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木材粉じんによる発がんに関する欧米における規制等の状況

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Academic year: 2021

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木材粉じんによる発がんに関する欧米における規制等の状況

研究代表者  堀江 正知

産業医科大学 産業生態科学研究所 産業保健管理学

堀江 正知1、川波 祥子1、權守 直紀1、横谷 俊孝1、佐久間 卓生1、 井上 嶺子2、道井 聡史3、寶珠山 務4

1産業医科大学 産業生態科学研究所 産業保健管理学、2同精神保健学、

3同作業関連疾患予防学、4牛深市民病院内科

研究要旨

欧米の職場における木材粉じんに関する労働衛生管理の実態について、現地の状況に 詳しい専門家から聞き取り調査を行った。EU及び北米においては、労働者の木材粉じ んへの曝露を低減するために、行政による規制値が設定され、技術指針の普及啓発活動 が行われていた。規制値については、吸引性粉じん(inhalable dust)又は総粉じん(total dust)を対象としており、アレルギー性の高い西洋赤杉(Western red cedar)は別の 基準を設けているところが多く、有害性の高いとされる硬材(hard wood)とそれ以外

の軟材(soft wood)を合わせて測定した濃度で基準を設けている国が多かった。また、

英国をはじめとして、曝露を低減するための技術指針の普及啓発活動も行政機関によっ て積極的に推進されていた。

A.研究目的

欧米の職場における木材粉じんに関す る労働衛生管理の実態について、現地の 状況に詳しい専門家から聞き取り調査を 行うことを目的とした。

B.研究方法

2016年1月30 日(土)に産業医科大 学産業生態科学研究所産業保健管理学研 究室において、Alex Chih-Yu Chen 氏

(Imperial College London)を招聘して、

EU 及び北米の職場における木材粉じん に関する労働衛生管理の実態に関する講 演(図1)を聴講し、その内容を取りまと

めた。硬材(hard wood)と軟材(soft wood) の区別に関する事項については抄録を和 訳した(図2)。

C.研究結果 1 はじめに

木材粉じんによる健康影響に関しては、

国際がん研究機関(IARC)によるヒトへ の発がん性評価がGroup 1で鼻腔がん、

副鼻腔がん、鼻咽頭がんを生じるとされ ているほか、、喘息をはじめとする呼吸器 のアレルギー反応を生じることがわかっ ている。その際、木材粉じんのうち軟材 に比べて、硬材の発がん性が大きいこと

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12 もわかっている。

硬材と軟材の主な相違点は、前者が被 子植物で広葉樹、後者が裸子植物で針葉 樹ということである。内部構造の違いと して、硬材には導管要素と孔があるが、

軟材にはそれらがなく、木材の断面を拡 大鏡で観察すれば確認できる。樹木の年 輪は、色が薄く見える早材と濃く見える 晩材の二つの部分から成り、早材は大き な導管を、晩材は小さな導管を含んでい る。年輪に含まれる導管孔の形態の違い から、硬材を、環孔硬材、半環孔硬材、

散孔硬材に分けることができ、この順で 導管孔の配列が密から粗となっている。

また、軟材には仮導管が備わっているが、

こちらは顕微鏡でも確認できないほど孔 が小さい。

2 EU及び北米の木材粉じんへの取組 EUのうちの15カ国で木材粉じん曝露 を有する労働者が300 万人いるとされ、

業種としては建設業が最多で100 万人を 含み、職種としては大工(carpenter)が 多い。そのうち、20万人(10%未満)の 労働者については、曝露濃度が EU の OEL(Occupational Exposure Limit、職 業曝露限界)である硬材の吸引性粉じん

(inhalable dust)量で5 mg/m3を超えて いることがわかっている。EUにおける曝 露評価は、WOODEX DATABASEにまと められており、国別の比較も可能である。

英国においては、COSHH(Control of Substances Hazardous to Health Regulation)により木材粉じんの労働衛 生管理が行わされており、使用者(契約 者を含む)はそれに従って適切で十分な リスクアセスメントを行い、過剰な曝露

の防止と適切な曝露制御の措置を取らな ければならないことになっている。そこ ではWEL(Workplace Exposure Limit、 職場曝露限界)を硬材と軟材を合わせた 吸引性粉じん量で5 mg/m3と定めていた。

職場における木材粉じんの曝露低減を目 的とする装置、工夫、作業手順など具体 的方法については、動画やパンフレット にまとめられ、HSE のウェブサイトや

YouTubeにより無料で閲覧可能である。

英国における労働者の健康影響につい ては、就業を開始する時と定期的な健康 診断(health surveillance)が行われて 観察がなされており、それぞれに質問紙 が作成されている。その際、GP(家庭医)

が健康影響を確認し、就業の可否などに ついて事業者に進言できる。また、職場 環境の改善についてはオキュペーショナ ル・ハイジニストが担当している。

米国においては、主として「すべての 粉じんには火災や爆発の危険がある」と する立場から、木材粉じん対策が推進さ れてきた。歴史的には木材粉じんに関す る安全衛生対策は防火対策から始まって おり、長い議論を経て、曝露濃度が提案 されるようになった。安全衛生庁(OSHA) は、PEL(permissible exposure limit) の8-hour TWA(8時間の時間加重平均値)

