• 検索結果がありません。

九州大学学術情報リポジトリ

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "九州大学学術情報リポジトリ"

Copied!
120
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

河川流域の流木発生ポテンシャルに基づく橋梁の流 木災害リスク評価法の開発

堂薗, 俊多

https://doi.org/10.15017/1807009

出版情報:Kyushu University, 2016, 博士(工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:Fulltext available.

(2)

河川流域の流木発生ポテンシャルに基づく

橋梁の流木災害リスク評価法の開発

2017 年 2 月

堂薗 俊多

(3)

- 1 -

目次

第1章 序論 ... 1

1-1 本研究の背景 ... 1

1-1-1 はじめに ... 1

1-1-2 日本の流木災害の事例 ... 2

1-2 流木研究に関する既往研究 ... 7

1-2-1 流木とは ... 7

1-2-2 流木に関する総括的な調査・研究について ... 7

1-2-3 流木に関する知見の概要 ... 9

1-3 流木発生のメカニズム ... 15

1-3-1 森林の樹木形態 ... 15

1-3-2 流木の発生形態 ... 16

1-3-3 流木の流下実態の研究事例 ... 17

1-3-4 流木災害への対策 ... 19

1-4 本研究の目的と構成 ... 20

第 2 章 河川流域における流木発生ポテンシャルの概念の提案とそれに基づく橋梁における流木 災害リスク評価法の開発~筑後川水系花月川を対象として~ ... 23

目的 ... 23

2-1 平成24年7月九州北部豪雨における花月川流域の流木発生状況等について ... 25

2-2 花月川流域における災害 ... 25

2-2-1 解析手法の開発について ... 28

2-3 流木発生ポテンシャルの概念の提案 ... 28

2-3-1 調査対象流域 ... 28

2-3-2 使用したデータ類について ... 29

2-3-3 流木発生ポテンシャルの算定について ... 30

2-3-4 河川橋梁位置における相対的流木災害リスクの評価法について ... 31

2-3-5 花月川流域を対象とした評価結果 ... 34

2-4 流木発生源の特定結果について ... 34

2-4-1 橋梁位置における流木発生ポテンシャルの推定結果について ... 35

2-4-2 各橋梁における相対的流木災害リスクの評価結果について ... 37

2-4-3 橋梁改修計画に対する応用 ... 39

2-5 結論 ... 41

2-6 第 3 章 砂防ダムや貯水ダムによる流木災害リスクへの影響の評価~山国川流域を対象として~ ... 42

目的 ... 42

3-1 平成24年7月九州北部豪雨における山国川の流木発生状況等について ... 45 3-2

(4)

- 2 -

3-2-1 山国川流域における災害 ... 47

流木災害リスク評価の概要 ... 47

3-3 3-3-1 流木発生ポテンシャルについて ... 47

使用したデータ類について ... 47

3-3-2 流木発生ポテンシャルの算定について ... 49

3-3-3 山国川の橋梁における相対的流木災害リスクの評価について ... 50

3-3-4 山国川流域を対象とした評価結果 ... 53

3-4 流木発生ポテンシャルと全橋梁の流木災害リスクの評価 ... 53

3-4-1 津民橋撤去による流木災害リスクの変化 ... 54

3-4-2 砂防ダムによる流木災害リスク低減効果の評価 ... 55

3-4-3 耶馬溪ダムによる流木災害リスク低減効果 ... 56

3-4-4 結論 ... 57

3-5 第 4 章 大流域の河川を対象とするための流木災害リスク評価手法の改善~球磨川中流域への適 用~ ... 58

目的 ... 58

4-1 対象流域について ... 59

4-2 林分情報解析 ... 60

4-3 レーザプロファイラデータによる林分情報解析 ... 60

4-3-1 樹冠高モデルの作成 ... 61

4-3-2 流木発生ポテンシャル評価 ... 73

4-4 流木発生危険度の解析 ... 73

4-4-1 流木災害リスクの検討 ... 81

4-5 橋梁に係る相対的流木集積リスクの比較評価 ... 81

4-5-1 結論 ... 93

4-6 第5章 レーザ計測密度の違いによる林分情報解析への影響の検討 ... 94

目的 ... 94

5-1 検討手法... 95

5-2 検討フロー ... 95

5-2-1 検討範囲 ... 95

5-2-2 計測密度による林分情報解析への影響検討 ... 97

5-3 5-3-1 現地調査地点における林分情報解析精度の比較(立木本数) ... 97

5-3-2 現地調査地点における林分情報解析精度の比較(樹高) ... 98

5-3-3 現地調査地点における林分情報解析精度の比較(胸高直径) ... 98

5-3-4 現地調査地点における林分情報解析精度の比較(材積) ... 99

5-3-5 現地調査地点における林分情報解析精度の比較の結果(全体) ... 100

5-4 結論 ... 101

(5)

- 3 -

第6章 むすび ... 102

図目次 ... 104

表目次 ... 107

写真目次 ... 108

参考文献 ... 109

謝辞 ... 113

(6)
(7)

1

1 章 序論

1-1

本研究の背景

1-1-1 はじめに

世界の年平均気温は長期的にみて上昇傾向にあり,気象庁の解析では 1891 年の統計開始以来 100年あたり0.69℃の割合で上昇している1).また,日本の年平均気温は,1898 年の統計開始以 来100 年あたり1.14℃の割合で上昇している1)

2013年に公表されたIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)第1 作業部会の第5 次評価報告書2)では,「気候システムの温暖化には疑う余地がなく,また1950年代以降,観測さ れた変化の多くは,数十年から数千年間にわたり前例のないものである.大気と海洋は温暖化し,

雪氷の量は減少し,海面水位は上昇し,温室効果ガス濃度は増加している2)」と報告されている.

また,「地球の表面では,最近30年の各10年間はいずれも,1850年以降のどの10年間よりも 高温であり続けた.北半球では,1983~20l2年は過去l400年において最も高温の30年間であっ た可能性が高い(中程度の確信度)2)」と報告されている.

降水は大気中の水蒸気が凝結して,雨または雪として地上に達する現象であるため, 大気中の 水蒸気量の多寡は降水量を決める重要な要素の一つである.大気中に存在できる水蒸気量(飽和水 蒸気量)は気温の関数である(Clausius-Clapeyron 関係).冒頭に述べた通り,世界および日本の 年平均気温は長期的にみて上昇傾向にあり,長期間にわたる気温の上昇は,降水の増加をもたら している可能性がある.

