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´Eco −physiology of Plants Grownln Tropical Peat Swamp      ( 熱 帯 泥 炭 湿 地 に 生 育 す る 植 物 の 生 理 生 態 )

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) モ ン ラ ウ イ ー ヤ ン ブ ア バ ン

     学位論文題名

´Eco −physiology of Plants Grownln Tropical Peat Swamp      ( 熱 帯 泥 炭 湿 地 に 生 育 す る 植 物 の 生 理 生 態 )

学位論 文内容の要旨

  泥炭土壌の特徴は、低pH、高有機物含有率、有害物質を含むこと、そして貧栄養である。このよ うな性質のため、泥炭土壌は農業利用が困難である。一方、泥炭土壌に生育する植物は養分欠乏症状 や生育阻害を示すことはほとんどなく、何らかの適応機構を持っていることが考えられている。しか しながら、植物の生育は泥炭土壌の生育制限要因の他にも様々な因子により影響を受ける:  1)外的 要因として気象要因(日射量、温度あるいは水の有効性など)、土壌要因(養分有効性、pH、Eh、 CECなど)あ るいは 生物要因 (植物種 、植物一植物相互関係、土壌微生物など)があり、2)内的 要因として環境に対する耐性、光合成能、呼吸、養分同化における酵素活性があげられる。そこで、

本研究では熱帯泥炭土壌の貧栄養性に対する植物の適応戦略を解明することを目的とし、実験を行っ た。本研究は泥炭土壌において重要な植物であるサゴヤシに関して、生育と養分特性および雑草がサ ゴヤシの生育と養分吸収に与える影響を解明し、さらに、一次林と二次林における様々な植物種の養 分状態の比較を行い、以下の結果を得た。

1.サゴヤシ(Metroxylon sagu Rottb.)の生育と養分特性

  サゴヤシをタイ国の′roe Daengにある泥炭湿地に移植した。サゴヤシは主に土壌由来の養分を利 用したが、その低い養分有効性のため、葉の養分含有率は低かった。サゴヤシの生育が良好であった プ ロットでは葉のP、CaおよびAl含有率が高く、これらの元素が生育促進と関連している可能性が あ る。対 照的に、Fe、Znおよ ぴMnは葉の老化とともに排出されると考えられた。サゴヤシ中の窒 素は主に土壌に由来すると考えられるが、土壌中の窒素量はサゴヤシの生育に伴い低下した。これを 補うためにサゴヤシは他の窒素源、例えぱ窒素固定菌由来の窒素などを利用していることが考えられ た 。 こ の 窒 素 固 定 菌 と の 共 生 は 特 に 貧 栄 養 度 の 高 い 土 壌 で 強 く 影 響 す る と 思 わ れ た 。

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2.雑草がサゴヤシの生育と養分吸収に与える影響

  フィールド実験では、Fimbristyllis umbellarisとLeersia hexandraが優勢な雑草であった。ポッ ト実験でこれらの雑草種とサゴヤシの競合を調べたところ、サゴヤシの生育は両雑草種との競合によ り明らかに阻害された。特に、工, hexandraとの競合による影響が強かった。本研究で用いた泥炭土 壌では、PとZnが雑草との競合におけるサゴヤシの生育制限因子であると考えられた。Fumbellaris と工. hexandraは養分吸収特性が異なり、Fumbellar・ .sはCaとmを多く吸収し、工,轟餾aぬdraha はP、Naお よぴZnを 多く 吸収する性質を持っていた。この異なる 性質がサゴヤシの生育に対する 異なる影響と関連していると考えられた。サゴヤシと雑草の競合下では、微生物による窒素固定が窒 素獲得のために重要な役割を持ってい ることが示唆された。競合による土壌pH、ECおよびEhの変 化はサゴヤシの生育に明確な影響を与えなかった。

