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終末期がん患者が在宅療養を継続するうえで家族が支える要因

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Academic year: 2021

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Ⅰ.緒 言. わが国の年間死亡者数は増加傾向にあり,2030年に は約 40万人の看取りの受け入れ先確保が困難になると いう報告がある 1).そのなかでも,がん死亡数は年間約 37万人であり,全死亡数の 27.9%を占め,死因第 1位 である.厚生労働省は終末期がん患者の在宅療養を推進 する政策を立てているが,なかなか在宅での看取りが進 んでいない現状がある.遺族調査では自宅死を希望して いると推定されるがん患者数は,がん死亡の 31%であ ると指摘されている 2)が,実際のがん死亡のうちの自宅 死は 11.68%である 1). 在宅死を希望するがん患者が安心して最期まで在宅で. 暮らすためには,在宅医療・福祉の連携,24時間の支 援体制,医療従事者の症状コントロールの知識と技術の 向上,家族支援のあり方などが課題となる 3).また,終 末期がん患者の在宅療養が困難になる理由として,症状 のコントロールや社会的サポートの不十分さ,家族の介 護負担などが指摘されており,がん患者が最期まで在宅 で過ごすには家族の協力が不可欠 4)といわれる. 在宅で看取る家族は,看取りにともなう困難な状況や. 葛藤を解決するために折り合いをつけたり 5),在宅で介 護しながら患者の病状悪化やそれにともない緊張を強い られる意思決定を迫られたりする 6)状況が報告されてい る.また,がん患者の家族がかかえる困難は,がん末期 症状の認識不足により状況判断ができないことや身体症. 状への対応ができないこと,慣れない介護や疲労,患者 の状態が悪化するなかでの沈痛な思いなどがあげら れ 7),在宅療養移行や継続の阻害要因としては介護する 家族への負担がもっとも多く,次いで急変時対応への不 安が多い 8).在宅での看取りは家族にとって心身ともに 大きな負担となるものであり,その負担を少しでも軽く しなければ在宅での看取りは実現しないといえる 9). 一方でがん患者の在宅での看取りは,達成感や家族関 係の改善などポジティブな結果が顕著であり 10),看取 りの経験は看取る家族に不安や負担を与えるだけでな く,看取りにともなう後悔を少なくしたり,家族の人間 的成長に寄与したりする側面がある 11).在宅療養を行 うことができる要因としては,必要な医療・介護サービ スが確保できること,家族などの介護者が確保できるこ と,本人・家族が在宅を強く希望することが主であ る 12).また,家族ががん患者を在宅で看取る覚悟を支 える要因としては,在宅での看取りを受け入れる思いが あること,家族を取り巻く人々の協力が得られること, 患者・家族の置かれた現状を認識し自己決定することが あげられる 11).また,がん患者の在宅療養は長くて 3 カ月で,その期間家族が覚悟をもって介護すればなんと かなる 13)という心理を抱く報告があり,在宅ケアの期 間が限られていることを家族が認識できることが在宅で の看取りにつながる 11)といえる. しかし,先行研究によって在宅での療養を始める要因 や,在宅療養を阻害する要因については明らかになって. ■ 総 説. 終末期がん患者が在宅療養を継続するうえで 家族が支える要因*. 西 尾 育 子**. ** 鹿児島大学医学部保健学科看護学専攻. Key words : 家族,がん,在宅療養,終末期 (family, cancer, home-based care, end-of-life). (受付日:2020年 3月 2日,受理日:2020年 9月 21日,公開日:2021年 4月 23日) 連絡先 西尾育子/鹿児島大学医学部保健学科看護学専攻 〒 890─8544 鹿児島県鹿児島市桜ケ丘 8─35─1 Phone: 099─275─6758/FAX: 099─275─6762/E─mail: [email protected]. 日がん看会誌 35巻 2021年 121. いるが,在宅での療養の継続に関する要因については詳 しく言及されていない.在宅療養が始まってから看取る 最期の時までの期間を支える継続要因を明らかにするこ とは,在宅で生活するがん患者と家族の生活の質の向上 と負担軽減につながると考える. そこで,本研究では終末期がん患者が在宅療養の継続. するうえで家族が支える要因について明らかにすること を目的とした.. Ⅱ.研究方法. 1. データ収集方法 医中誌Webを用いて,2007年から 2018年の 12年間. に発表された文献を対象とし,「がん」「終末期」「在宅」 「継続」「家族」の 5つをキーワードとして検索を行った. 在宅療養を継続する要因に関する 67文献を選出し,さ らにハンドリサーチによって 5文献を選出した.その他 62文献については精読を行い,1文献を選出した.さら に在宅における終末期の家族を対象にした研究をより抽 出するために,「がん」「家族」「終末期」の 3つをキーワー ドとして,看護文献の原著論文であること,最新 10年 分であること,会議録と症例・事例を除くことを条件で 検索を行った.在宅療養の継続に関係しないものや,テー マ・抄録が研究目的に合致しないものは除外し,精読し て絞り込んでいった結果,2文献を選出し,最終的に研 究目的に合った 8文献を分析の対象とした. 2. 分析方法. 1)データ化 在宅療養を継続するための要因を明らかにするため. に,レビューシートを作成し,データ化した.タイトル, 掲載誌,掲載年,研究対象,主介護者,がん患者,在宅 療養期間,在宅療養を継続する要因を項目としてあげた. 在宅療養を継続する要因の項目は,論文中に在宅療養を 継続する要因を表現している部分をデータとして抽出し た.. 2)データ分析 分析は,Berelson. Bの内容分析の手法を参考にした.. Berelson. Bの分析方法とは,伝達内容がなにに関する ものなのか,客観的に判断し,客観的に判断した内容を 類似性に従い体系化して分類し,その分類を数えるとい う数量的な方法である 14).分析は,在宅療養の継続要 因に関する単文(主語と述語の関係を 1組だけ含む文) をデータとした.在宅療養を継続するための要因を,そ の単位に関する意味的特性を推論しコード化した.そし て,家族側の要因,医療者側の要因,周囲の人々の要因. に分類後,サブカテゴリ化した.さらにカテゴリ化を行 い,カテゴリを抽出した.また,在宅療養を継続するた めの要因同士の関連を分析するために,3つのカテゴリ (家族側の要因,医療者側の要因,周囲の人々側の要因) と,各要因のサブカテゴリ間の関係を示す関連図を作成 した.