2018
年度 博士論文炭素置換基のみを有する新規 4 価および 6 価有機テルル化合物の合成と構造
Synthesis and Structure of Tetra- and Hexavalent Organotellurium Compounds
Bearing All Carbon Ligands
立教大学大学院 理学研究科 化学専攻 博士課程後期課程
小林 翔
指導教員 箕浦 真生
目次 ………
2
略語表 ………
8
第
1
章 序論1-1.
カルコゲン元素・化合物 ………121.
カルコゲン ………12
2.
テルル ………12
3.
有機テルル化合物の合成法 ………121-2.
超原子価化合物 ………13
1.
超原子価化合物の定義 ………13
2.
超原子価結合(3 中心4
電子結合: 3c-4e) ………143.
超原子価化合物の構造 ………16
4.
アピコフィリシティ(apicophilicity)
………18
1-3.
超原子価有機カルコゲン化合物 ………181.
4
価超原子価有機カルコゲン化合物 ………18
2.
4
価超原子価有機カルコゲン化合物の構造 ………19
1-4.
4
価超原子価有機テルル化合物 ………191.
4
価超原子価有機テルル化合物の反応性 ………19
2.
4
価超原子価有機テルル化合物の酸化的ハロゲン化 ………19
3.
6
価ジハロ有機テルルと有機金属試薬との反応 ………214.
6
価ジハロ有機テルルの脱ハロゲン化 ………21
1-5.
炭素置換基のみを有する6
価超原子価有機テルル化合物 ………22
1.
6
価超原子価有機テルル化合物の性質 ………22
2.
6
価超原子価有機テルル化合物の合成 ………23
3.
6
価超原子価有機テルル化合物の反応性 ………25
1-6.
原子価、結合数、形式電荷、酸化数 ………251.
原子価 ………25
2.
結合数 ………26
3.
酸化数 ………261-7.
本研究の目的 ………27
1-8.
参考文献 ………29第
2
章 電子供与性置換基を有するAr
6Te
の合成と構造2-1.
背景・緒言 ………32
1.
超原子価化合物の性質と安定化 ………32
2.
全てが独立した置換基を有する超原子価化合物 ………343.
炭素置換基のみを有する超原子価化合物 ………36
4.
Ar
6Te
の合成法と性質 ………38
2-2. 結果・考察 ………45
【
1
】N,N-
ジメチルアミノフェニル基を有するAr
NMe24Te 2-1a
の合成1.
Ar
NMe2Li
とTeCl
4との反応 ………45
2.
Ar
NMe24Te 2-1a
の各種NMR
スペクトルと比較 …………453.
Ar
NMe24Te 2-1a
のX
線結晶構造解析と分子構造 …………47
4.
Ar
NMe24Te 2-1a
の酸化的ジフッ素化 ………49
5.
Ar
NMe24TeF
22-2a
の各種NMR
スペクトルと比較 ………516.
Ar
NMe24TeF
22-2a
のX
線結晶構造解析 ………54
7.
Ar
NMe24TeF
22-2a
の直接官能基化と反応 ………55
【2】N,N-ジエチルアミノフェニル基を有する化合物の合成
1.
Ar
NEt24Te 2-1b
とAr
NEt24TeF
22-2b
の合成 ………57
2.
Ar
NEt24Te 2-1b
とAr
NEt24TeF
22-2b
の2.
各種NMR
スペクトル ………573.
Ar
NEt24TeF
22-2a
のX
線結晶構造解析と比較 ………61
4.
N,N-
ジエチルアミノフェニル基を有するAr
6Te
の合成 …62
5.
Ar
NEt26Te 2-3b
の反応性 ………646.
ヘキサカチオン種[Ar
NEt26Te]
6+6[CF
3COO]
–3-4b
の構造 …66 2-3.
総括 ………68
2-4. 実験項 ………69
2-5.
参考文献 ………81
第
3
章四角錐構造を有するテトラアリールテルル
(Ar
4Te)
の合成と溶液および固体中での構造
3-1.
背景・緒言 ………84
1.
混成軌道と分子構造 ………84
2.
超原子価化合物の合成と性質 ………883.
超原子価化合物の構造 ………89
4.
テルルを中心とする5
配位超原子価化合物の構造 ………91
5.
4
価超原子価化合物の合成 ………936.
目的と探索法 ………95
3-2.
