損害保険仲介者の報酬開示規制
⎜⎜ ニューヨーク州における新規制を中心にして ⎜⎜
田 爪 浩 信
■アブストラクト
保険仲介者の報酬開示規制は,保険仲介者が顧客の意向よりも自らが受け 取る報酬水準を優先して保険商品の推奨・助言を行なう可能性を極小化する ことに目的がある。英国では生命保険を含む投資型商品販売に規制があり,
ニューヨーク州ではすべての保険仲介者を対象とした新規制が施行されてい る。翻ってわが国ではかかる規制が真に有効に機能するのかが問題となる。
そこで英米の先例の検討を踏まえ,今後,実効的な報酬開示規制の検討に あたっては,第一に報酬開示規制は保険仲介者の機能やその類型に応じた枠 組みと密接不可分の関係にあること,第二にわが国の代理店手数料は損害保 険代理店の保険会社への貢献度評価をおり込んでいるほか,代理店手数料そ のものが単純な高低評価にはなじまないこと,第三に報酬を示された顧客の 合理的な理解・判断を可能にする適切な基準の提示が必要であること,に留 意すべきことを指摘する。
■キーワード
保険仲介者・手数料(報酬)開示・利益相反
1.はじめに―問題の所在―
⑴ わが国の損害保険代理店制度と代理店手数料
わが国の損害保険代理店制度は,1996年の改正保険業法施行後もいわゆる /平成23年8月31日原稿受領。
損害保険代理店種別制度 が,当時の大蔵省通達やその後の金融庁事務ガ イドライン(現在の 保険会社向けの総合的な監督指針 に相当する)に沿 って,各保険会社ともに同一のルールで運用されていた。
さらに重要なことは,損害保険代理店種別と代理店手数料とがリンクして おり,事実上,損害保険代理店に適用される代理店手数料率は,代理店種別 ごとに各保険会社とも同一の水準で運用されていたことである。これらが自 由化された2001年以降に損害保険業界に身を投じた方々にとっては信じ難い ことであろうが,これ以前は,どこの損害保険会社でも代理店種別ごとに代 理店手数料率はほぼ同一だったのである。
2001年に損害保険代理店制度・代理店手数料が自由化され,所属する代理 店の格付けや代理店手数料率は各保険会社ごとにバラけ,今日ではこれが当 然であって,むしろ保険会社間の競争要素の一つにさえなっている。
⑵ 問題の所在
保険ブローカーや保険代理店等の保険仲介者が受領する報酬(観念的には,
保険会社から受け取る手数料(commission)と顧客から受け取るアドバイ ザリー・フィー(fee)の双方が想定される)の開示に関する問題は,英国 の1986年金融サービス法の施行を嚆矢として,英国を中心に議論の蓄積と報 酬開示規制の歴史がある。そして,保険仲介者に報酬開示を求める目的は商 品選択に資する情報を顧客に適時適切に開示することを通じて公正な保険募 集を確保することに収斂される。
わが国では, 意向確認書面制度 の導入に象徴されるとおり,保険仲介 者には顧客の保険付保の必要性やその意向を十分に理解・把握し,そのうえ で顧客の必要性・意向に沿う保険商品を推奨・助言することが求められてい る。一方で,保険仲介者はその仲介に伴う報酬を保険会社から受け取るため,
顧客の必要性・意向に沿った推奨・助言を行なうことよりも,自らが保険会 社から受け取る報酬の水準によって推奨する保険商品を決する可能性が潜在 する(これは一般に
Commission Bias
問題 と称される)。かくして,Commission Bias問題の顕在化を未然に抑止する処方箋の一 つとして,顧客に対する保険仲介者の報酬開示の当否が議論の俎上に上がる のである。
この点,既にわが国の 保険商品の販売勧誘のあり方に関する検討チー ム の最終報告(2006年)において,中期的な検討課題として 募集人等の 手数料が多い商品をあえて選択するといった弊害を防止する手段として,例 えば,募集人等の手数料を開示する等の方策について検討していくことが必 要ではないか。 と指摘されたところであった 。
代理店手数料の自由化後10年を経て,わが国でも代理店手数料の開示の当 否が具体的な議論の俎上に上がることは誠に感慨深いものがある。そこで,
本稿では,第一に保険仲介者の報酬開示に関するわが国の議論を振り返り,
第二にこの問題に関する英国の議論・規制の歴史を俯瞰し,第三にニューヨ ーク州における新規制を考察することによって,わが国における議論への示 唆を得ることとしたい。
2.わが国における代理店手数料開示の議論
わが国における代理店手数料開示に関する議論を簡単に振り返っておこう。
⑴ 代理店手数料率
代理店手数料は,ボーナス手数料等を除いて,一般に収入保険料に所定の 代理店手数料率 を乗じて算出される 。したがって,保険料の多寡に比例 して代理店手数料の大小も定まる。ごくごく単純に割り切っていえば,担保 範囲が広く充実した保険商品はそうでない商品との相対比較で保険料が割高