気象庁によると,日本の年間総降水量には,データのある明治34(1901)年以降,長期的なトレ ンドは認められないものの, 日降水量100mm 以上の日数および日降水量 200mm 以上の日数はと もに増加傾向が明瞭に現れている(いずれも信頼度水準 95%で統計的に有意)など,日降水量 100mm 以上,200mm 以上の発生回数は,全国的には増加する傾向が示されている1)

l970年代後半から気象庁によりアメダス(地域気象観測システム)が全国展開され,局地的な雨 をとらえることができるようになった.アメダスで観測された1時間降水量が30mm以上の激しい 雨,50mm以上の非常に激しい雨,80mm以上の猛烈な雨の発生頻度には増加傾向が明瞭に見られる

(信頼度水準95%で統計的に有意)1)

21世紀末(2081~2100年)までの世界の気温上昇は,産業革命以降これまでに起こった気温上昇 量の数倍に達する可能性が高い.IPCC第5次評価報告書によると,21世紀末までの世界平均地上 気温の 1986~2005年平均に対する上昇量は,低位安定化シナリオで 0.3~l.7℃,高位参照シナ リオでは 2.6~4.8℃の範囲に入る可能性が高い.そのため,上記の 20 世紀後半に観測された長 期的な降水変動の特徴がより大きく明瞭に現れると考えられる.

IPCC第5次評価報告書は,世界平均地上気温が上昇するにつれて,中緯度の陸域のほとんどと 湿潤な熱帯域において,極端な降水がより強くまたより頻繁となる可能性が非常に高いとも評価 している2).また,今世紀中の地球温暖化により,21世紀末において,世界全体の熱帯低気圧の 発生頻度は減少するかまたは基本的に変わらない可能性が高く,それと同時に世界全体で平均し

(8)

2

た熱帯低気圧の最大風速および降雨量は増加する可能性が高いと評価されている2)

同様に,気象庁気象研究所による「超高解像度大気モデルによる将来の極端現象の変化予測に 関する研究」3)においても,台風やハリケーンなどの熱帯低気圧の存在頻度は西太平洋,南太平 洋,南インド洋で21世紀末には減少すると予測されている4)ものの,全球的に強い熱帯低気圧の 割合は増加し,特に日本の南方海上では,非常に強い熱帯低気圧が増加すると予測されている5)

実際のところ,近年,大雨や短時間強雨の発生頻度の増加,大雨による降水量の増大などが現 実の現象として起きている.

平成22(2010)年の奄美大島の災害,平成23(2011)年の福島・新潟豪雨や台風12号に伴う紀伊半 島を中心とする深層崩壊及び那智川の土石流災害,さらに平成24(2012)年7月には「これまでに経 験したことのない大雨」と気象庁が報じ,矢部川本川で堤防決壊が生じた九州北部豪雨が発生し ている.

平成25(2013)年9月には台風18号に伴う京都府の桂川や由良川の災害,同年10月の台風26号で は伊豆大島で大量に発生した流木により被害が拡大し死者36名,行方明者3名の大災害となった.

平成26(2014)年8月には広島市の流木を伴う土砂災害で死者74名,平成27(2015)年9月には台風 18号及び秋雨前線に加え,その後の温帯低気圧及び台風17号により発生した線状降水帯の影響で 関東・東北豪雨が発生し,鬼怒川の決壊をはじめ甚大な被害をもたらした.

そして平成28(2016)年には8月中旬から月末にかけての2週間で東北・北海道を中心に台風7号,

11号,9号,10号が相次いで上陸し,各地で堤防決壊や越水,土石流による甚大な被害が発生し,

河道内に残存する大量の流木に関しては,年末の12月現在で未だ除去できていない箇所も多い.

このように集中豪雨によって流木による被害の存在も一段と顕在化している.

このように今後将来へ向けて益々重要となることが予想される豪雨災害であるが,多くの大規 模豪雨災害では流木の問題が同時に発生している.山林を多く有するわが国では流木がもたらす 災害は古くからあった.また,これに対抗するための先人の知恵も散見され,橋脚の前に設置さ れた木製の流木避け等は, 京都の渡月橋に代表されるように現在でも見ることができる.しかし ながら, 明治初期に西欧の近代治水思想がわが国に導入されて以来, 急速に発展してきた河川 工学に比べて, 流木問題への対処法にはそれ程の進歩は見られなかった.一つは, 流木の発生 から流下・堆積までのプロセスがきわめて複雑でその解明が困難であったこと, 流木の発生源は 山地や河畔, 河道等の樹木であるため林学の専門家でない土木技術者には苦手意識があったこと,

さらには流木問題の重要性はある程度認識されていても, やはり被害の直接的原因である土砂災 害や洪水氾濫に目が向き, その対策を第一としてきたために, 流木問題はわきに追いやられて しまったことによると思われる.

しかし,流木問題の恐ろしい点は, 本来流せる程度の洪水でさえも流木による橋梁部の閉塞等 で流せなくなり,一挙に氾濫するところにある.今後の河川の治水計画を破綻させないためにも,

流木の問題に関する知見の蓄積とその対策のための新たな技術開発が緊急に求められている.

1-1-2 日本の流木災害の事例

台風や前線の影響による主要な流木災害をTable 1-1に示す.その中でも特に近年,土石流・土 砂流とともに発生した流木による甚大な災害として,以下のものが挙げられる.

(9)

3

・ 昭和57(1982)年7月の長崎大水害

・ 平成2(1990)年7月に熊本県一の宮町(古恵川)で発生した泥流・流木災害

・ 平成11(1938)年6月の広島災害

・ 平成16(2004)年7月の福井豪雨災害

・ 平成18(2006)年7月の長野県土砂災害(岡谷市)

・ 平成24(2012)年7月の九州北部豪雨

・ 平成25(2013)年10月の大島災害(東京都大島町)

平成 2(1990)年7 月に,九州北部では梅雨前線の活発化により集中豪雨が発生し,各地で土 石流,がけ崩れ,地すべり等が発生して多くの人命,財産に被害を与えた.このような土砂災害 の中でも最大の人命,家屋に被害が生じたのは熊本県一の宮町(古恵川)であり,流出土砂に含 まれた多量の流木がさらに被害を助長した.

この災害が契機となり,土砂とともに流出する流木による災害から生命,財産や自然・社会環 境を守ることを目的として,流木流出量の調査手法や流木対策計画の策定手法並びに施設の設計 方針等を定めた「流木対策指針(案)」が策定された6)

また,流木災害の脅威を改めて全国に知らしめた平成 24 (2012)年 7 月の九州北部豪雨による 流木災害の実態を示す写真をPic 1-1~Pic 1-10に示す.

Table 1-1 台風や前線の影響による流木災害

年 代 要 因 場 所

昭和13(1938)年7 南からの暖湿流の衝突により 生じた激しい上昇気流

兵庫県:六甲山系(阪神大水 害)

昭和42(1967)年7 低気圧が梅雨前線を

刺激したことによる豪雨 兵庫県:六甲山系

昭和44(1969)年8 台風7 長野県:南木曽地方の諸河川

(特に与川,梨子沢)

昭和50(1975)年8 台風5 高知県:仁淀川支流の勝賀瀬

昭和51(1976)年9 台風17 香川県:小豆島の橘川

昭和57(1982)年7 梅雨前線 長崎県:長崎大水害

昭和58(1983)年7 梅雨前線豪雨 島根県:三隅町河内地区(山

陰豪雨災害)

昭和61(1986)年7 梅雨前線による局地的集中豪雨 京都府:京都府南部災害

昭和62(1987)年8 前線を伴った低気圧 山形県:山形県温海町災害

昭和63(1988)年7 前線活動の活発化 広島県:広島県北西部災害

昭和63(1988)年8 停滞する前線へ湿った空気が

流入したことによる局地的豪雨 栃木県:那珂川水系余笹川

(10)

