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医療保険の約款について

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(1)

医療保険の約款について

⎜⎜ 生損医療保険約款の支払事由,免責事由を中心に ⎜⎜

小 林 雅 史

■アブストラクト

生損の医療保険は傷害・疾病による入院に対して保障を行う点で大枠の商 品性は類似しているが,生保の医療保険は災害保障特約を,損保の医療保険 は傷害保険をベースとするという沿革から,細部は異なっている。支払事由,

免責事由を中心に,それぞれの約款の特色に着目した比較を行う。

■キーワード

約款,支払事由,免責事由

1.はじめに

傷害(生保においては不慮の事故)・疾病による入院や手術等について,

定額で保障する医療保険については,保険法での傷害疾病定額保険契約に該 当し,生保会社,損保会社とも大枠の商品性は類似しているが,その沿革・

経緯から細部は異なっている。

約款の事前配付の有無といった契約締結時の取扱の差異に加え,約款の内 容についても例えば入院保障の仕組み(生保では不慮の事故の発生日から 180日経過後に開始した入院について疾病による入院とみなす みなし疾病 の規定があるが,損保にはこうした規定は少ない等),手術給付の方式(生 保では従来の手術名列挙方式を改定し,公的医療保険制度での手術料の算定

*平成22年9月24日の日本保険学会関東部会報告による。

/平成22年9月29日原稿受領。

(2)

対象となる手術とする例があるが,損保では引き続き手術名列挙方式を採 用),契約前発病不担保条項,免責事由等,生損それぞれの特色がある。

生保会社,損保会社とも,インターネットの自社ホームページ上,保険法 の改正を反映した自社商品約款を開示する例もある。

本稿では,開示されている医療保険の約款等に基づき,生損医療保険の沿 革・趣旨・現状を概観し,今後の方向性について私見を述べることとしたい。

なお,本稿での意見にかかる箇所はすべて筆者の個人的見解であり,筆者 が所属する会社等の見解ではないことをお断りしておく。

2.生保会社医療保険の沿革

生保会社の入院保障は,1964年4月発売の災害保障特約が嚆矢である。

交通事故の増加を背景に,1963年7月,損保会社により交通事故傷害保険

(傷害保険へ付加する交通事故傷害保険特約)が発売され,これを契機に生 命保険協会で新種保障の検討が行われ,1964年4月,交通事故による保障を 含む,災害全般による死亡・障害・入院を保障する生保会社統一商品として 災害保障特約[不慮の事故による死亡および伝染病予防法第1条第1項また は第2項に規定する疾病を直接の原因とする死亡(法定伝染病・指定伝染病 による死亡)および不慮の事故による障害・入院を保障。入院給付金は入院 日数に応じ,特約保険金(上限200万円)の0.5割(10日以上30日未満入院)〜

2割(90日以上入院)]が発売された 。

1) 生保入院保障の変遷については御田村卓司・福地誠・田中淳三共著 生保商 品の変遷−アクチュアリーの果たした役割−(改訂版) 113〜167ページ(保 険毎日新聞社,1996年7月25日),平尾正治 第三種保険の沿革 (生命保険協 会会報第69巻第1号15〜42ページ,1989年1月30日)が詳しい。その他, 災 害保障特約の統一化 (昭和生命保険資料第7巻334〜397ページ,生命保険協 会,1975年9月30日), 新種保険,新特約の創設 (生命保険協会会報第45巻 第1号95〜96ページ,1965年1月20日)参照。なお,災害保障特約発売後,大 蔵省から1965年12月, 傷害・疾病保険の分野調整について (いわゆる 柏木 裁定 )が示され,疾病保険については原則として生保が行い(損保の現行特 約は尊重),疾病死亡については損保では海外旅行保険に限るとされた[御田

(3)

この特約は1969年2月改定され[入院給付金は5日以上入院について入院 1日目から1日あたり特約保険金(最高500万円)の1.5/1000,同一の不慮 の事故について120日限度,通算して特約保険金が限度] ,1976年3月,

①災害による死亡(法定伝染病・指定伝染病による死亡および障害1級を 含む)を保障する災害割増特約

②災害による死亡・障害を保障する傷害特約

③災害による入院を保障する災害入院特約[5日以上入院について入院1 日目から1日あたり入院給付日額(最高2万円)を支払い,同一の不慮 の事故について120日限度,通算して700日限度]

の3特約に分離された 。

この間,疾病入院を保障する保険も1967年にはじめて一社で発売され,

1974年の外資系生保会社によるがん保険の発売後,1976年には各社から成人 病による入院・手術を保障する成人病特約が発売され,また,同時期には,

疾病による入院・手術を保障する疾病入院特約も一般的となった 。 疾病入院特約においては入院保障に加えて手術保障も行われたが,その方

村・福地・田中前掲123ページ,末廣譲凡 生損保経営問題に関する若干の考 察 (生命保険経営第65巻第3号65〜90ページ,1991年5月),刀禰俊雄 第三 分野の保険問題−日米保険協議を巡って− (生命保険経営第64巻第6号3

〜22ページ,1996年11月),竹井直樹 第三分野の生損保調整小史と若干の考 察−昭和40年裁定を中心に− (損害保険研究第67第 3 号147〜167ペ ー ジ,

