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学生・大学にできる地域活動とは−早稲田のまち入門−

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社会科学部創設40周年記念学生論文集

学生・大学にできる地域活動とは

−早稲田のまち入門−

鈴 木

序 早稲田のまちでの学生

近年、大学と地域との連携が盛んである。早稲田大学でも地元新宿区の教育ボランティ アとして早大生を派遣したり台東区、埼玉県所沢市と提携している1)。趣旨としては学生 や研究者といった大学側が学問だけでなく実体験も含めた活動をしたり地域側も大学の研 究を生かして異業種交流を通じて視野の広がりをめざそうとする点にある。手法として産 学官連携の一環として行われたり、結果として地域活性化や地域ビジネスを考える貴重な

アイディアや素材を提供したりする。

しかし誰しもがどこか特定の地域で暮らし、働いている。何か特別な活動をしていて も、していなくても、特定の意味のもとに仕切られた空間内部では、特定の人びとが同じ 空間を共有している。早稲田大学では研究や活動のために様々な都市と提携、交流をして いるが、一番地元のまち早稲田とはいかなる関係を築いているのか。大学という組織は別 として、そこに在籍する学生は地元地域と連携して何をしているのか、何ができるのか。

また、地域の人と同じ場所に過ごす者として何が必要なのか。

以下は私が大学時代に取り組んだ早稲田のまちでの活動を通して知ったことや考えたこ とを西早稲田、戸山、大久保キャンパスにとって身近なテーマ、話題とともに伝えるもの である。なお早稲田大学と学生に関わることではあるが地理的な面が大きいため、所沢な ど遠方の他のキャンパスのこと ̄は触れていない。それでも他の地域でもあてはまることや 参考にできることは含まれていると思う。これからの早稲田大学と学生の地域活動の発展 ならびに広く一般の地域と大学・学生の関係の進展の一助となれば幸いである。

1.活動の舞台「早稲田のまち」

まず、「早稲田のまち」の範囲を確認する。「大学のまわりにまちがある」とも「まちの 中に大学がある」とも言われるが早稲田大学の本部がある西早稲田キャンパスの周辺に位

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IOG

図1:「早稲田のまち」の地理的な範園(○は各商店会範固)

置する早稲田のまちとは大学との折衝の窓口である「早稲田大学周辺商店連合会2)」(以 下W商連)に加盟の7つの商店会の範囲だと考えられる(図1)。

北は神田川、東は外苑東通り、南は諏訪通りと早稲田通り、西は明治通りに囲まれた地 域で町名は西早稲田、馬場下町、戸塚、戸山、早稲田鶴巻、早稲田である。水稲荷神社、

穴八幡宮などの神社の氏子を主とする町会・自治会の組織力は健在で地域の絆は固い。桜 並木の続く神田川や甘泉園公園や戸山公園など自然にも恵まれている。「早稲田のまち」

周辺には閑静な住宅街である新宿区落合、文京区目白台、関口や豊島区高田、外国人が多 い新宿区大久保、伝統ある歓楽街の新宿区神楽坂などがある。

2.活動する組織、団体(学生を除く)

続いて、大都会東京都新宿区のはずれ「都め西北」に位置しでいる千早稲田のまち」に はどのような組織があるのか。町会・自治会の組織を根底に前述の商店会に加え消防団、

小学校・中学校PTAなどが地域の組織である。その他、企業や新しいNPO、NGOなども 地域を構成する重要な存在である3)。それぞれの組織、団体がどのような活動をしている のか。以下では2つに分けてその特徴を見ていく。

1つめは地域の組織が主体となった活動である。伝統的な地元の町会や神社のお祭り

(4月の神田川桜祭り、7月の高田富士祭り、9月の水稲荷神社例大祭、10月の穴八幡宮流 鏑馬など)や商店、商店会のイベント(10月の青空古本市、10月のファミリービンゴ大

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学生・大学にできる地域活動とは

図2:早稲田のまちの活動

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会、年に2回春、秋の鶴巻町フェスティバル・グリーンベルトフリーマーケットなど)が ある。また当然のことながら町会、商店会、消防団などは地域に根ざした日常の活動をし ている。他に新宿区戸塚特別出張所(行政機関)や小学校、地域で活動するNPOなどの 主催する活動(毎年秋の「戸塚福祉見本市」など)もある。これらは地理的な早稲田の範 囲で働いていたり暮らす人が早稲田のまちで行うものである。