1)
http:
//www.fsa.go.jp
/singi
/singi ins p
/200606192) 代理店手数料率は,保険種目や取扱代理店の挙績規模などの当該代理店の属 性等いくつかの算定要素で定まるのが一般のようである。
3) 欧米では,保険種目や一定のカテゴリー毎に一律の手数料率が設定され,こ れとは別にボーナス手数料などのインセンティブにおいて保険仲介者ごとの保 険会社に対する寄与貢献度が反映するスキームも見受けられる。
になり,その結果,代理店手数料が高くなるのも自明である。
⑵ 保険仲立人の報酬開示義務
わが国の保険仲立人は,保険契約の締結を媒介した場合の報酬について,
委託者である顧客からではなく保険会社からその支払を受けている 。この ため,保険仲立人には委託者である顧客の利益よりも自分が受ける報酬を優 先して媒介する危険が潜在しており,保険業法ではこのような利益相反を未 然防止するための規制を設けている 。すなわち, 顧客から求められたと き は当該保険仲立人が保険契約の締結の媒介に関して受ける手数料等を開 示しなければならない(保険業法297条)。これは,第一に,保険仲立人は顧 客に対して誠実義務を負っており(保険業法299条),この義務の履行を制度 的に担保する枠組みが必要であること。第二に,保険仲立人は保険会社に所 属しない独立の商人であり,保険仲立人が提供するサービスの対価を保険契 約者等に対して開示することは当然に要請されること,と説明されている 。
さらに, 保険会社向けの総合的な監督指針 においては,保険仲立人は その業務の遂行及び保険会社等の選択にあたって,顧客の目的財産の状況等 を考慮するとともに,自己が知り得る保険商品の中から顧客にとり最も適切 と考えられるものを,理由を明らかにして助言するものとするとしている。
くわえて,保険仲立人は,自己の職務から得る手数料等の多寡によりサービ スの質を変えてはならないとも規定している。これらから明らかなとおり,
保険仲立人については
Commission Bias問題が明確に認識されており,保
険業法や監督指針において同問題の顕在化を抑止する制度枠組みが既に構築 されている。4) 保険会社向けの総合的な監督指針において, 保険仲立人は,保険契約の締 結の媒介に関する手数料等の全額を保険会社等に請求するものとし,顧客に請 求していないか。 と定められている。
5) 山下友信 保険法 (有斐閣・2005)163頁
6) 東京海上編・江頭憲治郎=小林登=山下友信 損害保険実務講座 補巻 保 険業法 (有斐閣・1997)237頁(小林登執筆)
もっともこのことは保険仲立人だけの問題ではない。次に述べる 中間論 点整理 においても,乗合代理店について 複数会社の保険商品を取り扱う 保険会社から独立性の高い代理店も出現してきているが,こうした現状を踏 まえ,保険仲立人制度との関係も含め見直しを行うべきとの意見があった とされているとおり,今日の乗合代理店の中には保険仲立人と同質の機能を 持つものもあり,かつかかる機能の発揮が期待されている面も否定できない。
現に意向確認書面制度の導入は保険仲立人と損害保険代理店の機能を近接化 させた事象ともいえ,保険会社向けの総合的な監督指針は,同書面において 募集人等が取り扱える保険会社の範囲(例えば,専属か乗合か,乗合の場 合には取り扱える保険会社の数等の情報等)を説明する ことを求めている。
このように,Commission Bias問題は保険仲立人にとどまらず乗合代理 店にも潜在していることが明らかであり ,手数料開示規制の当否は,独立 性の強い乗合代理店に関する制度設計の要否と併せて検討を行うことが必要 と指摘されている 。
⑶ 中間論点整理
金融審議会金融分科会第二部会 保険の基本問題に関するワーキング・グ ループ の中間論点整理では, 近年,大規模な乗合代理店も出現し,利用 が広がっている。ビジネスの実態は様々であるので,これも一概に論じるこ とはできないが,少なくとも制度のあり方としてみた場合,このような代理 店が中立的な立場から情報提供をすることが制度上担保されているわけでは ない。保険商品の推奨にあたっての立場が不透明という指摘になり,更にこ のことが,代理店が保険会社から受け取る手数料の開示の問題が重要という 主張につながっていると考えられる。 と手数料開示問題に言及し,今後検 7) 厳密には,専属代理店や保険会社営業職員であっても,その顧客との関係で は保険商品を推奨する段階で
Commission Bias問題が潜在しているともいえ
る。8) 松澤登 保険仲介者と募集規制―日本,EU,米国を比較して 生命保険論 集164号286頁(2008)
