はじめに
本報告書は,平成27~28年度に実施された国立教育政策研究所のプロジェクト研究「小 学校英語教育に関する調査研究」の成果を取りまとめたものである。
本調査研究の趣旨・目的,手法
趣旨・目的
平成 23 年度より小学校において第 5・6 学年(高学年)で外国語活動が必修化された。ま た,平成26 年11月からは,中央教育審議会において,今後の学習指導要領等の改訂の方 向性として,外国語活動の実施学年の早期化や,高学年の外国語活動の教科化について検討 されることとなった。
そのような状況の中,研究開発学校(英語教育強化地域拠点校を含む。以下同じ)において,
低・中学年からの外国語教育の導入,また教科としての外国語教育を実施する等の研究がな され,更に教育課程特例校においても同様の実践の蓄積がなされていた。そこで,本研究で は,中央教育審議会での審議も踏まえつつ,教育課程特例校・研究開発学校の先進的な取組 の状況を把握分析することを試みた。把握分析に当たっては,特に英語教育を行う際に,現 場で有用な情報とされる①目標,②指導方法,③指導者(人材の育成と指導力の向上,外部 人材の活用を含む),④評価の四つの観点を中心に行った。
また,国内の先進的な教育委員会の取組や,学校の取組を実際に調査し,同時に諸外国の取 組事例について調査を行った。これらを基に,目標,指導法,指導者,評価の在り方の事例 を,小中連携の視点及び目標・指導・評価の一貫性といった視点から客観的な立場で課題の 整理分析を行うことで,小学校における外国語教育について有用な情報(エビデンス)や政策 への示唆を提供することを目的として,調査研究を行った。
手法
本調査研究の手法としては,①インターネット調査・質問紙調査(小学校外国語教育に関 する実態調査),②事例報告(国内の先進的な教育委員会の取組),③訪問調査(国内の学校の 取組,中国上海市の取組),④文献調査(諸外国の実施状況調査)を組合せる形で行った。
本報告書の構成
本報告書は,五つの章と資料から構成されている。
第1章では,小学校外国語教育に関する政策の最近の動向について記述する。
第2章では,教育課程特例校・研究開発学校に対して実施した「小学校外国語教育に関す る実態調査」の管理職調査・教員調査・児童調査の結果を報告する。
第 3 章では,小学校外国語教育の先進事例として,3県2市の教育委員会管下の取組を
紹介する。また,全国の教育課程特例校の中から訪問調査を行った学校の事例も紹介する。
第 4 章では,諸外国の小学校外国語教育の実施状況として,文献調査を行った中国,韓 国,台湾,タイ,ベトナム,フィンランドについて,外国語教育制度の変遷,教員の養成・
研修,教育目標,外国語教育担当教員等の観点から整理している。また,上海市訪問調査の 結果も記す。
第5章では,まとめとして,第2,3,4章それぞれの調査結果から得られる有用な知見 を整理し,政策への示唆を導くことを目指す。
資料としては,研究分担者一覧,活動記録,小学校外国語教育に関する実態調査の管理職・
教員調査の質問項目(Web調査の画面一覧),児童調査質問紙を掲載する。
いずれも各執筆者の専門性と経験に基づく報告で,小学校における外国語教育に携わる 関係の方々に御活用いただける内容となっている。
末筆ながら本調査研究に参加いただいた研究会メンバーの方々,御多用にもかかわらず 調査に協力いただいた学校,教育委員会そのほか関係者の皆様に心より感謝申し上げる。本 報告書が文部科学省や各都道府県・市町村における政策立案,並びに各学校における実践に 役立つことを願っている。
研究代表者 国立教育政策研究所 国際研究・協力部長 大野 彰子
目 次
はじめに
本調査研究の趣旨・目的,手法 ··· i
本報告書の構成 ··· ii
第1章: 小学校外国語教育に関する最近の動向
1-1 外国語活動の現状と課題 ··· 11-2 外国語活動の成果と課題を踏まえて ··· 3
第2章: 小学校外国語教育に関する実態調査 (教育課程特例校・研究開発学校)
2-1 はじめに ··· 72-2 管理職調査の結果 ··· 9
2-3 教員調査の結果 ··· 48
2-4 児童調査の結果 ··· 89
2-5 まとめ ··· 128
第3章: 県・市における先進事例
3-1 はじめに ··· 1303-2 岐阜県における取組 ··· 131
3-3 高知県における取組 ··· 136
3-4 広島県における取組 ··· 148
3-5 京都市における取組 ··· 167
3-6 鳴門市における取組 ··· 176
3-7 学校の取組 – 訪問調査から ··· 188
3-8 まとめ ··· 195
目 次
第4章: 諸外国の小学校英語教育の実施状況
4-1 中国 ··· 196
4-2 韓国 ··· 213
4-3 台湾 ··· 228
4-4 タイ ··· 239
4-5 ベトナム ··· 258
4-6 フィンランド ··· 268
4-7 訪問調査報告:上海の小学校英語教育 ··· 278
4-8 まとめ ··· 297
資料
研究組織 ··· 300活動記録 ··· 301
小学校外国語教育に関する実態調査管理職・教員Web調査画面一覧 ··· 305
小学校外国語教育に関する実態調査児童質問紙 ··· 338
第1章: 小学校外国語教育に関する最近の動向
平成29年2月に,文部科学省は,小学校及び中学校学習指導要領案を公表し,パブリッ クコメントを経て,同年3月に告示予定である。この「案」において,外国語教育は抜本的 改革が行われ,その一環として,小学校においては,中学年よりコミュニケーションを図る 素地となる資質・能力を養うため,外国語活動を年間35単位時間実施,高学年よりコミュ ニケーションを図る基礎となる資質・能力を養うため,教科として外国語を年間70単位時 間実施と記された。以下,ここに至るまでの経緯についてみることにする。
1-1 外国語活動の現状と課題
平成 20 年 3 月告示による小学校学習指導要領において,高学年に外国語活動が導入さ れ,本学習指導要領全面実施となった平成23年度から,今年度でちょうど6年が経つ。こ の間,小学校の先生方の御尽力により,外国語活動については,児童の学習意欲面で大きな 成果を挙げるとともに,課題もみえてきた。文部科学省は,平成27年2月に高学年児童,
小学校学級担任又は外国語活動を専門的に担当する教員,小学校管理職及び,中学1,2学 年生徒,中学校英語科担当教員,中学校管理職対象に意識調査を行った。そこで,児童,中 学校英語科担当教員,中学生対象の調査結果から,外国語活動の現状と課題をみてみる。
