成される。ニュートリノ、重力波ともに物質に対する透過力が極めて高 い k ため、星のコアで生成されるとその情報を保ったまま星の外に出る。したがってその 観測的シグナルは、超新星の中心エンジンで起こっている爆発ダ イナミクスの情報を直 接的に私たちに伝えてくれる「ライブ・メッセンジャー」であるといえる。天文学は古 来より「天から届く文( ふみ)を読み解く」学問として発展してきた。従来の電磁波天 文学に天からの新しいメッセンジャー(ニュートリノ・重力波)を加えた「マルチメッ センジャー天文学」のターゲットとして、超新星は恰好の研究対象である。新天文学の 誕生、さらには上述した理論の望遠鏡である計算機の発展に後押しされた急速な理論の 新展開、この二つのライトに照らされて、長い間ベールに包まれていた壮絶なる星の最 期の真の姿が 、いよいよ我々の前に現れようとしている。私たち 21 世紀に生きる人間 は、幸運にもこのエキサイティングな事件の生き証人になろうとしている。
本書は、本シリーズの第三回目として 2011 年 6 月 8,9 日に著者の一人 (固武)が本 シリーズのレクチャーの講義ノートに基づいて編まれている。第 1 章は読者の道しるべ のために、本書の内容の概要とした。第 2 章では、超新星爆発に至るまでの大質量星の
‡ 強い力、弱い力、電磁気力、重力
§ 検出に成功すれば 、間違いなくノーベル賞クラスの業績であると考えられている。
k 逆に言えば 、だから観測が難しい。
進化に関する物理過程について概説した後、大質量星の重力崩壊から爆発に至るまで 、 現在考えられている標準シナリオについて詳述する。第 3 章では、超新星爆発の数値シ ミュレーションの技法についてまとめる. 第 4 章では, 現在行われている研究の最前線に 触れながら, 超新星からの重力波、特にその放射機構にフォーカスを当てて話を進めて いく。第 5 章ではニュートリノの物理的性質を述べた上で、超新星ニュートリノについ てまとめてある。それぞれの章で、研究の潮流の変化・躍動感などを感じとっていただ けるように工夫した。
尚、それぞれの章は独立に読めるように配慮したので 、興味のある順に読んでいた だければと思う。力学・量子力学・統計力学などの基礎知識を習得していれば本書は難 なく読み進められる。始めに述べたように、超新星を始めとする大質量星の重力崩壊に 関連するトピックは実に広範に及ぶため主要なもののみ選ばざ るを得なかった。これら の部分を補うために、主に日本語で書かれた参考文献を巻末にあげておく。周辺知識を 広げたい読者にも役に立つものと期待している。
執筆者の一人の固武が超新星研究の世界に足を踏み入れたのは 、大学院に入学した 2000 年で、今振り返ってみると研究の潮流が従来の球対称モデルから多次元モデルへと 大きく変わりつつある頃であった。さらに遡ること 10 余年、鈴木が東京大学の博士課程 在学中に、超新星 1987A からニュートリノが観測され、超新星におけるニュートリノの 役割の重要性が確認され 、一大ブームを呼び起こした。超新星のいわば( 新旧)二大研 究ブームの( 多数の)火付け役的な研究者の中から、今回声を掛けていただいた責任感 をひしひしと感じながら、襟を正して本書を執筆した。折角の機会なので、これまでの この分野の研究の道標、先人がどのように着想を得て新しいアイデアに繋げていったの かなど 、 「研究の香り」もお伝えできるように工夫したつもりである。この本を手に取っ て頂いた若い読者の中から、一人でも多くの方が将来研究者として、この分野に加わっ ていただけたらこれに勝る幸せは無いと考えている。
最後に 、二人の執筆者の大学院時代の指導教員で 、これまで折に触れ励まして頂い た恩師の佐藤勝彦先生、共同研究者である山田章一氏、住吉光介氏、滝脇知也氏、諏訪 雄大氏、岩上 (中野) わかな氏、大西直文氏、中村航氏、黒田仰生氏、政田洋平氏、端山 和大氏、川越至桜氏、安武伸俊氏、澤井秀朋氏、小野勝臣氏、木内建太氏、本書を編む にあたりご支援頂いた柴田大氏、富阪幸治氏、牧野淳一郎氏、また議論に付き合ってく ださった国内外の共同研究者の方々、国立天文台理論研究部・早稲田大学宇宙物理学研 究室・福岡大学理学部物理科学教室・東京理科大学物理学教室・東京大学宇宙理論研究 室の方々、そして編者の青木慎也氏にここに謝意を表したい。
2014 年 3 月吉日
固武 慶
鈴木 英之
1 恒星の進化 6
1.1 静水圧平衡の自己重力系 . . . . 6
1.2 主系列星 . . . . 9
1.3 主系列後 . . . . 12
1.4 超新星 supernova/supernovae . . . . 19
1.4.1 分類 . . . . 19
2 重力崩壊型超新星爆発のシナリオとニュート リノ 22 2.1 重力崩壊の開始 . . . . 22
2.2 核統計平衡 Nuclear Statistical Equilibrium . . . . 23
2.3 ニュートリノの閉じ込め (ρ > 10 10 − 10 12 g/cm 3 ) . . . . 24
2.4 Homologous collapse . . . . 27
2.5 バウンス、衝撃波の生成 . . . . 27
2.6 衝撃波が neutrinosphere を通過 . . . . 28
2.7 外部コア内の衝撃波の伝播 . . . . 29
2.8 停滞した衝撃波の復活 . . . . 30
3 ニュート リノ輻射流体シミュレーションの手法 34 3.1 流体力学シミュレーション . . . . 34
3.1.1 流体とは?: . . . . 34
3.1.2 一般相対論的流体力学基礎方程式: . . . . 34
3.1.3 流体方程式の数値解法: . . . . 37
3.1.4 ニュートン極限: . . . . 40
3.1.5 エネルギー保存: . . . . 41
3.1.6 近似的一般相対論的効果の取扱い: . . . . 43
3.1.7 共形平坦性を課した時空の決め方: . . . . 44
3.2 ニュートリノ輻射輸送法 . . . . 47
3.2.1 概論: . . . . 47
3.2.2 近似的ニュートリノ輻射輸送法 . . . . 49
3.2.3 Y e 処方: . . . . 50
3.2.4 ニュートリノ滲み出し法: . . . . 51