討すべき個別論点の一つとして 募集コスト開示 が摘示された 。 すなわち, 消費者が多様な保険商品の中から商品の選択を検討するに当 たって,付加保険料の水準や代理店が保険会社から受け取る手数料の水準は 有用な情報であるので,これらの情報の開示を検討すべきとの意見があった。
…今後,これらの意見について,消費者に対してどういった情報を提供して いくことが有効か,また保険会社のディスクロージャーのあり方をどう考え るか等の観点から,乗合代理店制度や保険仲立人制度のあり方の見直しとの 関係も踏まえつつ,検討していくことが必要と考えられる。 とされたので ある。
⑷ 現状認識―識者のコメント―
保険代理店経営者の声として, 中には,手数料を優先しつつ,販売して いる代理店もあるようだ。その理由としては,乗合代理店と保険会社間の代 理店委託契約上の様々な締付けがあるからだと思われる。乗合代理店は,
販売のノルマ=資格維持基準 代理店コミッションランクの査定 ボー ナスの査定 など保険会社の要求にさらされ,本来あるべき 顧客の代理 店 から 保険会社の代理店 として営業せざるを得ない面があるのである。
このような制度も改善されなければ,保険比較を実践する真の乗合代理店自 体が減少せざるを得ないと考えられる。 との指摘がある。
手数料開示の当否については, 乗合代理店が,ともすれば販売手数料の 大きい商品を販売しがちであるという傾向は全世界に共通して見られる現象 である。…販売コミッションの開示自体は,わが国でも不動産や投資信託の 販売時点で広く行なわれている慣習であって何も目新しいものではない。わ が国では既に付加保険料を開示している会社も現れている。今後10年の生保
9)
http:
//www.fsa.go.jp
/singi
/singi kinyu
/tosin
/20090619-
1.html
10) 亀甲美智博 生命保険の比較購買の推進について 保険学雑誌612号91頁
(2011)。さらに詳細には,パネルディスカッション 保険販売の今後を考え る の亀甲発言を参照(同誌136頁)。
販売を展望すれば,わが国でも乗合代理店のベストアドバイス義務を担保す るために,いかなる法制度が有効・必要かという議論が俎上に上がることは 避けられないであろう。 とのコメントがある。
さらに,生命保険募集人の一社専属規制の当否に関する議論を分析する文 脈においてであるが, 募集人が複数の商品を扱い,顧客が募集人に相談す る形で商品の比較を行なうような場合,自らへの報酬が高い商品を販売する インセンティブを持つことは考えられるように思われる。このような事態へ の対処として手数料率や報酬の開示を義務付けることも考えられるが,…契 約締結時点で保険契約者に生命保険募集人の情報を適切に判断する能力が備 わっていない可能性があるということはできそうである。…このように考え ると一社専属制は,高手数料商品の販売インセンティブを持つ募集人の言葉 によって,顧客が,自ら不適切な生命保険商品を選択する事態を防止すると いう予防的な措置であると位置づけられる。ただし,このような問題発生の 可能性は,損害保険代理店でも同様に考えられる と評されている。
後述するとおり2004年に米国で発覚した大手保険ブローカーを舞台にした スキャンダルは,正に
Commission Bias
問題が大きく顕在化したケースと いえ,全米保険庁長官会議(National Association of Insurance Commis-sioners.:NAIC
)によるモデル法の立案とその後のニューヨーク州における 新規制の導入の契機となった事件である。かつて,落合誠一教授は この事 件は,欧米のマスコミ等では大きく報道されたが,その持つ意味の重要性に もかかわらず,わが国ではほとんど紹介・分析がない と指摘され, 単に アメリカでの事件というにとどまらず,仲立ちというビジネスに潜在する重 要な問題点を提起するものであり,わが国としても真剣に受け止める必要が ある。 と評された 。11) 出口治明 これからの生保販売とネット生保 保険学雑誌612号110,148頁
(2011)
12) 関西保険業法研究会(榊素寛筆) 保険業法逐解説(XXⅦ) 生命保険論集 175号214頁(2011)
13) 落合誠一 商法重点講義 商事代理・取次ぎ・仲立ち(3・完) 法教300号
そこで,次節以降では,英国における保険仲介者の報酬開示規制の軌跡を 俯瞰したうえ,ニューヨーク州における新規制を考察する。
3.英国における保険仲介者の報酬開示規制
⑴ 二極化ルール
英国における保険販売規制を参照する際に留意しなければならない固有の 制度として, 二極化ルール がある。
英国では,1986年金融サービス法の施行以来,生命保険・投資信託・年金 等の長期の貯蓄型商品(純粋な保障性保険商品は除かれる)の募集において,
それらの募集主体を会社に専属する募集人(営業職員や専属代理店)と会社 には専属しない独立仲介者とに二分する二極化ルールが採用され,募集規制 の枠組みもこれを前提に構築されてきた。
