景気循環の非線形モデル・アプローチ
論 説
景気循環の非線形モデル・ アプローチ
―Hoph Bifurcation ttmremの 応用―
浅 利 一 郎
<目次>
1 景気循環論 と非線形性
2 2階の非線形・差分方程式系 とHoph Bifurcation Theorem
3 カ レッキー 。置塩 タイプの景気循環モデル:2階の非線形差分方程式 による
3.1 基本モデル
3.2 2階差分方程式系への体系の集約
3.3 稼働率関数の性質
3.4 カレッキー・置塩 タイプ非線形 。景気循環モデルの運動
3.5 数値例 ― リミッ ト・サ ィクル とカォス
4結 論
1 景気循環論 と非線形性
近年、「カォス」ゃ「複雑系」の話題は一般のマスコミにも科学 トビックスとして しば しば登 場するようになった。非線形力学系 (nOnlinear dynamic systems)が もつ複雑なふるまい自体 は以前から知 られていたが、ヵォス (chaOs)や フラクタル (fractal)な どの現象 に代表 される 非線形力学系の数学的構造に関する研究が盛んにおこなわれるようになったのはここ30年であ る(1)。 現在、非線形力学系に関する研究成果は、数学や物理学の範囲をこえて、ェ学、化学、気 (1)唇鶯。11:Ъ限所FFなこ造,£訴Fのものがある。
……105‑―
象学、生物学、医学 。生理学 などの 自然科学の諸分野だけでな く、経済学、社会学 、政治学 な ど の社会科学の研究 において も大 きな影響 を与 えている(2、 非線形力学系 の理論の経済学 にお け る 応用は、主 に、計量経済学 における時系列デー タ分析 、理論経済学 における「均衡概念」再検討、
成長 と景気循環の理論 、金融理論、外 国為替理論 な どで盛 んに試み られている(3)。 しか し、景気 循環論研究においては、こうした最近の動向に先行 して、経済構造や経済諸関係 に内在す る非線 形性が もつ重要性がはや くか ら認識 されてお り、景気循環理論への非線形性の導入は第2次大戦 以前のM.Kalecki(1937)と NoKaldor(1940)の景気循環理論、戦後のRoM.Goodwin(1948)や J.R.Hicks(1950)の 理論 などにまで さかのぼることがで きる。最近の景気循環論研究におる非線 形モデル・ アプローチは、非線形力学系 の理論 の研究成果 を踏 まえて従来の議論 を再定式化・精 緻化す ることをひ とつの課題 としている。
こうした方向での研究のひとつに、カル ドアの景気循環モデルを非線形微分方程式系 として再 定式化 し循環運動が生 じる条件を厳密に導出 したChang/Smyth(1970)がある。彼 らの論文 以後、カル ドア 。モデルは非線形景気循環モデルのプロ トタイプとして様々な方向に展開されて お り、主な研究を表1・ 1に あげてお く。カル ドア型モデルをベースとした非線形景気循環モデ ルの展開には、カル ドアのオリジナル・モデルが簡明で近年の非線形力学系の理論の諸定理やそ の運動が解明されている非線形方程式を適用する上でモデルを修正 (modification)し やすい と いうテクニカルな理由がある。 しか し、それだけでなく、カル ドア理論は、経済の循環的運動の 説明の際に外生的な不規則シヨックを不可欠の契機 とする景気循環の諸理論に対 し、経済内の非 線形性から自律的な景気循環運動を解明 しようという内生的景気循環論として経済的インプリケー ションが豊富であることが、カル ドア型非線形モデルの展開の背景にある(4、 こぅして、カル ド ア・モデルは、経済学における非線形力学系の理論の典型的な適用例をなしているのである(5)。
本稿はこうした方向の研究の一環 として、カル ドア・モデルとともに景気循環の非線形ァプロー チのもう一つの出発点をなしているカレツキーのモデルをベースに、置塩 (1976)の 景気循環モ デルと資本行動論を結合 したカレツキー・置塩 タイプの非線形景気循環モデルを構築 しその運動 を調べることを課題 としている。
(2)最近の社会科学 における非線形力学系の研究動向については次の文献 を参照。
L.DoLie1/E.Elliot(ed。)。,(1996)
(3)次の文献参照。
E.EPeters(1991),A.Medio(1992),HoW.Lorenz(1993),MJarsulic(ed"1993),有 賀祐二(1994),etc.
0景 気循環論研究係 譜についてはMttDo 0"君
ぁ李思警予」肥 。言貧『 福 zЮ
",d→ 鉾 連の (5)景気循環の非線形モデル・アプローチの もうひと
研究 とそれをめ ぐる議論である。Goodwin/Ktger/Vercelli(ed。 ),(1983)を 参照。̀
表 101 カル ドア型 モデルの展 開
●連続型 (continuOurs type)モ デルでの展開
Chang/Smyth(1970)
V.Torre(1977) M.Boldrin (1984)
R.Herrmann(1986) HoW.Lorenz(1987b)
etc.
