• 検索結果がありません。

学位の分野 工学

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "学位の分野 工学"

Copied!
133
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

水溶性色素を用いた完全水溶媒系におけるカチオン およびアニオン比色センサーの検討

著者 坂巻 勝

学位授与大学 東洋大学

取得学位 博士

学位の分野 工学

報告番号 32663甲第432号 学位授与年月日 2018‑03‑25

URL http://id.nii.ac.jp/1060/00010074/

Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by‑nc‑nd/3.0/deed.ja

(2)

2017 年度

東洋大学審査学位論文

水溶性色素を用いた完全水溶媒系における カチオンおよびアニオン比色センサーの検討

工学研究科バイオ・応用化学専攻博士後期課程

46B0090002 番 坂巻 勝

(3)

i 目次

第1章 序論 1

1.1 研究背景 2

1.1.1 センサーについて 2

1.1.2 吸光光度法・比色法 3

1.2 標的物質について 5

1.2.1 金属イオン 5

1.2.1.1 鉄イオン 6

1.2.1.2 コバルトイオン 6

1.2.1.3 亜鉛イオン 6

1.2.1.4 鉛イオン 7

1.2.2 ジカルボン酸(シュウ酸) 7

1.2.3 アミノ酸 8

1.3 最近の研究 8

1.3.1 鉄の検出に関する研究 8

1.3.2 コバルトの検出に関する研究 10

1.3.3 亜鉛の検出に関する研究 11

1.3.4 鉛の検出に関する研究 12

1.3.5 シュウ酸の検出に関する研究 14

1.3.6 システインの検出に関する研究 15

1.4 研究構想・総括 17

1.5 参考文献 19

第2章 ピロガロールレッド、高分子電解質及び金属キレート剤による水溶液中のFe2+とFe3+

の比色検出 25

2.1 研究背景 26

2.2 実験 28

2.2.1 使用した試薬と機器 28

2.2.2 測定 28

2.2.2.1 吸収スペクトル 28

2.2.2.2 Job's プロット 29

2.2.2.3 検出限界(LOD) 29

2.2.2.4 結合定数 29

(4)

ii

2.3 結果と考察 29

2.4 結論 36

2.5 参考文献 37

第3章 アニオン性ピリジルアゾ染料およびカチオン性高分子電解質によるCo2+の比色検出 41

3.1 研究背景 42

3.2 実験 43

3.2.1 使用した試薬と機器 43

3.2.2 測定 44

3.2.2.1 吸収スペクトル 44

3.2.2.2 Job's プロット 44

3.2.2.3 検出限界(LOD) 44

3.2.2.4 結合定数 45

3.3 結果と考察 45

3.4 結論 52

3.5 参考文献 53

第4章 ピロガロールレッドおよびポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)を利用

したZn2+の比色化学センサー 56

4.1 研究背景 57

4.2 実験 59

4.2.1 使用した試薬と機器 59

4.2.2 測定 59

2.2.2.1 吸収スペクトル 59

4.2.2.2 Job's プロット 59

4.2.2.3 検出限界(LOD) 60

4.2.2.4 結合定数 60

4.2.2.5 pH依存性 60

4.2.2.6 可逆性 60

4.3 結果と考察 61

4.4 結論 69

4.5 参考文献 71

(5)

iii

第5章 カルミン酸を用いた水溶液中でのPb2+の比色定量 75

5.1 研究背景 76

5.2 実験 77

5.2.1 使用した試薬と機器 77

5.2.2 測定 77

5.2.2.1 吸収スペクトル 77

5.2.2.2 Job's プロット 78

5.2.2.3 検出限界(LOD) 78

5.2.2.4 結合定数 78

5.2.2.5 pH依存性 78

5.2.2.6 可逆性 79

5.3 結果と考察 79

5.4 結論 85

5.5 参考文献 87

第6章 ピロガロールレッドとCu2+錯体による水溶媒中のシュウ酸の比色定量 90

6.1 研究背景 91

6.2 実験 92

6.2.1 使用した試薬と機器 92

6.2.2 測定 93

6.2.2.1 吸収スペクトル 93

6.2.2.2 Job's プロット (PR と Cu2+) 93

6.2.2.3 Job's プロット (PR-Cu2+ と シュウ酸) 93

6.2.2.4 検出限界(LOD) 94

6.2.2.5 結合定数 94

6.3 結果と考察 96

6.4 結論 103

6.5 参考文献 104

(6)

iv

第7章 水溶液中のカルミン酸およびPb2+複合体を利用したシステインの選択的検出のための

比色定量センサー 108

7.1 研究背景 108

7.2 実験 110

7.2.1 使用した試薬と機器 110

7.2.2 測定 110

7.2.2.1 吸収スペクトル 110

7.2.2.2 検出限界(LOD) 111

7.2.2.3 Job's プロット 111

7.2.2.4 可逆性 111

7.3 結果と考察 111

7.4 結論 119

7.5 参考文献 119

第8章 総括 122

8.1 研究の成果 123

8.2 展望 125

論文リスト 126

謝辞 127

(7)

1

第1章 序論

(8)

2 1.1 研究背景

1.1.1 センサーについて

我々の生活の中でセンサーは、現代社会のあらゆる分野に応用され、大いに役立って いる。センサーとは、自然現象や時間的・空間的情報を何らかの科学的原理を利用して 人間が理解しやすい情報にする技術である。工業分野においては自動車の自動運転技術 や製造業での品質管理など、セキュリティ分野では顔認証や指紋認証・虹彩認証・金属 探知機など、食品分野では味覚分析・臭気分析などに応用されている。我々の日常生活 でも温度や湿度、照度を自動で検知して快適な条件へと調整してくれる家電の分野でセ ンサーの恩恵を受けている。化学センサーは,標的物質を認識する部分と認識したこと を信号に変換する部分から構成された物であり、試料の前処理をすることなく、直接に 分析できるものが多い。ガスセンサーやイオンセンサーなどがこれにあたる。小中学生 の頃、誰もが一度は見たことがあるであろう、リトマス紙やブロモチモールブルー溶液 もpHという情報を得ることができる化学センサーといえる。

センサーとして重要な要素は、選択性・感度(検出限界)・定量性・応答速度・再現性・

可逆性・簡便性である。

① 選択性について

認識の厳格度。選択性が厳格であればあるほど応答に信頼性が高まり、センサー としての能力が高い。

② 感度(検出限界)

測定可能な濃度。より低濃度域で応答があれば汎用性が高くなる。

③ 定量性

定量できる性能。各種の測定で得られたデータから定量線が得られたときに関数 として明確に表せる性質。

④ 応答速度

試料をセンサー物質と混ぜたときに応答があるまでの時間。

(9)

3

⑤ 再現性

事象が再現すること。測定者や測定場所が変わっても必要な条件をそろえて実験 を行えば事象が再現することはセンサーの基本性能であり、同時に重要である。

⑥ 可逆性

系(主に溶液)の複数回の使用可能性。同じ系を廃棄する前に別の試薬を加えて測 定能力が回復すれば、環境負荷やコストの面で有利になる。

⑦ 簡便性

実験操作が簡単であれば、コストや技術者の育成の面から非常に有利である。

1.1.2 吸光光度法・比色法

化学センサーは、その検出方法によっていくつかに分類される。その中でも光特性の 変化を利用したもの、特に吸光光度法と比色法は非常に有用である 1。この分析システ ムでは、分子内のシグナル部位として可視波長に吸収特性を持つ分子を導入し、認識部 位として標的物質(G)と特異的に相互作用する分子を導入する(Scheme. 1-1)。標的物質 は正の電荷をもつカチオンや負の電荷をもつアニオン、電荷をもたない分子が主なもの であり、これにその他の化学構造的な特徴が加わってくる。化学センサーの分子設計に 当たっては、これらの特徴を総合的に考慮し、標的物質に対し特異的に相互作用し選択 性をもつようにする。認識部位に標的物質が捕捉されるとシグナル部位に何らかの変化 が起こり、これを観測する。その変化に応じて蛍光特性が変化すれば蛍光分光計を用い て、色に変化があった場合は分光光度計を用いて観測する。さらに、色の変化が明確に 観測される場合は特別な機器を用いなくても目視で、その応答を確認することができる。

