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畑地流域における土砂流出モデルの適用性向上に関する研究

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- 1 -

畑地流域における土砂流出モデルの適用性向上に関する研究

研究予算:運営費交付金 研究期間:平

28~令1

担当チーム:水利基盤チーム

研究担当者:中村和正、川口清美、

鵜木啓二、田中健二、

村上功

【要旨】

農地からの土砂流出は、肥沃な土壌の流出による農地の生産力低下や土砂堆積による排水路の機能低下を引き起こす。

また、排水路に流入した土砂は下流の湖沼等に流出し、土砂に含まれる栄養塩類とともに水環境を悪化させ、水生生物 の生育環境や漁業への影響が問題となる。土砂流出対策を効果的に実施するには、対策を流域内で実施した場合の効果 を事前に予測することが重要であり、予測手法として土砂流出モデルの利用が有効である。前中期計画の研究では、土 砂流出モデル WEPP(Water Erosion Predict Project )が、積雪寒冷地の大規模畑地流域からの土砂流出量予測に適用 可能かつ有用であることを示した。しかし、日本国内での WEPP 適用例は少なく、利用は広まっていない状況にある。

そこで、本研究では、国内の一般技術者に利用されるように、WEPP を様々な条件に適用させた例を示した。

キーワード:土砂流出、傾斜畑、WEPP、GeoWEPP

1.はじめに

農地からの土砂流出は、肥沃な土壌の流出による農地 の生産力低下や土砂堆積による排水路の機能低下を引き 起こす。また、排水路に流入した土砂は下流の湖沼等に 流出し、土砂に含まれる栄養塩類とともに水環境を悪化 させ、水生生物の生育環境や漁業への影響が問題となる。

北海道の畑地は、圃場の大規模化で降雨や融雪水が集中 しやすいこと、受食性の比較的高い火山性土壌等が分布 している地域があること、収穫後に地表面が被覆されて いない裸地状態で融雪出水があること、傾斜圃場が広く 分布することなどから、水食の危険性が高いと考えられ る。

畑地流域からの土砂流出を抑制する方法として、侵食 を抑制する発生源対策、侵食された土壌を水路に入る前 に捕捉する水際での対策、水路内に入った土砂の下流へ の移動を抑制する水系での対策がある。これら土砂流出 対策を効果的に実施するには、対策を流域内で実施した 場合の効果を事前に予測することが重要であり、予測手 法として土砂流出モデルの利用が有効であると考えられ る。国立研究開発法人土木研究所の第 3 期中期計画(以 下、前中期計画)で実施した「大規模農地流域からの土砂 流出抑制技術に関する研究」では、土砂流出モデルとし て米国農務省で開発された USLE(Universal Soil Loss Equation )と WEPP(Water Erosion Predict Project ) を扱った。

USLE は侵食(とくに水食)に対する圃場の土壌保全の ために開発されたモデルで、農林水産省の土地改良事業 計画指針に使用方法が記載されていることもあり、日本 でも広く普及している。USLE は 6 つの係数を乗じるだけ で圃場の土壌流亡量を算出可能であるが、経験モデルで あり係数に物理的意味はほとんどない。そのため、土砂 流出対策を USLE で表現するには、現地試験によりパラメ ータを新たに取得しなければならない。さらに、USLE は 侵食された土壌の斜面や流路での移動を表現できないた め、流域単位での土砂流出予測に使用することはできな い。一方、WEPP は、降水が表面流去水となって土壌を侵 食する過程を物理則に沿って計算する物理モデルであり、

作物成長モデルによる地表面の被覆状況の変化や圃場管 理による土壌条件の変化等を予測計算に反映させること ができる。作物成長モデルや圃場管理による土壌変化等 に関するパラメータはコンピュータープログラム内に用 意されており、農業者の圃場管理による土壌流亡対策(例 えば、受食性の高い作物への転換や耕耘作業)をパラメ ータの変更で表現可能である。また、WEPP は圃場での土 壌流亡だけでなく水路での土砂移動も表現することがで きるので、流域単位での土砂流出量を計算可能であり、

さらに水路内に沈砂池を配置して土砂捕捉効果を予測す ることもできる。

前中期計画では、WEPP が積雪寒冷地の大規模畑地流域

からの土砂流出量予測に適用可能かつ有用であることを

(2)

- 2 -

示した。しかし、日本国内での WEPP 適用例は少なく、利 用は広まっていない状況にある。そこで、本研究では、国 内の一般技術者に利用されるように、WEPP を様々な条件 に適用させ、その適用例を示すこととした。まず 2 章で は、WEPP の基本的な利用方法である単斜面を対象とし、

排水性の改善で表面流去を抑制する土層改良と後作緑肥 を部分的に耕起(すき込み)しない不耕起帯の土壌流亡 抑制効果を解析した。3 章では、上記土層改良を流域単位 で畑圃場に実施した場合の土砂流出抑制効果を解析した。

4 章では、WEPP と GIS を融合させた GeoWEPP を利用し、

国営農業農村整備事業の農地再編整備事業で実施されて いる畑圃場の地形改変(大区画化と傾斜改良)が土壌流 亡へ及ぼす影響を解析した。

2.土層改良と不耕起帯の土壌流亡抑制効果の解析 2.1 解析の概要

北海道立総合研究機構中央農業試験場(以下、道総研)

の巽ら

1)

は、傾斜畑圃場における土壌流亡対策の確立を 目的に、農業者自らが簡易に実施でき、地域の営農体系 を踏まえた農地内での土壌流亡発生を抑制する技術とし て、トラクタに装着可能な有材補助暗渠機「カットソイ ラー」による土層改良および後作緑肥を用いた部分不耕 起(不耕起帯)による土壌流亡抑制効果の検証を行った。

本章では、この土層改良と不耕起帯の土壌流亡抑制効 果について、WEPP を用いた現地実証データの再現計算を 行い、さらに再現計算で設定したパラメータによる応用 解析を実施した。