さらに,導き出された在宅療養の継続要因から, 在宅での療養を継続するための看護援助について検討し た.データを抽出し分類する際,データによっては家族 側の要因にも医療者側の要因にも解釈できるものがあっ たため,それらはそれぞれに 1つのデータとして分類し た.データ化およびデータ分析を含めた研究の全過程の 信頼性,妥当性については,質的研究の経験が豊富でが ん看護のエキスパートであるスーパーバイザーから定期 的な指導を受け,抽出したデータがサブカテゴリ,カテ ゴリに反映しているか,終末期がん患者家族の在宅療養 を継続するための要因を表しているものであるかについ て確認し,信頼性・妥当性の確保に努めた. 3. 用語の定義 家族:本研究では,普段がん患者とよりかかわってい る者(主介護者,介護者)に焦点を当てるため,同じ世 帯に暮らしている者とする.お互いに絆を共有し,情緒 的な親密さによって互いに結びついた,しかも,同じ世 帯に暮らしていなくても家族であると自覚している 2人 以上の成員.. Ⅲ.結 果. 1.分析対象の概要 表 1~3に示したとおりである.がん患者の年齢は 70 代と 80代がもっとも多く,在宅期間は論文ごとに差は あったが,1カ月以上 2カ月未満がもっとも多かった. 主介護者の年齢は 50代と 60代がもっとも多く,性差 は女性のほうが多かった.また続柄は娘が最多で,次い で妻,夫,息子,嫁の順であった.主介護者の就業状況 は,主婦がもっとも多かった. 2.在宅療養を継続する要因 分析した結果,187データが得られ,27コード,7サ ブカテゴリ,3カテゴリが抽出された.以下,カテゴリ を【 】,サブカテゴリを「 」,コードを〈 〉にて表 す(表 4).また,%は全記録単位における割合を示す.. 1)【家族側の要因】 このカテゴリは 128データ(68.4%)から成り,在宅 療養の継続要因としてもっとも多かった.「主体的に取 り組む:40データ(21.4%)」「自宅での最期を見据える: 18データ(9.6%)」「一緒にいられることに価値を感じる:. 日がん看会誌 35巻 2021年122. 表 1 対象文献の概要. タイトル (著者). 掲載誌・ 発行年 研究目的 研究対象 分析方法 得られた結果. がん患者を在 宅で看取った 家族の覚悟を 支えた要因 (大西奈保子). 日本看護 科学会誌 2015年. がん患者を在宅で看 取った家族の覚悟とそ の覚悟を維持するのに 必要な要因を明らかに する.. 主介護者(家 族)15名. グランデッドアプローチを参考に 継続的比較分析を行った.. 15のコード,32の概念,8のサブ カテゴリー,3のカテゴリが抽出 された.がん患者を在宅で看取っ た家族の覚悟を支えたカテゴリは, 家族の人生観・死生観である《在 宅での看取りを受け入れる思い》, 家族を取り巻く人間関係である《周 囲の人々の協力》,家族が患者・家 族の置かれた現状を認識する《在 宅ケアを継続する勇気》であった. 家族の在宅での看取りの覚悟を支 えるには,これらの要因に介入し ていくことが必要であることが示 唆された.. 終末期がん患 者の在宅療養 を促進・阻害 する出来事が 死亡場所に与 えた影響 -継 時的なパター ン分類化(大 園康文,福井 小紀子,川野 英子). Palliative Care Research 2014年. 訪問看護師に在宅療養 中の終末期がん患者の なかで病院死に至った 事例における入院とな るきっかけとなった出 来事,および在宅死に 至った事例における入 院を考えた出来事につ いて尋ね,そこから在 宅療養継続を促進する 出来事および阻害する 出来事を経時的に分析 し,これらの出来事が 死亡場所に与えた影響 をパターン分類し,明 らかにする. 訪問看護ス テーションに 勤務する訪問 看護師 17名, 療養者 34名. ①退院数日前から在宅療養開始後 約 1週間を[導入期],在宅療養開 始 2週間目から死亡前約 1週間を [安定期],死亡前約 1週間を[臨 死期]に分け,そのなかで在宅療 養継続を促進する出来事と阻害す る出来事について内容分析の手法 を用いて分析を行った.②在宅療 養継続を促進する要因として療養 者の在宅死への意向や往診医の支 援など,阻害する要因として介護 負担や症状の増悪などを想定し, これらを根拠として促進および阻 害する出来事を分類した.③事例 ごとに促進する出来事と阻害する 出来事を抜き出し,次の手順を用 いて点数化し,その出来事の特徴 別にパターン分類を行った.. 在宅死に至った事例では,①最初 から在宅死を望み最期まで継続で きた,②促進する出来事と阻害す る出来事を経験しながら最期まで 継続できた,③副介護者の強い希 望で在宅死した,事例の 3つに分 けられた.病院死に至った事例で は,①在宅療養継続を望んでいた が症状が増強し入院した,②阻害 する出来事が重なり入院した,③ 家族が介護に消極的で症状増強や 医師の意向にしたがって入院した, 事例の 3つに分けられた.在宅療 養継続を促進・阻害する出来事を 経時的に分類することで,パター ンに応じた適切な対応策について 示唆を得ることができた. がん終末期療 養者を自宅で 看取った家族 介護者のセル フケア(宮林 香奈子,古瀬 みどり). 家族看護 学研究 2014年. がん終末期療養者を自 宅で看取った家族介護 者がどのようにセルフ ケア機能を発揮し看取 りを行ったのかを明ら かにする. 訪問看護を利 用し,自宅で 看取りを行っ た成人のがん 療養者 10 名 の主介護者. 修正版グラウンデッド・セオリー・ アプローチ(Modified Grounded Theory Approach: M‒GTA)に基づ き分析を行った.. 療養者の〈入院中の苦痛への共感〉 が原動力となり,家族は【看取り に対する信念】をもち,〈介護を優 先した生活を送っていた〉.【在宅 介護継続上の困難】として〈看取 り体制をとれる期限〉がある療養 者の家族は【セルフケア行動】を〈介 護を優先した生活を送る〉から〈“家 族みんな”で介護を展開する〉に 変化させ,終末期の在宅介護を行っ ていた.【看取りに対する信念】は がん終末期療養者の在宅介護を行 ううえでの基盤であり,家族全員 で目標が一致した場合,家族によ る【セルフケア行動】を促進する 因子となっていた.. 在宅療養中の 終末期がん患 者を看病する 家族の心情と 療養支援に関 する質的研究 (堀井たづ子, 光木幸子,嶌 田理佳,大西 小百合). 京都府立 医科大学 看護学科 紀要 2008年. 終末期がん患者を在宅 で看病中の事例への面 接内容を質的に分析す ることで,看病する家 族の心情と療養継続に 関与する要因を抽出 し,家族支援のあり方 を明らかにする.. 