これは、簡便性の面からセンサーにとって非常に重要である。高価な機器を準備するこ となく実験が行えるので、コストの面で非常に有利である。また、複雑な実験手順を必 要としないので、技術者の育成の面からも実用性が高い。

(10)

4

Scheme 1-1. 化学センサーの標的物質の認識モデル1

化学センサーが標的物質を捕捉したときの一般的な応答の1つは深色効果と浅色効 果である。深色効果は吸収スペクトルの吸収極大が長波長側に移動することで、浅色効 果は逆に、吸収スペクトルの吸収極大が短波長側に移動することである。

複数の物質を組み合わせて化学センサーを設計する例も多い。ここでは2成分での系 を取り上げる2。2成分系では、化学センサーとなる光特性を持つ化合物を指示薬とし、

標的物質と強い相互作用をもつ物質を受容体として選択する。さらに、これら指示薬と 受容体は静電的相互作用、水素結合、ファンデルワールス力など、弱い相互作用を介し て、お互いが近傍に存在する平衡状態を形成する組み合わせを選ぶ。このとき、指示薬 は受容体と複合体を形成しているので、もとの光特性は失っている状態である。標的物 質は、この平衡状態を崩し、受容体と標的物質で複合体を形成し、指示薬から受容体を 引き抜く。このとき、指示薬は、受容体から乖離し、光特性の回復をもたらす(Scheme 1-2)。この2成分系の設計には、基本的な2つの条件がある。1つめは指示薬と受容体 の相互作用が適切であること。相互作用が強すぎれば標的物質が近づいても指示薬と受 容体の複合体から受容体を引き抜くことができない。また、相互作用が弱すぎれば、指 示薬と受容体で複合体が形成されないので、標的物質が近づいても指示薬の光特性に変 化がない。2つめは指示薬と受容体の溶解性がよく、溶液にできることである。測定は 溶液の中で行われるので、それぞれの相互作用で溶解性に影響が出ると測定できなくな

(11)

5

る。従って、指示薬は、次のような点に気をつけて選択する。

① 受容体との適切な結合能力

② 水溶液中での良好な溶解性

③ 測定に適した目的の光特性を有する

Scheme 1-2. 2成分の混合系で物質を認識する場合の模式図

1.2 標的物質について

化学センサーにおいて標的となる物質は多岐にわたるが、ここでは、本研究に関係が 深いものだけについて触れる。

1.2.1 金属イオン

重金属や遷移金属イオンを選択的かつ定量的に検出することは分析化学の1つの重 要な分野として発展を遂げてきた。これらの元素は生体内で生命を維持する種々の化学 反応に寄与している。また、一部の重金属イオンは、人体と環境への悪影響が及ぶ汚染 物質になり得る。その作用機構を明らかにすることで、医療分野への応用がされてきた

3-5

(12)

6 1.2.1.1 鉄イオン

鉄は血液中のヘモグロビンの中に存在し、酸素輸送、さらに細胞内での種々の代謝反 応、酵素基質反応にも関係していることが挙げられる6-9。しかし、ヒトの体の中で鉄の バランスが崩れると致命的な病気を引き起こすことになる10-12。中枢神経系の過剰量の 鉄は、パーキンソン病やアルツハイマー病など、多くの神経細胞が関係する病気に密接 に関わっている。さらには、がんの発症にも大きく関係する。逆に鉄が欠乏すると、肝 臓や腎臓・心臓に大きなダメージを与え、糖尿病や貧血を引き起こす原因ともなってい

13-16。さらに生体反応の重要な酸化還元反応の1つとして、鉄には Fe2+とFe3+が2つ

の異なった酸化状態が存在している17。人体の健康や環境保全において影響力があるの で、Fe2+とFe3+を水溶液中で検出することは非常に重要である。

1.2.1.2 コバルトイオン

コバルトは人体に必須の遷移金属イオンである。DNAやヘモグロビンの合成や神経系 の維持、鉄の代謝、体内の赤血球の形成など、様々な生理学的プロセスにおいて重要な 役割を果たす18,19。ビタミンB12など生物学的化合物の重要な成分である20。コバルトが 欠乏するとビタミンB12欠乏の原因になる。一方、過剰量のコバルトは心筋症、血管拡 張、肺疾患、皮膚炎、甲状腺腫脹などのさまざまな病気の原因ともなる21-25。コバルト は、肥料、ペイント製品、消毒剤などの工業・産業分野で広く利用されており、環境中 に排出されると、環境汚染の原因にもなっている26。したがって、低濃度域でコバルト イオンを選択的に定量する分析技術は、生物学的、環境学的に非常に重要である。

1.2.1.3 亜鉛イオン

亜鉛イオン(Zn2+)は、鉄に次いで人体における2番目に存在量の多い必須微量元素で あり、細胞代謝、脳活動、遺伝子転写、神経伝達、金属を含んだ酵素の調節などの多く の生物化学的反応において重要な役割を果たす27-29。体内のZn2+のバランスが崩れると、

アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、メンケス・アンドウィルソン病、パーキンソ

(13)

7

ン病などの神経学的疾患と密接に関連している 30-32。Zn2+が欠乏すると、小児の成長遅 延および免疫機能不全を引き起こす33。逆にZn2+が過剰になると、環境汚染、植物の発 育不全、土壌汚染、ヒトの疾患では発熱、悪心、貧血、腎不全などが引き起こされる34。 一方、亜鉛は電気めっきや塗料のような様々な化学および製薬産業において広く使用さ れている一面もある。Zn2+は主に人体および環境の水系に存在するため、生理学的pH条 件下において水溶液中で高選択性、高感度のZn2+センサーを開発することが必要とされ ている。しかし、Zn2+の検出は、閉殻になった3d10の電子配置によって特徴的なd-d遷 移が存在しないため、極めて困難な技術である35

1.2.1.4 鉛イオン

毒性の高い重金属イオンのうち、鉛イオン(Pb2+)は人体の中で重大な臓器障害を引 き起こす非常に有害な汚染物質の1つであり、特に小児では低濃度であっても蓄積する と、非分解性であるので消化器系、腎臓系に重篤なダメージを与える36,37。ジストロフ ィーや認知障害などの疾患も、Pb2+が長期間の体内に存在していることが悪影響を与え ていることが証明されている38,39。鉛化合物は、ガソリン添加剤、塗料顔料、鉱業、製 錬、蓄電池、窓ガラスなどの工業製品に広く使用されており、Pb2+の環境への放出や水 性媒体への暴露が増加している。信頼性が高く、特異性を有する水性サンプル中でも微 量のPb2+を定量することができる有効なツールの開発が求められている。

1.2.2. ジカルボン酸(シュウ酸)

アニオンは化学的、生物学的、薬学的および環境的プロセスにおける多数の重要な役

割をもつ40,41。これらのアニオンの中で、シュウ酸の検出は、食品化学および臨床分析

において有用である。すなわちシュウ酸は、ある種の食品中に自然に存在するため、人 間の食生活において重要な栄養素として摂取されている42。シュウ酸は細胞代謝の結果 としても生成され43、十分に分解されず体内に蓄積する場合がある44。シュウ酸は、Ca2+

と高い親和性をもつため、体内のCa2+と不溶性の錯体を形成することが知られている45

(14)