2.2 土層改良と不耕起帯の現地実証データ 2.2.1 土層改良と不耕起帯の概要

1)

土層改良は、農業者がトラクタに取り付けて施工可能 な有材補助暗渠機「カットソイラー」により、土中 50cm までの任意の深さで土塊を切り上げ、地表面に散在する 収穫残渣などを落とし込みながら前進することで実施さ れる(図-1) 。排水性が改良されることで表面流去水の 発生が減少し土壌流亡も抑制されると考えられる。

不耕起帯は、地力向上や裸地回避を目的に作物収穫後 に導入されることのある後作緑肥を積雪前に土中にすき 込まず、部分的に不耕起箇所を融雪後まで残存させたも のである(図-2) 。斜面長を分断し流出水を分散させる ことによる侵食抑制、地表面の被覆を維持することによ る流亡土壌の捕捉が期待される。

2.2.2 土層改良の効果

巽ら

1)

は、カットソイラー施工の有無による暗渠排水 量の差を観測することで土層改良の効果を検証した。調 査地は北海道上川郡美瑛町にあるルベシベ 4 線川流域内

の畑圃場 A(1.12ha、傾斜約 7 度、褐色森林土)であり、

麦収穫後の切株を資材としてカットソイラーを深さ 55cm、

5m 間隔で等高線方向に施工し、施工前後の暗渠排水量を 電磁流量計にて観測した。施工時期は 2016 年 8 月末であ る。施工前後に降雨時の暗渠排水量を降水量 10mm 当りの 排水量に換算して比較したところ、施工前が 4.1m

3

/10mm であるのに対し、施工後は 11.9m

3

/10mm(いずれも 2 回の 降雨で得られた観測値の平均値)と約 2.9 倍に増加した。

カットソイラーの施工により、暗渠までの水みちが確保 されたことで、排水量が増加したと考えられる。

2.2.3 不耕起帯の効果

巽ら

1)

は、傾斜圃場に圃場管理の異なる試験区を設定 し、それぞれ融雪期直後の侵食溝を測定することで、融 雪流出に対する不耕起帯の土壌流亡抑制効果を検証した。

調査地は、A 圃場と同様、ルベシベ 4 線川流域内の畑圃場 B(斜面長 190m、平均斜度 8.5 度)であり、土壌流亡対策 の有無による土壌侵食量の違いを測定した。試験条件は、

コムギ刈り取り後に(a)後作緑肥を作付し、積雪前に全面 をすき込んだ場合、(b)カットソイラーを施工してから後 作緑肥を作付し、積雪前に全面をすき込んだ場合、(c)カ ットソイラーを施工してから後作緑肥を作付し、全面を すき込まず部分的に不耕起帯として残した場合の 3 条件 である( 図-3) 。2017 年融雪期直後における侵食溝の測

図-1 カットソイラーの施工状況

0 100m

画像:GoogleEarth 不耕起帯

図-2 不耕起帯の配置例

(3)

- 3 -

定結果、(a)を基準(土壌侵食量 2.3m

3

/ha)とした(b)、

(c)の土壌侵食量の削減率はそれぞれ 17%と 52%であっ た。

2.3 実証データの再現計算 2.3.1 解析条件

以下に、WEPP に取り入れたパラメータの取得、設定条 件を示す。

(1)地形【Slope】

地形(傾斜)は、国土交通省から無償で提供されている 基盤地図情報(数値標高モデル 10m)を利用し、道総研が 実証試験を行った畑圃場 B の地形(斜面長と斜度)を入 力した。斜面の向きは南とした。これ以外はモデルプロ グラムの初期値を採用した。

(2)土壌【Soil】

土層改良を実施する前の土壌に関するパラメータのう ち、土壌断面データの深度、粒径組成、有機物含有量、

CEC は北海道庁の土壌データ

2)

を利用した。ただし、道総 研の調査

1)

により、表層から 40cm 程度の深度に堅密層が あり、下層へ浸透が阻害されていることが分かっている ことから、土壌データのうち、第 2 層までを採用し、そ れより下層は制限層(Restricting Layer)としてほとん ど水が浸透しない条件 (飽和透水係数 0.001mm/h) にした。

インターリル侵食の係数(Interrill Erodibility)とリ ル侵食の係数(Rill Erodibility) 、限界せん断力の係数

(Critical Shear)は、WEPP の内部計算を利用した。有 効透水係数(Effective Hydraulic Conductivity)は WEPP Documentation

3)

に掲載されている計算式により算出した。

土層改良後の土壌パラメータは、先に示した実証試験 により、土層改良で圃場の暗渠排水量が 2.9 倍になった ことから、土壌の透水性が 2.9 倍になったと置き換え、

有効透水係数を 2.9 倍にすることとした。また、土層改 良により堅密層が破砕されていることから、土層改良前 の土壌に設定した制限層は取り除いた。これら以外の設 定は、土層改良前と同値とした。

(3)管理【Management】

後作緑肥をすき込まない不耕起帯の設定は、管理

(management)の設定において、圃場管理の違いにより 表現した。後作緑肥を土壌にすき込む通常箇所は、春コ ムギ収穫後に後作緑肥としてエン麦を作付けし、積雪前 にすき込む圃場管理とした。一方、後作緑肥の不耕起箇 所は、後作緑肥のエン麦を積雪前にすき込まずに融雪後 まで維持する圃場管理とした。この二つの異なる管理ス ケジュールの区画を斜面内に交互に配置し、各区画の斜 面長を変更することで、不耕起帯の本数や幅の違いによ る土壌流亡抑制効果をシミュレーションできる。ただし、