2つめは早稲田の商店会の個性的な人物の活動である。

早稲田商店会の会長安井潤一郎さんはユニークな商店会活動を行っていることで有名で ある。96年から環境のイベントを夏に早稲田大学で開いて(エコサマーフェスティバ ル)、「ハンバーグ100円引き」などの、商店会で使える当たりチケット付きの空き缶・空 きペットボトル回収機(ラッキーリサイクル)を考案した藤村望洋さんを早稲田に連れて きた4)。また、当時早大生だった乙武匡洋さんの前述環境イベントコーディネートや車椅 子探検隊などの行事をサポートしたり5)した。その後も環境や防災の分野で独自のアイデ ィアと商店会という横のつながりを生かして全国規模で活動している6)。05年9月の衆議 院議員選挙で当選し、現在は国会議員も務めている。

駅前商店会の桜井一郎さんは社会人や高齢者の生きがいをテーマに取り組んでいる。早 稲田大学と提携してパソコン教室(PCビレッジ)を開いたり、団塊の世代のリタイア後

の生活やNPOなどの活動支援なども行っている。

 ̄1井上の活動団体をまとめる ̄ビ図2のようになる。

3.まっちワークグループ早稲田と学生団体の活動

次に本論文の趣旨でもある学生の地域における活動の様子を見ていく。早稲田のまちの 特徴として多くの学生が過ごす「学生街」と1.および2.で見た「伝統ある地域社会」、

「個性的な活動」の共存が挙げられる。早稲田大学および早稲田大学生は早稲田というま ちを他の一般的なまちとは違う特殊なものにしている。地域住民2万5千人に対して早稲

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田大学教職員・学生(西早稲田キャンパス、戸山キャンパス)で3万人を超える。まず、

前提として学生が早稲田のまちにおいて、重要な位置を占めていることは間違いない。商 店街は地元住民向けのお店もあるものの、3万人の大学生の「市場」がなければ大きなダ

メージを受ける。同じように早稲田大学も学生が入ってこなければ成り立たない。土地を 買収したり、建物などの建築計画を次々と進める大学や、様々な行事や店を展開する地 域・商店会が第一や第二の権力だとすると、早稲田の第三の権力並びに最大の権力は学生

である。商店のおじさんも「うちらは大学相手に商売してるんじゃない、学生相手に商売 しているんだ」と言っている。そして学生は早稲田の住民ではない。「地域は土であるが 学生は風のようである」と昔から早稲田では言われているようだ。

早稲田商店会ではここ数年「まちに学生さんの活躍の場があります」と銘打った入学・

進級祝いの貼り紙を出している。地域を舞台にして学生の活動はどのようなものが生まれ るのか。身近な例として地域のお店へ食べに行くことが挙げられる。もちろん、それも身 近な活動の一つであり大事なことである。実践の敷居としても低く手ごろである。しかし 早稲田の店へ行かなくてはいけないというのもおかしな話である。おいしいと思う店がな いのなら他の場所で食べるのが当然だし、実際、夜9時以降に開いている西早稲田キャン パス周辺の飲食店は少なく7限まである社会科学部の学生などは食べようと思っても選択 肢がかなり限られる。以下では飲食をするといったこと以外に早稲田のまちで活動してい

る学生、学生団体を見ていく。

(1)まっちワークの活動内容

学生団体の活動を見るにあたり私が04年12月から05年12月まで幹事長を務めた早稲田 大学公認の学生サークル「まっちワークグループ早稲田」(以下まっちワーク)を軸に

「早稲田のまち」で活動する学生団体を見ていきたい。

まっちワークの前身は96年に前述の安井さんを中心として早稲田で行われた「エコサ マーフェスティバル」に参加した学生が、その後の安井さん中心の活動「早稲田いのちの まちづくり実行委員会」の中に99年、学生部をつくったことである。00年に大学のサー クノレと ̄して登録、轟云夕 ̄二 ̄ ̄トをきった。 ̄安井さんを中心とする商店会から独立したまっち ワークは図2において、左側(安井さん、桜井さんの活動)からスタートし、徐々に右側

