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要約兵庫県南部沖地震によって阪神聞は

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(1)

57号 1995

阪神・淡路大震災における障害者の被災と今後の課題

総合都市研究

)1

... 聡事事..

弘*傘傘傘

はじめに

被害調査の概要 回答者の属性 被災時の状況 避難時の状況 震災後の生活

震災後の交通状況の変化 まとめ

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4.  6.  6.  7.  8. 

要 約

兵庫県南部沖地震によって阪神聞は6600人以上の尊い人命を失い、とりわけ移動性の 低い高齢者・障害者が逃げ遅れ死傷するケースが多かった。また、避難所でも高齢者など 社会的弱者が多く、その避難が長期化する傾向が見られた。本調査研究は、この問題の緊 急性・重要性に鑑み、被災した障害者の被災実態と被災直後の避難行動、および被災前と 被災後の交通環境の変化に対する意識変化について災害時の生活調査を行ったものである。

研究方法は74人に対してヒアリング等によって行ったもので次の結果が得られた。

1)脱出・救援に関して自力で脱出できない人に対する存在情報を他者に知らせる方法の 制約があったこと。 2)ライフラインに関しては生命維持・医療装置の切断は特に高齢者・

障害者への影響が大きかった。 3)交通については地震直後の行動ができず家族・知人・

友人等の援助による避難が多く、当初は殆ど外出できる状況に無かった。また自動車が大 きな役割を果たしたがリフト等のついたスペシャルトランスポートが阪神地区ではその整 備が遅れ殆どないため全く外出ができなかった人も多い。 4)情報については発信・受信 に大きな制約を受けた。これは救出、避難、状況把握、日常生活情報、薬・機器情報、安 否確認、福祉・医療施設利用情報、公的機関・ボランティア・介助者とのコミュニケーシ ョン、などあらゆる場面で問題となった。 6) 補助具・補装具・薬等についてはストック を切らしたときの手配や避難時に持ち出すことができなかった。また歩行器は使えず、障 害者用自動車は被害を受け使えなかった。 6) 福祉・医療システムについて、施設は通常 の様々なサービスや医療との連携の拠点となっているため施設が被害を受けたことにより、

訪問介護・通所・通院・給食・ボランティア・職員出勤等の人的システムに大きな打撃が あった。

料東京都立大学工学部土木工学科・都市研究所・都市科学研究科

****大阪大学工学部

******近畿大学大学院

*近畿大学理工学部

***神戸芸術工科大学

***** ~的都市交通研究所

(2)

142  総 合 都 市 研 究 第57 1995

.はじめに

1995117日に発生した兵庫県南部沖地震 によって阪神間は大災害に見舞われた。 5500名以 上の尊い人命が奪われ、火災や家屋の倒壊により 死亡した人が多かった。とりわけ移動性の低い高 齢者・障害者が逃げ遅れることにより死傷したケー スが多かった。また、避難所でも高齢者などいわ ゆる社会的弱者が多く、避難が長期化する傾向も ある。この調査は、この問題の緊急性と重要性に 鑑み、阪神大震災で被災した障害者の被災の実態 と被災直後の避難行動、および震災前と震災後の 交通環境の変化に対する意識変化について阪神間 の障害者に対して緊急災害時の生活調査を行った

ものである。

2.被害調査の概要

調査の対象者は、阪神大震災を被災した障害者 とする。この調査は2月に開始し、現在も継続中で あり、これまで西宮市在住の74入に調査できた。

lに示すように西宮市社会福祉協議会の協力を得 て、重・軽度の肢体障害者、聴覚・視覚障害者お よび介助にあたっている人に対してヒアリング形 式あるいは記述式で回答してもらった。調査項目 としては、個人属性、被災の状況、避難時の行動、

被災後の生活、震災後の交通状況の変化などであ る。被災とその後の生活全般を聞いたが、とくに 社会基盤と被災生活の関係をみるため、交通やラ イフライン関係の設問を詳しくした。これらを表 2に示す。質問項目が多岐にわたり、被災当時の状 況を聞き取る作業であるため、 1人の被験者にかか る調査時聞はおよそ2‑3時間程度である。この調 査は震災という特殊性により、対象者の母集団と サンプルの任意性は全く意識せず、調査可能な人 を順次訪れて調査している。したがって障害種別 や重度に偏りがあり、今回示す統計植は対象者集 団の属性を考慮しながら読んでいただきたい。

