九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
キノロン系抗菌剤の中枢移行動態とそれに及ぼす フェンブフェンの影響に関する薬物動態学的研究
一川, 暢宏
https://doi.org/10.11501/3100005
出版情報:Kyushu University, 1994, 博士(薬学), 論文博士 バージョン:
権利関係:
〆."
( iノ
キノロン系抗菌剤の中枢移行動態とそれに及ぼす フェンブフェンの影響に関する薬物動態学的研究
1995年
一 川 暢 宏
キノロン系抗菌剤の中枢移行動態とそれに及ぼす フェンブフェンの影響に関する薬物動態学的研究
1995年
一 川 暢 宏
序
壬.ð除日間目 次
1. 緒 言
2. 本研究の対象とした各キノ口ン剤と痘筆との関連について... 4
本
号ó日間 8第|章キノロン剤の血清中動態、 および脳脊髄液中移行動態の比較... 8 1 -1血清中濃度および血清中非結合型画分 • • • • • • • .…・・・ ・ ・ ー・・・・・・・・ 8 1 -2 CSF中濃度およびCSF濃度/血清中非結合型濃度比 ..... ••• 10 1 -3血液-CSF問移行に関する生理学的モデ、ルによる解析... 13
1 -4まとめ 17
第H章キノ口ン剤の血清中動態、 血清中蛋白結合率および中枢移行動態
におよぼすフ工ンブフェンの影響 ... 18 II -1キノロン剤の血清中濃度におよぼすフェンブフェンの影響 ... 18 II -2キノロン剤の血清蛋白結合率におよぼすフェンブフェンの影響.. 2 7 II -3キノロン剤の脳内濃度およびCSF中濃度におよぼす
フェンブフェンの影響 ••• •• ••• • • • • • • • • • • •• • • • • • • • • • • ••• ••• •• • 30 II -4キノロン剤の脳内あるいはCSF中移行性におよぼす
フェンブフェンの影響 Eろまとめ
第川章キノ口ン剤の中枢移行動態におよぽすフェンブフェンの影響
36 44
についての生理学的薬物速度論的解析一・・・ー・…・・・ ・・ ・ ・ ・ ・・ー・.. 46 ill-1シフロフロキサシンの脳内移行性におよほすフェンブフェンの
影響 ••. ••• ••• • • • • • • • • • • • • ••• • ••••••. ••• • • • • 46
ill-2シプロフロキサシン、 ノルフロキサシンおよびオフロキサシン
のCSF中移行性におよぼすフェンブフェンの影響... 49 ill-3まとめ •• • • • • • • • • • • • • • •• • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • 54
総括と結論
実 験 の 部
1 . 実験材料
1-1 化合物
1-2 実験動物
2. 動物実験操作
2-1 薬物投
2-2 血清、 脳および脳脊髄液試料の採取-一 2-3 血清蛋白結合実験
3. 定量操作
3-1 シフロフロキサシンの血清、 全血、 限外鴻過鴻液中濃度の測定.•
3-2 ナリジクス酸の血清、 全血、 限外鴻過鴻液中濃度の測定一 3-3 シプロフロキサシンの脳および脳脊髄液中濃度の測定...• 3-4 ナリジクス酸の脳および脳脊髄液中濃度の測定."
3-5 ノルフロキサシン、 オフロキサシンの血清、 全血、 限外鴻過鴻j夜、
脳および脳脊髄液中濃度の測定 4. データ解析
4-1 血清中濃度 4-2 CSF中移行動態 4-3 脳内移行動態 4-4 統計的処理
引用文献 謝 辞
2
55
59
略 下ヲEコ 表
本論文においては下記の略号を用いた.
血清中薬物濃度一時間曲線下面積 脳内薬物濃度一時間曲線下面積
脳脊髄液中薬物濃度一時間曲線下面積 血清中非結合型薬物濃度一時間曲線下面積 脳内薬物濃度
脳脊髄j夜中薬物濃度 血清中非結合型薬物濃度
血清中総(結合型+非結合型)薬物濃度
全身クリアランス
脳脊髄液から血液へのeff1uxクリアランス
体重当りの薬物投与量 血清中結合型分率
血清中非結合型分率 消失速度定数
血液-脳間の見かけの拡散クリアランス
血液一脳脊髄j夜間の見かけの拡散クリアランス 脳脊髄j夜の生成速度
3
9 9 9 9 9 0 0 0 0 1 2 3 5 5 5 5 5 6 6 6 6 6 6 6
AUC AUCb AUCc AUCf
c b Cc
Cf 3
4 4 4 5
6
/hU fo fO /O rhu fo
Ct
CL CLeff
D
LU F?i
67 77
u
ρしuk
PAb PAc q
t1/2 終末相における消失半減期
t1/2ß β相における消失半減期
Vb 平均脳容積
Vc 脳脊髄液容積
Vd 見かけの分布容積
Vd,ss 定常状態での見かけの分布容積
Vc 脳内分布容積比
凶表中においては各キノロン剤を下記の略号で表した.