児童の 91.5%が「英語を使えるようになりたいと思う,どちらかといえばそう思う」と 回答しており,「英語を使ってしてみたいことは何か」という問いに,84.4%が「海外旅行 に行くこと」,77.1%が「外国の人と友達になること」,75.5%が「外国人と話すこと」
と回答している。このことから,多くの児童が,何のために英語を使うのかを描いているこ とがわかる。また,児童の 70.9%が「英語が好き,どちらかといえば好き」と回答している 一方で,10.9%が「英語が嫌い,どちらかといえば嫌い」と回答している。児童の 72.3%が
「英語の授業が好き,どちらかといえば好き」と回答している一方で,9.1%が「英語の授業 が嫌い,どちらかといえば嫌い」と回答している。このことから,学習意欲の面で成果を挙 げているものの,既に 1 割程度の児童が英語や外国語活動の授業に苦手意識を持っている ことが課題であることがわかる。
また,このような児童の様子に,小学校教員の 76.6%が「外国語活動実施前に比べて,
学級の児童に変容がとてもみられた,まあみられた」と回答しており,その具体の変容を問 うたところ,78.5%が「外国語の音声に慣れ親しんだ」,64.2%が「外国語の基本的な表現 に慣れ親しんだ」と回答している(複数回答可)。これらは,外国語活動の目標に設定され ている「言語や文化についての体験的理解」,「外国語への慣れ親しみ」,「コミュニケー ションへの積極性」という三つの柱のうちの,「外国語への慣れ親しみ」であるが,これは 三つの柱の内,児童の変容が他のものに比べ一番見えやすいためだと思われる。
中学校英語科担当教員及び,外国語活動を経験した中学 1 年生対象の調査結果は次のよ うである。中学校英語科担当教員の 65.3%が「外国語活動導入前と比べて変容がとてもみ
られた,まあみられた」と回答し,その具体の変容については,「英語の音声に慣れ親しん でいる」が 93.5%,「英語を使って積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度が育 成されている」が 92.6%,「英語で活動を行うことに慣れている」が 90.9%,「英語に対 する抵抗感が少ない」が 86.2%,「英語の基本的な表現に慣れ親しんでいる」が 85.8%,
「外国や異文化に対して興味を持っている」が 78.4%,「わからない単語などがあっても,
臆せず聞き続けたり聞き返したりしている」が 69.3%,「友達の前で,英語で発表するこ となどに慣れている」が 67.6%となっている。このことから,「外国語への慣れ親しみ」
「コミュニケーションへの積極性」に大きな成果が上がっていることがわかる。さらに,外 国語活動は「外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しむ」ことが目標であって,中学校以降 の英語教育のように英語の技能の定着を第一の狙いにはしていないものの,82.1%が「英語 を聞く力が高まっている」,63.2%が「英語を話す力が高まっている」と回答していること から,結果として英語を聞いたり話したりする力がついていることがわかる。
中学 1 年生に,「小学校の英語の授業でもっと学習しておきたかったと思いますか。」と 問うたところ,以下のような結果であった。「英単語を書くこと」については 83.7%,「英 語の文を書くこと」については 80.9%,「英単語を読むこと」については 80.1%,「英語の 文を読むこと」については 79.8%,「英語の発音を練習すること」については 74.6%,「英 語で簡単な会話をすること」72.6%,「英語で自分のことや意見を言うこと」については 69.3%,「友達や先生などが英語で話しているのを聞くこと 」については 64.6%,「みん なの前で英語で発表すること」については 62.9%,「日本語と英語の違いを知ること」56.7%
であった。さらに,「小学校の英語の授業で学んだことの中で,中学校の授業で役立ったこ とはありますか」という問いに,「アルファベットを読むこと」について 88.8%,「アルフ ァベットを書くこと」について 83.9%,「英語で簡単な会話をすること」について 82.8%,
「英語の発音を練習すること」について 75.8%,「友達や先生などが英語で話しているの を聞くこと」について 73.2%,「英単語を読むこと」について 72.9%,「日本語と英語の 違いを知ること」について 70.2%であった。このことから,外国語活動において音声中心 で学んだことが中学校でうまく生かされていないという小中連携が課題であることがうか がえる。
また,高学年児童対象に問うた「英語の授業の中で楽しいと思うことはどのようなことで すか」に対して,「外国のことについて学ぶこと」が 75.8%,「日本語と英語の違いを知る こと」が 71.4%,「英語で友達と会話すること」が 66.6%,「英語の発音を練習すること」
が 66.2%,「英語で友達や先生など人の意見を聞くこと」が 59.5%,「英語で外国人の先 生と会話すること」が 58.1%,「英語で自分のことや意見を言うこと」が 49.2%という結 果であった。「英語で自分のことや意見を言うこと」が楽しいと感じる児童が半数を切って いる上に,これに対して「あてはらまない・どちらかと言えばあてはまらない」と回答した 児童の割合は,21.3%と 2 割を超している。これらのことから,外国語活動が歌やゲームだ
て自分のことや意見を言えるよう細かなステップを踏んで十分に外国語の音声や基本的な 表現に慣れ親しませていないのではないかという課題が考えられる。
1-2 外国語活動の成果と課題を踏まえて
以上,外国語活動の成果と課題を,文部科学省実施による調査結果からみてきたが,実際,
中学校英語科教員からは,「入学してすぐに英語で授業を行っても,生徒がついてくる」「多 少わからない英語があっても,推測しながら理解しようとしている」「ALT 等に躊躇(ちゅ うちょ)なく話しかけたり,質問に答えたりしている」などの意欲面での成果を聞くことが ほとんどである。一方で,外国語活動の授業を参観すると,特に6年生後半では,外国語活 動の授業を 2 年近く受けて,いったい何ができるようになるのかに疑問を抱き始めている 様子がうかがえる。それは,外国語活動の目標にもある「外国語への慣れ親しみ」では,中 学校以降の英語教育のように英語の技能を身に付けて,英語を使って何ができるようにな るのかが児童に自覚しにくいことからであると考える。また,中学校英語科教員が小学校で どのような授業が展開されていて,生徒がどのような経験を重ねてくるのかを十分に理解 したうえで,中学校で指導に当たっているとは言い切れない現状もある。そのような中,小 学校における外国語教育について次のような経緯(けいい)で,平成29年3月告示予定の小 学校学習指導要領において中学年外国語活動,高学年教科としての外国語導入という新し い段階を迎えることとなった。