3.2.5 ライトバルブ法: . . . . 59
3.2.6 ニュートリノ・ボルツマン方程式: . . . . 61
3.2.7 ボルツマン方程式とその階層性: . . . . 63
3.2.8 モーメント法 . . . . 65
3.2.9 ボルツマン方程式の左辺 . . . . 75
3.2.10 流体と輻射のカップ リング: . . . . 80
3.2.11 ボルツマン方程式の左辺 『一般相対論的な場合』 . . . . 82
3.2.12 ボルツマン方程式の右辺( 準備編) . . . . 89
3.2.13 ボルツマン方程式の右辺 . . . . 93
4 超新星からの重力波 98
4.1 準備 . . . . 98
4.1.1 アインシュタイン方程式の線形化 . . . 100
4.1.2 真空中における重力波の伝搬・偏極: . . . 102
4.1.3 重力波の四重極公式 . . . 104
4.1.4 重力波の角度依存性 . . . 107
4.1.5 超新星シミュレーションで使われる重力波公式 . . . 108
4.1.6 非対称なニュートリノ放射起源の重力波 . . . 111
4.1.7 重力波の検出 . . . 114
4.2 超新星における重力波の放射過程 . . . 121
4.2.1 ニュートリノ駆動爆発からの重力波 : 定性的特徴 . . . 122
4.2.2 ニュートリノ駆動爆発からの重力波 :2D シミュレーションの予測 125 4.2.3 ニュートリノ駆動爆発からの重力波 :3D シミュレーションによる 定性的特徴 . . . 128
4.3 MHD メカニズムによる重力波 . . . 130
4.3.1 自転重力崩壊に伴うバウンス重力波 . . . 131
4.3.2 MHD 爆発に伴う重力波の特徴 . . . 136
5 超新星からのニュート リノ 141 5.1 SN1987A . . . 141
5.2 超新星背景ニュートリノ Supernova Relic Neutrino . . . 144
5.3 ニュートリノ振動 . . . 145
5.3.1 二世代ニュートリノ振動 . . . 145
5.3.2 真空中のニュートリノ振動 (V N C = V CC = 0) . . . 147
5.3.3 物質中でのニュートリノ振動 (MSW 効果) (V CC 6 = 0) . . . 148
5.3.4 3 世代のニュートリノ振動 . . . 150
5.3.5 超新星ニュートリノとニュートリノ振動 . . . 150
5.4 一次元数値シミュレーションによる超新星ニュートリノデータベース . . 153
1. 恒星の進化
太陽のような恒星は、その内部で水素の核融合によってエネルギーを生成し輝いている が、それらの一生は,質量によって大きく異なる。ここでは、星の構造と進化について,
概略を説明する。
そもそも星は,ビッグバン初期に形成された水素とヘリウムを主成分とする星間ガ ス雲の中でも、密度が高く (n ∼ O(10 5 )cm − 3 ) 温度が低い (T ∼ O(10)K) 分子雲コアと呼 ばれる領域で形成される。温度が低いほど 重力収縮を妨げる圧力が小さいからである。
誕生する星の質量 (M ) 分布は 、初期質量関数 (IMF: Initial Mass Function) と呼ばれ 、 観測から,Salpeter 型
ψ Salpeter (m)dm ∼ 2 · 10 −12 m −2.35 dm pc −3 yr −1 , m ≡ M
M (1)
が典型的であるとされていて、重い星ほど 数が少ない。 ¶
1.1. 静水圧平衡の自己重力系
具体的な恒星の進化を考える前に,球対称の定常な自己重力系について基本的なことを まとめておく。 Figure 1 は、球対称の星の半径 r ∼ r + dr、質量座標 M r ∼ M r + dM r の 球殻に着目したものである。
dr r
Mr P
P+dP
dMr ρ
Figure 1. 静水圧平衡な星
星は一般に自己重力と圧力勾配が釣り合った静水圧平衡の状態にある。このとき、
半径 r、厚み dr の球殻の質量が dM r = 4πr 2 ρdr なので、
dM r
dr = 4πr 2 ρ (2)
が成立する。同じ球殻に働く外向きの圧力、内向きの圧力、重力のつりあいは { P (r) − P (r + dr)) } 4πr 2 = GM r dM r
r 2 なので、
1 ρ
dP
dr = − GM r
r 2 (3)
¶ 1pc = 3.09 · 10
18cm, 1M
= 1.99 · 10
33g
が成り立つ。中心部で水素の核融合反応が始まっていない原始星は、このような静水圧 平衡の状態ではあるが 、表面から熱輻射としてエネルギーが失われるため,ゆっくりと 重力収縮し密度と温度が上昇していく。このような星の収縮をケルビン・ヘルムホルツ収 縮と呼び 、以下のような自己重力系独特のおもしろい性質を持っている。静水圧平衡の 式 (3) の両辺に 4πr 3 をかけて星の中心から表面まで積分し 、簡単のためガスは断熱指数 γ の理想気体として圧力 (P ) と内部エネルギー密度 (u) の関係 P = (γ − 1)u を使うと、ビ リアル定理 3(γ − 1)U (内部エネルギー) + Ω(自己重力エネルギー) = 0 が得られる。系の 全エネルギーは E = U + Ω = 3γ − 4
3(γ − 1) Ω = − (3γ − 4)U となるので、星が安定な結合系 である条件 E < 0 は γ > 4 3 に対応することがわかる。さらにこのとき、星から放出され るエネルギーは表面の光度 L に対応し 、 L = − dE
dt = − 3γ − 4 3(γ − 1)
dΩ
dt = (3γ − 4) dU dt とな る。この式は、星が Ldt のエネルギーを放出 (Ldt > 0) すると E, Ω は減少 (dE, dΩ < 0) する一方、 U は増加 (dU > 0) し内部温度が上昇することを示している。すなわち、表面 からエネルギーを放出する (負の熱を加える) と内部温度が上昇するという「負の比熱」
を持った系なのである。収縮に伴って解放された重力エネルギーの一部が 、内部エネル ギーに変化し 、残りが表面から放出されるのである。