3.熱帯泥炭湿地の一次林と二次林における植物種の生育比較

  調査した一次林およぴ二次林に生育する植物種は真正キク類I、真正キク類II、ツツジ日、真正バ ラ類I、真正バ ラ類II、真正双子葉類および真正モクレン類に分類され た。一次林ではKとZnがツ ツジ目植物の生育制限要因になっている可 能性が考えられた。葉のN、P、Ca、Mg、Fe、Al、Siお よぴB含有 率は 一次 林で 二次 林よ り高 い傾 向が あっ た。 対 照的 に、Na、Cu、ZnおよびMo含有率 は二次林で高い傾向があった。土壌の615Nの測定結果から、脱窒と窒素制限が土壌中で起こってい ることが示唆された。土壌中窒素の無機化は二次林よりも一次林で大きく、特に表層土で顕著であっ た。葉の616Nの測定結果から、ほとんどの植物は生物的窒素固定由来の窒素を吸収していることが 明らかにされ、特に一次林の真正バラ類IIと二次林の真正キク類Iで顕著であった。一方、二次林の 真正キク類IIはほとんどの窒素を土壌から吸収した。さらに、二次林に生育する植物は一次林に生 育する植物と比べ高い水分利用効率、光合成能および光強度との相関を示した。このことは、より開 けた状況で生長の早い植物種から二次林が構成され、植物密度の高い一次林と比較してより多くの日 射をこれらの植物が受けていることを示唆した。

  本研究の結果から、熱帯泥炭湿地に生育する植物種の貧栄養条件に対する重要な適応機構が証明さ れ た。 すな わち 、1) 養分 含有 率は サゴヤシではP、CaおよびAlを、雑草(Leersia hexandra)そ はPとZnを 、ツツジ日植物種ではKとMnを集積する特性がある。こと、2)土壌中の利用可能な養 分量が限られた条件下でも、低い養分含有率で生育することが可能であること、3)熱帯泥炭湿地に     ‑ 134ー

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生育する植物種にとって土壌中の窒素が主要な窒素源であるが、植物問の競合や森林の遷移段階の違 いにより引き起こされる窒素制限条件下では植物―土壌微生物共生系における窒素固定由来の窒素 の貢献が重要となることが明らかにされた。以上の研究により、これまで不明であった熱帯泥炭土壌   ´

の貧栄養性に対する植物の適応戦略が解明された。

‑ 135

(4)

学 位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授 助教授

大崎 波多野 松井 信濃 江澤

    満 隆介 博和 卓郎 辰広

     学位論文題名

Eco −physiology of Plants Grown in Tropical Peat Swamp      ( 熱 帯 泥 炭 湿 地 に 生 育 す る 植 物 の 生 理 生 態 )

  本論文は、英文86頁、図23、表8、6章かならなる。

  泥炭土壌の特徴は、低pH、高有機物含有率、有害物質を含むこと、そして貧栄養である。このよ うな性質のため、泥炭土壌は農業利用が困難である。一方、泥炭土壌に生育する植物は養分欠乏症状 や生育阻害を示すことはほとんどなく、何らかの適応機構を持っていることが考えられている。しか しながら、植物の生育は泥炭土壌の生育制限要因の他にも様々な因子により影響を受ける。そこで、

本研究では熱帯泥炭土壌の貧栄養性に対する植物の適応戦略を解明することを目的とし、実験を行っ た。本研究は泥炭土壌において重要な植物であるサゴヤシに関して、生育と養分特性および雑草がサ ゴヤシの生育と養分吸収に与える影響を解明し、さらに、一次林と二次林における様々な植物種の養 分状態の比較を行い、以下の結果を得た。

1.サゴヤシ(Metroxylon sagu Rottb.)の生育と養分特性

  サゴヤシをタイ国の′roe Daengにある泥炭湿地に移植した。サゴヤシは主に土壌由来の養分を利 用したが、その低い養分有効性のため、葉の養分含有率は低かった。サゴヤシの生育が良好であった プ ロットでは葉のP、CaおよびAl含有率が高く、これらの元素が生育促進と関連している可能性が     ナ