8

尿および血漿中のカルシウムおよびシュウ酸濃度が飽和に達すると、膵臓の機能不全、

心筋症、腎不全および腎結石など、多くの疾患を引き起こす46。シュウ酸カルシウム形 成がヒトの尿中のカルシウム濃度よりもシュウ酸濃度に影響されるため、尿中でのシュ ウ酸の測定は高シュウ酸尿症の診断および医療管理において非常に重要である47。さら に、食物中のシュウ酸含量の定量化も重要である。なぜなら、食物中のシュウ酸濃度が 高いと、不溶性シュウ酸カルシウムが形成されやすくなるからである48。尿中シュウ酸 排泄量の正常範囲は24時間で110〜460 μmol であることが報告されている49,50。この ため、尿中のシュウ酸濃度がわかれば、シュウ酸カルシウムによって引き起こされる疾 患の指標として用いることができる。

1.2.3. アミノ酸

タンパク質の重要な構成要素であるアミノ酸は、生理学的プロセスにおいて様々な役 割をもたらす機能的側鎖基を有する小分子である。

L-システイン、ホモシステイン(Hcy)およびグルタチオン(GSH)などのチオール化 合物は、様々な生理学的および病理学的プロセスにおいて必須の役割を果たす51,52。そ

の中でL-システインは、タンパク質の折りたたみ、解毒、代謝などの多くの重要な役割

を果たしている53,54。またL-システインは、多くの疾患の指標として活用されている55-

59。L-システインの欠乏は、免疫不全症候群やアルツハイマー病、パーキンソン病、子 供の発達遅延、脱毛症、肝障害、浮腫、嗜眠、乾癬など様々な症候群の原因となる。さ らに、L-システインは食品、製薬の分野で広く使用されている60。このため、L-システ インの選択的かつ高感度な検出は、医療分野で重要な情報となり、その応用が期待され ている。

1.3 最近の研究

1.3.1 鉄の検出に関する研究

Wallace らはスクアライン誘導体が DMSO 中で Fe3+と複合体を形成し、濃紺色から紫

(15)

9

色に変化し、Fe3+の検出に成功した。しかし、このスクアライン誘導体がZn2+とFe2+に対 しても親和性の存在することも示されている(Scheme 1-3)61

Scheme 1-3. スクアライン誘導体の化学構造式61

Pitchumani らは 6-アミノ-β-シクロデキストリンと p-ニトロフェノールから水溶媒 中でFe3+およびRu3+を検出する比色化学センサーを開発した(Scheme 1-4)。Fe3+の添加 で濃い黄色から無色への色の変化が生じた。Ru3+の添加でも同様の観察結果が認められ た62

Scheme 1-4. Pitchumaniらが考案したFe3+を検出する化学センサー62

Liangらはテルピリジン基を有する誘導体を合成し、π電子をドナー受容体として活

用し、Fe2+、Fe3+の添加により淡黄色から淡マゼンタへの溶液の色の変化を得た(Scheme 1-5)63

(16)

10

Scheme 1-5. テルピリジン誘導体の化学構造式63

1.3.2 コバルトの検出に関する研究

Zengらは Scheme 1-6に示す化合物でZn2+、Co2+を検出することに成功している。こ の化合物はZn2+、Co2+の導入で暗紫色から黄色への色の変化があり、1:1の化学量論比 で複合体を形成する。さらに、この化合物はシステインおよびグルタチオンを認識する ことも見出されている64

Wuらはアントラキノン誘導体が、Co2+を選択的に検出することを報告している。色の 変化は黄色からパールグリーンであった(Scheme 1-7) 65

Scheme 1-6. Zeng らが考案したZn2+、Co2+を認識する化合物の化学構造式64

Scheme 1-7. アントラキノン誘導体65

(17)

11

Kaur らは水とメタノールの混合溶媒系で Co2+、Ni2+、Cu2+を認識する化学センサーを 合成した(Scheme 1-8)。この化合物にCo2+、Ni2+、Cu2+を加えると赤色から青色に変化 を示した。これらの吸収スペクトルを測定すると異なった吸収帯が観測できた。さらに、

この化合物は酢酸緩衝液(pH 4.0)中で、Co2+の添加では青色になり、Ni2+、Cu2+の添加 では黄色になった66

Scheme 1-8. Kaurらが考案したCo2+センサーの化学構造式66

1.3.3 亜鉛の検出に関する研究

Ghoshらはピロリルピラジン誘導体を用いてアセトニトリル溶液中でCu2+、Co2+、Ni2+、 Zn2+、Cd2+に応答する比色センサーを設計した。これらの標的物質の存在で黄緑色から茶 色に変化する。Cd2+の添加では淡い茶色に変化した(Scheme 1-9)67

Scheme 1-9. ピロリルピラジン誘導体の構造式67

Xu らは 7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾールが Zn2+のセンシングに有用である ことを報告した(Scheme 1-10)。その吸収スペクトルは350 nmおよび450 nmのピーク を有しているが、Zn2+の添加により減少し、赤色から黄色への明瞭な変化を示した68

(18)

12

Scheme 1-10. 7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾールの化学構造式68

Caballero らはクマリン誘導体を合成し、Zn2+を検出できるセンサーを合成した

(Scheme 1-11)。このクマリン誘導体はアセトニトリル溶媒中で374 nmに強い吸収ピ ークを示すが、Zn2+の添加により吸収ピークがなくなり、452 nmに新たな吸収ピークが あらわれた。10当量のZn2+を添加すると、溶液の色が無色から黄色に変化した。しかし、

Co2+とNi2+の添加により、溶液の色がオレンジ色に変化し、Fe3+の添加により、溶液の色 が濃い黄色になった69

Scheme 1-11. クマリン誘導体の化学構造式69

1.3.4 鉛の検出に関する研究

Guilardらはジアミノアントラキノン結合性ポリアザマクロサイクル(Scheme 1-12)

が、メタノール・水混合溶液中で Pb2+を認識する比色センサーであることが示された。

HEPES緩衝液中(pH = 7.4)でPb2+と相互作用し、紫から桃への色の変化と観測した70

(19)

13

Scheme 1-12. ジアミノアントラキノン結合性ポリアザマクロサイクル70

Lee らはポリジアセチレン誘導体を利用した比色センサーが、HEPES(pH 7.4)中で Pb2+に対して高い選択性を示すことを報告した。Pb2+の添加に伴い、青色から赤色へ色の 変化をもたらした(Scheme 1-13) 71

Scheme 1-13. ポリジアセチレン誘導体の化学構造式71

ローダミン開環プロセスに基づく金属イオン選択的化学センサーが考案されている。

ローダミン誘導体は、無色やピンク色の比色変化を誘発し、蛍光を大きく増加させる。

Kwon らは Pb2+に対して選択性を持つローダミン誘導体の化学センサーについて報告し ている(Scheme 1-14)。アセトニトリル中でPb2+を添加すると、スピロラクタム開環プ ロセスを誘発し、ピンク色に変化した72

(20)

14

Scheme 1-14. ローダミン誘導体によるPb2+の認識機構72

1.3.5 シュウ酸の検出に関する研究

ピロカテコールバイオレット(PV)と複合体を形成する受容体(Scheme 1-15)を考案 した。この受容体は、一方のユニットがCu2+との配位に適しており、他方のユニットが 水素結合および静電的相互作用を介して標的物質と相互作用する。この混合系において 水溶液中でシュウ酸を選択的に認識した。シュウ酸を認識すると青色から緑色への視覚 的変化があった73

Scheme 1-15. PVの化学構造式と、予想される受容体によるシュウ酸認識機構73

化学構造の中にビス-ウレアをもつ化合物は、アニオンセンシングシステムに用いら れてきた。例えば、Sayahらはダンシル基を導入した化学センサーを考案し、DMSO/クロ ロホルム混合溶媒中でシュウ酸を選択的に認識することを報告している(Scheme 1-16)。 この研究では、酢酸イオン、ベンゾエートイオン、シアン化物イオン、フッ化物イオン、

塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、マロン酸イオン、コハク酸イオン、過 塩素酸イオンと比較しながら検証し、シュウ酸イオンへの選択性が認められた74

(21)

15

Scheme 1-16. ダンシル基を導入した化学センサーの構造式74

Scheme 1-17 に示した物質は、エタノール/水混合溶媒中で Zn2+の添加により水溶液 中および細胞中でシュウ酸イオンと複合体を形成する。この化学センサーのシュウ酸イ オンの検出限界は3.0μM となる。シュウ酸イオン以外の1価および2価のカルボン酸 イオン、リン酸イオンとは別の応答を示し、シュウ酸イオンのみを選択的に認識してい ることがわかった75

Scheme 1-17. シュウ酸を選択的に認識する化学センサー75

1.3.6 システインの検出に関する研究

Zhangは、8-ヒドロキシキノリン誘導体とCu2+の複合体を用いてシステインを検出で

きるセンサーを考案した(Scheme 1-18)。この複合体は中性条件下でCysの添加に伴い、

8-ヒドロキシキノリン誘導体-Cu2+複合体で観測されていた 421nm の吸収極大が減少し

497nmの吸収極大が復元する76

(22)

16

Scheme 1-18. 8-ヒドロキシキノリン誘導体とCu2+の複合体76

Peng らはチオール基がチアゾリジンを形成する反応を利用してシステインを検出方 法を考案した (Scheme 1-19)。この化合物はアセトニトリルとHEPES緩衝液の混合溶媒 中でシステインとホモシステインを認識した。特にシステインの検出限界は6.8×10-7M であり、ホモシステインの認識について差別化している。さらに、この化合物はシステ インを認識したときにオレンジ色から黄色へと視覚的な色の変化が観測された77

Scheme 1-19. PengとFanらが考案した化合物とチオール化合物の作用メカニズム77

Kimらはマイケル付加反応を利用しチオールを効果的かつ選択的に認識することがで きるクマリン誘導体を化学センサーとして考案している。この化合物はHcyおよびGSH を含む他の生物学的物質よりもCysの選択性を示す(Scheme 1-20)。この化合物はPBS 緩衝液、pH 7.4、10%DMSO中でCysを検出できる蛍光センサーであり、その検出限界 は30 nMである78

Scheme 1-20. 予想されるクマリン誘導体とチオール化合物の作用メカニズム78

(23)

17 1.4 研究構想・総括

化学センサーは我々の生活のあらゆる場面で活躍する非常に有用なものであり、応用 範囲も広い。多くの研究者がその進展に取り組んできた。標的物質の範囲も広がり、検 出方法もその種類が増えてきている。飛躍的な発展を遂げてきたが、まだまだ弱点も多 い。

① センサー物質を作るまでに1回、あるいは複数回の化学反応を必要とする。誰に でも測定できるわけではなく、測定者に対して制限がかかり、普及を阻んでしま う。

② 測定の際に有機溶媒を使用することが多い。有機溶媒のほとんどは有害である。

測定者に負担がかかるだけでなく、環境にも負荷をかけてしまう。

③ 測定に特別な機器を使用する。これにより、コストの面で不利になるだけでなく、

測定する場所や環境も制限される

これらの弱点を克服するため、本研究では比色化学センサーに注目し、「溶媒に安全 な水を用いて、複雑な実験手順を必要としない色変化で検出する」システムを考案した。

測定溶媒は緩衝液でpHをコントロールした水を用いた。センサー合成の煩雑さを省く ため、薬品会社から購入可能な物質だけを化学センサーとして利用した。比色法を中心 に検討し、分子認識機構を明らかにするために使用した測定機器は分光光度計のみであ る。

第2章では、ピロガロールレッド(PR)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリ ド)(PDADMAC)およびN-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミントリ酢酸(HEDTA)を 指示薬、高分子電解質およびマスキング剤としてFe2+およびFe3+に対して高度に選択的 な認識能力を水溶液中で比色分析を用いて実証した内容をまとめた(Scheme 1-21)。

(24)

18

Scheme 1-21. PR、PDADMAC、HEDTAの化学構造式

第3章では、薬品会社で購入可能な2種類の試薬、2-(5-ブロモ-2-ピリジルアゾ)-5- (N-プロピル-N-サルファプロピルアミノ)フェノール(5-Br-PAPS)とPDADMACを混合し て、生理的pH 条件下、水溶液中でのCo2+に対する比色定量化学センサーとしての能力 を検証した内容をまとめた(Scheme 1-22)。

Scheme 1-22. 5-Br-PAPSの化学構造式

第4章では、pH 7.0の水溶液中で、PRとPDADMACの2種混合系が選択的にZn2+を検 出した結果についてまとめた。

第5章では、水溶液中(中性付近)で、カルミン酸(CA)のPb2+に対する比色化学セン サーとしての性能を評価した内容をまとめた(Scheme 1-23)。

Scheme 1-23. CAの化学構造式

(25)

19

第6章では、PR と Cu2+を用いて水溶液中で種々のアニオンよりもシュウ酸を選択的 に認識できる化学センサーについて検討した内容をまとめた。

第7章では、カルミン酸(CA)と2つの鉛イオンが作る錯体 CA-2Pb2+が、生理的 pH 条 件下でホモシステイン(Hcy)およびグルタチオン(GSH)を含む種々のアミノ酸より、

L-システイン(Cys)を選択的に検出できる比色定量化学センサーとして機能した内容 をまとめた。

第8章では得られた結果のまとめと比色化学センサーの展望を「総括」としてまとめ た。

以上、本論文は全8章からなり、水を測定溶媒として使用し、簡便な実験操作でセン サーとしての能力を発揮できる系を考案し、その機能を評価したものである。

1-5. 参考文献

1) N. Kaura, S. Kumar, Colorimetric metal ion sensors, Tetrahedron 67 (2011) 9233-9264.

2) J. Wu, B. Kwon, W. Liu, E. Anslyn, P. Wang, J. Kim, Chromogenic/fluorogenic ensemble chemosensing systems, Chem. Rev. 115 (2015) 7893-7943.

3) D. Quang, J. Kim, Fluoro- and chromogenic chemodosimeters for heavy metal ion detection in solution and biospecimens, Chem. Rev. 110 (2010) 6280-6301.

4) A.M. Pyle, Ribozymes: a distinct class of metalloenzymes, Science 261(1993) 709-714.

5) E.L. Que, D.W. Domaille, C.J. Chang, Metals in neurobiology: probing theirchemistry and biology with molecular imaging, Chem. Rev. 108 (2008)1517–1549.

6) E. Beutler, V. Felitti, T. Gelbart, N. Ho, Genetics of iron storage and hemochromatosis, Drug Metab. Dispos. 29 (2001) 495-499.

7) G. Cairo, A. Pietrangelo, Iron regulatory proteins in pathobiology, Biochem. J. 352 (2000) 241-250.

8) D. Touati, Iron and oxidative stress in bacteria, Arch. Biochem. Biophys. 373 (2000) 1-6.

9) B. D'Autreaux, N. Tucker, R. Dixon, S. Spiro, A non-haem iron centre in the transcription factor NorR senses nitric oxide, Nature 437 (2005) 769-772.

10) P. Lieu, M. Heiskala, P. Peterson, Y. Yang, The roles of iron in health and disease, Mol.

Aspects Med. 22 (2001) 1-87.

(26)

20

11) J. Burdo, J Connor, Brain iron uptake and homeostatic mechanisms: an overview, BioMetals 16 (2003) 63-75.

12) J. Connor, S. Menzies, S. Martin, E. Mufson, Cellular distribution of transferrin, ferritin, and iron in normal and aged human brains, J. Neurosci. Res. 27 (1990) 595-611.