一方、密度に対して温度が低く電子が縮退しているような自己重力系は、表面から の熱放射によってさらに温度が冷えたとしても縮退圧はほとんど 減少することなく重力 との釣り合いを保つことができるので、収縮もせず比熱は正となる。恒星進化の後期に は、星の中心にこのような縮退コアが形成されることが多いので、電子の縮退圧で支え
られた星 (白色矮星) についてもここでまとめておく。
θ ∆S
v ∆t n
p
Figure 2. 時間 ∆t に単位ベクトル ~ n に垂直な面積 ∆S を通過する速度 ~ v を持った粒子 の総数は、体積 ~ n · ~ v∆t∆S の斜円柱の中の総数である。
化学ポテンシャル µ を持つフェルミオンの分布関数 f (E) = 1 exp ( E − µ
kT
) + 1 は、温 度が十分低い (kT µ) とき
f(E) ∼ {
1 E < µ = E F
0 E > µ (4)
となるので、温度 T = 0 の近似では、電子数密度 n e 、電子の縮退圧 P e 、電子のエネル
ギー密度 u e と、フェルミエネルギー E F 、フェルミ運動量 p F 、電子静止質量 m e の関係は n e = g e
h 3
∫
f d 3 p = p 3 F
3π 2 ~ 3 , p F = (3π 2 )
13~ n
1
e
3, g e = 2 (5)
E F =
√
p 2 F c 2 + m 2 e c 4 , x F ≡ p F
m e c (6)
P e = 1
∆S
∫
∆S
へ向かう粒子∆p
∆t ∆S~ n · ~ v ∆tdn e (跳ね返った場合の力積 ∆p = 2~ p · ~ n)
= g e h 3
∫
pvf 4π 3 p 2 dp
= m e c 2 8π 2
( m e c 2
~ c ) 3 {
x F
( 2
3 x 2 F − 1 )√
x 2 F + 1 + log x F +
√
x 2 F + 1 }
(7) u e = g e
h 3
∫
Ef4πp 2 dp
= m e c 2 8π 2
( m e c 2
~ c ) 3 {
x F (2x 2 F + 1)
√
x 2 F + 1 − log x F +
√
x 2 F + 1 }
(8) となる。ここで、電子が相対論的な状況 (E F > m e c 2 ) もあり得るので、エネルギーには
静止質量エネルギーも含め、相対論的な E F , p F , m e の関係を用いている。また、荷電中 性の状況では電子数密度 n e と陽子数密度 n p は等しく、核子数密度 n b ≡ n p + n n ∼ m ρ
uとの比を電子フラクション Y e または陽子混在度 Y p と呼ぶ (Y e = Y p ≡ n n
eb)。
密度が低く (E F が小さく) 電子が非相対論的 (p F m e c, E ∼ m e c 2 + 2m p
2e
, v ∼
p
m c, Y e ρ 10 6 g/cm 3 ) な場合の近似式は P e = 1
5 (3π 2 )
23~ 2 m e n
5
e
3= 2
3 u 0 e , u 0 e = u e − m e c 2 n e = 3
10 (3π 2 )
23~ 2 m e n
5
e
3E F = m e c 2 + p 2 F
2m e = m e c 2 + (3π 2 )
23~ 2 2m e n
2
e
3となる。
P = Kρ 1+
N1の関係をみたすモデルをポリトロピック指数 N のポリトロープとよぶ が 、この場合、P ∝ ρ
53の関係を満たすので、 N = 3 2 のポリトロープであると言える。
一方、密度が高く (E F が大きく) 電子が相対論的 (p F m e c, E ∼ pc, v ∼ c, Y e ρ 10 6 g/cm 3 ) な場合の近似式は
P e = 1
4 (3π 2 )
13~ cn
4
e
3= 1
3 u e , u e = 3
4 (3π 2 )
13~ cn
4
e
3E F = (3π 2 )
13~ cn
1
e
3, P ∝ ρ
43(N = 3 の polytrope)
となる。これら二つの極限をつないで現実の縮退コアや白色矮星に適用すると,低質量で 中心密度が小さい場合,ポリトロピック指数 N = 3 2 のモデルに近く、中心密度の関数とし て質量は M ∝ ρ
1
c
2、半径は R ∝ ρ −
1
c
6となり、重い星ほど小さくなる (M ∝ R −3 )。一方,大 質量で中心密度が高くなってくると、 N = 3 のポリトロープモデル (M = M ch , R ∝ ρ −
1
c
3) に近づく。ここで、M ch ≡ 1.457M ( Y
e
0.5
) 2
は Chandrasekhar 質量と呼ばれ,電子の縮退 圧で支えられる白色矮星の質量の上限値を与える。
またここで 、静水圧平衡にある自己重力系の安定性についても見ておこう。断熱
指数 γ ≡ ∂ ∂ ln ln P ρ の大きさが重要となる。P ∝ ρ γ として、ある球殻を収縮させる摂動
ρ → ρ(1+)を考える。このとき圧力は P → P (1+γ)と変化するが,質量 dM r = 4πr 2 drρ は不変であるため、半径は r → r (
1 − 1 3 )
と変化する。圧力勾配による力が dP
dr → dP dr
(
1 + γ + 1 3
)
= dP dr
( 1 +
( γ + 1
3 )
)
と増加するのに対して,重力は
− GM r ρ
r 2 → − GM r ρ r 2
(
1 + + 2 3
)
= − GM r ρ r 2
( 1 + 5
3 )
のように増加する。これは、γ < 4 3 の時、圧力勾配の増加が重力の増加より小さく、ま すます収縮してしまうことを示していて,星が動径方向の摂動に対して安定である条件 は γ > 4 3 であることがわかる。
1.2. 主系列星
原始星はケルビン・ヘルムホルツ収縮によって中心密度と中心温度が高くなっていくが、
温度が 10 7 K を越えると中心で水素の核融合反応がおこるようになる。中心で水素の核 融合が起こり、圧力勾配と重力がつりあった静水圧平衡状態の星を主系列星とよぶ。水 素の核融合によりヘリウムが合成される過程には、どの星でも起こる pp チェーンと、第 二世代以降の星で起こる CNO サイクルがある。pp チェーンは、水素とヘリウムのみが 存在するような星でも可能な以下のような反応系列である。
ν e 2 H e +