2005年11月)等]。

2) 新種保険,新特約の創設 (生命保険協会会報第50巻第1号40〜41ページ,

1969年7月15日)。

3) 災害保障特約の改正について (生命保険協会会報第57巻第1号57〜59ペー ジ,1976年9月30日)。従来,不慮の事故の発生から90日以内の死亡・障害・

入院を保障していたものが180日以内に延長され,現在に至っている。

4) 平尾正治 約款の医学的検討−廃疾,障害,疾病を中心として−⑴,⑵,

⑶ (生命保険経営第47巻第6号64〜80ページ・第48巻第1号85〜103ページ・

第49巻第1号106〜120ページ,1979年11月・1980年1月・1981年1月), 成人 病特約の発売 (生命保険協会会報第57巻第2号95〜96ページ,1977年2月28 日)。

(4)

式には手術名列挙方式と手術名包括方式が各社で混在する等,消費者とのト ラブルの原因となりやすく ,一方モラルリスク対策も必要であったことか ら,大蔵省より 入院給付関連要検討事項 が示され,生命保険協会で検討 が行われた結果,1981年4月,まずつぎの改定が行われた 。

①入院の定義の新設(入院中の頻繁な外泊等モラルリスク事案に対応する ため, 医師による治療が必要であり,かつ自宅等での療養が困難なた め病院または診療所に入り,常に医師の管理下にあって治療に専念する こと という定義を新設)

②免責事由の明確化(無免許運転,飲酒運転について定義を明確化)

さらに1981年10月,疾病入院特約がつぎの内容で統一された。

①手術名列挙方式への統一等手術給付の見直し(145の手術を列挙,手術 給付は手術名により入院給付日額の10倍・20倍・40倍に統一,悪性新生 物に対する放射線照射を手術に追加)

②20日以上の入院に対し,入院1日目から入院給付金を支払い,1回の入 院について給付限度120日,通算限度を700日と設定

③免責事由である精神障害の定義の明確化(精神障害という用語を用いず,

行政管理庁告示による分類番号−いわゆるE分類−に基づき,精神病,

精神薄弱,人格異常,アルコール依存,薬物依存の用語を用いる) 5) 国会で保険問題を質疑 (生命保険協会会報第61巻第2号76〜78ページ,

1981年3月25日)では,手術名包括方式では,背中から切開する手術が 開腹 術 に該当しないとして不支払となる例が示されている。

6) 平尾正治 障害,疾病,手術関係の約款改訂について (生命保険協会会報 第62巻第2号45〜70ページ,1982年3月17日)。

7) 契約前発病不担保条項については糸川厚生 廃疾給付の法律問題 とくに廃 疾の範囲について (保険学雑誌第457号70〜88ページ,日本保険学会,1972年 6月),坂本秀文 生命保険契約における高度障害条項−判例を中心として−

(三宅一夫先生追悼論文集 保険法の現代的課題302〜327ページ,法律文化社,

1993年10月20日),山下友信 保険法 458ページ(有斐閣,2005年3月10日),

竹濵修 契約前発病不担保条項の解釈とその規制 (立命館法学第316号99〜

121ページ,2007年第6号),甘利公人 生命保険契約法の基礎理論 (235〜

248ページ,有斐閣,2007年10月10日),土岐孝宏 始期前発病免責(契約前発

(5)

④契約前発病不担保条項 について,責任開始後2年経過後は責任開始後 の原因とみなす規定の導入(各社任意)

さらに,1983年4月の災害関係特約の改定により,不慮の事故の定義の文 言追加(従来の 外来,偶発の事故 に 急激 を追加)等が行われ,1987 年4月には疾病入院特約についてつぎの改定が行われた 。

①不担保期間の導入[支払事由を 20日以上入院について入院1日目か ら を 5日以上入院について入院5日目から(4日間不担保) に変 更 。災害入院特約の支払事由も,従来の5日以上入院について入院1 日目から支払う方式を同様に4日間不担保方式に改定]

②同一原因による2回以上の入院の取扱(継続した1回の入院とみなし,

4日間不担保は不適用。この場合,入院給付金が支払われる最終の入院 の退院日から180日経過後に開始した入院は新たな入院とみなす)

③入院中の支払事由併発時の取扱の明確化

ⅰ)疾病⇒疾病:入院開始の直接の原因となった疾病により入院したも のとみなす。

ⅱ)災害⇒災害:2以上の不慮の事故により入院した場合には,入院開 始の直接の原因となった不慮の事故(主たる不慮の事故)に対して入 院給付金を支払う。ただし,主たる不慮の事故による入院給付金支払 期間終了後は異なる不慮の事故による入院給付金を支払う。

病不担保) (保険学雑誌第607号99〜118ページ,2009年12月),竹濵修 契約 前発病不担保条項 (山下友信・米山高生編 保険法解説−生命保険・傷害疾 病定額保険 483〜497ページ,2010年4月25日,有斐閣)等を参照。