WEPP プログラムの制限上、斜面分割は最大 10 区画であ るため、不耕起帯の配置は最大で 5 箇所である。

(4)気象【Climate】

WEPP の解析に必要な気象データのうち、降水量、風向・

風速は美瑛アメダスを利用した。気温、湿度、日射は美瑛 アメダス近傍で独自に観測した。WEPP に入力した気象デ ータは、時間降水量、日最高気温、日最低気温、日平均風 速、日最多風向、日平均露天温度である。観測期間は 2015 年 10 月から 2019 年 11 月までで、解析対象期間は、2016 年から 2019 年までの積雪~融雪期(1~4 月)である。

(5)斜面の設定条件

上記した土壌、管理のパラメータを、道総研が実証試 験を行った畑圃場 B の試験区の条件に沿って設定した。

試験区の条件は、コムギ刈り取り後に(a)後作緑肥を作付 し、積雪前に全面をすき込んだ場合、(b)カットソイラー を施工してから後作緑肥を作付し、積雪前に全面をすき 込んだ場合、(c)カットソイラーを施工してから後作緑肥 を作付し、全面をすき込まず部分的に不耕起帯として残 した場合の 3 つである( 図-4)。

2.3.2 解析結果

前項で設定した条件により斜面の流出土砂量の解析を 行った。WEPP の解析では、斜面での侵食量、再堆積量、

斜面からの流出土砂量が計算値として出されるが、不耕 起帯による再堆積の効果も含めて一括で評価できるよう に、斜面からの流出土砂量で比較することとした。

計算の結果を 表-1 に示す。巽ら

1)

が実証試験を行った 2017 年の削減率(条件(a)を基準とした(b)、(c)の削減率

図-3 土層改良と不耕起帯の現地実証試験区(畑圃場 B)

カットソイラー 施工区

20m

斜面長 190m カットソイラー

未施工区

(対象区)

10m

5m カットソイラー

が密に入ってい る区間(50m)

70m 不耕起帯

(幅2~3m)

不耕起帯

(幅10m程度)

不耕起帯 無し

不耕起帯 有り

カットソイラー 施工ライン

条件(a) 条件(b) 条件(c)

傾斜方向

(4)

- 4 -

はそれぞれ 17%と 52%)と比較すると、計算値の削減率 は低い結果(同、6%と 10%)となった。土壌条件等のパ ラメータの調整で、実測の削減率に近づけることもでき るが、実証試験は比較的狭い範囲内での観測であるため 実測値自体に大きな誤差が含まれている可能性のあるこ と、実測に近づけるためだけにパラメータを調整すると パラメータが現地条件と乖離してしまい解析条件の設定 方法に汎用性が失われることから意味が無い(実施する べきではない)と思われる。一方、条件(b)に比べて条件 (c)の方が削減率が高いという傾向は、2017 年も含めて 再現できていることに加え、他の年では実測と同程度の 削減率になっている場合もあることから、WEPP による再 現計算はおおよそ妥当な結果であったと判断した。

2.4 応用解析 2.4.1 設定条件

カットソイラー施工と不耕起帯設置による土壌流亡抑 制対策の応用解析として、前節で設定したパラメータを 用い、斜度と斜面長を変化させたシミュレーションを実 施した。対策条件は、コムギ刈り取り後、(A)後作緑肥を 全面にすき込んだ条件、(B)カットソイラーを施工し、後 作緑肥を全面にすき込んだ条件、(C)後作緑肥を部分的に

不耕起帯として残した条件、(D)カットソイラーを施工し、

後作緑肥を部分的に不耕起帯として残した条件とした

( 図-5) 。斜面長は 50m から 300m まで 50m 間隔、斜度は 1 度から 20 度まで 1 度間隔で変化させた。各斜面長にお ける不耕起帯の設定状況を図-6 に示した。不耕起帯の 幅を 5m、設置間隔を最低 25m としたのは、当該技術を開 発した道総研の普及方針に沿ったものである。なお、不

図-4 現地実証データ再現計算用の WEPP 画面

管理 傾斜 土壌

条件(a)

条件(c) 条件(b)

カットソイラー無し、後作緑肥全面すき込み

カットソイラー有り、後作緑肥部分不耕起 カットソイラー有り、後作緑肥全面すき込み

カットソイラー 無しの土壌条件

カットソイラー 有りの土壌条件

カットソイラー 有りの土壌条件

後作緑肥の 全面すき込み

後作緑肥の 部分不耕起

(不耕起帯)

後作緑肥の 全面すき込み

条件(a) 条件(b) 条件(c)

5.8 5.3 4.1

(9%) (29%)

11.9 11.2 10.7

(6%) (10%)

4.7 4.1 2.7

(13%) (43%) 上段:流出土砂量(t/ha) 下段:aを基準とした削減率 2016年

融雪期 2017年 融雪期 2018年 融雪期 2019年 融雪期

侵食発生せず 表-1 各条件の侵食量と削減率

図-5 応用解析用の WEPP 画面

(条件A)後作緑肥全面すき込み

(条件B)カットソイラー施工(不耕起帯無し)

カットソイラー 無しの土壌条件

カットソイラー 有りの土壌条件

後作緑肥の 部分不耕起

(不耕起帯)

後作緑肥の 全面すき込み

(条件C)不耕起帯設置(カットソイラー無し)

(条件D)カットソイラー施工+不耕起帯設置

(5)

- 5 -

耕起帯の土砂捕捉機能に鑑みると、斜面の最下端に不耕 起帯を配置した計算を行うべきであるが、計算結果が異 常となる場合があったため当該条件での計算結果は除外 した。使用した気象データは前節の再現計算で削減率が 中位であった 2016 年融雪期とした。

2.4.2 解析結果

解析結果として、条件(A)については斜面からの土砂流 出量を、条件(B)~(D)については(A)を基準とした削減率 を示した(表-2) 。斜度 17 度以上は異常な計算値を示し

たので除外した。この解析から明らかになったことは以 下の通り。

条件(A):すべての斜面長で斜度 4 度以下では侵食が発生 しなかった。また、大部分の斜面長で斜度 11 度の とき最大流出土砂量となり、これ以上急な傾斜で は侵食量が減少した。侵食の発生しなかった斜度 4 度以下でも、パラメータを変更(例えば、初期条 件のパラメータ「initial roughness after last tillage(最終耕起後の地表の凹凸を表し、表面貯