●そ の 他
H.R.Varian(1979)
etc.
景気循環の非線形モデル・アプローチ
Poincar6-Bendixson Theorem Bifurcation Theory
The Hoph Bifurcation Theorem
Snap-back Repeller (Marroto Theorem) multi-sector model
・ G.Gabisch/HoW.Lorenz(1987a) Lienard Equation M.H.Dore(1993)
etc.
Lienard=van del Pol Equation
●離散型 (discrete type)モデルヘ の展 開
R.A.Dana/P.Malgrange(1983) non‐ homOgeneous type
Catastrophe Theory
2 2階の非線形・ 差分方程式系(0)とHoph Bifurcation Thoorem
景気循環論 における非線形モデル・アプローチは、非線形力学系の諸定理やその運動原理が解 明 されている非線形方程式 を応用 し、非線形モデルをコンピュータを用いて数値 シ ミュレーシ ョ
ンす ることを主要な方法に している。
しか し、連続型 (continuOus type)に しろ離散型 (discrete type)に しろ高階の非線 形 シス テムでは、経済学 に応用で きる諸定理や非線形方程式は必ず しも多 くはない し、また可能である として も適用範囲にかな りの制限がある。例えば、非線形微分方程式体系 におけるリミッ ト・サ イクルの存在 に関 して、 しば しば用い られる「Poincar6‐Bendixson Theorem」 (7)は 、周知 の よ うに2階の微分方程式系 に限 られている。このような理由で経済学 では、一般的にn階非線 形 システムを想定 して議論することは少な く、3階以下の非線形力学系の理論 を応用することが多 い。そ して、2階の非線形力学系 に限れば、非線形・微分方程式系で生成 しうるア トラクターは
(6)離散型の非線形力学系の数学の入門書 として、つ ぎの ものがある。
R.L.Devancy(1989)。 また 、 離 散 型 の非線 形 写 像 の 成 長 と循 環 の理 論 へ の 応 用 につ い て は 、 R.A.Dana/P,Malgrange(1983)を 参照。
(7)「Poinca艶 ̲Bendixson Theorem」 については、Hirsch/Smale(1974),H.R.VaHan(1981)等を参照。
―‑107‑―
固定点、閉軌道、 リミッ ト・サイクルであ り複雑 かつ不規則 なカオス的な運動 は生 じ得 ない。非 線形0微分方程式系でカオスが生 じるのは3階以上の系 においてであることが知 られている。そ れに対 し、非線形・差分方程式系のア トラクターは、固定点、閉軌道、リミッ ト・サ イクル に く わえてス トレンジ・ア トラクター (カオス)があ り、2階の微分方程式系 に比べてその運動 は多 様であ る(8)。
経済学では、次の ような2階の非線形・差分方程式系の定理・方法が しば しば利用 される(9)。
(i)2階 の非線形差分方程式系 においてカオスを生 じる典型的な非線形差分方程式系 としての H6non写像族 ¨)。
(ii)2階の非線形・差分方程式系 にお ける リ ミッ ト・サ イ クルの存在 に関す る「The Hoph
Bifurcation Theorerrl」(11)。
(iii)一般 にn階の非線形・差分方程式系 におけるカオス発生の十分条件 としての「Marottoの 定理」、あるいは「Snap…Back Repeller Theorem」 ω)。
本稿では、2階の非線形差分方程式 により、カレツキー・置塩 タイプの非線形景気循環 モ デルを構築 し、R2の離散型の非線形力学系 にお ける「The Hoph Bifurcation Theorem」
を適用する。そ こで、R2の離散型非線形写像 における「The Hoph Bifurcationの定理 」 を あ らか じめ確認 してお く。
(3)カ オスやス トレンジ・ア トラクターの定義については、い くつかの可能な定義があ りうるが 、本稿 で は、
H.W.Lorenz(1993),Ch。 4,に したがい、比較的広義に次の意味で用いる。すなわち、 カオスあるいはカ オス的運動 とは、決定論的なルールをもつ系あるいは写像が もたらす本質的にランダムな運動 で、初期条 件のわずかな相違が予想ので きない全 く異 なる運動 をもたらす。後者はカオスの重要 な性 質で あ り、特 に
「初期条件への敏感な依存性」 という。ス トレンジ・ ア トラクターとは、カオス的運動のア トラクターであ る。
なお、数学的に厳密 な定義については、JoM.T.ThOmpson/HoBoStewart(1986)や 魚.L.Devaney(1989) を参照。
(9)HoW.Lorenz(1993)。 Ch.4.,R.A.Dana/P.Malgrange(1983)を 参照。
(10)M.H6nOn(1976)。 一般に、H6non写像族は次の形式 をもつ。
Xt+1=f(Xt)+yt
yt+1=b xt