8) 災害関係特約の改訂について (生命保険協会会報第64巻第1号68〜72ペー ジ,1983年12月20日), 生保各社,入院特約を改訂 (生命保険協会会報第68 巻第1・2合併号68〜72ページ,1988年6月15日),高橋昭二朗 入院関係特約 の改訂について (生命保険経営第56巻第2号27〜67ページ,1988年3月)。な お,この後生保では1986年4月医療保障保険(団体型),1988年4月に医療保 障保険(個人型)が,損保では1986年4月医療費用保険が創設された。

9) 高橋昭二朗前掲論文では,損保医療費用保険の支払条件が入院5日以上であ ったためとしている。

(6)

ⅲ)災害⇒疾病,疾病⇒災害:災害入院給付金が支払われる期間は疾病 入院給付金を支払わない(災害入院給付金優先)。ただし,災害入院 給付金支払期間終了後は疾病入院給付金を支払う。

④手術給付の見直し(145の手術を88の手術に整理・統合)

⑤転入院・再入院の取扱の明確化(証明書がある場合等の要件で継続した 一回の入院とみなす旨規定)

⑥分娩の際の入院の取扱明確化(支払要件の5日以上入院化に伴い,異常 分娩による入院に限定して疾病入院給付金を支払う旨明確化)

⑦契約前発病不担保条項について,責任開始後2年経過後は責任開始後の 原因とみなす規定の全社での導入

⑧精神病免責のうち,薬物依存のみを残し,他は廃止

⑨海外入院に対する支払の明確化

⑩重大事由による解除規定の新設 等

すなわち, 災害入院は,最初から支払条件が業界統一であったのに対し,

疾病入院は業界統一としてはスタートしなかったため,業界統一化に向け ての変遷を辿った もので,この後発売された医療保険約款は,おおむ ね災害入院特約・疾病入院特約の約款をベースに,各社の創意工夫を加え たものとなっているものと考えられる 。

3.損保会社医療保険の沿革

損保会社の入院保障は,傷害保険の 医療保険金 (のち入院保険金)が

10) 高橋昭二朗前掲論文28ページ。

11) 高橋昭二朗前掲論文65ページでは,当時販売されていた医療単品については,

時間的な制約等から商品改定が見送られ,近い将来の各社個別改定を想定する ものとされている。なお,1976年から販売された医療単品については, 8日 以上入院 を支払要件としていた( アリコ・ジャパン社 疾病保険 を発売

(生命保険協会会報第57巻第1号119ページ,1976年9月30日),清水文博 第 三分野における生保の商品開発 ,生命保険経営第71巻第5号25ページ〜44ペ ージ,2003年9月)。

(7)

ベースとなっているものと考えられる。

傷害保険については1947年8月に統一約款が策定され,その第6条で,傷 害発生の日から180日以内の入院や通院等に対し,その治療日数に応じて医 療保険金を支払う旨規定している(限度は保険金額まで。すなわち医療保険 金については最大通算500日分) 。

また第10条には免責事由としてつぎが定められている。

①保険契約者,被保険者又ハ保険金受取人ノ故意又ハ重大ナル過失

②被保険者ノ違法若ハ反則ノ行為,闘争又ハ自殺行為

③被保険者ノ脳疾患,疾病,心神喪失,眩暈又ハ泥酔

④被保険者ノ出産又ハ外科的手術其ノ他ノ医療処置但シ当会社ノ負担ス ル危険ノ発生ニ因ル傷害ヲ治療スル場合ハ此ノ限ニ在ラズ

⑤被保険者ノ刑ノ執行又ハ拘留若ハ入監中ニ生ジタル事故

⑥地震,噴火,津波其ノ他此等ニ類似ノ天災

⑦戦争其ノ他ノ変乱

⑧前二号ニ随伴シテ生ジタル事故

1963年7月,傷害保険の特約として交通事故傷害保険特約が新設され,飛 行機事故等も含む交通事故全般による死亡・後遺障害・入院等について傷害 保険よりも低廉な保険料での提供が行われた(保障の範囲を交通事故に限定 するとともに医療保険金を1日につき保険金額の千分の一に設定) 。

12) 損害保険料率算定会業務第二部 傷害保険普通保険約款の変遷 平成8年12 月1日現在 (1996年12月)1〜6ページ。医療保険金の支払割合は1965年11 月より千分の二から千分の一に引き下げられ,1975年10月には保険金額と別建 ての日額制となった。この間1972年1月からカタカナ・文語体の約款がひらが な・口語体に改められた。ちなみに生保では第二次大戦前から約款口語化が進 められていた[詳細については小著 約款の平明化について−これまでの経緯 と今後の方向性− (ニッセイ基礎研所報

VOL

.57,2010年2月24日)参照]。

13) 免責事由は1972年1月,1975年10月,1979年6月等に改定が行われている

(前掲 傷害保険普通保険約款の変遷 平成8年12月1日現在 192〜195ペー ジ)。

14) 損害保険料率算定会業務第二部 交通事故傷害保険普通保険約款の変遷 平

(8)

1979年6月,傷害保険・交通事故傷害保険とも,医療保険金が入院保険金 と通院保険金に分離された(一つの事故につきそれぞれ180日・90日限度)。

1986年4月,公的医療保険制度を補完する商品として医療費用保険が創設 され,傷害保険での免責事由に,先天性異常,精神病,精神薄弱,人格異常,

アルコール依存および薬物依存等の精神障害,妊娠または出産(異常出産な どは除く),痔核,裂肛,痔瘻 が追加され,一部は現在の損保医療保険の 約款にも見られる。

さらに1992年6月には,傷害保険・交通事故傷害保険に,生命保険の手術 特約等を参考に,手術保険金(一つの事故につき一回,27種類の手術につい て,入院保険金日額の10倍・20倍・40倍を支払い)が新設されるとともに,