在宅ホスピス や訪問看護を 利用している 終末期がん患 者の主介護者 5名.. 在宅療養継続にかかわる家族の心 情を抽出し,その意味内容を検討 しながらコード化した.コードの 意味内容は類似性・相違性に従い カテゴリー化した.カテゴリー化 した内容から,在宅療養継続にか かわる要因および医療者の支援の 関係性を構造化した.. 在宅療養継続にかかわる要因とし て,【絆】【愛情】【役割認識】【死 が避けられない現実】【家族が 1番 いい】【覚悟】【不安感】【負担感】【不 足感】【疲労感】【葛藤】【対処】【満 足感】【安心が保証される支援】の 14のカテゴリが抽出された.これ らを構造化し,療養者と家族は【家 が 1番いい】という思いを核とし ながらも,在宅療養継続の困難と 維持の要因により,家族は揺らぎ を生じさせており,そうした家族 のもつ課題に対する【安心が保証 される支援】がひては家族の力を 強化することが示唆された.. 日がん看会誌 35巻 2021年 123. 表 1 対象文献の概要. タイトル (著者). 掲載誌・ 発行年 研究目的 研究対象 分析方法 得られた結果. 在宅で終末期 の家族を看 取った遺族か ら見た在宅療 養への認識 (安藤満代, 二の坂保喜). 生命倫理 2014年. 自宅で患者を看取った 家族が遺族となってか ら,在宅療養をどのよ うに感じていたのか, その認識について明ら かにする.. 終末期の患者 を在宅で介護 し,その後, 患者が亡く なってから遺 族となった 方.なくなっ てから半年以 上から 2年以 内の遺族 45 名.. 「在宅療養に対してどのように感じ たか」に関する自由記述に対して 内容分析を行った.. 【ケアリングの精神があるケア】【介 護に対する自信を高めるケア】【各 専門職による適切なケア】【在宅療 養への満足感】【在宅療養への推進 の気持ち】という在宅療養に対し て肯定的な 5カテゴリが抽出され た.一方では,【後悔】【疑問に思 うこと】という,今後の課題も抽 出された.これらの結果から,家 族は在宅療養にほとんど満足して いるが,後悔や疑問に思うことも あり,今後はこれらを解消するこ とでさらに在宅療養への認識も肯 定的になると示唆された.. 在宅における 家族介護者の 現状と課題 (森英里奈, 上杉裕子). 日本保健 医療行動 科学会雑 誌 2016年. 家族介護者の現状と課 題を明らかにし,家族 介護者に対する支援の ための資料を得る.. 医学中央雑誌 (Web)および PubMedを用 い,2000年 から 2015年 までに発表さ れた文献.家 族介護者,介 護評価,介護 継続,の 3つ をキーワード として,研究 目的,原著論 文とした.対 象文献は 46 文献.. 日本における介護の社会化,文化 的背景と家族介護者,家族介護者 による介護評価,家族介護者によ る介護継続の現状の 4つの観点か ら分析を行った.. 介護保険導入後も在院日数の短縮 化や在宅療養の推進により,家族 介護者の介護負担は依然として大 きく,家族介護者の健康や介護力 の低下に対する支援は十分でない という現状が明らかになった.ま た,わが国の家族介護者は,「家」 制度や家族介護意識の高さといっ た文化的背景から,介護負担を溜 め込みやすい特徴があった.加え て,家族介護者が介護をどうとら えるかという介護評価においては, 肯定・否定の両評価が存在してお り,肯定的評価が家族介護者の介 護継続意欲を高めることが明らか にされていた. 在宅でがん患 者の看取りに 取り組む家族 のコミットメ ント(関根光 枝,長戸和子, 野嶋佐由美). 家族看護 学研究 2010年. 困難な課題のなか,が んに擢患し終末期にあ る病者をかかえる家族 が,在宅で病者を看 取った体験を記述する ことを通して,病者を 在宅で看取るという状 況に向かつて取り組む 家族のコミットメント とはどのようなものか を明らかにする.. がんに罹患し 終末期にある 患者をかかえ る家族でおも に患者の介護 を担っていた 家族員.. 得られたデータは質的帰納的に分 析を行った.. 在宅での看取りに取り組む家族の コミットメントには,【家族のあり 様の再考】【家族としての決意】【看 取りへの専心】【揺らぎのなかでの 意味の発見】という 4つの局面が 含まれていることが明らかになっ た.つまり,在宅での看取りに取 り組む家族のコミットメントとは, 家族が病者の終末期を迎え,病者 の状態や家族自身の置かれている 状況を吟味しつつ,【家族のあり様 の再考】を行いながら【家族とし ての決意】を明確にして【看取り への専心】につなげ,【揺らぎのな かでの意味の発見】をしながら, 家族として在宅での看取りという 状況に向かって取り組み続けると いう構えであった.. 在宅で終末期 がん患者を介 護した家族の 体験(横田美 智子,秋元典 子). 日本がん 看護学会 誌 2008年. 在宅で終末期がん患者 を介護した家族の体験 を明らかにする.. A県内の訪問 看護ステー ションから訪 問看護を受け ながら,在宅 で終末期がん 患者を介護し た家族.. Krippendorff, Kの内容分析の手法 を参考質的帰納的に分析を行った.. 在宅で終末期がん患者を介護した 家族の体験は【無力さを感じる】【医 療・保険制度に不満と怒りを感じ る】【介護者自身の心身の安定を求 める】【介護の主体者であることを 自負する】【専門職者とのつながり を支えに頑張る】【患者に死期が迫 りつつあることを意識し苦悩する】 【介護に奮闘する】【患者の状況に 気持ちがゆれる】【在宅介護のよさ も困難さも実感する】【介護の力を 高める】【家族成員間のつながりを 再認識する】【新しい家族の姿を模 索する】の 12に集約された.. (続き). 日がん看会誌 35巻 2021年124. 18データ(9.6%)」「医療者を頼る:17データ(9.1%)」 「家族として介護にあたる:14データ(7.5%)」「ストレ スコーピングをとる:14データ(7.5%)」「がん患者を 大切に思う:7データ(3.7%)」の 7つのサブカテゴリ が抽出された.. 2)【医療者側の要因】 このカテゴリは,47データ(25.1%)から成り,「安 心できるケアの提供:31データ(16.6%)」「相談対応や 指導:15データ(8.0%)」「レスパイトケアの利用:1デー タ(0.5%)」の 3つのサブカテゴリが抽出された.. 3)【周囲の人々の要因】 このカテゴリは,12データ(6.4%)から成り,「周囲. の人々とのかかわり:9データ(4.8%)」「地域社会とつ ながっていることを認識する:3データ(1.6%)」の 2 つのサブカテゴリが抽出された. 3.終末期がん患者が在宅療養を継続するうえで家 族が支える要因 在宅療養を継続するための要因の関連を図 1に示す.. 在宅療養を継続するためには,主介護者の主体的な取り 組みが重要になる.