ここで、bは定数、関数 fは 通常k回微分可能な非線形関数である。Htton自 身は、f(xt)=xt2+1を
研究 している。この写像族の特徴 は、体系のヤコピアンが常に一定 (=― b)である こ とであ る。 そ して 体系が前写像、
xt=yt+1/b
h=Xt+1 f(■+1/b)
をもつ とき、微分同相写像 (α効続"%″鮨%)となる。
(11)2階の離散型非線力学系における Hoph Bifurca■On Theoremに ついての詳細 な議論はRuelle/Takens (1971),G.looss(1979),PoA.Dana/PoMalgrange(1983),等 を参照。
(12)F.R.Marotto(1978)(1979).Snap‐ Back Repeller Theoremは 、 1階 の差分方程式による単峰型 の写像 のカオスに関するLi/Yorke Theorem(1975)の一般化であるが、Li/Yorke Theoremと 同様 に、離 散型非線形力学系 におけるカオスの発生の十分条件 を示す ものであって 、一般 にSnap‐Back Repeller型 でない多様なス トレンジ・ア トラクターが存在する。
景気循環の非線形モデル・アプローチ
定 理 (the Hoph Bifurcation Theorem)
離散型の非線形写像xt+1=f(Xt,μ ),xt∈ R%μ ∈R,fは Ck級 (k≧ 6)、 が固定点x*(μ)を
もつ とす る。非線 形写像fが、パ ラメー タμ=μOで 次 の3つの条件 をみ たす と き、 固定 点 ′
x*(μO)の 周 囲に xtの リミッ ト・サ イクルが存在する。
(1)固定点x*(μO)で 評価 した fの ヤ コブ行列の固有値 λが互いに共役 な複素数であ り、かつ そ の絶対値は 1に 等 しい。すなわち、mOd(れ 0)=1。
(2)複素数固有値 λμ。は 1の k乗根ではない、すなわち(礼0)k≠ 1(k=1,2,3,4,5)。
0 1λ
九
>鴫
証明は略。
この定理は R2に おける離散型・非線形写像fによるxtの解軌道にかん して、パラメータμが μOよ り小 さいときには固定点x*(μ)は 安定な吸引点であった ものが、μ=μOで固定点x*(μO)
における固有値が絶対値で1と なる複素根 をもち、 さらにμ>μOになるにつ れて、 固定点
X・ (μ)は 不安定な反発点になりその周囲にxtのリミット・サイクルを生成する、ことを主張 し
ている。
R2の離散型の非線形写像 における リミッ ト0サ イクルの存在 に関す る「The HOph Bifurca¨
tion Theorem」 は非線形・景気循環モデルの研究にとって きわめて有効な定理 とな りうる。
3 カ レツキー・ 置塩 タイプの非線形景気循環モデル
3.1 基本 モデル
われわれは、2階非線形差分方程式系 によ り以下のカレツキー・置塩 タイプの資本蓄積モデル を構築する。
<仮定>
Al:生産物 は投資財 として も、消費財と して も用いることがで きる。1部門モデル。
A2:労働者 は賃金所得 をすべて消費 し、資本家は利潤所得をすべて投資する。
A3:生産設備 は磨耗 しない。生産設備の補填は無視する。
A4:生産設備は正常稼働水準以上のある一定 レベルまで稼働で きるが、それ以上は物理的に不 可能である。
―‑109‑―
<モデ ル>
生 産物市場 の需給 一致条件
Yt=Ct tt lt … … … … … … … ・ 。(3・1・1)
Yは国民所 得 、Cは消 費支 出、Iは投資 支 出。
所 得分 配
Yt=Wt+πt ・・・・・ ・・ ・ ・・・・・・ ・ 。(3・1・2)
Wは賃金 分配 分 、πは利潤 分配分 。 生 産技術
Nt=nYt ・ ・・・・・・・・・・ ・・・・ 。(3・1・3)
Nは労働投 入量 、nは労働投 入係 数 (一定)。
Yt=δt σ Kt ・ ・・ ・・・ ・・・・ ・・ ・・・ 。(3・104)
Kは資 本 ス トック。 また、Y中 を資本 ス トックKの正常稼働 産出量 と して、
資本の標準生産性:σ=Y・/K(一定)、
稼働率:δ =Y/Y*。
消費支出
・・ ・・ ・ ・ ・・・・ ・・ ・・ 。(3・1・5)
Ct=Wt ・
・・ ・・・ ・ ・・・ ・・ ・ ・・ 。(301・6)
Wt=ωt Nt ・
ω は賃金率 。 投 資 支 出
It=gt・ Kt ・・・・・ ・・ ・・・ ・・・ ・ ・ ・ (3・1・7)
gは資 本 ス トックの変化率 (蓄積 率)。
以上の (3・1・1)〜 (3・107)に おいて、今期期首の資本ス トック Ktを 所与 とすると、未知数 はYt,Ct,It,Wt,πt,Nt,δt,ωt,gtの 9つ である。したがつて、9つの未知数の うち、
今期の稼働率 δtと資本ス トックの変化率gtが決まれば、今期期首の資本ス トックKtと (3・1・7) より投資Itが決まり、今期期首の資本ス トックKtと (3・1,4)から今期の生産量Ytが決 まる。
そ して今期の生産量Ytと投資Itおよび (3・1・1)から消費 Ctが 決まり、今期の生産量Ytと (30
1・3)から雇用量Ntが決定する。さらに、(3・1・5)と (3・1・6)よ り賃金分配分 Wtと 今期の賃金 率 ωtが決まり、最後に今期の利潤分配分 πtが決定する。