1調査対象者及び調査形式 調査対象の種類 調査形式

重 度 肢 体 不 自 由 者 ヒ ア ン グ l

軽 度 肢 体 不 自 由 者 ヒ ア ン グ 配 布 回 収 ヒ ア ン グ 介 助 者 ( 父 兄 ) 配 布 回 収 l

3.回答者の属性

回答者の年齢構成は表3のようになっており、青 年、壮年が多い。また、回答者の属性として、障 表2障害者の被災者調査での質問事項

' 居住地、家族構成、性別、年齢、障害の種類、介助者の必要性、視力、聴力、歩行状況、補装具 の使用状況

況 家屋の被害、ケガの程度、被災直後の状況

避難所の把握、避難所までの標識の認知、避難所まで使用した補装具、介助者の必要性、避難場 動 所までの移動方法、被災直後の道路状況、避難時に危険を感じた個所、避難時の困難点、家から

持ち出した物資、被災直後に必要と感じた物資、震災直後の情報の入手時間

避難地での身体の状況、必要な薬物の状況・通院等での問題点、救援物資に対する不満、ライフ 被 災 後 の 生 活 ラインに関する困難・不満、衛生面・施設面での利用状況(トイレ、入浴、衣類・着替)、食事 に関して、情報の入手先、介助者の対応、ボランティアの対応、プライバシーの確保、震災後の 生活に関する満足点と不満点

交 通 状 況 の 変 化 被災前後の外出状況、交通機関に関する不満

(3)

3被験者の年齢構成

20歳未満 20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 60歳代 70歳代 80歳代 90歳以上 不明 合計 重度肢体不自由者 14  14  36  視 覚 障 害 者 19  聴 覚 障 害 者 14  15  18  15  69 

一 一

4 被験者の障害別・等級別人数

2  3  4 5  6  ih 級 級 級 級

肢体不自由者 27  9  2  O  O  0139  視 覚 障 害 者 11  7  O  O  O 19 

聴 覚 障 害 者 1  5  4  O  O  3 14  全 体 人 数 39  21  6  2  O  3172 

害別・等級別人数を表4に示す。

障害種別では、肢体不自由者39人、視覚障害者 19人、聴覚障害者14人、その他2人、合計74 であり、 1.2級の重度の高い人が大半である。

補装具は76人(重複回答あり)が使用しており、

車いすは30人である。介助者の必要な人は61 である。

4.被災時の状況

被災後すぐに「家に閉じこめられた」、「すぐ逃 げた」、「避難する必要がなかった」に分けて、分 布をみると図1のようになった。けがの有無を図2

に示す。 15人がけがをしていた。家に閉じこめら れた8人の発見者は、近所の人、自力、おい、妹、

母、兄であった。自力の人は一人暮らしの高齢者 であった。また,一人ぐらしの人は、 TVにより負 傷した視覚障害の中年、ベットの上でじっとして 誰に救出されたか分からない視覚障害の高齢者、近 所の妹が玄関を壊して救出した47歳視覚障害者で あった。

5.避難時の状況

被災直後の行動とその後現在に至るまでの避難

主体人数

N=69 

聴覚樺害者 N=14  視覚樟害者

N=19  重度肢体不自白書

N=36 

0 10% 20%  30%  40%  50%曲 目 下O同 即 日 90% 100

ロ閉じこめられた 田すぐに逃げられた 口避難する必要がなかった臨不明

1被災直後の状況

全体次数1定評;;1

N=69 ( ¥ ¥ ¥   聴 蜘 害 者 勝3機器謡襲爵露悪霊

N=14 f /  

視覚障害者鴎駁摂隠語醸務欝翠

重度肢体不自由者k N=36 

対署﹂パ]