結果・考察 ………97
【1】Ph4
Te
の再結晶溶媒の検討1. Ph
4Te 3-1a
の合成 ………97
2. Ph
4Te 3-1a
の溶液中での測定(NMR
測定)
………97
3. Ph
4Te 3-1a
のX
線結晶構造解析 ………100
4. Ph
4Te 3-1a
の再結晶溶媒の検討 ………102
【
2
】芳香環上のpara
位に様々な置換基を有するAr
4Te
の合成と構造1.
芳香環上のpara
位に置換基を有するAr
4Te
の合成とNMR 1.
測定 ………103
2.
芳香環上のpara
位に置換基を有するAr
4Te
の固体中での2.
構造比較 ………105【
3
】立体反発を利用したSP
構造を最安定構造とするAr
4Te
の合成1.
かさ高い置換基を有するAr
4Te
の合成 ………107
2.
芳香環上のortho
位やmeta
位に置換基を有するAr
4Te
の2.
溶液中での比較 ………108
3.
芳香環上のortho
位に置換基を有するAr
4Te
のX
線結晶3.
構造解析とCPK
モデルの比較 ………109【
4
】Ar
4Te
の理論計算によるSP
構造の探索1. TBP
およびSP
構造の構造最適化 ………112
2. TBP
構造とSP
構造における各種パラメータと安定性 …1133.
新たな遷移状態の探索 ………114
3-3.
総括 ………116
3-4. 実験項 ………118
3-5.
参考文献 ………137
第
4
章新規テルルジカチオン種
Ar
4Te
2+の合成、構造と反応4-1-1.
背景・緒言 ………141
1.
カルコゲン ………1412.
テルルの原子価と例 ………141
3.
配位数と結合数についての定義 ………146
4.
酸化的ハロゲン化反応 ………1485.
カチオン種の合成法 ………150
6.
ジカチオン種の合成 ………151
7.
本研究の目的 ………1534-1-2.
結果・考察 ………154
【
1
】様々な置換基を有するテルル化合物の合成と系統的比較1.
Ar
4Te
の合成 ………154
2.
Ar
4Te
の各種NMR
スペクトルの比較 ………154
3.
Ar
4Te
のX
線結晶構造解析 ………156
4.
Ar
4TeF
2 の合成 ………1575.
Ar
4TeF
2の各種NMR
スペクトルの比較 ………158
6.
Ar
4TeF
2のX
線結晶構造解析 ………160
【2】すべて独立した置換基を有する
6
価テルルジカチオン種の【 2 】合成と構造 1.
6
価ハロテルル化合物の脱ハロゲン化 ………161
2.
[Ph
4Te]
2+2[BF
4]
–4-3a
の各種NMR
スペクトル測定 …1623.
[Ph
4Te]
2+2[BF
4]
–4-3a
の構造 ………163
4.
[Ph
4Te]
2+2[SbF
6]
–4-4a
の合成と4.
各種NMR
スペクトル測定 ………1645.
[Ph
4Te]
2+2[SbF
6]
–4-4a
のX
線結晶構造解析と比較 ……165
6.
[Ph
4Te]
2+2[OTf]
–4-5a
の合成と各種測定 ………167
【3】6価テルルジカチオン種の反応性
1.
反応溶媒の検討 ………167
2.
熱による安定性 ………168
3.
ハロゲン化物との反応 ………168【
4
】様々な置換基を有するAr
4Te
2+の合成と安定性1.
p-Tol
基, ArOMe基を有するAr
4Te
2+の合成 ………1694-1-3.
総括 ………171
4-1-4.
実験項 ………172
4-1-5.
参考文献 ………190
4-2-1.
背景・緒言 ………192
1.
6
価カルコゲン化合物 ………192
2.
中心にテルルを有する中性分子の合成法 ………193
3.
6
価超原子価有機テルルカチオン種と官能基化 ………195
4.
MOF(Metal Organic Framework)と 4.
COF(Covalent Organic Framework)
………196
5.
本研究の目的 ………200
4-2-2.
結果・考察 ………201【
1
】芳香環上に反応点を有するPh
4Te(C
6H
4Br)
2の合成と【 1 】有機金属試薬との反応 1.
芳香環上にBr
原子を有する6
価超原子価テルル化合物の1.
合成 ………201
2.
芳香環上での有機金属試薬を用いた官能基変換反応 …203
【2】パラジウム触媒を用いた芳香環上でのカッウリング反応1.
薗頭カップリング ………206
2.
スティレカップリング ………208
【3】芳香環上の置換基による溶解性の向上
1.
p-Tol
基を有する化合物群の合成 ………209
2.
Ar
OMe 基を有する化合物群の合成 ………210
3.
Ar
Oi-Pr基を有する化合物群の合成 ………210【
4
】テルル上にアルキル基を有するAr
4TeR
2の合成1.