そこで、今期の資本ス トックの変化率gtを決める蓄積率関数と今期の稼働率 δtを決める稼働
景気循環の非線形モデル・アプローチ
率 関数 を導 入す るが 、 ここで は、置塩 (1976)に したが って次 の関数 を仮 定す る。
蓄積 率 関数
gt=gt̲1+a(a̲1‑1),a>0
稼働率関数
Q=δ(rt̲1)
利潤率(定義式)
rt=■/Kt
すなわち、企業は前期の生産設備の稼働率Q̲1が正常稼働率 1を こえれば、今期の蓄積率を上 昇 させ、正常稼働率1を下回れば蓄積率をさげる。他方、稼働率については、企業は前期の実現 利潤率 ■̲1みて今期の設備の稼働率Qを、したがって生産量を決める。
以上、本稿の資本蓄積モデルは、前期の活動状態 (gt̲1,■̲1,Q̲1)と 今期期首の資本ス トッ クKtを 与件 として、(3・1・1)〜 (3・1010)の10本の方程式により10個の変数 (Yt,Ct,It,Wt, πt,Nt,ωt,gt,δt,■ )が決定 され る。 そ して、次期 の資本 ス トックの初期存在量 Kt+1=Kt tt ltが与えられる。
本稿の資本蓄積モデ′レの特徴を整理 してお く。
第 1に 、本モデルは2階級間への所得分配を明示的に導入 し、かつ賃金所得はすべて消費に支 出され利潤所得はすべて投資に向けられるというカレッキーの仮定C131を採用 している。第2に、 後述するように、投資=利潤 というカレッキー・ヶインズの命題が成立する。第 3に 、各期にお いて (3・101)の短期均衡条件がみたされるという意味で、カレッキーの短期均衡 とその変動 と いう枠組みを受けつ ぐ。そ して、第 4に 、蓄積率関数、稼働率関数は置塩 (1976)タ イプの関数 を想定 している。ただ し、稼働率関数が前期の実現利潤率に依存するという点で、またその関数 形が明示的に非線形であるという点で置塩のそれとは異なる。
第4の特徴 をもう少 し詳 しく説明 してお こう。章塩 (1976)の景気循環モデルでは次の よ うな 蓄積率関数・稼働率関数が想定 されている )。 す なわち、
蓄積率関数
… ・ … ・ … … … … ・ (3・108)
… … … … ・ ・ … … … (3・109)
。(3・1・10)
gt+1=gt+β (a 1);β >o、 一定。
稼働率関数
Q=δ(rt);δ'>o,δ(r*)=1
… … … … (3・1・11)
… … 。 … 。(301・12) M.Kalecki(1937),p。した。 78.カ レッキーは しば しば2階級モデルを採用 しその階級の特徴 をこの仮定で表現 置塩信雄 (1976),pp.187〜201,および「数学付録4」 pp.315〜317。
―‑111‑―
置塩 は、後述の (30201)の関係 とあわせて、これ らの蓄積率関数 と稼働 率 関数の もとで平 衡 点 の不安定性 か ら「上方への不均衡の累積」 と「下方への不均衡の累積」 を結論 してい る。い。置塩 モデルに内在する最大の問題点は (3・1・12)の稼働率関数である。すなわち、この関数 は今期 の 生産 を開始す る以前 に今期の実現利潤率 を知 らなければならい とい うことを意味する。 しか し、
すでに浅利 (1980)で指摘 した通 り、今期 の生産開始前 に今時の実現利潤率 を知 ることは不 可 能 であ り、せいぜい利潤率は期待利潤率で しかない。 しか し、置塩 (1976)では、期待利潤 率 に よ る生産決定の説明が関数形のなかでは実現利潤率に切 り替 えられている。本稿の蓄積率関数・稼 働率関数は、置塩 (1976)景気循環モデルのそれ らを引 き継 ぎなが ら も、稼働 率 関数 (3・1・9) では稼働率は前期の実現利潤率 ■̲1の 関数 とする。
本稿 の資本蓄積モデルは、以上の4つの特徴 を持つ点で「 カレツキー 0置 塩 タイプの景気循 環 モデル」である。
3.2 2階差分方程式系への体系の集約
(301・5)を考慮す ると (3・1・1)と (3・1・2)よ りIt=πtである。つ ま り、 カ レツキーの仮定 の もとでは投資 は利潤 に等 しい。この両辺 を当該期の資本ス トツクKtでわる と、
gt=rt … ・ … ・ 0… … … … ・ (30201)
が各期に成立する。(3・2・1)の関係を稼働率関数 (3・1・9)に代入 して次式を得る。
δt=δ(gt̲1) … … … … … … ・ ・ … (3・2・2)
したがって、本稿の資本蓄積モデルの運動は成長率gと 稼働 率 δに関す る2階の差分方程 式体 系 (3・108)と (3・2・2)に集約で きる。
蓄積率 関数
gt=gt̲1+a(a‑1‑1)
稼働率関数
Q=δ(gt̲1)
… … … ・ … ・ … ・ … 。
(3・1・8)
… … … … … … … … (3・202)
3.3 稼働率関数の性質
以下の議論では、前項で想定 した成長率gと稼働率 δに関する2階の差分方程式体系 (30108),
(302・2)を、見やす くするために新 たに次の記号で書 き直 しなお してお く。すなわち、資本ス トッ
クの成長率 をxで、稼働率 をyと して、資本ス トックの成長率 を決定す る関数す なわち蓄積 率 (15)置塩信雄 (1976),pp.315〜317.
