図1-1、 図1-2、 図1-3「BEACH PRODUCT」 は乾燥のし 易さと運搬性の良さを得ることに加えて、板材に加工され た混合素材が生み出す応用展開の広さの事例として制作 した。それは木材が広く、多様な用途で用いられている 背景に、木材が板材として加工され、使い易い形になって いるということがあると考えたからである。図1-1 、図 1-2 「BEACHTABLE」の脚の形状は、不均一な砂場の上に脚を さして使う事を想定して制作した。図1-3「BEACHCHAIR」 は砂を鋳込んで型の中で固めて成形するという加工方法 を用いて製作している。 図1-1、 図 1-2、 図1-3「 BEACH PRODUCT」の、水と火で元の状態 (砂)に戻すことができる という素材特性は、大きなメリットとメッセージをつくること ができると考えている。図2-1「砂箱」は、ブロック状に固 めた砂の塊をCNC 加工機で削り出して製作した。製作時に は、できる限り加工精度の高い箱をつくることを目指し、こ の新しい混合素材が、CNC 加工でつくることのできる様々な 形状に応用展開可能であることを示そうとした。機械で削り 出してつくる方法は、従来の焼成を行わない土のプロダクト が持つ生っぽさを最小限にすることができ、量産時の安定 性もあるので本研究の目的に適していると考えた。この砂箱 は、これまでライフスタイル製品としてあまり使われてこな かった土プロダクトの第一歩となり、新しい方向性をつくる ものと考えている。 研究概要 私は土の自然が生み出した色合い、ザラザラしたテクス チャー、採掘場所によって異なる特性に魅力を感じ、陶器や レンガのような焼成された土プロダクトとは異なる焼成しな い加工方法で、土プロダクトをデザインすることができない かと考えて本研究に臨んだ。リサーチの中で得られた土の 家や土壁をつくる混合加工の方法から、自然と人の双方に 優しい新しい土プロダクトの可能性を見出し、 土(砂)素材と バインダーになり得る様々な材料を混合する素材実験を行っ た。試作を繰り返す中で、砂とゼラチンを混合した素材が、 焼成しない加工方法でもコンクリートより高い強度を持ち、 更に水と火で元の状態(砂)に戻すことが可能なことがわかっ た。混合素材の配合や温度などの製造条件を変えながら試 作を重ねると同時に、この混合素材でプロダクトをつくるた めの実験として、型や離型剤の研究、切断や掘削などの材 料加工の研究、この素材の特徴を活かす造形の研究を行っ た。その後、この混合素材が持つ特性を用いて「BEACH PRODUCT」「砂箱」「植木鉢」 「タイル」を修了作品としてデ ザインした。 研究目的 今の時代、経済・産業の成長と環境問題との関連性を明 らかにすることが、社会の大きな関心事となっている。 製 品をつくり出すプロダクトデザイナーとしては、ゴミ問題に つながる産業廃棄の問題に対して危機感を抱き、それをた だ見過ごすことはできない。土素材は自然と人の両方にとっ て優しい素材であり、今後プロダクトに使用する素材として も高い可能性を持っている。その理由としては、土が地球 上のどこにでも存在する物質であり、手に入れ易く、比較的 コストも安いということがある。また、土は地球の中に生物 が存在する限り持続可能な素材でもある。この研究の主な 目的は、未開である土のプロダクトの領域を開き、土という 素材の持つデザイン性の価値と関心を高めること、自然に優 しい土素材をプロダクトの分野や建築分野で有効に使えるよ うにプロダクトデザインへと展開し、その可能性を示すこと にある。 図3-1、図3-2「植木鉢」には、成型加工を試みている。更に、 この混合素材の持つ自然に還るという特性を組み込み、植 木鉢ごと土に埋め込むことで、苗替えを容易にする提案を 行っている。これによって根が切れたり周りの環境を急に変 えることもなく、植物に負担をかけない形で苗替えを行うこ とができる。図4-1「タイル」は、この混合素材が、板材の ように矩形にカット加工できるという特性を活かして、大量 に利用される用途の1つとして展開を試みた。