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│団あり冨なしロ不明│

2障害男JIのケガの有無

所等の移動の状況を調べた。横軸を日時とし、生 活していた場所を28人について図示したものが付 lである。

震災前に避難場所を知っていたかについては、

「知っていたJ33人、「知らなかった」が26 であった。

直後に避難した人は約6割であった。車いすを使 用して避難した人は2人であり、車いす使用者の中 でも少数であった。また補装具を使用した人は全 体で9人であり、非常に少ない。

最初に避難した人の移動手段は図3のようになる。

避難者の半数以上が「自動車」で避難している。こ

(4)

144  総 合 都 市 研 究 第57 1995

れは自宅の車、近所の人の車、知り合いの車を含 んでいる。

実際、避難時の道路状態はきわめて悪く、障害 者が歩ける状態にほとんどなかった。倒壊家屋、ガ ラスの飛散、亀裂などにより車いすや視覚障害者 はほとんど歩けなかった。盲導犬のケガが心配と いう人もいた。足もとが通常時と全く変わり、視 覚障害者が歩ける状態ではなかった。最初に使わ れた交通手段が車であり、徒歩においても、背負 われたり、介助者と共に移動するという状態で あった。なお、車については避難所へ行く前に、と りあえず寒風の中の緊急避難として多く利用され ていた。

被害直後、事態を何により知ったかについて図 4に示す。電気が復旧して、 TVやラジオがついた 人は早く状態をのみこむことができたが、そうで ない場合は17日夕刻から翌日まで意味が分からな かった人もいた。

全体人数

N=6

聴貰輝害者"

N=14 

視貰輝害者

N19

重度肢体不自由者

N36

明。 1明。 コ~o 3明。 4明。 5(JJ"ofJJ% '7(Pg. .1∞%

図自動車 E徒歩 口車いす 回電車 z避難せず閣不明

3避難場所への移動手段

全体人数 N=98  聴覚障害者

N=16  観覚障害者

N=22 ト ¥ ¥ ¥

重 度 肢 体 不 自 由 者 刊 行 偽λ "肺一一ーーー一一『

N=60 

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図4 震災直後の情報の入手方法

直後に必要と思われるものは、ラジオ、乾電池、

非常食、水、保険証・医療証書、電話帳、小銭等 であり、普段からこれらをまとめて常備していた 人はほとんど居なかった。

6.震災後の生活

ここでは震災後の生活面に関する問題点につい ての調査結果を記す。

最初に震災後の身体的・精神的な問題の有無に ついて図5に示す。今回の震災は身体的な問題だけ でなく、精神的なショックが多いことがうかがえ る。意見として、身体的なものとして風邪・イン フルエンザ等の疾病がある。精神面では、ストレ ス性の病気にかかった、地震に対する恐怖心・神 経の高ぶり等がある。

つぎにトイレ、仮設トイレを使用する際の何ら かの問題の有無について回答した人の割合を図6 示す。今回は重度肢体不自由者よりもむしろ視覚・

聴覚障害者の方が問題があるという結果となって いる。意見として、衛生面のみならず、肢体不自 由者は「構造的に使用できないJ、視覚障害者は「屋 外にあるために雨天時に転倒した」と述べている。

震災後の情報の入手手段について聞いたものが 7である。主な情報入手手段として、テレビ・ラ ジオ・新聞があげられる。重度肢体不自由者はミ ニコミ紙、聴覚障害者はFAX利用が5人、パソコ ン通信利用者がl名いる。情報に対する不満として、

「広域的な情報だけでなく、細かい地域的な情報が ほしい」、「電話・FAXがかかりにくい」、「情報の 混乱jなどがあり、 TVについては「どこの情報も 同ーのものばかりなので、違う情報がほしい」と いう意見もある。

震災後に徒歩・車いすに対して何らかの問題を 感じているかについての調査結果を図8に示す。重 度肢体不自由者・視覚障害者は徒歩・車いす使用 時に「問題がある」と答えた割合が高く、聴覚障 害者は「なし」と答えた割合が高い。また、図表 は割愛するが、鉄道・パス・タクシー・自家用車 等の手段についても「問題があるJと答えている 割合は聴覚障害者よりも重度肢体不自由者・視覚