p + p + + p + e − + p 2 H + ν e
γ
3 He
p +
H +
2 4 He + p + He 3 + p
3 He 3 He + 4 He 7 Be + γ 3 He + p 4 He + e + + ν e
7 Li
e − ν e
7 Be + +
p 4 He +
7 Li + 4 He
8 B
p γ
7 Be + +
+
4 He 4 He
8 Be *
e + + ν e
B +
8 8 Be * B
8 ν Be
7 ν
hep ν pep ν
pp ν
99.6% 0.4%
85% 15% 0.00003%
(< 0.423MeV) (1.445MeV)
(0.863MeV 90%
0.385MeV 10%)
(< 18.8MeV)
(< 15MeV) pp I
pp II
pp III pp chains
99.9% 0.1%
Figure 3. 太陽内部の pp チェーンと、放出されるニュートリノ
一方,CNO サイクルは、他の星で合成された炭素 (C)・窒素 (N) ・酸素 (O) を含む 第二世代以降の星で起こる以下のような反応系列である。
14 N (p,γ) 15 O (,e + ν e ) 15 N (p, 4 He) 12 C (p,γ) 13 N (,e + ν e ) 13 C (p,γ) 14 N
14 N (p,γ) 15 O (,e + ν e ) 15 N (p,γ) 16 O (p,γ) 17 F (,e + ν e ) 17 O (p, 4 He) 14 N
水素やヘリウムに比べて電荷の大きい原子核が絡む CNO サイクルは、高いクーロ
ン障壁に打ち勝つ高い温度が必要となり、中心温度の高い重い星で重要となる。軽い星
1e-04 1e-02 1e+00 1e+02 1e+04
1e-03 1e-02 1e-01
ε [erg/g/sec]
T/10 9 K ρ=1g/cm 3 , X=0.7, Z=0.02 pp
CNO
Figure 4. pp チェーンと CNO サイクルによるエネルギー生成率の温度依存性 [1]
に分類される太陽では pp チェーンが主で,CNO サイクルに伴うエネルギー生成率は全
体の 1.5%でしかない。
図 4 は、pp チェーンと CNO サイクルによるエネルギー生成率 ε N の温度依存性で ある。両反応系列も、温度に敏感で,高温になると急激に反応率やエネルギー生成率が 高くなる。とくに CNO サイクルは温度依存性が非常に高いため,高温の星で支配的な 役割を果たす。
一方,中心領域の核融合反応で生じた熱は外層に伝わり,ほぼ黒体輻射として星の 表面から放出される。この熱輸送に関しては、物質と熱平衡にある光子の拡散による熱
伝導 (輻射輸送) と対流による熱輸送がある。星の内部における輻射輸送は、固体中の電
子による熱伝導と同じく温度勾配に比例する熱流によるものであり、赤外線ストーブな どからの直進する赤外線による熱輸送とは異なる概念である。熱輸送の効率を表す拡散 係数は、光子の平均自由行程 (λ) に比例し不透明度 (Opacity)κ ≡ λρ 1 を介して求めるこ とができる。温度勾配に比例し不透明度に反比例する輻射輸送だけで内部で発生した熱 を運びきれない領域では,対流が発生し物質混合を伴いながら熱を効率的に輸送する。
ここでは詳しく述べないが 、最終的に星内部のエネルギー輸送と温度勾配を記述する式 は以下のようになる。
dL r
dM r = ε N (ρ, T, Y i ) − ε ν (ρ, T, Y i ) − T ∂s
∂t (9)
dT
dM r = − GM r T
4πr 4 P ∇ , ∇ ≡ ∂ ln T
∂ ln P (10)
対流のない領域では ∇ = ∇ rad ≡ 3κL r P
16πacGM r T 4 (11)
対流が主たる領域では ∇ = ∇ ad ≡ ∂ ln T
∂ ln P
s
(12)
ここで、 L r は半径 r の球面を単位時間に通過するエネルギー、 ε ν はニュートリノによるエ
ネルギー損失率、 s は単位質量あたりのエントロピー、 a ≡ 8π 15
5h k
34c
3= 7.56 · 10 − 15 erg/cm 3 · K 4 である。輻射輸送と対流が共存するような領域では混合長モデルなど の現象論を用 いて ∇ を計算するが 、詳細は割愛する。
星の進化を考えるとき、表面温度 (有効温度 T eff ) と明るさ (ルミノシティL ) の関 係を図にした HR 図 (Hertzsprung Russell diagram) がよく使われる。歴史的には色指数 (B-V) と絶対等級 M bol の図であったが,ここでは − log T eff -log L の図を載せる。歴史的 経緯により、横軸は右側が低温側になっている。ステファン・ボルツマンの法則に表面 積をかけて得られる関係式 L = 4πR 2 σT eff 4 (Stefan-Boltzmann 定数σ = ac 4 ) から、半径 R が一定のラインは 、直線 log L = 4 log T eff + 定数 になることがわかる。図 5 の主系列
Figure 5. HR 図 (Icko Iben, Jr., 1991[2] より)
(Main Squence) に並んでいるのが,中心で水素核融合が起こっている主系列星であり、
左上にいくほど 星の質量が大きく,表面温度が高く,明るくなっている。単独星の一生 は星の質量と含まれる重元素量 (あるいは金属量 Metallicity: 水素、ヘリウム以外の元 素の質量存在比)Z によって決まるので、重元素量が太陽 (Z ∼ 0.02) と同程度の星につ いて、主系列星の質量依存性をまとめてみると以下のようになる (表 1)。
• M < 1.1 ∼ 1.5M の星では,pp チェーンが主で,そのコアは輻射エネルギー輸
送、外層は対流によるエネルギー輸送が主。外層は不完全電離で不透明度 κ が大き
く,輻射輸送の効率が悪いため、対流が必要となるのである。
• M > 1.1 ∼ 1.5M の星では,中心温度 T c > 1.8 − 2.0 · 10 7 K と高いので,CNO サ イクルが主となる。
• M > 2M では、対流によるエネルギー輸送がコアで起こる。エネルギー生成率の 温度依存性 ∂lnε ∂ln T
Nが大きいため、発熱量に比べ温度勾配が小さく輻射輸送では CNO サイクルで生成されたエネルギーが運び切れないからである。