13) R. Wójciak, E. Mojs, M. Stanislawska-Kubiak, The occurrence of iron-deficiency anemia in children with type 1 diabetes, J. Investig. Med. 62 (2014) 865-867.

14) J. Simcox, D. McClain, Iron and diabetes risk, Cell Metab.17 (2013) 329-341.

15) O. Weinreb, S. Mandel, M. Youdim, T. Amit, Targeting dysregulation of brain iron homeostasis in Parkinson’s disease by iron chelators, Free Radic. Biol. Med. 62 (2013) 52-64.

16) S. Torti, F. Torti, Iron and cancer: more ore to be mined, Nat. Rev. Cancer 13 (2013) 342- 355.

17) E. Que, D. Domaille, C. Chang, Metals in neurobiology: probing their chemistry and biology with molecular imaging, Chem. Rev. 108 (2008) 1517-1549.

18) M. Dennis, P. Kolattukudy, A cobalt-porphyrin enzyme converts a fatty aldehyde to a hydrocarbon and CO, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89 (1992) 5306-5310.

19) C. Little, S. Aakre, M. Rumsby, K. Gwarsha, Effect of Co2+-substitution on the substrate specificity of phospholipase C from Bacillus cereus during attack on two membrane systems, Biochem. J. 207 (1982) 117-121.

20) A. Maiga, D. Dlallo, R. Bye, B. Paulsen, Determination of some toxic and essential metal ions in medicinal and edible plants from Mali, J. Agric. Food Chem. 53 (2005) 2316–2321.

21) K. Jomova, M. Valko, Advances in metal-induced oxidative stress and human disease, Toxicology 283 (2011) 65-87.

22) S. Okamoto, L. Eltis, The biological occurrence and trafficking of cobalt, Metallomics 3 (2011) 963-970.

23) A. Leonard, R. Lauwerys, Mutagenicity, carcinogenicity and teratogenicity of cobalt metal and cobalt compounds, Mutat. Res. 239 (1990) 17-27.

24) A. Seldén, C. Norberg, C. Stiber, E. Lindberg, Cobalt release from glazed earthenware:

observations in a case of lead poisoning, Environ. Toxicol. Pharmacol. 23 (2007) 129-131.

25) B. Tvermoes, B. Finley, K. Unice, J. Otani, D. Paustenbach, D. Galbraith, Cobalt whole blood concentrations in healthy adult male volunteers following two-weeks of ingesting a cobalt supplement, Food and Chemical Toxicology 53 (2013) 432-439.

26) M. Torkashvand, M. Gholivand, R. Azizi, Synthesis, characterization and application of a novel ion-imprinted polymer based voltammetric sensor for selective extraction and

(27)

21

trace determination of cobalt (II) ions, Sens. Actuators B 243 (2017) 283-291.

27) D. Quang, J. Kim, Fluoro- and chromogenic chemodosimeters for heavy metal ion detection in solution and biospecimens, Chem. Rev. 110 (2010) 6280-6301.

28) H, Sharma, N. Kaur, A. Singh, A. Kuwar, N, Singh, Optical chemosensors for water sample analysis, J. Mater. Chem. C 4 (2016) 5154-5194.

29) Y. Jeong, J. Yoon, Recent progress on fluorescent chemosensors for metal ions, Inorg.

Chim. Acta 381 (2012) 2-14.

30) S. Assaf, S. Chung, Release of endogenous Zn2+ from brain-tissue during activity, Nature 308 (1984) 734-736.

31) A. Bush, W. Pettingell, G. Multhaup, M. Paradis, J. Vonsattel, J. Gusella, K. Beyreuther, C. Masters, R. Tanzi, Rapid induction of Alzheimer A beta amyloid formation by zinc, Science 265 (1994) 1464-1467.

32) M. Cuajungco, G. Lees, Zinc metabolism in the brain: relevance to human neurodegenerative disorders, Neurobiol. Dis. 4 (1997) 137-169.

33) M. Onis, E. Frongillo, M. Blcssner, Is malnutrition declining? An analysis of changes in levels of child malnutrition since 1980, Bull W H O 78 (2000) 1222-1233.

34) C. Walker, R. Black, Zinc and the risk for infectious disease, Annu. Rev. Nutr. 24 (2004) 255-275.

35) H. Wang, C. Sun, Y. Yue, F. Yin, J. Jiang, H. Wu, H. Zhang, New molecular probe for the selective detection of zinc ion, Analyst 138 (2013) 5576-5579.

36) Z. Wood, E. Schroder, J. Harris, L. Poole, Structure, mechanism and regulation of peroxiredoxins, Trends Biochem. Sci. 28 (2003) 32-40.

37) R. Lill, U. Mühlenhoff, Iron–sulfur protein biogenesis in eukaryotes: components and mechanisms, Annu. Rev. Cell Dev. Biol. 22 (2006) 457-486.

38) A. Mudipalli, Lead hepatotoxicity & potential health effects, Indian J. Med. Res. 126 (2007) 518-527.

39) J. Zhu, U. Yu, J. Li, J. Zhao, Colorimetric detection of lead(II) ions based on accelerating surface etching of gold nanorods to nanospheres: the effect of sodium thiosulfate, RSC Adv. 6 (2016) 25611-25619.

40) N. Busschaert, C. Caltagirone, W. Rossom, P. Gale, Applications of supramolecular anion recognition, Chem. Rev. 115 (2015) 8038-8155.

41) R. Duke, E. Veale, F. Pfeffer, P. Kruger, T. Gunnlaugsson, Colorimetric and fluorescent anion sensors: an overview of recent developments in the use of 1,8-naphthalimide-based chemosensors, Chem. Soc. Rev. 39 (2010) 3936-3953.

(28)

22

42) A. Jajoo, A. Sahay, P. Singh, S. Mathur, S. Zharmukhamedov, V. Klimov, S. Allakhverdiev, S. Bharti, Elucidating the site of action of oxalate in photosynthetic electron transport chain in spinach thylakoid membranes, Photosynth. Res. 97 (2008) 177-184.

43) S. Marengo, A. Romani, Oxalate in renal stone disease: the terminal metabolite that just won’t go away, Nat. Clin. Pract. Nephrol 4 (2008) 368-377.

44) L. Costello, R. Franklin, Prostatic fluid electrolyte composition for the screening of prostate cancer: a potential solution to a major problem, Prostate Cancer Prostatic Dis.

12 (2009) 17-24.

45) J. Hughes, R. Norman, Diet and calcium stones, Can. Med. Assoc. J. 146 (1992) 137-142.

46) R. Holmes, H. Goodman, D. Assimos, Contribution of dietary oxalate to urinary oxalate excretion, Kidney International 59 (2001) 270-276.

47) W. Robertson, M. Peacock, The cause of idiopathic calcium stone disease: Hypercalciuria or hyperoxaluria? Nephron 26 (1980) 105-110.

48) I. Al-Wahsh, H. Harry, R. Palmer, M. Reddy, L. Massey, Oxalate and phytate of soy foods, J. Agric. Food Chem. 53 (2005) 5670-5674.

49) M. Rhaman, F. Fronczek, D. Powell, M. Hossain, Colourimetric and fluorescent detection of oxalate in water by a new macrocycle-based dinuclear nickel complex: a remarkable red shift of the fluorescence band, Dalton Trans 43 (2014) 4618-4621.

50) C. Pundir, M. Sharma, Oxalate biosensor: a review, J. Scientific & Industrial Research 69 (2010) 489-494.

51) A. Cooper, Biochemistry of sulfur containing amino acids, Ann. Rev. Biochem. 52 (1983) 187-222.

52) Z. Wood, E. Schroder, J. Harris, L. Poole, Structure, mechanism and regulation of peroxiredoxins, Trends Biochem. Sci. 28 (2003) 32-40.

53) R. Lill, U. Mühlenhoff, Iron–sulfur protein biogenesis in eukaryotes: components and mechanisms, Annu. Rev. Cell Dev. Biol. 22 (2006) 457-486.