研究の過程 でレーザー加工機による表面装飾も行えることがわかり、こ の混合素材のデザインバリエーションの多様さを感じさせる 提案ができたと思っている。 まとめ この混合素材はゴミにならず自然と人に優しい性質を持 つため、短期間だけ使用するイベント関連のもの、簡易建 築物や季節用品に用途を展開することで、大いにメリットが 生まれる。土や木、石などの自然材料を効果的に利用して 住み家をつくり、自然とバランス良く暮らしてきた先人たち のように、自然と共に暮らす理想的な暮らしが実現できるだ ろう。人の暮らしと自然環境の双方を考えたモノづくりは、 今後モノづくりを発信していく私たちデザイナーの使命でも あると考えている。本研究で制作したものを今後も研究し続 けていき、社会に貢献、還元していきたいと強く思っている。
呉 守珍
OH, SujinExpanding the possibilities of non-fired earth products
手段 子供自らの伝えたい気持ちを表現してもらう手段として、 興味を持つであろう「遊び」を通じた方法を考えた。また、 子供は人を描く際に、顔の表情に心の状態が現れる。この 表情を通じて、心のメッセージを親に届けられるのではない かと考える。従って、「顔の表情に現れた心のメッセージを 伝える」を仮説に、実現する手段を目的とし、会えない時 間でも、遊びながら、メッセージを伝える親子のコミュニケー ションツールについてデザインを行う。 デザインのコンセプト ターゲットはコミュニケーション力が十分ではない3歳から 6歳までの子供とその親に向ける。親に子供のメッセージを 意識してもらい、子供の気持ちに気づいてもらうために、デ ザインのコンセプトは三つのステップ「見るー意識するー話 題になる」で考えた。 1)見る : 見るだけ気持ちを読み取れるカタチ 2)意識する : 普段はあまり気づかないことに向ける意識 3) 話題になる : 一緒にいる時にも会話のきっかけとして 、 コミュニケーションの話題になる習慣性 デザイン1: 落書き帳「kao-cho」 平日に親が忙しい場合、親がそばにいなくても子供は自 分の一日を振り返り、整理した気持ちをお絵描きという遊び を通じて表現する。親は描き終わった「kao-cho」を読み、 以前に描いたページと比べながら子供の変化を察し、週末 などの時間に「この日に何があったの?」という風に子供と コミュ二ケーションがとれる。子供も描いた顔と自由ページ を見て、自分の意思をきちんと親に伝えると考えた。 デザイン2: お弁当セット「kao-ben」 食材で表情のパーツを作り、お弁当を作る間にパズル遊 びのように楽しみつつ、親は子供に自分の気持ちを伝える。 一例として、時々子供を叱る際に直接話すと厳しい言葉を発 するかもしれないが、お弁当で気持ちを表現することで、子 供に自分の意思を少し柔らかく伝えることができると考えた。 子供はお弁当箱を開ける際にこの「顔」 を見て、親の気持 ちを意識する。帰り道など親と一緒にいる際に、コミュニケー ションのきっかけとし、スムーズな会話ができると考えた。 まとめ 本研究では親子のコミュニケーションをよりスムーズにす るため、親子が互いに会えない時間を利用し「遊び」とい う楽しめる手段で顔の表情を表現する提案を行った。「子供 →親 」「親→子供」という二方向の視点から落書き帳「kao-cho」とお弁当セット「kao-ben」を創案した。このようなコミュ ニケーションツールを使用することで、親子は互いの気持ち を理解し合い良好な親子関係を築けると考えた。 また、3~6歳の子供には自己表現力を育むことがとても重 要であり、コミュニケーション力を育てる7つの力が必要で ある。創案したコミュニケーションツールを通じ、この7つの 力も鍛える。このような役割を果たすことで本研究にて行っ たデザイン手段を活用し、今後の親子関係と親子コミュニ ケーションにおける様々な課題を解決する際に、応用できる と考えている。 研究概要 遊びながらコミュニケーションがとれるプロダクトの可能 性を探り、親子のライフスタイルを創造することが研究の目 的である。