17B・18A TAC相続アドバイザー講座
相 続 入 門
(民法・相続税法)
CONTENTS
Theme 1 相続の意義
··· 1Theme 2 遺 贈
···2
Theme 3 贈 与
···3
Theme 4 相続開始後のタイムスケジュール
···4
Theme 5 相続人の範囲と順位
···5
Theme 6 承認・放棄
···8
Theme 7 相続人の欠格・廃除
···9
Theme 8 相続分
···11
Theme 9 遺 言
···13
Theme10 相続税の計算体系
···14
Theme10-① 第一段階 各人の相続税の課税価格の計算
···15
Theme10-② 第二段階 相続税の総額の計算
···19
Theme10-③ 第三段階 各人の納付すべき相続税額の計算
····21
Theme11 贈与税の計算体系
···24
<補助資料>
···26
Theme 1 相続の意義
1 相続の意義 相続とは、民法が定めた財産等の無償移転の形態であり、人の死亡によってその死亡 した者(これを被相続人という)の財産に属していた一切の権利義務を、その死亡した 者と一定の血族関係あるいは配偶関係にある者(これを相続人という)が包括的に承継 することをいう。 ただし、死亡した者の一身に専属するもの(文化功労者年金、扶養請求権など)につ いては、承継できない。 2 相続の開始 (1) 相続は、人の死亡によって開始する。したがって、死亡の時点で、財産は相続人に 移転する。 (2) 死亡とみなす場合「失踪宣告」 失踪宣告は、人の生死および所在の不明が一定期間続いたときに、その者の利害関 係人の請求によって家庭裁判所が行うものである。 失踪には普通失踪と危難失踪とがある。普通失踪は、不在者の生死が7年間不明な 場合において、その7年間の期間が満了した時に死亡したものとみなされ、相続が開 始する。危難失踪は、危難に遭遇した者の生死が1年間不明な場合において、その危 難が去った時に死亡したものとみなされ、相続が開始する。 (3) 失踪の宣告の取消し 失踪者が生存すること、または失踪宣告により死亡したものとみなされた時と異な る時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人または利害関係人の 請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において、その取消 しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。 失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。ただし、現 に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。 3 相続開始の場所 相続は、被相続人の住所において開始する。 相続の開始場所を定めることにより、裁判の管轄が定められ、また相続税の申告書の 提出先にも影響を与えることとなる。 なお、死亡届は7日以内に死亡診断書を添付して市区町村役場に提出しなければなら ない。Theme 2 遺 贈
1 遺贈の意義 遺贈とは、遺言による財産的利益の無償の譲渡をいう。したがって、死亡した者の意 思に基づく財産の無償移転であるといえる。遺贈においては、遺贈により財産を与える 者を遺贈者といい、財産を受け取る者を受遺者という。 ※ 受遺者は遺贈者が自分の意思で決めることができるので、血のつながりがない者で も法人でもなることができる。 2 包括遺贈と特定遺贈 遺贈には、包括遺贈と特定遺贈の2種類がある。 (1) 包括遺贈 包括遺贈とは、例えば、「財産の6割を妻に、財産の4割を長男に」というように、 財産の割合を示し、受遺者が包括的に権利義務を承継する遺贈をいう。包括遺贈を受 ける者を包括受遺者といい、相続人と同一の権利義務を有する。 (2) 特定遺贈 特定遺贈とは、遺言により遺産中の特定の財産を指定して、その財産のみを承継さ せる遺贈をいう。 例えば、「この土地は妻に、この株式は長男に」というように、具体的に財産を指 定する遺贈である。Theme 3 贈 与