1) 平成 25 年教育再生実行会議第三次提言・第二期教育基本振興計画
平成25年5月,教育再生実行委員会議が第三次提言「これからの大学教育等の在り方に ついて」において,初等中等教育段階からグローバル化に対応した教育を充実するとして,
小学校における英語学習の抜本的拡充(実施学年の早期化,指導時間増,教科化,専任教員 配置等)や中学校における英語による英語授業の実施,初等中等教育を通じた系統的な英語 教育について学習指導要領の改訂も視野に入れ,諸外国の事例も参考にしながら検討する ことが提言された。さらに,同年6月には,第二期教育基本振興計画において,外国語教育 の抜本的強化が示された。
2) 平成 25 年 12 月「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」
上記を受けて,平成25年12月13日に文部科学省は,初等中等教育段階からグローバル 化に対応した教育環境づくりを進めるため,小学校における英語教育の拡充強化,中・高等 学校における英語教育の高度化など,小・中・高等学校を通じた英語教育全体の抜本的充実 を図るとして,小学校中学年に「活動型」週1~2コマ程度,高学年に「教科型」モジュー ルを含めて週3コマ程度を実施し,初歩的な英語の運用能力を養う計画を公表した。また,
本計画では,2020 年(平成 32 年)開催予定の東京オリンピック・パラリンピックを見据 え,新たな英語教育が本格展開できるように,平成26年から逐次,改革を推進することと
した。
3) 平成 26 年「今後の英語教育の改善・充実方策について ~グローバル化に対応した英 語教育改革の五つの提言~(報告)」
上記を受けて,文部科学省は,平成26年2月に「英語教育の在り方に関する有識者会議」
を設置し,上記計画に示された方向性についての具体化に向けて,専門的な見地から検討を 行った。そして,その審議のまとめが,同年9月26日「今後の英語教育の改善・充実方策 について ~グローバル化に対応した英語教育改革の五つの提言~(報告)」として取りま とめられた。この五つの提言は以下であるが,これらの提言がなされたのは,次のような背 景によるものである。グローバル化の進展の中で,国際共通語である英語力の向上は,日本 の将来にとって極めて重要であること。今後の英語教育改革においては,その基礎的・基本 的な知識・技能と,それらを活用して主体的に課題を解決するために必要な思考力・判断力・
表現力等の育成は重要な課題であること。我が国の英語教育は,現行の学習指導要領を受け た改善も見られるが,特にコミュニケーション能力の育成について更なる改善を要する課 題も多いことによるものであるが,この改革は,東京オリンピック・パラリンピックを迎え る2020(平成32)年を見据え,小・中・高等学校を通じた新たな英語教育改革を順次実施 できるよう検討を進め,並行して,これに向けた準備期間の取組や,先取りした改革を進め ることとしている。
改革1 国が示す教育目標・内容の改善 改革2.学校における指導と評価の改善
改革3.高等学校・大学の英語力の評価及び入学者選抜の改善 改革4.教科書・教材の充実
改革5.学校における指導体制の充実
提言されたこれら五つの改革の中で,小学校外国語教育の枠組みに関して,中学年から外 国語活動を開始し,音声に慣れ親しませながらコミュニケーション能力の素地を養うとと もに,言葉への関心を高める。高学年では身近なことについて基本的な表現によって「聞く」
「話す」ことなどに加え,「読む」「書く」の態度の育成を含めたコミュニケーション能力の 基礎を養い,学習の系統性を持たせるため教科として行うことが求められるとした。しかし,
その時数については,その後の審議にゆだねられた。また,その上で,次期学習指導要領で は,小・中・高を通して①各学校段階の学びを円滑に接続させる,②「英語を使って何がで きるようになるか」という観点から一貫した教育目標(4技能に係る具体的な指標の形式の 目標を含む)を示す(具体的な学習到達目標は各学校が設定)こととした。さらに,小学校 高学年で教科化する場合について,教材や,その指導者の指導力向上のための方策について も提言がなされた。
さらに,この提言と同時並行で,平成26 年4月より,「英語教育強化地域拠点事業」が
4) 平成 26 年 11 月文部科学大臣による諮問・平成 27 年中央教育審議会企画特別部会によ る「論点整理」
平成26 年11 月に,文部科学大臣により「初等中等教育における教育課程の基準等の在 り方について」諮問が行われた。この諮問文においては,小学校外国語教育について,「英 語教育の在り方に関する有識者会議」の報告書においてまとめられた提言も踏まえつつ,小 学校から高等学校までを通じて達成を目指すべき教育目標を,「英語を使って何ができるよ うになるか」という観点から,4技能に係る一貫した具体的な指標の形式で示すこと,小学 校では,中学年から外国語活動を開始し音声に慣れ親しませるとともに,高学年では,学習 の系統性を持たせる観点から教科として行い,身近で簡単なことについて互いの考えや気 持ちを伝え合う能力を養うことについて検討が求められた。
これを受けて,中央教育審議会では,次期学習指導要領に向けて本格的に審議が開始され,
その下に設置された教育課程企画特別部会にて,改訂の基本的な考え方が翌年,平成27年 8月に「論点整理」としてまとめられた。この「論点整理」においては,小学校外国語教育 の枠組みと時数について次のような方向性が示された。これまでの成果と課題を踏まえ,高 学年においては外国語の4技能を扱い,教科として系統的な指導を年間70単位時間程度の 時数行うことが,また,中学年においては外国語に慣れ親しみ,「聞く」「話す」の2技能を 中心に外国語学習への動機付けを高めるための外国語活動を35単位時間程度行うことが考 えられるとされた。ここにおいて,初めて高学年教科としての外国語,中学年外国語活動の 時数が明確に記された。その後,各学校段階等や教科等別に設置された専門部会,外国語ワ ーキンググループにおいて,深く議論が重ねられた。