独立仲介者は顧客に対してベストアドバイス義務を負うものとされ,かか る義務の履行を実効的に担保する制度的枠組みとして,報酬開示が制度設計 されてきたのである。
もっとも,二極化ルール自体は反競争的であることを主たる理由として,
既に2001年,2005年と二段階を経て廃止されている 。
⑵ 二極化ルール下の報酬開示規制
①1987年時点の報酬開示規制
1986年金融サービス法の施行を踏まえ,生命保険や投資信託・年金等の長 期貯蓄型商品(純粋な保障性保険商品は除かれる)の販売において,顧客へ の推奨時に独立仲介者や保険会社の営業職員等に支払われる報酬を開示する
105,108頁(2005)
14) 二極化ルール導入の背景やルール撤廃の経緯については,クレア・スミス 英国生保販売チャネルの動向―二極化ルール廃止の動き― 生保経営71巻6 号54頁(2003)。
ことが求められていた 。
②1990年9月改正
従前のルールが緩和され,報酬開示時期とその方法について,契約締結後 に生命保険会社から顧客あてに送付される商品明細において,独立仲介者の 報酬を保険料の一定割合で示す方法が採用された。
③1992年7月の規則改正案
1992年7月の規則改正案では,上記②のルールを踏襲したうえ,顧客が請 求した場合には契約締結以前であっても独立仲介者の報酬実額を開示すべき ものとされた。しかし,公正取引庁は保険商品を推奨する時点において,独 立仲介者は顧客の請求が無くても報酬実額を開示する方法を主張した 。
④1995年1月以降の報酬開示規制
1992年7月の規則改正案の当否をめぐる議論を踏まえ,1995年1月以降,
顧客への生命保険商品の推奨時に保険仲介者の報酬実額と支払時期を書面で 開示すべきことが定められた 。
⑶ 二極化ルール撤廃後の報酬開示規制
二極化ルール撤廃後,2005年に導入された新たな保険販売規制の一つとし て,報酬開示書面(fee and commission statement)による開示ルールが
15) 古瀬政敏 米英における生命保険の募集時の情報提供規制―コスト開示を中 心に― 文研論集92号180頁(1990),上田和勇 英国金融サービス法が生命保 険市場に与えた影響 同 保険市場と消費者 (成文堂・1994〔初出1992〕)188 頁を参照。
16) 驚くべきことに,既に豪州では,Insurance(
Agents and Brokers
)Act
の 1984年改正において,保険ブローカーの報酬開示規制を導入していた。17) この間の議論につき,古瀬 英国における生保商品内容と仲介人の報酬開示 規制 文研論集109号88頁(1994),上田和勇 英国金融サービス法が生命保険 市場に与えたその後の影響 同 保険市場と消費者 (成文堂・1994〔初出 1994〕) 208頁を参照。
18) 木村敬二=柴垣貴弘 英国の金融サービス法に基づく保険販売ルール 生保 経営66巻2号44頁(1998)
導入された 。
同書面は,仲介者がその顧客に生命保険・投資信託・年金等の長期の貯蓄 型商品の推奨・助言を行なおうとする最初に提示する必要があり,それには 商品カテゴリーごとの報酬の市場平均値と当該仲介者が保険会社から受取る 報酬の最高値が記載される点に特徴がある 。
英国では,今日でも生命保険は投資信託・年金等に類似する長期貯蓄型商 品と位置付けられており,かかる投資商品の販売に関しては保険会社から支 払われる報酬の開示義務を保険仲介者に課しているが(COBS6.3,6.4),
純粋定期生命保険や損害保険については,企業顧客から求められた場合に限 り報酬開示義務が課せられているにすぎない(ICOBS4.4.1) 。なお,
保険仲介者が顧客に提供するリスクマネジメント・サービス等に対して顧客 から支払われる対価(fee)は,その詳細を顧客に開示しなければならな い 。
⑷ EU保険仲介業務指令
EU
保険仲介業務指令では保険仲介者の報酬開示に関する定めはないが,投資型商品の販売に関する投資サービス指令では提供サービスのコスト開示 が求められている 。近時,EUにおいても保険仲介者の利益相反行為を抑 止する対策として,仲介者の報酬透明化が議論の俎上にあがっていることが
19) 深澤泰弘 英国におけるパッケージ商品の販売・勧誘に関する新規制 保険 学雑誌590号17頁(2005)
20) 深澤・前掲注19)32頁は,監督当局の収集したテータに基づいて 市場平均 値 が表示されるため,消費者に信頼を与えているとする。
21) 松澤・前掲注8)279頁,損保総研 欧米主要国における保険規制,監督,市 場動向について―保険販売の規制と実務 (2010)68頁,98頁。
22) 2013年1月に発効が予定されている
ICOB4 .