4 平成2(1990)年7 梅雨前線の活発化,

九州地方を襲った集中豪雨 熊本県:古恵川(一の宮町)

平成3(1991)年9 台風19 大分県:深耶馬渓・麗谷(玖

珠郡玖珠町)

平成4(1992)年8 台風10号から変わった 低気圧による大雨

北海道:沙流川本川,パラダ イ川

平成5(1993)年9 台風13

熊本県:氷川支川川俣川 大分県:屋形川支川落合川 鹿児島県:鶴田川

鹿児島県:河崎川

平成11(1999)年6 梅雨前線による集中豪雨 広島県:広島災害

平成15(2003)年8 台風10号,

北海道にかかっていた前線

北海道:沙流川,厚別川上中 流域

(日高・十勝地方)

平成16(2004)年7 活発な梅雨前線の南下 福井県:福井豪雨災害

平成17(2005)年7 梅雨前線豪雨 大分県:玖珠地方,熊本県:

阿蘇地方

平成17(2005)年9 台風14 宮崎県:耳川

平成18(2006)年7 梅雨前線による豪雨 長野県:岡谷市

平成18(2006)年8 停滞前線 北海道:沙流川

平成24(2012)年7 集中豪雨 九州北部

平成25(2013)年10 台風26 東京都:大島町

平成26(2014)年8 集中豪雨 広島県:広島市

平成28(2013)年8 台風7号,11号,9号,10 北海道:札内川ほか多数

(11)

5

Pic 1-1 大野川水系玉来川(竹田市) Pic 1-2 大野川水系玉来川(竹田市)

ショートカット部に架かる橋梁に多量の流木が集積

Pic 1-3 筑後川水系高瀬川 Pic 1-4 筑後川水系高瀬川

河岸際まで杉が繁茂しており,河岸浸食により流木化 流木が多量に引っ掛かり,橋桁が落下した したと考えられる.

Pic 1-5 矢部川水系星野川 Pic 1-6 矢部川水系星野川

古い石橋において,流木により桁が破壊された.桁下が水位の上昇に伴い狭まる構造になっており,流木の捕捉 が促進される.

落下した床版

出水時福岡県撮影

(12)

6

Pic 1-7 白川被災(流木) 龍田陣内4丁目 Pic 1-8 白川被災(流木) 龍田陣内4丁目

Pic 1-9 白川被災(流木) 龍田陣内4丁目 Pic 1-10 白川被災(泥土被害)龍田陣内4丁目

(13)

7

1-2

流木研究に関する既往研究

1-2-1 流木とは

本論文で取り扱う流木についての定義を示す.流木とは,流木発生源から河道に供給された立 木・風倒木・木材などが,浮流に転じることによって発生するものである.流木は土砂石ととも に洪水流に含まれて流送し,洪水の有する災害的エネルギーを強化させている 7).流木を大量に 含んだ洪水流は,下流に流れるにつれて次第に加害性を強め,災害を惹起する8)

流木による災害は主として「堰止め作用」(流木天然ダムの形成,堤防の決壊)および「衝撃作 用」(渓岸侵食・山腹崩壊の助長,家屋・橋梁等構造物の破壊・流出の促進)に起因しているとさ れている7),9),10)

また,流木は残流木処理のために災害後の復旧を遅延させる原因となっているとともに,流木 を含む洪水流下物が沿岸に漂着した後,船舶による港湾の使用,または海岸の利用などの観光へ の障害となり,その除去に多額の予算が必要になることが問題となっている9),11)

1-2-2 流木に関する総括的な調査・研究について

流木をテーマとして取り上げた調査・研究は未ださほど多くないのが現状であるが,その中で も総括的なものとして,時系列順に以下が挙げられる.

(1)ダム貯水池における流木発生量と木質バイオマスとしての利用実態12)(ダム水源地環境整備セ

ンター(2004))

この調査では,流木発生量および流木利用実態の把握を目的として,直轄・水機構管理ダム99 件(回答93),都道府県管理ダム97件(回答93)のダム管理者に対するアンケートを実施してお り,下記の結果が示されている.

「収集・引き上げ・運搬費用」は「処分費用」にほぼ等しいという関係にあり,全国的に見る と流木を陸揚げし処分場に運ぶ過程で,焼却処分等の費用と同等の費用がかかっていることが判 明した(流木収集:5,600円/m,流木引き上げ:3,500円/m,流木運搬:2,800円/m, 処分:10,800円/mで合計22,700円/m(いずれも調査当時)).

また,流木発生量に関する分析結果としては,年間の単位面積当たり流木発生量が大きいダム でも15m/km/year程度である.また,発生量が0.1~2m/km/yearのダムが最も多くなっ ている.

年間の単位面積当たりの流木発生量の全データを度数分布として並べると,約 9割が15m/k m/year以下となる.また,2m/km/year以内が比較的多くなっているのがわかる.

全データ取得期間の累計流木発生量と年平均流木発生量は比較的高い相関関係を示しており,

累計流木発生量が大きいダムでは,平均的に年流木発生量が大きくなっていると考えることがで きる.

また,「流域面積の大きさ」と「流木の発生しやすさ」 には負の相関がみられる場合が多い.

ただし,この傾向は流域面積が広い場合(流域面積>300k㎡程度)または単位面積当たり年平均 流木発生量が多い範囲(単位面積当たり年平均流木発生量>5m/km/year程度)の場合におい

(14)

8 て顕著に見られる傾向がある.

(2)Factors controlling the fluvial export of large woody debris, and its contribution to organic carbon budgets at watershed scales13)(Jung Il Seo,et al.(2008))

全国のダムを対象に各ダムの流木データ(最頻値は5~9年)を収集している.ただし,各ダム における流木量の継続調査方法は様々であり,その多くは空隙率を考慮した積み上げで体積換算 した数値である.

これらのデータをもとに,131 の集水域について各年の流木量をモデル化して集水域面積と流 木量の関係を示したところ,中規模サイズの流域面積でひとつの流域あたりの流木量が最大とな る結果が得られたことが示されている.

(3)ダム貯水池における流木流入災害の防止対策検討調査14)(林野庁森林整備部,国土交通省河川

局(2007))

主に山地・渓流における流木生産域を対象として,流木の発生メカニズム及び流木の動態解明 の解明と,それに基づく流木発生対策や流下を抑制したり流木を捕捉したりする対策,あるいは 資源利用という観点における流木処理対策を取り扱っている.

(4)流木災害軽減対策と河川樹木管理に関する総合的研究15)(㈶河川環境管理財団 (2008))

近年の流木災害の実態を踏まえて,河畔林・渓畔林の水理学的機能と樹木の更新,流木の発生 機構と堆積・再移動,流木の堆積による被災現象と被害のメカニズム,流木にこれまでどのよう に対処してきたか,また流木被害の軽減対策,堆積流木の処理についてまとめている.

また,提言として下記の項目をさらに検討する必要性を挙げている.