序
1 .緒 日
三6
員同
キノロン系抗菌剤は1962年にLesherら1)により報告されたナリジクス酸をプロ
トタイプとする薬剤である。 本剤はピリジン環のl位にアルキル基、 3位にカル ボキシル基、 4位にオキソ基を有するピリドンカルボン酸が必須基木構造と考え られており、 ピリドンカルボン酸系抗菌剤jとも称されている。 ナリジクス酸の開 発以降、 様々な類縁薬剤が合成され臨床に供されたが、 1977年に合成されたノル フロキサシンは、 キノリン骨格の6位に弗素を、 7位にピペラジニル基を導入す ることにより抗菌力の増強と良好な生体内安定性を獲得した薬剤jであり、 ノルフ ロキサシンを含めそれ以降の薬剤はニューキノロン剤と総称されている。 その 後、 エノキサシン、 オフロキサシン、 シプロフロキサシン、 ロメフロキサシン、
トスフロキサシンなどが次々と開発され、 その優れた抗菌力と広い抗菌スペクト ルのため臨床において繁用されている(Fig.1)2)o しかし、 その使用量の増加にと
。 。
COOH COOH
。 。
Ofloxacin (OF工X) Ciprofloxacin (CPFX) Fig 1. Chemical Structures 01 the Quinolones
もなって種々の副作用も認められ、特にいずれのキノロン剤も中枢神経系の副作 用を有することが報告され、その中には痘筆などの重篤な症状も含まれている 3) 。
一方、非ステロイド性抗炎症剤(Nonsteroidal Anti-inflammatory Drug, NSAlD)で あるフェンブフェンはフェニルプロピオン酸系化合物に属し、経口投与後体内で 活性代謝物であるフェニル酢酸系化合物、4-ビフェニル酢酸(フェルビナク)に 変換されて効力を発揮するプロドラッグで‘ある4)。したがって、薬理活性の強い フェルビナクは直接胃腸管に接触せず、消化管に対する副作用が少ないことから 臨床においても広く用いられている (Fig.2 ) 0 NSAIDとキノロン剤は炎症を伴う 感染症の治療において併用される機会が多く、このフェンブフェンについてもキ ノロン剤との併用投与がなされる場合が少なからずあったが、現在では後述する 薬物相互作用報告により、エノキサシン、ノルフロキサシンとの併用は禁忌とさ れるに至った。
キノロン剤単斉uに由来する痕筆誘発は、ナリジクス酸をはじめとして、シフロ フロキサシン、 ノルフロキサシンなどのニューキノロン剤においても報告されて
/三ぐ}- COC仇COOH
4-叫-べ付件仰(件件同4-叫-品Bi州刊州件川山)ト凶凶山-4斗仇刊一4-的似…-舟引叩吋O似ω吋xo帥川Oぬb )一一 -一
Fen巾l巾buぱlfe叩n (官FNB到
/三{ - }-6 削2CH2COOH 4-判州叫叫叫-ぺ仏件仰叩(μ件帥問4-ゆ州-B剖B臥附i増ゆp凶h
� 、一」ググ 4-h句ydro巧んb凶ut守y庁rri吋ic acid
。ぐいH2COOH
HO -O-O- 叩∞
4-Biphenylylacetic acid Felbinac (FLB)
4'-Hydroxy-4-biphenylylacetic acid
Fig. 2. Fenbufen and the Major Metabolites in Humans and Laboratory Animals
2
きたが3)、 1986年、エノキサシンとフエンブフエンの併用時に痘筆発作を誘発し た症例が厚生省医薬品副作用情報により報告され、両剤の併用に対する警告がな されたの。 その後、フエンブフエンと同系統のNSAlDとの併用例でも痘筆誘発が みられ、1989年にはノルフロキサシンとフェンブフェン、シプロフロキサシンと ケトプロフエン併用においてへ1993年にはエノキサシンあるいはロメフロキサ シンとフルルビフ。ロフェンアキセチル併用において7)、 同様な症例が追加報告さ れており、キノロン剤が関連する痘筆誘発など戸の中枢毒性は臨床上大きな問題と なっている。さらに、これらのキノロン剤とフエンブフェン併用時の痘筆発作誘 発は、動物実験においても確認されており8,9)、その発現機序の薬力学的ならびに 薬物動態学的解明は有効かつ安全な薬物治療を行う上で重要な課題である。
この痘筆発作の機序についての最初の報告は、Horiら10)によるもので、トリチ ウムラベルしたγ-アミノ-n-酪酸(GABA)の、ラット脳シナプス標品でのGABA受 容体への結合を、濃度依存的にキノロン剤が阻害すること、またその阻害様式は キノロン剤によりGABA受容体の最大結合量が低木し、親和性には変化がないこ とを示した。さらに、マウス脳シナプス標品を用いた研究において、キノロン剤 によるGABA受容体阻害作用はフェンブフェンあるいはフエルビナクの共存下に さらに増強されることを報告した11)。 その後、Ts吋iらは13)によって、ラットでも 同様の報告がなされた。さらに、ラット海馬より単離した錐体細胞を用いた電気 生理学的検討においても、フエルビナク共存下、キノロン剤はGABAU;:答性を濃 度依存的に阻害することが示された14)。 この事実は、マウス脳m-RNAを注入し たアフリカツメガトエル卵母細胞においても、その妥当性が確認されている15)。こ れら薬力学的研究の結果、両薬剤の併用時の煙筆誘発作用の木体はキノロン剤に あり、フェンブフェンはそれをプロモートしていることがほぼ明らかにされてい る。しかしながら、キノロン剤とフエンブフェンの併用による痘尊重誘発の機序を 考える場合、両薬剤併用に伴う各薬剤の薬物動態学的変化も考慮する必要があ る。キノロン剤は基本的には腎排池型であり、多くのキノロン剤で腎障害時のク リアランス低下に伴う血中半減期の延長が報告されている16)。 また、ニューキノ
3
ロン剤のlつであるオフロキサシンを腎障害を有する患者に投与した症例で髄液 中オフロキサシン濃度が異常上昇し、 痕筆を来したという報告もある17)。 した がって、 キノロン剤およびフェンブフェンの中枢移行動態を含めた薬物動態学的 な相互作用に関する基礎的かつ系統的な検討が不可欠であると考えられる。
著者ら18引)は、 両剤の相互作用をラットを用いて薬物動態学的に検討し、 フエ
ンブフェン併用によりオフロキサシン、 ノルフロキサシン、 シプロフロキサシン 等のニューキノロン剤において、 いずれも消失相における血業中濃度の上昇が認 められることを報告した。 さらに、 これらの研究から、 フェンブフェンおよび フェルビナクの血中動態ならびに血清蛋白結合率には上記のキノロン剤はほとん ど影響を及ぼさないことも明らかにした1831)o しかしながら、 キノロン剤の中枢 毒性とそれにおよぼすフェンブフェンの影響を明らかにするためには各キノロン 剤の中枢移行動態の詳細な検討が必要で-ある。 そこで本研究では、 中枢での各キ ノロン刑の薬物動態と、 それに及ぼすフェンブフェン併用の影響を精査すること により、 臨床におけるキノロン剤の安全な使用、 およびNSAIDとの併用時の有害 な相互作用の予測とその防止に対して有益な知見を得ることを目的とした。 さら に、 それらの知見を得ることは、 より安全な新しいキノロン剤の開発に寄与する ものと考えられる。 本研究では実験動物として、 フェンブフェンの代謝経路がヒ トにもっとも近いことが知られている22,23)、 ラットを用い、 ニューキノロン剤(シ プロフロキサシン、 ノルフロキサシン、 オフロキサシン)、 およびキノロン剤のフ ロトタイプであるナリジクス酸の、 単独投与時の血清中ならびに脳脊髄液中動態、