1 贈与の意義 贈与とは、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与えるという意思を表示し、 相手方がこれを受諾することにより成立する契約である。財産を与える者を贈与者とい い、財産を受け取る者を受贈者という。 2 贈与の内容 贈与は、書面によるものと、よらないもの(口頭)とがある。書面によらない贈与の 場合、まだ履行していない部分については各当事者がこれを取り消すことができるが、 すでに履行した部分については取り消すことができない。書面による場合は、まだ履行 されていない部分も取り消すことはできない。 贈与の特殊な形態として定期贈与、負担付贈与、死因贈与がある。 (1) 定期贈与 定期贈与とは定期給付を目的とする贈与(例えば、毎月一定額を支給する贈与な ど)をいう。 (2) 負担付贈与 受贈者に贈与の目的と対価関係にない一定の給付をすべき義務を負わせる付款のあ る贈与(例えば、特定の財産を贈与するかわりに、贈与者の債務の一部を負担させる 贈与など)をいう。 負担付贈与については、その贈与財産の価額から、その負担部分を控除した額を基 に、贈与税の課税価格を計算する。 (3) 死因贈与 贈与者の死亡により効力を生ずる贈与を死因贈与といい、贈与者が「自分が死んだ ら、この土地をAに与える」という形態でなす贈与である。死因贈与は外観上遺贈に 似ているため、民法上も相続税法上も贈与と同じには取り扱わず、遺贈と同様に取り 扱い、相続税の課税対象となる。Theme 4 相続開始後のタイムスケジュール
相続開始後のスケジュール 相続開始後は、さまざまな手続きが必要になる。 相続の開始 死亡届 相続放棄または限定承認 準確定申告・納付 相続税の申告・納付 財産の名義書換え 遺産分割協議書の作成 3ヵ月以内・・ 7日以内 ※ 市区町村役場に提出 4ヵ月以内・・・・・ 10ヵ月以内・・・・・・・・・・ ※ 家庭裁判所に申述 ※ 被相続人の死亡日までの 所得税を税務署に申告・納付 ※ 被相続人の死亡時の住所 地の税務署に申告・納付Theme 5 相続人の範囲と順位
1 相続人の概要 相続人とは、被相続人の財産を引き継ぐことのできる一定範囲内の者をいう。相続人 になることができる者は、民法によって定められており(法定相続主義)、被相続人の 配偶者と一定の血族関係者に限られている。 配 偶 者 相 続 人 正式な婚姻関係にある被相続人の配偶者 血 族 相 続 人 第1順位 被相続人の子 第2順位 被相続人の 直 系ちょっけい尊属そんぞく 第3順位 被相続人の兄けい弟てい姉し妹まい ・配偶者相続人は常に相続人となる。 ・血族相続人には優先順位がある(上位者がいる場合は相続人にはなれない)。 ・配偶者相続人と血族相続人とは同順位で相続人となる。 2 配偶者相続人 配偶者相続人とは、相続の開始時において被相続人と正式な婚姻関係にある配偶者の ことをいう。したがって、内縁関係にある者や離婚した者は、相続人となることができ ない。 3 血族相続人 血族相続人とは、被相続人と血族関係にある者をいう。 (1) 第1順位(子) 「子」には、養子、非 嫡 出 子ちゃくしゅつし、胎児を含む。したがって、実子と養子、嫡出子と 非嫡出子の区別によって、相続人の順位に差はない。 ① 養 子 ・普通養子: 実父母との親子関係は消滅しないため、実父母・養父母双方の相続人 となる。 ・特別養子: 実父母との親子関係は消滅するため、養父母のみの相続人となり、実 父母の相続人とはならない。 ② 非嫡出子 非嫡出子とは、正式な婚姻関係外のもとに生まれた子のことをいう。なお、被相 続人が男性の場合は、認知を必要とする。 ③ 胎 児 胎児は、既に生まれたものとみなして相続権を認めるが、死産の場合は相続人と して取り扱わない。(2) 第2順位(直系尊属) 被相続人に子がいない場合には、直系尊属が相続人となる。 直系尊属とは、直系で自分より世代が上の者のこと。父母以外に祖父母も直系尊属 となるが、被相続人に親等の近い者から優先して相続人となる(父母→祖父母→曾祖 父母)。 (3) 第3順位(兄弟姉妹) 被相続人に子および直系尊属がいない場合には、兄弟姉妹が相続人となる。 《相続人の具体例》 <第1順位> 被相続人 母 妻 長男 長女 <第2順位> 被相続人 父 母 妻 長女 <第3順位> 父 母 妻 長女 被相続人 …相続開始前に死亡した人 …相続人 父 長男 長男 4 代襲相続 (1) 意 義 代襲相続とは、相続人になることができる者が相続開始時において死亡または欠 格・廃除によって相続権を喪失している場合、その者の子(直系卑ひ属ぞく)が代わりに相 続人になることをいう。