について、硬材と軟材を合せて 5 mg/m3 と し 、STEL(Short-Time Exposure Limits、短時間曝露限界)を 10 mg/m3 としている。ただし、西洋赤杉(Western red cedar)ついては、軟材であるが高度 なアレルギー誘発種であることから、

8-hour TWAを2.5 mg/ m3としている。

国立職業安全衛生研究所(NIOSH)は、

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13 総粉じんについて、REL(Recommended Exposure Level, 勧 告 曝 露 濃 度 ) を 1mg/m3 と し て い る 。 ま た 、ACGIH

( American Conference of Governmental Industrial Hygienists)は、

西洋赤杉(Western red cedar)の TLV

(Threshold Limit Value)を0.5 mg/m3 としている。

米国においては、過去10〜20 年間で、

木材粉じんへの曝露レベルは有意に低下 しつつあることがわかっている。米国の 職業性木材粉じんの標本調査によれば、

平均濃度は 1979 年の 4.59 mg/m3から 1999年の 0.14 mg/m3に減少している。

家 具 及 び 飾 り た ん す (Furniture and cabinet)の製造現場における曝露濃度が 最大と考えられており、特に、研磨及び 仕上げ工程で、発生する粒子が最も細か く、曝露濃度が最も高いと考えられてい る。

現実的な対策の要点として、不必要な 粉じんの吸入を避けること、皮膚障害に 注意すること、清掃することによる粉じ んの飛散や室内空気の撹拌をしないこと などが挙げられている。木材粉じん管理 の最も根幹をなす対策は局所排気装置に よる排気であり、フードの位置を粉じん 発散源に出来るだけ近接させ、木材加工 機械そのものの直上か、その機械に隣接 した位置に設置すべきである。局所排気 装置を設置すべき機械として、丸のこぎ り(circular saw)、平のこぎり(band saw)、長かんな(jointer)、かんな盤/鋳 造機(planer/moulder)、旋盤(lathe)、

研磨機(sander)、溝かんな(router)な どがあるとされている。

カナダにおいては、カナダ資源取引所

(CAREX Canada)が全国調査を実施し、

職域や地域の環境からのがん関連物質へ の曝露者数を推定している。その結果、

約 34 万人が木材粉じんへの職業曝露を 有するとされ、その 93%を男性が占めて いる。業種では建設業が最も多く、約16 万人が木材粉じんの曝露を受けている。

British Columbia(BC)州の労働者数は 13%であるが、同州に大規模で多様な製 材業及び木材生産業があり、労働人口の 20%近くに木材粉じんへの曝露がある。

カナダにおける規制は州ごとで異なる。

例えば、BC 州は OEL(Occupational Exposure Limit)をアレルギー誘発種又 は硬材について 1 mg/m3、その他の軟材 で2.5 mg/m3としているが、Quebec(QC) 州では西洋赤杉を2.5 mg/m3、その他を5 mg/m3としている。また、カナダ連邦政 府による統合法である Canada Labour Codeでは、西洋赤杉のOELは0.5 mg/m3、 その他が1 mg/m3とされている。

D.考察

EU及び北米においては、国や地域ごと に労働者の木材粉じんへの曝露を低減す るために行政機関が基準を設けて規制し ていた。アレルギー性の高い西洋赤杉だ けについては別の基準が設けられている ことが多く、有害性の高い硬材だけを対 象とした基準はEUが設けていたものの、

国別の基準としては多くなく、すべての 木材を対象とする基準が主流であった。

ちなみに、台湾においても木材粉じん曝 露を規制する勧告案が示されており、そ の規制の対象となる労働者を 10 年以上

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14 の職歴を有するものとしているというこ とであった。これらのことから、わが国 においても何らかの規制を検討する時期 に来ていると考えた。

英国やアメリカ合衆国においては、木 材粉じんへの曝露の低減化を推進するた めの技術指針等を広報しており、わが国 においても木材粉じんの曝露低減に向け た技術的な普及啓発の活動を推進するこ とが重要と考えた。

EU及び北米においては、木材粉じんに 曝露されている労働者数や実際の曝露濃 度を定量的に把握できる仕組みがあり、

電子データベースとして利用可能になっ ていた。そして、これを利用して行政施 策の効果を判定することが可能であった。

わが国においても連続的かつ定量的に職

場における曝露の実態を把握するための 仕組みが必要であると考えた。

E.結論

EU及び北米においては、労働者の木材 粉じんへの曝露を低減するために、行政 による規制値が設定され、技術指針の普 及啓発活動が行われていた。

F.健康危険情報 なし

G.研究発表 なし

H.知的財産権の出願・登録情報 なし

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図11 EU及び北米における木材粉じんの管理に関する及び北米における木材粉じんの管理に関する

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及び北米における木材粉じんの管理に関する

及び北米における木材粉じんの管理に関する及び北米における木材粉じんの管理に関する講演抄録講演抄録

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及び北米における木材粉じんの管理に関する講演抄録(続き)

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及び北米における木材粉じんの管理に関する講演抄録(続き)

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及び北米における木材粉じんの管理に関する講演抄録(続き)

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及び北米における木材粉じんの管理に関する講演抄録(続き)

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及び北米における木材粉じんの管理に関する講演抄録(続き)

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及び北米における木材粉じんの管理に関する講演抄録(一部和訳)

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