5) 平成 28 年 8 月 外国語ワーキンググループによる「審議の取りまとめ」・中央教育審 議会企画特別部会「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」12 月中央 教育審議会「答申」
これらを経て,平成 28 年 8 月に外国語ワーキンググループにより,これまでの審議が「審 議の取りまとめ」,中央教育審議会企画特別部会により,これまでの審議が「次期学習指導 要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」として報告され,同年 12 月に中央教育審議会よ り,次期学習指導要領について「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学 習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」(以降,「答申」と言う)が取りま とめられた。この「答申」において,特に外国語活動を通じて児童の学習意欲が高まってい ることなど,現行学習指導要領に基づく各学校段階での指導を通じた学習成果が認められ るものの,学校種間の接続が十分とは言えず,進級や進学をした後に,それまでの学習内容 や指導方法等を発展的に生かすことができていないなどの課題を踏まえ,小学校において 次のような枠組みとすることが記された。中学年から「聞くこと」及び「話すこと」を中心 とした外国語活動を通じて外国語に慣れ親しみ,外国語学習への動機付けを高めた上で,高 学年から発達段階に応じて段階的に「読むこと」「書くこと」を加え,総合的・系統的に扱 う学習を行うことが求められる。その際,これまでの課題に対応するため,新たに㋐アルフ
ァベットの文字や単語などの認識,㋑国語と英語の音声の違いやそれぞれの特徴への気付き,㋒語順 の違いなど文構造への気付きなど,言語能力向上の観点から言葉の仕組みの理解などを促 す指導を教科として行うために必要な時間を確保することが必要である。このような方向 性を目指し,小学校高学年において,「聞くこと」「話すこと」の活動に加え,「読むこと」
「書くこと」を含めた言語活動を展開し,定着を図り,教科として系統的な指導を行うため に,年間 70 単位時間程度,中学年における外国語活動については,従来の外国語活動と同様に年間 35 単位時間程度の時数が必要である。
この「答申」を受けて,平成29年2月に小学校及び,中学校学習指導要領案が公表され,
パブリックコメントを経て告示,平成30,31年度の移行期,そして,平成32年度新学習 指導要領全面実施の運びとなる。上記のような経過を経て,小学校における英語教育の拡充 が行われることとなった。
< 直山木綿子 >
第2章 : 小学校外国語教育に関する実態調査 ( 教育課程特例校・研究開発学校 )
2-1 はじめに
「小学校外国語教育に関する実態調査(教育課程特例校・研究開発学校)」は,国立教育政 策研究所のプロジェクト研究「小学校英語に関する調査研究」(平成27~28 年度)の一環と して行われた三つの調査,すなわち管理職(学校長等)を対象とした管理職調査,外国語教育 に携わる教員を対象とした教員調査,外国語教育を受ける児童を対象とした児童調査の総 称である。これらの調査の概要は,表2-1のとおりである。
表 2-1 調査の概要
管理職調査と教員調査は,外国語教育に関する教育課程特例校と研究開発学校の教員を 対象としたインターネット調査(調査用のWebサイトで回答)であり,平成27年6月から7 月にかけて実施された。管理職調査は主に学校全体について,教員調査は主に教員の教育実 践や研修内容等について聞いている。管理職調査の回答状況は,全2,031校の中で調査に協 力していただいた学校1,495 校中,102 校については管理職の回答がなかった(教員調査に のみ回答があった)ため,有効回答数は 1,393 人となっている。管理職調査の回収率は約
70%(1,393÷2,031)である。教員調査は,調査依頼時に学校から対象となる教員の名簿を送
ってもらい,それを基に調査協力校の対象教員数13,474人を算出した。調査協力校1,495
管理職調査 教員調査 児童調査
調査名 小学校外国語教育に関する実態調査(教育課程特例校・研究開発校)
母集団 外国語教育に関する教育課程特例校(2,023 校)・研究開発校(8 校)の
管理職(学校長等) 外国語教育に携わる教員 外国語教育を受けている児童
調査方法 全数調査 割当法による標本調査
(参加承諾校から 100 校を抽出)
回答方法 インターネット調査
(調査用 Web サイトで教員が回答)
質問紙調査 (教室で児童が質問紙に回答) 調査実施期間 平成 27 年 6 月 8 日(月)から 7 月 20 日(月) 平成 27 年 10 月 19 日(月)
から 11 月 13 日(金)
対象者数 2,031 人
(各学校 1 人)
13,474 人 (調査協力校での教員数)
15,629 人
(抽出 100 校での対象者数)
有効回答数 1,393 人 11,760 人 15,256 人
回収率 68.6% 87.3% 97.6%
(学校参加率は 100%)
校中,28校については教員からの回答がなかったが,最終的な有効回答数は,11,760人で あり,教員調査の回収率は約90%(11,760÷13,474)であった。
児童調査は,外国語教育に関する教育課程特例校と研究開発学校の児童を対象とした質 問紙調査(児童が自ら質問紙に記入する)であり,その母集団(調査対象集団)は,「外国語教育 に関する教育課程特例校・研究開発学校の児童」であるが,先に行われた管理職調査での児 童数・学級数情報に基づいて標本抽出を行わざるを得なかったため,実際には「管理職調査 に参加した学校の児童」が対象となっている。児童調査の調査方法は,割当法による標本調 査とした。これは,全数調査では対象児童数が50万人を超えるため,様々な制約を考慮し て,サンプルサイズが1万人から2万人となるよう,調査対象校を100校とし,そこで英 語教育を実施している各学年から 1 学級を選び,その学級の児童全員を調査対象とするこ とにした。標本の抽出には,本来であれば「層化2段集落抽出法」等が望ましいが,事前に 行われた管理職調査の質問項目「P7-1」で「児童調査への参加協力」を確認しており,参加 協力を承諾した学校のみでしか抽出を行えなかったため,「割当法」を用いることにした。