(地域の伝統的な活動)まで範囲を網羅したことになる。今まで商店会の下組織だったの が年を重ねるごとに地域のNPOとの連携や消防団との連携などにも取り組み「早稲田の

まち」全体での知名度をあげた。

ここで2000年まっちワーク創設時の目標を改めて確認する。まっちワークの活動内容 は「運営上の基本ルール」によれば、(彰まちと学生の接点を深める②学生なりのまちづく りの実践③地域の活動に参加しようとする学生・住民のサポートである(図3)。

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学生・大学にできる地域活動とは

1、まちと学生の接点を深める

2、学生なりのまちづくりの実践

3 、 地 域 の 活動 に 参 加 し よ う とす る 学 生 ・住 民 サ ポ ー ト

図3:まっちワークグループ早稲田の活動内容

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この中で図式化した1と3の活動内容に注目したい。ここが他の学生サークル・学生団 体があまり力を入れていないところである。2を行う学生団体は他にもある。1と3を行う ためには日頃からのまちとのコミュニケーションが大切である。例えばイベントが行われ ない日常でも地域の事情などを定期的に取材して発行するタウン誌を発行している。さら には商店のおじさんの話を聞きにお店に食べに行ったり、まちを歩いていて出会った知り 合いのまちの人と世間話などをして情報交換をすることなどが挙げられる。05年秋には

「日頃お世話になっている早稲田の人にお礼をしよう」とプリンを作って持っていったこ ともあった。「早稲田のまちと近くなりたい」という思いをもっているため、ただ単にお 店で食べることとは少し違う。

(2)地域と学生の助け合い

以下では早稲田のまちでの学生サークル・団体の具体的な活動を紹介し、分析する。

一般的に早稲田のまちの特徴として学生や新規参入者は新しいこと、新しい枠組みを作 る。前述のまっちワークの「学生なりのまちづくりの実践」である。ここでは学生(地域 住民でない者)が主催して地域住民に呼びかけたりしている。しかし学生のやる気によっ て企画されたイベントも地域住民は地域の行事で手一杯だったり応援する気持ちが足りな かったりと、盛り上がりに欠けたこともある。一方、地域住民は地域住民で固まり伝統の 行事を続けている。そこには同じ地域に過ごしながら住みわけが存在している。昔から早 稲田に住んでいた人は自分の仕事をしながら地域活動を当たり前のこととして行ってい る。しかしその地域活動が高齢化、マンネリ化などによって停滞している部分もある。人 材不足であり、活気も少しずつ減ってきているとの声も聞こえる。どのイベントも同じ顔

ぶれであり、こなすことが精一杯になっている。しかし逆に毎年入れ替わる学生や大学職 員、新住民は自分の仕事をしているものの地域で過ごすこと以外、地域において何もして

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王10

いない。

その中でお互いが相互の領域を行きかうことは大事なことである。04年から始まった 取り組みとして「アトム通貨」がある7)。特定の地域でのみ使える地域通貨の一種で早稲 田地域での通貨の浸透、ボランティア活動などの「よいこと」の実践の増加を狙って実行 委員会が活動している。しかしこの取り組みは地域一体となってというよりも学生が先頭 になってやっている感が強い。上述の典型例である。しかし「早稲田祭2005運営スタッ フ」は積極的に早稲田のまちとの連携をはかった。一番の目標である2005年11月の早稲 田祭2005を成功させるためであるが、その祭りを「大学の学園祭としてではなく地域の お祭にしたい」と竹内啓介代表(当時早稲田大学政治経済学部3年)も話していた。早稲 田祭前の地域との交流の場「まちの名物祭」にはスタッフの呼びかけにより地域の商店 主、住民が約30人集まった。大隈通り商店会を舞台にした当日のイベント、ならびにそ れをコーディネートした有志が06年1月に「オズ」という団体として行った同商店会のイ ルミネーション企画は成功であった。西門通り商店会の一つの店とのつながりから生まれ た1月の「もちつき大会」は「アーチ」という団体が行った。両商店会がバックアップし たこれらの企画は学生の「やりたい」という熱意が商店会を動かした結果と言えるだろ う。同じく環境ロドリゲスという学生団体に所属する一人が立ち上げた「リユース弁当 箱」のプロジェクト(05年秋)も「大学生のゴミを減らしたい」という思いが商店を動 かして成功した例である。まっちワークが早稲田祭2005で開催した「おやじフレンドパ ーク」では独自に集めた8人の地域の人に特技や趣味で来場者を歓迎してもらい、一日の みの開催であったが来場者750人を数えた。地域の方もたくさん来場した。