の比較検討、 また、 それらのキノロン剤の中枢移行動態に及ぼすフェンブフェン の影響を検討した。 さらに、 1匹1点法により、 同一動物から、 血液、 脳および 脳脊髄液を同時採取することにより、 血中濃度と中枢動態との関連についても検 討を加えた。
2.本研究の対象とした各キノロン剤と痘筆との関連について
a)ナリジクス酸(NA)
ナリジクス酸は世界で初めて臨床使用されたキノロン剤で、 構造上の基本骨格 としてナフチリジン環を有する1)。 今日のキノロン剤の発展は、 このナリジクス 酸の開発が端緒となっている。
ナリジクス酸とフェンブフェン併用によるヒトでの痘筆発現の報告は未だな く、 単剤でのGABA受容体結合阻害作用もニューキノロン剤に比べて弱いことが 知られている12)。 しかし、 本剤は脂溶性がニューキノロン剤よりも格段に高く、
中枢移行性も高いことが予測される。 さらに、 単独投与時の痘単発現の報告は、
臨床使用の初期より少なからず見られ24.25)、 本剤が中枢興奮作用を有することは 明らかである。 また、 最近になって、 本剤の中枢作用の機序として、 ニューキノ ロン剤とは異なる可能性も示されておりあ)、 キノロン剤のプロトタイプであるこ とも合わせて、 本剤の中枢移行動態、を調査することは意義のあることと考えられ る。
b)ノルフロキサシン(NFLX)
ノルフロキサシンは、 ニューキノロン剤の中で最初に開発された薬物であり、
キノリン環を基本骨格とし、 その6位に弗素を、 7位にピペラジニノレ基を有'す る。 本剤は単独でも、 痘筆を呈した症例が報告されている27)。 さらに、 1989年の 厚生省医薬品副作用情報により、 フェンブフェンとの併用時にエノキサシンの場 合と同様な痘筆が誘発されることが報告され6)、 その後同様の痩轡誘発痕例 ならびに同系統のNSAIDであるジクロフェナックとの併用による痘箪発作発現の 報告もなされた29)。 また、 ノルフロキサシンは動物実験においても単独投与ある いはフェンブフェンの併用による痩筆誘発作用が他のキノロン剤よりも強いこと
が証明されている8)。 さらに、 本剤はin vitro実験において単剤では最も強い GABA受容体結合阻害作用を有し、 その作用に対するフェンブフェンの活性代謝 物フェルビナクによる増強作用も著明であることが報告されている11)。 したがっ て、 本剤はフェンブフェンとの併用による痘筆発現を考える上で最も興味深い薬
剤であるといえる。
c)オフ口キサシン(OFLX)
オフロキサシンは多くのニューキノロン剤とは異なり、 キノリンを母核とし た、 3環性の基本骨格をもち、 側鎖のピペラジニル基が遊離型ではなく、 メチル 基が導入されているという構造上の特色をもっている。 このメチル基導入によ り、 脂溶性が上昇し、 他のニューキノロン剤に比べ高い中枢移行性を有する可能 性が考えられる。 実、 オフロキサシン投与に起因すると考られる痘筆発現の報 告において、 患者の腎機能低下のため、 髄j夜中濃度が異常に上昇したことが述べ られている17)。 現在まで、 オフロキサシンとフェンブフェン併用による痘筆発 現の症例報告はないが、 同系統のNSAIDであるピロキシカムとの併用による痘筆 誘発の症例が報告されている28)。 しかしながら、 本剤は動物実験において、
GABA受容体結合阻害作用は比較的弱いことが報告されている11)o したがって、
本剤の中継毒性はその移行性の増大によりもたらされた可能性も考えられ、 キノ ロン剤の中枢移行動態の変化と毒性発現との関連を見る上で、 非常に興味深い薬 剤と考えられる。
d)シプ口フロキサシン(CPFX)
シプロフロキサシンはキノリン環を母核とし、 ノルフロキサシンの1位のエチ ル基をシクロプロピル基に置換した構造を有し、 それによる抗菌力の増強を期待 した薬剤である。 したがって、 基本的にノルフロキサシンと類似した物理化学的 性質を持つと考えられる。 これまでに、 本剤とフェンブフェンとの併用による痩 筆誘発の報告はないが、 シプロフロキサシン単剤に起因すると考えられる痘筆発 現の症例は数例報告されている30.31)。 さらに近年、 フェンブフェンと同系統の NSAIDであるケトプロフエンとの併用時に痘筆を誘発したことが報告された6)。
また、 動物実験においては、 単独でのGABA受容体結合阻害作用も強く、 フェン ブフェンあるいはフェルビナクとの組合せにおいても、 他のキノロン剤と同じ く、 その結合阻害作用が増強されることが報告されている11)o
6
1)
2)
3)
4)
5)
6)
なお、 本論文の内容は以下の論文において公刊ず、みで、ある。
Y. Katagiri, K. Naora, N. Ichikawa, M. Hayashibara, K. Iwamoto: Simultaneous determination of ofloxacin, fenbufen and felbinac in rat plasma by high-performance liquid chromatography., 1. Chromatogr. ,431,135-142 (1988). (Ref. 84)
K. Naora, Y. Katagiri, N. Ichikawa, M. Hayashibara, K. Iwamoto: Enhanced en廿y of ciprofloxacin into the rat centraI nervous system induced by fenbufen., 1.
Pharmaco1. Exp. Ther. ,258,1033-1037 (1991). (Ref. 51)
N. Ichikawa, K. Naora, M. Hayashibara, Y. Katagiri, K. Iwamoto: Effect of fenbufen on the entry of new quinolones, norfloxacin and ofloxacin, into the central nervous system in rats., 1. Pharm. Phαrmacol. ,44,915-920 (1992). (Ref. 52)
N. Ichikawa, K. Naora, M. Hayぉhibara, K. Iwamoto: High-performance liquid chromatographic determination of nalidixic acid in rat serum, brain and cerebrospinal fluid., J. Pharmaceut. Biomed. Anal. , 11,993-997 (1993). (Ref. 86)
N. Ichikawa, K. Naora, K. Iwamoto: Comparative study of permeability into rat cerebrospinal fluid of the quinolones: dependency on their lipophilicíties., Biol.
Pharm. Bull. ,17,152-155 (1994). (Ref. 32)
N. Ichikawa, K. Naora, K. Iwamoto: Increぉes in serum, brain and cerebrospinal fluid levels of nalidixic acíd by coadministration with fenbufen in rats., Jpn. 1. Hosp.