54) E. Weerapana, C. Wang, G. Simon, F. Richter, S. Khare, M. Dillon, D. Bachovchin, K.

Mowen, D. Baker, B. Cravatt, Quantitative reactivity profiling predicts functional cysteines in proteomes, Nature 468 (2010) 790-795.

55) T. Dalton, H. Shertzer, A. Puga, Regulation of gene expression by reactive oxygen, Annu.

Rev. Pharmacol. Toxicol. 39 (1999) 67-101.

56) G. Chai, X. Jiang, Z. Ni, A. Xie, X. Cheng, Q. Wang, J. Wang, G. Liu, Betaine attenuates Alzheimer-like paphological changes and memory dificits induced by homocysteine, J.

Neurochem. 124 (2013) 388-396.

(29)

23

57) X. Wang, M. Cynader, Pyruvate released by astrocytes protects neurons from copper- catalyzed cysteine neurotoxicity, J. Neurosci. 21 (2001) 3322-3331.

58) Y. Go, D. Jones, Cysteine/cystine redox signaling in cardiovascular disease, Free Radic.

Biol. Med. 50 (2011) 495-509.

59) P. Moreira, P. Harris, X. Zhu, M. Santos, C. Oliveira, M. Smith, G. Perry, Lipoic acid and N-acetyl cysteine decrease mitochondrial-related oxidative stress in Alzheimer disease patient fibroblasts, J. Alzheimer’s Dis. 12 (2007) 195-206.

60) K. Ahmed, M. Sengan, S. Kumar, A. Veerappan, Highly selective colorimetric cysteine sensor based on the formation of cysteine layer on copper nanoparticles, Sens. Actuators B 233 (2016) 431-437.

61) K. Wallace, M. Gray, Z. Zhong, V. Lynch, M. E. Anslyn, An artificial siderophore for the detection of iron(III), Dalton Trans. 14 (2005) 2436-2441.

62) P. Suresh, I. Azath, K. Pitchumani, Naked-eye detection of Fe3+ and Ru3+ in water:

colorimetric and ratiometric sensor based on per-6-amino-β-cyclodextrin/p-nitrophenol, Sens. Actuators B 146 (2010) 273-277.

63) Z. Liang, C. Wang, J. Yang, H. Gao, Y. Tian, X. Tao, M. Jiang, A highly selective colorimetric chemosensor for detecting the respective amounts of iron(II) and iron(III) ions in water, New J. Chem. 31 (2007) 906-910.

64) Y. Zeng, G. Zhang, D. Zhang, D. Zhu, A dual-function colorimetric chemosensor for thiols and transition metal ions based on ICT mechanism, Tetrahedron. 49 (2008) 7391-7394.

65) S. Wu, K. Du, Y. Sung, Colorimetric sensing of Cu(II): Cu(II) induced deprotonation of an amide responsible for color changes, Dalton Trans. 39 (2010) 4363-4369.

66) N. Kaur, S. Kumar, Single molecular colorimetric probe for simultaneous estimation of Cu2+ and Ni2+, Chem. Commun. (2007) 3069-3070.

67) T. Ghosh, B. Maiya, A. Samanta, A colorimetric chemosensor for both fluoride and transition metal ions based on dipyrrolyl derivative, Dalton Trans. (2006) 795-801.

68) Z. Xu, G. Kim, S. Han, M. Jou, C. Lee, I. Shin, J. Yoon, An NBD-based colorimetric and fluorescent chemosensor for Zn2+ and its use for detection of intracellular zinc ions, Tetrahedron 65 (2009) 2307-2312.

69) A. Caballero, A. Espinosa, A. Tarranga, P. Molina, Synthesis, electrochemical, and optical properties of linear homo- and heterometallocene triads, Org. Chem. 7 (2007) 6924-6937.

70) E. Ranyuk, C. Douaihy, A. Bessmertnykh, F. Denat, A. Averin, L. Beletskaya, R. Guilard, Diaminoanthraquinone-linked polyazamacrocycles: efficient and simple colorimetric

(30)

24

sensor for lead ion in aqueous solution, Org. Lett. 11 (2009) 987-990.

71) K. Lee, X. Chen, W. Fang, J. Kim, J. Yoon, A dual colorimetric and fluorometric sensor for lead ion based on conjugated polydiacetylenes, Macromol. Rapid Commun. 32 (2011) 497-500.

72) J. Kwon, Y. Jang, Y. Lee, K. Kim, M. Seo, W. Nam, J. Yoon, A highly selective fluorescent chemosensor for Pb2+, J. Am. Chem. Soc. 127 (2005) 10107-10111.

73) P. Mateus, R. Delgado, P. Brandão, V. Félix, Recognition of oxalate by a copper(II) polyaza macrobicyclic complex, Chem. Eur.J. 17 (2011) 7020-7031.

74) M. Sayah, A. Abdalla, M. Shehab, A dansyl-based optical probe for detection of singly and doubly charged anions, Supramol. Chem. 28 (2016) 224-230.

75) C. He, X. Qian, Y. Xu, C. Yang, L. Yin, W. Zhu, A ratiometric fluorescent probe for oxalate based on alkyne-conjugated carboxamidoquinolines in aqueous solution and imaging in living cell, Dalton Trans. 40 (2011) 1034-1037.

76) D. Zhang, Highly Selective Colorimetric Detection of Cysteine and Homocysteine in Water through a Direct Displacement Approach, Inorg. Chem. Commun. 12 (2009) 1255-1258.

77) M. Hu, J. Fan, H. Li, K. Song, S. Wang, G. Cheng and X. Peng, Communication Fluorescent chemodosimeter for Cys/Hcy with a large absorption shift and imaging in living cells, Org. Biomol. Chem. 9 (2011) 980-983.

78) H. Jung, K. Ko, G. Kim, A. Lee, Y. Na, C. Kang, J. Lee, J. Kim, Coumarin-based thiol chemosensor: synthesis, turn-on mechanism, and its biological application, Org. Lett. 13 (2011) 1498-1501.

(31)

25

2

章 ピロガロールレッド、高分子電解質及び金属キレート剤による水溶液 中の

Fe

2+

Fe

3+の比色検出

(32)

26 2.1 研究背景

重金属イオンや遷移金属イオンを選択的かつ定量的に検出することは分析化学の重 要な分野の1つであり、それらを検出する方法は発展を遂げてきた。これらのイオンの 多くは生体内で生命を維持するための種々の化学反応に必要不可欠である。それらの作 用機構を明らかにすることで、医療分野への応用がされてきた1-3。これらの金属イオン の多くは必須微量元素として生体反応において多くの重要な役割を果たしている。一例 を挙げると、鉄は血液中のヘモグロビンの中に存在し、酸素輸送、細胞内での種々の代 謝反応、さらに酵素反応に関係していることが挙げられる4-7。ヒトの体の中で鉄のバラ ンスが崩れると致命的な病気を引き起こすことになる8-10。中枢神経系の過剰量の鉄は、

パーキンソン病やアルツハイマー病など多くの神経系の病気やがんの発症と密接に関 わっている。逆に鉄が欠乏すると、肝臓、腎臓および心臓に大きなダメージを与え、糖 尿病や貧血を引き起こす原因ともなっている11-14。さらに生体反応の重要な酸化還元反 応の1つとして、鉄にはFe2+とFe3+の2つの異なった酸化状態が存在している15。従っ て、Fe2+とFe3+を水溶液中で検出することは非常に重要である。