以上は学生の側が提案して行動した活動の一例であるが、逆に地域が主体の活動に学生 が参加することも多くなってきた。2005年9月11日に行われた「水稲荷神社例大祭」8)で は学生が50人参加した。これは従来の例大祭にはなかったことである。学生サークルの 御輿同好会「早大御輿会」やアルバイトで何人かの学生が毎回手伝っていたが「早稲田大 学のある地域の御輿が出るなら、私たちも担ぎたい」という学生の思いはまちの高齢化な

どで御輿の担ぎ手が少なくなっていく中での若い商店主やまっちワークなど学生団体が起 こした変化であった。終わってみれば学生が担いだことによる貢献度は高く、学生も満足 できた。将来的には「早慶戦応援のように『早稲田大学に入ったら御輿を担がないとモグ リだ』と言われるようになりたい」と意気込む地域の声もあった。2005年10月30日のワ セダグランド商店会主催「ファミリービンゴ大会」においても学生(まっちワーク)の企 画(子どもと遊ぶダーツや季節のかぼちゃ料理)が初めて実現した。例年、学生はお手伝 い程度の参加であったが、協賛企業の景品などがたくさん出るため数百人の地域の人でに

ぎわうこのイベントで「商店会でも学生と組んで活動しているというのを地域の人にも見 てほしいし、伝えたい」という商店会の実行委員長の思いと、「学生の視点からまちのイ

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学生・大学にできる地域活動とは

枠に入らないその他学生の活動

・05年秋におこなわれた「リユース弁当箱プロジェクト」は学生が企画し、地域 の取り組みに加え、大学も協力した例である。

・早稲田大学125周年に向けて大学の後ろ盾で「WASEDA125」という学生集団 が地域も舞台にして活動をする予定である。

・応援団では野球の早慶戦などで「まちぐるみ応援」のキャンペーンを行ってい る。

・サークルによっては新勘やイベントのポスター、ビラなどを商店に貼るところ もある。

図4:地域の活動、学生の活動と双方からの協力図

ベントを盛り上げたい」というまっちワークの思いがあった。以上のような具体例をまと めると図4のようになる。

これまで見てきたように、学生や地域は自分たちだけの領域を超えて早稲田のまちで双 方の交流をするようになった。この傾向は望ましいことであり図4の矢印がこれからも増 加していく方向であれば学生と地域のつながりは深まっていくであろう。

(3)早稲田地球感謝祭にみる地域、学生協力のモデル

毎年夏に開かれる早稲田地球感謝祭(前身は安井さんのエコサマーフェスティバルと桜 井さんのエイジングメッセ9)、以下感謝祭)は既存のまちの行事とは少し違う。主催はW 商連で場所の提供は早稲田大学。しかしもう一つの主催に感謝祭実行委員会がある。実行 委員会は感謝祭への参加者、協力者で商店会や学生のほかに早稲田地域の団体(大学含

む)、早稲田以外の地域の団体となり図5と なる。

現在の感謝祭は図5の各団体からの太い矢印の大きさがすべて同じ理想的な形は出来て

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図5:地域感謝票の構成図

おらず学生への負担が大きかったり、商店会の関わりが少なかったりと課題があるが、地 域も学生も自分の領域を超えて全体が協力して一つのものを作り上げるという構造をもっ ているので地域と関わる学生、学生と関わる地域双方に参考になるものである。早稲田の 外の団体などは他の3つの早稲田地域組織(商店会、早稲田の団体・個人、学生)の紹介 で参加することも多く、感謝祭を通して内外問わずいろいろな団体や個人の活動を知るこ とができ、既存の団体との親交も深まる(図5の細い矢印)。