そのためには,在宅療養を開始する きっかけとなる「がん患者を大切に思う」気持ちをもち 続けることと,「医療者を頼る」あるいは「相談対応や 指導」を受けることが重要となる.とくに,医療者との かかわりは,「主体的に取り組む」のなかの〈介護力を 高める〉ために非常に重要であり,介護に必要な知識・ 手技の獲得,今後のがん患者の経過などを知ることに よって,〈がん患者の状態を把握する〉〈介護の目標・信 条をもつ〉ことができ,主体的な取り組みを促進させる ことにつながる.また,医療者側の要因である「安心で きるケアの提供」「相談対応や指導」は,家族の〈介護 力を高める〉ことにつながるが,在宅療養にかかわる不 安の軽減にもつながる.〈在宅ケア体制の充実〉〈24時 間対応〉〈行き届いたケア〉により,家族は〈医療者と 常につながっていることを認識する〉ことができ,安心 して在宅療養を継続することができる.さらに〈症状が 緩和される〉ことや〈状態が安定している〉ことは,家 族へ安心感を与え,さらに〈介護力を高め〉,介護の対. 表 2 がん患者の背景 n= 116. 項目 人数(%). 年齢. 50代未満 1(2.3) 50代 6(14.0) 60代 7(16.3) 70代 13(30.2) 80代 14(32.6) 90代以上 2(4.7). 性別 男性:女性= 8:8(記載なしが 100). 診断名. 肺がん 5(17.9) 乳がん 3(10.7) 胃がん 2(7.1) 脳腫瘍 2(7.1) 食道がん 2(7.1) 甲状腺がん 2(7.1) 前立腺がん 2(7.1) 肝がん 1(3.6) 腹膜がん 1(3.6) 胆管がん 1(3.6) 胆のうがん 1(3.6) S状結腸がん 1(3.6) 大腸がん 1(3.6) 直腸がん 1(3.6) 悪性リンパ腫 1(3.6) 中咽頭がん 1(3.6) 膀胱がん 1(3.6). 在宅療養期間. 9日~ 38カ月 1(2.2) 1カ月未満 8(17.8) 1カ月以上 2カ月未満 17(37.0) 2カ月以上 3カ月未満 3(6.7) 3カ月以上 6カ月未満 8(17.8) 6カ月以上 1年未満 1(2.2) 1年以上 2年未満 4(8.9) 2年以上 4(8.9). ※論文中にがん患者の背景が明記されている文献から抽出した (年齢 2文献,診断名 5文献は表記なし).. 表 3 主介護者の背景 n= 123. 項目 人数(%). 年齢. 30代未満 1(2.0) 30代 1(2.0) 40代 6(12.2) 50代 14(28.6) 60代 16(32.7) 70代 7(14.3) 80代 3(6.1) 90代以上 1(2.0). 性別 男性:女性= 18:39. 続柄. 娘 19(33.3) 妻 17(30.0) 夫 10(17.5) 息子 8(14.0) 嫁 3(5.3). 職業 主婦 6(60.0) 無職 3(30.0) パート 1(10.0). ※論文中に明記されている文献から抽出した(年齢 3文献,続柄 1文献,職業 6文献は表記なし).. 日がん看会誌 35巻 2021年 125. 表 4 在宅療養継続の要因. カテゴリ サブカテゴリ コード データ(データ数) 家族側の要因 (128:68.4%). 主体的に取り組む (40:21.4%). 介護力を高める(13:7.0%) 訪問看護師から学び介護力を高める(6) 介護者として自覚する(7:3.7%) (介護を)当たり前のこととして担う(5) 日常生活を保つ(5:2.7%) 家族としての生活を保つ(5) 看取りの経験を活かす(4:2.1%) 家族が以前,経験した看取りの内容が今のがん患者の看. 取りに生かされている(1) 介護生活に没頭する(3:1.6%) 日々のことに没入する(5) 介護の目標・信条をもつ(3:1.6%) 看取りに向かう目標をもつ(5) がん患者の状態を把握する(3:1.6%) 家族自身ががん患者の(身体的)状態を知る(ことがで. きる)(1) 状態が安定している(2:1.1%) がん患者の心身の安定を喜ぶ(8). 自宅での最期を見 据える (18:9.6%). 看取りに向けた心の準備をする(10:5.3%)がん患者の最期を覚悟していた(1) 最期まで自宅で過ごしたい(5:2.7%) 家族としての責任やがん患者を家で看取ってあげたい(1) 介護の終わりを意識する(3:1.6%) ある程度(介護の)ゴールがみえていた(1). 一緒にいられるこ とに価値を感じる (18:9.6%). 一緒にいられることが力になる(8:4.3%)がん患者とともに自宅で過ごせることに安心と安らぎを 感じる(6). がん患者から力をもらう(5:2.7%) 本人が頑張ろうという姿勢が見えた(4) お互いに支え合う(5:2.7%) 互いに思いやる(3). 医療者を頼る (17:9.1%). 医療者と常につながっていることを認識す る(9:4.8%). 専門職者とともに介護を担っていることを意識する(6). 医療者を信用する(8:4.3%) 先生や看護師が訪問してくれて自分も介護に自信がもて た(4). 家族として介護に あたる (14:7.5%). 家族で協力して介護にあたる(6:3.2%) 家族みんなで介護を展開する(2) 家族で支え合う(3:1.6%) 家族の支えに励まされる(6) 家族で話し合う(2:1.1%) 普段から家族内で死についての話し合いをしていた(1) 介護状況に合わせて新しい生活様式を模索 する(2:1.1%). がん患者の介護を含めた家族の新しい生活を模索する(6). 死の受容を促す(1:0.5%) ほかの家族員にがん患者の死の受容を促す(8) ストレスコーピン グをとる (14:7.5%). 気分転換や息抜きをする(6:3.2%) なにかで気分転換することで介護への英気を養う(7) 助けを求める(4:2.1%) 介護者としてのしがらみから解放される時間を求める(6) 知ってもらう(3:1.6%) (話を)聞いてもらう(3) 認められる(1:0.5%) (医療者に)分かってもらえる(3). がん患者を大切に 思う(7:3.7%). がん患者の思いを尊重する(5:2.7%) 最期までその人らしく生活させたい(1) 恩返しがしたい(2:1.1%) がん患者への恩返し(1). 医療者側の要 因 (47:25.1%). 安心できるケアの 提供 (31:16.6%). 信頼関係の形成(12:6.4%) 親身になってくれる(3) 行き届いたケア(9:4.8%) (最後まで)ケアしてくれた(4) 在宅ケア体制の充実(5:2.7%) 訪問看護師と往診医の連携がうまくいっている(3) 24時間対応(4:2.1%) 先生や訪問看護の方が昼夜問わず来てくれた(4) 症状が緩和される(1:0.5%) 症状コントロールをしてくれた(1). 相談対応や指導 (15:8.0%). 