6は,一般投資家向け投資商品 の販売に付帯して損害保険を販売する場合,原則として仲介者は保険会社から 受け取る手数料を開示することとしている。23) 損保総研・前掲注21)98頁 24) 松澤・前掲注8)279頁
紹介されており ,今後の動向が注目される。
なお,損保総研が損害保険販売に関して行ったリサーチ によれば,ド イツでは保険仲介者の報酬開示規制はないが,フランスでは一定の場合に仲 介者の報酬開示を義務付ける規制がある。このほか注目すべきアプローチと して,フィンランドおよびデンマークは保険仲介者の受け取る報酬を除くネ ット・ベースでの保険料提示が法律上義務付けられており,スウェーデンで も業界団体の非拘束的な勧告として同様のアプローチが採用されている。こ れは一般の流通業界同様の卸値制(いわゆる
net-pricing)を導入している
ものと推測され,北欧三国におけるこのようなアプローチの有効性・合理性 について関心が寄せられる。4.米国における大手保険ブローカーの不適切事案
⑴ 大手保険ブローカーを舞台にしたスキャンダルの発覚
2004〜2005年に米国の大手保険ブローカーによるスキャンダルが発覚した。
スキャンダルの概要は以下のとおりである。
大手保険ブローカーは,保険契約の締結の媒介を行なうにあたり,顧客か らリスク・コンサルティングやアドバイザリーの対価として報酬(fee)を 受け取るほか,保険会社からも保険契約の取扱手数料を受領していた。くわ えて,個々の保険契約の取扱手数料とは別に,保険会社から収入保険料の増 収率や取扱契約の損害率などの当該保険会社への寄与貢献度に応じたボーナ ス手数料(contingent commissionと称される)を受け取っていた。もっ ともかかる手数料の受取自体は,米国における保険業界で一般的に行なわれ ている慣行といわれていた。
問題は,この大手保険ブローカー内部において,ボーナス手数料を高く提 示した保険会社の保険商品を顧客に推奨するよう業務指示が出され,その遂 行状況がブローカー内部で厳格に点検されていたこと,さらに大手保険ブロ
25) 海外ニュース 生保経営79巻2号166頁(2011)
26) 損保総研・前掲注21)
ーカーは当該保険会社以外の保険会社に対して,当該保険会社よりも保険料 や保険条件の劣後する内容を意図的に提示(入札)させていたという事実が 明らかになったのである。
後者の事実は明らかに保険会社間の競争を不当に制限する行為であって,
違法性の強い行為といえる。一方,前者の事実は,販売業者がより高いマー ジンの獲得を目指すために行なう通常のビジネス活動と同様とも評価できる。
しかし,なぜ前者の事実が非難の対象となったのであろうか。
顧客から委任を受け顧客のために保険契約の媒介を行なう保険ブローカー は,委任者である顧客の利益を一義とし,顧客の必要性・意向に沿うベスト な推奨・助言を行なうことが求められている(委任契約上の善管注意義務,
誠実義務ということもできるし,顧客から信認を受けた者として負う受認義 務ということもできる)にもかかわらず,これに反して本件スキャンダルは 保険ブローカーが保険会社から受け取る手数料の水準によって推奨する保険 商品を決していたのであり,正に
Commission Bias問題が顕在化したケー
スということができる。⑵ 司法当局による訴追とその後の対応
発覚した事実を踏まえて,ニューヨーク州司法長官は大手保険ブローカー を,詐欺と不公正な取引方法の実行等の罪状により告発したのである。
訴追を受けた保険ブローカーは,本件不正行為による被害者を救済するた めの基金設立とその基金への拠出として8億6,600万ドルにおよぶ巨額を支 払うこと,さらにボーナス手数料の受領を禁止することや顧客への報酬開示 の実施等の業務改善措置を実行することで司法当局との間で和解した。
この後にも複数の大手保険ブローカーで同様のスキャンダルが発覚したこ とから,これらの事件が業界に大きなインパクトを与えたことはいうまでも なく,米国における保険仲介者の報酬開示規制に関する議論を具体化させる トリガーとなった 。
27) このスキャンダルの詳細とこの後の議論を詳説した邦語文献として,金田幸
⑶ 当時の報酬開示規制
従来,ニューヨーク州では保険仲介者に対する報酬開示規制は存在しなか ったが,州監督当局の行政指導として保険ブローカーに対して報酬開示が促 されていた。
上記スキャンダルへの対応として新設された
NAICモデル法は,顧客を
代理する保険仲介者が保険会社から報酬を受け取る場合には顧客への開示義 務を負うことを定めた。これらは実質的に保険ブローカーのみを対象にする ものであって,保険会社から委託を受けかつ保険会社のみから報酬を受ける エージェントは報酬開示義務を負わないとされていた 。なお,上記は保険 ブローカーがその報酬(commission)を保険会社から受け取る際の開示の 要否である。これとは別に,保険ブローカーがリスク・コンサルティング等 のサービス提供の対価として顧客から報酬(フィー)を受け取る場合には,報酬内容を明記した書面による顧客の同意を前提に,顧客から報酬を受領す ることができる。
5.ニューヨーク州の新規制
⑴ スキャンダル後の対応
大手保険ブローカーによるスキャンダルが発覚後,既に触れたとおり
NAIC
はいち早く保険ブローカーの報酬開示に関するモデル法を起草し公 表した。一方,ニューヨーク州は
NAIC
モデル法を採用せず,保険仲介者の報酬 開示の制度枠組みについて独自の展開を辿り,幾多の論争を経て2010年2月,保険仲介者の透明化に関する規則(Producer Compensation Transpar-
二 欧米諸国における保険仲介者のコンティンジェント・コミッション問題に ついて 損保研究70巻3号105頁(2008),武田朗子 米国・保険仲介者の報酬 開示規則―論争続くコンティンジェント・コミッション問題― 損保総研レポ ート94号25頁(2011)がある。
28) 海外ニュース 生保経営73巻2号115頁(2005),松澤・前掲注8)272頁,武 田・前掲注27)40頁。
ency Regulation
) (REGULATION NO.