(5)

身備事暫 精禍句問題

N=74 

"N=75 

5回答者の身体的・精神的問題の有無

全体人数

N=9

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N~25 重度肢体不自由者 N~51

!C陥ヨア令 30泊 朝 色 5(1)/0(:fY7 8CJDIo抑も100%

箇テレビ 圃ミニコミ誌 園口コミ

国ラジオ

I>'¥lFAX  回その他

口新聞 園パソコン通信 圏不明

7震災後の情報入手手段

障害者の方が高い傾向にある。徒歩・車いす使用 時の通行に関して問題があるという理由として、「迂 回を強いられる」、「道路が凸凹のため」、「瓦醸が 路上に落ちている」、「車道と歩道の区別がつかな

い」等の意見を得た。

7.震災後の交通状況の変化

ここでは震災後の日数と交通面での変化との関 係をみる。震災前と震災後の外出目的、外出日数、

外出手段にどの程度の変化があるのかについて調 査している。

9は重度肢体不自由者の外出目的の変化を示し ている。震災直前1ヶ月は通所・買い物が主であっ た。ところが、震災直後の1ヶ月は各外出目的とも 著しく低下しており、震災後4ヶ月経過しでも、通 所に関しては通常時とさほど変化はなくなったも のの、買い物に関しては少ない。また,図表は割愛

全体人数 N~69

聴 覚 障 害 者 瞳 罫 N~14 視 覚 障 害 者'l必 端

N=19 

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N=36 

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6 トイレ・仮設トイレの問題の有無

全体人数 N=69 

聴覚障害者 N=14 

視覚障害者 N=19 

重度肱体平自由者 N=36 

0%  10%  20%  30 40%  50%  6070 80 90%  100% 

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8徒歩・車いす使用における問題の有無 しているが、聴覚障害者はあまり震災直前と変化 がないという結果となっている。ただし、聴覚障 害者についてはサンプル数が14と少ないため、今 後増加させる必要がある。

つぎに、震災前後の外出日数の変化をみる。図 10は視覚障害者の外出日数の変化を示しているが、

震災前の1ヶ月は外出が全くない人はいなかったが、

震災後の1ヶ月は外出が全くない人が40%近くお り、外出頻度が月あたり26‑31日という人が4 になっても震災前までの状態に戻っていない。

1112は重度肢体不自由者と視覚障害者の外 出手段の変化を示すが、重度肢体不自由者は震災 前の通常の交通手段においても、タクシー・自家 用車を使用しており、震災後もこれらの手段を利 用している。)方、視覚障害者は震災後の12 中はタクシーの使用がなく、自家用車に負うとこ ろが多い傾向にある。 2月になるとパスの使用が多

(6)

146  総 合 都 市 研 究 第57 1995

N=38 

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9外出目的の変化(重度肢体不自由者)

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10 外出回数の変化(視覚障害者)

3月中 N=33 

2月中時 F7 震災後の一月中

F26 通常時1カ月

N=39 

1譲購おト力J2

調車いす 図徒歩 ・その他

11 外出手段の変化(重度肢体不自由者)

4月中 トド26 3月中 トド'21 2月中 N=22  震筑後の戸月中 N=13  通常時1カ月 N=31 

四% 20%  ~/。 (f.Jl 匝〕同 I% 

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・自車五車圏徒歩 困そ切他 │  12 外出手段の変化(視覚不自由者)

8.まとめ

障害者の震災被害は、障害の種類と程度、家族 構成、在宅か否か、物的被害、地域環境、平時か らの生活習慣などにより多様であり、その詳細は さらに今後の調査にまたなければならないが、全 体をおおづかみにまとめる以下のようになる。

1)脱出・救援

倒壊した家の中から、自力で脱出できないケー スも多かった。そのさい存在情報を他者が知る方 法にも制約があった。普段からその家に障害者が いることが知られていない場合救出が遅れた。当 時室内外はまだ暗く、停電の中の救出・避難で あった。避難直後は寒風の中でつぎの行動を待た ねばならなかった。