条件(A) 土砂流出量(t/ha) 条件(B) 削減率(%) 条件(C) 削減率(%) 条件(D) 削減率(%)

斜度

(度) 50 100 150 200 250 300 50 100 150 200 250 300 50 100 150 200 250 300 50 100 150 200 250 300

4 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0

5 0.0 0.0 0.9 3.0 5.2 7.2 14 9 7 6 56 28 17 14 66 36 25 20

6 0.0 0.2 2.4 5.1 7.6 9.9 23 10 7 6 6 100 45 26 17 23 100 55 32 23 27

7 0.0 0.8 3.7 6.6 9.4 11.7 15 8 7 7 7 77 44 28 21 27 82 50 33 29 33

8 0.0 1.4 4.6 7.9 10.7 13.2 11 8 10 10 11 53 35 25 26 32 60 40 29 31 35 9 0.0 2.1 5.7 9.4 12.5 15.2 9 10 14 15 16 49 36 30 35 39 55 41 34 40 42 10 0.0 2.4 6.1 9.9 13.0 15.7 8 13 18 19 20 43 34 29 36 40 51 42 36 44 46 11 0.0 2.8 6.8 10.8 13.9 16.7 50 8 16 22 23 23 83 40 38 37 40 41 95 47 42 40 48 50 12 0.1 2.6 6.4 10.2 13.2 15.7 20 9 19 25 26 27 62 40 39 39 41 42 82 47 46 43 51 52 13 0.1 2.4 5.1 9.9 12.8 15.2 15 7 6 30 30 31 47 31 26 43 47 50 64 37 31 44 51 53 14 0.1 2.1 6.0 9.1 12.3 14.7 25 13 34 36 40 40 71 36 49 47 56 58 85 51 56 51 59 60 15 0.0 1.4 3.3 8.0 10.7 12.7 10 7 43 45 45 11 19 50 58 60 30 31 53 61 61 16 0.0 1.1 2.7 4.2 10.3 12.3 17 14 13 54 53 39 39 38 71 73 52 48 42 72 72

-:(A)で土砂量がゼロだった条件 削減率:条件(A)を基準 17度は異常値となったので非表示

斜面長(m)

斜面長(m) 斜面長(m) 斜面長(m)

表-2 各斜面長と斜度における土砂流出量と流出対策実施による削減率の解析結果 図-6 各斜面長における不耕起帯の設置間隔(WEPP 設定画面)

斜面長100m 斜面長50m

斜面長150m

斜面長200m

斜面長250m

斜面長300m 25m

20m

5m

25m

25m

25m 5m

5m

5m

25m

25m 25m 5m

5m

5m 5m 25m

30m

35m

35m 35m 5m

5m 5m 5m 35m

40m

45m 45m

45m 5m

5m 5m 5m 45m

50m

55m 55m

55m 5m

5m

5m 5m 55m

60m カットソイラー

有りの土壌条件

後作緑肥の 部分不耕起

(不耕起帯)

後作緑肥の 全面すき込み

10m

(6)

- 6 -

留の多寡に効くパラメータ) 」を 2cm から 1cm に変 化させた場合や、別年の気象条件では侵食が発生 した。すなわち、2016 年の融雪条件では、斜度 4 度以下の場合に融雪水が表面に貯留されて浸透し たことで土壌侵食が発生しなかったものと考えら れる。また、斜度 11 度以上における解析結果の詳 細をみると、斜面が急になることによる融雪状況 の変化や、それに関連した土壌水分状況の違いに より侵食量が減少していた。ただし、傾斜と侵食 量の関係についても気象データにより異なり、別 年のデータでは斜度が急になるほど侵食量が増大 することもあった。

条件(B):土層改良(カットソイラーの施工)による流出 土砂量の削減率は、斜面長が長く急勾配の条件で より大きくなった。

条件(C):不耕起帯による流出土砂量の削減率は、斜面長 が長く傾斜の緩い条件では削減率が低い傾向にあ った。今回の設置条件では、土層改良よりも効果 が高かった。

条件(D):土層改良と不耕起帯の組合せでは、削減率の傾 向は、効果の高い不耕起帯単独(条件(C))と同様 であった。

以上のような結果が得られた。ここでは、土層改良と 不耕起帯について、不耕起帯の幅や間隔をある程度固定 した上で地形条件を変化させ、土壌侵食削減効果の全体 的な傾向を確認する解析を行った。実際に営農者がこれ らの対策を取り入れる際には、圃場の斜面長や傾斜に合 わせ、土層改良実施の有無や不耕起帯の条件(本数や幅)

を変化させることで、任意の削減目標に合った融雪期の 侵食対策を検討することができる。

2.5 小括

単斜面を対象に、土層改良の実施と不耕起帯の設置が 融雪期の土壌流亡を抑制する効果を WEPP にて予測する 方法について示した。パラメータの設定は現地の土壌条 件や圃場管理条件を再現しており、本研究で対象とした 圃場だけでなく、他の圃場においても同様に現地条件を 取得することで予測計算が可能と考えられる。これによ り、土壌、地形、圃場管理条件の異なる圃場において、目 標とする土壌流亡抑制に合わせた土層改良や不耕起帯の 設置方法(幅や間隔)を検討することが可能となった。

3.流域単位での土壌流亡抑制策の効果解析 3.1 解析の概要

前章では土砂流出モデル WEPP の基本機能である単斜 面の解析例を示した。本章では、斜面に水路を接続させ、

これらを複数連結することで流域単位の解析を行う手法 を示す。解析内容は、前章で示した土層改良を畑作流域 全体の圃場に実施した場合の土砂流出抑制効果の予測で ある。