医療費用保険と同様の入院の定義規定が新設された(生保会社の定義規定と ほぼ同様の 医師による治療が必要な場合において,自宅等での療養が困難 なため,病院または診療所に入り,常に医師の管理下において治療に専念す ること ) 。

1996年4月の保険業法改正後,日米保険協議を経て2001年7月,いわゆる 第三分野完全自由化が実施され,損保会社本体により医療保険が発売される に至った 。

4.現在の生損約款顧客開示の状況

生保会社においては,保険審議会答申に応じ,1963年4月から約款の重要

成9年9月1日現在 1ページ。1967年11月,傷害保険の特約から独立約款と なった(同書12ページ)。

15) 東京海上火災株式会社編 損害保険実務講座 第7巻新種保険 (有斐閣,

1989年4月30日)256ページ。

16) 前掲 傷害保険普通保険約款の変遷 平成8年12月1日現在 130〜136ペー ジ,前掲 交通事故傷害保険普通保険約款の変遷 平成9年9月1日現在 141〜147ページ。

17) 新保険の動向 (損害保険研究第64巻第1号209〜211ページ,2002年5月),

宮地朋果 医療保険販売をめぐる諸問題 (生命保険経営第76巻第3号36〜54 ページ,2008年5月)。

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な部分について平明に解説した ご契約のしおり が顧客に事前配布され,

さらに,1977年10月から ご契約のしおり とそれまで保険証券とともに後 送されていた約款が ご契約のしおり・約款 として合冊,事前配付される こととなり,契約申込書に受領確認欄が設定された 。

また,現在,生命保険協会ベースで約款のインターネットによる開示につ いて特に指針は定められていないが,生命保険協会加入47社のうち,22社が 自社ホームページで新契約用の約款を開示している(医療保険の新契約用約 款を開示しているのは19社。うち,損保系生保会社は5社,2011年1月現在)。

一方,損保業界については,保険募集時には約款は開示されず,保険契約 締結後に保険証券とともに郵送される取扱となっている模様である 。

こうした状況下で,日本損害保険協会では,いわゆる保険金不払い問題へ の対応として,消費者の信頼回復の観点から,2008年3月 保険約款のわか りやすさ向上ガイドライン を策定したが,情報提供のあり方として,

18) 詳細については小著 顧客への約款等の開示について−インターネットによ る開示の動向− (基礎研レポート2009年12月号,ニッセイ基礎研究所,2009 年11月25日)参照。

19) 浅湫聖志 損害保険募集における 重要事項説明 適合性原則 募集人の 身分開示 に関する検討−ドイツ改正保険契約法(VVG)とも関連して−

(損害保険研究第71号第1号162〜198ページ,2009年5月)において, 普通保 険約款は,…通常ではあまり読まれないわけであるが,だからといって事後的 な送付だけでよしとするのは問題ではないだろうか。特に純粋な新契約(他の 会社からの切替を含む)の場合には,保険契約者の求めに応じて募集時に約款 を閲覧できる仕組みを整える必要はあると考えられる との記載がある。さら に,現在法制審議会民法(債権法)部会において,民法(債権法)改正に向け た検討が行われているが,第11回(2010年6月29日)会議では約款の定義や約 款の組み入れ要件等について議論されており, 例えば損害保険では,保険代 理店などで重要事項説明書という,なるべく見やすくしようとしている説明書 で顧客に説明した後,契約締結をする。それで,火災保険ですとか自動車保険,

海外旅行保険の保障に迅速に入って,保険契約者保護が図られる。約款などは 契約締結後送付というような実務となっている との指摘があった。

20) 日本損害保険協会ホームページによる。なお,外国損害保険協会においては,

日本損害保険協会でのガイドラインに相当するものは公開されていない。

(10)

保険契約者(購入検討者)等の利便の向上およびその保護を図る観点か ら,個人向け主要商品の普通保険約款・特約については,各社のホームペ ージ上で公開するといった対応を行うことが望ましい

とされている。

日本損害保険協会加盟の25社中,自社ホームページで約款を開示している のは17社である(医療保険の約款を開示しているのは7社,2011年1月現 在)。

生命保険業界ではいわゆる保険金不払い問題を契機にご契約のしおり・約 款のA4化・文字サイズの拡大が進んでいるが ,損害保険業界では約款が 保険契約締結後に保険証券とともに郵送されることが一般的である状況から,