・水系一貫・総合化・流域経営の視点

・河畔林・渓畔林の機能,生育場の差異による機能の違い

・流木の発生・流下・堆積機構について,場と攪乱規模の差異が及ぼす違い

・流木被害発生機構の解明

・流木被害の軽減対応策の実体化

・堆積流木の協働処理と資源化

(5)流木と災害16)(小松利光監修,山本晃一編集,㈶河川環境管理財団(2009))

流木と災害について,その発生から処理までを包括的に取り扱ったものである.本研究と関連 の深いものについて,次節で概説する.

(6)Large wood export regulated by the pattern and intensity of precipitation along a latitudinal gradient in the Japanese archipelago17) (Jung Il Seo,et al.(2012)) 全国の42流域を対象に雨量強度と流木流出量の関係をモデル化した結果,北部と南部で異なっ たパターンが見られたことに加え,以下の結果を示している.

流木のサイズに比べて河川の規模が相対的に小さな小流域では 110mm,もしくは 120mm 以上の 実効雨量の年間合計が,本モデルにおいて説明力が高い.半減期3日の実効雨量が100mmを越え

(15)

9

ると斜面崩壊が起こり始め,200mmを越えると危険度がかなり高いことが分かった.

中規模ならびに大流域では,それぞれ40mm,60mm以上の日降雨量の年間合計が重要という傾向 が見られた.

(7)全国のダム貯水池への流木流入の実態と課題整理18)(若林伸幸(2014))

全国の国土交通省管理ダム,水資源機構管理ダム,道府県管理ダム及び電力会社管理ダムにつ いて,年間流入流木量と流域面積・ダム流入量・堆砂量との関係を整理した結果,いずれも正の 相関関係があると報告されている.すなわち洪水の多い年は流木流入量が多く,ダムへの堆砂量 が多いほど流木流入量は多く,当然ながら流域面積が多いダムほど流木流入量は多いという傾向 がある.

流木による河川・ダム管理上の主な課題としては,網場を通過した流木によるゲート機能の阻 害,網場の破損,巡視船の航路阻害,流木が滞留・沈降することによる水質悪化の懸念,景観の 悪化,湖面利用への影響,処理費用の発生が挙げられるとしている.

二風谷ダムは平成15(2003)年8月の台風10号の際には約5万m3もの大量の流木を捕捉した.

ダム上流域の河川では流木により橋梁が流出する被害が発生した.ダムがなかった場合は,ダム 下流域でも流木による被害が発生した可能性が想定される点を指摘している.

またここで,現在,国土交通省としては,今後のダム管理における流木対策の方向性として以 下の4点を挙げている点を紹介している.

・関係機関と連携したダム流域における流木発生ポテンシャルの把握

・大量の流木が発生することを前提とした流木処理計画の立案(流木流入量の想定,仮置き場 の候補地・必要面積,処分方法等)

・流木供給量が不安定であることを前提とした有効活用方策の検討と関係機関・産業との連携 強化

・ダムによる流木捕捉効果の定量的算定手法の開発

(8)土石流に伴う流木による災害とその防止軽減対策に関する考察19)(水原邦夫(2016))

流木による災害助長の視点から見た水災害と森林・林業の変遷,流木による災害助長の事例,

流木による被害形態,山地河川における流出流木の実態,土石流に伴う流木の挙動特性に関する 実験,土石流に伴う流木の捕捉工に関する実験,流木対策施設計画に関する基本的考え方,総合 的な流木対策計画について考察されている.

1-2-3 流木に関する知見の概要

有効な対応策を検討する上では,まず流木の問題に関する過去の事例や知見を蓄積していく必 要がある.また流木の発生から流下までのメカニズムは地形,降水量,河川勾配など個々の河川 の条件に応じて異なることが予想され,汎用性のある流域圏全体での流木リスク評価手法を確立 して用いることが有用であると考えられる.

以下に,流木に関連する既存の知見について概説する.

(16)

10 (1)水系一貫の視点

近年の洪水に伴う災害の多発において,土石流, 地すべり,山地崩壊とともに流下した樹木,

河岸侵食および高水敷から流出した樹木が,橋梁等の横断構造物に集積し氾濫を拡大させ被害を 助長させる,流木化した樹木が海に流出し舟運,漁業活動に被害を与える,海岸に堆積した流木 の除去に多大の費用と時間がかかるなどの種々の問題が発生し,流木災害の軽減および流木処理 の観点から,河川流域一体となった流木災害軽減対策が求められている20)

従来,河川区域および近傍に生育する樹木は,洪水流下能力を減少させる, 流木化した樹木は 氾濫被害を増加させる,また河床に堆積した流木は航路通行の障害となるものとして否定的な側 面が強調され, 専ら伐採の対象とされてきた.しかし,平成に入ると河川の環境機能が強調され,

樹木の持つ河川生態機能および景観機能の重要な構成要素として,また治水機能(河岸侵食防止機 能,水防林機能)が見直された20)

地球規模での気候変動に伴い,豪雨の頻発化に伴う洪水災害,流木災害,土砂災害の激化が予 想されるなか,治水・利水・環境という河川機能の調和を実現していくには,河川および河川近 傍の樹木の機能と流木化に伴う災害拡大要因について的確な把握を行い,流木災害軽減技術の開 発と諸対策の総合化を図る必要がある.

(2)空間区分と渓畔林・河畔林の機能の差異

渓畔林・河畔林の機能は,河川上流から下流に向かって変化する.変化の原因は自然的特性の 差異とその差異に基づいた河川周辺の土地利用, 河川利用形態の変化である.上流からその違い を記す.

1)一次谷.

谷傾斜が10~40度の谷であれば, そこは潜在的土石流発生区間である21). 谷傾斜が40度を 超えれば, 新規発生土砂は安息角を越えているので, そこには堆積しない.そこでは崖崩れに 伴って山腹が崩壊し,樹木が流木化する.

土石流の発生は, 山地解体という自然現象である. その平均発生頻度は地質や気候条件で変 化するが, 第四紀の火山斜面や崩壊地を除けば50年程度以上である.そのため森林限界標高よ り低い谷筋には, 通常樹木が谷筋近くまで生育し, 樹木で谷筋はカバーされている. 谷筋は水 分が多いので, 水分を好むスギが植林されてきた.土石流の発生に伴い土石流発生・流下区間の 樹木はなぎ倒され, 下流へ土砂とともに移動する.

土石流は連続降雨量300mm, 時間雨量50mmを超えると発生しやすい22).土石流の発生要因の 一つである斜面崩壊は樹木の根茎の及ばない深さで発生し, 樹木が崩壊を防ぐ効果は少ない.樹 木の生態系保全機能は大きいが, 流木の発生域である.

2)地すべり地・急傾斜地

豪雨や融雪により地すべり地塊が移動し,それが河川に到達すると侵食され,地すべり地塊上 に生育していた樹木が流木化する.また河川谷壁斜面の急傾斜地が崩壊すると,それに巻き込ま れた樹木が流木化する.

(17)

11 3)土石流扇状地区間

土石流扇状地は土砂の堆積の場であり流木の堆積場所でもある.流木の一部は下流に流出する.