3.2 解析対象 3.2.1 対象地概要

解析対象は、前章と同様に北海道上川郡美瑛町にある ルベシベ 4 線川流域である( 図-7) 。流域面積は 2.7km

2

で、土地利用割合は 75%が農地(大部分が普通畑) 、11%

が林地、14%が農家敷地・道路等人口構造物である。衛星 画像から読み取れる圃場数は 147 筆であり、大部分が傾 斜地に位置し、一部は急傾斜(斜度 15 度以上)に区分さ れる。作付け作物は、畑作 4 品(コムギ、バレイショ、

ビート、マメ類)のほかトウモロコシなどが見られ、一部 には牧草地も広がっている。

流域内土壌は、地力保全基本調査(土壌調査)による と、大部分が中粗粒褐色森林土(土壌統名:裏谷、萱場)

で、上流域の一部に細粒褐色森林土(土壌統名:寺の尾)

が分布している。

3.2.2 現地調査

流域から流出する土砂量を把握するため、最下流地点 において水位と濁度の自動観測、流量観測、自動採水器 による採水を実施した。流量観測結果から H-Q 曲線を作 成し、水位の自動観測値により連続流量を求めた。採水 試料は SS 分析を行い、自動観測値の濁度との相関式を作 成し連続 SS 濃度を求めた。得られた連続流量と連続 SS 濃度を乗じて連続 SS 負荷量を算出した。濁度計の観測上 限値を超過している期間、濁度計の欠測期間については、

図-7 ルベシベ 4 線川流域の土地利用図

最下流点

(7)

- 7 -

SS 負荷量と流量の関係式(L-Q 式)にて、流量から SS 負 荷量を算出した。SS 負荷量データは、WEPP モデルによる 土砂流出量予測の精度検証のための実測値として使用し た。WEPP の解析に必要な気象データは、前節と同様に降 水量、風向・風速は美瑛アメダスを利用し、気温、湿度、

日射は美瑛アメダス近傍で独自に観測した。解析の対象 とした観測期間は 2016 年 1 月から 2019 年 11 月までであ る。

3.3 WEPP データ作成 (1)地形

地形データの作成・整理には、GIS ソフトウェアの ArcGIS を利用した。WEPP に入力するために必要なデータ は斜面長、勾配、斜面幅である。本研究では、1 つの圃場 が 1 つの解析斜面になるように流域モデルを構築するこ ととした。

まず、衛星画像(WorldView2、地上分解能 50cm、撮影 日 2013 年 7 月 2 日)を目視判読して圃場の区画データ

(147 区画)を作成した。次に、作成した圃場の上・下端 の間に、圃場の平均的な斜面長となるような測線(以降、

斜面測線と呼称する)を作成し、この長さを斜面長とし た。斜面測線について、基盤地図情報の DEM(数値標高モ デル 10m)から作成した標高コンター(ラインデータ)と の交点座標(X、Y、Z)を GIS に機能により抽出し、斜面 の地形データ(勾配、区間距離)としてエクセルにて整理 した。さらに、圃場面積を斜面長で割り返して斜面幅を 算出した。以上の作業を全圃場で実施し、解析斜面の地 形データを取得した。

水路は、まず現地踏査にて、位置、形状(底面幅、側壁 勾配) 、材料を把握した。次に、GIS にて上記で作成した 解析斜面と接続する水路長、水路勾配を取得した。

WEPP プログラムにおける流域モデルの作成は、まず水 路と斜面を平面配置する。この時、水路は実際の水路長 で配置する。斜面は接続水路に対する位置(右岸 or 左岸 or 上端)のみ意識して配置すれば良い。水路と斜面の平 面配置が済んだら、斜面については、 【Slope】の設定画面 を開き、斜面長、勾配、斜面幅を入力する。水路について は、 【Channel Editor】を開き、勾配、底面幅、材質等を 入力する。以上、構築した流域モデルを図-8 に示す。

(2)土壌

土壌データは、国土交通省から提供されている 20 万分 の 1 土壌図(GIS データ)を利用した。土壌の理化学性 は、地力保全基本調査(土壌調査)の成果を利用した。

GIS 上で圃場データと土壌データを重ね合わせ、各圃場 についてどの土壌に位置するか読み取った。本流域には、

土壌中粗粒褐色森林土(土壌統名:裏谷と萱場)の 2 種

類と細粒褐色森林土(土壌統名:寺の尾)が存在し、それ ぞれについて土壌ファイルを作成した。作成した土壌フ ァイルは、各斜面の【Soil】の設定で呼び出した。土壌条 件の付与状況を 図-9 に示す。

(3)管理

各斜面の管理については、現地踏査により圃場ごとの 作付け作物を調べ、各作物の管理スケジュールファイル を作成した。作成した管理スケジュールファイルは、各 斜面の【Management】の設定で呼び出した。作付けの付与 状況を図-10 に示す。

(4)気象

WEPP に入力した気象データは、前章と同様、アメダス データと観測データを時間降水量、日最高気温、日最低 気温、日平均風速、日最多風向、日平均露天温度に整理

(c)作付けデータ (a)斜面と排水路の配置

(b)土壌データ

ビート 森林 秋コムギ トウモロコシ バレイショ 牧草 カボチャ マメ 中粗粒褐色 森林土(萱場)

中粗粒褐色 森林土(裏谷)

細粒褐色 森林土(寺の尾)

図-8 WEPP 上の斜面と水路

(水色の四角が斜面、青線が水路)

(c)作付けデータ (a)斜面と排水路の配置

(b)土壌データ

ビート 森林 秋コムギ トウモロコシ バレイショ 牧草 カボチャ マメ 中粗粒褐色 森林土(萱場)

中粗粒褐色 森林土(裏谷)

細粒褐色 森林土(寺の尾)

図-9 WEPP 上の土壌データ

(8)

- 8 -

し、解析用データへ変換した。解析対象期間は 2016 年か ら 2019 年までだが、計算の助走期間(ダミーデータ)と して 2019 年の観測値を 2016 年の前に挿入して計算させ た。