Pharm., 20,190-199 (1994). (Ref. 53)
7
本
壬.ð拓自問第|章 キノ口ン剤の血清中動態、 および脳脊髄液中移行動態の比較32)
般的に抗菌剤の中枢組織への移行は、 血液脳関門あるいは血液脳脊髄液関門 の存在のため、 極めて不良であることが知られているが、 キノロン剤は正常な動 物においても、 他のβラクタム系薬剤などに比べて比較的良好な中枢移行性を不
すことが認められている33,34)。 しかしながら、 これらの関門が髄膜炎などの発
症により破綻をきたすと、 薬物の中枢移行性は著しく高まることが知られており
35) キノロン剤においても同様の傾向を示すことが認められている36)。 した
がって、 キノロン剤の中枢移行性、 あるいはそれに対するフェンブフェンの影響 を評価するためには、 キノロン剤自身の物理化学的特性による透過性、 および 桁々の原閃に基づく血液と脳あるいは脳脊髄液(Cerebrospinal Fluid, CSF) 間関門 の透過性の変化に着目する必要がある。 そこで、 まず本章ではキノロン剤単独で のrflür'j巾動態および中枢移行動態について、 ナリジクス酸、 ノルフロキサシン、
オフロキサシンおよびシプロフロキサシンの各キノロン剤間での比較検討を行っ た。 なお、 中枢移行動態の比較には、 ヒトのデータと比較検討が可能なCSFへの 移行について調査し、 血清中濃度解析によりもとめた速度論的パラメータを使用 したハイブリツドモデルによる解法により、 詳細に検討した。 投与量はニューキ ノロン剤の、 ヒトにおける常用量を基準として、 各キノロン剤とも10mglkgに設 定した。 なお、 へパリン処理された血築中では、 種々の薬物の蛋白結合に影響を 及ぼすことが知られている遊離脂肪酸37)が増加することが報告されている38)。 そ こで、 本章以下、 本研究においては、 すべての実験で血清を使用した。
1 -1 血清中濃度および血清中非結合型画分
ラットにナリジクス酸、 ノルフロキサシン、 オフロキサシンあるいはシプロフ
100
急
101 o c
...
とコc\l
ロω
5
1 0u
0.1 LI I I ・ ・ 1・ I I I I I ・ ・ ・I I I I ・I I I I I I
。 50 100 150 200 250
Time after administration (min)
Fig. 3. Serum Total Concentration vs. Time Curves of the Quinolones after Intravenous Administration (10 mg/kg) in Rats
Each point and ve口ical bar represent the me釦印d S.D. of 5-7 rats.
Each line indicates the simulation ωrve for the mean data by the computer program, MUL Tl.
Symbols:・,NFLX;・,OFLX;企,CPFX;Y,NA
ロキサシンを10 mg/lくg 単独静注した時の各キノロン剤の血清中総濃度推移をFig.
3に示す。 血清中総濃度は各薬剤jとも経時的に急速に低下した。 各薬剤の血清中 動態、を速度論的に解析するため、 非線形最小二乗法フ。ログラムMULTI39)を使用し て、 各薬剤の血清中濃度平均値一時間データの指数関数へのあてはめを行った。
モデル選択の指標としては、 必くaike40)の情報量基準(Akaike'sInformation Criterion,
AlC)を用い、 最小のAIC値が得られたモデルを、 各薬剤の血清中濃度変化志表す 最適なモデルと考えた(minimum AIC estimation, MAICE)。
種々の指数関数について検討した結果、 オフロキサシンならびにノルフロキサ シンの血清中総濃度は、 みかけ上2指数関数的に消失した。 一方、 ナリジクス酸 およびシフロフロキサシンについては、 それぞれ1指数関数的、 および3指数関 数的消失挙動を示した。 同一投与量での血清中濃度は、 ナリジクス酸が最も高い
0.8 10
0.7 C 0
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c1:l 斗司\-.
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0.1 0.1
50 m n 、‘.,r
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MLm GE--a TA φEL Ed ・mm AU 9U faハU凸LAV・→t12 e m T 200
Fig. 4. Fractions 01 the Quinolones Unbound to Rat Serum Protein after Intravenous Administration (10mg/kg)
0.001
。 50 100 150 200 250
Time after administratioo (mio)
Each point and vertical bar陀present出e mean and S.D. of 5-7 rats.
Symbols:・.NFLX;・.OFLX;Å.CPFX;�,NA Fig. 5. CSF Concentration vs. Time Curves 01 the Quinolones after
Intravenous Administration (10 mg/kg) in Rats
波j立推移をボし、 以下、 オフロキサシン>シフロフロキサシン、 ノルフロキサシ ンの順であった。
一般に、 薬物のCSF移行にはその血清中蛋白非結合型が主に関与することは良 く知られ ているお)。 そこで、 これらのキノロン剤の各採血時点での血清中非結 合型;限度を測定することにより、 各薬剤の血清中非結合型画分(fu) をもとめ、 そ の時間による変動を調査した(Fig.4)0 3種のニューキノロン剤(ノルフロキサシ ン、 オフロキサシン、 シプロフロキサシン)のfuはいず、れも約0.7、 ナリジクス酸 は約0.12であった。 各薬剤のfu値は試料採取時間にかかわらず、 ほぼ一定であっ た。 したがって、 中枢移行性に関与すると考えられるfuの時間による変動は、 各 キノロン剤と も観察されなかった。
Each point and vertical bar represent the mean and S.D. of 5-7 rats.
Each line (except for NA) indicates the simulation cu円e for the mean data by thc computer program, MUL TJ.
Symbols:・,NFLX;・,OFLX;企,CPFX;�,NA
1 -2 CSF中濃度およびCSF濃度/血清中非結合型濃度比
も薬物投与後速やかに上昇し、 その後血清中濃度とほぼ平行し て低下した。 ナリ ジクス酸のCSF中濃度は他の3剤に比べて著しく高い値を示した。 ニューキノロ ン3剤ではオフロキサシンが最も高い値を示した。 この結果は、 川原41)による中 枢神経系の感染のないヒトでのデータとほぼ同様の結果となった。
前節で述べたとうり、 薬物の中枢への移行には、 主として各薬剤の血清中蛋白 非結合型濃度が関与すると考えられ る。 そこで、 各キノロン剤の試料採取同一時 間におけるCSF中濃度と血清中非結合型濃度との比を算出した。 Fig.6に各時点に おける各キノロン剤のCSF濃度/血清中非結合型濃度比(CJCf)を示した。 CSF中濃 度と同様、 ナリジクス酸は他の3剤に比べて非常に高いCJCf値を示した。 各薬剤J に共通の試料採取時間であり、 さらにすべての薬剤において血液-CSF聞の移行 各キノロン剤静注後のCSF中濃度推移をFig.5に示す。 CSF中濃度は各薬剤と
10 11
3 5 7.5 10 15 20 30 60 100 150 120 180 240
Time after administ ration (min)
て不良であることが知られている。 また、CSF 中への蛋白の移行はきわめて遅 く、蛋白濃度も血中と比較して1%以下であること、さらに、血液脳関門を通過 できるの も、遊離型が中心であることが認められているお)。 したがって、各薬剤 のfuは、それらの中枢移行に重要な影響を与えると考えられる。 ナリジクス酸の pKa{1直は6.12と報告されており42)、生理的pH (7.35- 7.45)ではその分子型の存在比
はイオン型の それよりも、非常に小さいと考えられる。 また、実験から得られた ように、ナリジクス酸の 血清蛋白結合率は非常に高く、fuは他のニューキノロン
剤に比べて極めて低し�o しかしなが ら、ナリジクス酸のCSF移行は本実験では他 の3剤よりも良好であった。 みかけの分配係数、イオン化の程度、血清蛋白との 結合等の 結果より、キノロン剤のCSF移行性に関して、薬剤の脂溶性が 最有力の 要因となっている可能性が 示唆された。
ozd肖
Fig. 6. Ratio of CSF Concentration to Serum Unbound Concentration of the Quinolones after Bolus Intravenous Administration (10mg/kg) in Rats
1 -3 血液-CSF間移行に関する生理学的モデ、ルによる解析
Each Column and vertical bar represent出e mean and S.D. of 5-7 rats.