関数 をf、 稼働 率 関数 をgとす る。
蓄積 率 関数 : xtttl=Xt tt a(yt‑1);a∈ R+
稼働 率 関数 : yt+1=g(xt,b);b∈ R+
景気循環の非線形モデル・ アプローチ
(3・3・1)
(3・302)
… ・ … … … 。(3・3・4) 蓄積率関数 (3・3・1)は置塩の (3・1011)と同 じである。また稼働率関数 (303・2)は非線形 関数 を想定 している。(3・3・2)の稼働率関数 と置塩の稼働率関数 (3・1・12)との相違は、(303・2)で
は前期の実現利潤率の関数 としているのに対 し、置塩は当該期の実現利潤率の関数 としている点 である。
体系 (3・ 3・1),(3・3・2)のヤ コブ行列、ヤコビアン、 トレースを求める。
J=
た だ し、
tr J=1 … … … 。 … 。 (30303)
非線形力学系 (3・3・1),(3・3・2)の特徴 は、 トレースが常 に1に等 しい とい うことである。また、
この体系がb=bOで平衡点 をもてば、y=(bO)=1、 g(Xホ(bO))=1であることは簡単 に確 かめ られる。そ こで平衡点で評価 したヤコブ行列の固有値 λL2を もとめる。
g
一 a
である︒
de ぬ
︐ / a﹁
側︱ ぬ L
gx
れ =
=1士 Vl+4agx中 (b。 )
2
したがって、gxt(bO)<‑1/4aの とき平衡点で評価 したヤコブ行列の固有値は複素数根 となる。
そ して、その絶対値が1となるときには (3・3・4)よ り実数部は常にRe(λ)=1/2であるか ら、
絶対値 1の 複素数固有値 λ12は必ず、
… ・ … … … … … 。 。
(3・3・5)
であ り、この固有値 (3・3・5)は明 らか に1の k乗根(k=1,2,3,4,5)で は ない。つ ま り、体系
(3・301),(3・3・2)は、平衡点で評価 したヤコブ行列の固有値 が複素数でその絶対値が1に等 し い とき、それは必ず (3・3・5)になるのである。これが、体系 (3・3・1),(3・3・2)のヤ コブ行列 の トレースが1であることの意味である。 したがって、平衡点で評価 したg(x,b)の微係 数が 、
√丁
+一
1 一2 λ
‑113‑
gx・(bO)=‑1/a(<1/4a)<0と なる非線形関数g(xt,b)の もとで、体系 (3・3・1)― (3・3・2)
は、Hoph Bifurcation Theoremの 条件をみた しb=bOの近傍で(xt,yt)の リミッ ト・サイク ルをもつ可能性がある。
このような非線形の稼働率関数g(xt,b)がみたすべ き条件を整理すると以下である。
第 1に 、稼働率関数g(xt,b)は非負でなければならない。g(xt,b)>0、
第 2に 、仮定A4に より、稼働率関数g(xt,b)には上限yがある。y>g(xt,b)>0
第3に、稼働率関数g(xt,b)は、xtのある区間でgx>0であって もよいが、gx<0と なる xtの区間をもつ。
これらの条件 をみたす稼働率関数の典型的な例 は図3・ 1の形状である。す なわち、稼働率 g(xt,μ)は 、xtのある区間で増加関数であるが、一時的に稼働率の正常水準 を超 えることがで きるにしてもx=cでその上限に達 し、xtが さらに増加 して も稼働率 には物理的な限界がある だけでなく、正常率以上での稼働にともなうコス ト増加等のためにかえつて稼働率を低下させざ るをえない。そ して、それ以上のxtの増加に対 しては正常水準に稼働率を維持する。
図301 稼働 率 関数 の形状
景気循環の非線形モデル・アプローチ
3.4 カ レツキー・ 置塩 タイ プの景気循環 モデルの運動
われわれは典型的な稼働率関数の形状を図3・ 1のように想定しているが、ここでは数学的に 処理しやすいように稼働率関数を以下のように特定化して議論をすすめる。
蓄積率関数 : 稼働率関数:
xt+r:x,*a(n-1);a€R*
rt+r : b Exp [-(x, - c)'] + a ; b, d € R+, c € R
X b
(3・4。1) (3・4・2)
ここで、a,bは正の実数のパ ラメータであ り(a,b∈ R+)、 c,d(0<d<1)は定数であ る。
また、0<1‑d<bと 仮定 してお く。
i蓄積率関数 (3・4・1)は、前期 の稼働率が 1よ り大 (小)であれば成長率 を前期 よ り上昇 (低 下)させ るとい う行動 を表す。それに対 し、特定化 した稼働率関数は、図302にある ように今