こうした取組みは進んでいない状況にあるものと考えられる。

5.現在の生損医療保険約款の比較

⑴約款構成

生保医療保険約款構成の特徴はつぎの3点である。

①約款冊子は19社全社で ご契約のしおり・約款 と称されている(換言 すれば,必ずご契約のしおりが付されている)。

②約款の掲載順序として,かって生命保険協会で作成されたモデル約款 により,責任開始条項や給付条項が約款冒頭に置かれている例が多い。

③給付条項については,給付事由・支払額・受取人・免責事由を一覧表形 式としている例が多い。

一方,損保医療保険約款構成の特徴は以下の3点である。

①約款冊子の名称は各社各様であり(ご契約のしおり・約款と称している

21) 詳細については前掲小著 約款の平明化について−これまでの経緯と今後の 方向性− 参照。

22) 約款平明化に伴うモデル約款の作成について (生命保険協会会報第58巻第 1号172〜173ページ,1977年10月25日), 生命保険協会が作成した平明化のた めのモデル約款 , (インシュアランス第2779号・第2780号,1977年2月 17日・2月24日)。

(11)

のは7社中1社),ご契約のしおりが付されていない例もある 。

②約款の掲載順序として,傷害保険標準約款 の構成に類似しており,

用語の定義の条項のつぎに,補償条項として,保険金を支払う場合(支 払事由に該当する場合は支払う旨の概括的な規定)を置いた後に,保険 金を支払わない場合(免責事由),各保険金ごとの詳細な支払事由を置 いている(このように7社中5社では実質的には免責事由が先,支払事 由が後。2社は生保医療保険約款構成と類似)。

③給付条項については,給付事由・支払額・受取人・免責事由を一覧表形 式としている例は生保医療保険約款と類似した2社である。

⑵用語の定義

生保では,19社中5社が約款平明化の一環として約款冒頭に用語の定義条 項(責任開始期や契約応当日などの約款で使用される用語を説明)を掲載し ている 。

損保では,7社とも傷害保険標準約款と同様,用語の定義に関する条項を 約款の冒頭に掲載している。

なお,用語の定義に関する条項中,傷害の定義は若干の表現の異同はある ものの,6社では,

23) なお,前掲 保険約款のわかりやすさ向上ガイドライン においては, 本 ガイドラインの適用の対象は,原則として保険約款とするが,保険約款をわか りやすく解説して掲載する 契約のしおり 等についても必要に応じて言及す る , ご契約のしおり等の募集文書 との記載があり,募集時にご契約のしお りを配布している場合は,契約締結後郵送する冊子は約款のみとしている例が あるものと考えられる。

24) 損害保険料率算出機構,2009年11月。

25) 山本英人 約款平明化への取組み (生命保険経営第77巻第2号89〜107ペー ジ,2009年3月)では, 契約者が約款を読む際に,常に第一条から順を追っ て読んでいただけるのであれば(初出の定義を読まなければ正しく理解できな いという)そうした懸念もないが,実際のところは,必要がある場合に,目次 や条文見出しで必要な条項を探し,その条項のみ読むことが圧倒的に多い と いった指摘もあり,備考などで繰り返し説明する方法も考えられる。

(12)

急激かつ偶然な外来の事故。身体外部から有毒ガスまたは有毒物質を偶 然かつ一時に吸入,吸収または摂取した場合に急激に生じる中毒症状を含 み,細菌性食中毒およびウィルス性食中毒を含まない

と簡潔に定義しており,生保会社の不慮の事故の定義で用いられているE分 類(疾病,傷害および死因統計分類提要)は使用していない[1社ではE分 類を使用。生保では2社が,不慮の事故の定義にE分類を用いておらず,ま た,不慮の事故と免責事由との関係での立証責任の一部明確化(不慮の事故 の支払事由である急激・外来・偶発性と,免責事由である被保険者の故意ま たは重大な過失との関係について,免責事由に被保険者の故意または重大な 過失を存置しつつ,支払事由である偶発性とは被保険者にとって予見できな いものであり,被保険者の故意に基づくものは該当しないと規定している)

が行われているが,損保では傷害の定義と免責事由との関係での立証責任明 確化対応は行われていない ]。

26) 萩本修編集 一問一答保険法 (株式会社商事法務,2009年5月25日)194ペ ージでは,傷害疾病定額保険については,生命保険契約と同様,給付事由は保 険金受取人側に,免責事由は保険者側が立証することとなるが,免責規定が任 意規定であるため,被保険者の故意について,保険者と保険金受取人のどちら が負うこととなるかは約款の規定の解釈の中で判断されることとなるとされて いる。最高裁2001年4月20日判決での亀山裁判官の補足意見で将来的な約款見 直しが示唆された(山下友信監修文研生命保険判例集第13巻438〜441ページ,

生命保険文化センター,2009年11月18日)点,保険法制定により,傷害疾病定 額保険契約に免責規定が任意規定として導入された点について 任意規定とい えども,それと異なる約定が保険契約者側に不利益を相当に生じさせる場合に は,問題がある。消費者契約法10条の見地からも審査がなされるべきものであ ろう (竹濵修 生命保険契約および傷害疾病保険契約に特有の事項 ,ジュリ スト

No.1364 42〜49ページ,2008年10月1日) との見解や, 判例で免責規

定が無意味であるとされたのが理論的に正しいという理解であるとすれば,保 険法で故意免責規定を設けることはありえないと考えられるからである (山 下 友 信 保 険 法 と 判 例 法 理 へ の 影 響 ,自 由 と 正 義

Vol.60,2009年 1 月 号

25〜35ページ)との見解が示されていることにも留意が必要であろう。上記の 約款改訂は,佐野誠 新保険法における傷害保険約款規定 (生命保険論集第 166号1〜27ページ,2009年3月)で示された約款規定の明確化方策である,