Columns: ., NFLX; 図,OFLX; 白,CPFX; 口,NA オフロキサシン,ノルフロキサシン,シプロフロキサシンのニューキノロン3
剤は、いずれも両性イオン化合 物であり、基本骨格の3位のカルボキシル基由 来、および7位の ピペラジニル基(ノルフロキサシン,シプロフロキサシン)ある いはメチルピペラジニル基(オフロキサシン)の窒素に由来する、 2つのpKa{直を 有している。 これらの 薬剤の分子型の存在比は各薬剤jの 等電点で最も高く、した がって、これらの キノロン剤は等電点において最も大きな油水分配係数を示すこ とが 報告されている43)。 この3剤は、いずれも生理的pH{i直に近い中性付近に等 電点を有しており、 分子量も同程度であることから、中枢移行に関与する脂溶性 以外の 物理化 学的性質は類似していると考えられた。 そこで、この3剤に関し て、生理学的モデ、ルを使用し、CSF 移行を速度論的に解析することを試みた。
薬物の 血液一CSF関門透過性を評価するため、Collins an d Dedrick44) および Kar olら45)は、脈絡叢における薬物の受動拡散による CSF中への移行と、 CSF の 流れ(bulk flow)によるCSF から血液への流出を考慮したモデルを構築した。 しか が擬干衡状態、にあると考えられる、投与60分後におけるCJCf値を比較した。 す
なわち、この値は各薬剤における血液一CSF間のみかけの分配率を示すと考えら れる。 その結果、ナリジクス酸>オフロキサシン>シプロフロキサシン>ノル フロキサシンの順となり、各キノロン剤のCSF中濃度の高低の順と一致した。
一般に、薬物の中枢移行性を支配する 物理化学的要因としては、薬物の脂溶 性、イオン化の程度、および血清蛋白との結合が知られている35)。 薬物の脂溶性 の指標としては、各薬剤の 油水分配係数が用いられるo T s吋iら12) は、これらの キ ノロン剤のn-オクタノーノレー50 mMリン酸緩衝液 (pH 7.0)間のみかけの分配係数 (Papp)を報持している。 報告値は、ナリジクス酸、オフロキサシン、シプロフロ キサシンおよびノルフロキサシンの順でそれぞれ3.34, 0.391, 0.115, 0.0 69であ る。 各薬剤のCSF中濃度およびCJCf値の高低の順は、上記のPapp報告値の 大小 のJI慎とよく一致した。 通常、イオン化した薬剤の中枢 への移行性は分子型に比べ
CSF Vc Cc し、 多くの薬物、 たとえばβーラクタム系抗生物質46.47)やシメチジン48,49)などに
Serum つ いて、脈絡叢における CSF から血液中への能動的なefflux 過程の 存在が想定
このefflux過程 を考慮に いれたモデルを構築すること Cf されている。 Satoら33) は、
CLeff ニューキノロン剤であるオフロキサシンとロメフロキサシンの CSF中
により、
これらの キノロン剤 に もCSFからのactive efflux過程が存 への移行性を評価し、
在する可能性を示唆した。 そこ で 、著者は各キノロン剤の血液-CSF聞の移行の Qc
Physiological Model 01 the Quinolones between Blood and CSF Fig.7.
Karol ら45)の“diffusion and flow"モデルに 評価をSatoら33)のモデル(A)、および 、
Cf, Cc; serum unbound and CSF concentrations of quinolones: t; time after drug administration : V c; CSF volume (0.18 ml): PAc; apparent diffusional clearance of quinolones between blood and CSF : Qc; rate of CSF tumover (0.00 22 ml/min): CLeff; efflux clearance of quinolones from CSF to blood.
efflux過程を組み込んだモデル(B) を用いて行った。 ただ し、解析には血清中蛋 円結合型薬物は血液一脳脊髄液関門をほとん ど通過できないことを考慮し、各時
…で測定した血清中非結合型濃度を用いた。
モデ ル式を以下に示した。
シプロフロキサシン 、オフロキサシンのCSF移行に関する ノルフロキサシン
Vc' dCJdt = PAc(Cc-Cc)+Qc(Cr-Cc)-CLeCC・Cc (A)
これらのパラメータは各試料採取時 に 示した。
速度論的パラメ ータ をTABLE 1 (B)
Vc' dCJdt = PAc(Cr-CJ-Qc・Cc-CLeff'Cc
間におけ る血清中非結合型濃度を第 1 節と同様にコ ンパート メン トモデル解析す Crはそれぞれ各キノロン剤のCSF中および血
Cc , Vc はCSFの容積、
ここ で、
ることにより得られたハイブリツドパラメータおよびCSF中濃度の平均値 をモデ PAcは血液-CSF聞の拡散クリアランス、 QcはCSFの生成速
?,'J中非結合型波度、
血ル式(B)にあてはめることにより算出した(実験の部: 4. デ ータ解析参照)。
CLeffはCSFから血液への単一方向の effluxクリアランスを示す。 度、
ノルフロキサシン が0.133,シ j夜-CSF間のみかけの拡散クリアランス (PAç)は、
(A)は血中から (A), (B)両モデ、ルの相違点はCSF の流れによる薬物の移動 を、
プロフロキサシンが0.318,オフロキサシンが0.721 ( ml/min×10-2)であった。 オ CSFから血中の両方向性 で見積っているの に対し、(B) ではCSF から血中
CSF、
このPAcは脈絡叢 での、
フロキサシンは他の 2剤 に比較 して高いPAc1直を示した。
への単一方向に設定していることである。
T ABLE 1. Pharmacokinetic Parameters 01 the Quinolones 10r Transport into CSF a1ter Intravenous Administration (10 mg/kg) in Rats
シプロフロキサシンは両モデ MAICEに基づくと(A)のモデルの方が適合性 3薬剤を2つのモデル式を用いて解析した結果、
ルとも良好な解析結果が得られ、
(B)のモ ノルフロキサシンに関しては、
一方、 オフロキサシン、
は優れていた。
CLeff/ PAc CLeff
Drug PAc デルでのパラメータの解析値は妥当でCSF濃度のfitting も良好 であったが、(A)の
(ml/min x 10-2) (ml/min x 10-2)
モデルによる解析ではパラメータが負の 値 になるなど、良好な解析値が得られな
38.6 23.1 5.2 0.60
0.86 0.63
+一+一士
5.14 7.33 3.78 0.012
0.034 0.089
+一+一+一
0.133 0.318 0.721 NF工X
CPFX OFLX したがって、本章での解析には、各キノロン剤の比較ということを考慮
か った。
3剤ともに適用しう る (B) のモデ、ル式による解析を行うことに した(Fig.