新しい親子のコミュニケーション手段を講じるた め、親子は一緒にいる際に触れ合うことができるという既成 概念を崩し、「会えない時間でも心のメッセージを伝えられ るなら、親子のコミュニケーションがよりとれるのではない か」という仮説を立てた。親子のコミュニケーションを重要 視し、家族で過ごす時間のリサーチを行い、親子関係の現 状を分析した。また、「子供の絵に現れた今の気持ち」から ヒントを貰い、「顔の表情に現れたメッセージ」を双方に伝 える手段として見出した。親子関係をスムーズするため、直 接話すより、もっと柔らかい形で、親子の心のメッセージを 伝えるコミュニケーションツールを提案した。この研究が、 今後の親子のライフスタイルの改善と創造に役立ち、社会 問題の解決につながればと考える。 仮説 親子コミュニケーションといえば、親子は一緒にいる際に 触れ合うことができるという既成概念がある。この既成概念 を崩し、親子が離れている時間も利用できるなら、親は子 供との触れ合う機会を増やすことができるのではないかと考 える。
王 思喬
WANG, Siqiao 親子のコミュニケーションツールとしてA parent-child communication tool using play to create a new lifestyle
ケータリング・ビジネス ケータリング・ビジネスについてはケータリングに関わる 内容、手順、種類などをまとめ、デザイン要素を抽出しまし た。費用については実際の顧客にインタビューし、顧客の 意思決定の流れを表にして検討しました。加えて、ケータリ ングに適したお菓子のサイズを決めるために、ひと口のサ イズなどの検討も行いました。 ディスプレイ・デザイン ディスプレイ・デザインについては、お菓子の伝統的な パッケージを調査し、ケーススタディ・デザインを通して様々 なディスプレイを検討しました。 1.ミラー「ライジングムーン」(図1) 2.ポップアップ「母の日」(図2) 3.紙組み・折紙「クリスマス」(図3) 4.木材・アクリル板の仕組「The Celebration」(図4) タイ菓子 当研究の成果は、日本とタイの伝統的なお菓子である和 菓子とカノムタイの特徴を融合させた「タイ菓子」を創出し たことです。伝統的なお菓子の特徴である「良い意味」「天 然の材料」などを保ちながら、現代の私たちの生活や社会 に合った「タイ菓子」を提案してきました。「タイ菓子」に は日本とタイの歴史的な特徴も含まれているため、両国の 文化の交流もできると考えています。 The Celebration(図4) 当研究の集大成として制作した「The Celebration」は、 祝儀に提供するケータリング・デザインです。タイの台座付 きトレー『パーン』をモチーフにディスプレイのツールをデ ザインし、そのデザインに合わせ、4つのデザイン・メソッ ドを応用してお菓子をデザインしました。 研究概要 本研究の目的はケータリング・ビジネスを通して、タイの 伝統的なお菓子であるカノムタイを広めることです。本研究 は下記の3つの領域をもとに行いました。 1.お菓子のデザイン (Confectionery Design) 2.ケータリング・ビジネス (Catering Business) 3.ディスプレイ・デザイン (Display Design) お菓子のデザイン お菓子のデザインについては、和菓子とカノムタイとの基 本情報や共通点/相違点の調査を踏まえ、カノムタイのデザ インを展開する方法として、下記の4つのデザイン・メソッ ドを創出しました。 1.変数を入れ替える(変数:種類・モチーフ・材料) 変数はお菓子の「種類」「モチーフ」「材料」です。和菓 子とカノムタイ、それぞれの変数を入れ替えたり組み合わせ たりしてお菓子をデザインします。 2.名称をマインドマップで分析し、モチーフを広げる 良い意味を持つカノムタイの名称を保ちながら、名称に 含まれている言葉をマインドマップで広げ、新たなお菓子 のモチーフを探ります。 3.モチーフ・名称のテーブルを用いる たくさんのお菓子をデザインする時に使用する方法です。 「モチーフ」と「お菓子の名称」でテーブルを作成し、そ れぞれのお菓子を、モチーフに合うデザインを考えスケッチ します。最後に、同じようなデザインを選ばないようにお菓 子を選びます。 4.お菓子を分解し、パーツを広げる お菓子をいくつかのパーツに分解し、分解したパーツの デザイン・バリエーションを探り、そのバリエーションの中 から必要なパーツをピックアップして、お菓子をデザインし ます。