なお、相続の放棄をした者には、代襲相続が認められない。 ※ 配偶者、直系尊属(第2順位)に代襲相続は起こらない(第1順位と第3順位の み)。 ※ 子(第1順位)の場合、再代襲(代襲相続人の代襲相続)も認められている。 ※ 兄弟姉妹(第3順位)の場合、代襲相続は認められている(被相続人の甥おい・姪めい) が、再代襲は認められていない(一代限り)。 (2) 代襲相続分 代襲相続人の相続分を代襲相続分といい、代襲相続分(全体)は、被代襲者(代襲 される者)が相続するはずであった相続分に一致する。 ※ 代襲相続人が複数いる場合には、被代襲者が相続するはずであった相続分を、そ の被代襲者の代襲相続人が、法定相続分にしたがって分割する。
《代襲相続分の具体例》 <参考>親族図 (傍 系) (直 系) (直 系) (傍 系) 血 族 ○ 印 姻 族 □ 印 曾祖父 母 祖父 母 父母 ③ ② ① 伯叔父 母 従兄弟 従兄弟の子… … ③ ④ 兄弟姉妹 おい ・め い 兄弟 姉 妹 の孫 ② ③ ④ 配偶者 3 配偶者 2 配偶者 3 本 人 子 孫 曾孫 … ① ② ③ 配偶 者 2 2 3 曾祖父 母 祖父 母 父母 3 2 1 伯叔父 母 尊 属 卑 属 配偶者 3 配偶 者 1 (注)数字は親等を示す。 配偶者 3 兄弟姉妹 おい ・め い…… 被相続人 母 妻 長男 二男 …相続開始前に 死亡した者 …相続人 1 2 1 2× 1 3= 1 6 長女 孫A 孫B 1 2× 1 3× 1 2= 1 12 1 2× 1 3= 1 6 1 2× 1 3× 1 2= 1 12 被代襲者(長男)が相続するはずであった相続分 父
Theme 6 承認・放棄
1 相続の承認 (1) 単純承認 被相続人の権利義務を無制限にすべて承継することをいう。もし、借金などの債務 が相続財産より大きい場合には、相続人は自分の固有の財産から弁済しなければなら ない。 また、「相続人が財産の全部または一部を処分したとき」、「相続の開始があったこ とを知った日から3ヵ月以内に限定承認または放棄をしなかったとき」なども単純承 認したものとして取り扱う。 (2) 限定承認 相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務を承継することをいう。 したがって、債務が相続財産より大きい場合でも、相続人は自分の固有の財産から弁 済する必要はない。 原則として、相続の開始があったことを知った日から3ヵ月以内に、相続人全員で 家庭裁判所に申述する必要がある。 2 相続の放棄 被相続人の権利義務の承継をすべて拒否することをいう。この場合、相続財産を承継 せず、債務も負担しない。 原則として、自己のために相続の開始があったことを知った日から3ヵ月以内に家庭 裁判所に申述する必要がある。相続人全員が共同で行う必要はなく、1人でも、また数 人が共同ですることもできる。なお、相続の放棄は、生前には行うことはできない。Theme 7 相続人の欠格・廃除
1 相続人になれない人 相続人となれる立場にあっても、次の4つのいずれかの事由に該当した者は、相続人 となることができない。 ① 相続開始以前に死亡した者 ② 相続人の欠格事由に該当する者 ③ 相続人から廃除された者 ④ 相続の放棄をした者 2 相続欠格 相続人となれる立場にあっても、相続人として認めることが適切でない所定の欠格事 由がある者は、法律上、当然に相続権がないものとして扱われる。これを相続欠格とい う。 この所定の欠格事由とは被相続人等の生命に対する侵害行為や遺言に関する違法な干 渉をいう。欠格の事由と関係のある特定の被相続人に対する相続権を失うにとどまり、 他の被相続人に対する相続権まで失うわけではない。家庭裁判所に請求する等特別な手 続きを必要としない。 【欠格事由】 下記に掲げる者は、相続人となることができない。 1.故意に被相続人または相続について先順位もしくは同順位に在る者を死亡する に至らせ、または至らせようとしたために、刑に処せられた者 2.被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、または告訴しなかった 者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、または殺害者が自己の配偶者もし くは直系血族であったときは、この限りでない。 