堆積した流木は次の洪水で再流出することがある.

流出土砂が少ない期間に土石流扇状地が侵食され,小段丘が生じると段丘面に樹木が進入し樹 林化され,大洪水時に流木化する.

扇面の土地利用が進むと流路工や砂防工事により河道位置が固定され, 流木発生量は減少する.

4)山地狭隘谷部

流下土砂量より流送能力が高くなる傾向の河道では, 河岸・河床に基岩や巨石が存在し河床は 安定し, 谷壁の樹木は洪水位と洪水頻度に応じた樹種分布となる.流木の発生や堆積量は大きく ない.

流下土砂が多く沖積堆積物層の厚さがある場合は, 流下土砂量の変化により谷幅内に小段丘が 生じ, その段丘面に安定期間に応じた樹齢の樹林が生じる.

大洪水で上流からの土砂が急増したり, 側岸の小渓流から土石流が流入したりすると河床が上 昇し谷底の樹木は流木化する. 橋や取水ダムなどがあると流木が引っかかって堆積し, 上流の 河床上昇, 横断構造物周辺の氾濫水による侵食が生じる.

狭い谷底平野を流れる勾配1/150~1/50の河川で計画的な改修がなされていない河川では, 大 洪水時(確率年1/100程度), 谷底の水田・畑の多くは破壊され, 樹木は流木化する. なお良く 仕立てられた水防林は水防林機能を果たす.

河畔林は河川生態系また景観にとって重要な構成要素となっている.

5)セグメント1

(セグメントの概念については本節末の「注1)河道の分類」を参照)

1960年代以前の有堤扇状地河川においては,扇状地の開発が進み堤外地(堤防間)は狭められ河 原状であり樹木は少なかった.急流の扇状地河川では,堤防背後や無提部の河岸沿いに水防林を 仕立て氾濫被害の軽減を図った(例:釜無川,笛吹川,福島・荒川).氾濫原の表層土壊は薄く,そ の下が礫なのでマツ,スギなどが植林された.樹幹間隔は広く,また水深も浅いので,樹木によ る流速低減効果は大きくない.流木,樹木の倒壊による流木ジャムの形成などにより流水の集中 を防止し,氾濫水の分散化を図ると同時に,霞堤による氾濫水の河川への回帰を狙った.

1960年代後半以降,河道掘削がなされたが堤防沿いは治水安全の確保のため掘残された.また 山間部に貯水ダム,砂防ダムの建設,植林がなされ,流出土砂量および洪水流量が減少し,河道 の複断面化が進行した(高水敷の形成).また固定的な中州が形成され,そこにヤナギ,ハリェン ジュ,オニグルミなどが進出して樹林化が進んだ.

この樹林化は,鳥類の生息場や採餌場となり,緑環境の増加として肯定的な評価を得たが,一 方で河原環境の減少による河原系植生の減少として否定的な評価も受けた.

河道内の樹林化は大洪水時の流木の発生源となり,また洪水流下能力の減少をもたらし,治水 機能の保全のため河川管理上の課題となっている.

(18)

12 6)セグメント2-1

勾配が扇状地河川と比べ緩く(河床勾配Ib=1/500~1/2000),洪水時の河岸侵食幅が小さくなる.

砂利を河床材料として持つ自然堤防帯の河川は,沖積谷(氾濫原)の幅が狭い場合が多い.無堤 時代,このような河川では水防林を河川沿いに配置して洪水流が氾濫原を走らないようにして,

耕地の流水による侵食および中砂以上の粗粒物質の堆積による田畑の埋没を防いだ例が多い.

堤防がつくられた場合は,自然堤防上に堤防を配置し,支川の合流点や山付き部は開ロ部とし て残されることが多かった.

1960年代後半以降,堤防が築造され,また開口部は締め切られ,堤外地となった高水敷の樹木 の多くは,流下能力の確保のため伐採されるものとされた.

近年,河川環境の向上のため樹林として存置される事例が增えた.現在,堤外地の耕作放棄に より高水敷の樹林化が進み,治水上の問題が生じている河川が増加している.

一般に樹林化された樹木は,河岸侵食がなければ大洪水においても存置する.

7)セグメント2-2

1960年代以前は,高水敷は流作場として利用され樹木は少なかった.

今後,耕作放棄地,無利用地の增加により樹木の增加(ヤナギ,ハンノキ,竹,クヌギ)が予想 される.

大洪水でも高水敷上の樹木は流木化する恐れは少ないが,治水上,環境上,利用上の観点から 高水敷樹木の計画的管理が求められている.

8)セグメント3

セグメント3においては,高水敷と満潮時水位との差が小さく湿地的環境にあり,高水敷はョ シ原となる場合が多い.ヤナギは生育するが樹林となっている例は少ない.

以上,各空間ブロックの樹木の機能と流木の発生・堆積をまとめるとTable 1-2の通りである.

なお,本論文における沖積河川とは,河川が山地を抜けだした後の河道区間を言う.すなわちセ グメント1, 2-1, 2-2, 3の区間である.

(19)

13

Table 1-2 各空間区分における樹木の機能と流木の発生・堆積機能

注) ◎:大,〇:中,△:小,-:関係が少ない

生態系保全機能は平常時の機能評価,その他は大雨時・大洪水時の機能評価

1) 河道の分類

山間部を含めて河川の縦断形は,ほぼ同一勾配を持ついくつかの区間に分かれているとみることができる.こ のような河床勾配がほぼ同一である区間は,河床材料や河道の種々の特性が似ており,これをセグメントと呼ん でいる.河川におけるセグメントの数は,河川によって,また河川をセグメントに区分する日的によって異なる.

Table 1-3は,山本(1980,2004)2324によるセグメントの定義と特徴を示したものである.セグメント1, 2-1,

2-2, 3に加え,沖積河川の上流の山間部および狭窄部をセグメント Mと呼び,これらを地形特性と対応した大

セグメントと呼んでいる.セグメントごとの河道の特徴が大きく異なることは,それを存在基盤とする河川生態 系もセグメントごとにその特徴が大きく異なることを示す.セグメントは河道の特徴の単位であると同時に河川 生態系空間区分の単位でもある.