割当法とは,母集団を何らかの情報を用いて下位集団(層)に分け,その下位集団の大きさ(下 位集団に含まれる児童数)に比例させて,各下位集団から抽出する標本のサイズ(学校数や児 童数)を割り当てる方法である。今回の児童調査で用いた層と,各層の母集団児童数(管理職 調査に参加した学校の児童数),それに比例させた抽出学校数は,表2-2のとおりである。
管理職調査の結果から,「外国語教育の開始学年」(低学年,中学年,高学年)と「外国語教育 の評価の示し方」(文章のみ,数字や記号のみ,その他)の情報を用いて母集団の学校を7層 に分け(開始学年が高学年の場合のみ評価の示し方で分けていない),母集団児童数に比例さ せて層ごとに抽出される学校数を決定した。各層では,児童数に基づく確率比例抽出によっ て「児童調査への参加協力を承諾した学校(管理職調査に参加した1,393校中511校)」から 調査対象校を選び,さらに各学校で英語教育を行っている学年ごとに無作為に 1 学級を選 び,その選ばれた学級の児童全員に調査を実施した。
表 2-2 児童調査の学校割当
層 母集団児童数 児童割合 抽出学校数
低学年・文章 304,911 58% 58
低学年・数字や記号 46,303 9% 9
低学年・その他 33,564 6% 6
中学年・文章 55,706 11% 11
中学年・数字や記号 11,188 2% 2
中学年・その他 5,460 1% 1
高学年 67,980 13% 13
合計 525,112 100% 100
た。なお,調査対象児童には1年生から6年生が含まれるため,質問項目の数が異なる3 つの質問紙(1・2年用,3・4年用,5・6年用)を用意した(各質問紙は巻末の資料に記載し た)。調査票の内容については,表2-3のとおりである。
表 2-3 児童調査の調査票
質問 ID 質問内容 調査票(○の質問が含まれる) 1,2 年用 3,4 年用 5,6 年用
S1 組,番号 ○ ○ ○
S2 授業の選好 ○ ○ ○
S3 授業への参加 ○ ○ ○
S4 英語の選好 ○ ○ ○
S5 英語への動機付け(使用) ○ ○ ○
S6 英語への動機付け(勉強) ○ ○ ○
S7 英語への態度 ○ ○
S8 授業への興味(11 の小問) ○ ○
S9 授業内容の理解 ○ ○
S10 授業への要望(13 の小問) ○
S11 英語への興味(10 の小問) ○
S12 評価への感想(妥当性) ○
S13 評価への感想(影響) ○
質問(小問)の数 6 19 44
調査対象校は「児童調査への参加協力を承諾した学校」であるため,すべての学校から 回答を得られた(学校参加率100%)。調査対象となった519学級中,児童自身が記入でき ない等の理由で調査が行えなかった学級が5つあり(3つの学校,いずれも低学年),学級 の参加率は99%となっている。参加学級の全児童は15,629人で,そのうち欠席した児童 が373人いたため,有効回答数は15,256人,児童調査の回収率は98%(15,256÷15,629) であった。
2-2 管理職調査の結果
管理職調査の質問項目は,(1)学校の特徴,(2)教育目標と評価,(3)学校間の連携,(4)校内 研修,(5)外国語教育の指導体制,(6)教員の変容と教育活動への影響,という六つの側面に 分類できる。ここでは,学校の特徴から学校を分類し,その分類を使いながら,各側面の特 徴を明らかにする。特に本調査は外国語教育に関する教育課程特例校と研究開発学校を対 象としており,外国語教育の開始学年が通常の 5 年生よりも早い学校が多く,この違いに よって,その他の側面にどのような違いが生まれているのかを見ていく。
(1)学校の特徴
調査に参加した教育課程特例校と研究開発学校の特徴を明らかにするため,児童数に基
づく学校規模,日本語指導が必要な児童の割合,学校所在地の規模,外国語教育の開始学年,
外国語科の有無(外国語活動ではなく,教科としての外国語教育)ごとの学校割合を示す。
①学校の規模
管理職調査の質問項目「P1-1」では,学校の各学年の学級数,児童数を聞いている。これ に基づいて,児童数200人未満の学校を「小規模校」,200人から499人の学校を「中規模 校」,500人以上の学校を「大規模校」としたときの学校割合を表 2-1-1に示す。また,児 童数を100人ごとに区切った際の学校数を図2-1-1に示す。児童数は,平均377人であり,
最小で2人,最大で1,287人となっており,小規模校から大規模校まで,幅広い規模の小学 校が調査に参加している。
表 2-1-1 学校の規模
学校の規模 %
小規模校(200 人未満) 31.4
中規模校(200-499 人) 37.0
大規模校(500 人以上) 31.7
図 2-1-1 児童数で見た学校規模別学校数
②日本語指導が必要な児童
管理職調査の質問項目「P1-2」では,各学校の日本語指導が必要な児童の人数を聞いてい る。この値を基に,日本語指導の必要な児童が1%以上在籍している学校を「要日本語指導 校」,1%未満を「低日本語指導校」としたときの学校割合を表2-1-2に示す。また,日本語 指導の必要な児童割合を1%ごとに区切った際の学校数を図2-1-2に示す。日本語指導の必 要な児童割合が1%を超える学校は,全体の1割程度であった。
262
175 184
168 163 153 113
79 49
22 15 5 5
0 50 100 150 200 250 300
学 校 数
児童数(100人区切り)
表 2-1-2 日本語指導の必要な児童 日本語指導の必要 %
要日本語指導校(1%以上) 10.1
低日本語指導校(1%未満) 89.3
欠損値 0.6
図 2-1-2 日本語指導の必要な児童割合別学校数
③学校所在地の規模
管理職調査の質問項目「P1-3」では,学校所在地の規模を聞いている。所在地の規模別学 校数とその割合は図2-1-3のとおりである。
また,「8大都市(東京23区,横浜市,大阪市,名古屋市,札幌市,神戸市,福岡市,京都 市)」,「市部・人口50万人以上(8大都市以外の政令指定都市)」と回答した学校を「大都市」,
「市部・人口20万~50万人未満(中核市,特例市)」,「市部・人口10万~20万人未満」を
「中都市」,それ以外を「小都市・町村」と分類した際の学校割合を表2-1-3に示す。参加 校には,大都市の学校が少なく,6割が中規模の都市の学校である。
1244
65 30 14 11 5 5 2 1 4 0 0 1 0 0 1 0 0 0 1 1 0
200 400 600 800 1000 1200 1400