その他、基本的な物理量の大雑把な質量依存性は以下のようになる。
• 圧力勾配と重力のつりあい ∂M ∂P
r
= − GM 4πr
4rより、P ∝ M 2 /R 4 、一方 P ∝ ρT ∝ T M/R 3 なので M ∝ RT 。さらに H 燃焼時の T は質量依存性が小さいので M ∝ R
• 温度勾配によって生じ る輻射による熱伝導でエネルギーが輸送される場合 L rad =
− 4πr 2 4acT 3κρ
3∂T ∂r なので、不透明度が電子散乱 (Thomson 散乱) によるもの (κ ES ) が主 で一定と仮定すると,L ∝ R 4 T 4 /M より L ∝ M 3 となり、重い星は非常に明るく 輝く。
• L ∝ R 2 T eff 4 より T eff ∝ M 1/4 となり、表面温度の質量依存性は大きくない。
• 誕生時の星に含まれる水素の質量比を X とし たとき 、今のエネルギ ー生成率で 水素を燃え尽くすのに 要する時間が 、主系列星の寿命 τ M S の目安と考えると 、 τ M S = qε
HM c L
2X ∝ M/L ∝ M − 2 となり、重い星ほど 短寿命であることがわかる。こ こで、 q ∼ O(0.1) は核燃焼の起こるコアの星全体に対する質量比、ε H ∼ 7 · 10 − 3 は 水素核融合時に得られる熱エネルギーと水素の静止質量エネルギーとの比である。
• ρ ∝ M/R 3 ∝ M − 2 となり、重い星ほど 平均密度は小さい。
実際の観測では L ∝ M 3.5 なので、 τ M S ∼ 10 10 yr(M/M ) − 2.5 となる。また、少々細 かいことに注意すると,温度の低い小質量星では不透明度が制動輻射によるものが主と なり (κ ∼ κ ff ∝ ρT − 3.5 )、L ∝ M 5 , T eff ∝ M 3/4 となる。一方,大質量星では電子のトム ソン散乱による不透明度 κ ES が主となり密度・温度依存性がなくなることに加えて、圧 力の主成分が輻射圧 P ∝ T 4 となり、核融合の温度依存性が強く中心温度が星の質量に あまり依存しないことを考えると中心圧力もあまり星の質量によらないことがわかる。
そのため、 M P ∝ R M
4→ R ∝ M 1/2 、ρ ∝ M − 1/2 、L ∝ R M
4T
4∝ M 、T eff ∼ 一定、 τ M S ∼ 一 定 ∼ 10 7 yr となる。
1.3. 主系列後
星の中心核 (コア) の水素が消費されてしまうと、主系列星ではなくなり、星は新たな段 階へと進化していく。その後の進化を考える上でキーとなる事項は以下のようになる。
• 重い星は、その質量を支えるためにより大きな圧力 (勾配) が必要で、軽い星より高 温である。
• 重い星は、その質量を支えるため、核燃料を早く消費してしまい、寿命が短い。
• 核反応のクーロン障壁 ∝ Z 2 なので、 Z が大きい核燃焼には高温状態が必要、すな
わち燃焼温度は原子番号の小さい原子核から順に高くなっていく。
スペクトル型 T eff [K] M/M L/L τ (10%)[yr]
O5V 44500 60 7.9 · 10 5 5.5 · 10 5 B0V 30000 18 5.2 · 10 4 2.4 · 10 6 B5V 15400 6 8.3 · 10 2 5.2 · 10 7 A0V 9500 3 5.4 · 10 1 3.9 · 10 8 F0V 7200 1.5 6.5 · 10 0 1.8 · 10 9 G0V 6050 1.1 1.5 · 10 0 5.1 · 10 9 K0V 5250 0.8 4.3 · 10 − 1 1.4 · 10 10 M0V 3850 0.5 7.7 · 10 − 2 4.8 · 10 10 M5V 3250 0.2 1.1 · 10 − 2 1.4 · 10 11
Table 1. 星の質量と主系列星の性質:τ(10%) は、M, L から求めた 10%の水素を消費 するのに要する時間である。[3]
• 星のコアの表面に急激な密度勾配があるため、コアは外層とはほとんど 独立に進化 するが 、外層のコアに接する球殻領域で核反応 (shell burning) が起こる場合、コア の質量はその灰によって増加していく。
中心の水素が燃え尽きて形成されるヘリウムのコアは、水素の燃焼温度 ∼ 10 7 K で はヘリウムの核融合反応はおきないので,単に内部の余熱を外へ放出するとともに収縮 し 、逆に密度と温度が上昇するというケルビン・ヘルムホルツ収縮段階を経て、以下の
ようなトリプルアルファ(3α) 反応によるヘリウムの核融合が始まる。
4 He 4 He ↔ 8 Be, 8 Be 4 He ↔ 12 C ∗ , 12 C ∗ → 12 Cγ
4 He- 12 C間の原子核は核子あたりの結合エネルギーが 4 Heより小さいため、発熱反応
として生成されることはなく、 4 Heの燃焼で最初に生成されるのは 12 Cとなるのである。
また中間生成物の 8 Beの寿命は約 10 − 16 sec と短くすぐに 4 He に壊れてしまうため、この 寿命の間に第三の 4 Heが衝突する確率が高くなるような高密度でなければならない。宇 宙初期の軽元素合成段階では,ρ < 10 − 4 g/cm 3 と密度も低く,また密度や温度の減少の タイムスケール (宇宙膨張のタイムスケール) が 10 3 sec 以下と短いので,このトリプル アルファ反応は起きず、炭素以降の重元素が生成されない。一方,星のヘリウムコアの 内部では,密度が ρ = 10 3 ∼ 10 5 g/cm 3 、温度が T > 10 8 K となり、また静水圧平衡をな して時間はたっぷりあるので、3α 反応が起こり得るのである。
この 3α 反応では、 1 核子当たり解放されるエネルギーは 7.27MeV/12 ∼ 0.6MeV で あり、静止質量に対する効率は He = 0.6MeV m
u
c
2∼ 6 · 10 − 4 ∼ 10 1 H と、水素燃焼の効率より 一桁小さい。そのため、ヘリウム燃焼を継続するタイムスケール τ He ∼
HeM L
He coreHec
2は、
星の光度が水素燃焼時と同じ (L He ∼ L H ) だとしても τ He ∼ 10 1 τ H と、水素燃焼のタイム スケールより短くなる。以後の核燃焼段階も同様で,星の寿命の大半は水素燃焼を行っ ていた主系列時代ということがわかる。