3.4 解析結果

3.4.1 実測データの再現性

土層改良の効果の予測計算を行う前に、実測値の再現 性を確認した。現地の実条件から設定したパラメータに よる流出土砂量の計算結果を表-3 に示す。計算結果は 全斜面からの流出土砂量を集計したものである。計算値 は降水量の多かった2016 年と2018 年は実測値より多く、

降水量の少なかった 2017 年と 2019 年で実測値より少な くなっていた。両者どちらかの実測値との整合性が高く なるよう、土壌流亡量との感度が高いパラメータである 土壌の有効透水係数を 0.5 倍、または 25 倍に調整した場 合の流出土砂量の計算値を表-4 に示す。どちらか一方 に合わせることで、他方がより実測から乖離する結果と なった。2016 年と 2018 年の計算値が実測より大きくな る要因として、短期間の強雨が考えられる。2016 年は 8 月に日雨量 145mm(最大降雨強度 45.5mm/h)の日を含め 約 1 週間で 300mm の降雨があった。また、2018 年は 7 月 に 5 日間で 200mm 以上(最大降雨強度 25.0mm/h)の降雨 があった。両年とも、この期間に年間流出土砂の 9 割以 上が流出する計算結果となっていた。有効透水係数は、

その大小が表面流出の発生に影響することから、土砂流 出に対する感度の高いパラメータである。しかし、今回 の計算結果のように、実測と比べて過少になっている年 と過大になっている年がある場合、有効透水係数の調整 だけでは、どちらかにしか合わせることができないので、

これ以外のパラメータについても今後検討していく必要 がある。

3.4.2 土壌流亡対策の効果

実条件から設定したパラメータでは複数年の実測デー タを十分に再現することができなかったが、実測値と計 算値のオーダーが合っていた2017 年と2019 年について、

流域内の全圃場に土壌流亡対策として土層改良を実施し た場合の効果を予測した。土層改良の効果は、前章と同 様に有効透水係数を 2.9 倍にすることで表現した。表-

5 に対策前後の流亡土量の計算値と削減率を示す。両年 とも土壌流亡量が減少していたが、2019 年の方が削減率 は高かった。土層改良によって透水性が向上することで 表面流出が減少し、土壌流亡量も減少するが、降水状況 によって削減率は変化すると考えられる。参考までに計 算を行った 2016 年と 2018 年の削減率は 38%と 44%であ ったことから、土壌流亡量の多い年でも 4 割程度の削減 効果が見込まれ、2019 年のように土壌流亡量の少ない条 件ではさらに高い削減効果があると予測される。

3.5 小括

WEPP を用いて流域単位での土壌流亡量を予測する手法 を示した。流域の末端で観測した土砂流出量を実測値と して再現性の検証を行ったが、複数年を精度良く再現す ることはできなかった。土壌流亡の少ない降水条件では 計算値は実測値よりも過小に、土壌流亡の多い降水条件 では過大に算出されていることから、土壌条件に関する 複数のパラメータの調整が必要と示唆された。また、土 壌流亡対策として土層改良を流域内の全圃場に実施した 場合の効果を WEPP で解析した。土層改良によって土壌の

(c)作付けデータ

(a)斜面と排水路の配置

(b)土壌データ

ビート 森林 秋コムギ トウモロコシ バレイショ 牧草 カボチャ マメ 中粗粒褐色 森林土(萱場)

中粗粒褐色 森林土(裏谷)

細粒褐色 森林土(寺の尾)

図-10 WEPP 上の作付けデータ

2016年 1,176 2,401 10,539 2017年 881 4,573 3,536 2018年 1,214 4,745 29,659 2019年 863 2,813 1,146

降水量 (mm)

流出土砂量(t) 実測値 WEPP

計算値

Kb1.0倍 Kb0.5倍 Kb25倍 2016年 2,401 10,539 13,541 3,868 2017年 4,573 3,536 4,865 300 2018年 4,745 29,659 32,328 3,251 2019年 2,813 1,146 2,253 16

Kb:有効透水係数 流出土砂量(t)

実測値 WEPP計算値

対策前 対策後 2017年 881 3,536 2,280 36 2019年 863 1,146 185 84

降水量 (mm)

削減率 (%)

流出土砂量(t)

表-3 流出土砂量の実測値と計算値の比較

表-4 有効透水係数の調整による流出土砂量の比較

表-5 土層改良前後の流出土砂量の比較

(9)

- 9 -

透水性が改善される効果は、有効透水係数を大きくする ことで表現した。圃場の透水性が向上することによる土 壌流亡量の減少を予測することができた。

4.傾斜改良による土壌流亡抑制効果の GeoWEPP を用いた 解析

4.1 解析の目的 4.1.1 解析の概要

国営農地再編整備事業では、農地の生産性向上や担い 手への農地集積による耕作放棄地発生の抑制等を目的と して田畑の区画整理や排水改良を実施している。当該事 業において、傾斜畑が大区画化される際には、段差の解 消や排水性の改良、大型機械の作業性向上のために傾斜 改良(斜度や傾斜方向の均一化)が合わせて行われる事 例が多い。傾斜畑では、わずかな起伏でも低地部に表面 水が集中して土壌侵食が発生することがあるが、大区画 化される際に傾斜が均一化されると、表面水が分散され て下方に流下することで土壌侵食が発生しにくくなるこ とが予想される。一方、大区画化することで斜面長が長 くなり、表面水が発生しやすくなる可能性もある。本章 では、WEPP と GIS を連携させた土砂流出モデルである GeoWEPP(Geo-spatial interface for the Water Erosion Prediction Project)のメッシュごとに解析できる機能 に着目し、圃場の傾斜改良が土壌流亡に及ぼす影響につ いて解析した。