1%未満 1‐2%未満 2‐3%未満 3‐4%未満 4‐5%未満 5‐6%未満 6‐7%未満 7‐8%未満 8‐9%未満 9‐10%未満 10‐11%未満 11‐12%未満 12‐13%未満 13‐14%未満 14‐15%未満 15‐16%未満 16‐17%未満 17‐18%未満 18‐19%未満 19‐20%未満 20‐21%未満
学 校 数
日本語指導が必要な児童割合(1%区切り)
図 2-1-3 所在地の規模別学校数(中段),学校割合(下段,%)
表 2-1-3 所在地の規模
所在地の規模 %
大都市(50 万人以上) 14.6
中都市(10 万-50 万人未満) 59.7
小都市・町村(10 万人未満) 25.7
④外国語教育の開始学年
管理職調査の質問項目「P1-4」では,各学年,各教科等の年間授業時数を聞いている。こ の回答から学校が何年生から外国語教育(「外国語活動」や「外国語科」)を始めているかを 調べ,開始学年別に学校数とその割合を示したのが,図2-1-4である。なお,外国語活動が 5年生から必修のため,6年生から開始する学校は存在しない。
図 2-1-4 外国語教育の開始学年別学校数(中段),学校割合(下段,%) 8大都市
48 3.4%
市部50万 人以上
155 11.1%
市部20万‐50万人 528 37.9%
市部10万‐20万人 304 21.8%
市部5万‐10万人 195 14.0%
市部5万人未満 71
5.1% 町村
92 6.6%
1年生 1086 78.0%
2年生 3 0.2%
3年生 171 12.3%
4年生 5
0.4% 5年生 128 9.2%
調査に協力してくれた小学校は,外国語教育の教育課程特例校と研究開発学校であり,8 割近くの学校が 1年生から何らかの外国語教育を行っている。2 年生や 4年生から開始す る学校はほとんどないため,開始学年を「低学年」,「中学年」,「高学年」に分けた際の学校
割合を表2-1-4に示す。
表 2-1-4 外国語教育の開始学年 外国語教育の開始学年 %
低学年(1, 2 年生) 78.2
中学年(3, 4 年生) 12.6
高学年(5 年生) 9.2
この3区分した外国語教育の開始学年と学校の所在地との関係を示したのが,図2-1-5 である。大都市の学校は,外国語教育を高学年から開始している割合が61%とほかの所在 地に比べて高くなっている。なお,両者の関係を示す連関係数(以下,本稿では選択肢に順 序性のない質問項目間の関連性を示す指標,すなわち連関係数としてクラメールのVを用 いる,最小値の0の場合は関連性が見られず,最大値の1に近づくほど関連性が強いこと を表す,特に本稿では0.2以上の場合を関連性ありとみなす)の値は0.52と高く,関連性 があることがわかる。
図 2-1-5 学校の所在地別に見た外国語教育の開始学年
⑤外国語科の有無
管理職調査の質問項目「P1-4」では,先述のように各学年,各教科等の年間授業時数を聞 いているが,外国語教育に関しては「外国語活動」と「外国語科」の年間授業時数を別々に 聞いている。この回答から「外国語科」を行っているかどうかで分類した学校数とその割合
36%
83%
90%
3%
16%
9%
61%
0%
1%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
大都市(203校)
中都市(832校)
小都市・町村(358校)
低学年 中学年 高学年
を図2-1-6に示す。なお,1年生から「外国語活動」を始め,5年生から「外国語科」とし ている場合等,いずれかの学年に「外国語科」を行っている学校は,「外国語科あり」とし ている。また,ここでの「外国語科」は,次項で述べる「数値や記号による評定」を必ずし も伴ってはおらず,「評定を伴った教科」ではない点に注意が必要である。
図 2-1-6 外国語科の有無別学校数(中段),学校割合(下段,%)
(2)教育目標と評価
前項では学校の特徴という側面を明らかにしたが,本項では,独自の教育目標の有無,目
標の「CAN-DOリスト」形式による表現の有無,教育目標の内容,外国語教育の評価方法,
評価の児童・保護者への示し方といった教育目標と評価の側面を明らかにする。
本項では,まず初めに外国語教育の「教科化」を捉えるために,評価方法に関する質問 項目の結果を議論し,その後で,一般の学校とは異なる教育課程を採用している教育課程 特例校と研究開発学校が,どのような目標を設定しているのかを明らかにする。
① 外国語教育の評価方法
管理職調査の質問項目「P6-4」では,「貴校では,外国語活動・外国語科の評価を指導要 録にどのような形で記載していますか」と聞き,「評価の観点に基づいた文章表記」(文章表 記と略す,以下同じ),「観点別学習状況を数字や記号で示した評価」(数字や記号),「観点別 学習状況を数字や記号で示した評価および評定」(数字や記号+評定),「観点別学習状況を 数字や記号で示した評価および文章表記」(数字や記号+文章表記),「観点別学習状況を数
外国語科あり 482 34.6%
外国語科なし 911 65.4%
や記号+評定+文章表記」),「その他」(「数字や記号+文章表記」と「その他」)の四つに 分けた場合の学校割合を表2-1-5に示す。3/4以上の学校が指導要録に記載する評価を文章 表記とし,数字や記号を用いていない。
図 2-1-7 外国語教育の評価方法別学校数(中段),学校割合(下段,%)
表 2-1-5 外国語教育の評価方法 外国語教育の評価方法 %
文章表記のみ 76.8
数字や記号のみ 8.2
評定を含む 8.9
その他 6.1
ここで,先述した「外国語科の有無」と評価方法との関係を示す。外国語科の有無別に評 価方法ごとの学校割合を表したのが,図2-1-8である。
図 2-1-8 外国語科の有無別に見た外国語教育の評価方法 文章表記
1,070 76.8%
数字や記号 114 8.2%
数字や記号+評 定 84 6.0%
数字や記号+文 章表記
65 4.7%
数字や記号+評 定+文章表記
41 2.9%
その他 19 1.4%
48.1%
92.0%
19.9%
2.0%
22.8%
1.6%
9.1%
4.4%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
外国語科あり(482校)
外国語科なし(911校)
文章表記のみ 数字や記号のみ 評定を含む その他
両者の関連性を示す連関係数の値は 0.52 と高く,関連性が認められるが,「外国語科あ り」と回答した学校でも半数近くが評価を「文章表記」としており,管理職調査に回答した 管理職が考える「外国語科」が,必ずしも「数字や記号による評定」を含む「教科」ではな いことがわかる。