3α 反応で炭素ができると、その一部はさらにヘリウムと反応して酸素になるため,
ヘリウム燃焼の結果 CO コアが形成される。一部はネオンにもなる。
3 4 He → 12 C, 12 C 4 He → 16 O γ, 16 O 4 He → 20 Ne γ
このとき、温度が高いほど ,酸素まで反応が進みやすくなるので,温度の高い重い 星ほど CO コアにおける炭素の割合 (C/O) は小さくなる。
さらに 、温度が 6 · 10 8 K を越えると,以下のような C 燃焼により ONeMg コアが 形成される。
12 C 12 C → 24 Mg γ, 23 Na p, 23 Mg n, 20 Ne 4 He 続いて,Ne 燃焼
20 Ne γ → 16 O 4 He, 20 Ne 4 He → 24 Mg γ が進行し ,10 9 K を越えると O 燃焼
16 O 16 O → 28 Si 4 He, 32 S γ, 31 P p, 31 S n, 24 Mg 2 4 He により、Si コアが形成される。
T > 3 − 4 · 10 9 K では、 Si 燃焼により,いわゆる “Fe” コアが形成されるが,その際、
28 Si (γ, α) 24 Mg, 28 Si (γ, p) 27 Al や 28 Si (α, γ) 32 S (γ, p) 31 P (γ, p) 30 Si (γ, n) 29 Si (γ, n) 28 Si な どの反応で生じた α, p, n などにより、核反応の平衡状態 (核統計平衡 Nuclear Statistical
Equilibrium: NSE) が実現されており、エネルギー的に最も安定な鉄族の原子核を主成
分とする多成分状態になっている。いわゆる偶偶核は 、結合エネルギーが大きいので,
主な反応の流れは 28 Si (α, γ) 32 S (α, γ) 36 Ar (α, γ) 40 Ca... 44 Ti, 48 Cr, 52 Fe, 56 Ni と見ること もできる。
H He
H shell burning
H
CO He shell burning H
He
He H
co
ONeMg Si
Fe
Figure 6. たまねぎ 状の構造への星の進化
以下低質量星、中質量星、大質量星、それぞれの進化をまとめてみよう。
• 低質量星 1M (主系列星の寿命 τ M S ∼ 10 10 yr) の場合 (図 7,8,9)
中心部の水素を燃やし尽くしたとき、中心部には縮退電子圧で支えられたヘリウム コアが形成されている。そのまわりの球殻で水素の殻燃焼がゆっくり ( ∼ 10 8 yr) 進行し 、 徐々にヘリウムコアの質量が増えていく。縮退した電子圧で支えられた軽いヘリウムコ アの構造は、断熱指数 γ = 5 3 のポリトロープ型状態方程式 P ∝ ρ γ に対応する静水圧平 衡の式を解いて求めることができ、コアの質量 M core 、中心密度 ρ c 、コアの半径 R core の 関係は ρ c ∝ M
2 3γ−4
core 、R core ∝ M
γ−2 3γ−4
core となるので、質量の増加とともに、密度が増し 、半
径は小さくなる。ヘリウムコアを覆う水素燃焼殻の温度も上昇し核反応率が高くなるの
で、光度が増し水素の外層は膨らむ。膨張に伴い表面温度は下がるので、星は赤く明る
い赤色巨星 (Red Giant) となるのである。その後、ヘリウムコアの質量が 0.5M 程度に
なるとヘリウムの核燃焼が急に始まりヘリウムフラッシュを経て安定なヘリウム燃焼段
Figure 7. HR 図上での星の進化経路 [2]
Figure 8. 星の中心密度・温度の進化 (佐藤文隆「宇宙物理」岩波書店より)
階に移行する。縮退したコアで新しい燃料 (今回はヘリウム) の燃焼温度に達すると、核 融合で生じた熱で温度が上昇しても縮退圧はあまり影響を受けず、温度上昇に伴う反応 率の上昇が核燃焼の暴走を引き起こす。これがヘリウムフラッシュで、電子の縮退が解
ける (熱的圧力が縮退圧に勝る) 温度になって、コアが熱的圧力によって膨張し 密度が
下がって反応率を下げるようになることで、安定燃焼段階に移行する。ヘリウムの安定 燃焼段階のヘリウムコアは縮退時より少し膨張したので、水素の外層は逆に収縮し 、赤 色巨星ではなく水平分肢 (Horizontal Branch) と呼ばれる段階になる。ヘリウムの主系 列星段階とも呼べるこの時期は、中心のヘリウムが使い尽くされ 、炭素・酸素の縮退コ アが形成されることで終了する。このコアも核融合を起こさず収縮するので、再び外層 が膨張し漸近巨星分枝 (Asymptotic Giant Branch: AGB) 星になる。膨張した星の表面 重力は弱く、またヘリウム燃焼殻のフラッシュ現象などにより、外層の水素やヘリウム 層は徐々に星から失われていく。たとえば 、恒星風速度 v ∼ O(10)km/sec、質量損失率 M ˙ = 10 − 8 ∼ 10 − 5 M /yr で、外層を失い炭素・酸素のコアがむき出しになっていく。こ の星 (M CO ∼ 0.6M ) は、電子の縮退圧で支えられていて、核融合反応はないので、以 後は単に冷えていくだけとなる。むき出しになった時点では、ヘリウム燃焼時の余熱に より高温であるため青白く、半径が太陽の 1/100 程度 (地球の半径程度) と小さいので、
白色矮星 (White Dwarf) と呼ばれている。失われつつある外層が 、中心の白色矮星に照
らされているのが惑星状星雲 (Planetary Nebula) と呼ばれる天体 (図 10) である。
• 中質量星 5M (主系列星の寿命 τ M S ∼ 10 8 yr) の場合 (図 7,8,11)
主系列星の時代、軽い星の場合と異なり、中心温度が高く温度依存性の高い CNO サイクルによる核融合が支配的になるので 、温度勾配に比例する輻射輸送の効率が悪 く、コアで対流が発生する。水素が燃やし尽くされヘリウムコアになった段階の温度も 高く、ヘリウムコアは縮退していない。そのため、コアは比較的速いタイムスケール
(τ < 10 6 yr) でケルビン・ヘルムホルツ収縮し中心温度が上がっていく。一方外層は、や