2) ライフライン

電気、ガス、水道、電話を失ったことによる影 響は大きい。生命維持・医療装置の切断、電気的 情報手段が使えなくなること、湯沸かし・調理な どの水食料の加工ができないこと、水がでないた め、飲料水、掃除水・風呂水が使えないことなど 生命維持、生活維持に問題が出た。これは健常者 にも等しく問題であったが、身体的・精神的ハン eィのある障害者・高齢者への影響は大きかった。

3)交通

避難行動、避難生活において、移動に困難のあ る障害者・高齢者は避難段階からハンデ、ィが大き

(7)

かった。直後行動のできない障害者も多く、家族・

知人・近所の人等の援助により避難した。その後 の生活では、当初はほとんど外出できない状況に あり、その後の外出の回復も遅れた。自動車の使 用が大きな役割を果たした。公共交通が麻癒する 中で車いす使用者が利用できるスペシャルトラン スポートが普段からほとんど無く足を全く奪われ た人も多い。道路は大半が被害を受け、歩ける環、

境になかった。

4)情報

情報の発信・受信に大きな制約をうけた。何が 起こったかを1日以上理解できなかった人もいた。

視覚不自由者におけるラジオ、聴覚不自由者にお けるTV・新聞などが使えなかった。 TVの文字テ ロップは後になってであった。これらの影響は、① 救出、②避難、③状況把握、④日常生活情報、⑤ 薬・機器情報、⑥安否確認、⑦福祉・医療施設利 用情報、@公的機関・ボランティア・介助者との

コミュニケーションなどあらゆる面に生じた。

5)補助具・補装具・薬等

薬等についてはストックを切らしその手配が大 変であった。避難時に薬・補助具・補装具を持ち 出せないケースが多かった。歩行補助機器は実質 的に使えない状況であった。障害者対応の自動車 が被害を受けて移動の手段が無かった。

6)福祉・医療システム

施設が被害を受け、平時にあった福祉や医療の 分担システムに大きな被害を受けた。施設は避難 所になることが多く、障害者の避難は長期化した。

機関による個々の障害者の情報把握自体が困難を 極めた。訪問介護・通所・通院・給食・ボランテ ィア・職員出勤などの人的システムにおいて介護 者自身大きな打撃を受けておりその影響は大き かった。

このように障害者の被災は、健常者も含む被災 そのものであるが、身体的・社会的ハンデ、ィがゆ えにその被害が大きく、あるいは集中して現れて いる。とくに平時からの障害者をとりまく環境の 問題点が被害の拡大要因として目立つているとい えよう。

これらをふまえて教訓や今後のまちづくりの課

題を列記すると以下のようになる。

【災害の考え方】

①まちづくりにおいて、震災、火災、水害、交通 事故など、非常時の防災の視点を確立する。

防災は平時には忘れられがちであり、障害者を 視点にした防災対策の考え方は幅広い市民全体の 防災対策を喚起する「戦略」となろう。

②「生活の質Jを高める運動の中に防災の視点を 確立する。

健常者だけでなく障害者においても災害に備え る視点は弱かったといえるのではなかろうか。障 害者対策を先導してきた欧州では震災が少なく防 災の視点が非常に弱いが、わが国での近年の被災 の経験を今後にいかす考え方を確立し、世界へ発 信すべきである。

【まちづくり]

③「福祉のまちづくり」から防災を考慮した福祉 の社会基盤(インフラ)づくりへ

「アクセスフリー」を原則にした「福祉のまちづ くりJの重要性は、今回の大きな被害がなかった 貴重な施設がバリアのため障害者に使えないとい う事実からもあきらかである。しかし、今回のよ うな住宅や建物だけでなく、ライフラインや道路・

交通など都市全体が崩壊することを考えると、建 物のアクセス問題だけでなく生活基盤全体にその 考え方を広げ、ハード・ソフト全体にわたる平時 のまちづくりが必要と思われる。また通常の都市 計画・地区計画・再開発・防災対策・道路計画・交 通計画は福祉施策からみても基本であると思われ