3.詐欺または強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、これを取り消し、 またはこれを変更することを妨げた者 4.詐欺または強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、これを取り消 させ、またはこれを変更させた者 5.相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、または隠匿した者3 相続人の廃除 廃除とは、被相続人に対し虐待等を加え、または著しい非行がある遺留分のある推定 相続人を被相続人が家庭裁判所に請求をして家裁の審判または調停により相続権を失わ せることをいう。被相続人の兄弟姉妹および遺留分を放棄した者は、遺留分を有しない ので、廃除の対象とならない。なお、廃除(廃除の取消しを含む)は、生前でも遺言 (遺言執行者が行う)でもどちらでもできる。被相続人が遺言で推定相続人を廃除する 意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推 定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定 相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。
Theme 8 相続分
1 法定相続分 法定相続分とは、相続人が被相続人から承継する原則的な相続分のことをいい、民法 で定められている。この法定相続分は、必ず従うべきものではなく、目安になるもので ある。 実際には「指定分割」や「分割協議(話し合い)」によって各相続人が取得する財産 を決めることになる。 相続人の 組合せ 配偶者相続人 血 族 相 続 人 第1順位 (子) 第2順位 (直系尊属) 第3順位 (兄弟姉妹) 配偶者と子 1 2 1 2 配偶者と 直系尊属 2 3 1 3 配偶者と 兄弟姉妹 3 4 1 4 ・同順位者(子、直系尊属および兄弟姉妹)が複数いる場合には、その人数で上記の相 続分を等分する。 ・子は、実子・養子、嫡出子・非嫡出子とも、相続分は同一である。 ・半血はんけつ兄弟姉妹の相続分は、全血ぜんけつ兄弟姉妹の1 2となる。 《法定相続分の具体例》 <第1順位> 被相続人 母 妻 長男 長女 <第2順位> 被相続人 父 母 妻 長女 <第3順位> 父 母 妻 長女 被相続人 …相続開始前に死亡した人 …相続人 1 2 1 4 3 4 1 3× 1 2= 1 6 1 3× 1 2= 1 6 2 3 1 2× 1 2= 1 4 1 2× 1 2= 1 4 父 長男 長男 2 指定相続分 指定相続分とは、被相続人が遺言により相続人の相続分を指定することをいい、この 指定相続分は法定相続分や代襲相続分よりも優先する。3 特別受益 特別受益とは、通常の財産の受渡しを超えた受渡しをした場合に、超えた利益のこと をいい、遺産分割に影響を与える。具体的には「扶養義務を超えた教育資金援助や結婚 資金援助」「婚姻・養子縁組の持参金」「自立した子供への資金援助」などがあり、特別 受益と判断されると、特別受益は相続財産に持ち戻し、遺産分割が行われることになる。 4 寄与分 寄与分とは、被相続人の財産の維持・増加について特別の影響を与えた場合の貢献割 合のことをいい、相続開始時の被相続人の財産の価額から寄与分を差し引いて相続財産 とし、遺産分割が行われることになる。 5 遺留分 民法では、被相続人がその財産を自由に処分することができるようにさまざまな制度 を設けている。しかし、被相続人から取得する財産を生活の基盤とすることを期待して いたであろう相続人の権利を保護するため、被相続人が相続人に対して遺のこさなければな らない相続財産のうちの一定の割合として「遺留分」が定められている。 (1) 遺留分権利者 兄弟姉妹以外の相続人(配偶者、被相続人の子およびその代襲相続人、直系尊属) は、遺留分を有している。 (2) 遺留分の割合 ① 直系尊属のみが相続人である場合 ………3分の1 ② ①以外の場合 ………2分の1
Theme 9 遺 言