はり膨張し赤色巨星となる。中心温度がヘリウムの燃焼温度に達したときも、縮退して いないので、核融合で生じた熱により温度と圧力が上昇し温度上昇による核反応率の上 昇と、膨張に伴う反応率の低下が釣り合う状態で、安定にヘリウム燃焼が進行する。続 いて形成される炭素・酸素コアは、縮退しており、以後の進化は低質量星と同様、漸近 巨星分肢星をへて惑星状星雲、白色矮星に至る。
• 大質量星 25M (主系列星の寿命 τ M S ∼ 10 7 yr) の場合 (図 7,8,12)
大質量星は、大きな質量を支えるため大きな圧力勾配が必要で、温度も高いため、
ヘリウムコアも炭素・酸素コアも縮退していない。炭素・酸素コアもケルビン・ヘルム ホルツ収縮し温度が 5 − 6 · 10 8 K を越えると炭素燃焼が始まり、以後珪素燃焼まで進み、
中心には鉄族元素を主体とする核統計平衡のコア、そのまわりを Si 層、 ONeMg 層、 CO 層、 He 層、H 層が覆う玉ねぎ構造に進化していく。また、主系列の時期も含め、光度が 高いので内部での核融合による燃料消費が早く、 10 7 年程度で一生を終えてしまう。特に 炭素燃焼段階以降は、核融合で解放されたエネルギーのほとんどを以下のようなニュー トリノ放出反応によって失ってしまうため、進化のタイムスケールが早く、たとえば珪 素燃焼段階は年でなく日のタイムスケールで終わってしまう。
• e − γ → e − ν ν ¯ (photo neutrino)
• e − e + → ν ν ¯ (pair neutrino)
• plasmon → ν ν ¯ (plasmon decay)
• e − Z → e − Zν ν ¯ (bremsstrahlung)
He shell
He abundanceH abundance
Thermally pulsing AGB Beyond point 15 is the
e )
9 = Core He Flash
Early AGB begins core
H shell
8
inset (c)
H abundance
inset (b) inset (a)
inset (f)
7 8
2 1
3
4
1 = ZAMS 2 3 5
6 7
8 = First Dredge-Up 10
Pulse = 15 First Thermal
Beyond point 14 the
mass fraction
mass fraction convection
H abundance
mass fraction inset (d)
11 12 13
H shell
4 = core H exhaustion Core He
= 14 exhaustion
log(T)
6 7 4 H abundance 5
10 11
12
13 14
10 11 12 13 11 10 12 13
mass fraction 14 14 inset (e)
convective envelope convective envelope
He core CO
log(L)
log(T
Figure 9. 1M
の星の進化経路 [4]
Figure 10. 惑星状星雲 M57
He abundanceH abundance
e
)
H abundance
4 = Core H exhaustion 2 3
1
2
3
4
5 6
7 exhaustion = 14
15 = Second He shell TP-AGB
mass fraction
ZAMS = 1
10 13
4 5
6 7 8 = First Dredge-Up
H abundance
9 = Core He ignition 10
11
12
13 10 11 12 13
11 10
14
He abundance
H abundance
8 7
8 convection
Core He
Dredge-Up CO core
H shell
envelope
conv- ective inset (f)
mass fraction
mass fraction
mass fraction
mass fraction inset (c)
inset (a)
inset (b)
H abundance
12 11 12 13
14 14
inset (d) inset (e)
before after
unchanged
log(L)
log(T Figure 11. 5M
の星の進化経路 [4]
たとえば 、図 12 は、22M の星が中心の水素燃焼段階 (爆発まで 10 6 年以上前) から爆 発する直前 (10 − 8 年前) まで、質量座標ごとにど のような燃焼段階であったかを示して いる。中心の酸素燃焼は爆発の 1 年前、珪素燃焼は数日前であることがわかる。
(blue giant)radiative envelope total mass of the star
(reduced by mass loss)
<−1014 <−1013 <−1012 <−1011 <−1010 <−109 <−108 <−107 <−106 <−105 <−104 <−103 <−102 <−101 <−100 <−10−1 >−10−1 net nuclear energyloss(burning + neutrino losses; in erg / g / s)
>10−1 >10 >101 >102 >103 >104 >105 >106 >107 >108 >109 >1010 >1011 >10 >1013
<10−1 0 12 >1014
net nuclear energygeneration(burning + neutrino losses; in erg / g / s)
000000 000 111111 111
000000 000 111111 111
convective envelope (red giant)
C shell burning
O shell burning He shell burning
H burning He burning C burning (raditive) C shell burning
Ne burning
O Si
O O
O
Si
convection semiconvection
Figure 12. 大質量星の内部状況の時間変化 [5]
以上のように星の質量によって進化の様子が異なり、白色矮星となって終わる星や