指導・助言(7:3.7%) スタッフから教わることが多かった(4) 相談対応(5:2.7%) いつでも相談できる(3) 心の準備を促す(3:1.6%) 家での看取りができるように医療者から覚悟を促されて. いた(1) レスパイトケアの 利用(1:0.5%). 介護から離れる時間の確保(1:0.5%) 介護から離れる時間をつくってくれた(1). 周囲の人々の 要因 (12:6.4%). 周囲の人々とのか かわり(9:4.8%). 周囲の人からの手助け(4:2.1%) 友人・近所の人の助けがあった(1) 周囲の誰かに状況を知ってもらう(2:1.1%)(家族の話を)聞いてもらう(3) 頑張りを認められる(2:1.1%) 認められた(3) 励まされる(1:0.5%) 友人の励ましに支えられる(6). 地域社会とつな がっていることを 認識する(3:1.6%). 地域社会とのつながりを認識する(3:1.6%)従来からの社会とのつながりがあることを確認する(5). ※(データ数:%). 日がん看会誌 35巻 2021年126. 応力が向上すれば介護への自信につながる. そうした在宅療養を継続していくなかで,家族はがん. 患者の経過が把握でき,医療者から〈心の準備を促す〉 働きかけで,がん患者の最期を見据えて,心の準備を整 えていく.がん患者の状態・状況に合わせて,「相談対 応や指導」を適宜受けて〈介護状況に合わせて新しい生 活様式を模索する〉ことで,在宅療養を継続している. そして「一緒にいられることに価値を感じる」ことがで きれば,在宅療養の源となる〈がん患者の思いを尊重す る〉気持ちが高まり,より「主体的に介護に取り組む」 ことが可能になる.それだけでなく,介護負担の軽減と ストレスコーピングが必要である.「家族として介護に あたる」ことで,1人にかかる介護負担を減らすことが できるため,医療者は役割分担などについて家族で話し 合う機会を設けることや,適宜相談対応や指導を行うこ とが効果的である. また,家族にとってはレスパイトケアを受けることも. 重要であり,レスパイトケアについての情報提供や利用 の促しなどを医療者が行う必要がある.加えて,〈気分 転換や息抜きをする〉ことや〈助けを求める〉ための声 かけや関係の形成も普段から行うことが重要である.同 様に〈頑張りを認められる〉ことや〈励まされる〉こと, 〈周囲の誰かに状況を知ってもらう〉ことでも安心感を. もたらせ,在宅療養の継続につながる.. Ⅳ.考 察. 1.がん患者の在宅療養期間と主介護者について 在宅療養期間では,3カ月未満の割合が 62.3%を占め ており,とくに 1カ月以上 2カ月未満が最多で 3割を超 えていた.〈介護の終わりを意識する〉ことが要因とし てあげられたことは,先行研究 13)と合致しており,在 宅ケアの期間が限定されていることを認識できることが 在宅での看取りにつながるといえる.家族に対して,余 命の受容や経過の理解を促したうえでの看取りに向けた 介護を支援していくことが,在宅療養を継続するために は効果的であると推察される. 2.在宅療養を継続する要因について. 1)家族側の要因について 【家族側の要因】は全体の 68.4%を占めた.そのうち,. 「主体的に取り組む」ことが全体の 21.4%を占め,もっ とも多い要因であった.その理由として,〈介護力を高 める〉ために,〈看取りの経験を活かす〉〈がん患者の状 態を把握する〉ことは,介護に必要な知識手技の獲得に つながる.〈介護者として自覚する〉〈日常生活を保つ〉〈介 護に没頭する〉ことは介護をふまえた日常生活の追求,. 周囲の人々の要因. 医療者側の要因. 周囲の人々とのかかわり. 家族として介護にあたる. がん患者を大切に思う :カテゴリにかかわる要因. 自宅での最期を見据える. ストレスコーピングをとる. 医療者を頼る. レスパイトケアの利用. 安心できるケアの提供 相談対応や指導. 家族側の要因. 一緒にいられることに 価値を感じる. 在宅療養の継続. :カテゴリ. :家族側のサブカテゴリ :医療者側のサブカテゴリ. :周囲の人々のサブカテゴリ. 知識・手技の獲得. 安心. 地域社会とつながって いることを認識する. 主体的に取り組む. 図 1 終末期がん患者家族の在宅療養を継続するための要因の関連. 日がん看会誌 35巻 2021年 127. 家族としての生活を高めることから在宅療養の継続につ ながるのではないかと考えられる. 在宅療養の継続阻害要因である,がん末期症状の認識. 不足や身体症状への対応がしきれないこと 7)に対して, 〈介護力を高める〉〈看取りの経験を活かす〉〈がん患者 の状態を把握する〉ことが,それらの阻害要因を軽減す るのに効果的であり,在宅療養の継続につながっている と考えられる.また,阻害要因の軽減だけでなく,知識 手技の獲得にともなう介護力の向上と介護への自信がも てることで介護負担感の軽減にもつながり,より主体的 に介護に取り組め,在宅療養の継続が可能にできるので はないかと推察する.〈介護者として自覚する〉ことは, 介護に対して前向きに取り組むことであり,在宅療養開 始時の在宅療養への思いをもち続けていることの表れで あると考えられる.在宅療養が始められる要因として, 家族が在宅での療養を強く希望することがあげられ る 12)が,在宅療養の継続要因としても同様であり,〈介 護を当たり前のこととして担う〉というコードのように, 在宅療養の希望,自身が介護者として重要な立場である ことへの認識が在宅療養の継続には重要であると考えら れる.また,〈介護生活に没頭する〉〈介護の目標・信条 をもつ〉ことも同様で,先行研究で在宅療養中の家族の 役割認識として看病への責任をもつことや,いつも気に することが在宅療養の継続要因としてあげられてい る 15)ように,在宅療養の継続には重要あると考えられ る. 〈日常生活を保つ〉ことがあげられたのは,介護をす る生活に余裕をもつこともできていることも関係してい るのではないかと考えられる.在宅療養継続の阻害要因 として,知識不足や身体症状に対応できないことが最初 にあげられるように,不安のなかで介護を行い,生活が 変化してしまうことは大きなストレスであり,家族とし ての QOLも低下する.介護力を高めることや介護に没 頭し,慣れてくればもとの生活,あるいは介護に適した 家族の生活を送ることが可能になる.このような生活を 送れることが心の余裕や整った環境整備,より主体的な 介護生活への基盤となり,在宅療養の継続が可能になる と考えられる. さらに〈がん患者の状態を把握する〉〈状態が安定し ている〉ことも在宅療養の継続にかかわる.がん患者の 状態を把握する方法が身につくと,医療者が不在の時で も実践ができ,異常のサインがある時には迅速に報告, 対応することもできる.現在のがん患者の状態を把握で きることは,早期対応だけでなく,日頃の観察も含めた 介護の質の向上や状態が理解できることの安心感から,. 