期の稼働率は前期の成長率のある水準 cよ り小 さい範囲で増加関数、大 きい範囲では減少関数で ある。図3・ 1と図3・ 2を比べてみればは明らかなように、図302では、高い水準の xtに たいする稼働率が低い水準のxtにたいする稼働率 と等 しくなっているが、 これはもらば ら数式 的処理の便宜上の仮定であって、本来は図3・ 1の 稼働率関数を想定 している。
図302 稼働率関数
―‑115‑―
そ れで は、体系 (3・401),(3・4・2)の運 動 を しらべ よ う。
(1)ヤコブ行列・ヤコビアン・ トレース
J=
(2)ヤコブ行列の固有値
け÷±:ル 4
(3)平衡点(固定点)
﹁l l i ll l l J a 0
2ab (x - c)
det J=
… 。 … … … ・ (3・4・4)
, tr J=1
イ1+8a(1‑d)OB(b)}
イ1■ 8a(1‑d)・B(b)}
(3・403)
(3・405)
Exp[(x― c)2]
(xl中 =c̲
こ こ で 、B(b)=
嶋 ホ=C+/bメ告ヽプ=D
とお くと、0<1‑d<bよ りB(b)>0である。
(xl拿 =c一 B(b),デ =1),(X2・ =C tt B(b),ガ =1)
体系 は1組の実数の平衡解 をもつ。これ らを平衡点1・ 平衡点 2と い うことに しよう。
(4)平衡 点 で評価 したヤ コブ行列 の 固有値
un=:一 :イ 1+&。 一のBO,
似a=:一:イ 1‑&α 一のBO,
… … … … … (3・406) ここでサ ブス ク リプ トijは 平衡 点 iの j番目の 固有値 を意 味す る(i,j=1,2)。
(5)パラメー タ(a,b)の配 置 と平 衡 点 にお ける固有値 λ
"の 大 きさ 平 衡 点 で評価 した 固有値 (3・4・6)とパ ラメー タの間の関係 を調べ る。
1 一2
1 一2
+ 十
1 一2
1 一2
一一 一一
λ・2 場
ros(ft),v,*:
景気循環の非線形モデル・アプローチ
(3・4・6)よ り、 平 衡 点1で評 価 した 固有 値 λ瑚(j=1,2)は、 パ ラ メ ー タ に与 え た仮 定 か ら
(a>0,b>1‑d>o)、 実 数で λll>1>λ12と な る。特 に、λ12が 1よ り小 さ くな る の は 、 簡単 な計算 に よ り、
a<
の時で あ る こ とが わか る。なお、上式の分母 はパ ラメー タに与 えた仮定か らゼ ロではない。
次 に、平衡 点2で評価 した固有値 λa(j=1,2)は、(30406)よ り、
a≦
の時 、実数 で1>λ滉>0>λ 2>‑1あ る。 したが って また、
a>
で 、λη(j=1,2)は互 い に共役 な複素 数 となる。そ して、互 いに共役 な複素 数 の絶 対 値 の2乗は そ れ らの積 に等 しい こ とを利用 して、複素数固有値 の絶対値 が1になる と きのパ ラメー タの関係 を見 る と、
[mOd(λ2)]2=λ21× λ22=2a(1‑d)・B(b)=1
よ り、
a=2(1‑d)・1
B(b)
の時 に平衡点2で評価 した 固有値 は、その絶対 値 が1の複素数 となる。同様 に、
>a>
の時 に、λa(j=1,2)は絶対値 が1よ り小 さい複素 数で、
a>
の時 に、λa(j=1,2)は絶対値 が1よ り大 きい複 素数 となる。
以上の関係 をまとめたのが表3・ 1と 図302で あ る。 パ ラメー タ a,bの 実数平面
{(a,b)la>o,b>1‑d>o}は 3つ の曲線A,B,Cによって4つ の領域に分けられ、下から領 域1、 領域2、 領域3、 領域4と呼ぶとすると、平衡点で評価 した固有値は、領域ことに表3・
1のようになる。ここで3つ の曲線の方程式は以下である。
―‑117‑―
a=
a=
a=
(1‑d)・B(b)
1
2(1‑d)・B(b)
1
Hoph分岐点 A
B C
(3.4,7)
8(1‑d)・B(b)
表301
(注 )λ ∈Cはλ
"が
複素数であることを意味する。他のλ
"は
実数である(λ
"∈
R)。
なお、境界の等号関係は捨象 してある。
平衡 点1は領域1から領域3で局所 的 に鞍 点 、領域4で局所 不 安定 であ る。それ に対 し、平 衡 点 2は領域1と 2で局所 安定 、領域3と 4で局所不 安定 で あ る。
・3 パラメータ配置 と固有値 3
a 図
b
平衡点 1の 固有値 平衡点 2の 固有値 体系の運動
領域4 1,, ) l, 1,, ( -l λa,2∈ C'mOd(λ2)>1 周期軌道→ カオス→発散
領域3 λll>1,0>λ12> 1 λ21,2∈ C,mOd(λ2)>1 平衡点 2の 周囲で リミッ ト・サ イクル