SIRISAENGTAKSIN, Supasana
The study of design for Thai confectionery catering
研究の概要 技術の進歩によって様々なことが姿を変え、生活を変化 させていく。暮らしに合わなくなったものは、必要がないと 判断され、捨てられていく。一方、古くから残っているもの はその時代の人々が暮らしに合わせて何らかの変更を加え てきたものが多い。言語も同様である。言語は基本的な文 法に大きな変化はないものの時代ごとに新たな表現が生ま れ、進化し続けている良い例である。昨今では積極的に古 いものをアレンジし、現代生活に合わせて楽しむ人も増えて きた。しかし、本来使われる場面とはまったく異なる使い方 も多く見られ、ますます意味が薄れていく。本研究では、筆 者のタイのモンクット王トンブリー工科大学での卒業制作を 引き継ぎ、「タイ山岳民族の織物の模様」をテーマに設定し、 特に、意味を意識させることに重点を置いた。 まず書籍等の資料を参考に世界中にどのような古いもの が残されているのかを概観した。さらに、本研究が着目し たタイ北部山岳民族の織物の模様の意味と目的をリサーチ した。その中から現代の行事にも共通している5種類「癒 し」「応援」「葬式」「祝福」「呪術」を選び、それらの模様 をもとにデザインを試みた。最初に、意味を知らないまま 直感で模様を選び、それを活用できるのかを知るため、タ イポグラフィに着目し、アンケートとインタビューを実行し た。織物の模様は、織り方や色の使い方によってさまざま に印象が変わる。言語も書き方によって言葉の意味を強め たり弱めたりできる。タイポグラフィも同様に印象を生み出 すことのできる例であることから、この手法を用い、同一の 模様を4種類の異なる印象に見えるようアレンジした。(図 1)アンケート結果から、見た目の印象によって使用される のに相応しい場面を想像することが可能であることが分かっ たので、この模様を使用した、数種類のプロダクトを制作し、 意味を紹介するカードを添えて実際に販売する実験を行っ た。しかし、模様の印象とプロダクトに直接的な関係がなけ れば、模様の意味まで楽しむことはできないことが分かった。 (図2)そこで意味をそのものをさらに伝わりやすく楽しめ るようなデザインが必要だと考え、親しみやすいキャラクター のような模様に描き直し、彩色した。このとき元の配色の 意味をこわさないようトーンだけを変化させ、絵本とともに 子供向けのぬいぐるみを提案した。このデザインでは意味 を学び親しむことはできたが、意味を応用することは促せな かった。 最終提案では、意味を応用できるデザインとして、ギフト 商品として食器(皿)とテーブルセンターのセットを制作した。 タイ族の織物の模様は、人間関係の間にある要素から生ま れたものである。現代は義務によって贈りものをすることは 稀で、伝えたい気持ちを込めた一つのコミュニケーションと して捉えている。このことから、ギフト商品は気持ちを伝え るために模様の意味を応用する動機付けとなることが期待 できると考えた。現代的な暮らしに合わせた皿は、意味を 知ることで相手に伝えたいメッセージを込めたギフトになり、 もらった人は意味を知って使うことでさらに応用することが できる。テーブルセンターは目の前の皿の意味から会話が 生まれるように、ストーリーを感じられるようなデザインにし た。 現代の人々が昔のものを身近に感じるには、「今の自分の 暮らし」と「目の前にある製品」とが的確につながる表現 が重要であり、コミュニケーションを踏まえてデザインする 必要がある。