遺言とは、人の生前における最終的な意思表示を尊重し、これを法律(民法)で保護す ることにより遺言者の死後にその意思を実現させるものである。遺言による財産の移転を 遺贈という。 1 遺言の特色 ① 満15歳以上であれば、未成年者でも行うことができる。 ② 制限行為能力者(成年被後見人など)でも一定条件のもとで可能である。 ③ 相手方のいない単独行為である。 ④ 遺言行為は法定されている。 ⑤ 遺言の撤回は自由にできる。 ⑥ 共同遺言は無効となる。 2 普通方式の遺言の種類と特徴 普通方式の遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類がある。 種 類 自筆証書遺言 公正証書遺言 秘密証書遺言 作成方法 本人が全文・日付(年 月日)・氏名などを自 書し、押印 (認印可) する。 ※パソコンで作成、音 声・映像など不可 本人が口述し、公証人 が筆記する。これに遺 言者、公証人および証 人が押印する。 本人が遺言書に署名押 印 し 、 遺 言 書 を 封 じ る。公証人の前で本人 が住所氏名を記入し、 公証人が日付などを記 入する。 場 所 自由 公証役場 公証役場 証 人 不要 2人以上 2人以上 検 認※ 必要 不要 必要 長 所 ・作成が簡単 ・存在と内容を秘密に できる ・費用がかからない ・安全確実 ・紛失・改ざんの心配 なし(公証役場で保 管) ・検認不要 ・内容を秘密にできる ・改ざんの心配なし 短 所 ・紛失・改ざんのおそ れあり ・方式不備などによる 無効のおそれ ・検認が必要 ・手続きが煩雑 ・存在と内容を秘密に できない ・費用がかかる ・証人が必要 ・手続きがやや面倒 ・費用がかかる ・証人および検認が必 要 ※ 家庭裁判所の検認とは、その遺言書がどのように作成されているかを記録し、検 認調書を作成する一種の検証手続きである。検認は、遺言書の有効・無効を判断す る手続きではない。Theme 10 相続税の計算体系
第一段階 各人の相続税の課税価格の計算(取得した財産の価額の計算) 本来の相 続遺贈財 産の価額 + みなし相 続遺贈財 産の価額 - 非課税財 産の価額 - 債 務 控 除 額 + 生前贈与 財 産 の 加 算 額 = 各人の相 続税の課 税 価 格 第二段階 相続税の総額の計算 第三段階 各人の納付すべき相続税額の計算 相続税の総額 × あん分割合 = 算出相続税額 算出相続税額 + 相続税額の加算額 = 相続税額の加算適用後の算出相続税額 各人の相続税額 の加算適用後の 算出相続税額 - 税 額 控 除 ①贈与税額控除額 ②配偶者の税額軽減額 ③未成年者控除額 ④障害者控除額 ⑤相次相続控除額 = 各人の納付 すべき相続 税額 = × = - 各人の 課税価格 各人の 課税価格 各人の 課税価格 相続税の 課税価格 の合計額 合 計 遺産に係る 基礎控除 3,000万円+ 600万円× 法定相続人の数 課 税 遺産総額 課 税 遺産総額 法定相続 人の数に 応じた相 続人の法 定相続分 および代 襲相続分 各取得金額 ×税率= 合 計 相続税 の総額 各取得金額 ×税率= 税額 各取得金額 ×税率= 税額 税額Theme 10-① 第一段階 各人の相続税の課税価格の計算
被相続人の財産は、すべてが課税される財産(課税財産)ではなく、課税されない財産 (非課税財産)や控除される財産(債務控除)がある。課税財産は、「本来の相続遺贈財 産」「みなし相続遺贈財産」「生前贈与財産」の3つに分類できる。 本来の相 続遺贈財 産の価額 + みなし相 続遺贈財 産の価額 - 非課税財 産の価額 - 債 務 控 除 額 + 生前贈与 財 産 の 加 算 額 = 各人の相 続税の課 税 価 格 直接承継する 財産 生命保険金や 死亡退職金を プラスする 課税すべきで ないものをマ イナスする 生前の借入金 や葬儀費用を マイナスする 相続開始前3年 以内の贈与財産 をプラスする 相続税の計算 の基となる財 産の価額 1 本来の相続遺贈財産 被相続人が死亡時に所有していた現金、預貯金、有価証券、土地、家屋、立木、事業 用財産、家庭用財産、貴金属、宝石、書画骨董、電話加入権、営業権など、物権、債権 および無体財産権に限らず、金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべての財 産をいう。 