空間区分 樹木の侵食 防止機能

土砂堆 積機能

洪水位 上昇 機能

生態系 保全 機能

流木発 生機能

流木堆

積機能 その他

一次谷 (河岸)

(氾濫原)

(氾濫原)

土石流の発生および 通過

地すべり地・

急傾斜地

河道閉塞

土石流扇状地 河川

土砂流木の堆積

山地狭隘部 - △ 〇'

河岸侵食および 氾濫原侵食による 流木化

セグメント1

河岸侵食による 流木化,

河床・氾濫原への 堆積

セグメント2-1,

河岸侵食による 流木化,

河床・氾濫原への 堆積

セグメント2-2 河岸侵食量が小さい

セグメント3 樹木が少ない, 氾濫原への堆積

海岸 海岸への堆積

(20)

14 Table 1-3 各セグメントとその特徴2324

セグメント M 1 2 3

2-1 2-2

地形区分

山間地 扇状地 谷底平野

自然堤防帯

デルタ 河床材料の

代表粒径dR

さまざま 2cm以上 3cm~

1cm

1cm~

0.3mm

0.3mm以下

河岸構成 物質

河床河岸に岩が出 ていることが多い

表層に砂, シルト が

乗ることがあるが 薄く, 河床材料と 同一物質が占める

下層は河床材料と 同一.細砂,シルト, 粘土の混合

シルト・粘土

勾配の目安 さまざま 1/60~1/400 1/400~1/5000 1/5000~水平 蛇行程度 さまざま 曲がりが少ない 蛇行が厳しいが,

川幅水深比が大き いところでは8字 蛇行または島の 発生

蛇行が大きいもの もあるが,小さい ものもある

河岸侵食 程度

露岩によって水路 が固定されること がある.沖積層の 部分は激しい

非常に激しぃ 中:河床材料が 大きいほうが水路 はよく動く

弱:ほとんど水路 の位置は動かない

(21)

15

1-3

流木発生のメカニズム

1-3-1 森林の樹木形態

森林は流木の発生源となっており,平成24年(2012)年3月末の林野庁調査によると,日本の 国土面積の約67%は森林であり,2,508haとなっている.森林は国有林,私有林と公有林の3つに 大別されるが,最も多い割合を占めるのが私有林の1,444haで,続いて国有林の767ha,公有林の

292haとなっている25).Fig 1-1は森林面積の割合を示す.

また,森林は天然林と人工林に分かれ,同様に平成24年(2012)年3月末の林野庁調査による と,天然林が1,343ha,人工林が1,029ha,竹林が16 ha,無立木地が120 haとなっている.Fig 1-2 に天然林と人工林等の面積を示す25)

樹種別の比重をTable 1-4に示す.これを見ても分かる通り,一般的にアカマツ,カラマツ,ヒ ノキ・スギといった針葉樹の方が広葉樹に比較して比重は小さい傾向にある.

Fig 1-1 森林面積の割合 Fig 1-2 天然林と人工林の割合

Table 1-4 樹種別の生木の比重

アカマツ カラマツ ヒノキ・スギ 広葉樹

比重 0.96~1.07 0.73~0.9 0.7~0.8 0.93~1.22

767

292 1,444

5

森林面積

国有林 公有林 私有林 対象外森林

1,343 1,029

16 120

天然林と人工林等

天然林 人工林 竹林 無立木地

(22)

16 1-3-2 流木の発生形態

「流木発生形態」は過去の災害の調査事例から,以下に示すように分類されているFig 1-3)11)

Fig 1-3 流木の発生形態6)

(a)「山腹崩壊型」…斜面の崩壊により立木が崩土とともに谷底まで押し出され,洪水流によって 二次移動し流木化したもの.

(b)「渓岸侵食型」…洪水流が段丘面に冠水していない段階で,渓岸が流水による侵食を受け,そ の上に生育していた立木が流出したもの.

(c)「渓床侵食型」…高水敷(普段は流水のない河原面)や段丘面が冠水によって侵食を受け,そ の上に生育していた立木が流出してきたもの.

(b)と(c)の発生位置に関して,平水時の蛇行した流路を基準とした位置関係よりも,増水時に 流水が河道からあふれ,流路が拡幅して直線化した氾濫時流路に強く規定されているという研究 結果がある.このため,流木の被害対策を考えるためには,出水時の氾濫流路を規定した被害予 測が必要であるとされている26)

これに加えて,流木群は,「流下→堆積→再移動」という一連のプロセスを繰り返して下流側へ 移動している.渓床上に堆積している流木の「再移動開始条件」として,以下の条件が挙げられ ている14)

① 流木の軸方向と流向のなす角(

φ

(a) 山腹崩壊型

(b) 渓岸侵食型

(c) 渓床侵食型

(23)

17

② 渓床勾配(

θ

③ 水深(

h

これらの条件の値が大きくなる程,流木は移動を開始し易くなる.この条件について,流量お よび川幅が一定の時は渓床勾配が 5°付近で流木は最も移動し難しくなることが実験結果から分 かっている27).また,流木が移動可能な水位が生じると,河道地形に関わらず運搬されることが 調査結果から推測されている28)

さらに,流木の発生には立木が崩壊や土石流に巻き込まれることで発生する形態だけでなく,

渓床上に堆積している倒木や枯死木が土石流に巻き込まれることによって流木となり,下流へ流 下していく形態も考えられる.立木が倒木となる主な原因として,強風による風倒が挙げられる.

風倒木は樹木が風倒する過程で斜面の土層にも強い応力が働くため,土層がかなり不安定な状態 で斜面に存在することになる.そのため,斜面崩壊の発生や渓流への流木生産が長期に渡って継 続することともに,このような渓床上の倒木の再移動は流木の重要な発生源となっていることに 留意する必要がある28),29)

1-3-3 流木の流下実態の研究事例

流木は水面上を浮遊する物体であり,表面流の流体学的な力を受けて運動しているため,表面 流の状態が流木の行動様式に大きく影響している 8).また,土石流と共に流下してきた流木は巨 礫と共に土石流の先端部に密集して流下することが実験結果や過去の捕捉事例から判明している

30),31),32),33),34)

実験結果より,流木群全体は20°~30°の平均偏走角(流木が流下方向に対して傾いて流れる 角度)をもって運動しており,そのうち6~18%位が 60°~90°の偏走角を有する流木で構成さ れていること.および,堰止めの初期段階や石礫の存在が堆積の原因とみなせる流木は60°~90°

の偏走角を有する流木が多い傾向が見られることが分かっている33)

次に,過去の災害の調査事例から,新規の流木の堆積は地点・量ともに過去の流木発生時の堆 積と同じ傾向を示すこと.並びに,流木として流下する樹種の構成は流域内の樹種別の占有面積 割合を反映していることが判明している.これらのことから,流木対策を行うには,対象流域の 樹種構成・出水履歴・流木の滞留状況等について把握することが重要となるといえる35)

過去の研究結果から,流木の「停止原因」の多くは以下の3つに大別されている11),36)

① 石,立木,他の流木などの障害物による場合

② 水深(流動深)の低下や勾配の減少といった運搬力(掃流力)の低下による場合

③ 流路の屈曲による送流力の低下や流木の捕捉による場合

流木群の「堆積形態」については,調査結果より次の4種類に区別されている(Fig 1-4).なお,

谷次数によるTypeの相違は,流域面積・谷幅・河床勾配の相違に基づくものである29)

(24)

18

Fig 1-4 流木群の堆積タイプ16)