194 (11NYCRR
30))を 公 布 し,同規則は2011年1月から発効している 。同規則はニューヨーク州保険 法の権限委任規定に基づいて同州保険庁長官が発出したものであり,法律上 の拘束力を有するが,規則発効後も引き続き賛否双方の議論がある 。⑵ 新規制の概要
A.新規制の目的( 30.1)
ニョーヨーク州において保険仲介者に支払われる報酬と保険仲介者の役割 を透明化するための行為規制を設け,これらに関する最小限の開示ルールを 導入することによって公益を保護する。
B.定義( 30.2)
本規制にいう 報酬 とは,委任の対価として支払われるか否かにかかわ らず,金銭・融資・利息・旅行・賞などの名目によって保険仲介者に支払わ れる価値あるものを指すが,保険会社名やロゴなどの広告費用であって1保 険会社あたり年間100ドル未満の保険会社等からの給付は本規制の 報酬 には含まれない。
C.一般的開示事項( 30.3⒜)
30.5において定められた場合を除き,顧客が保険契約を申込む時よりも 前に,保険仲介者は以下の事項を口頭または書面で開示する必要がある。
①保険仲介者の役割
29)
http:
//www.ins.state.ny.us
/press
/2010/p
1002091.htm. なお,新規制の導
入の経緯と当局の見解はhttp:
//www.ins.state.ny.us
/r finala/2010/ rf
194ris.
htm
を参照。さらに,導入賛否の議論については小松原章 米国保険募集規 制の最新動向について―保険募集人報酬の事前開示に踏み切ったニューヨーク 州の動向を中心として― ニッセイ基礎研REPORT
2010年8月号4頁(イ ンシュアランス2010年9月2日号4頁も同文)を参照。30) 海外ニュース 生保経営78巻3号151頁(2010)。このほか, 海外ニュー ス 生保経営79巻2号156頁(2011)は,ニューヨーク州の保険仲介者団体が 新規制は無効であるとして州最高裁に提訴し,これが退けられたことを紹介し ている。
②保険契約の販売に際して,保険仲介者が保険会社または他の第三者から 報酬の全部または一部の支払を受けるかどうか。
③取扱保険料の多寡や取扱う保険契約の収益性などのいくつかの要素によ って,保険仲介者が受け取る報酬が異なるかどうか。
④顧客が求めた場合には,保険仲介者が受け取る報酬に関する情報の開示 を受けることができるかどうか。
D.追加的開示事項( 30.3⒝)
顧客が保険契約の発効前までに保険仲介者の受け取る報酬に関してさらに 詳細な情報の開示を求めた場合,保険仲介者は原則として保険契約の発効前 までに書面によって以下の情報を開示する必要がある。なお,保険契約の発 効が差し迫っている場合には5営業日以内の開示が必要である。
①当該保険仲介者やその親子会社などの関連会社が受け取る報酬の源泉・
性質・額
②保険仲介者が提示する他の見積もりに関して,当該保険仲介者またはそ の関連会社が受け取る報酬
③保険契約を引受ける保険会社,保険仲介者,そしてそれらの関連会社と の資本の関係などの利害関係
④保険仲介者の報酬がその保険販売高によって上下することが,法令によ って禁じられているかどうか。
E.保険契約発効後の開示( 30.3⒞)
保険契約の発効後30日以内に顧客から保険仲介者の報酬に関する開示要請 があった場合,保険仲介者は5営業日以内に書面で 30.3⒝に定める事項を 開示する必要がある。
F.未確定の事項に関する開示( 30.3⒟)
30.3⒝または⒞において開示すべき事項が未確定の場合には,以下の方 法によって説明することが必要である。
①報酬の決定要素
②合理的に積算される報酬額の範囲
G.開示の方法( 30.3⒠)
30.3⒜に定められた事項を口頭で説明した場合には,保険仲介者は遅く とも保険契約が発効するまでに顧客に書面で開示する必要がある。
H.書面の保管( 30.4)
30.3に定められた報酬開示に関する書面について,保険仲介者は原則と して3年間これを保存する必要がある。
I.本規制の適用除外( 30.5)
本規制は,以下の保険取引には適用されない。
①再保険の手配
②更改契約。ただし,一定期間内に顧客から報酬開示を求められた場合を 除く。
⑶ 新規制に関する監督当局の Q&A
2010年2月の新規制公布後,ニューヨーク州保険監督当局に対して行われ た新規制に関するいくつかの照会とその回答が公表されているほか ,同年 11月には新規制に関する解釈指針が公表されている 。
監督当局はこれらを踏まえて新規制に関する
Q& Aを公表しており ,こ
れらは当局の意向を端的に示しているとともに実務上の疑問にも応えている ことから,以下ではそれらのうち実務上重要なQ& A
を概観する。Q1:新規制の対象となる保険仲介者は?