(13)

また,医学的他覚所見について, 保険約款および募集文書等の用語に関 するガイドライン に沿って, 理学的検査,神経学的検査,臨床検査,

画像検査等によって認められる異常所見 とする定義規定を置いており,通 常同様の定義規定がない生保会社の約款より詳細となっている。

⑶支払事由

生保医療保険約款においては入院給付金と手術給付金(特約による保障を 含む)が19社全社に設定されている。

入院給付金については

①災害入院給付金と疾病入院給付金の二本立てとする会社:16社

②災害と疾病に分離せず,入院給付金に一本化する会社:3社 となっている。

それぞれ一回の入院日数と通算入院日数について制限が設けられており,

①の会社では災害入院給付金と疾病入院給付金それぞれについて通算入院日 数の限度が設定されている(会社により730日,1000日,1095日。1095日の 会社であれば災害・疾病合わせて2190日)のに対し,②の会社では入院につ いて一律に通算入院日数の限度が設定されている(1000日または1095日)こ とから,二本立て方式の方が通算入院日数の限度は長くなる 。

一方,災害入院給付金と疾病入院給付金の二本立ての場合は,入院給付金 支払ルールが複雑化する(たとえば,災害入院給付金は不慮の事故の発生の 日から180日以内のものに限定し,180日経過後の入院は疾病入院給付金の支 払対象とするとの みなし疾病 ルールの設定,災害入院給付金と疾病入院 給付金の支払事由が重複して発生した場合,どちらの支払を優先するかのル

偶然性の明確化(被保険者の故意によらないものという定義を追加),偶然性 の立証責任の明確化(被保険者故意免責条項の削除,立証責任条項の挿入のう ち前者の方策を取ったものと考えられる。

27) 2008年6月,損害保険協会ホームページによる。

28) 一回の入院日数についての制限は,60日等一律に設定する会社もあるが,60 日,90日,120日等複数設定し,契約時に顧客に選択させるタイプが大半である。

(14)

ール設定等)。

いずれの方式にも共通するルールとしては,

・帝王切開,多胎等の異常分娩については,疾病とみなす(または疾病に 含む)として入院給付金の支払対象とする

・入院給付金が支払われる最終の入院の退院日の翌日から180日経過後に 開始した入院については新たな入院とみなす

点等がある。

入院の要件としては,日帰り入院も入院給付金の支払対象とする例が多い が,2日以上の入院としたり,従来の入院関係特約と同様,5日以上入院

(4日間不担保)とする例もある。

また,骨髄ドナーに対する給付として,

・責任開始後1年経過以降の骨髄幹細胞採取を受けるための入院・手術

(骨髄提供のドナーとなるための入院・手術)

を支払対象とする旨規定する例があり,さらに,

・余命6か月以内と判断される場合に,病院または診療所に入院し,治療 行為に専念するという従来の要件を満たさない場合であっても,症状緩 和のための医療行為が行われている場合

といったいわゆる終末期医療について,一定期間(60日または100日)につ いて入院給付金の支払対象とする例がある。

一方,前述の通り,従来の手術給付は,手術名列挙方式による88種類の手 術を保障対象としていたが,医学用語が多く,難解な規定となっており,顧 客の受けた手術が生保会社の手術保障の保障対象となるのか,保障される金 額はいくらなのかについては,必ずしも顧客にとってわかりやすい形式とは いえなかった 。

29) 岡田智司 約款別表の解釈と実務の問題点 (生命保険経営第63巻第5号142

〜161ページ,生命保険経営学会,1995年9月)では, (手術給付の)別表の 解釈が合理的一般人にとって非常に難解 と,森本純子 手術給付(疾病関係 特約)の問題について (生命保険経営第58巻第6号42〜60ページ,生命保険

(15)

また,手術給付の金額は,手術の種類によって入院給付日額の10倍,20倍,

40倍に設定されており,たとえばがんについては, 悪性新生物根治手術40 倍,悪性新生物温熱療法(施術の開始日から60日の間に1回の給付を限度と する)10倍,その他の悪性新生物手術20倍 等の区分が規定されていた。

こうした点への対応として,

①手術給付を約款別表で定めるのではなく,公的医療保険制度での手術料 算定の対象となる手術 とし,支払事由を簡明化・簡素化(手術給付を 廃止し,入院中の診療報酬点数に応じた保障を提供する例もある)

②手術給付の金額の一本化 が行われている。

①については,従来の手術保障を完全に公的医療保険制度連動の保障に代 替する生保会社と,従来の手術給付は存置しつつ,その対象外となる手術の うち,公的医療保険制度での手術料算定の対象となる手術をも保障する生保 会社の2パターンがある。

これらの手術給付金額は,前者については入院を伴うものと日帰り手術で 区分したり,がん治療か否か,開頭・開胸等を伴うものかといった点で区分 する例があり,後者では5倍とするケースがほとんどである。

②については,従来の約款別表で定める手術は存置した上でその倍率を保 険契約者指定により一本化する例等がある。

一方,損保医療保険約款では,7社とも災害入院給付金と疾病入院給付金 の二本立てとしており,一回の入院日数と通算入院日数について制限が設け られている点(ただし,約款では具体日数の記載がなく,保険証券記載の日 数とされている例が多い)や,