(4)学生と地域とのこれから

現在の地域と学生の関わりの状況を見てきたが、これからの学生の地域活動を考えるに あたり、まっちワークの重視する1と3の活動内容が鍵を握ると考える。具体的な活動や

「やりたいこと」の前提としての「つながり」である。イベントのときだけ顔を合わせる、

顔を出すのではなく、そこでできた、あるいはそこに至るまでの「つながり」を継続させ ることである。まっちワークも最初は「やりたいことをやる」方針だった。「早稲田いの ちのまちづくり実行委員会」の安井さんなどメンバーは環境、防災などをテーマとした活 動を行い全国へと発信、展開していった。これに興味、関心を持ったことで商店会の学生 部となったのが成り立ちだったのである。最初から商店会とつながっていたため、まっち ワークの「やりたいこと」の助言やバックアップがあり恵まれていたが、同時に常日頃か ら交流する関係になっていった。この「常日頃から交流する」という関係を作ることを他 の学生団体や学生にも勧めたい。

学生が「早稲田を盛り上げること」を一手に担うとは考えられない。学生の活動はやり たいことを実現する意欲とともに柔軟な考えが必要になる。まちを舞台にした活動は学ぶ こと、遊ぶこと、そして「まちづくり」とも言い換えられる。学生から見て、まち「で」

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学生・大学にできる地域活動とは I王3

まちづくりするでもなく、まち「を」まちづくりするでもなく、まち「と」まちづくりす ることが重要だ。「あんなことがやりたい」、「こんなことがやりたい」という学生の熱意 は既存の仕組みをもつまちにとって一方的なものではまちは応えられないし、道に学生に 対する不信感や反発が生まれる。学生たちが「よいこと」、「楽しいこと」だと思っても地 域の人の望んでいないこと、学生の自己満足、一方的な思い込みかもしれない。斬新なア イディアを集めることや地域で実現可能なことを試すことが学生の地域での活動の第一で はないことを認識する必要がある。誰だか知らない学生が地域で取り組みを始めたところ で理解を得ることはできない。日頃からの「つながり」、そして図4の矢印や図5の中央の 円、周りの矢印が重要なのである。

イベントを通してできた「つながり」、「つながり」を通して成功したイベントは数多く ある。ワセダグランド商店会の会長であり酒屋さんの望田さんが、1年前まではまっちワ ークに対して疎遠な関係だったのに、世間話_をするようになり交流を深めて1年後、まっ ちワークからはアルバイトとして何人かがお世話になり、望田さんも早稲田のまちでの用 事(商店会のイベントなど)を頼む学生のツテができて双方ともに絆が深まった。また早 大前米店の福田さんは、店に貼っそくれるよう頼まれたポスターは町会主催のイベントポ スター以外は商店会イベントであろうと店先に貼ろうとはしなかった。しかし去年の早稲 田のまちの伝統である「水稲荷神社例大祭」にまっちワークが参加して、いろいろな話を してまっちワークのメンバーの1人の顔を覚えていたから、まっちワーク(メンバーの1 人)の手伝う(早稲田では新しい取り組みの)感謝祭のポスターをお店に貼ることにした のである。

また、学生が地域の込み入った事情、利害の対立を超えて活動できる存在であることは 確かだ。具体的に言うと「あっちのおじさんとこっちのおじさんは決定的に伸が悪いが、

学生がそれぞれと相手をすることでそれぞれが協力してくれる」結果として2人とも一緒 にものごとを進めている状況である。学生が地域を、地域が学生をともに「まちの財産」

だと認識して日頃からの交流を深めていけば早稲田は学生と地域の連携のとれた、よりよ い地域へとなるであろう。

むすび

以上見てきたように早稲田のまちの活動は様々であり、そこには地域の人による伝統維 持のイベントや組織(水稲荷神社例大祭や消防団)から、学生による「試してみたいこ

と」「やってみたいこと」の実現としてのイベント(アトム通貨や早稲田祭)、あるいは逆 に地域の人の「試してみたいこと」「やってみたいこと」の実現としてのイベント(安井 さん、桜井さんの活動)などがある。これらの活動は早稲田というまちを活気づける役割

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を果たす一方で早稲田のまちを舞台にしながらも「活動に参加する人」と「しない人」、