最終提案は、タイ族の織物の模様にまつわる 物語を伝えるという意味をこめて「ものがたり」という言葉 をもじり、「MOYOGATARI」というブランドを想定してデザ インした。 まとめ 古いものを現代に活かすためには、親しみやすいデザイ ンだけではなく、プロダクトで文脈を作り、それによって人 と人とのコミュニケーションが生まれ、意味を意識させなが ら、結果として、自然に応用することを促すということが重 要なのだと思う。本研究を応用することで、それぞれの古き 良きものが時代に合わせて、形を変えつつ継承されていくこ とが可能だと考える。この「継承のサイクル」はいつか別 の地域の「継承サイクル」と融合し、国によって守られる表 現としてのアイデンティティではなく、暮らしに根ざした新た なアイデンティティが生まれるのではないだろうか。それは、 私の考える理想的な国際化でもある。
TARDTHONG, Amonrada
Design applying the patterns of northern Thailand hill tribes
仮説 メーカーによって自社のコンセプトや人に伝えたい情報 が違うことから、クルマの表情は豊かになっているというこ とが想像できる。また、将来、運転する人の性格や運転す る方法が違うことが、クルマにも現れる可能性があるとも考 えられる。以上の分析を踏まえて、新世代の電気自動車は、 フロントマスクのデザインの多様化によって、人の心理と行 動に影響を与えるのではないかという仮説を立てた。 コンセプト デザインコンセプトは交通に優しい新世代の電気自動車 である。シンプルな造形で、フロントマスクにLEDパネルを 採用して、人々に情報を伝えるように提案した。 アクセルの踏む深さからの考え 自動車を運転する時に、運転者は一般的に普通モードで 走る。そして、リサーチによれば、使うシーンが違うと、ア クセルを踏む深さが変化する。さらに、一般道路ではゆっく り走り、高速道路では少しスピードを出し、高速で走るとい うことがリサーチによって分かったことから、この三つのシー ンに基づいてアクセルを踏む深さを三つに分けて、人々に クルマの行動を知らせるために三つの表情を設定した。 まとめ 現代の車のデザインは、各メーカーのアイデンティティー や造形美に注力している。しかしそのスタイリングで周囲の 人間の安全に対する行動を変えることはできていない。本 研究では表情でクルマの状況を他の運転者や歩行者に伝え て、周囲の人々の心理と行動に影響を与えることを目指した。 そして、この方法で交通事故を減らすことができるのではな いかと考えた。この方法をフロントマスクに応用するだけで はなく車体後部のデザインにも使えば、車の状況をよりうま く人々に伝えることができるのではないだろうか。本研究の 提示するデザイン案を電気自動車のデザインに応用すること で、将来、交通事故減少につながる可能性があると私は考 える。 研究概要 本研究では、一年次に、先ずは代表的なクルマメーカー のデザインの歴史とデザインの変遷をまとめる。その後、現 代のカースタイリングを検証、分類して産学共同研究などを 経て検証しながら、これからの自動車の本流であるEVのデ ザインの「顔」の提案につなげる。自分のオリジナルの仮 想メーカーを構築、さらに、仮説を立ててそのメーカーの ブランドやクルマのデザインのアイデンティティー計画を提 案した。 二年次から、自動車のフロントマスクのデザインを中心に、 自動車を社会問題から考え、一年次の時の自動車のフロン トマスクのリサーチをリファインした。そして、仮説を立て、 動物の顔の表情から考え、提案の結果を検証しながら、新 世代の自動車のフロントマスクや表情は人や交通にどのよう な影響を与えるかを考えた。
彭 博
PENG, BoResearch on vehicle front masks for a new generation