在宅療養の継続につながるのではないかと考えられる. また,がん患者の状態が安定していることは家族にとっ て大切なことであり,在宅療養が困難となる要因に,症 状のコントロールが不十分であることがあげられてい る 4).がん患者が苦しんでいる姿をみること,それに対 応できないことは非常につらいことであり,無力感に苛 まれることがある.がん患者の状態が安定して,問題な く生活を送れていると実感することが在宅療養の継続に おいて重要なことであると推察される. 「自宅での最期を見据える」は全体の 9.6%を占めてい た.【家族側の要因】のなかで 2番目に多いサブカテゴ リであり,看取りへの心の準備や介護の終わりを意識す る部分である.病名告知や在宅療養開始時よりも疾患が 進行し,がん患者の変化や看取る瞬間のイメージが具体 的になっていく終末期では,最期を見据えることは非常 に重要なことであり,全体の約 1割を占める要因となっ ているのではないかと考えられる.「自宅での最期を見 据える」ことは,まず家族の死を受け入れ,準備するこ とである.病名を宣告され,家族も葛藤し受容過程をた どっている.がん終末期では在宅療養を始めた頃に比べ て,介護を通してがん患者の身体的な変化や,がん患者 の思いに触れ,より具体的に死を意識して看取る覚悟や 準備ができることで,最期まで在宅で看取ることが可能 になると考えられる.先行研究で指摘があるように,看 取りの覚悟なしに在宅での看取りは実現しない 11)こと は,本研究の〈看取りに向けた心の準備をする〉とも一 致していると考えられる. また,〈最期まで自宅で過ごしたい〉という思いが在 宅療養の継続を促しているが,重要なのは家で看取るこ とに重きを置いて生活していることである.がん患者の 思いを叶えられているという満足感を感じられるだけで なく,家で看取る,あるいは在宅療養を継続できている ということは,それだけで達成感や家族関係の改善,後 悔を減らすなど家族にとってもポジティブな結果が出 る 10)と述べられているように,最期まで自宅で過ごし たいという思いのもと,介護生活が送れていることが在 宅療養の継続につながっているのだと考えられる.さら に,〈介護の終わりを意識する〉ことは,ある程度介護 の終わりが見えることも 10)在宅療養の継続につながる ため,本研究も同様であった. 「一緒にいられることに価値を感じる」ことは,「自宅 での最期を見据える」と同じ割合で,全体の 9.6%を占 めていた.一緒にいられることそのものが在宅療養の継 続要因となっている分,実感もあり,継続要因として高 い効果をもたらすと考えられる.〈一緒にいられること. 日がん看会誌 35巻 2021年128. が力になる〉には,がん患者の状態が安定していること が必要であるが,一緒にいられることが介護者にとって 力になると感じることができれば,さらに介護に奮闘し, 看取りまで完遂することにつながると考えられる.〈が ん患者から力をもらう〉〈お互いに支え合う〉も同様で あり,がん患者との普段のかかわりが要因となっている と推察される. 「医療者を頼る」ことは全体の 9.1%を占めていた.そ の理由として,医療者とのつながりは緊急時対応などだ けでなく,日常生活を送るうえでの安心感にもつながる. 在宅療養は医療者や専門職が後押ししてくれているとい う感覚をもつことで継続することができると考えられ る.医療者を頼るためには,信頼関係が必要不可欠であ るが,それに関しては次項の医療者側の要因のところで 述べる.〈医療者と常につながっていることを認識する〉 ことは,がん患者の急変時や不測の事態が生じた際の早 期対処だけでなく,専門職者も一緒になって介護してい るという不安の軽減,家族あるいは介護者だけでないと いう安心感や,負担感・介護への重圧感の軽減が図れる ために,在宅療養の継続には重要なことである.また,〈医 療者を信用する〉ことも同様で,信用できる医療スタッ フが来てくれること,なにかあればかけつけてくれるこ とを認識できていれば,それだけで日常生活は安心感が もたらされ,在宅療養の継続につながると推察される. 「家族として介護にあたる」は,全体の 7.5%を占めて おり,家族での協力体制やかかわり合い,新しい生活様 式の模索が効果的であることが示された.「主体的に取 り組む」「自宅での最期を見据える」に比べると割合は 小さいが,家族としての支援体制を整えること,お互い に支え合うことは,在宅療養の継続のためには有効であ る.これは,家族で役割分担を行い,一人ひとりの負担 を軽減できるように工夫することが在宅療養の継続に効 果的である 16)という内容と合致している.〈家族で協力 して介護にあたる〉〈家族で支え合う〉ことが,おもに 役割分担などの協力体制として必要であるが,それを実 行するためにも話し合う機会を設けて家族で話し合うこ とが重要であり,さらに心の準備も家族での取り組みの なかで行われるため,話し合うことはきわめて重要であ る 11).本研究もがん患者の状態や家族の状況によって もその時どきで生活様式は変化させていくことが必要で あるため,家族で協力して介護にあたることは重要であ ることが示唆された. 「ストレスコーピングをとる」ことは全体の 7.5%を占 めていた.介護をしていくうえで,気分転換として好き なことをしたり,介護から離れる時間をつくることは非. 常に重要なことであり,病院よりも自由に動けることは 介護継続を後押しする 17)とされ,介護するための英気 を養ったり日常のストレスを発散する機会をもつことは 本研究の結果と合致している.また,周囲の人に状況を 知ってもらうことや話を聞いてもらうこと,助けを求め ることで不安の軽減や社会とのつながりの認識が生ま れ,心の拠り所ができることで安心感につながることが 効果的であると考えられる.ストレスコーピングは,「家 族として介護にあたる」ことと同等に在宅療養の継続に 必要であることが示唆された. 「がん患者を大切に思う」ことは,全体の 3.7%,家族 側の要因のなかでもっとも少ない割合であるが,非常に 重要な要因であると考えられる.図 1で表したように, がん患者を大切に思うことは在宅療養の始まりの部分で ある.これは,介護への主体性を増長するほか,療養生 活で一緒にいられることに価値を感じられることと相互 に作用しあい,さらに在宅療養の継続要因として効果が あると考えられる.在宅療養生活において,継続要因を 対象が考えた時,介護力の向上や医療者とのつながりや 支援,心の準備にまず目がいってしまいがちになるが, 在宅療養のきっかけとなったがん患者を大切に思う気持 ちも在宅療養を続ける原動力となるものであり,それが 大きければ介護実践や困難にもより耐えられ,自宅での 生活を実現したいという原動力につながっているのでは ないかと考えられる.