→周期軌道 領域2 λll>1,0>λ12> 1 λ21.2∈ C'mOd(λ2)<1 平衡点 2へ 振動収束 領域1 1,,)1,0)lrz>-l 1>λ21>0>λ2ン ー1 平衡点2へ単調収束
Hoph Bifurcation
景気循環の非線形モデル・アプローチ
(6)体系 の運動 とHoph分岐
体系 (3・4・1),(3・402)の運動 に関 して次の定理 を証明する。
定 理 体系 生 じ、
証 明
(304。1),(3・ 402)は、曲線a=2(1‑
平衡点2は吸引点か ら反発点に転 じることによりその周囲にリ
d)・B(b)上の パ ラ メ― 夕配置で、Hoph分岐 を
ミッ トサ イクルを もつ
̀
曲 線B上の パ ラ メ
1
― 夕配 置 で 、平衡 点2にお けるヤ コブ行 列 の 固有 値 を調 べ るた め に、
の λ場に代入すると、(303・5)で予想 していた とお り、
… … … … … … … … … 。
(3・ 4・8)
2(1‑d)・B(b) を (304・6)
λ礼2=:±与̀
であ る こ とが確 か め られ る。 したが って 、 そ の絶対値 はmOd(λ2)=1であ り、 また この 為 (j=1,2)は 1の k乗根 (k=1,2,3,4,5)で な い こ と も 自 明 で あ る 。 こ れ で 、Hoph Bifurcation Theoremの 最初の2つの条件 をみたす ことが証明 された。
次 に、Hoph Bifurcation Theoremの 3番目の条件 を調べ るが、ヤコブ行列の固有値が複素数 の場合、互いに共役 な複素数の積 は、その固有値の絶対値の2乗に等 しいことを利用 して、固有 値の絶対値の2乗をもとめると、
[mod(λ)]2=2a(1‑d)・B(b)
mod(λ)=イ2a(1‑d)・B(b) … 。 … ・ … … … … 。(304・9)
(30409)の関数形か らもまた、簡単 な計算からも次の関係が成立することが確かめられる。す な わち、
>Q >0
以上で、体系 (3・401),(3・402)は、HOph Bifurcation TheOremの 3つの条件 をみた し、曲線
‑119‑
B上でHoph分岐が発 生 す る こ とが証 明 さた。 証明終 わ り。
以上の定理 により、体系 (3・4・1),(3・4・2)はパ ラメー タa,bの配置が領域2から領域3には いるところでHoph分岐が生 じ、 リミッ ト0サ イクルを生成す る。
3.5 数値例 ‐ リミッ ト・ サイクルとカオス
以上の考察を踏まえて体系 (3・4・1),(304。2)の数値シミュレーシヨンをおこなう。
蓄積率関数: 稼働率関数:
xt+r:xt+a(n-1);acR*
Yt+r : b Exp [-(x, - c)'] + a ; b ) 1 - d ) 0, c c R
(304。1)
(3・4・2)
図3・ 4は、初期条件(xl=1,yl=0.8)、 パラメータをb=2,c=1,d=0.01の もとで、
aを 領域1から領域4まで上昇 させたときの体系 (30401),(30402)の 代表的運動 を図示 した も のである。まず、このパラメータ配置のHoph Bifurcatton Pointを もとめると、(3・4・7)よ り、
aHP= ≒0.602277。
2(1‑d)
図303の領域 1と 領域2(a<aHP)においては、領域1で平衡点2に単調収束 (図3・ 4(1))、
領域2では平衡点2へ振動収束 (図3・ 4(2))する。領域 2と 領域3の境界(a=aHP)で HOph
分岐がお こ り (図 304(3))、 この点 をす ぎて領域3(a>aHP)にはいると、平衡点2は反発 点 になる とともにその周囲にリミッ ト・サイクル (図 3・ 4(4))を、さ らに周期 軌道 (図 3・ 4 (5))を生成する。さらに領域4にはいると体系の運動はn周期軌道 (図304(6))からス トレ ンジ・ ア トラクター (図 304(7))をへて発散する (図 3・ 4(8))。
図3
(1)
04 数値 シミュ レー ション結果
a=0.15 :領域1 (2)a=0.5
景気循環の非線形モデル・アプローチ
:領域2
振 動収東
リミッ ト・ サ ィ クル
つ
1.8 1.6 1.4 1.2
・ 2 1.75 1.5 1.25
(3)a=0.602277 :領 域 2と 3の境界 (4)a=0.65 :領 域3
Hoph Bifurcation point
r.ls Z z)
―‑121‑―
(5)a=1.1 :領域3
・. 。2
1。5
(6)a=1.25 :領域4