あ る。対 照的に、Fe、Znおよ びMnは葉の老化とともに排出されると考えられた。サゴヤシ中の窒 素は主に土壌に由来すると考えられるが、土壌中の窒素量はサゴヤシの生育に伴い低下した。これを 補うためにサゴヤシは他の窒素源、例えぱ窒素固定菌由来の窒素などを利用していることが考えられ     ー136―

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た。この窒素固定菌との共生は特に貧栄養度の高い土壌で強く影響すると思われた。

2.雑草がサゴヤシの生育と養分吸収に与える影響     ´

フイールド実験では、Fimbristyllis umbeZぬ血と工eば由轟exand.瑠が優勢な雑草であった。ポッ ト実験でこれらの雑草種とサゴヤシの競合を調べたところ、サゴヤシの生育は両雑草種との競合によ り明らかに阻害された。特に、工, hexandraとの競合による影響が強かった。本研究で用いた泥炭土 壌では、PとZnが雑草との競合におけるサゴヤシの生育制限因子であると考えられた。Fumbeロ&門b と己,轟e朋ndraは養分吸収特性が異 なり、Fum6剛a門ははCaとmを多く吸収し、工.カe嬲nd髄ha はP、Naおよ びZnを多く吸収する性質を持って いた。この異なる性質がサゴヤシの生育に対する 異なる影響と関連していると考えられた。サゴヤシと雑草の競合下では、微生物による窒素固定が窒 素獲得において重要な役割を持っていることが示唆された。

3.熱帯泥炭湿地の一次林と二次林における植物種の生育比較

  調査した一次林および二次林に生育する植物種は真正キク類I、真正キク類II、ツツジ日、真正バ ラ類I、真正 バラ類II、真正双子葉類およぴ真正モクレン類に分類さ れた。一次林ではKとZnがツ ツジ目植物の生育制限要因になっている 可能性が考えられた。葉のN、P、Ca、Mg、Fe、Al、Siお よびB含有 率は 一次 林で 二次 林よ り高 い傾 向が あっ た 。対 照的 に、Na、Cu、ZnおよびMo含有率 は二次林で高い傾向があった。土壌の616Nの測定結果から、脱窒と窒素制限が土壌中で起こってい ることが示唆された。土壌中窒素の無機化は二次林よりもー次林で大きく、特に表層土で顕著であっ た。葉の81sNの測定結果から、ほとんどの植物は生物的窒素固定由来の窒素を吸収していることが 明らかにされ、特に一次林の真正バラ類IIと二次林の真正キク類Iで頭著であった。一方、二次林の 真正キク類IIはほとんどの窒素を土壌から吸収した。

  本研究の結果から、熱帯泥炭湿地に生育する植物種の貧栄養条件に対する重要な適応機構が証明さ れた 。 すな わち 、1)養 分含 有率 は サゴヤシではP、CaおよびAlを、雑草(Leersia hexandra)で はPとZnを 、ツ ツジ 目植 物種 ではKとMnを集 積す る特 性が ある こと、2)土壌中の利用可能な養 分量が限られた条件下でも、低い養分含有率で生育することが可能であること、3)熱帯泥炭湿地に 生育する植物種にとって土壌中の窒素が主要な窒素源であるが、植物間の競合や森林の遷移段階の違 いにより引き起こされる窒素制限条件下では植物一土壌微生物共生系における窒素固定由来の窒素     ―137―

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の貢献が重要となることが明らかにされた。以上の研究により、これまで不明であった熱帯泥炭土壌 の貧栄養性に対する植物の適応戦略が解明された。これらの知見は学術的に高く評価されるとともに、

泥炭土壌の農業利用や破壊された生態系の修復のために極めて有益な情報を提供するものである。よ っ て審 査員 一 同は 、Monrawee Yanbuabanが博 士( 農学)の学位を受けるに十分な資格を有する ものと認めた。

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参照

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