④アクセスフリー

住宅、施設のアクセスフリーだけでなく、道路・

鉄道・パス対策もすすめたい。道路では、今回歩 道の被害が著しい。段付き歩道のないフラットな 地区も考えてみたい。これは排水問題、建物全体 のレベルの問題、交通安全問題などを含み容易で はないが区画整理などで考慮できると思われる。パ スでは、リフト付パス・低床パス・その他弱者に やさしい設備をもっパスの導入をすすめたい。パ

(8)

148  総合都市研究第57 1995

ス停も同様である。鉄道はターミナル対策と車両 対策で遣うる。なお、障害者対応の自動車であるス ペシャルトランスポートがシステム化されておら す、わずかに対応タクシー・施設送迎車があるの みである。欧米型のこれらの整備も望まれる。い ずれにせよ障害者は交通手段が限定されているこ とが多い。障害者が必要に応じて選択性のある交 通システムづくりは災害の面からも重要である。

今回、障害者・高齢者の車利用が重要な役割を 果たしていた。社会全体からみた災害時の車利用 は抑制されるべきものと考えられるが、ハンテe

のある障害者・高齢者では車利用は生命線である こともあり交通規制のシステムの中で考慮したい。

平時の障害者の車利用援助も重要な課題である。

⑤公共的施設・公共的空間・ターミナルの徹底し た防災と障害者対策

学校などの公共施設が今回避難所として使われ たが、障害者には使いにくいものであった。駅・商 居街等についても同様である。

⑥福祉防災拠点づくり

分業化・要素化した福祉施設も今回のような非 常時には多様な機能が要求される。必要な医薬品・

補助具・情報機器を備蓄して耐震性の高い福祉拠 点施設を1乍るべきである。それは現在の福祉セン ターであってもよいが、防災拠点地域づくりと連 動しでつくられるのが望ましい。

⑦公的空間・私的空間の聞の「共的」空間も位置 づける

今回の震災で目立ったのが、公共施設だけでな く私的な建物や空間も避難等に使われている。民 地であっても公的性格もあわせもつ施設一共的施 設ーの防災対策も重要である。

⑧ヒューマンネットワークと情報システムづくり 非常時には人と人のつながりや情報の流通が重

要である。今回も救出段階から避難生活段階まで 通じてその役割が大きかった。これからの問題と して公共と民間両レベルでそれをシステム化する 必要がある。これは情報システム問題だけでなく、

共生の思想の普及、簡単な介護は誰でもできる習 慣の普及、障害者・高齢者だけでなくお互いのつ ながりのある地域づくりなどがすべてのまちづく りの根底にすえられなければならないことを意味 しよう。

あとがき

今回の震災において犠牲となった方々のご冥福 を心からお祈り申し上げます。

調査にご協力いただいた方々にお礼を申し上げ ます。

参 考 文 献

1)三星昭宏・新田保次・土居聡・北川博巳・飯田克 弘・杉山公一(1995)r阪神大震災における障害 者の避難行動調査と今後の課題J、土木学会関西支 部共同研究グループ『高齢者・障害者の実態と今 後のまちづくり課題』ワークショップテキスト 本稿は第8章以外はこの文献によっています。なお この文献には本稿では割愛した調査で自由に発言して いただいた項目が載っておりますので参考にしていた だけると思います。

なおこのテキストには、神戸市民政局大下氏、大阪 市民政局西川氏、神戸芸工大田中氏、兵庫県福祉のま ちづくり工学研究所相良氏、大阪府福祉部高橋氏の発 表が掲載されていますのであわせてご参考にして下さ

2)  KSKQ障害者救援本部通信、兵庫県南部地震障害 者救援本部 (06‑965 ‑7968Fax06‑965‑7967) その他

Key Words (キー・ワード)

Disabled (障害者), Countermeasures for the  Disaster (災害対策), Transportation  (交通), 8arrier  Free  Design  and  Planning  (福祉のまちづくり), Interview  Survey (インタビュー調査), The Great  Hanshin‑Awaji  Earthquake (阪神・淡 路大震災)

(9)

付 録

①個人別の避難行動(重度肢体不自由者)

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②個人別の避難行動(視覚障害者)

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表 3 被験者の年齢構成

参照

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