2
6周期
1。5 2
n周期
(7)a=1.6 :領域4 (8)a>1.7 :領域4
1
ス トレンジ・ア トラ クター (カオス)
図3・ 4(8)は、a=1.8のケースである。最初の40ポイ ン トぐらいは一定の範囲にお さまって いるが、それ以降は矢印方向に発散す る。
図3・ 5は、図3・ 4(7)の ス トレンジ・ア トラクター (カオス)のケース にお いて初 期 条件 のわずかな相違(10 3)が全 く異 なる xtの 解軌道 をもた らしていることを示 している。こう した
「初期条件への敏感な依存性」は決定論的カオスの特性のひとつである。
散
・2 発
景気循環の非線形モデル・アプローチ
図305 初期条件への敏感な依存性 パ ラメー タ:a=1.6i b=2,c=1,d=0.01
初期条件 の相違 :実線={xl=1,yl=0.8}、 破線={xl=1,yt=0.801}
xtの運動(t=1,……,60)
X
4結 論
(1)われわれは、カ レッキーのモデルをベースに置塩 タイプの蓄積率関数 。稼働率関数 を導入 した景気循環モデル (3・101)〜 (3・1・10)を構築 した。このモデルは、2階の差分方程 式系
(30108),(3・2・2)、 あるいは (3・3・1),(3・3・2)に集約 される。集約 された2階の差分方程 式 系 は、ヤ コブ行列の トレースが常 に1に等 しい とい う特性 をもつ。この こ とは、2階の差 分
方程式系(303・1),(3・3・2)が平衡点 をもつ とき、平衡点で評価 したヤコブ行列の固有値が複
素数でその絶対値が1である ときには、常 にその実数部が1/2になるため に次 の形 を とる こ とを意味する。す なわち、
λ ψ
=:±与′
=cOs子± 夕
dn子そ して また 、 稼 働 率 関 数 (3・ 3・2)があ る 条 件 をみ た す と き、「The Hoph Bifurcation Theorem」 を適用 で きる可能性 が あ る こ とを意味す る。経 済的 に有意味で か つ この条件 をみ たす稼働 率 関数 は、y>g(xt,b)>0(フ は上 限)で、xtのあ る区間 でgx>0であ っ て も、
―‑123… …
かならずgx<0となるxtの区間をもつという 例を図3・ 1に 示 した。
(2)次に、稼働率関数を特定化 して、カレツキー ベた。われわれの体系は以下である。
蓄積率関数 : 稼働率関数:
ものである。こうした稼働率関数の典型的な
置塩 タイプの景気 循 環 モ デ ルの運 動 を しら
xt+r:xt+a(n-1) ;acR*
yt+r : bExp[-(x, - c)'] * d ; b, d e R*, cG R
… 。
(3・ 4・1)
… 。(3・4・2)
体系 (30401),(304・ 2)は、パ ラメータ配置a= 1
2(1‑‐d)/1og(¬
「豊≒r)
で 、Hoph分岐
を生 じ、平衡点2の周 囲 に(xt,yt)のリ ミッ ト・サ イ クルが生 じる こ とを証 明 した。
(3)体系 (30401),(3・4・2)の数値 シ ミュレーシ ョンは、先のパ ラメータ配置でHoph分岐 を生 じ、平衡点2が局所安定の吸引点か ら局所不安定な反発点 にな り、その周 囲 に リ ミッ ト・サ イクルが生起す ることを例証 している。
(4)さ らに、パラメータa,bの実数平面の領域3から領域4まで数値シミュ レーシ ョンす るこ とにより、リミット・サイクルからn周期軌道やス トレンジ・ア トラクターが存在すること を描 き出 した。
資本蓄積 と景気循環の集約モデルとして体系 (3・4・1),(3・4・2)を みるとき、置塩モデル
(3・1・11),(3・1012)の 運動 とくらべて、パラメータ配置によりその運動が多様であることが 注 目される。置塩モデル (3・1011),(3・1・12)では「乖離は上方へ、あるいは下方へ累積 して い く」。の運動を描 くだけであるのに対 し、体系 (3・4・1),(304・2)は発散のケースも含めて、
カオス的運動、周期軌道、リミット・サイクル、振動収束、単調収束の多様 な運動の可能性 をもつ。こうした違いは、同 じ形の蓄積率関数をもちながらも稼働率関数における2つの相 違点による。すなわち、第 1に 、置塩の稼働率関数 (3・1012)は今期の実現利潤率の増加関 数であるのに対 し、本稿の稼働率関数 (304・2)は前期の実現利潤率の関数であること、第2
に本稿の稼働率関数 (3・4・2)は先の条件をみたす明示的な非線形関数であることである。
(16)置塩 (1976),p.315。