ただ,在宅療養の継続要因に焦点 を当てた時,がん患者を大切に思うという気持ちなどの 前提よりも,介護力の向上など手技・方法に思考が向い てしまった結果,割合としては 3.7%に留まったのでは ないかと考えられる.. 2)医療者側の要因について 「安心できるケアの提供」は全体の 16.6%,【医療者側 の要因】のなかでもっとも多い項目であり,医療者に対 して対象者家族は安心を求めている割合が高いことが推 察される.その理由として,在宅療養を安心して過ごし たい,誰かとつながっていたいという家族の思いを保証 できることで在宅療養を継続することができると考えら れる.ケアを提供する際には,〈行き届いたケア〉が必 要である.これは医療者からの支援の有無ではなく,そ の支援が十分であったかどうかが重要である 18)という 先行研究での内容に合致しており,安心して在宅療養を 行ううえで必要な要素であると考えられる.ケアだけで なく,医療者との信頼関係を基盤とし,訪問看護師や往 診医との連携がとれるなどの在宅ケア体制の充実や 24 時間対応など,いつなにがあっても助けがあるという安 心感をもてることを医療者から働きかけることが,在宅. 日がん看会誌 35巻 2021年 129. 療養継続の要因として重要であると考えられる.「相談 対応や指導」は全体の 8.0%を占めていた.介護に必要 な知識・手技の獲得の支援,困ったことの相談対応とし て効果的であり,先行研究や本研究の対象文献と同様の 内容であった.【家族側の要因】での〈介護力を高める〉 ための介護に関する手技の指導に加え,悩みの相談,心 の準備を促すことによって家族の助けとなり,在宅療養 の継続要因として必要な支援であると考えられる.「レ スパイトケアの利用」は 1データの抽出だったが,【家 族側の要因】の「ストレスコーピングをとる」という内 容と同様,介護から離れる時間をつくる意味で,医療者 側が働きかけられる効果的な要因であると考えられる.. 3)周囲の人々の要因について 【周囲の人々の要因】は全体で 6.4%であり,3つのカ テゴリのなかでもっとも低い割合であった.現代社会の 隣人や近所の人々との関係の希薄化が影響している可能 性も考えられる.先行研究によると,周囲の人々との関 係性によっては介護がしづらくなったり不満が募ったり することもあると報告されている 19)ことから,周囲の 人々とのかかわりによる在宅療養の継続への影響が少な からず存在するのではないかと推察される. 周囲の人々とのかかわりがあることの強みは,相談で. きる人がいる,身近に支えてくれる人がいるという安心 感が得られることだと考えられる.負担の大きい介護生 活を送るなかで,頑張りを認められることや励ましを得 ることは,承認欲求を満たされることにもつながり,味 方がいる感覚や気持ちを共有する感覚を感じることで, 在宅療養の継続につながっているのではないかと考えら れる.また,孤立化の防止や介護負担の軽減のためにも 周囲の人々からの支援やかかわりは在宅療養上重要であ ることがいえるため,周囲との橋渡しや地域で利用でき るサービスなどの支援についての検討なども効果的であ ると考えられる. 3.在宅療養を継続するための要因同士の関連と看 護の示唆 図 1で示したように,がん患者を大切に思うことが在. 宅療養の土台として重要である.このことが介護の始め の原動力であり,在宅療養の継続にも重要な要因である. しかし,がん患者を大切に思うからこそ,介護者は介護 をするなかでがん患者の状態によって無力感を感じた り,自責の念に苛まれることがある 15).そういった際 に医療者からの相談対応や助言が有効となり,適切な支 援によってより主体的な介護が可能であると推察され る.また,在宅療養のなかで,新しい生活様式の展開や 家族関係の再構築などを経て,家族ががん患者と一緒に. いられることに価値があると感じることができれば,幸 福感や充実感が湧き QOLが高まる.それにより,土台 の部分であるがん患者を大切に思う気持ちや,主体的な 介護につながり,家族のなかでその循環ができればもっ とも効果的な要因になると推察する.また,サブカテゴ リの「一緒にいられることに価値を感じる」が,ほかの サブカテゴリに比べて割合が低かったことは,まだ一緒 にいられることに価値を感じている家族が少ないことの 表れではないかと考えられる.在宅療養をする家族の現 状として,日々介護に追われる生活や慢性疲労が溜まっ ていくことが報告されており 20),生活に心の余裕がも てていないことが推察される.そういった家族に対して, 介護負担が軽くなるケアの提供や相談対応に加え,現在 の生活に対しての助言や支援を行うことが効果的な支援 につながるのではないかと考えられる.ただし,本研究 では継続できた理由としての感情面へのデータや結果を 示すに至らなかった.しかし,24時間対応や在宅ケア 体制など医療者からのバックアップ支援の要因から周囲 の人からの手助けなど種類は多岐にわたり,複雑に影響 し合っていた.そのなかで医療者は,家族の個別性に富 んだかかわりをしていくことが重要であり,かかわりの なかで介護状況から必要な指導・助言や,役割分担の適 正化,必要に応じた話し合いの場の提供,地域から得ら れる支援の検討が効果的ではないかと考えられる.. Ⅴ.結 論. 1. 在宅療養の継続する要因として,【家族側の要因】 では 7つのサブカテゴリ,【医療者側の要因】では 3つのサブカテゴリ,【周囲の人々の要因】では 2 つのサブカテゴリが抽出された.. 2. 在宅療養を継続する要因として,【家族側の要因】 では「主体的に取り組む」ことがもっとも重要であっ た.【医療者側の要因】では「安心できるケアの提供」 ことがもっとも重要であった.【周囲の人々の要因】 では「周囲の人々とのかかわり」がもっとも重要で あった.. 3. 本研究では,終末期がん患者の家族に焦点を当てた. 家族ががん患者を大切に思うことは在宅療養の始ま りの部分である.これは,介護への主体性を増長す るほか,療養生活で一緒にいられることに価値を感 じられることと相互に作用しあい,在宅療養を継続 する要因のよい循環ができあがると推察される.. 日がん看会誌 35巻 2021年130. Ⅵ.今後の課題と研究の限界. 本研究は文献研究であり,対象文献が少数であること や家族に関する情報に差があったことから一般化には限 界がある.今後は家族背景としての家族構成や経済状況 などの情報に焦点を当て,家族の状況が与える在宅療養 継続要因への影響や看護支援などについて,さらなる研 究を洗練させていく必要がある.. 利益相反について. 本研究は文献研究であるため利益相反には該当しない. 文 献. 1) 厚生労働省.厚生労働省人口動態調査,表 5─5.6,死亡の場 所別にみた年次別死亡数・百分率.2019.3.29. https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suii10/dl/ s03.pdf(参照 2019─7─10). 