爆発する星もある (図 13)。次節では、爆発するケースについて解説を行う。
H no ignition
Main Sequence Star Brown Dwarf, Jupitor
He Core He Core degenerate no ignition
He White Dwarf
ignition He flash non degenerate
CO Core CO Core degenerate no ignition
CO White Dwarf Thermonuclear SNE
accretion ignition non degenerate
ONeMg Core
ignition
ONeMg Core degenerate e-cap collapse ignition Collapse−driven SNE Si Core
non degenerate ignition
Si Core
Collapse−driven SNE
ignition
Fe Core
photodissociation e-cap
collapse
Neutron Star Black Hole
M(MS)<0.5 M>0.08
M(MS)<2 M(MS)>0.5
M(MS)>8
M(MS)>10
M(MS)>20-40 M<0.08
Figure 13. 星の初期質量の違いによる進化の違い (質量の単位は太陽質量M
)
1.4. 超新星 supernova/supernovae
以前から、新しい星が生まれたかのように新しい星が観測され 、一ヶ月ほどで暗くなっ ていく現象が知られていて、新星 (Nova) と呼ばれていた。 1930 年代になると、 Baade &
Zwicky が、桁違いに明るい (絶対等級が明るい) 新星の存在に気づき、超新星 (Supernova)
と名づけた。その光度は明るいものだと銀河の明るさにも匹敵し 、絶対等級 M max ∼ − 19、
光度 L SN ∼ 10 4 L Nova ∼ 10 10 L にもなる。また、数カ月のタイムスケールで暗くなり、
1990 年くらいまでに我々の天の川銀河ではない系外銀河で合計 O(10 3 ) 個ほど 発見され ていた。最近は宇宙論の興味もあり、系統的なサーベイ観測が行われるようになり、年 100 個以上発見されている。発生頻度は大雑把に 1SN/数 10 年/銀河と見積もられてい る。天の川銀河では、ここ一千年の間に 5 個しか観測されていない (表 2) が 、太陽近傍 のものしか観測できていないためだろうと考えられている。また、肉眼で見えた直近の 超新星は、となりの大マゼラン雲でおこった超新星 1987A(SN1987A) である。これまで の研究により、超新星は、新しい星ではなく、恒星の死、中性子星やブラックホールの 誕生に関わる爆発現象で、恒星進化の途中や爆発時に合成された元素をまき散らし 、地 球に存在する多くの元素の起源に深く関係していることがわかってきた。
1.4.1. 分類 超新星は、観測的にはスペクトル中に H 輝線がない I 型と、ある II 型に
分けられている。さらに以下のようなサブクラスに分類される。
Ia 明るい、H 輝線が無い、Si 吸収線が強い、光度曲線がお互い似ている、古い星しか 残っていないような銀河でも観測される。
Ib/Ic H 輝線が無い、 Si 吸収線も無い、He 吸収線強い (Ib)/弱いまたは無い (Ic)、若い
星が存在する銀河でしか起こらない。
超新星 記録 残骸、備考
SN1006 中国、日本 G327.4+14.6 Ia 型
SN1054 中国、日本 蟹星雲、PSR0531+21(P =33ms)
SN1181 中国、日本 G130.7+3.1, 3C58, PSR J0205+6449(P =65.68ms) SN1572 Tycho B Cas, G120.1+2.1, 3C10
SN1604 Kepler G4.5+6.8
∼ 1670 Cas A
SN1987A in LMC
Table 2. 近傍で起こった超新星
IIP 光度曲線に Plateau phase が有る、若い星の存在する領域で起こる。
IIL 光度曲線が Linear decay する、若い星の存在する領域で起こる。
IIb 初期スペクトルには H 輝線があるが 、後期になると Ib/Ic に似てくる。
IIn 線幅の狭い輝線 (線幅から見積もられる膨張速度 v < 200km/s) が特徴
H
ˇ¢ –•ˇ
M>8M
…`˛ ˚ ‰—
… •ˇ˛ –
˙ ¿§ –
‰¯˛ˇ˚ł†ı•¿˜¶¿• –˙œ¨fl ˆ ›» –⁄ ⁄¿⁄ˇ
¥ ¥Ø¥ˆ¥fl¥ ¡…¥º
‡¸˙‡ ˘¸‰` •¿˜¶¿• –˙œ¨fl
‰¯˛ˇ˚ł†ı
¨… –
He CO ONeMg Fe
Si
Figure 14. 星の進化と超新星爆発
一方、爆発メカニズムの観点では、Ib/Ic/II 型が短寿命の重い星のコアが重力崩壊 して爆発したもの、Ia 型は連星系をなしている炭素・酸素の白色矮星で核燃焼が暴走し て爆発したものがおきたものと理解されるようになってきた (図 14)。重力崩壊型超新星 の様々なサブクラスは、進化途中の質量放出に影響を受ける爆発時の外層の状態による ものという理解である。大きな水素の外層を持っていたものが IIP 型、水素の質量が大 きくないもの (IIL 型)、ほとんど 水素外層がなくなりかけていたもの (IIb 型)、水素層を 失いヘリウム層がむき出しになっていたもの (Ib 型)、ヘリウム層も失い炭素・酸素層が むき出しになっていたもの (Ic 型)、恒星風による濃い星周物質があるもの (IIn 型) など である。図 15 と図 16 は、様々な型の超新星の典型的な光度曲線とスペクトルである。
また最近は、非常に明るい (E exp > 10 52 erg ∼ 10E exp (SN )) 極 (超) 新星 Hypernova
と呼ばれるものも、いくつか観測されγ線バーストとの関連が注目されているが 、その
Figure 15. 超新星の典型的な光度曲線 [6]
maximum 3 weeks one year
Ηβ Ηα HeI CaII SII
SiII
[Fe III]
[Fe II]+
[Fe III]
[Co III]
Na I
[Ca II]
[O I]
[O I]
II Ib Ic Ia
Ηα
Na I Ca II
Ηα O I