して、
Parameters are estimated from the mean data of 5-7 rats by computer program, MUL TI.
VaJues are expressed as出e mean::!:: S.D. of esti.mated parameters.
7)。
14 15
官
o
...
、--
丘〈‘ にJ 1.0
0.8 0.6 0.4 0.2
0.0
OFLX
0.1 0.2 0.3 0.4
Papp
Fig. 8. Correlation between Apparent Partition Coefficient (Papp ) and Apparent Duffusional Clearance (PAc ) of the Quinolones in Rats
P A c is expressed as出e mean :t S.D. of the estimate.
血液-CSF問の受動拡散に関するパラメータであり、 拡散する薬剤の脂溶性に影 符されることが予測された。 そこで、 このPAc値とみかけの分配係数(Papp)値との 相関関係について検討したところ、 Fig.8に示したように、 PAc値とPapp1直とは非
???に良好な正の相関を示すことが明らかとなった(r=0.984)。 このことにより、 キ ノロン系薬剤の中枢毒性発現の主要因の一つであると考えられる血液-CSF関門 移行速度は各薬物の脂溶性に強く依存することが示唆された。
一方、 CSFから血液中へのactive effluxを示す CLeff�こ関しては、 オフロキサシ ンは最-も小さな値を示した(シプロフロキサシン>ノルフロキサシン>オフロキ
サシン)0 Fig.6 に示した様に、 使用したニューキノロン剤の中でオフロキサシン のCJCr比は、 シプロフロキサシンあるいはノルフロキサシンと比べてかなり大 きい。 シプロフロキサシンあるいはノルフロキサシンのCJCf 比は投与後15から 20分後に最高値となり、 以後、 時間の経過に伴って減少する傾向を示した。 これ に対し、 オフロキサシンの場合は投与後10分以降、 最終採取時間まで高い値を維 持した。 このモデル式から得られたCLeff と Pへとの比(CLeff/PAc) はノルフロキ
サシンが38.6、 シフロフロキサシンが23.1であるのに対して、 オフロキサシンは 5.2と非常に小さな値を示した。 したがってオフロキサシンがCSF中で高い濃度を 維持しているのは、 CL巴ffがPAcに比べて小さいことが一因であると考えられる。
1 -4 まとめ
本章において述べたキノロン剤単独で、のCSF移行動態の比較は、 次のように要 約できる。 すなわち、 ナリジクス酸シフロフロキサシン オフロキサシン およ びノルフロキサシン は正常なラットにおいて、 いずれもCSF中に移行し、 それら のCSF中濃度およびCSF中濃度と血清中非結合型濃度との比の大きさはいずれも 各薬剤の脂溶性と関連が認められた。 さらに、 生理学的モデ、lレを用いた解析の結 果、 シプロフロキサシン,オフロキサシン およびノルフロキサシンの血液-CSF 間のみかけの拡散クリアランスと油水分配係数は非常に良好な正の相関を示すこ とが明らかとなり、 ニューキノロン3剤のCSF移行は脂溶性に強く依存している ことが示唆された。 本章で算出したCSF移行に関する速度論的パラメータ(PAc,
CLeff)はこれらのキノロン剤のCSFへの移行あるいはCSFからの消失を評価する優 れたマーカーとなりうると考えられる。
キノロン剤の中枢毒性は、 まだ完全には解明されていないが、 キノロン剤と GABAA受容体との相互作用が中枢系の副作用の有力な原因となりうる可能性は 大きいとされている。 Ts吋iら12)の報告によると、 種々のキノロン剤はラット脳の 膜標品においてGABAの受容体への特異的結合を濃度依存的に阻害することが述 べられ、 さらに、 ヒトでのキノロン剤のCSFへの移行性の大小と中枢性副作用発 現率には密接な関係があることが報告されている4150)o したがって、 各キノロ ン剤の中枢移行性の程度はそれらの中枢毒性を評価するうえで重要な要因である と考えられる。
10
• CPFX alone
o With fenbufen 第日章 キノ口ン剤の血清中動態、 血清中蛋白結合率および中枢移行動態に
およぽすフェンブフェンの影響51-53) (-Ehュ)ロ05bC8ccυ×hHιυ
*
すでに著-者ら18-20)は、 ニューキノロン剤の血築中動態およびフェンブフェン併 用投与の影響をラット頚静脈カニュレからの経時的連続採血法により、 詳細に検 討した。 その結果、 フェンブフェン併用によりオフロキサシンでは全身クリアラ ンスの低下18)、 ノルフロキサシン19)およびシプロフロキサシン20)では血祭中消失 半減期の遅延もしくは遅延傾向が認められることを報告した。 さらに、 フェンブ フェンおよびフェルビナクの血禁中動態ならびに血清蛋白結合率には上記のキノ ロン剤はほとんど影響を及ぼさないことも明らかにした18-20)。
しかし、 この体内動態の変化と痘筆誘発を関連付けるためには、 併用時のキノ ロン剤の中枢移行動態を検討することが不可欠であると考えられる。 そこで、 本 研究では薬物濃度測定対象をキノロン剤のみとし、 1匹1点法により、 同一動物 から血液、H前およびCSFを同時採取することにより、 体内動態を総合的に検討す ることを目的とした。 本章では、 キノロン剤の中枢移行動態解明のための基礎 データとして、 血清、 脳およびCSF中動態とそれに及ぼすフェンブフェンの影響
について検討を加えた。 なお、 各キノロン剤の投与量は前章と同様にヒトにおけ る常用呈を基準として、 10mg!kgとし、 フェンブフェンについてもヒトにおける 常用量を参考に、 20mg!kgに設定した。
0.1
。 60 120 180 240
Time after administration (min)
Fig. 9. Serum Total Concentration vs. Time Curves for CPFX after i.v. Administration, with or without Fenbufen, in Rats
Each point and vertical bar represent the mean and S.D. of seven rats.
Each line indicates the simulation curve for the mean data by computer program, MUL 11.