A1:保険代理店・保険ブローカーなどニューヨーク州法2101条⒦の定義に含まれ るすべての保険仲介者を対象とした規制である 。
31) 例えば,http://
www.ins.state.ny.us
/ogco2010/ rg100601 .htm, http:
//www.ins.state.ny.us
/ogco
2010/rg100906 .htm, などがある。
32)
“Implementation of and Compliance with
11NYCRR
30 (Regulation
194)”, http:
//www.ins.state.ny.us
/circltr
/2010/cl
2010 1833)
http:
//www.ins.state.ny.us
/faqs
/faqs-reg194 .htm
34) もっとも,再保険仲介者や権原保険(title insurance)仲介者は対象外とされ ている。また監督当局が公表した解釈指針によれば,報酬が販売実績とはリン クしない固定給制の保険会社営業職員等には新規制を適用しないとされている。
Q2:保険会社が他の募集文書等とともに 30.3⒜で求められる一般的開示書面を 提供することは可能か?
A2:保険仲介者に代わって保険会社が一般的開示書面を提供することは可能で ある。
Q3:保険仲介者は一般的開示の時点で仲介報酬額を必ず開示しなければならな いか?
A3:顧客が追加的開示を求めた場合にのみ報酬額を開示する必要がある。
Q4:顧客から何ら開示要求を受けない場合でも開示が必要か?
A4: 30.3⒜が定める一般的開示事項はすべての顧客に開示しなければならない。
Q5:新規制が要求する一般的開示事項を保険仲介者がその事務所に掲示した場 合には,新規制の義務を果たしたことになるか?
A5:すべての場合において,顧客が一般的開示書面の提供を受けることが必要 である。
Q6:保険仲介者が保険料の多寡に応じた報酬を受けない場合でも開示は必要 か?
A6:保険販売に関して無報酬の場合でも保険仲介者は 30.3⒜が定める一般的開 示事項(保険仲介者の役割の説明と,保険販売に関して保険会社やその他 の第三者から報酬の支払を受けないことなど)を開示しなければならない。
Q7:保険仲介者は開示に際して,顧客から署名を取り付ける必要があるか?
A7:顧客から署名を取り付ける必要はない。
Q8:新規制は,メール・インターネットや電話等による非対面販売にも適用され るか?
A8:新規制は対面販売にとどまらず,すべての保険販売に適用される。
Q9:保険仲介者が電話・メールによって保険契約を取扱った場合,一般的開示 はいつまでに行なう必要があるか?
A9:電話においては口頭で説明のうえ,遅くとも保険契約の発効までに一般的 開示書面等で開示しなければならない。
Q10:新規制の対象となる保険種類は?
A10:再保険を除いて,生命保険,年金保険,損害保険,医療保険,財産保険な どすべての保険種類を対象とする。
Q11:団体保険の場合,保険仲介者は誰に開示しなければならないか?
A11:保険仲介者は保険契約者に対して開示する必要がある。ただし,保険仲介 者が直接加入者に保険販売を行なう場合や加入者が保険料全額を負担する 場合には,当該加入者に対しても開示する必要がある。
Q12:新規制は更改契約の取扱を対象外としているか?
A12: 30.5は,一定期間内に顧客から報酬開示を求められた場合を除いて,更改 契約を新規制の対象外としている。
Q13:更改契約が関係保険会社との間で締結された場合,新規制の対象となる か?
A13:一般的に,保険会社が一方的に保険カバーを関係保険会社に移転すること はないし,さらには関係会社による引受は新たな保険契約といえる。もっ ともニューヨーク保険法3426条は関係保険会社での引受を更改契約と考え ており,これに該当する場合には新規制のもとでも更改契約と考えられる。
Q14:保険仲介者がその従業員を通して保険販売を行なう事業体(法人・パートナ ーシップなど)である場合,保険仲介者は当該従業員に支払う報酬を開示 する必要があるか?