また「地域の事情」と「学生の事情」とに分けてきた。しかし近年では本論で見てきたよ うな相互の矢印が生まれ、交流も図られるようになってきた。

この現象に大きく遅れているのは早稲田大学である。職員や教授など個人的には早稲田 のまちとのつながりも深い人もいるが大学という組織が日常的に早稲田という地域に気を 配ってコミュニケーションをしている姿はみられない。商店会との懇親会や打ち合わせが 年に数回開かれてはいるが、形式的、事務的な感が強い。125周年を迎える2007年に向け て地域との連携を図ったり学生を集めて企画を行っているが、地域に矢印が向く、地域か ら矢印が向くような内容が必要であろう。

最後にまとめとして提唱したいのが地域で過ごすにあたり誰しもが持っている、あるい は持っているべき地域、学生、地域の人にたいする最低限の「好意」である。同じ早稲田 という空間に過ごす同士、仕事以外で日常生活をお互いに暮らしている同士だと認め合う 意識ができたら早稲田というコミュニティの新しい可能性が出てくる。これは早稲田だけ でなく全国各地にあてはまることであろう。今、地域貢献、まちづくりをビジネスチャン スととらえているふLもある。商店街の(再)活性化や行政による助成金や特産品、名産 品の宣伝などである。ボランティア活動の舞台として利用されている傾向もある。しか し、ビジネス、ボランティア、あるいは今まで見てきたような活動の大前提として同じ空 間・場所・地域で過ごす者同士の連帯感や互いを認め合う姿勢が必要である。これがなけ れば、その上にどんな活動を展開しようとも「砂上の楼閣」となるであろう。具体的にい えば見てきたようなまっちワークの1、3の活動や近所同士の日ごろのあいさつ、コミュ ニケーション、友達同士の会話や連絡などであろう。早稲田以外でも活動している学生や 住民も暮らしている地域とのつながりとして少しでも持っているべきものだと思う(図

6)。

図6:地域の活動に取り組む前提としての「好意」

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学生・大学にできる地域活動とは II〜

95年の兵庫県南部地震(阪神大震災)でも日頃の地域の絆が深かったところが消火活 動を協力して行った結果延焼を食い止めた例がある。防災、防犯の面でもこのことは有効 であると思う。冒頭の序に戻るならば地域との連携、特に地元地域との連携などはわざわ ざ掛け声をあげて取り組むものではなく、当たり前のこととして自然なこととして、自発 的に形成されるべきものだと考える。

1)早稲田ウイークリー1030号(2004年6月3日)など。

2)会長は清水恒夫さん(早稲田駅前商店会)。早稲田商店会、早大西門体育館通り商店会、大隈通 り商店会、ワセダグランド商店会、早稲田駅前商店会、早大南門通り商店会、グリーンベルト鶴巻 町商栄会の7つの商店会で成り立っている。

3)企業としては例えば「ファミリービンゴ大会」協賛の大王製紙(新宿区早稲田町)、NGO、NPO としては新宿の路上生活者自立支援を進める「スープの会」(新宿区拠点)、国際協力を進める「特 定非営利活動法人 シャプラニール=市民による海外協力の会」(新宿区西早稲田)などが挙げられ る。

4)藤村望洋『早稲田発ゴミが商店街(まち)を元気にした!』商業界 2001年 5)乙武洋匡『五体不満足』講談社1998年

6)安井潤一郎『スーパーおやじの痛快まちづくり』講談社1999年、早稲田いのちのまちづくり実 行委員会『ゼロエミッションからのまちづくり一早稲田商店街のビッグバン・ドキュメントー』日 報1998年

7)アトム通貨は早稲田地域のみならず高田馬場地域(高田馬場西商店街、高田馬場You歩道)も範 囲に含めている。

8)水稲荷神社の例大祭は3年に一回開かれる。

9)96年からの安井さんの環境をテーマとしたエコサマーフェスティバルと99年11月、00年2月に 桜井さんが行った高齢化社会などに関するエイジングメッセが2000年9月「第5回エコサマーフェス ティバル」、「第2回エイジングメッセ」合同開催で「早稲田地球感謝祭」となった。この年以降毎年 9月に「早稲田地球感謝祭2000」という形で行われている。

参照

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