*, Signjficant difference from CPFX alonc at P < .05
T ABLE 11. Pharmacokine tic Param eters Obtained from Serum Total C oncentration v s. T im e Data for CPFX a f t er i . v . Administration, with or without Fenbufen, in Rats
n -1 キノロン剤の血清中濃度におよぼすフェンブフェンの影響
Parameter CPFX alone Wi出fenbufen
A(μglm1) 9.27 + 6.76 7.57 + 2.66
B(μglmI) 2.45 + 1.00 2.20 + 0.49
C(μglml) 1.76 + 0.29 1.94 + 0.24
α(min-1 X 10勺 43.8 + 31.4 38.2 + 15.2 戸(min-1 X 10之) 5.41 + 2.53 4.36 + 1.45
y (min-1 X 10之) 0.950 + 0.085 0.777 + 0.059***
ラットにシプロフロキサシンを単独であるいはフェンブフェンと同時に単回急
速静注したときのシフロフロキサシンの血清中総濃度一時間推移をFig.9に示 す。 分散分析(ANOVA) により単独投与群とフェンブフェン併用群を比較する と、 有意な差が認められた(p < 0.001 )。 投与後の各時点で両群を比較すると、
薬物投与後30分以降の消失相に相当すると考えられる時間においてフェンブフェ
Parameters were estimated from the mean data of seven rats by the computer program, MUL 11.
Data are expressed as the mean :t S.D. of the estimate.
料牢Significant difference from CPFX alone at P< .00l.
18 19
仁士一ーで一一一三二二二二二 三 色 孟孟孟一一一 一 一 一ー自国国国 |
ンの併用による血清中シプロフロキサシン濃度の有意な上昇が観察された。
各測定点の平均血清中濃度一時間データを非線形最小二乗法を用いて、指数関 数へのあてはめを行った。 AICをモデル選択の指標として種々の指数関数につい て検討した結果(MAICE)、単独群・併用群のデータとも3-コンパートメントモデ ルを表す次式に最もよく適合することが示された。
C = A 'exp(ーαt)+B'exp(-βt)+C' exp(ーγt}
ただし、Cは血清中薬物濃度、t は薬物投与後の時間、A, B, C,α,βおよび、γ はハイブリツド・ パラメータである。 算出したパラメータを TABLE 1Iに示す。
終末相における血清中濃度一時間曲線の傾きγがフェンブフエンの併用により減 少していることから、シプロフロキサシンの消失半減期の延長が生じていること が認められた。 これらの結果は血清中非結合型濃度データにおいても認められ た。
Fig. 10. Serum Total Concentration vs. Time Curves for NFLX after i.v.
Administration, with or without Fenbufen, in Rats.
Each point and vertical bar represent the me組組d S.D. of five rats.
Each linc indicates the simulation ωrve for the mean data by computer prograrn, MUL 11.
玖Signjficant difference from NFLX alone at P < .05;
本牢,signific釦t difference from NFLX alone at P < .01.
手EE 通
H
d
。 100
• OFLX alone
o With fenbufen
10
1
\ベユ *
。 60 120 180 240
Time afte r administration (min)
Fig. 11. Serum Total Concentration vs. Time Curves for OFLX after i.v. Administration, with or without Fenbufen, in Rats
Each line and vertical bar rep閃sent血e me組制d S.D. of five rats.
Each line indicates the simulation c山ve for the mean data by computer program, MUL TI.
牢,Significant difference from OFLX alone at P < .05;
料,significant difference from OFLX alone at P < .01;
牢牢牢,significant diffe陀nce from OFLX alone at P < .001
Fig.10および、Fig.11にノルフロキサシンおよびオフロキサシンの、各薬剤を単 独であるいはフェンブフェンと同時に単回急速静注したときの血清中総濃度一時 間推移を示した。 血清中総濃度は、両薬剤とも時間の経過とともに2指数関数的 に減少した。 これらの薬剤においても、シフロフロキサシンの場合と同様、投与 後60分以降の消失相に相当すると考えられる時間においてフェンブフェンの併用 による血清中濃度の有意な上昇が観察された。
MAICEに基づいて解析を行なうと、 両薬剤jの血清中濃度一時間データは次式に より表わされる2-コンパートメントモデルに最もよく適合した。
C = A 'exp(ーαt}+B'exp(-βt)
ただし、Cは血清中薬物濃度、tは薬物投与後の時間、A,B,αおよびβはハイ ブリッド ・ パラメータである。 血清中濃度の平均値から算出した速度論的パラ メータおよび消失相における半減期をTABLEillおよび�TABLENに示した。 ノルフ
Obtained from Serum for NFLX after i .v.
in Rats T ABLE III. Pharmacokinetic Parameters
Total Concentration vs. Time Data Administration, with or without Fenbufen,
NA alone With fenbufen
100
•
。
(-Eh44)ロOZEE8ccυ〈Z
10
With fenbufen A(μglml)
B(μglml) α(min-1 x 10勺 戸(min-1 x 10之) tl/2ß (min)
1.9 0.41 5.8 0.16*
±+一±
+
10.1 3.10 23.。
1.14 0.97
0.37 3.7 0.14
NFLX alone
+一+一±
+
8.29 3.11 19.。
1.39 Parameter
61.0 49.7
Paramcters were estimated from the mean data of five rats by the computer program, MUL 11.
Data arc exprcssed as the mean :t S.D. of the estimate.
Thc climination half-life at the terminal ph出e was calculated from the mean value of ß .
*Significant difference from NFLX alone at P< .05.
1
120 180
。 60
Time after administration (min)
Fig. 12. Serum Total Concentration vs. Time Curves for NA after i.v.
Administration, with or without Fenbufen, in Rats Obtained from Serum
for OFLX aft er i .v.
in Rats T ABLE IV. Pharmacokinetic Parameters
Total Concentration vs. Time Data Administration, with or without Fenbufen,
Each point and vertical bar represent出e mean 加d S.D. of five rats.
Each line indicates the simulation cuwe for the memdata by the computer progrun,MULTI
牢, Significant difference from NA alone at Pく.05;
**, significant difference from NA alone at P < .01.
With fenbufen OF工Xalone
2.71 * 0.90 10.7
±+一+一
8.21 5.91 20.1 2.2
0.70 5.8 0.17
+一+一±
12.1 5.31 21.0
Dは薬物投 ke は消失速度定数、
tは薬物投与後の時間、
Cは血清中薬物濃度、
0.18 1.25 +
1.41 +
Parameter A(μglml)
B(μglml) α(min-1 X 10-2)
。(min-1 X 10勺
tl/2ß (min) 与量そしてVdはみかけの分布容積を示す。
フェンブフェン併用群で投与後60分以降において血清 中濃度の有意な増加が認められた。 血清中濃度から算出した消失速度定数はフエ
他の3剤の場合と同様、
55.6
Parametcrs were estimated from the mean data of five rats by the computer program, MUL11.
Data arc expressed as the mean:t S.D. of出eestimate.
The elimination half-life at the terminal ph出e was calculated from出e mean value of ß .
牢Significant difference from OFLX alone at P< .05.
49.0
TABLE V. Pharmacokinetic Parameters Obtained from Serum Total Concentration vs. Time Data for NA after i .v.