4.1.2 GeoWEPP 概要

これまで示してきたように、WEPP は圃場の土壌流亡量 だけでなく、河道への土砂流出や河道内での土砂移動も 計算が可能であり、土壌流亡・土砂流出対策における予 測ツールとして有用である。しかし、WEPP を流域の土砂 流出予測に用いるには、地形や圃場形状、排水網、作付け 作物等の流域情報を取得するための詳細な現地調査が必 要である。また、WEPP ソフトウェア内では手作業で排水 網と解析斜面を設定し、それらに地形や土壌、管理(作付 け等)の情報を個別に設定する煩雑な作業がある。一方、

WEPP と GIS を連携させた GeoWEPP は、排水網や解析斜面 を地形条件から自動で取得し、土壌や管理の情報も一斉 に付与することができるなど、設定作業が大幅に省力化 されている。また、数値標高データ(DEM)を直接取扱い、

DEM サイズによるメッシュ状の解析が可能である。しか し、排水網が地形によってのみ決定されることから、圃 場の承水路や集水路、道路側溝など、地形だけによらな い人工的な排水網が整備された流域では、水の流れを正 確に再現することはできない。よって、利用用途として は、まずは森林流域のように人工的な排水路の無い流域

の解析が考えられる。農業流域の場合は、人工的な排水 路による水の流れを無視できるような比較的広域の解析、

または逆に人工的な排水路の影響の無い狭い範囲に絞っ た解析などが想定される。本章の解析は 3 番目の解析に 当たる。

4.2 解析方法 4.2.1 解析地概要

対象地区は北海道で実施中の国営農地再編整備事業「A 地区」と国営緊急農地再編整備事業「B 地区」である。A 地区は畑地を対象に、B 地区は水田と畑地を対象に区画 整理を実施しており、両地区とも傾斜畑では傾斜改良を 伴った大区画化が行われている。GeoWEPP の解析対象と して、A 地区では 3 筆の圃場の段差を解消して均一で緩 やかな傾斜に改良した圃場を、B 地区では小河川の両岸 に広がる起伏のある圃場を均一な傾斜に改良した圃場群 を選定した。対象地における区画整理前後の地形および 土地利用状況を 図-11 に示す。A 地区の解析圃場の衛星 画像では、圃場の中央付近に侵食痕が確認できる( 図-12) 。 4.2.2 解析データの作成と解析方法

GeoWEPP のプログラムに取り込むデータは、 地形、 土壌、

土地利用、気象の 4 種類である。気象以外は GIS データ

(ラスターデータ、UTM 座標系)を用意する必要がある。

地形データは、各地区の事業者である国土交通省北海道 開発局より工事発注用図面の CAD データを入手し、 GIS ソ フトウェアに読み込んで標高コンターを抽出し、10m メ ッシュの標高ラスターデータを作成した( 図-13) 。土壌 データは、国土交通省から提供されている 20 万分の 1 土 壌図(引用)を利用した。土壌の理化学性は、地力保全基

図-11 解析対象地区の区画整理前後の地形

(10)

- 10 -

本調査(土壌調査)の成果(引用)を利用した。土地利用 データは、衛星画像(WorldView-2、カラー、地上分解能 50cm)を目視判読して作成した(図-14) 。衛星画像の撮 影日は、A 地区が 2014 年 6 月 25 日、B 地区が 2013 年 6 月 4 日で、いずれも区画整理前である。農地の作付けは すべてコムギとした。土壌と土地利用データは、地形デ ータに合わせて 10m メッシュのラスターデータに変換し た。このとき、メッシュ単位での土砂流出解析が可能と なるように、3 種類のラスターデータのメッシュが完全 に重なるようにしている。

解析に必要な気象要素は WEPP と同様、降水量、風向・

風速、気温、湿度、日射である。降水量は近傍アメダスを 利用し、これ以外は解析地点近傍で独自に観測した。解 析期間は 2017 年の 1 年間である。

GeoWEPP による解析により、区画整理前後での侵食状 況の違いを確認し、対象地の最大侵食量と平均侵食量を 算出することで、傾斜改良が土壌流亡に及ぼす影響を評 価することとした。前章では、効果解析の前に実測値の 再現性を検証したが、ここでは実測値が無いので、入力 パラメータをそのまま利用した。

4.3 解析結果

図-15 に GeoWEPP による土壌流亡量の解析結果を示す。

GeoWEPP の解析計算は流域単位で実施されるため、解析 対象の圃場でも流域外の部分は計算が行われない。また、

傾斜改良によって区画整理前後で流域界が変わっている。

A 地区の対象圃場は、区画整理前は圃場の低地部に向か って土壌侵食が発生し、最大で 10t・ha

-1

・y

-1

以上の侵食量 となっていた。一方、区画整理後は土壌侵食量は最大で 0.625t・ha

-1

・y

-1

未満となった。区画整理前は高低差が約 8m で平均斜度が 2.3 度となっており、傾斜は緩いが降雨 時に発生した表面水が低地部に集中して土壌侵食が発生

しやすい地形となっていた。一方、区画整理後は高低差 が約 5m、斜度はほぼ均一で大部分が 1 度未満となってお り、傾斜が緩くなったことに加え、表面水が集中しにく い地形となったことで侵食が抑制されたと考えられる。

なお、区画全体の侵食量は、区画整理前が 1.2t・ha

-1

・y

-1

、 整理後が 0.2t・ha

-1

・y

-1

であり、農地保全に必要とされる 許容流亡土量(10~15t・ha

-1

・y

-1

)は共に下回っていた。

B 地区の対象圃場は、区画整理前は右岸中ほどの谷部 に向かって比較的大きな侵食(最大で 10t・ha

-1

・y

-1

以上) が発生する計算結果となった。一方、区画整理後は、区画 整理前に侵食の発生していた谷部が埋められて傾斜の緩 い均一な圃場となったことで侵食が抑制さる計算結果と なった。区画整理前後での区画全体の侵食量は、右岸側 の圃場は 0.33t・ha