2) 森田達也,宮下光令,井上芙蓉子,他.遺族調査に基づく自 宅死亡を希望していると推定されるがん患者数.Palliative Care Research.7(2),403─407(2012). 3) 大西奈保子.“在宅医療におけるホスピスケア─実現に向けて の教育とシステム構築の提案”.死別の悲しみから立ち直るた めに.平山正実編.埼玉,聖学院大学出版会,2010,101─128. 4) 福井小紀子.入院中の末期がん患者の在宅療養移行の実現と 患者・家族の状況および看護支援・他職種連携との関連性の 検討.日本看護科学会誌.27(3),48─56(2007). 5) 平典子.終末期がん患者を看取る家族が活用する折り合い方 の検討.日本がん看護学会誌.21(1),40─47(2007). 6) 柳原清子.がん患者家族の意思決定プロセスと構成要素の研 究─ギアチェンジ期および終末期の支援に焦点を当てて-. ルーテル学院研究紀要.9,45─56(2008). 7) 河瀬希代美,稲村直子,小貫恵理佳他.積極的治療終了後に 在宅生活を中断したがん患者の家族がかかえる困難.Pallia-. tive Care Research.12(2),194─202(2017) 8) 終末期医療に関する調査.在宅医療の最近の動向,厚生労働. 省医政局指導課在宅医療推進室,2010. https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_ iryou/iryou/zaitaku/dl/h24_0711_01.pdf(参照 2019─12─5). 9) 山口小百合,柳原清子.在宅ターミナルにおける家族の「死の 看取りのプロセス」の構造化.新潟大学医学部保健学科紀要. 9(1),45─56(2008). 10) Koop P.M.,Strange V.R. The bereavement experience following home-based family caregiving for persons with advanced can- cer. Clinical Nursing Research. 12(2), 127─144(2003). 11) 大西奈保子.がん患者を在宅で看取った家族の覚悟を支えた 要因.日本看護科学会誌. 35,225─234(2015). 12) 医療施設・介護施設の利用者に関する横断調査.医療経済研 究社会保険福祉協会. 2011─3. https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000011184827─00(参 照 2019.12.5). 13) 岡部健.“家で死を迎えるということ”.看取り先生の遺言─ がんでやすらかな最期を迎えるために.奧野修司編.東京, 文藝春秋,2013,130─170. 14) 上野栄一.内容分析とは何か-内容分析の歴史と方法について-. 福井大学医学部研究雑誌.9(1・2合併号),1─18(2008). 15) 堀井たづ子,三木幸子,嶌田理佳,他.在宅療養中の終末期 がん患者を看病する家族の心情と療養支援に関する質的研究. 京都府立医科大学看護学科紀要.17,41─48(2008). 16) 横田美智子,秋元典子.在宅で終末期がん患者を介護した家 族の体験.日がん看護学会誌. 22(1),98─107(2008). 17) 柴田純子,佐藤まゆみ, 増島麻里子,他.日本における終末期 がん患者をかかえる家族員の体験.千葉看護学会会誌.16(2), 19─26(2011). 18) 大園康文, 石井容子, 宮下光令.訪問看護師が認識する終末期 がん患者の在宅療養継続の障害.日本がん看護学会誌.29(1), 44─53,(2015). 19) 柴田純子,佐藤禮子.在宅終末期がん患者を介護している家 族員の体験.千葉看護学会会誌.13(1),1─8(2007). 20) 森英里奈,上杉裕子.在宅における家族介護者の現状と課題. 日本保健医療行動科学会誌.31(1),57─63(2016). Family Support Factors for Continuing Home Care for Terminally Ill Cancer Patients *. Ikuko Nishio Address reprint requests to: Ikuko Nishio. School of Health Sciences, Faculty of Medicine, Kagoshima University 8─35─1, Sakuragaoka, Kagoshima-shi, Kagoshima, 890─8544, JAPAN Phone: 099-275-6758/FAX: 099-275-6762/E-mail: [email protected]. 日がん看会誌 35巻 2021年 131

表 1  対象文献の概要 タイトル (著者) 掲載誌・発行年 研究目的 研究対象 分析方法 得られた結果 がん患者を在 宅で看取った 家族の覚悟を 支 え た 要 因 (大西奈保子) 日本看護科学会誌2015年 が ん 患 者 を 在 宅 で 看取った家族の覚悟とその覚悟を維持するのに必要な要因を明らかにする. 主介護者(家族)15名 グランデッドアプローチを参考に継続的比較分析を行った. 15 のコード,32 の概念,8 のサブカテゴリー,3のカテゴリが抽出された.がん患者を在宅で看取っ た家族の覚悟を支
表 1  対象文献の概要 タイトル (著者) 掲載誌・発行年 研究目的 研究対象 分析方法 得られた結果 在宅で終末期 の 家 族 を 看 取った遺族か ら見た在宅療 養 へ の 認 識 ( 安 藤 満 代, 二の坂保喜) 生命倫理2014年 自宅で患者を看取った家族が遺族となってから,在宅療養をどのよ うに感じていたのか,その認識について明らかにする. 終末期の患者を在宅で介護し, そ の 後,患 者 が 亡 くなってから遺族 と な っ た方.なくなっ てから半年以 上から 2 年以 内 の 遺 族 4
表 4  在宅療養継続の要因 カテゴリ サブカテゴリ コード データ(データ数) 家族側の要因 (128:68.4%) 主体的に取り組む(40:21.4%) 介護力を高める(13:7.0%) 訪問看護師から学び介護力を高める(6) 介護者として自覚する(7:3.7%) (介護を)当たり前のこととして担う(5) 日常生活を保つ(5:2.7%) 家族としての生活を保つ(5) 看取りの経験を活かす(4:2.1%) 家族が以前,経験した看取りの内容が今のがん患者の看 取りに生かされている(1) 介護生活に没頭する(

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