現在までに、原子吸光、蛍光測定法、電気化学的な手法などで、微量の鉄イオンを検 出できるようになっている16-20。しかし、これらの方法は複雑な手順や高価な機械が必 要であり、必ずしも簡単で、便利な分析方法とは言えない。一方、比色分析法は単純で 利便性が高いうえに、高価な分析機器を使わずに可視波長領域で色の変化を視認するこ とで標的物質を決定することができる21。しかし、Fe2+とFe 3+を検出する化学センサー に関する多くの研究報告では、化学センサー分子が難水溶性で、複雑な合成手順を必要 とするという欠点がある22-24。現在報告されているFe2+とFe 3+を検出するための化学セ ンサーで完全に水溶液中で使用できるものは非常に少ない25,26。このため、簡単な操作 で、かつ安価、さらに水溶液中でFe2+とFe3+を検出することができる比色分析化学セン サーの開発が待たれている。

ピロガロールレッド(PR)は購入可能な水溶性トリフェニルメタン構造を持つ色素で あり、分光光度法を用いた分析に用いられてきた。PR は各種金属イオンを含んだタン

(33)

27

パク質や金属イオンの定量化に用いられている27-29。Scheme 2-1に示すように、PRの 化学構造は3つのヒドロキシル基と1つのカルボニル基を持っており、この構造が種々 の金属イオンと安定なキレートを形成する30,31。PRは水溶液中で可視領域に強い吸収帯 を示す。また、4つの異なるpKa値(2.6、6.3、9.8、11.9)を有することが知られてい る32。PR の吸収スペクトル及び金属イオンに対するキレート能は、pH に大きく影響を 受ける30

Scheme 2-1. PR、PDADMAC、HEDTAの化学構造式

購入可能なPDADMACは、分子骨格上に第4級アンモニウム基を有する水溶性カチオン 高分子電解質である33,34。PDADMACは、凝固剤、生体触媒、高分子電解質複合体形成を 利用したナノ材料などの多くの生物学的および工業的用途に広く使用されている35。ま た、PDADMACは安定的なカチオン電荷を有するため、静電引力によりアニオン性色素と 結合する。その時、アニオン性色素は会合体を形成するため、色素分子同士が相互作用 し、それらの分光学的特性及び金属イオン結合能などの変化をもたらす36

金属キレート剤は、金属イオンとの錯体形成によって金属イオンを感知するためのイ オン選択性の改善のためのマスキング剤として使用されている37,38。EDTAは、多くの金 属イオンとキレートを形成のため、最も一般的なキレート剤として利用される。しかし、

一方で特定の金属イオンを補足し、キレート化することは困難である39。このため、キ レート形成能の特異性を改善するため、HEDTAが開発された40。HEDTAは、3つのカルボ キシル基、1つのヒドロキシル基および2つのアミノ基を持ち、Cu2+、Cd2+、Hg2+、Ni2+お よび Zn2+などの様々な金属イオンとキレートを形成する能力を有するポリアミノカル

(34)

28 ボン酸である41,42

本章では、PR、PDADMACおよびHEDTAの3種混合系が水溶液中でFe2+およびFe3+を選 択的に認識し比色定量できることを報告する。

2.2 実験

2.2.1 使用した試薬と機器

PRとPDADMAC(20wt%水溶液、MW = 100,000〜200,000)は、同仁化学研究所とシグ マ-アルドリッチからそれぞれ購入した。PDADMAC 濃度は、繰り返し単位の濃度として 定義した。HEDTAは東京化成工業から購入した。CuCl2、PbCl2、NiCl2、HgCl2、CdCl2、CoCl2、 MgCl2・6H2O、CrCl3・6H2Oは、ナカライテスクから購入した。ZnCl2、LiCl、KCl、BaCl2、 FeCl2・4H2O、FeCl3・6H2Oは和光純薬工業から購入した。NaCl、CaCl2、MnCl2・4H2Oおよ びAlCl3・6H2Oは関東化学株式会社から購入した。これらの試薬は、精製せずにそのま ま使用した。吸収スペクトルは、1.0 cmセルを用いてJasco V-530分光光度計で記録 した。写真はオリンパス Stylus TG-4デジタルカメラを用いて撮影した。

2.2.2 測定

2.2.2.1 吸収スペクトル

鉄イオン濃度依存性の測定においては、40μM のPR、200μM のPDADMAC、650μM の HEDTAを含む3 mLの酢酸緩衝液(pH 5.0、10 mM)に様々な容量の10 mMのFe2+やFe3+

水溶液を加えることによって試料を調製し、5分間放置後、溶液の色変化を確認し、吸 収スペクトルを室温で測定した。金属イオンの選択性を評価する実験では、40μM のPR、

200μM のPDADMAC、650μM のHEDTA、40μMの各金属イオン濃度を含む3 mLの酢酸緩 衝液(pH 5.0、10 mM)を調製し、吸収スペクトルを測定した。他の金属イオンが共存 している状態での鉄イオン認識性を評価した実験では、40μM のPR、200μM のPDADMAC、

650μM のHEDTA、40μMのFe2+やFe3+、40μMの各金属イオン濃度を含む3 mLの酢酸緩 衝液(pH 5.0、10 mM)を調製し、吸収スペクトルを測定した。

(35)

29 2.2.2.2 Job's プロット

200μM のPDADMAC、650μM のHEDTAを含む酢酸緩衝液(pH 5.0、10 mM)にPRと鉄 イオンを種々のモル比で添加し5分間放置後、吸収スペクトルを測定した。Job's プロ ットは、横軸 PRのモル分率、縦軸 600 nmにおけるΔA(鉄イオン添加前後の吸光度の 差)で作成した43

2.2.2.3 検出限界(LOD)

S/N比を測定するために、鉄イオンを含まない PRの吸収スペクトルを 10回測定し、

吸光度の標準偏差(σ)を計算した。定量線の傾きを得るため、鉄イオン濃度に対する

600 nmでの吸光度を測定し、その傾きをkとした。検出限界は次式で求めた。

LOD = 3σ/ k

2.2.2.4 結合定数

PRと鉄イオンがn:mで錯体を形成する場合、その結合定数(K)は次の式(Li式)で計 算することができる。

1/(n[PR]Tn−1[Fe2+ or Fe3+]m) = K·α2/(1-α)

[PR]Tは PR の初期濃度、[PR]は鉄イオンと結合していない PR の濃度である。αは、

[PR]Tと[PR]の比率である(α= [PR]/[PR]T)。

この場合、αは、α=(A-A)/(A-A0)として表すことができ、Aは鉄イオン存在下 での最大吸光度であり、A0は鉄イオン未添加で測定された吸光度である。Aは鉄イオン を 濃 度 変 化 さ せ た と き 記 録 さ れ た 吸 光 度 で あ る 。K は 、 α2/(1-α)に 対 す る 1/(n[PR]Tn−1[Fe2+ or Fe3+]m)の直線の傾きから求めることができる44

2.3 結果と考察

PDADMAC(200μM)およびHEDTA(600μM)の存在下と非存在下において、種々の金属

(36)

30

イオンの添加しPR(40μM)の比色検出能力を検証した。PDADMACおよびHEDTAの非存 在下でPR溶液に1当量のAl3+、Cu2+、Fe2+、Fe3+、Pb2+(40μM)を加えた場合、溶液の色 はAl3+では橙色から赤色に変わり、Cu2+、Fe2+とFe3+では紫色、Pb2+では薄いピンク色で あった(Fig. 2-1a)。しかし、HEDTA存在下で、これらの5つの金属イオンをPR溶液 に添加しても色の変化はなかった(Fig. 2-1b)。この条件下では、HEDTAがこれらの5 つの金属イオンを完全にマスキングしていることがわかった。金属イオンを加えずにPR

にPDADMACを添加し、PDADMACの役割を確認した。この結果、溶液はオレンジ色から赤

色に変化し、PDADMAC が陽イオン性高分子電解質としてはたらき、アニオン性 PR が会 合体を形成していることが示された(Fig. 2-1c)。HEDTAの非存在下でPDADMACを加え たPR溶液に各金属イオンを添加すると、Fe2+、Fe3+のを加えたときは赤色から青色に変 化し、Al3+、Cu2+、Pb2+を加えたときは赤色から紫色に変化した(Fig. 2-1c)。Fe2+とFe3+