2 みなし相続遺贈財産 被相続人から直接取得した財産ではないものの、経済的にみて相続や遺贈で財産を取 得したのと同じ効果のある場合には、課税の公平を図るために、みなし相続遺贈財産と して相続税の課税財産とする。主なものに、生命保険金、退職手当金がある。 (1) 生命保険金等 被相続人(=被保険者)の死亡によって支払われる生命保険金または損害保険金の うち、被相続人が保険料を負担するもの。 (契約例)被相続人=夫 契約者(保険料負担者) 被保険者 受 取 人 夫 夫 妻 (2) 退職手当金等 被相続人の死亡退職によって支払われる退職手当金、功労金、慰労金などで、被相 続人の死亡後3年以内に支給が確定したもの。 なお、弔慰金や花輪代などについては、次の範囲内は課税されない。 業務上の死亡………死亡時の普通給与の3年分(賞与を除く) 業務上以外の死亡…死亡時の普通給与の6ヵ月分(賞与を除く)3 非課税財産 財産の性質、国民感情、公益性や社会政策的な見地から課税対象とすることが適当で はない財産については、相続税の非課税財産としている。 (1) 主な非課税財産 ① 墓地・墓石・仏壇・仏具など ② 相続人が受け取った生命保険金等のうち一定の金額 ③ 相続人が受け取った退職手当金等のうち一定の金額 (2) 生命保険金等・退職手当金等のうちの一定の金額の非課税 相続人が受け取った生命保険金等や退職手当金等のそれぞれについて、一定の非課 税金額がある。 非課税限度額=500万円×法定相続人の数 ※ 相続を放棄した者が受け取る生命保険金等・退職手当金等には非課税の適用はな い(相続人ではないため)。したがって、取得した金額の全額が相続税の課税財産 となる。 (3) 相続税法上の「法定相続人の数」のルール 相続税法上の法定相続人とは、相続の放棄があった場合にその放棄がなかったもの とした場合の相続人をいい、また、養子がいる場合には、一定の算入制限を適用した 「相続税の計算上の相続人」のことをいう。 法定相続人の数は、次の①、②のルールで人数を数える。 ① 相続の放棄があった場合 放棄がなかったものとして数に算入する。 ② 被相続人に養子がいる場合 法定相続人の数に算入できる養子の数は次の通り。 実 子 が い る 場 合……養子が何人いても1人まで 実子がいない場合……養子が3人以上いても2人まで (注)ただし、被相続人の養子でも、次の者などは実子とみなすため、上記の養子 からは除かれる。 ・特別養子 ・配偶者の実子で被相続人の養子
◆練習問題 次のケースで、被相続人の死亡により5,500万円の死亡保険金が支払われた。 契約者(保険料負担者)および被保険者は被相続人、保険金受取人は下記のとお りである。各人の生命保険金の非課税金額はいくらか。 保険金受取人 取得した死亡保険金額 配偶者A 4,000万円 長男B 1,000万円 二女D 500万円 【解答】 法定相続人:A、B、C、Dの4人 非課税枠 :500万円×4人=2,000万円 A:2,000万円× 4,000万円 4,000万円+1,000万円=1,600万円 B:2,000万円× 1,000万円 4,000万円+1,000万円=400万円 D:相続を放棄したため、非課税の適用なし 配偶者A 被相続人 長女C 二女D (相続放棄) 長男B
4 債務控除 被相続人の債務を承継した場合は、その債務金額を課税価格の計算の際に控除するこ とができる。葬式費用は被相続人の債務ではないが、相続に伴って必然的に支出する費 用なので債務控除が認められている。 《債務控除の範囲》 ○ 控除できるもの × 控除できないもの 債 務 被相続人の債務で相続開始の際、現に 存するもの(公租公課を含む)で確実 と認められるもの ・借入金 ・未払医療費 ・未払税金 など ・生前に購入した非課税財産(墓地等) の未払金 ・相続財産に係る公租公課、遺言執行 費用、遺産分割費用 ・保証債務(主たる債務者が弁済不能 で 所 定 の 要 件 を 満 た す 場 合 は 控 除 可) 葬 式 費 用 ・通夜費用、仮葬・本葬費用 ・お布施、戒名料 ・通常必要とされる葬式費用 ・遺体の捜索費用、運搬費用 ・香典返礼費用 ・法要費用(初七日・四十九日等) ・死後の墓地等の購入費用 ・遺体解剖費用 5 生前贈与加算 相続または遺贈によって財産を取得した者が、その相続開始前3年以内に、被相続人 から贈与を受けた財産がある場合には、その贈与財産の価額をその者の相続税の課税価 格に加算する。これは、生前に贈与され既に贈与税の課税を受けている財産に、再度相 続税の課税を行おうとするものである。そこで、贈与税と相続税の二重課税となるため、 贈与時に支払った贈与税は、相続税額算出の段階(第三段階)で贈与税額控除として控 除することで税負担が調整される。 ※ 相続または遺贈により財産を取得していない者については適用がない。 ※ 加算される金額は、その財産の贈与時の価額となる(相続開始時の価額ではない)。 ※ 相続が開始した年に贈与された財産は贈与税の課税対象とはならず、相続税の課税 対象となる。