経営学会,1990年11月)では, 誰の目から見ても明確で理解しやすい手術給 付の追及が必要 とされている。

30) 公的医療保険制度での手術料算定の対象となる手術を保障する場合でも,創 傷処理・皮膚切開術・抜歯手術等は対象外とされている例が多く,こうした点 については,別途顧客に周知徹底する必要があろう。

(16)

・入院給付金が支払われる最終の入院の退院日の翌日から180日経過後に 開始した入院については新たな入院とみなす

点等については生保会社の約款と同様である( みなし疾病 の考え方を取 る会社も3社ある)。

入院保障についての損保特有の条項として,5社で,入院保険金について,

臓器の移植に関する法律の附則第11条に定める,脳死判定後,(臓器摘出等 の)処置が行われた場合は,医療の給付とみなす旨の条項に基づき,脳死判 定後,臓器移植が終了するまでの処置日数を入院日数に含める旨の規定を置 いている。手術保障は,手術名列挙方式により,入院日額の10倍・20倍・40 倍を保障しており,従来の方式を踏襲している。

⑷いわゆる契約前発病不担保条項

生保会社では,全社で契約(責任開始)後の疾病に対して給付を行う旨の いわゆる契約前発病不担保条項とともに,責任開始後2年経過後は責任開始 後の原因とみなし,保障の対象とする旨の規定が導入されている。

さらに,保険金不払い問題を受け,生命保険協会で2006年1月27日に策定 された 保険金等の支払を適切に行うための対応に関するガイドライン に おいては,実務上のルールとして,被保険者に受療歴や人間ドック等での検 査異常がなく,自覚等もない場合には支払う旨明確化されている 。

保険法審議過程での議論では,契約締結時の説明の問題として保険法に規

31) 生命保険協会ホームページの同ガイドラインでは, 被保険者が契約(責任 開始)前の疾病について契約(責任開始)前に受療歴,症状または人間ドッ ク・定期健康診断における検査異常がなく,かつ被保険者または保険契約者に 被保険者の身体に生じた異常(症状)についての自覚又は認識がないことが明 らかな場合等には,高度障害保険金をお支払いする。同様に入院給付金につい ても,被保険者が契約(責任開始)前の疾病について契約(責任開始)前に受 療歴や症状,検査異常がなく,かつ被保険者または保険契約者に被保険者の身 体に生じた異常(症状)についての自覚又は認識がないことが明らかな場合等 にはお支払いする とされている。

(17)

律は設けないこととされ,これを受けて生命保険協会は2009年7月13日に 保険金等の支払を適切に行うための対応に関するガイドライン を改定し,

いわゆる契約前発病不担保条項について, 契約(責任開始)前発病の情報 提供・説明 欄が追加された 。

こうした状況から,住友生命は,2009年10月15日 責任開始前発病不担保 条項の見直し (被保険者について,正確で十分な告知等があり会社が発病 を知っていて契約を引き受けた場合,病院の受療歴等がなく,発病の認識・

自覚もない場合には,責任開始前に発生した疾病であっても保険給付を行う 旨明確化)を行うとプレス発表し,2009年12月には,他の生保会社も同様の 検討を行っている旨,新聞報道されたが,実際に全19社中,9社が約款改定 によりいわゆる契約前発病担保条項の見直しを行っている。

一方,損保会社においても7社とも同様の制度として始期前発病不担保条 項を置いているが,生保会社で一般的である責任開始後2年経過時は契約前 発病不担保としない条項については,4社は生保同様であるものの,3社は 1年経過後には担保する旨規定している。

また,契約前発病不担保条項の見直しを行っている会社は1社である 。

⑸免責事由

生保会社の免責事由は,入院関係特約の免責事由がベースとなっており,

損保会社の免責事由は,傷害保険の免責事由がベースとなっている。

生保会社の免責事由としては,

・保険契約者または被保険者の故意または重大な過失

・被保険者の犯罪行為

32) 法 制 審 議 会 保 険 法 部 会 第22回 会 議(平 成19年12月26日 開 催,会 議 用 資 料 25 保険法の見直しに関する要綱案(第1次案・下) 13〜14ページ。この間 の経緯の詳細については土岐孝宏前掲論文参照。

33) なお,別の1社では,ご契約のしおりで,始期前発病については正しく告知 した場合でも保険金を不支払とする旨明記している。

(18)

・被保険者の精神障害の状態を原因とする事故

・被保険者の泥酔の状態を原因とする事故

・被保険者の法令に定める無免許運転中の事故

・被保険者の法令に定める酒気帯び運転中の事故

・戦争その他の変乱および地震,噴火または津波

は,文章表現の相違を除き全社に共通しており,独自の免責事由としては,

・被保険者の薬物依存

・頸部症候群(いわゆる むちうち症 )または腰痛でいずれも他覚所見 のないもの(原因の如何を問わない)

がある。後者については,損害保険会社の傷害保険に見られる免責事由であ り,モラルリスク・アブセンティズム防止の観点から,保険法制定以前から 導入されたものと考えられる 。