今の時代に日本文化を食という切り口から伝えたいと考え たきっかけは、加工食品メーカーが塩、糖、脂肪の配合に よって、身体に決して良いとは言えない、より依存度の高い 商品を販売しているということを知ったからだ。このことは、 ものごとがどのルーツを辿ってきたのかを知らないと、自ら を守れない時代であることを示している。 本研究では、20代、日本文化、食の現状を理解した上で、 若者にルーツや土台を意識させることはものごとを判断する 目を養うことができる一助となるように、日本文化が育んで きた豊かさを食を通してどのように伝えることができるのか を考察した。 修了作品 お節料理やハレの日のお弁当など、特別な日に使用され てきた重箱。修了制作の重箱の提案 ( 図1)では、重箱その ものを透明化し、中の食材全てが見えるようにした。食材や その配置によって、食べ方を示唆したり、栄養面や身体の 吸収など、食に対して伝えたい情報をより強く伝えることが できるのではないかと考えたためである。 この透明な重箱を使って、日本に古くから伝わるバランス の摂れた理想的な食事「一汁三菜(懐石料理の流れ)」、食 材の身体への吸収をコントロールし、血圧の急激な上昇を 抑制できる「スローカロリー」、食の多様さ、繊細さを体験 的に培う「大人の味育(味覚育成)」などの食情報の伝達を、 シナリオを伝える食材・料理と共にコーディネート提案した。 重箱での食体験はコンパクトさを持ち、テーブルコーディ ネートとして、簡易的で汎用性がある。例えば「大人の味育(味 覚育成 )」においては、認識できる味覚の種類を更に増や すことに加え、数名で一緒に食べることにより、他者と自分 の味覚を比較する行為からも味覚は育まれる。トマトは日本 国内だけでも120種類もの品種があるが、甘さも食べたとき の触感も異なるトマトを食べ比べて、他者との美味しいと感 じる味覚の違いを感じ取る、そうした機会の演出にもこの透 明な重箱は寄与するだろう。 日本は昔からさまざまな絵柄を器に施してきた。それぞ れの器と食材を組み合わせることで、時には季節の演出、 駄洒落や縁起の伝達など、つくり手の気持ちやおもてなしで 食を楽しむ文化がある。豆皿の提案(図2)では、雪のつくる さまざまな表情を繊細なグラフィックで皿上に施した。1つ の現象やものの中に、多様な表現、意味が変わる奥深さを もつ日本文化の特徴を、形や情景の違いによってさまざま な名称が付けられている雪をモチーフに、食における季節 感の演出を担う豆皿として提案した。 大和言葉のお菓子のパッケージ提案 ( 図3)では、お菓子 とパッケージを媒体として、日本が培ってきた感覚の豊かさ を育てることを試みている。形を表す大和言葉の単語を選 定し、言葉の持つイメージから形を想像してイラスト化した。 更に辞書のように言葉と意味の記述が入るグラフィック表現 としてまとめている。パッケージの表面には、大和言葉を表 すイラストだけが描かれており、裏面にその大和言葉の意 味が書かれている。表面の形を見て、感覚的にその形の示 す言葉を想像させるプロセスを、このパッケージでつくるこ とができると考えて提案した。 概要 日本文化は季節や風土、素材そのものを活かし、豊かで 独特な文化を築いてきた。しかし、現代の20代の若者には、 日本文化に対する情報や知識、体験が少ないように感じて いる。そこでそのような日本文化を、食を通して20代若者に 伝えていくことが、本研究の目的である。 情報過多の時代において、自らのルーツともなる日本人 が育んできた伝統を知らないということは、さまざまな状況 において的確な判断ができなくなる要因の1つになるので はないかと考えた。これからの時代、情報を伝える媒体とし て主流になっている本やインターネットだけでなく、食も情 報を人々に反映させる手段として利用可能になると考えてい る。
渡邉 彩加
WATANABE, SayakaTransmitting Japanese culture to young people in their twenties through food
日本文化を食を通して20代若者に伝える
図1 : 透明な重箱でのテーブルコーディネート 提案
図2: 日本の機微を豆皿の絵柄で伝える 提案