次に,「外国語教育の開始学年」と評価方法の関係を明らかにする。開始学年(低学年・中 学年・高学年)別に評価方法ごとの学校割合を示したのが,図 2-1-9 である。ほかの学校と 比べて,高学年から開始した学校の方が評価を「数字や記号のみ」にする割合が高い。ただ し,関連性を示す連関係数の値は0.16で余り高くない。
図 2-1-9 外国語教育の開始学年別に見た外国語教育の評価方法
② 評価の示し方
管理職調査の質問項目「P6-5」では,「貴校では,外国語活動・外国語科の評価をどのよ うな形で児童,保護者に示していますか」と聞き,「学校や学年,部会等で検討した文章表 記等から選んで示している」(文表記),「文章で示している」(文章),「数字や記号のみで示 している」(数字や記号),「文章で書くとともに,数字や記号も示している」(文章+数字や 記号),「その他」の五つの選択肢から,あてはまるものを一つ選んでもらった。その結果を
図2-1-10 に示す。「文表記」,「文章」を合わせると約 8割の学校が,児童や保護者に対し
て,数字や記号ではなく,文章を使った評価のみを示していることになる。
78.6%
76.1%
62.5%
5.7%
9.7%
27.3%
9.6%
8.0%
4.7%
6.1%
6.2%
5.5%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
低学年(1,089校)
中学年(176校)
高学年(128校)
文章表記のみ 数字や記号のみ 評定を含む その他
図 2-1-10 評価の示し方別学校数(中段),学校割合(下段,%)
③ 独自の教育目標の設定
管理職調査の質問項目「P6-1」では,「貴校では,外国語活動・外国語科について,どの ような目標を設定しますか」と聞き,「学習指導要領に示された目標をそのまま自校の目標 として設定している」(そのまま),「学習指導要領に示された目標を踏まえ,学校独自でより 具体的な目標を観点ごとに設定している」(観点ごと),「学習指導要領に示された目標を踏 まえ,学校独自でより具体的な目標を学年ごとに設定している」(学年ごと),「学習指導要領 に示された目標を踏まえ,学校独自でより具体的な目標を観点ごと・学年ごとに設定してい る」(観点・学年ごと)の四つの選択肢から,あてはまるものを一つ選んでもらった。その結 果を図2-1-11に示す。
図 2-1-11 独自の教育目標の設定別学校数(中段),学校割合(下段,%) 文表記
54 3.9%
文章 1,043 74.9%
数字や 記号
199 14.3%
文章+数字や記号 77 5.5%
その他 20 1.4%
そのまま 425 30.5%
観点ごと 240 17.2%
学年ごと 386 27.7%
観点・学年ごと 342 24.6%
調査協力校が教育課程特例校と研究開発学校であるため,約7 割の学校が学習指導要領 の目標だけでなく,独自の目標を持っていることが示されている。
では,「外国語教育の開始学年」や「外国語教育の評価方法」(教科としての外国語教育)に よって,独自の教育目標の設定に違いが生じているのであろうか。図2-1-12は開始学年(低 学年・中学年・高学年)別に教育目標の設定ごとの学校割合を,図2-1-13は評価方法(文章表 記のみ,数字や記号のみ,評定を含む,その他)別に教育目標の設定ごとの学校割合を示し ている。
図 2-1-12 外国語教育の開始学年別に見た独自の教育目標の設定
図 2-1-13 外国語教育の評価方法別に見た独自の教育目標の設定 29.6%
28.4%
41.4%
16.8%
18.8%
18.8%
28.3%
27.8%
22.7%
25.3%
25.0%
17.2%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
低学年(1089校)
中学年(176校)
高学年(128校)
そのまま 観点ごと 学年ごと 観点・学年ごと
31.3%
32.5%
24.8%
26.2%
17.2%
19.3%
16.0%
16.7%
27.9%
25.4%
16.8%
44.0%
23.6%
22.8%
42.4%
13.1%
文章表記のみ(1070校)
数字や記号のみ(114校)
評定を含む(125校)
その他(84校)
外国語教育の開始学年別にみると,高学年から開始した学校の方がそれ以外と比べて学 習指導要領に示された目標をそのまま使っている割合が10ポイント以上高いが,関連性を 示す連関係数の値は0.06と低い。外国語教育の評価方法別に見た場合は,「文章表記のみ」
と「数字や記号のみ」の学校に違いはないが,「評定を含む」とする学校の40%以上が「観 点・学年ごと」の目標を設定しており,「その他」とする学校の40%以上が「学年ごと」の 目標を設定している。ただし,連関係数の値は0.1で高くない。
④ CAN-DO リスト形式の到達目標の有無
管理職調査の質問項目「P6-2」では,設定された外国語教育の目標が「CAN-DOリスト」
の形式で記述されているかどうかを聞いている。「CAN-DOリスト」は,中学校・高等学校 の外国語教育において作成することが推奨されている学習到達目標のリストである。図 2- 1-14にその結果を示す(「はい」が利用あり,「いいえ」が利用なし,17校の回答に欠損が あった)。本調査の対象校は小学校であるが,教育課程特例校や研究開発学校であるためか,
中学校・高等学校で使われる目標設定方法が4割の学校で使われている。
図 2-1-14 CAN-DO リスト形式の到達目標の有無別学校数(中段),学校割合(下段,%)
では,「外国語教育の開始学年」によって,CAN-DOリストの有無に違いが生じているの であろうか。図2-1-15は開始学年(低学年・中学年・高学年)別にCAN-DOリストの有無ご との学校割合を示している。なお,質問項目「P6-2」の回答が欠損している17校は除外す る。これを見ると,外国語教育の開始学年が高いほどCAN-DOリストを利用している割合 が高くなっている。ただし,連関係数の値は0.18でそれほど高くはない。
さらにここで,「外国語教育の評価方法」と「外国語教育の独自目標の設定」によって,
CAN-DO リストの有無に違いが生じているのか明らかにする。図 2-1-16 は評価方法(文章
表記のみ,数字や記号のみ,評定を含む,その他)別にCAN-DOリストの有無ごとの学校割 はい
546 39.2%
いいえ 830 59.6%
欠損値 17 1.2%