Theme 10-② 第二段階 相続税の総額の計算
第二段階では、相続税の総額を計算する。 まず、各人の課税価格の合計額から、遺産に係る基礎控除額を控除して、課税遺産総額 を算出する。次に、実際の遺産の分割割合とは無関係に、課税遺産総額を法定相続人が法 定相続分に応じて分割されたと仮定して、各人の取得金額に相続税の税率を乗じて相続税 額を算出し、それを合計して求める。 <相続税の速算表> 税額=A×B-C 法定相続分に応ずる取得金額A 税率B 控除額C 1,000万円以下 10% ― 1,000万円超 3,000万円以下 15% 50万円 3,000万円超 5,000万円以下 20% 200万円 5,000万円超 1億円以下 30% 700万円 1億円超 2億円以下 40% 1,700万円 2億円超 3億円以下 45% 2,700万円 3億円超 6億円以下 50% 4,200万円 6億円超 55% 7,200万円 = × = - 各人の 課税価格 各人の 課税価格 各人の 課税価格 相続税の 課税価格 の合計額 合 計 遺産に係る 基礎控除 3,000万円+ 600万円× 法定相続人の数 課 税 遺産総額 課 税 遺産総額 法定相続 人の数に 応じた相 続人の法 定相続分 および代 襲相続分 各取得金額 ×税率= 合 計 相続税 の総額 各取得金額 ×税率= 税額 各取得金額 ×税率= 税額 税額1 遺産に係る基礎控除 各人の課税価格の合計額が、遺産に係る基礎控除額以下である場合は、課税遺産総額 がゼロとなるため、相続税は課税されない(相続税の申告書を提出する必要もない)。 遺産に係る基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数 2 相続税の総額の計算 ◆練習問題 次のケースで、相続税の総額を求めなさい。なお、各相続人の課税価格の合計 額は2億円とする。相続人は、配偶者A、長男B、二男Cの3人である。 法定相続分に応ずる取得金額 税率 控 除 額 1,000万円以下 10% ― 1,000万円超 3,000万円以下 15% 50万円 3,000万円超 5,000万円以下 20% 200万円 5,000万円超 1億円以下 30% 700万円 1億円超 2億円以下 40% 1,700万円 2億円超 3億円以下 45% 2,700万円 3億円超 6億円以下 50% 4,200万円 6億円超 55% 7,200万円 【解答】 ① 遺産に係る基礎控除額 3,000万円+600万円×3人=4,800万円 ② 課税遺産総額 2億円-4,800万円=1億5,200万円 ③ 法定相続人の法定相続分に応ずる各取得金額 ・A 1億5,200万円×1 2=7,600万円 ・B 1億5,200万円×1 2× 1 2=3,800万円 ・C 1億5,200万円×1 2× 1 2=3,800万円 ④ 相続税の基となる税額 ・A 7,600万円×30%-700万円=1,580万円
Theme 10-③ 第三段階 各人の納付すべき相続税額の計算
第三段階では、各人の納付すべき相続税額を計算する。 第二段階で求めた相続税の総額に、各人の実際の相続割合(あん分割合)を乗じたもの が算出相続税額である。ただし、一定の者については、税負担の調整を図るために、算出 相続税額に2割加算した金額を算出相続税額とする。また、相続税では、財産取得者の生 活保障や二重課税の排除などのため、一定の要件のもとに6種類の税額控除を設けている。 相続税の総額 × あん分割合 = 算出相続税額 算出相続税額 + 相続税額の加算額 = 相続税額の加算適用後の算出相続税額 各人の相続税額 の加算適用後の 算出相続税額 - 税 額 控 除 額 ①贈与税額控除額 ②配偶者の税額軽減額 ③未成年者控除額 ④障害者控除額 ⑤相次相続控除額 ⑥外国税額控除額 = 各人の納付 すべき相続 税額 1 各人の算出相続税額 ここでは実際の相続割合(あん分割合)にしたがって、次の式で相続税の総額をあん 分し、各人の相続税額を算出する。 