A14:開示すべきは保険販売を行なう事業体に対して支払われる報酬であり,当 該事業体に属する個々の従業員に支払われる報酬を明らかにする必要はな い。ただし,従業員等が保険会社から追加報酬を受領する場合にはそれを 開示する必要がある。
⑷ 小 括
以上のとおり,ニューヨーク州における新規制は,すべての保険仲介者を 対象に, 30.5に定められた例外を除くすべての保険販売の場面において,
報酬に関して開示すべき一般的開示事項とその開示時期を定め( 30.3⒜ ⒠),
さらには顧客の求めに応じて開示すべき追加的開示事項とその開示時期をも 定め( 30.3⒝ ⒞),これらに伴う細目を定めている。
これらの内容を包摂した新規制の導入は,同州で活動する保険仲介者にと って大きなインパクトを与えたことは疑いなく,この導入に関して賛否両論 が激しく対立したこともうなづけよう。新規制導入の契機となった大手保険 ブローカーによるスキャンダルの規模が大きかっただけに,その処方箋もシ ョック療法となったと評することができよう。
すべての保険仲介者に報酬開示を求めることは,Commission Bias問題 の抑止策として到達点の一つということができるが,保険監督の権限が各州 に属する米国において,ニューヨーク州のアプローチが全米のスタンダート となるかどうか,今後の動向を注視する必要がある。
なお,新規制の発効に伴い,既に多くの保険会社や保険仲介者が報酬開示 にかかわるモデル書面を作成・公表しており,今日ではインターネット上で これらの様式を参照することができる。
6.むすびに代えて
これまでに見てきたとおり,保険仲介者の報酬開示規制の有り様は古くて 新しい論点である。そこで,最後に,わが国における保険仲介者の報酬開示 規制を議論する際に留意すべき点を提示したい。
⑴英国のかつての二極化ルールから明らかなとおり,わが国においても多様 化する保険仲介者の枠組みのあり方と報酬開示の当否とは密接不可分の関係 にある。Commission Bias問題が潜在する保険仲介者にこそ報酬開示の当 否を検討すべきではあるが,いかなるタイプの保険仲介者がそれに相応する のか慎重な検討が必要である。
⑵米国の大手保険ブローカーのスキャンダルで問題とされたのは,保険会社 への寄与貢献度に応じて支払われるボーナス手数料(contingent commis-
sion
)であり,これがCommission Bias問題の温床として弾劾された。し
かし,わが国の代理店手数料率の算定要素には損害保険代理店の成績規模が 加味されていることから,Commission Bias問題の顕在化を抑止するため には,かかる要素を排除した代理店手数料の算定が求められることになるの であろうか。⑶代理店手数料率は,以下の理由から単純な高低評価になじむものではない。
第一に,保険商品・保険料率・代理店手数料率がバラけた今日,各社ごとあ るいは同一保険会社の商品相互間でも,担保範囲の広狭,保険料の多寡,代 理店手数料率の大小は相互に比例関係にあるとはいい難い。さらに担保範囲 の広狭は客観的に評価可能でも,それと個別顧客の必要性や意向とが一致す るとは限らず,くわえて代理店が要するコストも一律に評価できない。
第二に,今日の代理店手数料率算定の要素には,取扱代理店の成績規模や 業務・事務の遂行能力等も加味されており,代理店の自助努力の成果が大き く反映していることを見過ごすべきではない。
⑷報酬開示規制を導入するにしても,上記⑶のとおり代理店手数料率が単純 な高低評価になじまないばかりではなく,開示を受けた顧客はそれを適切に
比較・評価する物差しを持つ必要がある。かかる物差しの提示を実現すると ともに,適正な説明と顧客の正確な理解を促進する仕組みも併せて導入しな ければ,本来の目的とは異なる事態に陥る懸念がある。
⑸上記の留意点を解消し報酬開示規制を導入するにしても,さらに目的とそ の到達点,方法,生じるコストを十分に吟味することが求められる。
保険仲介者の報酬開示規制のあり方としては,ニョーヨーク州の新規制の ようにすべての保険仲介者を対象に開示規制を適用する大胆なアプローチも ありえるし,極論ではあるが,さらに進んでいわゆる
net-pricing
を展望 することもありえよう。他方で,報酬開示規制の目的を 顧客が不適切な保 険商品を選択する事態を防止するという予防的な措置 と位置付けるので あれば,最低限の報酬開示の枠組みを模索する選択肢もあろう。保険仲介者の報酬開示規制のアプローチは今や世界各国において
Hot- Issueであり,ニューヨーク州の新規制もその新たな試みの一つに過ぎない。
翻ってわが国では,保険仲介者の報酬開示にかかわる議論が緒についたばか りである。今後も引き続き各国の状況を的確に把握・分析し,そのうえでわ が国の実情に即した新たな枠組みを考察する努力が求められる。
(筆者は株式会社損害保険ジャパン勤務)
35)
Net-pricing
に言及する先行研究と し て,Roger A. Formisano,Property and Liability Insurance Markets In A “ Net Pricing” Framework,
34CPCU J.
37 (1981),甘利公人 保険料の割引禁止―アメリカ合衆国の反リ ベート法との関連において― 法学と政治学の諸相 (熊本大学・1989)266 頁。36) 関西保険業法研究会(榊素寛筆)・前掲注12)