Type1:側岸に規制されて停止している流木

(0~1次谷)←①石,立木,他の流木などの障害物による場合

Type2:渓床上で組み上がって土砂を滞留させている流木

(2~4次谷)←①石,立木,他の流木などの障害物による場合

←②水深(流動深)の低下や勾配の減少といった運搬力(掃流力)の低下 による場合

←③流路の屈曲による送流力の低下や流木の捕捉による場合

Type3:高い河岸段丘面の上に散乱して堆積している流木

(4~5 次谷)←②水深(流動深)の低下や勾配の減少といった運搬力(掃流力)の低下 による場合

Type4:流木の滞留部に浮遊している流木

(5次谷以上)←②水深(流動深)の低下や勾配の減少といった運搬力(掃流力)の低下 による場合

以上のような,流木の流下・堆積に関する形態的特徴で最も大きな影響を及ぼすのは流木長で あるとされている23).なお,土砂の氾濫・堆積域まで流出する流木の平均的な長さは,上流の発 生源における立木の平均的な長さの1/3~1/2であり,土石流流下域の狭窄部の幅(土石流流下幅 の最小値)とほぼ同じであることが報告されている36)

(25)

19

これに加え,多数の流木が重なり合って堆積して流路幅全体を閉塞し,上流側が土砂堆積によ り河床上昇を起こして「流木天然ダム」を形成している構造がある.流木天然ダムは出水イベン トの度に高い割合で破壊と形成を繰り返すことで,土砂の捕捉と排出を制限し,土砂動態を大き く支配しているものである34)

1-3-4 流木災害への対策

「流木災害への対策」としては,流木の生産実態に合わせて以下に示すものが挙げられている10)

① 崩壊地での生産を防ぐ

② 土石流の流下途中での立木破壊を防ぐ

③ 破壊されても取り込まれることを防ぐ

④ 流下した流木を捕捉する

現在の流木災害対策は④を中心に行われている.流木の流下阻止対策としては「抵抗物により 流木に対する抵抗を大きくする方法」・「流木の運動エネルギーを減少させて流下を阻止し,堆積 させる方法」の2つの方法が考えられる.従来,幾つかの方法が調査研究されており,大まかに 次に示す4つに分類されている8)

① 砂防ダム,床固め工法による方法…砂防ダム,床固めの堆砂により,河床勾配の緩和,河床 幅の増大をはかり,流水の運動エネルギーを減少させて,流木を阻止・堆積させる方法.ま た,これは発生防止を兼ねた方法でもある.

② 砂防ダム,床固めを利用した方法…砂防ダムの越流部や砂防ダムの堆砂地に流木誘導柵を設 置して,主副ダム間や両岸のキャッチベースンに流木を堆積・貯留する方法.並びに,副ダ ムや床固めの上に流木防止柵を設けて,流木を直接的に阻止・堆積させる方法.

③ 自然力を利用して岸へ誘導する方法…渓流内に誘導索や水制工のような構造物を設けて,流 木を両岸や遊水域,水深の浅い所へ誘導し滞留させる方法.

④ 大型ダムの湛水池を利用する方法…既設の貯水ダムや発電ダム等の大型ダムの湛水池は,水 面勾配が穏やかで,流速はかなり減少している.これを利用して,大量の流木を阻止する方 法.

上述の諸工法のうちで,大量の流木を捕捉しうる工法としては,大たん水池で阻止する方法と 流木防止柵による方法の2つが考えられている.

(26)

20

1-4

本研究の目的と構成

以上に述べたように,大規模豪雨災害においては,斜面崩壊の発生などに伴い,多くの流木が 河道に流出して,洪水被害を助長していることが多数報告されている16)37)38)など.また,河道内 樹林または河畔林が出水により崩壊して流木化することも多い16)

これらの流木は,河道を流下する際に比較的流下能力が低い構造を持つ橋梁に集積し,ダム化 してせき上げを起こすことで氾濫を助長したり,大量に集積して洪水時の非常に大きな流体力を 受けることで橋梁を破壊したりするなどの災害を引き起こす.また,流木発生源より下流にダム がある場合には,ダム湖に集積しダム施設の機能障害を引き起こす.さらに,河川内で集積,捕 捉されない流木は海岸まで流出し,海岸や干潟へ堆積したり,河口近くの港湾に集積して漁船な どの小型船舶の航行障害を起こしたり,漁業施設の破壊を引き起こすなどの多大な被害を起こし ている.

このような状況から,これまで議論されてきた水や土砂の流出管理に加えて,今後は大規模洪 水時の流木流出の管理技術の開発が必要であると考えられる.過去の流木研究は,流木が橋梁に 集積するメカニズムの研究39)や,実際の洪水時の河道内での挙動40)などに着目しており,河川流 域におけるリスク評価に資する発生可能量を評価した研究はない.

このような中,平成24年7月九州北部豪雨では,北部九州4県(大分県,熊本県,福岡県,な らびに佐賀県)の多くの一級河川において,大規模な洪水が発生し,死者・行方不明者が32名に のぼるなど甚大な被害をもたらした41).そのうち,大分県日田市を流れる筑後川の支川である花 月川や,大分県中津市を流れる山国川では,7月3日の既往最大出水に続いて,約10日後の7月 14日に再度同規模の大出水(花月川は既往最高水位(花月)を更新,山国川は既往2位水位(下 唐原))に見舞われた.花月川と山国川では流木の集積に起因する堰上げが生じ,堤防越流による 氾濫を助長するなど,河川施設の被災における応急復旧体制のあり方に一石を投じることとなっ た41)

このような状況を踏まえ,本研究の第2章では,河川流域内に存在する豪雨時に斜面崩壊の可 能性が見込まれる箇所と対象斜面の森林の状況,ならびに対象河川と各斜面との地形的な関係か ら推定される流木の可能最大発生量を「流木発生ポテンシャル」と定義し,その評価法を提案す る.

また,同章ではこの概念に基づいて,2012年の九州北部豪雨にて10日間で 2度の既往最大洪 水を経験した筑後川支川の花月川において,全橋梁の調査結果に基づく各橋梁における流木集積 リスクを評価することを試みる.また,同水害により発生した流木の集積に伴うせき上げ氾濫の 発生を受けて改修が決定した橋梁について,改修後の下流への流木集積リスクの変化についても 検討を行う.

続いて第3章で取り扱う山国川には,歴史的文化財としての価値が高い石橋が3橋ある.この うち,最下流の耶馬溪橋(15.5k)とその上流に位置する羅漢寺橋(17.0k)では流木の集積が起こ り,耶馬溪橋ではせき上げにより右岸側の樋田地区と左岸側の曽木地区が越水により浸水し,両 橋で欄干が破壊する被害が発生した42).また,最上流の馬渓橋(21.3k)では,流木がその上流に 位置する津民橋(25.0k)に大量に集積したため流木被害は免れたが,石橋の特長である橋脚の多 さやアーチ形状による桁下空間の狭さなどの通水能力の低さに起因するせき上げが生じ,両出水 で両岸の平田・戸原地区に浸水(床上50戸,床下24戸)が生じた42)

(27)

21

そこで,河川管理者の九州地方整備局は馬渓橋の撤去を検討したものの,文化庁から文化財と しての保護を要請され,地元自治体から存置が求められ,山国川治水対策検討委員会を設置して 議論した結果,橋梁の上下流の河川改修と橋梁根付け部の改修などにより,流下能力を確保する 対策が取られることとなった42).しかしながら,上流の津民橋は上部構造が破壊されたことから 撤去されることが決まっており,その下流では流木流下によるリスクが上昇することが見込まれ る.よって,山国川流域における石橋などの流木災害リスク評価が求められる状況となった.