-1

・y

-1

から 0.33t・ha

-1

・y

-1

と変化無かっ たが、左岸側の圃場が 0.32t・ha

-1

・y

-1

から 0.24t・ha

-1

・y

-1

と減少した。

以上のように、区画整理前の解析では、傾斜の緩い地 形であっても、表面水が集中しやすい地形であれば、比

図-12 A 地区対象圃場の侵食痕

(画像は GoogleEarth(2007 年 5 月 21 日))

図-13 GeoWEPP に入力する区画整理前後の地形データ

図-14 B 地区の土地利用データ

(畑地の作付けはコムギ)

畑地 農家敷地等 水域

道路 林地等緑地

170m 201m

171m 202m

【B地区】

【A地区】

区画

整理前 区画

整理後

区画 整理後 区画

整理前

(11)

- 11 -

較的大きな土壌侵食が発生する可能性のあることが示さ れた。これに対し、区画整理によって傾斜が緩く斜面横 方向にうねりのない傾斜の均一な圃場に改良すると侵食 が抑制されることが同様に示された。今回の解析圃場で は、区画整理による斜面長の極端な長大化は無かったが、

斜面長が長くなると侵食が発生しやすくなるので、斜面 長が長くなる傾斜畑の大区画化には注意を要する。

4.4 小括

農地再編整備事業で実施されている区画整理による畑 地の傾斜改良が圃場の土壌侵食に及ぼす影響を、WEPP と GIS を融合させた土砂流出モデル GeoWEPP で解析する手 法を示した。メッシュ状の解析を行うことで、斜面の侵 食箇所を定量的に評価することができる。また、視覚的 に土壌侵食の危険性と傾斜改良の有用性を認識すること もできる。今後も傾斜畑の区画整理事業は継続して実施 されると考えられ、事業の副次的効果として侵食抑制効 果を算入することで、より効果の高い事業として評価さ れることになる。

5.おわりに

本研究では、土砂流出モデル WEPP が国内の一般技術者 に利用されるようになることを目的に、WEPP を様々な条 件に適用させ、その適用例を示した。WEPP の基本機能で ある単斜面での解析では、土層改良の実施と不耕起帯の

設置が融雪期の土壌流亡を抑制する効果を予測する方法 を示した。複数の斜面を水路に接続させた流域単位での 解析では、土層改良を流域内の全圃場に実施した場合の 効果を予測した。また、WEPP と GIS を融合させた土砂流 出モデル GeoWEPP を用いて、農地再編整備事業で実施さ れている区画整理による畑地の傾斜改良が圃場の土壌侵 食に及ぼす影響を解析した。

今後は、 WEPP が実際の事業や解析で利用されるように、

国内用の土壌パラメータを整備するとともに、導入が容 易となるようなマニュアルの作成が必要となる。

参考文献

1)巽和也、塚本康貴、中村隆一、北川巌:丘陵畑における土層 改良と不耕起帯の設置が土壌流亡に与える影響,第 67 回農 業農村工学会北海道支部研究発表会講演集、pp.8-11、2018 2)北海道農政部農村計画課(北海道立農業試験場):道営土地改

良事業調査地区土壌調査報告書、pp.157-161、2008 3)National Soil Erosion Research Laboratory : USDA-WATER

EROSION PREDICTION PROJECT, HILLSLOPE PROFILE MODEL DOCUMENTATION, USDA, NSERL Report #10, p.7.1, 1995(オンライン)、入手先<https://www.ars.usda.gov/

ARSUserFiles/50201000/WEPP/chap7.pdf> (2020年6月 22日確認)

区画

整理前 区画

整理後 Deposition < 2.5 0≦Soil Loss < 0.625 0.625Soil Loss < 1.25 1.250Soil Loss < 1.875 1.875 ≦Soil Loss < 2.5

2.5 ≦Soil Loss < 5.0 5.0Soil Loss < 7.5 7.5Soil Loss < 10

Soil Loss > 10 単位:t・ha-1・y-1

最大侵食量 10t・ha-1・y-1以上

最大侵食量 1t・ha-1・y-1未満

赤枠内平均 0.2t・ha-1・y-1 赤枠内平均

1.2t・ha-1・y-1

河道

左岸平均

0.32t・ha-1・y-1 左岸平均

0.24t・ha-1・y-1

【A地区】 【B地区】

区画

整理前 区画

整理後

右岸平均

0.33t・ha-1・y-1 右岸平均

0.33t・ha-1・y-1

図-15 GeoWEPP による土壌流亡量解析結果

(12)

- 12 -

STUDY ON IMPROVEMENT OF APPLICABILITY OF SEDIMENT RUNOFF MODEL IN UPLAND WATERSHED

Research Period : FY2016-2019

Research Team:Cold-Region Agricultural Development

Research Group

(Irrigation and Drainage Facilities ) Author:NAKAMURA Kazumasa

Author:KAWAGUCHI Kiyomi Author:UNOKI Keiji

Author:TANAKA Kenji Author:MURAKAMI Kou

Abstract:Sediment runoff can reduce the productivity of farmland due to the loss of fertile soil and weaken the land’s drainage functionality due to the accumulation of sediment. In addition, sediment that flows into the drainage canals eventually runs off into lakes and marshes downstream, which, together with the nutrients it contains, can deteriorate the water environment and negatively affect aquatic organisms' habitats and fisheries. In order to implement effective sediment runoff control measures, it is important to predict the effects of the measures in advance. Using a sediment runoff model is an effective way to do this. In the previous medium-term plan, the Water Erosion Predict Project (WEPP) was found to be an applicable and effective sediment runoff model for large field watersheds in cold, snowy regions. However, there have been few instances of application of the WEPP and its use has been limited in Japan. In this study, the WEPP was applied to various conditions with the purpose of providing a reference for domestic engineers.

Key words : sediment runoff, sloping upland field, WEPP, GeoWEPP

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