一方,損保会社の免責事由は,傷害保険の免責事由がベースとなっており,

上記生保会社の免責条項 のほか,

34) 免責事由として規定した上で,支払事由に該当した被保険者の数の増加が保 険の計算の基礎に及ぼす影響が少ない場合は,その程度に応じ,保険給付の額 の全部または一部を支払うと規定する会社と,免責事由とせず,支払事由に該 当した被保険者の数の増加が保険の計算の基礎に影響を及ぼす場合は保険給付 の額を削減して支払うことがあると規定する会社に二分されるが,実質的には 同じ内容と考えられる。なお,免責事由やその法的性質等については前掲各論 文のほか,中西正明 生命保険契約の疾病入院手術特約 ( 三宅一夫先生追悼 論文集 保険法の現代的課題 463〜500ページ,1993年10月20日)を参照。こ れらによれば,被保険者の薬物依存は従来はほとんど全ての生保会社が免責事 由としていたものと推察される。

35) 泉超 生保と損保の傷害保険 (生命保険経営第66巻第2号107〜128ページ,

1998年3月)では,損保会社の傷害保険では他覚症状のないむちうち,腰痛に ついて免責事由としているが,生保各社の災害関係特約には規定がないため,

不必要入院等の立証ができなければ支払わざるを得ないとされており,むちう ち,腰痛の免責事由への追加は損保会社の傷害保険の免責事由を参考に当該論 文が執筆された後に導入されたものと考えられる。同論文では生損傷害保険の 免責事由の比較を行っている。

36) なお,保険契約者または被保険者の故意または重大な過失のうち 重大な過

(19)

・頸部症候群,腰痛その他の症状で,被保険者がその症状を訴えていても 医学的他覚所見のないもの(生保会社が傷害保険の免責条項を参考に導 入した免責事由を拡大)

・核燃料物質もしくは核燃料物質によって汚染された物の放射性,爆発性 その他の有害な特性またはこれらの特性による事由

が追加されており,独自の免責条項として,(生保では廃止された)被保険 者の精神障害や,性病などが規定されている。

このほか,妊娠または出産については,4社では免責とした上で,療養の 給付の対象となるべき期間については疾病保険金を支払う,または異常分娩 については支払う旨規定している(3社では生保と同様,異常分娩は疾病と みなす旨規定)。

⑹その他の条項

生保会社において最近の裁判例から近年導入されている保険金不法取得目 的による無効条項 について,損保会社でも7社とも導入している。

なお,生保会社では告知義務違反による解除の除斥期間は2年としている が,損保会社では7社とも原則として保険法の規定どおり5年としている

失 については,従来の傷害保険の免責事由が1975年10月の傷害保険の約款改 訂時に認定の困難さ・約款の簡素化の視点から削除されたものが,保険法施行 と同時に復活されたものである[損害保険料率算定会業務第二部 傷害保険普 通保険約款の変遷(平成8年12月1日現在) 44〜49ページ,安田火災海上保 険株式会社編 傷害保険の理論と実務 (1980年12月1日,海文堂出版)147ペ ージ,東京海上火災保険株式会社編前掲書45ページ]。さらに,佐野誠前掲論 文17ページでは, 現行の約款では,生命保険会社の災害関係特約においては 保険法規定と同様に重過失免責があるが,損害保険会社の傷害保険約款では重 過失免責は置いていない。…保険法制定の機会に損害保険会社の傷害保険約款 においても重過失免責を挿入することが検討されるべきであろう とされてい る。

37) 出口正義監著,福田弥夫,矢作健太郎,平澤宗夫編著 生命保険の法律相 談 (2006年9月,学陽書房)94ページにおいて,最近の保険約款に当該規定 が設けられているのが通例との記載がある。

(20)

(うち3社では特約やただし書きで2年または1年に短縮している)。保険法 に規定のある被保険者による保険契約者に対する解除請求については,損保 会社では約款にも規定があるが,生保会社では約款での規定はない。

6.おわりに

生保会社の医療保険の約款は入院関係特約の約款を,損保会社の医療保険 の約款は傷害保険の約款をベースとしており,その沿革・経緯からさまざま な相違点・共通点がある。

モラルリスク対応の観点からは共通点も多く,保険法に定められた重大事 由による解除の規定などのほか,免責事由である生保の他覚症状のないむち うち・腰痛免責は損保傷害保険約款から導入されたものであり,損保の保険 金不法取得目的による無効条項は,生保を参考に導入されたものであろう。

傷害保険のむちうち・腰痛免責は, 頸部症候群,腰痛その他の症状で,

被保険者がその症状を訴えていても医学的他覚所見のないもの と対象が拡 大されており,生保業界としても,モラルリスク対応の観点から,今後検討 すべき条項といえ,臓器の移植に関する法律への対応等,時宜に適した対応 も損保約款の特徴であり,こうした取組方針も参考とすべきであろう。

一方,契約前発病不担保条項や告知義務違反による解除の除斥期間等につ いては,生損の取扱は相違しており,たとえば双方の商品に加入している顧 客の立場からすれば,今後課題となる可能性があろう。

今後も生損医療保険等の約款改正動向等について注視していきたい。

(筆者はニッセイ基礎研究所勤務)

参照

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