さらに,同水害では上流の耶馬溪ダムに流木が堆積したが42),このことは貯水式の洪水調整ダ ムが水や土砂の流下を調整するのみでなく,流木災害リスクを軽減する効果を持つことを意味し ている.よって,ダムによる流木災害リスク低減効果を評価することには重要な意味があると考 えてよい.

以上のことから,第3章では,山国川を対象に橋梁改修による流木災害リスクの変化,砂防ダ ムならびに貯水ダムの流木災害リスク低減効果を評価することを試みる.

続いて第4章で扱う球磨川は,幸いにして平成24(2012)年7月九州北部豪雨で甚大な被害は免 れた.しかし球磨川は,他の国内の一級河川と比較しても治水安全度が低い状態にあり,中流域 の人吉市においては,堤防決壊の危険があるとされる「計画高水位(4.07m)」まで67cmに迫る「氾 濫危険水位(3.40m)」を近年15年間で計6回超過している43)

球磨川の中上流域には,明治時代に施工され,現在も利用されている土木遺構である鉄道橋も 多く,観光にも寄与するSL列車が運行されているが,これらが被災し落橋した場合には,地域経 済に与える影響も大きい.治水安全度を向上させるための各種の河川改修は急務であるが,近年 短時間・局所的豪雨が頻発している状況を考慮すれば,流木が引き起こす災害に関してそのリス クを評価し,特定の橋梁に高いリスクが存在する場合には,個別に速やかに対策を講じる必要が ある.

一方,球磨川流域の森林は,林業のサイクル上,近年伐期を迎えており,材木伐採が盛んであ る.加えて,数十年前はクマザサ等の植物が繁茂し,山肌の土壌を活着させていたが,近年はシ カによる食害等もあり,結果として,むき出しの土壌が多く見受けられ,斜面崩壊等による流木 発生を助長する恐れがある.このような現状から,「崩壊発生危険度が高い斜面」(山地における 流木発生危険箇所に相当する)を精緻に特定し,必要に応じて個別に対策を講じることは,将来 における流木発生リスクを低減させる上で重要である.

以上のような状況を踏まえ,球磨川中流域において,流木発生ポテンシャルを推定し,各橋梁 の流木災害リスクの評価を試みる.また,球磨川のような大規模な流域を持つ河川に対して,効 率よくかつ精緻に流木リスク評価を行うことを可能とするために,第2章で提案した流木リスク 評価手法について,レーザプロファイラ(LP)データや地質データの活用による改良を試みる.

なお,第4章では,既存の1点/㎡密度のレーザプロファイラ(LP)データ(以後,「1点/㎡デ ータ」)を利用したが,その一方で,単木レベルの森林資源量把握を目的としたレーザ解析では4 点/㎡密度のレーザプロファイラ(LP)データ(以後,「4 点/㎡データ」)の利用が広がりつつあ る.

一般的に「1点/㎡データ」を利用した森林解析は「4点/㎡データ」を利用した森林解析と比較 して解析精度が低くなるといわれている.このため第5章では,LPデータの取得密度による精度 の違いを検証するため,「1点/㎡データ」と「4点/㎡データ」による林分情報解析の結果を比較

(28)

22 した.

最後に,第6章では,全体の研究成果を総括するとともに,今後の展望と課題について述べた.

(29)

23

2 章 河川流域における流木発生ポテンシャルの概念の提案 とそれに基づく橋梁における流木災害リスク評価法の 開発~筑後川水系花月川を対象として~

2-1

目的

第1章で述べたように,近年多発している大規模豪雨災害においては,斜面崩壊の発生などに 伴い,多くの流木が河道に流出して,洪水被害を助長していることが多数報告されている1),2),3)など. また,河道内樹林または河畔林が出水により崩壊して流木化することも多い1)

これらの流木は,河道を流下する際に比較的流下能力が低い構造を持つ橋梁に集積し,ダム化 してせき上げを起こすことで氾濫を助長したり,大量に集積して洪水時の非常に大きな流体力を 受けることで橋梁を破壊したりするなどの災害を引き起こす.また,流木発生源より下流にダム がある場合には,ダム湖に集積し洪水吐きなどのダム施設の機能障害を引き起こす.さらに,河 川内で集積,捕捉されない流木は海岸まで流出し,海岸や干潟へ堆積したり,河口近くの港湾に 集積して漁船などの小型船舶の航行障害を起こしたり,漁業施設の破壊を引き起こすなどの多大 な被害を起こしている.

このような状況から,これまで議論されてきた水や土砂の流出管理に加えて,今後は大規模洪 水時の流木流出の管理技術の開発が必要であると考えられる.過去の流木研究は,流木が橋梁に 集積するメカニズムの研究4)や,実際の洪水時の河道内での挙動5)などに着目しており,河川流域 全体におけるリスク評価に資する発生可能量を評価した研究はない.

本章では,河川流域内に存在する豪雨時に斜面崩壊の可能性が見込まれる箇所と対象斜面の森 林の状況,ならびに対象河川と各斜面との地形的な関係から推定される流木の可能最大発生量を

「流木発生ポテンシャル」と定義し,その評価法を提案する.

この概念に基づいて,平成24年7月九州北部豪雨にて10日間で2度の既往最大洪水を経験し た筑後川支川の花月川において,全橋梁の調査結果に基づく各橋梁における流木集積リスクを評 価する方法を開発することを試みる.また,同水害により発生した流木の集積に伴うせき上げ氾 濫の発生を受けて改修が決定した橋梁について,改修後の下流への流木集積リスクの変化につい ても検討を行う.

(30)

24

Fig 2-1 花月川流域図

Fig 2-1  花月川流域図
Fig 2-6  橋梁における流木の捕捉イメージ
Fig 2-13 相対的流木災害リスクの分布[ k =5 の場合]
Fig 4-3  航空レーザデータによる林分情報の解析フロー
+7

参照

関連したドキュメント

Information gathering from the mothers by the students was a basic learning tool for their future partaking in community health promotion activity. To be able to conduct

Regres- sion analyses of the sequence data for thermophilic, mesophilic and psychrophilic bacteria revealed good linear relationships between OGT and the dinucleotide com- positions

In deformation changes including step-like discontinuities, techniques using a laser beam of single wavelength cannot measure the deformation amounts.. Because the deformation

東京大学 大学院情報理工学系研究科 数理情報学専攻. [email protected]

Key words: random fields, Gaussian processes, fractional Brownian motion, fractal mea- sures, self–similar measures, small deviations, Kolmogorov numbers, metric entropy,

Fake semicircles in w complex plane (Rew horizontal). Schwarz's reflection principle), the fake circle $Q is Since the images under s of the intervals — 00 < symmetric with

We classify groups generated by powers of two Dehn twists which are free, or have no “unexpectedly reducible” elements.. In the end we pose similar problems for groups generated

p≤x a 2 p log p/p k−1 which is proved in Section 4 using Shimura’s split of the Rankin–Selberg L -function into the ordinary Riemann zeta-function and the sym- metric square