Administration, with or without Fenbufen, in Rats
ロキサシンにおいて終末相における血清中濃度一時間曲線の傾きβの有意な減少
With fenbufen NAalone
2.25 + 0.10 1.44 + 0.06*
Parameter が認められた。
48.1 30.8
ke (min-1 X 10勺 t1/2 (min) ナリジクス酸静注後の血清中総濃度一時間推移をFig. 12に示した。 血清中濃
Parameters we陀estimated from出e mean data of five rats by the computer program, MUL TI.
Elimination rate constant was expressed白血e mean:t S.D. of the estimate.
Elimination half-life w出 calculated from the me加 value of ke.
*, Signjficant difference from NA alone atP < .001.
AICも次式で表わされる1-コンパー トメントモデルの場合がもっとも小さい値を示した。
度は両群とも1指数関数的消失挙動を示し、
23
C = DN d . exp(-ket)
22
同dkF切戸開ぞ戸可『d釦『コd曲。orZ253mW3220『切40『500czo一OコO切釦30『「〈・
hraヨ一コ一ω雪印伸一oP2一目立O『gzzoc伸
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これら4剤の TABLE II -Vに示したパラメータの平均値から算出したAUC、
総クリアランス(CL)および分布容積(Vd or V d.ss)をTABLE VIにまとめた。 分布容 積はナリジクス酸においてフェンブフェン併用によりわずかに増加したが、 他の 薬剤では併用による影響は認められなかった。 一方、 AUCはフェンブフェン併用 群で4剤すべてにおいて増加が観察された。 さらに、 総クリアランスは併用によ これら4種のキノロン剤では、
りいずれの薬剤でも減少することが認められ、
フェンブフェン併用によって代謝の減少あるいは排池の遅延により血中濃度の増 加カf生じていることカま明らかである。
ニューキノロン3剤においては、 著者ら18-20)が以前報告した各薬剤の血禁中野J 態、に対するフェンブフェンの影響についての連続採血実験の際にも、 やはり各薬 刑で併用時のAUC の増加および総クリアランスの減少が認められており、 本実 シフ。ロフロキ 験の結果とよく一致した。 また、 それらの連続採血実験において、
シプロフロキサシンの サシンについてはクリアランス実験をあわせて行ったが、
フェンブフェンの併用により約20%程度低下する傾向を示し
斗品スン-フアytノ
ク制 腎
た 血清中野j態についての今回の検討は、 中枢移行動態を調査するための基礎
検討であり、 それ以上の詳細な検討は行っていなし=。 また、 投与量、 採血時間な ども連続採血実験の場合とは異なるが、 終末相における血清中濃度一時間曲線の フェンブ、フェンカfシ 傾きγがフェンブフェンの併用により減少していることは、
プロフロキサシンの主排池経路である腎排池を抑制している可能性を示唆するも のである。 そのメカニズムについては、 以下のように推測される。
シプロフロキサシンは、 その腎クリアランスがクレアチニンクリアランスより Wingenderら 尿細管分泌過程の存在が示唆されている54.55)。
も大きいことから、
アニオンキャリアーへの高い親和性により、 能動分泌過程阻害作用を有す 日)は、
シプロフロキサシンの消失半減期が延長すること るプロベネシドの併用により、
N小小市山
いw・J可凶
N色、川シプロフロキサシンの尿細管分泌過程には有機アニオ ン輸送系の関与が推定できる。 一般に、 有機酸は尿細管において有機アニオン輸
したカfって、
を報告した。
送系により能動的に分泌される57)。 Chibaら58,59)は、 主として有機アニオン輸送系 による尿細管分泌によって腎排池されることの知られているスルファメチゾール の消失が、 有機酸であるフェンブフェンならびにフェルビナクの投与によって遅 延することを報告している。 これらの知見は、 フェンブフェンの併用によるシプ ロフロキサシンの腎クリアランスの低下が、 有機アニオン輸送系で行われる腎尿 細管分泌における情抗的阻害によって生じているという可能性を強く示唆するも のである。
シフロフロキサシンをはじめ、 ニューキノロン剤は、 一般に代謝的に安定であ ることが知られており、 基本的に腎排池型薬剤であるω62)o オールドキノロン剤 であるナリジクス円安はニューキノロン剤とは異なり肝代謝を受ける割合も高い が、 何への移行性も良好であることが報告されている63)。 また、 フェンブフェン が併用薬剤の肝代謝に影響をおよぼすという報告は見当たらない。 さらに、 シプ ロフロキサシンのみならず多くのキノロン剤に関して、 尿細管分泌過程の存在が ボ唆されており、 ノルフロキサシン、 オフロキサシンおよびナリジクス酸につい てもその関IFが報告されていることから64州、 これら3剤においても、 シプロフ ロキサシンの場合と同様な機序が各薬剤の排出の遅延の一因となっていると考え られる。 さらに最近、 著者ら67)は、 ラットで尿細管分泌過程をほとんど有しない ニューキノロン剤であるスパルフロキサシン において、同) フェンブフェンを併
用してもスパルフロキサシンの血清中濃度は単独時と比べてほとんど変化しない という結果を得ている。 この事実は、 フェンブフェン併用によるキノロン剤の血 清中濃度の増加は尿細管分泌過程の阻害作用であるという、 前述の考察を強く支 持する。
26
II -2 キノロン剤の血清蛋白結合率におよぼすフェンブフェンの影響
血清中濃度の各測定点でのシプロフロキサシンの結合型分率を単独群と併用群 で比較した結果をFig.13に示す。 シフロフロキサシンの結合型分率は0.24-0.33 であり、 単独群、 併用群聞に統計的な有意差は認められなかった。 結合率には有 意な経時的変動が観察されたが(p < 0.001, ANOV A )、 この原因についての詳細 な検討は行っていない。 しかしながら、 結合型分率の経時的変動への併用による 有意な効果は認められず、 併用による蛋白結合への影響はないものと考えられ る。
ノルフロキサシン、 オフロキサシンおよびナリジクス酸の結合型分率を単独群 と併用群で比較した結果をFìg. 14, Fig. 15およびFig.16 に示す。 ノルフロキサ シン、 オフロキサシンおよびナリジクス酸の結合型分率はそれぞれ0.25-0.33、
0.28一0.36、 0.83-0.86であった。 ノルフロキサシン、 オフロキサシンについても シプロフロキサシンの場合と同様、 結合率へのフェンブフェンの影響は認められ
0.4寸
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点】ロに同J 9
。 2 セ国ロヨ
吉
0.1
。
•
CPFX alone図
3 7.5 15 30 60 120 240
Time after admìnistratìon (min)
Fig.
13. Fractions of CPFX Bound to Rat Serum Protein after i.v.Administration with or without Fenbufen
Each column and vertica1 bar represent the mean加dS.D. of seven rats.
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