相続税の総額× 各人の課税価格 各人の課税価格の合計額 2 相続税額の2割加算 被相続人の配偶者および1親等の血族(子・父母)以外の者が相続または遺贈により 財産を取得した場合、その算出相続税額の2割相当額を加算する。 ※ 子の代襲相続人は、2割加算の対象外。 ※ 被相続人の養子となった当該被相続人の孫(いわゆる孫養子のこと。代襲相続人は除 く)は2割加算の対象。◆練習問題 次のケースで、A、B、C、E、Fが被相続人の財産を取得した場合、相続税 の2割加算の対象となる者はだれか。なお、Eは被相続人の養子となっている。 【解答】 妹B、孫E 3 税額控除 (1) 贈与税額控除 生前贈与加算の対象となった財産(相続開始前3年以内の贈与財産)を取得した者 で、その財産につき贈与税を課された者については、その者の贈与税額相当額を相続 税額から控除する。 (2) 配偶者の税額軽減 配偶者については、被相続人死亡後の生活保障および配偶者の財産形成に対する貢 献度を考慮して、税額軽減の規定が設けられている。一定の算式で求めた金額を相続 税額から控除できるため、結果として、配偶者が取得した遺産額が、「1億6,000万円 以下」または「配偶者の法定相続分相当額以下」である場合には、配偶者に相続税は かからない。 ※ 税額軽減の計算の基礎となる財産には、相続税の申告期限までに分割されていな 配偶者A 被相続人 母(すでに死亡) (すでに死亡)父 妹B 孫E 長男C 長女D(すでに死亡) 孫F
(3) 未成年者控除と障害者控除 未成年者控除 障害者控除 適 用 対象者 20歳未満の者 85歳未満の障害者 ①相続または遺贈により財産を取得した者 ②居住無制限納税義務者(日本国内に住所を有する者) ③被相続人の法定相続人(「法定相続人の数」に算入されない養子を含む) 控除額 10万円 ×(20歳-相続開始時の年齢*) 10万円(特別障害者は20万円) ×(85歳-相続開始時の年齢*) *1年未満切捨
Theme 11 贈与税の計算体系
1 贈与税の計算体系 1暦年(その年の1月1日から12月31日まで)に受贈者が贈与により取得した財産の 価額の合計額をもとに計算する(暦年単位課税)。贈与税の課税財産には、本来の贈与 により取得した財産(本来の贈与財産)と、贈与により取得したとみなされる財産(み なし贈与財産)がある。 贈与税額は、贈与税の課税価格から基礎控除額を控除した金額に税率を乗ずることに より算出する。 <贈与税の速算表(一般税率※)> 税額=A×B-C 基礎控除後の課税価格A 税率B 控除額C 200万円以下 10% ― 200万円超 300万円以下 15% 10万円 300万円超 400万円以下 20% 25万円 400万円超 600万円以下 30% 65万円 600万円超 1,000万円以下 40% 125万円 1,000万円超 1,500万円以下 45% 175万円 1,500万円超 3,000万円以下 50% 250万円 3,000万円超 55% 400万円 <贈与税の速算表(特例税率※)> 税額=A×B-C 基礎控除後の課税価格A 税率B 控除額C 200万円以下 10% ― 200万円超 400万円以下 15% 10万円 400万円超 600万円以下 20% 30万円 600万円超 1,000万円以下 30% 90万円 1,000万円超 1,500万円以下 40% 190万円 1,500万円超 3,000万円以下 45% 265万円 × 税率 + - = - = 本来の贈与財産 みなし贈与財産 非課税財産 贈与税の課税価格 基礎控除 (110万円) 贈与税の課税価格 納付すべき贈与税額2 相続税と贈与税の関係 贈与税は個人から贈与により財産を取得した場合にかかる税金であり、「相続税の補 完税」といわれる。 仮に、被相続人が生前に相続人などに財産を贈与することによって、将来相続税の課 税がなされないとすると、贈与をしない者に比べ税負担に不公平が生じることになる。 そこで贈与税は生前の贈与に対して課税することにより、相続税で課税されない部分 を補完する性格をもっているため、ともに1つの法律(相続税法)の中で規定されてい る(一税法二税目)。