合を示している。なお,質問項目「P6-2」の回答が欠損している17校は除外する。これを 見ると,「評定を含む」評価をしている学校の方が CAN-DO リストを利用している割合が 高くなっている。ただし,連関係数の値は0.07でほとんど関連性がないといえる。
図 2-1-15 外国語教育の開始学年別に見た CAN-DO リストの有無
図 2-1-16 外国語教育の評価方法別に見た CAN-DO リストの有無 35.5%
47.7%
63.8%
64.5%
52.3%
36.2%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
低学年(1073校)
中学年(176校)
高学年(127校)
はい いいえ
39.2%
32.7%
48.8%
42.2%
60.8%
67.3%
51.2%
57.8%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
文章表記のみ(1,070校)
数字や記号のみ(114校)
評定を含む(125校)
その他(84校)
はい いいえ
が CAN-DO リストを利用している割合が高くなっている。ただし,連関係数の値は 0.09 でほとんど関連性がないといえる。
図 2-1-17 独自の教育目標別に見た CAN-DO リストの有無
⑤ 教育目標の内容
管理職調査の質問項目「P6-3」では,「貴校では,外国語活動・外国語科の目標には,次 のことが含まれていますか」と問い,小学校の外国語活動の目標内容である「言語や文化に 対する体験的な理解の育成」(体験的理解),「積極的にコミュニケーションを図ろうとする 態度の育成」(積極的態度),「外国語の音声や基本的な表現への慣れ親しみの育成」(慣れ親 しみ)の三つとともに,中学の学習指導要領に見られる「聞く力の育成」(聞く力),「話す力 の育成」(話す力),「読む力の育成」(読む力),「書く力の育成」(書く力)の四つと,高等学校 の学習指導要領に見られる「情報や考えなどを的確に理解する力の育成」(的確な理解),「情 報や考えなどを適切に伝える力の育成」(適切な伝達)の二つについて,それぞれ「含む」か
「含まない」か,あてはまるものを一つ選んでもらった。図2-1-18は,それぞれについて
「含む」と回答した学校の割合である。なお,それぞれの項目には15 校から18 校の回答 の欠損があり,これらは除外した。
小学校の外国語活動に含まれる目標内容は,ほぼ全ての学校が「含まれる」と回答してお り,中学校の外国語科に含まれる目標内容のうち,「聞く力」,「話す力」も85%以上の学校 が「含まれる」と回答している。一方,高等学校の外国語科に含まれる目標内容である「的 確な理解」,「適切な伝達」については,それぞれが50%前後となっており,さらには中学レ ベルの目標内容である「読む力」は40%未満,「書く力」は30%未満となっている。小学校 の教育課程特例校と研究開発学校では,外国語での「話す力」,「聞く力」といった音声によ るコミュニケーションを重視し,文章を「読む力」,「書く力」までを目標として掲げる学校 は,余り多くないことがわかる。
38.3%
37.9%
35.8%
46.9%
61.7%
62.1%
64.2%
53.1%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
そのまま(412校)
観点ごと(240校)
学年ごと(383校)
観点・学年ごと(341校)
はい いいえ
図 2-1-18 教育目標の内容ごとの学校割合
ここで,「聞く力」,「話す力」,「読む力」,「書く力」,「的確な理解」,「適切な伝達」とい った教育目標の内容と外国語教育の開始学年,外国語科の有無,外国語教育の評価方法との 関係を明らかにする。図 2-1-19 は外国語教育の開始学年別,図 2-1-20 は外国語科の有無
別,図2-1-21は外国語教育の評価方法別に教育目標の各内容を「含む」と答えた学校の割
合である。
図 2-1-19 外国語教育の開始学年別に見た教育目標の内容ごとの学校割合 94.2%
99.3%
97.0%
86.1%
86.2%
37.3%
26.5%
48.1%
55.3%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
体験的理解(1,378校)
積極的態度(1,377校)
慣れ親しみ(1,377校)
聞く力(1,377校)
話す力(1,376校)
読む力(1,375校)
書く力(1,375校)
的確な理解(1,375校)
適切な伝達(1,375校)
■小学校
■中学校
■高校
86.6%
82.4%
87.4%
85.7%
86.4%
89.8%
39.7%
33.5%
22.0%
28.7%
25.6%
9.4%
47.3%
44.9%
59.8%
54.1%
55.1%
66.1%
低学年 中学年 高学年 低学年 中学年 高学年 低学年 中学年 高学年 低学年 中学年 高学年 低学年 中学年 高学年 低学年 中学年 高学年 聞く力話す力読む力書く力的確な 理解適切な 伝達
図 2-1-20 外国語科の有無別に見た教育目標の内容ごとの学校割合
図 2-1-21 外国語教育の評価方法別に見た教育目標の内容ごとの学校割合 92.7%
82.7%
93.7%
82.2%
50.5%
30.3%
37.9%
20.6%
50.9%
46.7%
57.5%
54.2%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
外国語科あり 外国語科なし 外国語科あり 外国語科なし 外国語科あり 外国語科なし 外国語科あり 外国語科なし 外国語科あり 外国語科なし 外国語科あり 外国語科なし 聞く力話す力読む力書く力的確な 理解適切な 伝達
84.6%
92.9%
95.1%
83.1%
84.6%
93.8%
94.2%
84.3%
34.9%
37.2%
57.5%
38.6%
24.6%
23.9%
46.7%
26.5%
47.7%
44.2%
55.0%
49.4%
55.3%
53.1%
60.0%
51.8%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
文章表記のみ 数字や記号のみ 評定を含む その他 文章表記のみ 数字や記号のみ 評定を含む その他 文章表記のみ 数字や記号のみ 評定を含む その他 文章表記のみ 数字や記号のみ 評定を含む その他 文章表記のみ 数字や記号のみ 評定を含む その他 文章表記のみ 数字や記号のみ 評定を含む その他 聞く力話す力読む力書く力的確な 理解適切な 伝達