エチニル基を有する2
価テルル化合物の反応例 ………211
2.
エチニル基を有する6
価テルル化合物の合成 …………212
3.
Ph
4Te(-C≡C-TMS)
2(cis) 5-10a
の各種NMR
測定 ………212
4.
Ph
4Te(-C≡C-TMS)
2(cis) 5-10a
の安定性と脱保護反応 …216 4-2-3.
総括 ………2184-2-4.
実験項 ………220
4-2-5.
参考文献 ………231第
5
章 総括5-1.
総括 ………234
5-2.
謝辞 ………237
【博士論文の要約】
本研究では、中心原子に「テルル」を有する高配位化合物の合成、構造解析、
およびその基本的な性質を明らかにすることに焦点を当て、研究を行ってきた。
博士論文の
2
章から4
章では、これまで教科書等で電子的や立体的な要因によ り不安定とされてきた化合物の単離や構造を明らかにし、系統的な比較を行う ことで、テルル化合物および超原子価化合物の分野で新たな知見を見出した。当研究室ではこれまでにない炭素置換基のみを有する超原子価有機テルル化 合物を合成しており、その基本的な性質を明らかにしてきた。博士論文では、新 規
4
価および6
価有機テルル化合物の合成を行い、これまで様々な要因によっ て不安定であると考えられてきた化合物群を合成し、その構造や性質を明らか にするとともに、既存のテルル化合物と比較することで、新たな知見を見いだす ことを目的として研究を行った。超原子価化合物は一般的に電子求引性置換基をもたせることで安定化するこ とが知られているが、第
2
章では電子供与性置換基のみを有する6
価超原子価 有機テルルである、ヘキサアリールテルルの合成を行った。電子供与性置換基 としてN,N-
ジアルキルアミノフェニル基を選択し、合成検討を行った。ヘキサ アリールテルルの合成は、これまで開発された手法では合成困難であったた め、より取り扱いの簡便なテトラアリールテルルジフルオリドの直接官能基化 を検討することで合成した。得られたヘキサアリールテルルは非常に対称性が 高く、様々な溶媒に難溶性であった。そこで、置換基のN
上を酸によってプロ トン化させることで、極性を上げることにした。得られた化合物は溶解性が向 上し、最終的にはX
線結晶構造解析によってその構造を明らかにした。得られ た化合物は全ての置換基がカチオン性を帯びた新規化学種であるヘキサアリー ルテルルヘキサカチオン種であった。第
3
章では4
価超原子価有機テルル化合物の異常構造について研究を行った。5
配位化合物の最安定構造は、全ての置換基が最も互いに離れた構造である三方 両錐構造であるとされている。テルルを中心とする5
配位化合物においてもそ のほとんどが三方両錐構造をとる。当研究室ではテルル上に導入する置換基を 変えることで、初めて固体中で四角錐構造をとる化学種の合成に成功している。博士論文第
3
章ではテルル上に嵩高い置換基を導入することで固体中四角錐構造をとるテトラアリールテルルの合成検討を行った。導入する置換基として芳 香環上のオルト位やメタ位に置換基を有するアリール基の導入検討を行った。
その結果、オルト位に置換基を有するテトラキス
-o-
トリルテルル、テトラキス- 2,4-キシリルテルル、テトラキスメシチルテルルにおいて、いずれも固体中では
三方両錐構造ではなく、置換基同士の立体反発によって、四角錐構造をとってい ることがわかった。当研究室では、
6
価テルルカチオン種の合成単離を初めて行っており、有機 金属試薬との反応において、高収率で対応する中性6
価有機テルルを合成して いる。博士論文第4
章では、さらにテルル上が正電荷を帯びたテルルジカチオ ン種の合成検討を行い、その性質解明および反応性を検討した。テルル上に導 入する置換基としては、電子的な摂動が最も少ないと考えられるフェニル基を 用いて検討した。合成はテトラアリールテルルの酸化的ジハロゲン化、脱ハロ ゲン化と一般的な反応を用いて達成した。置換基による安定化を受けていない6
価テルルジカチオンは、固体中、テルルを中心とする四面体構造をとってお り、有機金属試薬と反応させることで、対応する中性6
価有機テルル化合物を 与えた。【まとめ】
本研究では、中心原子にテルルを有する様々な原子価および酸化状態におけ る新規テルル化合物を合成し、その構造や反応性について検討した。これらの結 果は、これまで教科書等に書かれている一般的な提唱を覆す結果であり、テルル 化合物および超原子価化合物の化学において新しい知見となると考えられる。