に対する選択性を高めるために、HEDTA を使用すると、Al3+、Cu2+、Pb2+に対してマスキ ング剤として作用していることがわかった(Fig. 2-1d)。一方、PDADMACを添加すれば、

HEDTAの存在下でもFe2+とFe3+を認識した。これらの結果から、PR、PDADMAC、HEDTAを 組み合わせることによって、水溶液中で Fe2+、Fe3+を選択的に認識し、視認できる化学 センサーとなる可能性が示された。

金属イオンを加えずにPR溶液の吸収スペクトルを測定したところ、545 nmに吸収 極大が現れた。Fe2+およびFe3+を添加すると545 nmの吸収極大が減少し、新しく575 nmに吸収極大が現れた(Fig. 2-2)。一方、Fe2+とFe3+を除く他の金属イオンを添加し ても、吸収スペクトルに大きな変化を観測できなかった。

(37)

31

Fig. 2-1. 種々の金属イオン(40μM)をpH 5.0の10 mM酢酸緩衝液に添加したと きの PR(40μM)の写真、(a)PDADMAC、HEDTA ともに加えない状態、(b)650μM の HEDTAを加えた状態、(c)200μMのPDADMACを加えた状態、(d)200μMのPDADMACお よび650μMのHEDTA両方を加えた状態

Fig. 2-2. 10 mM 酢酸緩衝液(pH 5.0)中に種々の金属イオン(40μM)の存在下で PDADMAC(200μM)およびHEDTA(650μM)を含むPR(40μM)の吸収スペクトル

(38)

32

PDADMAC、HEDTA存在下でのPRのFe2+、Fe3+への結合特性を明らかにするため、水溶液 中で吸収滴定実験を行った(pH 5.0)。溶液のFe2+濃度を上げていくと、545 nmの吸収度 は徐々に減少し、600 nmの吸収度が増加し、 0.5当量のFe2+を加えたときに飽和に達 した(Fig. 2-3a)。吸収スペクトルの変化に関して、Fe3+はFe2+とほぼ同一結果になっ た。(Fig. 2-3c)。600 nmでの吸光度をFe2+、Fe3+濃度の関数としてそれぞれプロットし た。Fe2+および Fe3+の濃度範囲0-10μM 内で良好な直線関係があり(最小二乗法により それぞれR2 = 0.994および0.995と求められた。)、Fe2+およびFe3+検出システムの定量 的検出に適していることを意味した。グラフの傾きから線形最小二乗法によりkを計算 した。その値はFe2+に対してk=3.61×104、Fe3+に対してk=3.53×104であった。S/N比 を評価するため、σ値は2.09×10-3と算出された。 これらの結果から、Fe2+およびFe3+

の検出限界は、それぞれ0.174μMおよび0.178μMとなった。これらの値は、WHOが推 奨する飲料水中の鉄の許容限度(5.36μM)をはるかに下回る値であった45。また、Fig.

2-3bおよび2-3dに示すように、0〜20μM へとFe2+、Fe3+濃度が増加するとともに、赤 色から紅色、紫色、青色へと変化し、裸眼でのFe2+およびFe3+の検出限界は、5μMなり、

許容限度(5.36μM)よりもわずかに低かった。これらの結果から、これらの検出シス テムが飲料水中の鉄イオンを検出可能であり、Fe2+および Fe3+に対して高い選択性およ び感度を示し、鉄イオンに対する有用な化学センサーして役立つことがわかった。

PRとFe2+との複合体形成の割合を確認するために、PRとFe2+の濃度の合計を一定(40 μM)に保ち、PRとFe2+のモル比を変えて Job'sプロットを行った。Fig. 2-4aに示すよ うに、600 nmでの吸光度の変化を PRのモル分率0.1~1.0に対してプロットすると、

最大吸収変化がPR のモル分率が0.70に近いときに現れ、これはPR:Fe2+が2:1で複合 体を形成することを示している。この結合比は、Fig. 2-3 の結果と一致した。また、

Fig. 2-4bに示すように、Fe2+と同様に、PRとFe3+でJob'sプロットを行い、2:1で複合 体を形成することがわかった。吸収スペクトルのデータから、Li 式を用いてプロット し、Fe2+および Fe3+とPRの結合定数が、それぞれ1.31×109および1.29×109と計算し

(39)

33

た(Fig. 2-5)。これらの値は、過去に報告された鉄イオン化学センサーの値の範囲内

にあった46,47

Fig. 2-3. (a)10 mM酢酸緩衝液(pH5.0)中で、PDADMAC(200μM)およびHEDTA(650 μM)を含むPR(40μM)吸収スペクトルのFe2+濃度依存性(0,2,4,6,8,10,12,14,16,20,26 μM)。挿入図:Fe2+濃度を変化させたときの600 nmの吸光度変化、(b) Fe2+濃度を変化 させた時の溶液の色変化、(c)10 mM酢酸緩衝液(pH5.0)中で、PDADMAC(200μM)およ び HEDTA(650μM) を 含 む PR(40μM) 吸 収 ス ペ ク ト ル の Fe3+濃 度 依 存 性

(0,2,4,6,8,10,12,14,16,20,26μM)、挿入図:Fe3+濃度を変化させたときの600 nmの 吸光度変化、(d) Fe3+濃度を変化させた時の溶液の色変化

(40)

34

Fig. 2-4. (a) 10 mM酢酸緩衝液(pH 5.0)中、PDADMAC(200μM)およびHEDTA(650μM) を含むPR とFe2+のJob'sプロット。 [PR] + [Fe2+]の全濃度を40μMで一定に保った。

ΔAは、Fe2+を加える前と加えた後の吸光度の差を示す。(b)10 mM酢酸緩衝液(pH 5.0) 中、PDADMAC(200μM)およびHEDTA(650μM)を含むPR とFe3+のJob'sプロット。 [PR]

+ [Fe3+]の全濃度を40μMで一定に保った。ΔAは、Fe3+を加える前と加えた後の吸光度 の差を示す

Fig. 2-5. PRの鉄イオンに対するLiプロット(600nmでの吸光度)、(a)PRとFe2+が 2:1で複合体を形成すると仮定、(b)PRとFe3+が2:1で複合体を形成すると仮定

(41)

35

Fig. 2-6. (a) 10 mM酢酸緩衝液(pH5.0)中での種々の金属イオン(40μM)の存在下 で、PDADMAC(200μM)およびHEDTA(650μM)を含むPR(40μM)のFe2+(40μM)に対 する選択性、(b) 10 mM酢酸緩衝液(pH5.0)中での種々の金属イオン(40μM)の存在下 で、PDADMAC(200μM)およびHEDTA(650μM)を含むPR(40μM)のFe3+(40μM)に対 する選択性

参照

関連したドキュメント

This hypothesis was experimentally demonstrated in an ionic DA chain synthesized from a redox-active paddlewheel [Ru 2 II,II ] complex and TCNQ derivative by doping with a

氏名 学位の種類 学位記番号 学位授与の日付 学位授与の要件 学位授与の題目

学位の種類 学位記番号 学位授与の日付 学位授与の要件 学位授与の題目

氏名 学位の種類 学位記番号 学位授与の日付 学位授与の要件 学位授与の題目

氏名 学位の種類 学位記番号 学位授与の日付 学位授与の要件 学位授与の題目

The result demonstrates the capability of 3D-SFM to visualize complicated inhomogeneous molecular adsorption structure and its effectiveness in various research fields on

学位の種類 学位記番号 学位授与の日付 学位授与の要件

氏名 小越康宏 生年月日 本籍 学位の種類 学位記番号 学位授与の日付 学位授与の要件 学位授与の題目..